説明

電力変換装置

【課題】入力電流の検出精度を向上させる。
【解決手段】電力変換装置(1)は、コンバータ回路(2)と、直流リンク部(3)と、インバータ回路(4)と、上記コンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)を検出し、該検出値(iin,|iin|)をオフセット補正する電流検出部(60)とを備えている。そして、上記電流検出部(60)は、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出されるコンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)の値を補正値(i0)としてオフセット補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、入力電流の検出精度の向上に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、交流の電源電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する電力変換装置が開示されている。例えば、特許文献1には、この種の電力変換装置が開示されている。この電力変換装置は、交流の電源電圧を全波整流するコンバータ回路と、該コンバータ回路の出力に並列に接続された平滑コンデンサを有する直流リンク部と、該直流リンク部の出力をスイッチング制御によって所定の周波数の交流電圧に変換するインバータ回路とを備えている。このような電力変換装置は、例えば、空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動するための三相交流モータに接続され、モータの速度やトルクが制御される。
【0003】
また、従来の電力変換装置では、電源からコンバータ回路に入力される入力電流が検出され、その検出値が様々な目的に用いられている。例えば、特許文献1の電力変換装置では、上記入力電流の検出値に基づいて、コンバータ回路の入力電流の波形が正弦波になるように、インバータ回路の出力電流を制御している。これにより、コンバータ回路の入力電流が歪むことで重畳される高調波成分を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3699663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電力変換装置では、コンバータ回路の入力電流を検出するため、シャント抵抗がコンバータ回路に直列に接続され、そのシャント抵抗に流れる電流が検出される。具体的には、電流が流れた時のシャント抵抗の電圧降下をオペアンプで増幅し、その増幅信号を入力電流値に変換することによって、コンバータ回路の入力電流が検出される。
【0006】
しかし、電力変換装置を連続運転すると、シャント抵抗やオペアンプが設けられた基板の温度が上昇し、シャント抵抗及びオペアンプの特性が変化してしまう。その影響で、入力電流の検出誤差、その中でも特に、検出値が全体的にオフセットされるオフセット検出誤差が大きくなるため、上記入力電流の検出値に基づいて上記制御を高精度に行うことが困難であった。
【0007】
このような入力電流のオフセット検出誤差を小さくする為に、温度によって特性が変化しにくいシャント抵抗またはオペアンプを選定することも考えられるが、コストが高くなってしまい、コストダウンの要求が強い家電製品に適用することは困難である。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価であり、連続運転中においても入力電流の検出精度を高く維持できる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、交流電源(8)の電源電圧(Vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、上記コンバータ回路(2)の出力に並列に接続された平滑コンデンサ(30)を有する直流リンク部(3)と、上記直流リンク部(3)の出力をスイッチングによって交流電圧に変換して出力するインバータ回路(4)と、上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)を検出し、該検出値(iin,|iin|)をオフセット補正する電流検出部(60)とを備え、上記電流検出部(60)は、上記コンバータ回路(2)に電流が流れていないと推定される期間に検出される上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正する電力変換装置である。
【0010】
上記第1の発明では、上記コンバータ回路(2)に電流が流れていないと推定される期間に検出されるコンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて上記補正値(i0)を定めて、オフセット補正するようにした。上記期間において電流検出部(60)の検出値がゼロでない場合、その値は、電流検出部(60)で発生する検出誤差、その中でも検出値の大きさに関係なく生じるオフセット検出誤差とみなすことができる。そして、その値に基づいて定められた補正値(i0)で、入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の検出値がオフセット補正されるため、入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の検出値からオフセット検出誤差が取り除かれる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記電流検出部(60)は、上記電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出される上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正するものである。
