説明

電力変換装置

【課題】燃料電池を系統電源に系統連系するために好適な電力変換装置を提供する。
【解決手段】高周波絶縁トランスを用いたフルブリッジ方式のDC‐DCコンバータにおいて、トランスの1次側は2並列に接続される。トランスの2次側は2直列に接続される。直列接続されて1系統にまとめられた2次側出力は次段の1組の整流回路に接続される。更に、DC‐DCコンバータの入力電流は繰返し制御によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。本発明は特に、直流電流を特性の異なる直流電流に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の主流な発電方式に対する代替手段として、燃料電池、太陽電池に例示される発電方式が注目されている。燃料電池や太陽電池は、低電圧大容量の電力を発生するのに適している。こうした電力は、より高電圧の系統と連系することが望まれている。低電圧大容量の電力を系統と連系できる高電圧の電力に変換する技術が望まれている。
【0003】
特許文献1には、燃料電池のように電圧が低く電流の多い電源を入力とする系統連系インバータにおける電力損失を減らし、直流電力源の出力電流リップルを改善することを目的とする系統連系インバータ装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、スイッチング損失の低減化を図り、スイッチング素子にMOS‐FETを使用した場合、オン抵抗が低い低耐圧のMOS‐FETの使用を可能とすることを目的とするDC‐DCコンバータが記載されている。
【特許文献1】特開2004‐274893号公報
【特許文献2】特許第3463807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低電圧大電流の電源の電圧を昇圧するのに適した電力変換装置を提供することである。
本発明の他の目的は、低電圧大電流の電源の電圧を高効率で昇圧するのに適した電力変換装置を提供することである。
本発明の更に他の目的は、低電圧大電流の電源の電圧を昇圧するコンパクトな電力変換装置を提供することである。
本発明の更に他の目的は、低電圧大電流の電源の入力電流リプルを抑制して電圧を昇圧する電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
高周波絶縁トランスを用いたフルブリッジ方式のDC‐DCコンバータにおいて、トランスの1次側は2並列に接続される。トランスの2次側は2直列に接続される。直列接続されて1系統にまとめられた2次側出力は次段の1組の整流回路に接続される。更に、DC‐DCコンバータの入力電流は繰返し制御によって制御される。
【0008】
本発明による電流変換装置は、電源(2)から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部(14)と、電源(2)から第1変換部(14)と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部(16)と、第1端子対に接続された1次巻線を備えた第1トランス部(HTr1)と、第2端子対に接続された1次巻線を備えた第2トランス部(HTr2)とを備える。第1トランス部(HTr1)の2次巻線と第2トランス部(HTr2)の2次巻線とは直列に接続されて下段に出力電流を出力する。
【0009】
本発明による電力変換装置は、出力電流を整流する整流部(20)を備える。
【0010】
本発明による電力変換装置において、直流電流は電源(2)からリアクトルを介さずに第1のフルブリッジ回路と第2のフルブリッジ回路とに供給される。
【0011】
本発明による電力変換装置において、第1のフルブリッジ回路はMOSFETを用いて構成される。
【0012】
本発明による電力変換装置において、第1のフルブリッジ回路が生成する電流波形と第2のフルブリッジ回路が生成する電流波形とは波形が同じであり位相がずれている。
【0013】
本発明による電力変換装置は、電源(2)から当該電力変換装置に供給される電流の大きさを電流指令値に近づけるように第1変換部(14)と第2変換部(16)とのスイッチング動作に対して繰返し制御を行う繰返し制御部(34)を備える。
【0014】
本発明による電力変換装置は、出力電流を系統電源(30)が供給する電流と連系するように変換する連系部(22、24、26、28)を備える。
【0015】
本発明による電力変換装置は、電源(2)から当該電力変換装置に供給される電流を電流指令値に近づけるように第1変換部(14)と第2変換部(16)とのスイッチング動作に対して所定の周波数で繰返し制御を行う繰返し制御部(34)を備える。所定の周波数は、系統電源(30)の周波数の整数倍以上、好ましくは2倍以上である。
【0016】
