電力変換装置
【課題】リアクトルおよびコンデンサから成るフィルタ回路を交流電源側に備えて系統電源の電圧を任意の3相交流電圧に変換する電力変換装置において、入力電圧に含まれる高調波成分に起因して発生するフィルタ回路での電気的共振を抑制する。
【解決手段】コンデンサ5〜7の電圧を入力し系統電源1の位相に基づいて2つの相を選択し、選択した2相の各々の選択比率Vdutyを演算する系統比率演算回路31を備えてPWM制御によりスイッチング素子8〜16を駆動し、コンデンサ5〜7に含まれる高調波電圧成分により電気的共振を検出し、2つの選択した相の内、電気的共振の大きな相の該共振を抑制するように選択比率Vdutyを補正する。
【解決手段】コンデンサ5〜7の電圧を入力し系統電源1の位相に基づいて2つの相を選択し、選択した2相の各々の選択比率Vdutyを演算する系統比率演算回路31を備えてPWM制御によりスイッチング素子8〜16を駆動し、コンデンサ5〜7に含まれる高調波電圧成分により電気的共振を検出し、2つの選択した相の内、電気的共振の大きな相の該共振を抑制するように選択比率Vdutyを補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、特に、スイッチング素子を用いて交流電源電圧を任意の交流電圧に変換する3相対3相電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の3相対3相電力変換装置には、出力電圧および出力電流を制御すると共に、入力電流の位相に基づいて波形制御を行うものがある。この電力変換装置では、複数のスイッチで構成される主回路により系統電源から任意の交流出力を得るために、系統電源の周波数よりも充分に高い所定の周波数による周期毎に、系統電源のr、s、t相から位相に基づいて2つの相を選択して各々の選択比率を演算してPWM制御を行う。これにより入力力率の良好な3相対3相電力変換が行える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また従来の交流−交流電力変換装置で、入力電圧に含まれる高調波成分の影響を抑制するものでは、入力側の瞬時有効電力が一定になるように入力電流を制御するものがある。この電力変換装置では、3相交流電源からの入力電圧を検出する電圧検出手段と、入力側の瞬時有効電力が一定になるように制御を行う瞬時有効電力一定化手段とを備え、この瞬時有効電力一定化手段により求められた入力電流の高調波成分を入力電流基本波指令に重畳して電力変換装置の入力電流指令を生成する。これにより交流系統に存在する高調波電圧の影響を受けずに、電力変換装置の出力電圧に含まれる歪みを抑制する(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−177166号公報
【特許文献2】特開2004−248430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の電力変換装置では、通常、リアクトルおよびコンデンサから成るフィルタ回路を交流電源側に備えて、入力電圧に含まれる高調波成分を抑制し、またPWM制御に伴う交流電源側への高調波電流を低減していた。しかしながら、入力電圧に含まれる高調波成分に起因して発生するフィルタ回路での共振により電力変換装置の出力電圧に歪みが発生するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2記載の電力変換装置では、フィルタ回路などのエネルギバッファを必要とせずに入力電圧に含まれる高調波成分の影響を抑制するものであるが、入力電流の高調波成分を算出して電流指令に重畳するため、高調波の抑制に伴う演算量が多くなり高速の制御装置が必要であった。また抑制対象となる高調波は、周波数が交流系統の整数次のみであり、整数次以外の任意の周波数の高調波については考慮されていないという問題があった。
【0007】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、入力電圧に含まれる高調波成分の影響を、特定の周波数に限らず広範囲に効果的に抑制でき、複雑な演算を要することなく簡便な装置構成で歪みのない出力電圧が高精度に得られる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による電力変換装置は、複数のスイッチング素子で構成され3相交流電源からの3相交流電圧を任意の周波数及び振幅を持つ3相交流電圧に変換する主回路と、リアクトルおよびコンデンサを含み上記主回路の上記3相交流電源側に接続されたフィルタ回路とを備え、所定の周期毎に上記3相交流電源の位相に基づいて該3相交流電源の共通選択される1相を決定すると共に、他の2相の電圧比から該2相の各選択比率を演算する系統比率演算手段を有して、該選択された相およびその選択比率に応じて上記主回路がPWM制御される。そして、上記フィルタ回路における高調波電圧成分から電気的共振を検出する手段と、上記系統比率演算手段にて上記選択比率を演算する2相の該各選択比率を、検出された上記電気的共振を抑制するように補正する比率演算補正手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
このような電力変換装置では、入力電圧に含まれる高調波成分の影響を入力側に接続されるフィルタ回路で抑制すると共に、フィルタ回路での共振を抑制して共振により発生する不要な電流や電圧を抑制できる。このため、複雑な演算を要することなく簡便な装置構成で歪みのない出力電圧が高精度に得られる。また共振により発生する不要な電磁騒音を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置を図について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置の構成を示す図であり、図1(a)は主回路構成を、図1(b)は制御回路構成を示すものである。図1(a)に示すように、電力変換装置の主回路は、複数のスイッチング素子8〜16と、リアクトル2〜4およびコンデンサ5〜7から成るフィルタ回路とを備えて、3相交流電源としての系統電源1からの3相交流電圧を任意の周波数及び振幅を持つ3相交流電圧に変換する。20〜22はコンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを検出する電圧検出器である。
また、複数のスイッチング素子8〜16により電力変換部としての交流変換部を構成すると共に、交流変換部8〜16が発生するPWM制御に伴う高調波電流をリアクトル2〜4およびコンデンサ5〜7から成るフィルタ回路によりフィルタリングして、系統電源1への高調波電流を低減する。
【0011】
また、制御回路は、図1(b)に示すように、コンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを入力し系統電源1の位相に基づいてr、s、t相から2つの相を選択する系統位相検出回路30と、選択した2つの相の各々の選択比率を演算する系統比率演算回路31と、交流出力の指令に従いPWM制御によりスイッチング素子8〜16のオンオフ信号を作成してゲート信号として出力するPWM制御回路32と、コンデンサ5〜7に含まれる高調波電圧成分を検出して三相正弦波に基づく仮想中性点電位から見た相高調波電圧値に変換する高調波検出回路33と、2つの選択した相に対応する相高調波電圧値に基づき、系統比率演算回路31での比率に補正信号を与える比率演算補正手段としての補正信号発生回路34とを備える。
【0012】
この発明の系統比率演算手段を構成する系統位相検出回路30および系統比率演算回路31を用いた制御について説明する。交流変換部のスイッチング素子8〜16のオンオフにより系統電源1から任意の交流出力を得るために、系統電源1の周波数よりも充分に高い(例えば100倍など)所定の周波数による周期毎に、系統位相検出回路30により系統電源のr、s、t相から2つの相を選択して、系統比率演算回路31により選択した2つの相の各々の選択比率を演算する。入力力率である系統電源1の力率をほぼ1とするための選択比率について以下に述べる。
系統電源1の例えば60度期間毎に振幅絶対値が最も大きくなる相を固定的に選択する。そして残りの2相の選択比率については、各々の相電圧の比率をもとに選択する。従って系統電源1の位相に基づいて随時選択比率は変化する。
例えば系統電源1の各相電圧が図2に示す場合、r、s、t相の電圧er、es、etのうちetの振幅絶対値が最も大きいためt相をこの期間で固定的に選択し、残りのr相、s相の2相についてはerとesの電圧比に分ける。従って時刻Aにおいてはerとesが等しいため、当該時点においてはr相とs相との選択比率が同一となるようにする。