【0012】
上記第2の発明では、コンバータ回路(2)に電流が流れていないと推定される期間として、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近が用いられている。電源電圧(Vin)のゼロクロス付近では、コンバータ回路(2)の入力電圧はゼロであるため、コンバータ回路(2)に電流が流れていない状態が形成される。
【0013】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記電流検出部(60)は、上記直流リンク部(3)の電圧(Vdc)が電源電圧(Vin)の絶対値(|Vin|)よりも大きい期間に検出される上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正するものである。
【0014】
上記第3の発明では、上記コンバータ回路(2)に電流が流れていないと推定される期間として、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)が電源電圧(Vin)の絶対値(|Vin|)よりも大きい期間が用いられている。電源電圧(Vin)の絶対値(|Vin|)は、コンバータ回路(2)で全波整流された電圧値のことであるため、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)がその電源電圧(Vin)の絶対値(|Vin|)よりも大きい状態では、電流は直流リンク部(3)からコンバータ回路(2)へ流れようとする。しかし、その方向は、コンバータ回路(2)の整流方向とは逆の方向であるため、コンバータ回路(2)には電流が流れていない状態が形成される。
【0015】
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形が正弦波になるように、上記オフセット補正された値(ioff,|ioff|)に基づいて補償電流指令値(icomp*)を求める補償値演算部(70)と、上記補償電流指令値(icomp*)に基づいて、上記インバータ回路(4)の出力電流(iu,iv,iw)を制御する電流制御部(50)とを有するものである。
【0016】
第4の発明では、補償値演算部(70)において、上記オフセット補正された値(ioff,|ioff|)に基づいて、補償電流指令値(icomp*)が求められる。上記オフセット補正された値(ioff,|ioff|)はオフセット検出誤差を含まない正確な電流値である。そのため、補償値演算部(70)では、補償電流指令値(icomp*)が正確に求められる。補償電流指令値(icomp*)は、補償値演算部(70)でコンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形が正弦波になるように求められ、その補償電流指令値(icomp*)に基づいて上記インバータ回路(4)の出力電流(iu,iv,iw)が制御される。上記制御によって、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形は、正弦波に近づく。
【0017】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記直流リンク部(3)の平滑コンデンサ(30)は、上記電源電圧(Vin)に起因する電圧変動は平滑化できないが、上記インバータ回路(4)のスイッチングによって生じる電圧変動は平滑化可能な静電容量を有するように構成されているものである。
【0018】
上記第5の発明では、直流リンク部(3)に上記静電容量の平滑コンデンサ(30)が設けられているため、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)は、大きな脈動を有した波形となる。そのため,コンバータ回路(2)に電流が流れ込む期間が長くなり、上記制御により入力電流(iin)の波形を、より正弦波に近づけることができる。
【0019】
第6の発明は、上記第4または第5の発明において、上記交流電源(8)は単相電源である。
【0020】
単相電源の電源電圧(Vin)は、例えば三相電源の電源電圧(Vin)に比べて、全波整流後の脈動が大きくなる。そのため、単相電源の場合、コンバータ回路(2)に電流が流れ込む期間が長くなり、上記制御により入力電流(iin)の波形を、より正弦波に近づけることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コンバータ回路(2)に電流が流れていないと推定される期間に検出されるコンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正するようにした。上記期間において電流検出部(60)の検出値がゼロでない場合、その値は、電流検出部(60)で発生する検出誤差、その中でも検出値の大きさに関係なく生じるオフセット検出誤差とみなすことができる。そして、その値に基づいて定められた補正値(i0)で、入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の検出値がオフセット補正されるため、入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の検出値からオフセット検出誤差を取り除くことができ、コンバータ回路(2)の入力電流または出力電流の正確な値を得ることができる。つまり、電流検出部(60)における入力電流(iin)の検出精度を向上させることができる。
【0022】