本発明による系統連系システムは、直流電流を発生する電源(34)と、電源(34)から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部(14)と、電源(34)から第1変換部(14)と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部(16)と、第1端子対に接続された1次巻線を備えた第1トランス部(HTr1)と、第2端子対に接続された1次巻線を備えた第2トランス部(HTr2)とを備える。第1トランス部(HTr1)の2次巻線と第2トランス部(HTr2)の2次巻線とは直列に接続されて下段に出力電流を出力する。系統連系システムは更に、出力電流を系統電源(30)が供給する電流と連系するように変換する連系部(22、24、26、28)を備える。
【0017】
本発明による系統連系システムにおいて、電源(2)は燃料電池を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低電圧大電流の電源の電圧を昇圧するのに適した電力変換装置が提供される。
更に本発明によれば、低電圧大電流の電源の電圧を高効率で昇圧するのに適した電力変換装置が提供される。
更に本発明によれば、低電圧大電流の電源の電圧を昇圧するコンパクトな電力変換装置が提供される。
更に本発明によれば、低電圧大電流の電源の入力電流リプルを抑制して電圧を昇圧する電力変換装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本実施の形態における電力変換装置を用いた系統連系回路を示す。系統連系回路は、燃料電池2に接続される。燃料電池2は、固体酸化物型(SOFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体高分子型(PEFC)、リン酸型(PAFC)、直接メタノール型(DMFC)等のいずれの型でもよい。燃料電池2に代えて、他の種類の低電圧高電流を得やすい直流電流を生成する装置、例えば二次電池や太陽電池に接続されてもよい。また、図1では連係される系統を単相電源で示しているが、三相電源であってもよい。
【0020】
燃料電池2の正極と負極の間にLCフィルタ4が接続される。LCフィルタ4の後段側の正極側の配線L1と負極側の配線L2にはDC‐DCコンバータ12が接続される。DC‐DCコンバータ12は、第1変換部14、第2変換部16、トランス部18及び整流部20を含む。DC‐DCコンバータ12は燃料電池2が生成しLCフィルタ4を介して供給される直流をより高電圧の直流に変換して後段側に出力する。DC‐DCコンバータ12の後段側には平滑コンデンサ22が接続される。平滑コンデンサ22の後段側にはDC‐DCコンバータ12から平滑コンデンサ22を介して供給される直流を交流に変換するインバータ回路24が接続される。インバータ回路24の後段側にはインバータ回路24から供給される交流の高調波成分を低減するACフィルタ26が接続される。ACフィルタ26の後段側は連系リレー28を介して例えば、単相200Vの系統電源30と連系接続される。
【0021】
配線L1には配線L1を流れる電流を検出して電流検出値DCIを生成する電流計6が設置される。系統連系回路は減算器8を備える。減算器8は、外部の回路から入力する電流指令値DCI*と電流検出値DCIとの差を出力する。系統連系回路は更に、電流制御器10を備える。電流制御器10は、減算器8が出力する差に基づいて第1変換部14と第2変換部16とのスイッチング素子を制御する。
【0022】
図2は、DC‐DCコンバータ12の回路を示す。第1変換部14はスイッチング素子G1、G2、G3及びG4を含むフルブリッジ回路を備える。第2変換部16はスイッチング素子G5、G6、G7及びG8を含むフルブリッジ回路を備える。スイッチング素子G1〜G8としてはIGBT、バイポーラトランジスタ、MOSFET等を使用することが可能である。本実施の形態においては、高い昇圧比を得ることが重要であるという点において、オン電圧がIGBTよりも小さいMOSFETが使用されることが好ましい。
【0023】
スイッチング素子G1のドレイン側は配線L1に接続される。スイッチング素子G1のソース側はスイッチング素子G2のドレイン側に接続される。スイッチング素子G1のソース側とスイッチング素子G2のドレイン側との間にはノードu1が設けられる。スイッチング素子G2のソース側は配線L2に接続される。
【0024】
スイッチング素子G3のドレイン側は配線L1に接続される。スイッチング素子G3のソース側はスイッチング素子G4のドレイン側に接続される。スイッチング素子G3とスイッチング素子G4との間にはノードv1が設けられる。スイッチング素子G4のソース側は配線L2に接続される。
【0025】