【0013】
図3は系統位相検出回路30により2つの相を選択した場合の等価回路図を示しており、図3(a)はr相を選択した場合、図3(b)はs相を選択した場合である。なおt相は共通に選択される。そして、所定のPWM幅をr相とs相との選択比率で分けて、線間電圧であるVtrとVstとをその分けられた時間だけそれぞれ利用する。
【0014】
一方、高調波検出回路33では、コンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを入力してコンデンサ5〜7の電圧に含まれる高調波電圧成分Vrsh、Vsth、Vtrhを検出する。そして、以下の式(1)に従い、高調波電圧成分Vrsh、Vsth、Vtrhを3相正弦波に基づく仮想中性点電位から見た相高調波電圧値Vrh、Vsh、Vthに変換する。
Vrh=−(Vtrh−Vrsh)/3
Vsh=−(2Vrsh+Vtrh)/3
Vth=(2Vtrh+Vrsh)/3 ・・・(1)
【0015】
なお、高調波電圧成分Vrsh、Vsth、Vtrhはリアクトル2〜4およびコンデンサ5〜7を含むフィルタ回路の共振周波数に概一致するものであり、例えば系統電源1に含まれる高調波電圧により発生する。即ち、高調波検出回路33では、フィルタ回路における高調波電圧成分からフィルタ回路での電気的共振を検出するものである。
共振によるゲイン特性の概略図を図4に示す。フィルタ回路の共振周波数はfrであり、このときのゲインはGrである。なお共振周波数frの近傍においてもゲインが0以上となる。例えば周波数fr1では、frでのゲインGrよりは低いもののゲインGr1となり、系統電源1における高調波電圧成分の周波数がfr1にある場合にはゲインGr1だけ増幅される。従って共振周波数fr及びその近傍を含む周波数成分を、この場合の電気的共振とする。
【0016】
次いで、補正信号発生回路34では、選択したr相とs相との2相に対応する相高調波電圧値Vrh、Vshに基づき、系統比率演算回路31での選択比率に補正信号Vdutyhを与える。
系統比率演算回路31では、上述したように選択された2つの相の各々の選択比率Vdutyを演算するものであるが、その際、補正信号発生回路34からの補正信号Vdutyhにより選択比率を補正して演算する。
PWM制御回路32では、交流出力の指令に従って演算された所定のPWM幅をr相とs相との選択比率で分けて、PWM制御によりスイッチング素子8〜16のオンオフ信号を作成してゲート信号として出力する。
【0017】
選択比率の補正について以下に詳述する。図5は、例えばr相を選択しているときの電力変換装置の等価回路を示す。
図中、50は仮想中性点電位からみたコンデンサであり、図1で示すコンデンサ5〜7のΔ結線をY結線に等価変換したときのコンデンサに相当する。ここでコンデンサ50の電圧Vrnが電気的共振により跳ね上がるときは、交流変換部によりコンデンサ50を放電させればコンデンサ50の電圧Vrnが低減でき、電気的共振を誘起するエネルギーを低減できて電気的共振が抑制できる。このため、例えば、系統電源1からの入力電力が正の場合、即ち交流変換部の出力電力が正の場合は、r相選択の時比率(選択比率)を長くすることにより、コンデンサ50の放電を促して電気的共振を抑制する。
【0018】
図1で示す電力変換装置における相電圧に基づく等価回路を図6に示す。図6において40は相系統電圧、41はリアクトル、42はコンデンサ、43は交流変換部が発生する電流を等価的に電流源imとして示す。
図7は補正信号発生回路34が補正信号Vdutyhを出力して高調波を抑制するための制御ブロックを示す。図において、60は制御器、61は交流変換部、62は加算器、63はコンデンサ、64は減算器、65はリアクトル、66はフィルタ、67は減算器、68はこの制御ブロックの制御対象である。コンデンサ63は図6で示すコンデンサ42に相当し、リアクトル65は図6内のリアクトル41に相当する。加算器62、コンデンサ63、減算器64、リアクトル65により図6の等価回路が表現される。
【0019】
図6、図7に示すように、制御器60が電流指令i*を出力し、この電流指令i*に従って交流変換部61は出力電流im(43)を出力する。リアクトル65(41)に流れる電流isと交流変換部61の出力電流im(43)との和が加算器62で演算され、コンデンサ63(42)を充電してコンデンサ63(42)の電圧Vcが発生する。コンデンサ63(42)の電圧Vcと系統電源40の相系統電圧Vsとが減算器64で減算され、リアクトル65(41)の両端電圧が出力される。リアクトル65(41)に流れる電流isは図6の矢印の向きを正とするため、リアクトル65(41)の極性は負となり、isが得られる。
またフィルタ66はコンデンサ63(42)の電圧Vcにおける、共振による高調波成分を含む帯域を抽出する。減算器67にて指令値「0」から減算され、制御器60に入力され、電流指令i*を出力する。
【0020】
このようにコンデンサ63(42)の電圧Vcを検出し、電気的共振による高調波成分を含む帯域を抽出し、これがゼロとなるように制御器60により交流変換部61の電流指令i*を与え、コンデンサ63(42)に電流imを印加する。コンデンサ63(42)の電圧Vcが上昇すると、電流imによりコンデンサ63(42)を放電させ、逆にコンデンサ63(42)の電圧Vcが下降すると、電流imによりコンデンサ63を充電する。これにより、コンデンサ63(42)の電圧Vcにおける電気的共振による高調波成分を抑制する。ここで制御器60と減算器67が図1で示す補正信号発生回路34に相当し、フィルタ66が図1で示す高調波検出回路34に相当する。また、制御器60が出力する電流指令i*が、補正信号発生回路34の出力である補正信号Vdutyhに相当し、電流指令i*に応じた補正値を演算して選択比率Vdutyが補正演算される。
【0021】
コンデンサ5〜7(42、63)の電気的共振による高調波成分を抑制する制御のフローチャートを図8に示す。
まず、高調波検出回路33にて、コンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを入力して高調波電圧成分を検出し、仮想中性点電位から見た相高調波電圧値(Vrh、Vsh、Vth)を演算する(ステップ200)。次に、系統位相検出回路30にて、系統の2相を選択し選択信号Vselを出力する。ここでは図3に示したようにr相とs相を選択したものとする(ステップ201)。
【0022】
次に、補正信号発生回路34では、選択した系統の2相、ここではr相とs相に応じて、ステップ200にて演算した相高調波電圧値(Vrh、Vsh)を選択する(ステップ202)。続いて、系統入力電力の極性を検出し、交流変換部の出力に接続される負荷が力行か回生かを判別し(ステップ203)、系統比率演算回路31に与える選択比率の補正信号Vdutyhを演算する(ステップ204)。
次に、補正信号発生回路34からの補正信号Vdutyhと系統位相検出回路30からの選択信号Vselが系統比率演算回路31に入力され、系統比率演算回路31において、r相とs相との選択比率Vdutyを演算する際、補正信号Vdutyhが反映される(ステップ205)。
そして、系統比率演算回路31からの選択比率Vdutyに基づいたPWM制御により電力変換部を制御することで、コンデンサ5〜7の電気的共振による高調波電圧成分を抑制する。
【0023】
上記ステップ204における補正信号Vdutyhの演算内容を表に示すと図9のようになる。相高調波電圧値(Vrh、Vsh)の極性と絶対値の比較、系統入力電力の極性により合計16通りのケースに分かれる。
ケース1の場合について説明する。この場合、Vrhの極性とVshの極性が共に正であり、系統入力電力の極性も正であることから力行負荷である。また、Vrhの絶対値の方がVshよりも大きい。このため、図5で示したようなr相に対する仮想中性点電位から見たコンデンサ50の放電を促すために、r相の選択比率(選択duty)を上昇させるとよい。一方s相についても同様にs相の選択比率を上昇させるとよいが、元来r相の選択比率とs相の選択比率の和が「1」となるように制御されるため、r相とs相の選択比率を同時に上昇させることは不可である。従って優先的にVrhとVshの絶対値の大きい方、ここではVrhを高調波抑制対象として、r相の選択比率を増加させる。
なお、相高調波電圧値(Vrh、Vsh、Vth)は各相の電気的共振の振幅を示すものであり、即ち、選択された2相について電気的共振の振幅(絶対値)が大きい方の相の選択比率を、その相における電気的共振を抑制するように補正する。
【0024】