第2の発明によれば、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出されるコンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正するようにした。電源電圧(Vin)のゼロクロス付近では、コンバータ回路(2)に電流が確実に流れない状態が形成されるため、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近では、電流検出部(60)で微小な電流を検出してしまうことがなく、確実にオフセット検出誤差だけを検出することができる。そして、その値に基づいて定められた補正値(i0)で、入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の検出値がオフセット補正されるため、上記入力電流(iin)の検出精度を一層向上させることができる。
【0023】
第3の発明によれば、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)が電源電圧(Vin)の絶対値(|Vin|)よりも大きい期間に検出されるコンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正するようにした。直流リンク部(3)の電圧(Vdc)が電源電圧(Vin)の絶対値(|Vin|)よりも大きい状態では、電流は直流リンク部(3)からコンバータ回路(2)へ流れようとする。しかし、その方向は、コンバータ回路(2)の整流方向とは逆の方向であるため、コンバータ回路(2)に電流が確実に流れない状態が形成される。そのため、上記期間では、電流検出部(60)で微小な電流を検出してしまうことがなく、確実にオフセット検出誤差だけを検出することができる。そして、その値に基づいて定められた補正値(i0)で、入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の検出値がオフセット補正されるため、上記入力電流(iin)の検出精度を一層向上させることができる。
【0024】
第4の発明によれば、上記オフセット補正された値(ioff,|ioff|)に基づいて、演算により補償電流指令値(icomp*)を求めるようにした。上記オフセット補正された値(ioff,|ioff|)はオフセット検出誤差を含まない正確な電流値であるため、補償電流指令値(icomp*)を正確に求めることができる。そして、補償電流指令値(icomp*)は、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形が正弦波になるように求められ、その補償電流指令値(icomp*)に基づいて上記インバータ回路(4)の出力電流(iu,iv,iw)が制御される。これにより、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形を正弦波に十分近づけることができ、入力電流の高調波成分を高精度に抑制することができる。
【0025】
また、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)が脈動する場合、その脈動電圧(Vdc)に合わせて平滑コンデンサ(30)に電流が流れ込むため、その電流の影響を受けて、コンバータ回路(2)の入力電流が歪み高調波成分が発生し易くなる。しかし、第4の発明によれば、上記制御によって入力電流の高調波成分を確実に抑制することができる。
【0026】
第5の発明によれば、直流リンク部(3)の平滑コンデンサ(30)は、電源電圧(Vin)に起因する電圧変動は平滑化できないが、インバータ回路(4)のスイッチングによって生じる電圧変動は平滑化可能な静電容量を有するものにした。これにより、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)は、大きな脈動を有した波形となる。そのため,コンバータ回路(2)に電流が流れ込む期間が長くなり、上記制御により入力電流(iin)の波形を、より正弦波に近づけることができる。その結果、入力電流の高調波成分をより高精度に抑制することができる。
【0027】
第6の発明によれば、交流電源(8)を単相電源とした。単相電源の電源電圧(Vin)は、例えば三相電源の電源電圧(Vin)に比べて、全波整流後の脈動が大きくなる。そのため、コンバータ回路(2)に電流が流れ込む期間が長くなり、上記制御により入力電流(iin)の波形を、より正弦波に近づけることができる。その結果、入力電流の高調波成分をより高精度に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る検出部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る補償値演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る電流検出部の制御フロー図である。
【図6】図6は、本発明の変形例に係る各部の電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態及び変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0030】
本発明の実施形態に係る電力変換装置(1)の概略構成を図1に示す。この電力変換装置(1)は、コンバータ回路(2)と、直流リンク部(3)と、インバータ回路(4)と、制御部(5)とを備え、単相の交流電源(8)から供給される交流の電力を所定の周波数の電力に変換し、三相交流のモータ(9)に供給するように構成されている。尚、三相交流のモータ(9)は、例えば、空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動するためのものである。
【0031】
