説明

電力変換装置

【課題】単相交流電源を入力し、任意の振幅および周波数の三相交流電源を得る電力変換器である電力変換装置において、サージ電圧や回生電流による異常電圧印加を防止しながらシステム効率向上を実現する。
【解決手段】電力変換装置において、制御部4は、放電部8による放電、モータ回転数調整、双方向スイッチ群2の入出力電流が不連続となる制御期間の調整の少なくとも1つの方法により充電部7の電圧検出を行う第1の電圧検出部10の検出値が予め設定する範囲になるように制御するようにすることで、充電部7の電圧を放電部8により消費して調整するだけでなく、充電部7への充電そのものを制御して電圧調整することで放電部8における電力消費を抑えシステム効率低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御技術に関するもので、特に入力電流の歪み抑制と保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置のブロック図を図6に示す。交流電源1を双方向スイッチ群2により直接スイッチングしてモータ3の駆動を行う。制御部4は双方向スイッチ群2の入出力電流を遮断することなく、かつ、電源短絡が起こらないように転流を行う。このような電力変換装置では双方向スイッチ群2の全ゲート遮断による異常停止時や誤転流により発生するサージ電圧等の過電圧が双方向スイッチ群2に印加されることを防止するため、双方向スイッチ群2に並列に整流スナバ回路56が接続される(特許文献1参照)。
【0003】
整流スナバ回路56は装置全体の小型化などのため制御電源などへの電源供給部(負荷9)を兼ね、異常時のサージ電圧を吸収する充電部7、充電部7の電圧が所定値以上で放電を行う放電部8を備える(特許文献2参照)。
【0004】
異常時に充電部7が充電され電圧が所定値以上になると放電部8が動作して充電部7の電圧を下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3864327号公報
【特許文献2】特開2008−295219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の電力変換装置では、交流電源1が単相交流電源の場合、電源半周期毎に交流電源1からの電力供給が低下するため、モータ3が発電機として作用し、モータ3からの回生電流が双方向スイッチ群2を介して入力電流波形に現れる。この回生電流による入力電流波形の歪みを防止するため回生電流発生期間に合わせて双方向スイッチ群2の入出力電流を不連続にすると、回生電流は整流スナバ回路56の充電部7を充電する。回生電流による充電電力量が整流スナバ回路56における電源供給部などの負荷9による消費電力量を上回ると充電部7の電圧が上昇し、充電電圧が所定値以上になると放電部8により消費される。このように充電部7の電圧上昇が異常時のみでなく正常動作時にも継続して発生する場合、放電部8により消費される電力量が多くなりモータ駆動中の損失電力量が増えシステム効率が悪化することが課題であった。本発明はモータ駆動制御により充電部7を充電する電流量を制御し、放電部8の放電による損失を抑制した電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
交流電源と、モータと、交流電源とモータとの間に配置される双方向スイッチ群2と、を有し、前記双方向スイッチ群における双方向スイッチのオン、オフを制御し、入出力電流が不連続となる制御期間を有する制御部と、を備えた電力変換装置であって、
双方向スイッチ群の入出力それぞれに第1の全波整流ダイオード群と第2の全波整流ダイオード群を介して並列接続される充電部と、充電部の電圧を検出する第1の電圧検出部と、充電部に並列接続される放電部と、充電部に並列接続される負荷と、をさらに備え、
前記制御部は、放電部による放電量調整もしくはモータの回転数調整もしくは双方向スイ
ッチ群の入出力電流が不連続となる制御期間の調整のうち少なくとも1つの方法により前記第1の電圧検出部の検出値が予め設定する範囲になるように制御するようにしたものである。
【0008】
これにより充電部の電圧を放電部により消費して調整するだけでなく、充電部への充電そのものを制御して電圧調整することで放電部における電力消費を抑えシステム効率低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電力変換装置は、モータ駆動中の放電部による消費電力を抑え、システム効率向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における電力変換装置を示す図
【図2】同実施の形態1における入力電流と電圧波形を示す図
【図3】同実施の形態1における入力電流と電圧波形を示す図
【図4】同実施の形態1における入力電流と電圧波形を示す図
【図5】同実施の形態1における入力電流と電圧波形を示す図
【図6】従来の電力変換装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、交流電源と、モータと、交流電源とモータとの間に配置される双方向スイッチ群と、を有し、双方向スイッチ群における双方向スイッチのオン、オフを制御し、入出力電流が不連続となる制御期間を有する制御部と、を備えた電力変換装置であって、双方向スイッチ群の入出力それぞれに第1の全波整流ダイオード群と第2の全波整流ダイオード群を介して並列接続される充電部と、充電部の電圧を検出する第1の電圧検出部と、充電部に並列接続される放電部と、充電部に並列接続される負荷と、をさらに備え、