ケース2では系統入力電力の極性が負であるためr相の選択比率を減少させることにより負荷からコンデンサへの充電を抑制してr相の高調波電圧成分を抑制する。
ケース3、ケース4ではVshの絶対値の方が大きいため、s相を選択しケース1、ケース2と同様の動作を行う。
ケース5〜ケース8ではVrhとVshの極性が共に負であるため、ケース1〜ケース4の場合の選択比率の増加、減少を逆の動作とさせることにより高調波電圧成分を抑制する。
ケース9ではVrhの極性が正でVshの極性が負であり、かつVrhの絶対値の方が大きいため、r相の高調波電圧成分を抑制対象とする。また、系統入力電力の極性は正であるから、コンデンサの放電を促すべくr相の選択比率を増加させる。
ケース10では系統入力電力の極性が負であるためr相の選択比率を減少させることにより負荷からコンデンサへの充電を抑制してr相の高調波電圧成分を抑制する。
ケース11、ケース12ではVshの絶対値の方が大きいため、s相を選択しケース9、ケース10と同様の動作を行う。
ケース13〜ケース16ではケース9〜ケース12に対してVrhとVshの極性が各々入れ替わるため、ケース9〜ケース12の場合の選択比率の増加、減少を逆の動作とさせることにより高調波電圧成分を抑制する。
【0025】
以上のように、系統位相検出回路30によりr相とs相を選択した場合について述べたが、他の相を選択した場合も同様である。
なお各ケース1〜16の選択比率の増加分に対応する補正信号Vdutyhは、上述したように図7で示した電流指令i*に相当し、図9のケース選択動作に従い、交流変換部61にて電流imが出力される。ここで電流imは交流変換部61に接続される負荷量によりその大きさが決まる。
なお図1で示す電力変換装置の構成では、系統入力電力の極性を検出する回路の図示を省略しているが、例えば系統入力電流を検出し該検出値とコンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrとにより入力電力の極性を検出してもよい。またPWM制御回路32にて用いる交流出力の指令、即ち、交流変換部の出力における負荷電流や負荷電圧の指令値もしくは検出値から入力電力の極性を検出してもよい。
【0026】
このように系統電源1に含まれる高調波電圧によりフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制することができるため、電気的共振により発生する不要な電流や電圧を抑制することができ歪みのない出力電圧が得られる。また共振により発生する不要な電磁騒音も抑制することができる。
また、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することにより電気的共振を抑制するため、電力変換装置の交流出力指令は変化せず、高調波抑制による歪みの低減効果を得ながらかつ出力電圧には何ら影響を及ぼすことが無く、指令値通りの出力電圧を得ることができる。
またコンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrにおける高調波電圧成分を検出して電気的共振を検出するため、高調波電圧成分を抽出するために特別な演算を必要とせず簡便な装置で実現することができる。また抑制対象とする高調波の周波数は任意の次数となり、交流系統の整数次以外の次数(インターハーモニクスなど)の高調波成分についても抑制することができる。
【0027】
また、選択された2相について電気的共振の振幅(絶対値)が大きい方の相の選択比率を、その相における電気的共振を抑制するように補正するため、その時点で大きい電気的共振を常に抑制することができ、容易で確実に電気的共振を抑制できる。
また、系統電源の各相の電力極性および電気的共振の振幅に基づいて選択比率を補正するため、確実に電気的共振を抑制できる。さらに、補正対象相に対してコンデンサの電圧を調整する電流指令を演算し、この電流指令に応じた選択比率の補正値を演算するため、電気的共振の抑制制御が信頼性よく高精度に実現できる。
【0028】
また電力変換装置を接続する系統インピーダンスにより、フィルタ回路を構成するリアクトル2〜4に更にインダクタンス成分が重畳され共振周波数が変化しても、制御ブロックは、図7で示すようにフィードバックループ構成であるため自動的に高調波電圧(電気的共振)を抑制することができる。
【0029】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、入力電力の極性に応じて選択比率の補正の処置を選択するものであった。図7における制御器60は例えば一定ゲインK倍といった比例器により構成され、制御器60の出力であって選択比率の補正信号Vdutyhに相当する電流指令i*は入力電力の大きさに依存しない。これに対し、交流変換部61が出力する電流imの大きさは系統入力電力の大きさにより変化するため、常に所望の電流imとならず、高調波抑制効果は入力電力に依存することになる。
図10は、この発明の実施の形態2による電力変換装置の構成を示す図であり、図10(a)は主回路構成を、図10(b)は制御回路構成を示すものである。図10(a)に示す主回路構成は、上記実施の形態1の図1(a)で示したものと同様である。図10(b)に示す制御回路構成については、30〜33は上記実施の形態1と同様のもの、75は入力電力に応じて変化する直流等価電流としての直流電流idcを演算する直流電流演算回路、76は選択した2相に対応する相高調波電圧値および直流電流idcに基づき、系統比率演算回路31での比率に補正信号Vdutyhを与える比率演算補正手段としての補正信号発生回路である。
【0030】
ここで直流電流idcとは、例えば図3(a)に示す回路では、系統電源1のr相とt相との間に接続されるスイッチング素子8〜10、14〜16からなる交流変換部の入力側(コンデンサ接続側)を流れる電流である。r相を選択した図3(a)の状態とs相を選択した図3(b)の状態とは所定の選択比率により互いに切替るが、切替速度は交流変換部に接続される負荷の変動よりも充分早いものとして良く、図3(a)、図3(b)のいずれの状態も直流電流idcは概同等と見なせる。
直流電流idcの検出は、以下のように演算する。まず、r相とs相との選択比率に応じた直流電圧vdcが次式より得られる。
vdc=(Vtr・Vr+Vst・Vs)/(Vr+Vs)
入力電力powが既知であると、直流電流idcは次式で演算できる。
idc=pow/vdc
なお、Vr、Vsは系統電源1のr相とs相の相電圧、Vtr、Vstはコンデンサ7、6の電圧として検出される線間電圧である。
【0031】
図11は補正信号発生回路76が補正信号Vdutyhを出力して高調波を抑制するための制御ブロックを示す。図において、60は制御器、71は交流変換部、62は加算器、63はコンデンサ、64は減算器、65はリアクトル、66はフィルタ、67は減算器、68は制御対象、70は除算器である。
除算器70は直流電流演算回路75に相当し、直流電圧vdcおよび入力電力powから直流電流idcを出力する。上記実施の形態1の図6、図7を用いて説明したように、制御器60の出力である電流指令i*が、高調波電圧成分を低減するための指令となる。交流変換部71は電流指令i*に従った電流imを出力するように、交流変換部71の選択比率が決められる。この場合の選択比率とは、r相を選択する図3(a)の状態あるいはs相を選択する図3(b)の状態の選択比率に相当する。
【0032】
ここで、仮想中性点電位からみたr相のコンデンサの電圧Vrnが正極性でありr相の高調波電圧(電気的共振)を抑制する場合を考えると、電流指令i*は電圧Vrnを低減する方向となる。このr相を選択する期間を時間Δtだけ増加させると、r相の選択期間とs相の選択期間との和をTとしたとき、(Δt/T)・idcで求められる電流imが、電流指令i*に従ってr相に重畳して流れる。これによりr相のコンデンサの電圧Vrnが低減して電気的共振が抑制される。
【0033】
この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することによりフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制するため、交流系統の整数次以外の次数の高調波成分も抑制でき、このような高調波抑制制御を特別な演算を必要とせず簡便な装置で実現でき、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
さらに、制御器60が出力する電流指令i*に従って、交流変換部71の出力電流imを、直流電流idcに基づいて所望の値に制御できるため、入力電力の大きさに関わらず高調波抑制に係る所望の効果を得ることができる。
【0034】
実施の形態3.