スイッチング素子G5のドレイン側は配線L1に接続される。スイッチング素子G5のソース側はスイッチング素子G6のドレイン側に接続される。スイッチング素子G5とスイッチング素子G6との間にはノードu2が設けられる。スイッチング素子G6のソース側は配線L2に接続される。
【0026】
スイッチング素子G7のドレイン側は配線L1に接続される。スイッチング素子G7のソース側はスイッチング素子G8のドレイン側に接続される。スイッチング素子G7とスイッチング素子G8との間にはノードv2が設けられる。スイッチング素子G8のソース側は配線L2に接続される。
【0027】
トランス部18は高周波絶縁トランスHTr1、HTr2を含む。高周波絶縁トランスHTr1の鉄芯と高周波絶縁トランスHTr2の鉄芯とは分離されている。ノードu1は高周波絶縁トランスHTr1の1次巻線の第1端に接続される。ノードv1は高周波絶縁トランスHTr1の1次巻線の第2端に接続される。ノードu2は高周波絶縁トランスHTr2の1次巻線の第1端に接続される。ノードv2は高周波絶縁トランスHTr2の1次巻線の第2端に接続される。すなわち、第1変換部14と第2変換部16とは配線L1、L2とトランス部18との間に並列に接続される。
【0028】
このようにフルブリッジ回路と高周波絶縁トランスとを用いた昇圧回路は、大きい昇圧比を得るのに適している。そのため、低電圧大電流の電源である燃料電池2の電圧を系統連系のために昇圧する電力変換機に好適である。大きい昇圧比が得られると、セル枚数の少ない燃料電池2を用いて系統連系ができるため、コストが低減される。トランス部18の1次側が並列であるために、DC‐DCコンバータ12の入力電流が同じならば単一の高調波絶縁トランスによって電圧を昇圧する場合よりも各トランスに流れる電流が小さい。そのため、同じ線径の巻線を使用した場合に銅損を低減することができる。
【0029】
トランスの鉄芯のサイズは、その磁束密度の最大値が材質で定まるある上限値以下に収まるように選定することが必要である。トランス部18が2個のトランスを備えていることにより、2個の小型鉄芯が使用され、単一の鉄芯を用いる場合に比べて全体のサイズ(DC‐DCコンバータ12の内部におけるトランス部18の占有容積)が低減する。
【0030】
高周波絶縁トランスHTr1の2次巻線の第1端(1次巻線の第1端に対応する側)と高周波絶縁トランスHTr2の2次巻線の第2端(1次巻線の第2端に対応する側)とは全波整流回路である整流部20に接続される。高周波絶縁トランスHTr1の2次巻線の第2端(1次巻線の第2端に対応する側)と高周波絶縁トランスHTr2の2次巻線の第1端(1次巻線の第1端に対応する側)とは互いに接続される。即ち、高周波絶縁トランスHTr1と高周波絶縁トランスHTr2とは2次巻線側が直列に接続されて下段側に出力電流を出力する。その下段側には出力電流を整流する整流部20が接続される。
【0031】
トランス部18の2次側において2個のトランスが直列に接続されていることにより、各トランスの1次側に対する2次側の巻数比はトランスが単一の場合に比べて半分である。このため、同一巻線の場合は抵抗が半減する。更に、トランス18の2次側において2個のトランスが直列に接続されていることにより、2個のトランスの間に発生する循環電流を原理的に無くすことができる。これにより、2個のトランスの各々に対して個別に電流制御を行う必要がなく、1台の制御器によって電流制御が可能である。
【0032】
トランス部18は、3以上の高周波絶縁トランスを備えていてもよい。その場合、1次側は3以上の互いに並列に接続された変換部に接続される。3以上の2次側の巻線は直列に接続される。
【0033】
図3は、電流制御器10を説明するための図である。電流制御器10には減算器8が生成する電流指令値DCI*と電流検出値DCIとの差が入力する。電流制御器10は比例積分補償器32を備え、電流値を比例積分制御を実行するように制御信号を出力する。電流制御器10は更に繰返し補償器34を備える。繰返し補償器34は、所定の周波数でDC‐DCコンバータ12に入力する入力電流のリプルを低減するように繰返し制御を行うための制御信号を出力する。その所定の周波数は、系統電源30の周波数の整数倍以上であることが好ましく、2倍以上、例えば2.5倍であることが好ましい。比例積分補償器32が出力する制御信号と繰返し補償器34が出力する制御信号とは加算器36において加算されて合成制御信号として出力される。制御器10は合成制御信号を用いてスイッチング素子G1〜G8のスイッチングのタイミングを制御する。
【0034】
繰返し制御を採用することにより、入力電流リプルの低減が達成される。特に、本実施の形態におけるフルブリッジ回路と高周波絶縁トランスとを用いた昇圧回路と組み合わせることにより、大きい昇圧比と小さい入力電流リプルとが同時に達成される。入力電流リプルが低減されれば、DC‐DCコンバータ12の入力段に設置されるLCフィルタ4のリアクトルを省略できる。すなわち、第1変換部14のフルブリッジ回路と第2変換部16のフルブリッジ回路とに燃料電池2からの直流電流がリアクトルを介さずに供給される。そのため、リアクトルで発生する損失を無くすことができ、DC‐DCコンバータの変換効率が向上する。
