説明

電力変換装置

【課題】太陽電池に複数台の電力変換器を並列接続して運転ができるようにする。
【解決手段】複数の太陽電池パネル1〜1に、複数台のDC/DCコンバータ5〜5を並列接続し、その内の1台のDC/DCコンバータ5が、全体として最大電力変換制御を行う一方、残余のDC/DCコンバータ52〜5が、DC/DCコンバータ5からの入力電流指令に基づいて、電流制御を行うようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルに複数台の電力変換器を並列接続して太陽電池パネルの直流電力を変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から環境への影響の少ない太陽電池、燃料電池等による分散型電源システムの開発が盛んに進められている。このような分散型電源システムでは、太陽電池等によって発電した直流電力を、電力変換器としてのDC/DCコンバータおよびインバータ等を備えるパワーコンディショナによって商用周波数の交流電力に変換し、商用電力系統と連系して負荷に供給するとともに、余剰電力を商用電力系統に逆潮流することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−161032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記DC/DCコンバータとして、高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータ(以下「高周波絶縁DC/DCコンバータ」という)があるが、かかる高周波絶縁DC/DCコンバータでは、効率のよい大容量の高周波トランスを製作するのが困難であり、大容量にすると、効率が上がらず、現状では、その容量は2kW程度である。
【0005】
このため、例えば、10kW以上といった大きな発電電力を得る場合には、例えば太陽電池パネル5台それぞれに上記容量のDC/DCコンバータを5台、個別接続して各太陽電池パネルの直流電力をそれぞれ個別変換して10kW以上の発電電力を得ることが考えられるが、このような接続形態では、発電電力が大きくなり、太陽電池パネル及びDC/DCコンバータの数が増加すれば、配線数が増大し、配線作業もより煩雑化してくる。
【0006】
そこで、複数の太陽電池パネル同士をまとめて並列接続し、また、複数台のDC/DCコンバータ同士をまとめて並列接続すると共に、各太陽電池パネルと各DC/DCコンバータとはそれぞれの並列接続一端側同士を配線接続することで全体の配線数を削減し、配線作業の簡素化を図ることが考えられる。
【0007】
しかしながら、従来では、上記各DC/DCコンバータそれぞれを、太陽電池の動作点が最大出力点に追従するように変化させ、太陽電池から最大出力を取り出す最大電力追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御を行わせると、各DC−DCコンバータそれぞれが入力電流をばらばらに制御して電力変換を行ってしまうという課題がある。
【0008】
したがって、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、より大きい発電出力を得るに際して複数台の電力変換器を並列接続する場合、それらの配線の簡素化を図る一方で、その接続方式において、太陽電池の最大電力追従制御を行う場合に、電流制御を可能とするようにした電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0010】
本発明の電力変換装置は、太陽電池に並列接続される複数台の電力変換器を備える電力変換装置であって、前記複数台の電力変換器の内の1台の電力変換器が、前記複数台全体としての前記太陽電池の最大電力追従制御を行う一方、残余の電力変換器が電流制御を行うものである。
【0011】
電力変換器は、DC/DCコンバータであってもよいし、インバータであってもよい。
【0012】
本発明の電力変換装置によれば、複数台の電力変換器の内の1台の電力変換器が、全体としての最大電力追従制御を行う一方、残余の電力変換器が、電流制御を行うので、各電力変換器がそれぞれ最大電力追従制御を行う従来例のように、電流制御できなくなるといったことがない。
【0013】
本発明の電力変換装置の一つの実施態様では、前記太陽電池が、一つの太陽電池パネルまたは出力が並列接続された複数の太陽電池パネルであり、前記1台の電力変換器が、入力電圧および前記複数台の各電力変換器の入力電流の総和に基づいて、前記最大電力追従制御を行うものであり、前記残余の電力変換器が、入力電流指令および入力電流に基づいて、電流制御を行うものである。
【0014】
前記入力電流指令は、入力電圧及び複数台の各電力変換器の入力電流の総和が与えられる前記1台の電力変換器が生成して残余の電力変換器に与えるようにしてもよいし、別途、入力電流指令を出力する制御部を設けてもよい。
【0015】