上記コンバータ回路(2)は、交流電源(8)に接続され、複数(本実施形態では4つ)のダイオード(D1〜D4)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路と、交流電源(8)とダイオードブリッジ回路との間に直列に接続されたリアクトル(L)とを有している。交流電源(8)の電源電圧(Vin)は、ダイオード(D1〜D4)のブリッジ回路によって全波整流される。また、コンバータ回路(2)の出力と上記直流リンク部(3)の入力との間には、シャント抵抗(62)が直列に接続されている。シャント抵抗(62)は、後述する電流検出部(60)の計測部(61)の一部を構成し、コンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)を検出するために設けられている。
【0032】
上記直流リンク部(3)は、上記コンバータ回路(2)の出力とインバータ回路(4)の入力との間に設けられている。直流リンク部(3)には、コンバータ回路(2)の出力に並列に接続された平滑コンデンサ(30)が設けられている。この平滑コンデンサ(30)としては、例えばフィルムコンデンサが用いられ、インバータ回路(4)の後述するスイッチング素子がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じるリプル電圧(電圧変動)を平滑化可能にする程度の静電容量を有している。つまり、平滑コンデンサ(30)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化する程の静電容量を有さない小容量のコンデンサである。この例では、交流電源(8)は単相の交流電源であるため、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)は、電源周波数(例えば50Hz)の2倍の周波数で脈動し,かつ,その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
【0033】
上記インバータ回路(4)は、入力側が直流リンク部(3)の平滑コンデンサ(30)に並列に接続され、出力側が三相交流のモータ(9)に接続されている。インバータ回路(4)は、複数のスイッチング素子がブリッジ結線されて構成されている。このインバータ回路(4)は、電力を三相交流のモータ(9)に出力するために、6個のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えている。詳しくは、インバータ回路(4)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)と下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)との中点が、それぞれモータ(9)の各相のコイル(図示は省略)に接続されている。インバータ回路(4)は、これらのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、入力された直流リンク部(3)の電圧(Vdc)をスイッチングして所定の周波数の三相交流電圧に変換し、その電圧をモータ(9)に出力するように構成されている。尚、本実施形態では、各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対して、還流ダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)が逆並列に接続されている。
【0034】
上記制御部(5)は、インバータ回路(4)のスイッチング(オンオフ動作)を制御し、そのスイッチング制御によって、インバータ回路(4)の出力電流、つまり、モータ(9)に流れるU,V,W各相の電流(モータ電流(iu,iv,iw))が制御されるように構成されている。図2に示すように、制御部(5)は、電流制御部(50)と電流検出部(60)と補償値演算部(70)とを備えている。
【0035】
〈電流制御部〉
上記電流制御部(50)は、電流指令値を生成し、その電流指令値に基づいて、モータ電流(iu,iv,iw)を制御するように構成されている。電流制御部(50)は、速度制御部(51)、乗算器(52)、加算器(53)、dq電流指令値生成部(54)、座標変換部(55)、dq軸電流制御部(56)、PWM演算部(57)を備えている。
【0036】
上記速度制御部(51)は、モータ(9)の機械角の回転角周波数(ω)と、機械角の指令値(ω*)との偏差を求め、その偏差を比例・積分演算(PI演算)し、その演算結果である第1の電流指令値(im*)を乗算器(52)に出力するように構成されている。
【0037】
上記乗算器(52)は、交流電源(8)から出力される電源電圧(Vin)の位相角(θin)の正弦値の絶対値(|sin(θin)|)が入力され、下記の式(1)に基づいて算出される変調係数(ripple)を第1の電流指令値(im*)に乗算し、その乗算結果を第2の電流指令値(iT*)として出力するように構成されている。尚、式(1)中のkは、モータ(9)の負荷の大きさに応じて変更される値である。
【0038】
【数1】

【0039】
上記加算器(53)は、上記第2の電流指令値(iT*)と、後述する補償値演算部(70)で出力される補償電流指令値(icomp*)とを加算し、その加算結果を駆動電流指令値(idq*)として出力するように構成されている。駆動電流指令値(idq*)の値は、次の式(2)で表すことができる。
【0040】
【数2】

【0041】
上記dq電流指令値生成部(54)は、駆動電流指令値(idq*)と、モータ(9)に流す電流の位相(β)の指令値(β*)とから、次の式(3)に基づいてd軸電流指令値(id*)及びq軸電流指令値(iq*)を求め、それらをdq軸電流制御部(56)に出力するように構成されている。
【0042】
【数3】

【0043】
上記座標変換部(55)は、モータ(9)の回転子(図示は省略)の回転角(電気角(θe))と、モータ電流(iu,iv,iw)とから、d軸電流(id)とq軸電流(iq)を算出するように構成されている。具体的には、次の式(4)に基づいて、d軸電流(id)とq軸電流(iq)とが求められる。