【0035】
以上の構成を備える電力変換装置は、次のように動作する。燃料電池2が直流電流を発生する。その直流電流の電圧は例えば40V〜70V程度である。その直流電流は、LCフィルタ26においてノイズを低減され、DC‐DCコンバータ12に入力する。
【0036】
電流計6は電流検出値DCIを出力する。電力変換装置の外部から電流指令値DCI*が与えられる。減算器8は電流指令値DCI*と電流検出値DCIとの差を算出して出力する。電流制御器10は、その差を用いて比例積分補償と繰返し補償をするための合成制御信号を出力する。
【0037】
電流制御部10からの合成制御信号によってスイッチング素子G1〜G8が動作する。スイッチング素子G1とG4が同時にオン状態になり、スイッチング素子G2とG3が同時にオフ状態になると、高周波絶縁トランスHTr1の1次巻線の第1端が正電圧、第2端が負電圧となる。スイッチング素子G1とG4が同時にオフ状態になり、スイッチング素子G2とG3が同時にオン状態になると、高周波絶縁トランスHTr1の1次巻線の第1端が負電圧、第2端が正電圧となる。この繰返しによって発生する交番磁界によって高周波絶縁トランスHTr1の2次巻線に1次側に対して高電圧の交流が発生する。
【0038】
スイッチング素子G5とG8が同時にオン状態になり、スイッチング素子G6とG7が同時にオフ状態になると、高周波絶縁トランスHTr2の1次巻線の第1端が正電圧、第2端が負電圧となる。スイッチング素子G5とG8が同時にオン状態になり、スイッチング素子G6とG7が同時にオフ状態になると、高周波絶縁トランスHTr2の1次巻線の第1端が負電圧、第2端が正電圧となる。この繰返しによって発生する交番磁界によって高周波絶縁トランスHTr2の2次巻線に1次側に対して高電圧の交流が発生する。
【0039】
直列に接続された高周波絶縁トランスHTr1の2次巻線と高周波絶縁トランスHTr2の2次巻線との交流は、整流部20によって直流に変換されてDC‐DCコンバータ12の後段側に供給される。その直流の電圧は例えば360Vである。その直流は平滑コンデンサ22によって平滑化され、インバータ回路24によって交流に変換される。更に、ACフィルタ26によって高調波成分が低減され、連系リレー28を介して系統電源30との連系がなされる。
【0040】
図4は、スイッチング素子G1〜G8の動作の一例を示すタイミングチャートである。スイッチング素子G1〜G8の動作は、鋸歯状のキャリア波を用いて制御される。電流制御器10は、スイッチング素子G1〜G4を制御するための第1のキャリア波とスイッチング素子G5〜G8を制御するための第2のキャリア波とを発生する。
【0041】
図4(a)に示される鋸歯状の波形は第1のキャリア波の波形を示す。第1のキャリア波は周期的な波形を有し、時刻t1〜t4にその一周期が含まれる。時刻t1において第1のキャリア波の信号の大きさはゼロである。時刻t1〜t4の区間において第1のキャリア波の信号の大きさは1次関数的に増大し、時刻t4において所定の最大値に至る。時刻t4において第1のキャリア波の信号の大きさはパルス的に急激に低下してゼロに至る。すなわち、第1のキャリア波は右肩上がりの鋸歯状の形状を有する。
【0042】
図4(b)に示される鋸歯状の波形は第2のキャリア波の波形を示す。第2のキャリア波は周期的な波形を有し、第1のキャリア波と等しい時刻t1〜t4にその一周期が含まれる。時刻t1において第1のキャリア波の信号の大きさはゼロからパルス的に急激に立ち上がり、第1のキャリア波と同じに設定された所定の最大値に至る。時刻t1〜t4の区間において第2のキャリア波の信号の大きさは1次関数的に減少し、時刻t4においてゼロに至る。時刻t4において第2のキャリア波の信号の大きさはパルス的に急激に増大して所定の最大値に至る。すなわち、第2のキャリア波は右肩下がりの鋸歯状の形状を有する。第1のキャリア波の立ち下がり時刻と第2のキャリア波の立ち上がり時刻とは等しい。
【0043】
電流制御器10は、図4(a)に示される第1のキャリア波の信号の大きさと指令値(上述の合成制御信号の大きさ)とを比較した結果を用いてスイッチング素子G1〜G4を制御する。指令値の方が大きいとき(時刻t1〜t3)はスイッチング素子G1、G4がオンに制御され、スイッチング素子G2、G3がオフに制御される。キャリア波の信号の大きさの方が大きいとき(時刻t3〜t4)はスイッチング素子G1、G4がオフに制御され、スイッチング素子G2、G3がオンに制御される。
【0044】