また、この入力電流指令は、電力変換器の許容電流内の電流指令である。
【0016】
この実施態様によると、複数の太陽電池パネルと複数台の電力変換装置とを並列接続して電力変換を行うので、発電電力を高めることができると共に、複数の太陽電池パネルと複数台の電力変換器とを個別にそれぞれ接続する構成に比べて、配線数を削減することができる。
【0017】
本発明の電力変換装置の好ましい実施態様では、前記入力電流指令が、前記入力電流の総和を前記複数台の電力変換器で均等に分配する電流指令である。
【0018】
この実施態様によると、複数台の電力変換器には、等しい電流が流れるように制御されることになる。
【0019】
なお、入力電流指令は、複数台の電力変換器全体として最大効率となるような電流指令としてもよく、例えば、前記残余の電力変換器が複数台存在するときには、その内の少なくとも1台を停止させるような電流指令であってもよい。
【0020】
本発明の電力変換装置の他の実施態様では、前記電力変換器が、高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータである。
【0021】
この実施態様によると、容量が比較的小さい高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータの複数台を並列接続することによって、大きな発電電力に対応することができる。
【0022】
本発明の電力変換装置の更に他の実施態様では、前記電力変換器が、昇圧チョッパと高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータとを備えている。
【0023】
この実施態様によると、太陽電池の発電電圧が低いときには、昇圧チョッパによって昇圧することによって、高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータの変換効率を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数台の電力変換器の内の1台の電力変換器が、全体としての最大電力追従制御を行う一方、残余の電力変換器が、電流制御を行うので、各電力変換器がそれぞれ最大電力追従制御を行う従来例のように、電流制御できないといったことがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る太陽光発電システムの概略構成図である。
【図2】図1の最大電力追従制御DC/DCコンバータの回路構成図である。
【図3】図1の電流制御DC/DCコンバータの回路構成図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る太陽光発電システムの概略構成図である。
【図5】図4の昇圧チョッパの回路構成図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る太陽光発電システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の一つの実施形態に係る電力変換装置を備える太陽光発電システムの概略構成図である。
【0028】
この太陽光発電システムは、直流電力源としての複数、この実施形態では5つの太陽電池パネル1〜1と、この太陽電池パネル1〜1からの直流電力を、交流電力に変換して商用電源系統である、例えば、三相電源2に連系する電力変換装置としてのパワーコンディショナ3とを備えている。5つの太陽電池パネル1〜1の出力は、逆流防止用のダイオード4〜4を介して互いに並列接続されており、その最大出力電力は、例えば、10kWである。
【0029】
パワーコンディショナ3は、入力側および出力側が並列接続された複数台、この実施形態では5台の電力変換器としての高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータ5〜5と、DC/DCコンバータ5〜5の入力電圧(太陽電池パネル1〜1の出力電圧)を検出する電圧検出回路6と、各DC/DCコンバータ5〜5の各入力電流をそれぞれ検出する電流検出器7〜7と、前記各電流検出器7〜7の検出出力に基づいて、全電流(太陽電池パネル1〜1の出力電流)を検出する全電流検出器8と、DC/DCコンバータ5〜5からの直流電力を、三相の交流電力に変換して商用の三相電源2に連系するインバータ9とを備えている。各DC/DCコンバータ5〜5の容量は、例えば、2.0kWである。
【0030】
この実施形態では、太陽電池パネル1〜1に並列接続された5台のDC/DCコンバータ5〜5の運転を可能とするために、次のように構成している。
【0031】
すなわち、5台のDC/DCコンバータ5〜55の内、1台のDC/DCコンバータ5は、5台全体として太陽電池の最大電力追従制御を行う最大電力追従制御DC/DCコンバータであり、残りの4台のDC/DCコンバータ52〜5は、最大電力追従制御DC/DCコンバータ5から与えられる入力電流指令に応じて電流制御をそれぞれ行う電流制御DC/DCコンバータである。