【0044】
【数4】

【0045】
上記dq軸電流制御部(56)は、モータ電流(iu,iv,iw)の指令値であるd軸及びq軸の電流指令値(id*,iq*)とd軸及びq軸の実電流値(id,iq)との偏差がそれぞれ小さくなるようにd軸及びq軸の電圧指令値(Vd*,Vq*)を生成し、PWM演算部(57)に出力するように構成されている。
【0046】
上記PWM演算部(57)では、d軸及びq軸の電圧指令値(Vd*,Vq*)と、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)と、モータ(7)の回転子(図示は省略)の回転角(電気角(θe))とが入力される。PWM演算部(57)は、これらの値に基づいて、インバータ回路(4)の各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作を制御するゲート信号(G)を生成し、そのゲート信号(G)をインバータ回路(4)に出力するように構成されている。
【0047】
〈電流検出部〉
上記電流検出部(60)は、コンバータ回路の出力電流(|iin|)を検出し、その検出値(|iin|)をオフセット補正して、そのオフセット補正された処理値(|ioff|)を補償値演算部(70)に出力するように構成されている。電流検出部(60)は、計測部(61)とオフセット部(65)とを備えている。
【0048】
上記計測部(61)は、上記シャント抵抗(62)に流れる電流、つまり、コンバータ回路の出力電流(|iin|)を検出するように構成されている。図3に示すように、計測部(61)は、上記シャント抵抗(62)とオペアンプ(63)とA/D変換部(64)とを備えている。オペアンプ(63)は、シャント抵抗(62)に電流が流れた時の電圧降下(Vsh)を増幅するように構成されている。その増幅された信号は、マイコン内のA/D変換部(64)に出力される。また、A/D変換部(64)は、上記増幅信号をA/DコンバータによってA/D値に変換し、そのA/D値をコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)に変換するように構成されている。このようにして得られたコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)は、オフセット部(65)に出力される。尚、コンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)は、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)が全波整流されたものである。よって、計測部(61)では、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の絶対値が検出される。
【0049】
上記オフセット部(65)は、上記計測部(61)で検出されたコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)をオフセット補正するように構成されている。オフセット部(65)では、オフセット補正の補正値(i0)として、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出されるコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)が用いられている。電源電圧(Vin)のゼロクロス付近では、コンバータ回路(2)の入力電圧はゼロであるため、コンバータ回路(2)に電流が流れない状態が形成される。そのため、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出されるコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)は、計測部(61)で発生する検出誤差、その中でも、検出値の大きさに関係なく生じるオフセット検出誤差とみなすことができる。つまり、計測部(61)では、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近でオフセット検出誤差を検出している。そして、オフセット部(65)では、上記オフセット検出誤差を補正値(i0)としてオフセット補正が行われる。電力変換装置を連続運転すると、シャント抵抗(62)やオペアンプ(63)が設けられた基板の温度が上昇し、シャント抵抗(62)及びオペアンプ(63)の特性が変化してしまう。そして、その影響で、入力電流の検出誤差、その中でも支配的なオフセット検出誤差が大きくなる。しかし、本実施形態では、上記オフセット補正によって、検出された値からオフセット検出誤差を取り除いた値(|ioff|)を得ることができる。オフセット部(65)でオフセット補正された値(|ioff|)は、補償値演算部(70)に出力される。
【0050】
尚、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近の検出は、交流電源(8)に接続されたゼロクロス検出器(図示省略)を用いて行われる。ゼロクロス検出器は、ゼロクロス検出器から出力されるゼロクロス検出信号が計測部(61)に入力されるように、計測部(61)に接続されている。計測部(61)では、そのゼロクロス検出信号に同期してコンバータ回路の出力電流値(|iin|)、つまりオフセット検出誤差が検出される。そして、その検出誤差は、オフセット部(65)に入力され、上記オフセット補正の補正値(i0)として設定される。
【0051】
〈補償値演算部〉
上記補償値演算部(70)は、オフセット部(65)でオフセット補正されたコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)の処理値(|ioff|)に基づいて、補償電流指令値(icomp*)を演算により求めるように構成されている。