図12は、この発明の実施の形態3による電力変換装置の構成を示す図であり、図12(a)は主回路構成を、図12(b)は制御回路構成を示すものである。図12(a)に示す主回路構成は、上記実施の形態1の図1(a)で示した構成に、フィルタ回路内のリアクトル2〜4を流れる電流を検出する電流検出器80〜82を設けたものである。また、図12(b)に示す制御回路構成については、30〜32、34は上記実施の形態1と同様のもの、83は電流検出器80〜82で検出した電流値ir、is、itに基づいて、コンデンサ5〜7に含まれる高調波電圧成分を検出して三相正弦波に基づく仮想中性点電位から見た相高調波電圧値Vrh,Vsh、Vthに変換する高調波検出回路である。
【0035】
図13は補正信号発生回路34が補正信号Vdutyhを出力して高調波を抑制するための制御ブロックを示す。図において、60〜65、67、68は上記実施の形態1の図7で示した同様のもの、66aはリアクトル65を流れる電流isにおける高調波成分を抽出するフィルタ、84はフィルタ66aの後段に設けられた積分器である。
このようにリアクトル65を流れる電流isを検出してフィルタ66aにて高調波成分を抽出し、積分器84を介して高調波電圧を演算する。これがゼロとなるように制御器60により交流変換部61の電流指令i*を与え、コンデンサ63に電流imを印加する。この場合、フィルタ66aおよび積分器84が高調波検出回路83に相当し、高調波検出回路83は仮想中性点電位から見た相高調波電圧値Vrh、Vsh、Vthを出力する。なお、積分器84のゲインを構成するCfは、コンデンサ5〜7の仮想中性点から見た静電容量である。
【0036】
この実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様に、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することによりフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制するため、交流系統の整数次以外の次数の高調波成分も抑制でき、このような高調波抑制制御を特別な演算を必要とせず簡便な装置で実現でき、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、系統電源1の電流を検出して高調波電圧成分(電気的共振)を検出してこれを抑制するため、上記実施の形態1と同様に容易で確実に電気的共振を検出して抑制できる。また、電気的共振の検出のための電流検出器80〜82は、電力変換装置の入力電流過電流保護回路と共通に利用できる。
【0037】
なお、この実施の形態では、電気的共振の検出に電圧検出器20〜22を用いないため、線間電圧Vrs、Vst、Vtrを検出する電圧検出器20〜22をコンデンサ5〜7に設ける代わりに、系統電源1とリアクトル2〜4との間に設けても良く、同様の効果が得られる。
【0038】
また実施の形態2で示した直流電流演算回路75をこの実施の形態3に適用しても良く、交流変換部の出力電流imを、直流電流idcに基づいて所望の値に制御できるため、入力電力の大きさに関わらず高調波抑制に係る所望の効果を得ることができる。
【0039】
また、図14に示すような別例による3相対3相電力変換装置についても上記実施の形態1〜3と同様に、系統電源1における高調波電圧を抑制することができる。図において90〜95は双方向の電流が任意にオンオフできるスイッチング素子、96〜101は単方向の電流が任意にオンオフできるスイッチング素子である。このような電力変換装置においても、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することにより、実施の形態1〜3と同様にフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による系統位相検出回路および系統比率演算回路の動作を説明するための系統電圧の波形図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電力変換装置の制御を説明する等価回路図である。
【図4】この発明の実施の形態1による電気的共振を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1による電力変換装置のr相選択時の等価回路図である。
【図6】この発明の実施の形態1による電力変換装置の相電圧に基づく等価回路図である。
【図7】この発明の実施の形態1による電力変換装置の制御ブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態1による電力変換装置の制御を説明するフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1による電力変換装置の動作選択を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2による電力変換装置の構成図である。
【図11】この発明の実施の形態2による電力変換装置の制御ブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態3による電力変換装置の構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3による電力変換装置の制御ブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態3の別例による電力変換装置の構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1 交流電源としての系統電源、2〜4,41 リアクトル、
5〜7,42,63 コンデンサ、8〜16,90〜101 スイッチング素子、
20〜22 電圧検出器、30 系統位相検出回路、31 系統比率演算回路、
32 PWM制御回路、33,83 高調波検出回路、
34,76 比率演算補正手段としての補正信号発生回路、40 相系統電圧、
43 電流源、61,71 電力変換部としての交流変換部、75 直流電流演算回路、
80〜82 電流検出器、84 積分器、idc 直流電流、
Vrh,Vsh,Vth 相高調波電圧値、Vduty 選択比率、
Vdutyh 比率補正信号。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、特に、スイッチング素子を用いて交流電源電圧を任意の交流電圧に変換する3相対3相電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の3相対3相電力変換装置には、出力電圧および出力電流を制御すると共に、入力電流の位相に基づいて波形制御を行うものがある。この電力変換装置では、複数のスイッチで構成される主回路により系統電源から任意の交流出力を得るために、系統電源の周波数よりも充分に高い所定の周波数による周期毎に、系統電源のr、s、t相から位相に基づいて2つの相を選択して各々の選択比率を演算してPWM制御を行う。これにより入力力率の良好な3相対3相電力変換が行える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また従来の交流−交流電力変換装置で、入力電圧に含まれる高調波成分の影響を抑制するものでは、入力側の瞬時有効電力が一定になるように入力電流を制御するものがある。この電力変換装置では、3相交流電源からの入力電圧を検出する電圧検出手段と、入力側の瞬時有効電力が一定になるように制御を行う瞬時有効電力一定化手段とを備え、この瞬時有効電力一定化手段により求められた入力電流の高調波成分を入力電流基本波指令に重畳して電力変換装置の入力電流指令を生成する。これにより交流系統に存在する高調波電圧の影響を受けずに、電力変換装置の出力電圧に含まれる歪みを抑制する(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−177166号公報