前記制御部は、放電部による放電量調整もしくはモータの回転数調整もしくは双方向スイッチ群の入出力電流が不連続となる制御期間の調整のうち少なくとも1つの方法により前記電圧検出部の検出値が予め設定する範囲になるように制御することにより、過電圧印加を防止することができる。
【0012】
放電部による電圧調整では、モータ出力を変更させることなく、また回生電流による入力電流波形歪みを抑制した電圧調整が可能になる。また、モータ回転数調整による電圧調整では、回生電流による入力電流波形歪みを抑制した電圧調整が可能になる。また、双方向スイッチ群の入出力電流が不連続となる制御期間の調整による電圧調整では、モータ出力を変更させることなく、また瞬時に充電部への充電電流を制御することができる。
【0013】
モータ駆動中はモータ回転数調整、双方向スイッチ群の入出力電流が不連続となる制御期間の調整による充電部の電圧調整を優先させることで放電部による電力消費を抑制し、システム効率低下を抑制することができる。
【0014】
第2の発明は、前記双方向スイッチ群に入力される電流、電圧の瞬時値を検出する電流検出部と第2の電圧検出部を備え、前記制御部は、電流検出部と第2の電圧検出部で検出される電流値と電圧値の符号が異なる期間がなく、かつ双方向スイッチ群の入出力電流が不連続となる期間が最も短くなるように制御、調整することにより、交流電源からモータに供給される電流の遮断防止、すなわち交流電源から整流スナバ回路の充電部への充電を防止し、モータ駆動中のモータ出力低下および放電部による電力消費を抑制し、システム効率低下を抑制する。
【0015】
第3の発明は、前記制御部は、前記第1の電圧検出部の検出値が予め設定する電圧値を超えた場合、モータを停止させ、放電部による電圧調整を行うことにより双方向スイッチ群および充電部への過電圧印加を防止する。
【0016】
第4の発明は、モータ駆動時は放電部による充電部の電圧調整を行わないことにより、放電部での電力消費によるシステム効率低下を防止する。
【0017】
第5の発明は、双方向スイッチ群にGaNもしくはSiCで構成される半導体スイッチを用いることで導通損失およびスイッチング損失の削減によるシステム全体の高効率化を実現することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明における実施の形態における電力変換装置を示す。
【0020】
交流電源1である単相交流電源は、双方向スイッチ群2により直接スイッチングされた電力をモータ3に供給する。双方向スイッチ群2は制御部4により双方向スイッチのオン・オフを制御され、任意の周波数および振幅に可変調整された電圧をモータ3へ供給する。双方向スイッチ群2の入力電圧は第1の全波整流ダイオード群5により全波整流され、双方向スイッチ群2の出力電圧は第2の全波整流ダイオード群6により全波整流される。コンデンサ等で構成される充電部7と抵抗とスイッチで構成される放電部8と充電部7の電圧を検出する第1の電圧検出部10と制御電源等の負荷9が第1の全波整流ダイオード群5および第2の全波整流ダイオード群6に並列に接続される。前記双方向スイッチ群2への入力電圧を検出する第2の電圧検出部11、前記双方向スイッチ群2への入力電流を検出する電流検出部12を備える。
【0021】
以上のように構成された電力変換装置において、以下にその動作、作用を説明する。
【0022】
まず、モータ3からの回生電流による入力電流波形への影響について説明する。図2は双方向スイッチ群2に入力される電圧波形Vrsと電流波形Irを示す。交流電源1が単相交流電源の場合、電圧のゼロクロス付近において交流電源1からの入力供給が低下し、その間にモータ3が発電機として作用する。このため例えば図2にける期間Tswに示すような回生電流による入力電流波形の歪みが生じる。このような回生電流による入力電流波形への歪みを防止するため、制御部4はゼロクロス付近の交流電源1とモータ3を遮断するように双方向スイッチ群2を構成する双方向スイッチのオン、オフを制御する。交流電源1とモータ3間を遮断した後の双方向スイッチ群2の入力電圧波形Vrsと入力電流波形Irを図3に示す。
【0023】
ここで双方向スイッチ群2の入力側および出力側より充電部7を充電する総充電量をC、負荷9および放電部8による総放電量をD、双方向スイッチ群2の入力側より充電部7を充電する充電量をC0、入力遮断電流により双方向スイッチ群2の入力側より充電部7を充電する充電量をC1、回生遮断電流により双方向スイッチ群2の出力側より充電部7を充電する充電量をC2、制御電源等の負荷9により消費される放電量をD1、放電部8により放電される放電量をD2とする。総充電量C(=C0+C1+C2)と総放電量D(=D1+D2)が等しい場合、充電部7の電圧値は一定となる。モータ停止時では入力遮断、回生遮断は行われないため総充電量CはC=C0となり、放電部8のスイッチオフでの総放電量DはD=D1となる。この両者は等しくなり充電部7の電圧は交流電源1の波高値と等しい電圧値となる。
【0024】
モータ駆動時の双方向スイッチ群2の入力電流波形歪みを図3のように制御部4による遮断期間設定により改善した場合、t1からt2、t3からt4、t5からt6、t7からt8では入力電流遮断により双方向スイッチ群2の入力側からC1が充電部7へ充電され、t2からt3、t6からt7では回生電流遮断により双方向スイッチ群2の出力側からC2が充電部7へ充電される。このときの総充電量Cと総放電量Dはそれぞれ「C0+C1+C2」と「D1」となる。
【0025】