【0052】
図4に示すように、補償値演算部(70)では、まず、コンバータ回路(2)の出力電流の指令値(|iin*|)が生成される。上記処理値(|ioff|)に基づいてフーリエ変換によって抽出される基本波の振幅成分(Ampiin)と電源電圧(Vin)の位相角(θin)の正弦値の絶対値(|sin(θin)|)とが乗算され、その乗算結果として上記指令値(|iin*|)が生成される。電源電圧(Vin)の位相角(θin)の正弦値の絶対値(|sin(θin)|)は、電源電圧(Vin)と同位相の正弦波の全波整流波形を表している。つまり、上記指令値(|iin*|)は、電源電圧(Vin)と同位相の正弦波の全波整流波に基づいて生成される。
【0053】
次に、補償値演算部(70)では、補償電流指令値(icomp*)が生成される。具体的には、補償電流指令値(icomp*)は、コンバータ回路(2)の出力電流の指令値(|iin*|)とコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)の処理値(|ioff|)との偏差を比例・積分演算(PI演算)し、その演算結果として生成される。このように、補償電流指令値(icomp*)は、コンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)の処理値(|ioff|)が目標値である上記指令値(|iin*|)に近づくように算出される。つまり、補償電流指令値(icomp*)は、コンバータ回路(2)の出力電流の波形が上記正弦波の全波整流波形に近づくように算出される。尚、コンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)の波形は、コンバータ回路(2)の入力電流(|iin|)を全波整流した波形に等しい。つまり、コンバータ回路(2)の出力電流の波形が上記正弦波の全波整流波形に近づくように補償電流指令値(icomp*)を算出することは、コンバータ回路(2)の入力電流の波形が上記正弦波に近づくように補償電流指令値(icomp*)を算出することと同じ意味である。生成された補償電流指令値(icomp*)は、前述の通り、モータ電流(iu,iv,iw)を制御するための指令値として、電流制御部(50)の加算器(53)に出力される。
【0054】
−電流検出部の動作−
コンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)の検出及びオフセット補正を行う電流検出部(60)の処理動作について、図5を参照しながら詳細に説明する。
【0055】
ステップST1では、コンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)が検出される。コンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)は、シャント抵抗(62)に流れる電流値(|iin|)である。具体的には、まず、シャント抵抗(62)の両端の電位差(Vsh)がマイコンに入力可能な値になるように、オペアンプ(63)によって増幅される。次に、その増幅された信号がマイコン内のA/D変換部(64)に入力され、A/DコンバータによってA/D値に変換されるとともに、そのA/D値に応じたコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)に変換される。このようにして、コンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)が検出される。
【0056】
ステップST2では、ステップST1で行われた検出のタイミングが、所定のタイミングであるか否かを判定している。具体的には、検出のタイミングが電源電圧(Vin)のゼロクロス付近であるか否かを判定している。電源電圧(Vin)のゼロクロス付近では、ゼロクロス検出器から計測部(61)へゼロクロス検出信号が出力されるが、そのゼロクロス検出信号に同期して行われる検出だけが、ステップST2の判定条件を満たすものとされる。検出のタイミングが電源電圧(Vin)のゼロクロス付近であれば、ステップST3へ進む。一方、検出のタイミングが電源電圧(Vin)のゼロクロス付近以外であれば、ステップST4へ進む。
【0057】
ステップST3では、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出された出力電流値(|iin|)が、オフセット補正の補正値(i0)として設定される。補正値(i0)は、ゼロクロス付近で出力電流値(|iin|)が検出される度に、つまり、ゼロクロス検出信号に同期して設定変更される。ステップST3で補正値(i0)が設定変更されたら、ステップST4へと進む。
【0058】
ステップST4では、検出された全ての出力電流値(|iin|)が、オフセット補正される。具体的には、検出された出力電流値(|iin|)から補正値(i0)を減算している。ステップST2の判定条件を満たす場合、つまり、検出のタイミングが電源電圧(Vin)のゼロクロス付近である場合は、ステップST3において出力電流値(|iin|)は補正値(i0)として設定される。そのため、出力電流値(|iin|)と補正値(i0)とが同じ値となり、減算結果はゼロとなる。一方、ステップST2の判定条件を満たさない場合、つまり、検出のタイミングが電源電圧(Vin)のゼロクロス付近以外である場合は、ステップST3において、直前のゼロクロス付近での出力電流値(|iin|)が補正値(i0)として維持される。そして、検出された出力電流値(|iin|)からその補正値(i0)が減算される。このように、出力電流値(|iin|)から補正値(i0)を減算することによって、検出値(|iin|)に含まれるオフセット検出誤差を取り除くことができる。そして、オフセット補正された処理値(|ioff|)は、補償値演算部(70)に出力される。