電流制御器10は、図4(b)に示される第2のキャリア波の信号の大きさと、図4(a)と同一の指令値とを比較した結果を用いてスイッチング素子G5〜G8を制御する。キャリア波の信号の大きさの方が大きいとき(時刻t1〜t2)はスイッチング素子G5、G8がオフに制御され、スイッチング素子G6、G7がオンに制御される。指令値の方が大きいとき(時刻t2〜t4)はスイッチング素子G5、G8がオンに制御され、スイッチング素子G6、G7がオフに制御される。
【0045】
こうした制御によれば、スイッチング素子G1、G4がオンである時間の割合とスイッチング素子G5、G8がオンである時間の割合とは等しい。スイッチング素子G2、G3がオンである時間の割合とスイッチング素子G6、G7がオンである時間の割合とは等しい。第1変換部14が発生する電流波形と第2変換部16が発生する電流波形とは波形が同じで位相がずれている。こうした制御によれば、スイッチング素子G1、G4のオン/オフとスイッチング素子G5、G8のオン/オフが逆である時間(t1〜t2、t3〜t4)が存在する。同時に、スイッチング素子G2、G3のオン/オフとスイッチング素子G6、G7のオン/オフが逆である。そのため、電流リプルが低減されるという効果が達成される。
【0046】
図5は、スイッチング素子G1〜G8の動作の他の例を示すタイミングチャートである。スイッチング素子G1〜G8の動作は、鋸歯状のキャリア波を用いて制御される。電流制御器10は、スイッチング素子G1〜G4を制御するための第1のキャリア波とスイッチング素子G5〜G8を制御するための第2のキャリア波とを発生する。
【0047】
図5(a)に示される鋸歯状の波形は第3のキャリア波の波形を示す。第3のキャリア波は周期的な波形を有し、時刻t11〜t15にその一周期が含まれる。時刻t11において第3のキャリア波の信号の大きさはゼロである。時刻t11〜t15の区間において第3のキャリア波の信号の大きさは1次関数的に増大し、時刻t15において所定の最大値に至る。時刻t15において第3のキャリア波の信号の大きさはパルス的に急激に低下してゼロに至る。すなわち、第3のキャリア波は右肩上がりの鋸歯状の形状を有する。
【0048】
図5(b)に示される鋸歯状の波形は第4のキャリア波の波形を示す。第4のキャリア波は第3のキャリア波と相同的で周期が等しい。第3のキャリア波と第4のキャリア波とは位相がずれている。
【0049】
電流制御器10は、図5(a)に示される第3のキャリア波の信号の大きさと指令値(上述の合成制御信号の大きさ)とを比較した結果を用いてスイッチング素子G1〜G4を制御する。指令値の方が大きいとき(時刻t11〜t14)はスイッチング素子G1、G4がオンに制御され、スイッチング素子G2、G3がオフに制御される。キャリア波の信号の大きさの方が大きいとき(時刻t14〜t15)はスイッチング素子G1、G4がオフに制御され、スイッチング素子G2、G3がオンに制御される。
【0050】
電流制御器10は、図5(b)に示される第4のキャリア波の信号の大きさと、図5(a)と同一の指令値とを比較した結果を用いてスイッチング素子G5〜G8を制御する。指令値の方が大きいとき(時刻〜t12)はスイッチング素子G5、G8がオンに制御され、スイッチング素子G6、G7がオフに制御される。キャリア波の信号の大きさの方が大きいとき(時刻t12〜t13)はスイッチング素子G5、G8がオフに制御され、スイッチング素子G6、G7がオンに制御される。
【0051】
こうした制御によれば、スイッチング素子G1、G4がオンである時間の割合とスイッチング素子G5、G8がオンである時間の割合とは等しい。スイッチング素子G2、G3がオンである時間の割合とスイッチング素子G6、G7がオンである時間の割合とは等しい。第1変換部14が発生する電流波形と第2変換部16が発生する電流波形とは波形が同じで位相がずれている。こうした制御によれば、スイッチング素子G1、G4のオン/オフとスイッチング素子G5、G8のオン/オフが逆である時間(〜t11、t12〜t13)が存在する。同時に、スイッチング素子G2、G3のオン/オフとスイッチング素子G6、G7のオン/オフが逆である。そのため、図4の例と同じように電流リプルが低減されるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、DC‐DCコンバータを用いた系統連系回路を示す。
【図2】図2は、DC‐DCコンバータの回路を示す。
【図3】図3は、電流制御器を説明するための図である。
【図4】図4は、スイッチング素子の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】図5は、スイッチング素子の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0053】
2…燃料電池
4…入力フィルタ
6…電流計
8…減算器
10…電流制御器
12…DC‐DCコンバータ