【0032】
図2は、最大電力追従制御DC/DCコンバータ5の回路構成図である。
【0033】
この最大電力追従制御DC/DCコンバータ5は、太陽電池パネル1〜1からの入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ10と、直流電力を交流電力に変換する高周波インバータ回路11と、この高周波インバータ回路11からの交流電力を変圧する高周波トランス12と、この高周波トランス12からの交流出力を全波整流する整流回路13と、整流回路13の出力を平滑化してインバータ9に与える平滑回路14と、上述の電圧検出回路6の検出出力および全電流検出器8の検出出力に基づいて、太陽電池パネル1〜1から最大電力を取り出すように高周波インバータ回路11のスイッチング制御を行うと共に、各DC/DCコンバータ5〜5に許容電流内で均等に電流を流すための電流指令を各電流制御DC/DCコンバータ52〜5に与える最大電力追従制御回路15とを備えている。
【0034】
高周波インバータ回路11は、フルブリッジ構成された4個のIGBTなどのスイッチング素子16a〜16dと、各スイッチング素子16a〜16dに逆並列に接続されたダイオード17a〜17dとを備えている。この高周波インバータ回路11は、最大電力追従制御回路15によって後述のようにスイッチング制御されて直流電力を高周波の交流電力に変換する。
【0035】
高周波トランス12は、高周波インバータ回路11からの交流電力を変圧して、整流回路13に供給する。
【0036】
整流回路13は、ダイオードブリッジで構成されており、高周波トランス12からの高周波電流は、整流回路13で整流され、更に、リアクトル18とコンデンサ19からなる平滑回路14で平滑化されて、図1のインバータ9に供給される。
【0037】
最大電力追従制御回路15は、電圧検出回路6によって検出される直流電圧と全電流検出器8によって検出される各DC/DCコンバータ5〜5に流れる電流の総和である全電流とに基づいて、太陽電池パネル1〜1からの直流電力が最大となるように、高周波インバータ回路11のスイッチング素子16a〜16dを制御する。
【0038】
すなわち、最大電力追従制御回路15は、いわゆる山登り法により太陽電池パネル1〜1から出力される直流電圧を変化させ、太陽電池パネル1〜1から出力される直流電力を最大出力電力になるように制御する。
【0039】
このように最大電力追従制御回路15では、5台のDC/DCコンバータ5〜5全体として最大電力追従制御を行う。
【0040】
更に、この最大電力追従制御回路15では、全電流検出器8によって検出される全電流が、各DC/DCコンバータ5〜5に均等に流れるように、各電流制御DC/DCコンバータ52〜5に対して全電流を等分した電流指令を与える。
【0041】
図3は、電流制御DC/DCコンバータ52の回路構成図であり、図2の最大電力追従制御DC/DCコンバータ5に対応する部分には、同一の参照符号を付す。なお、各電流制御DC/DCコンバータ52〜5の構成は、同一であるので、図3では、電流制御DC/DCコンバータ52を代表的に示している。
【0042】
この電流制御DC/DCコンバータ52は、太陽電池パネル1〜1からの入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ10と、直流電力を交流電力に変換する高周波インバータ回路11と、この高周波インバータ回路11からの交流電力を変圧する高周波トランス12と、この高周波トランス12からの交流出力を全波整流する整流回路13と、整流回路13の出力を平滑化してインバータ9に与える平滑回路14と、電流検出器7の検出出力及び最大電力追従制御DC/DCコンバータ5から入力される入力電流指令に基づいて、高周波インバータ回路11のスイッチング制御を行う電流制御回路21とを備えている。
【0043】
この電流制御回路21は、電流検出器7によって検出される電流が、入力電流指令に一致するように、高周波インバータ回路11のスイッチング素子16a〜16dを制御し、これによって、各電流制御DC/DCコンバータ52〜5には、均等な電流が流れ、最大電力追従制御DC/DCコンバータ5には、太陽電池パネル1〜1の出力電流から4台の電流制御DC/DCコンバータ52〜5に流れる電流を差し引いた差電流が流れることになる。
【0044】
このように5台のDC/DCコンバータ5〜5の内、最大電力追従制御DC/DCコンバータ5は、全体として最大電力追従制御を行う一方、他の電流制御DC/DCコンバータ5〜5は、入力電流指令に応じて電流制御を行うので、5台のDC/DCコンバータ5〜5が連携して太陽電池パネル1〜1から直流電力を変換することができる。
【0045】
これらDC/DCコンバータ5〜5からの直流電力は、インバータ9によって商用電源に連系した三相の交流電力に変換される。
【0046】