【0059】
電流検出部(60)では、ステップST1からステップST4を繰り返し実行することによって、検出値(|iin|)からオフセット検出誤差を除いた値を連続的に出力している。また、電源電圧(Vin)がゼロクロス付近である度に、補正値(i0)、つまりオフセット検出誤差が設定変更されるため、オフセット検出誤差が時間と共に変化しても、常に、オフセット検出誤差を含まないコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)を出力することができる。
【0060】
−実施形態の効果−
本実施形態では、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出されるコンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)の値を、上記オフセット補正の補正値(i0)として用いるようにした。電源電圧(Vin)のゼロクロス付近では、コンバータ回路(2)に電流が確実に流れない状態が形成される。そのため、電源電圧(Vin)のゼロクロス付近では、微小な電流を検出してしまうことがなく、電流検出部(60)で発生するオフセット検出誤差だけを確実に検出することができる。そして、そのオフセット検出誤差をオフセット補正の補正値(i0)として用いるため、検出された出力電流(|iin|)の値からオフセット検出誤差を確実に取り除くことができ、コンバータ回路(2)の出力電流の正確な値を得ることができる。
【0061】
そして、本実施形態では、上記オフセット補正された値(|ioff|)に基づいて、演算により補償電流指令値(icomp*)を求めるようにした。上記オフセット補正された値(|ioff|)はオフセット検出誤差を含まない正確な電流値であるため、補償電流指令値(icomp*)を正確に求めることができる。そして、補償電流指令値(icomp*)は、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形が正弦波になるように求められ、その補償電流指令値(icomp*)に基づいて上記インバータ回路(4)の出力電流(iu,iv,iw)が制御される。これにより、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形を正弦波に十分近づけることができ、入力電流の高調波成分を高精度に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態の直流リンク部(3)の平滑コンデンサ(30)は、電源電圧(Vin)に起因する電圧変動は平滑化できないが、インバータ回路(4)のスイッチングによって生じる電圧変動は平滑化可能な小容量のコンデンサである。このような平滑コンデンサ(30)が直流リンク部(3)に設けられると、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)は脈動する。そして、脈動する直流リンク部(3)の電圧(Vdc)に合わせて平滑コンデンサ(30)に電流が流れ込み、その電流の影響を受けて、コンバータ回路(2)の入力電流が歪んで、高調波成分が発生し易くなる。しかし、本実施形態では、上記制御によって入力電流の高調波成分を確実に抑制することができる。
【0063】
〈実施形態の変形例〉
本変形例は、上記実施形態の図5に示す電流検出部(60)の処理動作において、ステップST2の判定条件を変更したものである。上記実施形態では、検出のタイミングが電源電圧(Vin)のゼロクロス付近であることをステップST2の判定条件としていた。これに対し、本変形例では、直流リンク部の電圧値(Vdc)が電源電圧の絶対値(|Vin|)よりも大きいことをステップST2の判定条件とするようにした。
【0064】
本変形例では、電源電圧の絶対値(|Vin|)及び直流リンク部(3)の電圧値(Vdc)がそれぞれ検出される。図6(A)に示す電源電圧(Vin)に対し,その絶対値(|Vin|)の波形は、図6(B)のように、電源電圧の(Vin)の全波整流波となる。一方、直流リンク部(3)には、電源電圧の(Vin)の全波整流波を平滑化するような静電容量を有さない小容量の平滑コンデンサ(30)が並列に接続されている。そのため、直流リンク部(3)の電圧(Vdc)の波形は、図6(C)に示すように、大きな脈動を有する波形となる。よって、検出された直流リンク部(3)の電圧値(Vdc)から電源電圧の絶対値(|Vin|)を減算すると、図6(D)に示すパルス波形の信号(Vdc−|Vin|)が得られる。このように、直流リンク部の電圧値(Vdc)が電源電圧の絶対値(|Vin|)よりも大きい期間は、上記パルス信号として表される。本変形例では、直流リンク部の電圧値(Vdc)が電源電圧の絶対値(|Vin|)よりも大きいことが、ステップST2の判定条件である。そのため、上記パルス信号が計測部(61)に入力され、そのパルス信号に同期して行われる検出だけが、ステップST2の判定条件を満たすものとされる。
【0065】
上記直流リンク部の電圧値(Vdc)が電源電圧の絶対値(|Vin|)よりも大きくなる期間では、その電位差によって、電流は直流リンク部(3)からコンバータ回路(2)へ流れようとする。しかし、その方向は、コンバータ回路(2)の整流方向とは逆の方向であるため、コンバータ回路(2)に電流が流れない状態が形成される。そのため、上記期間に検出されるコンバータ回路(2)の出力電流値(|iin|)は、計測部(61)において発生する検出誤差、その中でも検出値の大きさに関係なく生じるオフセット検出誤差とみなすことができる。よって、上記期間に上記検出を行うことによって、そのオフセット検出誤差を把握することができる。そして、そのオフセット検出誤差をオフセット補正の補正値(i0)として用いるため、検出された出力電流(|iin|)の値からオフセット検出誤差を取り除くことができ、コンバータ回路(2)の出力電流の正確な値を得ることができる。そして、上記補償電流指令値(icomp*)の演算と上記インバータ回路(4)の出力電流(iu,iv,iw)の制御とを行うことで、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の高調波成分を高精度に抑制することができる。尚、その他の構成、作用及び効果は、上記実施形態と同様である。