ここで入力遮断は本来モータ3に供給される電力を遮断することになりモータ出力低下を招くため、入力遮断を行わないように遮断期間を設定することが望ましい。そこで図4に示すように第2の電圧検出部11による検出電圧値と電流検出部12による検出電流値の符号が異なる期間がなく、かつ双方向スイッチ群2の入出力電流が不連続となる期間が最も短くなるように制御部4により遮断期間を設定する。これにより入力遮断による充電量C1はなくなり総充電量CはC=C0+C2となる。「C0+C2」と「D1」が等しい場合、充電部7の電圧上昇は発生しない。「C0+C2」が「D1」を超過する場合、充電部7の充電電圧が上昇する。充電部7に印加される電圧値が許容値を超過することがないように第1の電圧検出部10により検出される電圧値により総充電量Cおよび総放電量Dの調整を行う。
【0026】
モータ出力を低下させず、入力電流波形の歪みも防止する場合は、制御部4により放電部8のスイッチをオンして総放電量Dを「D1」から「D1+D2」へ増加させる。これにより放電部8の抵抗による消費電力が多くなるためシステム全体の効率は低下するが、モータ出力を維持し、入力電流波形歪みを防止しながら充電部7に印加される電圧の上昇を抑制することができる。総放電量D(=D1+D2)より総充電量C(=C0+C2)の方が大きい場合は、更に総充電量を下げるように調整する。充電量を減少させる方法として、制御部4によるモータ回転数調整(回転数を下げる)と、遮断期間調整(遮断期間を短くする)がある。どちらも回生電流による充電量C2の調整を行い、モータ回転数調整ではモータ出力は低下するが、入力電流波形歪みを防止しながら充電量C2を下げることができる。遮断期間調整ではモータ出力を維持できるが、図5に示すように遮断期間をts1からte1、ts2からte2のように短くすることで入力電流波形に回生電流による歪みが発生する。更に、第1の電圧検出部10の検出値が所定の値を超過した場合は速やかにモータ3を停止させることで充電部7への異常電圧印加を防止することもできる。
【0027】
このように第1の電圧検出部10により検出される充電部7の電圧値を許容値以内にするために、放電部8のオン、オフによる放電量の調整以外にモータ駆動により回生電流による充電量の調整を行うことでシステム効率低下を防ぐことができる。
【0028】
更に双方向スイッチ群2をGaNもしくはSiCで構成される双方向スイッチで構成することで導通損失低減、スイッチング損失低減を図ることができシステム効率向上につながる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明は従来の電力変換装置と比較して、システム効率低下を抑制することができるため、省エネが課題となるエアコンや冷蔵庫などの圧縮機駆動用の電力変換装置に応用が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 交流電源
2 双方向スイッチ群
3 モータ
4 制御部
5 第1の全波整流ダイオード群
6 第2の全波整流ダイオード群
7 充電部
8 放電部
9 負荷
10 第1の電圧検出部
11 第2の電圧検出部
12 電流検出部
56 整流スナバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と、
モータと、
前記交流電源と前記モータとの間に配置される双方向スイッチ群と、
を有し、前記双方向スイッチ群における双方向スイッチのオン、オフを制御し、入出力電流が不連続となる制御期間を有する制御部と、を備えた電力変換装置であって、
前記双方向スイッチ群の入力側に設けられた第1の全波整流ダイオード群と出力側に設けられた第2の全波整流ダイオード群とを介して並列接続される充電部と、
前記充電部の電圧を検出する第1の電圧検出部と、
前記充電部に並列接続される放電部と、
前記充電部に並列接続される負荷と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記放電部による放電量調整もしくは前記モータの回転数調整もしくは前記双方向スイッチ群の入出力電流が不連続となる制御期間の調整のうち少なくとも1つの方法により、前記第1の電圧検出部の検出値が予め設定する範囲になるように制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記双方向スイッチ群に入力される電流および電圧の瞬時値をそれぞれ検出する電流検出部と第2の電圧検出部とを備え、
前記制御部は、前記電流検出部と前記第2の電圧検出部で検出される電流値と電圧値の符号が異なる期間がなく、かつ前記双方向スイッチ群の入出力電流が不連続となる期間が最も短くなるように制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の電圧検出部の検出値が予め設定する電圧値を超えた場合に前記モータを停止させ、前記放電部による電圧調整を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記モータの駆動時は、前記放電部による充電部の電圧調整を行わないことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記双方向スイッチ群は、GaNもしくはSiCを用いた半導体スイッチにより構成される請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−244575(P2011−244575A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113878(P2010−113878)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】