【特許文献2】特開2004−248430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の電力変換装置では、通常、リアクトルおよびコンデンサから成るフィルタ回路を交流電源側に備えて、入力電圧に含まれる高調波成分を抑制し、またPWM制御に伴う交流電源側への高調波電流を低減していた。しかしながら、入力電圧に含まれる高調波成分に起因して発生するフィルタ回路での共振により電力変換装置の出力電圧に歪みが発生するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2記載の電力変換装置では、フィルタ回路などのエネルギバッファを必要とせずに入力電圧に含まれる高調波成分の影響を抑制するものであるが、入力電流の高調波成分を算出して電流指令に重畳するため、高調波の抑制に伴う演算量が多くなり高速の制御装置が必要であった。また抑制対象となる高調波は、周波数が交流系統の整数次のみであり、整数次以外の任意の周波数の高調波については考慮されていないという問題があった。
【0007】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、入力電圧に含まれる高調波成分の影響を、特定の周波数に限らず広範囲に効果的に抑制でき、複雑な演算を要することなく簡便な装置構成で歪みのない出力電圧が高精度に得られる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による電力変換装置は、複数のスイッチング素子で構成され3相交流電源からの3相交流電圧を任意の周波数及び振幅を持つ3相交流電圧に変換する主回路と、リアクトルおよびコンデンサを含み上記主回路の上記3相交流電源側に接続されたフィルタ回路とを備え、所定の周期毎に上記3相交流電源の位相に基づいて該3相交流電源の共通選択される1相を決定すると共に、他の2相の電圧比から該2相の各選択比率を演算する系統比率演算手段を有して、該選択された相およびその選択比率に応じて上記主回路がPWM制御される。そして、上記フィルタ回路における高調波電圧成分から電気的共振を検出する手段と、上記系統比率演算手段にて上記選択比率を演算する2相の該各選択比率を、検出された上記電気的共振を抑制するように補正する比率演算補正手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
このような電力変換装置では、入力電圧に含まれる高調波成分の影響を入力側に接続されるフィルタ回路で抑制すると共に、フィルタ回路での共振を抑制して共振により発生する不要な電流や電圧を抑制できる。このため、複雑な演算を要することなく簡便な装置構成で歪みのない出力電圧が高精度に得られる。また共振により発生する不要な電磁騒音を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置を図について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置の構成を示す図であり、図1(a)は主回路構成を、図1(b)は制御回路構成を示すものである。図1(a)に示すように、電力変換装置の主回路は、複数のスイッチング素子8〜16と、リアクトル2〜4およびコンデンサ5〜7から成るフィルタ回路とを備えて、3相交流電源としての系統電源1からの3相交流電圧を任意の周波数及び振幅を持つ3相交流電圧に変換する。20〜22はコンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを検出する電圧検出器である。
また、複数のスイッチング素子8〜16により電力変換部としての交流変換部を構成すると共に、交流変換部8〜16が発生するPWM制御に伴う高調波電流をリアクトル2〜4およびコンデンサ5〜7から成るフィルタ回路によりフィルタリングして、系統電源1への高調波電流を低減する。
【0011】
また、制御回路は、図1(b)に示すように、コンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを入力し系統電源1の位相に基づいてr、s、t相から2つの相を選択する系統位相検出回路30と、選択した2つの相の各々の選択比率を演算する系統比率演算回路31と、交流出力の指令に従いPWM制御によりスイッチング素子8〜16のオンオフ信号を作成してゲート信号として出力するPWM制御回路32と、コンデンサ5〜7に含まれる高調波電圧成分を検出して三相正弦波に基づく仮想中性点電位から見た相高調波電圧値に変換する高調波検出回路33と、2つの選択した相に対応する相高調波電圧値に基づき、系統比率演算回路31での比率に補正信号を与える比率演算補正手段としての補正信号発生回路34とを備える。
【0012】
この発明の系統比率演算手段を構成する系統位相検出回路30および系統比率演算回路31を用いた制御について説明する。交流変換部のスイッチング素子8〜16のオンオフにより系統電源1から任意の交流出力を得るために、系統電源1の周波数よりも充分に高い(例えば100倍など)所定の周波数による周期毎に、系統位相検出回路30により系統電源のr、s、t相から2つの相を選択して、系統比率演算回路31により選択した2つの相の各々の選択比率を演算する。入力力率である系統電源1の力率をほぼ1とするための選択比率について以下に述べる。
系統電源1の例えば60度期間毎に振幅絶対値が最も大きくなる相を固定的に選択する。そして残りの2相の選択比率については、各々の相電圧の比率をもとに選択する。従って系統電源1の位相に基づいて随時選択比率は変化する。
例えば系統電源1の各相電圧が図2に示す場合、r、s、t相の電圧er、es、etのうちetの振幅絶対値が最も大きいためt相をこの期間で固定的に選択し、残りのr相、s相の2相についてはerとesの電圧比に分ける。従って時刻Aにおいてはerとesが等しいため、当該時点においてはr相とs相との選択比率が同一となるようにする。
【0013】
図3は系統位相検出回路30により2つの相を選択した場合の等価回路図を示しており、図3(a)はr相を選択した場合、図3(b)はs相を選択した場合である。なおt相は共通に選択される。そして、所定のPWM幅をr相とs相との選択比率で分けて、線間電圧であるVtrとVstとをその分けられた時間だけそれぞれ利用する。
【0014】
一方、高調波検出回路33では、コンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを入力してコンデンサ5〜7の電圧に含まれる高調波電圧成分Vrsh、Vsth、Vtrhを検出する。そして、以下の式(1)に従い、高調波電圧成分Vrsh、Vsth、Vtrhを3相正弦波に基づく仮想中性点電位から見た相高調波電圧値Vrh、Vsh、Vthに変換する。
Vrh=−(Vtrh−Vrsh)/3
Vsh=−(2Vrsh+Vtrh)/3
Vth=(2Vtrh+Vrsh)/3 ・・・(1)
【0015】
なお、高調波電圧成分Vrsh、Vsth、Vtrhはリアクトル2〜4およびコンデンサ5〜7を含むフィルタ回路の共振周波数に概一致するものであり、例えば系統電源1に含まれる高調波電圧により発生する。即ち、高調波検出回路33では、フィルタ回路における高調波電圧成分からフィルタ回路での電気的共振を検出するものである。
共振によるゲイン特性の概略図を図4に示す。フィルタ回路の共振周波数はfrであり、このときのゲインはGrである。なお共振周波数frの近傍においてもゲインが0以上となる。例えば周波数fr1では、frでのゲインGrよりは低いもののゲインGr1となり、系統電源1における高調波電圧成分の周波数がfr1にある場合にはゲインGr1だけ増幅される。従って共振周波数fr及びその近傍を含む周波数成分を、この場合の電気的共振とする。