上述の実施形態では、電流指令によって5台のDC/DCコンバータ5〜5に均等に電流を分配したけれども、本発明の他の実施形態として、5台のDC/DCコンバータ5〜5全体として最も効率のよい運転ができるように、不均等に配分してもよく、例えば、入力電圧が低いときには、電流制御DC/DCコンバータ5〜5の運転台数を減らすような電流指令を与えるようにしてもよい。
【0047】
なお、各DC/DCコンバータ5〜5は、並列接続されない場合には、従来と同様に、それぞれが最大電力追従制御を行うことができる。
【0048】
上述の実施形態では、各DC/DCコンバータ5〜5の入力電流を各電流検出器7〜7でそれぞれ検出し、各電流検出器7〜7の検出出力に基づいて、全電流検出器8で全電流(太陽電池パネル1〜1全体の出力電流)を検出したけれども、本発明の他の実施形態として、電流検出器7〜7及び全電流検出器8に代えて、太陽電池パネル1〜1全体の出力電流を検出する電流検出器を、各DC/DCコンバータ5〜5への分岐点の前に配置するようにしてもよい。
【0049】
(その他の実施形態)
DC/DCコンバータは、入力電圧が低いと、十分な効率が得られない場合がある。そこで、図4のパワーコンディショナ3aに示すように、各DC/DCコンバータ5〜5の前段に昇圧チョッパ回路22〜22をそれぞれ追加し、入力電圧が一定の電圧レベルに達するまでは、昇圧チョッパ回路22〜22によって昇圧するようにしてもよい。
【0050】
なお、昇圧チョッパ回路22〜22としては、例えば、図5に示すように、インダクタンス23、トランジスタ24、ダイオード25およびコンデンサ26を備える非絶縁型の昇圧チョッパを用いてもよい。
【0051】
上述の各実施形態では、電力変換器としてDC/DCコンバータに適用して説明したけれども、本発明は、DC/DCコンバータを省略してインバータに適用することも可能であり、例えば、図6のパワーコンディショナ3bに示すように、5台のインバータ9〜9の内の1台のインバータ9によって全体として最大電力追従制御を行う一方、4台の各インバータ92〜9によって電流制御を行なうようにしてもよい。
なお、各インバータ9〜9では、従来と同様の力率制御も行われる。
【0052】
また、電流検出器7〜7及び全電流検出器8に代えて、太陽電池パネル1〜1全体の出力電流を検出する電流検出器を、各インバータ9〜9への分岐点の前に配置するようにしてもよく、この場合には、各電流制御インバータ92〜9の電流検出器は、三相電源2側に配置すればよい。
【0053】
上述の各実施形態では、商用電源系統として三相電源2に連系させたけれども、単相電源に連系させてもよいのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、太陽電池からの電力を変換する太陽光発電システムなどの電力変換に有用である。
【符号の説明】
【0055】
〜1 太陽電池パネル
2 三相電源
3,3a,3b パワーコンディショナ
最大電力追従DC/DCコンバータ
〜5 電流制御DC/DCコンバータ
6 電圧検出回路
〜7 電流検出回路
8 全電流検出回路
9 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池に並列接続される複数台の電力変換器を備える電力変換装置であって、
前記複数台の電力変換器の内の1台の電力変換器が、前記複数台全体としての前記太陽電池の最大電力追従制御を行う一方、残余の電力変換器が電流制御を行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記太陽電池が、一つの太陽電池パネルまたは出力が並列接続された複数の太陽電池パネルであり、
前記1台の電力変換器が、入力電圧および前記複数台の各電力変換器の入力電流の総和に基づいて、前記最大電力追従制御を行うものであり、
前記残余の電力変換器が、入力電流指令および入力電流に基づいて、電流制御を行うものである、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記入力電流指令が、前記入力電流の総和を前記複数台の電力変換器で均等に分配する電流指令である請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換器が、高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータである請求項1ないし3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換器が、昇圧チョッパと高周波トランス絶縁方式のDC/DCコンバータとを備える請求項1ないし3のいずれかに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141794(P2011−141794A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2768(P2010−2768)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】