【0066】
〈その他の変形例〉
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0067】
上記実施形態では、コンバータ回路(2)に電流が流れていないと推定される期間に計測部(61)で検出された電流値を、直接、オフセット補正の補正値(i0)として用いている。しかしこれに限らず、例えば、検出された電流値をフィルタリング処理した値を補正値(i0)として用いても構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、上記計測部(61)によって、コンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)を検出している。これに対し、コンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)の代わりに、コンバータ回路(2)の入力電流(iin)を検出しても構わない。コンバータ回路(2)の入力電流(iin)は、出力電流(|iin|)と異なり、正負両方の極性を有する。そのため、オフセット補正された処理値も、正負両方の極性を有する値(ioff)となる。その場合、補償値演算部(70)では、コンバータ回路(2)の出力電流の指令値(|iin*|)もコンバータ回路(2)の入力電流の指令値(iin*)に変更することによって、上記実施形態と同様に、補償電流指令値(icomp*)が生成される。また、検出されたコンバータ回路(2)の入力電流(iin)をコンバータ回路(2)の出力電流(|iin|)に変換し、更にオフセット補正してから、その処理値(|iin|)とコンバータ回路(2)の出力電流の指令値(|iin*|)とによって補償電流指令値(icomp*)を生成しても構わない。
【0069】
また、上記実施形態の電動変換装置(1)は、交流電源として、単相の交流電源(8)に接続しているが、この限りではなく、例えば、三相交流の交流電源に接続するものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明は、コンバータ回路と直流リンク部とインバータ回路とを備えた電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 電力変換装置
2 コンバータ回路
3 直流リンク部
4 インバータ回路
8 交流電源
30 平滑コンデンサ
50 電流制御部
60 電流検出部
70 補償値演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(8)の電源電圧(Vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、
上記コンバータ回路(2)の出力に並列に接続された平滑コンデンサ(30)を有する直流リンク部(3)と、
上記直流リンク部(3)の出力をスイッチングによって交流電圧に変換して出力するインバータ回路(4)と、
上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)を検出し、該検出値(iin,|iin|)をオフセット補正する電流検出部(60)を備え、
上記電流検出部(60)は、上記コンバータ回路(2)に電流が流れていないと推定される期間に検出される上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記電流検出部(60)は、上記電源電圧(Vin)のゼロクロス付近で検出される上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記電流検出部(60)は、上記直流リンク部(3)の電圧(Vdc)が上記電源電圧(Vin)の絶対値(|Vin|)よりも大きい期間に検出される上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)または出力電流(|iin|)の値に基づいて定められた補正値(i0)でオフセット補正する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項において、
上記コンバータ回路(2)の入力電流(iin)の波形が正弦波になるように、上記オフセット補正された値(ioff,|ioff|)に基づいて補償電流指令値(icomp*)を求める補償値演算部(70)と、
上記補償電流指令値(icomp*)に基づいて、上記インバータ回路(4)の出力電流(iu,iv,iw)を制御する電流制御部(50)とを有する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4において、
上記直流リンク部(3)の平滑コンデンサ(30)は、上記電源電圧(Vin)に起因する電圧変動は平滑化できないが、上記インバータ回路(4)のスイッチングによって生じる電圧変動は平滑化可能な静電容量を有するように構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
上記交流電源(8)は単相電源である
ことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−151969(P2012−151969A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7906(P2011−7906)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】