【0016】
次いで、補正信号発生回路34では、選択したr相とs相との2相に対応する相高調波電圧値Vrh、Vshに基づき、系統比率演算回路31での選択比率に補正信号Vdutyhを与える。
系統比率演算回路31では、上述したように選択された2つの相の各々の選択比率Vdutyを演算するものであるが、その際、補正信号発生回路34からの補正信号Vdutyhにより選択比率を補正して演算する。
PWM制御回路32では、交流出力の指令に従って演算された所定のPWM幅をr相とs相との選択比率で分けて、PWM制御によりスイッチング素子8〜16のオンオフ信号を作成してゲート信号として出力する。
【0017】
選択比率の補正について以下に詳述する。図5は、例えばr相を選択しているときの電力変換装置の等価回路を示す。
図中、50は仮想中性点電位からみたコンデンサであり、図1で示すコンデンサ5〜7のΔ結線をY結線に等価変換したときのコンデンサに相当する。ここでコンデンサ50の電圧Vrnが電気的共振により跳ね上がるときは、交流変換部によりコンデンサ50を放電させればコンデンサ50の電圧Vrnが低減でき、電気的共振を誘起するエネルギーを低減できて電気的共振が抑制できる。このため、例えば、系統電源1からの入力電力が正の場合、即ち交流変換部の出力電力が正の場合は、r相選択の時比率(選択比率)を長くすることにより、コンデンサ50の放電を促して電気的共振を抑制する。
【0018】
図1で示す電力変換装置における相電圧に基づく等価回路を図6に示す。図6において40は相系統電圧、41はリアクトル、42はコンデンサ、43は交流変換部が発生する電流を等価的に電流源imとして示す。
図7は補正信号発生回路34が補正信号Vdutyhを出力して高調波を抑制するための制御ブロックを示す。図において、60は制御器、61は交流変換部、62は加算器、63はコンデンサ、64は減算器、65はリアクトル、66はフィルタ、67は減算器、68はこの制御ブロックの制御対象である。コンデンサ63は図6で示すコンデンサ42に相当し、リアクトル65は図6内のリアクトル41に相当する。加算器62、コンデンサ63、減算器64、リアクトル65により図6の等価回路が表現される。
【0019】
図6、図7に示すように、制御器60が電流指令i*を出力し、この電流指令i*に従って交流変換部61は出力電流im(43)を出力する。リアクトル65(41)に流れる電流isと交流変換部61の出力電流im(43)との和が加算器62で演算され、コンデンサ63(42)を充電してコンデンサ63(42)の電圧Vcが発生する。コンデンサ63(42)の電圧Vcと系統電源40の相系統電圧Vsとが減算器64で減算され、リアクトル65(41)の両端電圧が出力される。リアクトル65(41)に流れる電流isは図6の矢印の向きを正とするため、リアクトル65(41)の極性は負となり、isが得られる。
またフィルタ66はコンデンサ63(42)の電圧Vcにおける、共振による高調波成分を含む帯域を抽出する。減算器67にて指令値「0」から減算され、制御器60に入力され、電流指令i*を出力する。
【0020】
このようにコンデンサ63(42)の電圧Vcを検出し、電気的共振による高調波成分を含む帯域を抽出し、これがゼロとなるように制御器60により交流変換部61の電流指令i*を与え、コンデンサ63(42)に電流imを印加する。コンデンサ63(42)の電圧Vcが上昇すると、電流imによりコンデンサ63(42)を放電させ、逆にコンデンサ63(42)の電圧Vcが下降すると、電流imによりコンデンサ63を充電する。これにより、コンデンサ63(42)の電圧Vcにおける電気的共振による高調波成分を抑制する。ここで制御器60と減算器67が図1で示す補正信号発生回路34に相当し、フィルタ66が図1で示す高調波検出回路34に相当する。また、制御器60が出力する電流指令i*が、補正信号発生回路34の出力である補正信号Vdutyhに相当し、電流指令i*に応じた補正値を演算して選択比率Vdutyが補正演算される。
【0021】
コンデンサ5〜7(42、63)の電気的共振による高調波成分を抑制する制御のフローチャートを図8に示す。
まず、高調波検出回路33にて、コンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrを入力して高調波電圧成分を検出し、仮想中性点電位から見た相高調波電圧値(Vrh、Vsh、Vth)を演算する(ステップ200)。次に、系統位相検出回路30にて、系統の2相を選択し選択信号Vselを出力する。ここでは図3に示したようにr相とs相を選択したものとする(ステップ201)。
【0022】
次に、補正信号発生回路34では、選択した系統の2相、ここではr相とs相に応じて、ステップ200にて演算した相高調波電圧値(Vrh、Vsh)を選択する(ステップ202)。続いて、系統入力電力の極性を検出し、交流変換部の出力に接続される負荷が力行か回生かを判別し(ステップ203)、系統比率演算回路31に与える選択比率の補正信号Vdutyhを演算する(ステップ204)。
次に、補正信号発生回路34からの補正信号Vdutyhと系統位相検出回路30からの選択信号Vselが系統比率演算回路31に入力され、系統比率演算回路31において、r相とs相との選択比率Vdutyを演算する際、補正信号Vdutyhが反映される(ステップ205)。
そして、系統比率演算回路31からの選択比率Vdutyに基づいたPWM制御により電力変換部を制御することで、コンデンサ5〜7の電気的共振による高調波電圧成分を抑制する。
【0023】
上記ステップ204における補正信号Vdutyhの演算内容を表に示すと図9のようになる。相高調波電圧値(Vrh、Vsh)の極性と絶対値の比較、系統入力電力の極性により合計16通りのケースに分かれる。
ケース1の場合について説明する。この場合、Vrhの極性とVshの極性が共に正であり、系統入力電力の極性も正であることから力行負荷である。また、Vrhの絶対値の方がVshよりも大きい。このため、図5で示したようなr相に対する仮想中性点電位から見たコンデンサ50の放電を促すために、r相の選択比率(選択duty)を上昇させるとよい。一方s相についても同様にs相の選択比率を上昇させるとよいが、元来r相の選択比率とs相の選択比率の和が「1」となるように制御されるため、r相とs相の選択比率を同時に上昇させることは不可である。従って優先的にVrhとVshの絶対値の大きい方、ここではVrhを高調波抑制対象として、r相の選択比率を増加させる。
なお、相高調波電圧値(Vrh、Vsh、Vth)は各相の電気的共振の振幅を示すものであり、即ち、選択された2相について電気的共振の振幅(絶対値)が大きい方の相の選択比率を、その相における電気的共振を抑制するように補正する。
【0024】
ケース2では系統入力電力の極性が負であるためr相の選択比率を減少させることにより負荷からコンデンサへの充電を抑制してr相の高調波電圧成分を抑制する。
ケース3、ケース4ではVshの絶対値の方が大きいため、s相を選択しケース1、ケース2と同様の動作を行う。
ケース5〜ケース8ではVrhとVshの極性が共に負であるため、ケース1〜ケース4の場合の選択比率の増加、減少を逆の動作とさせることにより高調波電圧成分を抑制する。
ケース9ではVrhの極性が正でVshの極性が負であり、かつVrhの絶対値の方が大きいため、r相の高調波電圧成分を抑制対象とする。また、系統入力電力の極性は正であるから、コンデンサの放電を促すべくr相の選択比率を増加させる。
ケース10では系統入力電力の極性が負であるためr相の選択比率を減少させることにより負荷からコンデンサへの充電を抑制してr相の高調波電圧成分を抑制する。