14…第1変換部
16…第2変換部
18…トランス部
20…整流部
22…平滑コンデンサ
24…インバータ回路
26…ACフィルタ
28…連系リレー
30…系統電源
G1〜G8…スイッチング素子
HTr1、HTr2…高周波絶縁トランス
32…比例積分補償器
34…繰返し補償器
36…加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部と、
前記電源から前記第1変換部と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部と、
前記第1端子対に接続された1次巻線を備えた第1トランス部と、
前記第2端子対に接続された1次巻線を備えた第2トランス部
とを具備し、
前記第1トランス部の2次巻線と前記第2トランス部の2次巻線とは直列に接続されて下段に出力電流を出力する
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電力変換装置であって、
更に、前記出力電流を整流する整流部
を具備する
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された電力変換装置であって、
前記直流電流は、前記電源からリアクトルを介さずに前記第1のフルブリッジ回路と前記第2のフルブリッジ回路とに供給される
電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された電力変換装置であって、
前記第1のフルブリッジ回路はMOSFETを用いて構成される
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された電力変換装置であって、
前記第1のフルブリッジ回路が生成する電流波形と前記第2のフルブリッジ回路が生成する電流波形とは位相がずれている
電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された電力変換装置であって、
更に、前記電源から当該電力変換装置に供給される電流の大きさを電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作に対して繰返し制御を行う繰返し制御部
を具備する
電力変換装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された電力変換装置であって、
更に、前記出力電流を系統電源が供給する電流と連系するように変換する連系部
を具備する
電力変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載された電力変換装置であって、
更に、前記電源から当該電力変換装置に供給される電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作に対して所定の周波数で繰返し制御を行う繰返し制御部
を具備し、
前記所定の周波数は、前記系統電源の周波数の整数倍以上である
電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載された電力変換装置であって、
更に、前記電源から当該電力変換装置に供給される電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作に対して所定の周波数で繰返し制御を行う繰返し制御部
を具備し、
前記所定の周波数は、前記系統電源の周波数の2倍以上である
電力変換装置。
【請求項10】
直流電流を発生する電源と、
前記電源から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部と、
前記電源から前記第1変換部と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部と、
前記第1端子対に接続された1次巻線を備えた第1トランス部と、
前記第2端子対に接続された1次巻線を備えた第2トランス部
とを具備し、
前記第1トランス部の2次巻線と前記第2トランス部の2次巻線とは直列に接続されて下段に出力電流を出力し、
更に、前記出力電流を系統電源が供給する電流と連系するように変換する連系部
を具備する
系統連系システム。
【請求項11】
請求項10に記載された系統連系システムであって、
前記電源は燃料電池を含む
系統連系システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−11665(P2008−11665A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180821(P2006−180821)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】