ケース11、ケース12ではVshの絶対値の方が大きいため、s相を選択しケース9、ケース10と同様の動作を行う。
ケース13〜ケース16ではケース9〜ケース12に対してVrhとVshの極性が各々入れ替わるため、ケース9〜ケース12の場合の選択比率の増加、減少を逆の動作とさせることにより高調波電圧成分を抑制する。
【0025】
以上のように、系統位相検出回路30によりr相とs相を選択した場合について述べたが、他の相を選択した場合も同様である。
なお各ケース1〜16の選択比率の増加分に対応する補正信号Vdutyhは、上述したように図7で示した電流指令i*に相当し、図9のケース選択動作に従い、交流変換部61にて電流imが出力される。ここで電流imは交流変換部61に接続される負荷量によりその大きさが決まる。
なお図1で示す電力変換装置の構成では、系統入力電力の極性を検出する回路の図示を省略しているが、例えば系統入力電流を検出し該検出値とコンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrとにより入力電力の極性を検出してもよい。またPWM制御回路32にて用いる交流出力の指令、即ち、交流変換部の出力における負荷電流や負荷電圧の指令値もしくは検出値から入力電力の極性を検出してもよい。
【0026】
このように系統電源1に含まれる高調波電圧によりフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制することができるため、電気的共振により発生する不要な電流や電圧を抑制することができ歪みのない出力電圧が得られる。また共振により発生する不要な電磁騒音も抑制することができる。
また、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することにより電気的共振を抑制するため、電力変換装置の交流出力指令は変化せず、高調波抑制による歪みの低減効果を得ながらかつ出力電圧には何ら影響を及ぼすことが無く、指令値通りの出力電圧を得ることができる。
またコンデンサ5〜7の電圧Vrs、Vst、Vtrにおける高調波電圧成分を検出して電気的共振を検出するため、高調波電圧成分を抽出するために特別な演算を必要とせず簡便な装置で実現することができる。また抑制対象とする高調波の周波数は任意の次数となり、交流系統の整数次以外の次数(インターハーモニクスなど)の高調波成分についても抑制することができる。
【0027】
また、選択された2相について電気的共振の振幅(絶対値)が大きい方の相の選択比率を、その相における電気的共振を抑制するように補正するため、その時点で大きい電気的共振を常に抑制することができ、容易で確実に電気的共振を抑制できる。
また、系統電源の各相の電力極性および電気的共振の振幅に基づいて選択比率を補正するため、確実に電気的共振を抑制できる。さらに、補正対象相に対してコンデンサの電圧を調整する電流指令を演算し、この電流指令に応じた選択比率の補正値を演算するため、電気的共振の抑制制御が信頼性よく高精度に実現できる。
【0028】
また電力変換装置を接続する系統インピーダンスにより、フィルタ回路を構成するリアクトル2〜4に更にインダクタンス成分が重畳され共振周波数が変化しても、制御ブロックは、図7で示すようにフィードバックループ構成であるため自動的に高調波電圧(電気的共振)を抑制することができる。
【0029】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、入力電力の極性に応じて選択比率の補正の処置を選択するものであった。図7における制御器60は例えば一定ゲインK倍といった比例器により構成され、制御器60の出力であって選択比率の補正信号Vdutyhに相当する電流指令i*は入力電力の大きさに依存しない。これに対し、交流変換部61が出力する電流imの大きさは系統入力電力の大きさにより変化するため、常に所望の電流imとならず、高調波抑制効果は入力電力に依存することになる。
図10は、この発明の実施の形態2による電力変換装置の構成を示す図であり、図10(a)は主回路構成を、図10(b)は制御回路構成を示すものである。図10(a)に示す主回路構成は、上記実施の形態1の図1(a)で示したものと同様である。図10(b)に示す制御回路構成については、30〜33は上記実施の形態1と同様のもの、75は入力電力に応じて変化する直流等価電流としての直流電流idcを演算する直流電流演算回路、76は選択した2相に対応する相高調波電圧値および直流電流idcに基づき、系統比率演算回路31での比率に補正信号Vdutyhを与える比率演算補正手段としての補正信号発生回路である。
【0030】
ここで直流電流idcとは、例えば図3(a)に示す回路では、系統電源1のr相とt相との間に接続されるスイッチング素子8〜10、14〜16からなる交流変換部の入力側(コンデンサ接続側)を流れる電流である。r相を選択した図3(a)の状態とs相を選択した図3(b)の状態とは所定の選択比率により互いに切替るが、切替速度は交流変換部に接続される負荷の変動よりも充分早いものとして良く、図3(a)、図3(b)のいずれの状態も直流電流idcは概同等と見なせる。
直流電流idcの検出は、以下のように演算する。まず、r相とs相との選択比率に応じた直流電圧vdcが次式より得られる。
vdc=(Vtr・Vr+Vst・Vs)/(Vr+Vs)
入力電力powが既知であると、直流電流idcは次式で演算できる。
idc=pow/vdc
なお、Vr、Vsは系統電源1のr相とs相の相電圧、Vtr、Vstはコンデンサ7、6の電圧として検出される線間電圧である。
【0031】
図11は補正信号発生回路76が補正信号Vdutyhを出力して高調波を抑制するための制御ブロックを示す。図において、60は制御器、71は交流変換部、62は加算器、63はコンデンサ、64は減算器、65はリアクトル、66はフィルタ、67は減算器、68は制御対象、70は除算器である。
除算器70は直流電流演算回路75に相当し、直流電圧vdcおよび入力電力powから直流電流idcを出力する。上記実施の形態1の図6、図7を用いて説明したように、制御器60の出力である電流指令i*が、高調波電圧成分を低減するための指令となる。交流変換部71は電流指令i*に従った電流imを出力するように、交流変換部71の選択比率が決められる。この場合の選択比率とは、r相を選択する図3(a)の状態あるいはs相を選択する図3(b)の状態の選択比率に相当する。
【0032】
ここで、仮想中性点電位からみたr相のコンデンサの電圧Vrnが正極性でありr相の高調波電圧(電気的共振)を抑制する場合を考えると、電流指令i*は電圧Vrnを低減する方向となる。このr相を選択する期間を時間Δtだけ増加させると、r相の選択期間とs相の選択期間との和をTとしたとき、(Δt/T)・idcで求められる電流imが、電流指令i*に従ってr相に重畳して流れる。これによりr相のコンデンサの電圧Vrnが低減して電気的共振が抑制される。
【0033】
この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することによりフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制するため、交流系統の整数次以外の次数の高調波成分も抑制でき、このような高調波抑制制御を特別な演算を必要とせず簡便な装置で実現でき、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
さらに、制御器60が出力する電流指令i*に従って、交流変換部71の出力電流imを、直流電流idcに基づいて所望の値に制御できるため、入力電力の大きさに関わらず高調波抑制に係る所望の効果を得ることができる。
【0034】
実施の形態3.
図12は、この発明の実施の形態3による電力変換装置の構成を示す図であり、図12(a)は主回路構成を、図12(b)は制御回路構成を示すものである。図12(a)に示す主回路構成は、上記実施の形態1の図1(a)で示した構成に、フィルタ回路内のリアクトル2〜4を流れる電流を検出する電流検出器80〜82を設けたものである。また、図12(b)に示す制御回路構成については、30〜32、34は上記実施の形態1と同様のもの、83は電流検出器80〜82で検出した電流値ir、is、itに基づいて、コンデンサ5〜7に含まれる高調波電圧成分を検出して三相正弦波に基づく仮想中性点電位から見た相高調波電圧値Vrh,Vsh、Vthに変換する高調波検出回路である。
【0035】
図13は補正信号発生回路34が補正信号Vdutyhを出力して高調波を抑制するための制御ブロックを示す。図において、60〜65、67、68は上記実施の形態1の図7で示した同様のもの、66aはリアクトル65を流れる電流isにおける高調波成分を抽出するフィルタ、84はフィルタ66aの後段に設けられた積分器である。
このようにリアクトル65を流れる電流isを検出してフィルタ66aにて高調波成分を抽出し、積分器84を介して高調波電圧を演算する。これがゼロとなるように制御器60により交流変換部61の電流指令i*を与え、コンデンサ63に電流imを印加する。この場合、フィルタ66aおよび積分器84が高調波検出回路83に相当し、高調波検出回路83は仮想中性点電位から見た相高調波電圧値Vrh、Vsh、Vthを出力する。なお、積分器84のゲインを構成するCfは、コンデンサ5〜7の仮想中性点から見た静電容量である。
【0036】
この実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様に、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することによりフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制するため、交流系統の整数次以外の次数の高調波成分も抑制でき、このような高調波抑制制御を特別な演算を必要とせず簡便な装置で実現でき、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、系統電源1の電流を検出して高調波電圧成分(電気的共振)を検出してこれを抑制するため、上記実施の形態1と同様に容易で確実に電気的共振を検出して抑制できる。また、電気的共振の検出のための電流検出器80〜82は、電力変換装置の入力電流過電流保護回路と共通に利用できる。
【0037】
なお、この実施の形態では、電気的共振の検出に電圧検出器20〜22を用いないため、線間電圧Vrs、Vst、Vtrを検出する電圧検出器20〜22をコンデンサ5〜7に設ける代わりに、系統電源1とリアクトル2〜4との間に設けても良く、同様の効果が得られる。
【0038】
また実施の形態2で示した直流電流演算回路75をこの実施の形態3に適用しても良く、交流変換部の出力電流imを、直流電流idcに基づいて所望の値に制御できるため、入力電力の大きさに関わらず高調波抑制に係る所望の効果を得ることができる。
【0039】
また、図14に示すような別例による3相対3相電力変換装置についても上記実施の形態1〜3と同様に、系統電源1における高調波電圧を抑制することができる。図において90〜95は双方向の電流が任意にオンオフできるスイッチング素子、96〜101は単方向の電流が任意にオンオフできるスイッチング素子である。このような電力変換装置においても、系統電源1の2相の選択比率を適宜補正することにより、実施の形態1〜3と同様にフィルタ回路に発生する電気的共振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による系統位相検出回路および系統比率演算回路の動作を説明するための系統電圧の波形図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電力変換装置の制御を説明する等価回路図である。
【図4】この発明の実施の形態1による電気的共振を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1による電力変換装置のr相選択時の等価回路図である。
【図6】この発明の実施の形態1による電力変換装置の相電圧に基づく等価回路図である。
【図7】この発明の実施の形態1による電力変換装置の制御ブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態1による電力変換装置の制御を説明するフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1による電力変換装置の動作選択を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2による電力変換装置の構成図である。
【図11】この発明の実施の形態2による電力変換装置の制御ブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態3による電力変換装置の構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3による電力変換装置の制御ブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態3の別例による電力変換装置の構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1 交流電源としての系統電源、2〜4,41 リアクトル、
5〜7,42,63 コンデンサ、8〜16,90〜101 スイッチング素子、
20〜22 電圧検出器、30 系統位相検出回路、31 系統比率演算回路、
32 PWM制御回路、33,83 高調波検出回路、
34,76 比率演算補正手段としての補正信号発生回路、40 相系統電圧、
43 電流源、61,71 電力変換部としての交流変換部、75 直流電流演算回路、
80〜82 電流検出器、84 積分器、idc 直流電流、
Vrh,Vsh,Vth 相高調波電圧値、Vduty 選択比率、
Vdutyh 比率補正信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子で構成され3相交流電源からの3相交流電圧を任意の周波数及び振幅を持つ3相交流電圧に変換する電力変換部と、リアクトルおよびコンデンサを含み上記電力変換部の上記3相交流電源側に接続されたフィルタ回路とを備え、所定の周期毎に上記3相交流電源の位相に基づいて該3相交流電源の共通選択される1相を決定すると共に、他の2相の電圧比から該2相の各選択比率を演算する系統比率演算手段を有して、該選択された相およびその選択比率に応じて上記電力変換部がPWM制御される電力変換装置において、
上記フィルタ回路における高調波電圧成分から電気的共振を検出する手段と、上記系統比率演算手段にて上記選択比率を演算する2相の該各選択比率を、検出された上記電気的共振を抑制するように補正する比率演算補正手段とを備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
上記比率演算補正手段は、上記選択比率を演算する2相の内、検出された上記電気的共振の振幅(絶対値)が大きい方の相の該選択比率を、当該相における該電気的共振を抑制するように補正することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
上記比率演算補正手段は、上記3相交流電源から入力される各相の電力極性及び上記電気的共振の振幅に基づいて上記選択比率を補正することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記3相交流電源から入力される電力及び電圧から直流等価電流を検出し、上記比率演算補正手段は、上記直流等価電流及び上記電気的共振の振幅に基づいて上記選択比率を補正することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記選択比率の補正は、上記補正対象相に対して上記コンデンサの電圧を調整する電流指令を演算し、該電流指令に応じた上記選択比率の補正値を演算して行うことを特徴とする請求項3または4記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記電気的共振を検出する手段は、上記フィルタ回路におけるコンデンサの電圧における高調波電圧成分を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記電気的共振を検出する手段は、上記フィルタ回路におけるリアクトルを流れる電流を検出し該電流を積分して演算した電圧の高調波電圧成分を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項1】
複数のスイッチング素子で構成され3相交流電源からの3相交流電圧を任意の周波数及び振幅を持つ3相交流電圧に変換する電力変換部と、リアクトルおよびコンデンサを含み上記電力変換部の上記3相交流電源側に接続されたフィルタ回路とを備え、所定の周期毎に上記3相交流電源の位相に基づいて該3相交流電源の共通選択される1相を決定すると共に、他の2相の電圧比から該2相の各選択比率を演算する系統比率演算手段を有して、該選択された相およびその選択比率に応じて上記電力変換部がPWM制御される電力変換装置において、
上記フィルタ回路における高調波電圧成分から電気的共振を検出する手段と、上記系統比率演算手段にて上記選択比率を演算する2相の該各選択比率を、検出された上記電気的共振を抑制するように補正する比率演算補正手段とを備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
上記比率演算補正手段は、上記選択比率を演算する2相の内、検出された上記電気的共振の振幅(絶対値)が大きい方の相の該選択比率を、当該相における該電気的共振を抑制するように補正することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
上記比率演算補正手段は、上記3相交流電源から入力される各相の電力極性及び上記電気的共振の振幅に基づいて上記選択比率を補正することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記3相交流電源から入力される電力及び電圧から直流等価電流を検出し、上記比率演算補正手段は、上記直流等価電流及び上記電気的共振の振幅に基づいて上記選択比率を補正することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記選択比率の補正は、上記補正対象相に対して上記コンデンサの電圧を調整する電流指令を演算し、該電流指令に応じた上記選択比率の補正値を演算して行うことを特徴とする請求項3または4記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記電気的共振を検出する手段は、上記フィルタ回路におけるコンデンサの電圧における高調波電圧成分を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記電気的共振を検出する手段は、上記フィルタ回路におけるリアクトルを流れる電流を検出し該電流を積分して演算した電圧の高調波電圧成分を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−318926(P2007−318926A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146301(P2006−146301)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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