説明

電力変換装置

【課題】ヒートシンク上へ複数のパワースイッチング素子を実装する際の作業を簡略化して作業効率を向上することが可能な電力変換装置を得る。
【解決手段】電力変換装置2は、所定のブリッジ回路を構成する複数のパワースイッチング素子15と、複数のパワースイッチング素子15の放熱を行うためのヒートシンク22と、パワースイッチング素子15の外形に対応する形状の複数の凹部41が所定方向に沿って形成された押さえ板21と、を備え、各凹部41に各パワースイッチング素子15が嵌め込まれた押さえ板21を、ヒートシンク22の所定の箇所に固定することにより、複数のパワースイッチング素子15がヒートシンク22に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、複数のパワースイッチング素子を用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、電気自動車に搭載されているバッテリを商用電源によって充電するための電力変換装置(AC−DCコンバータ)が開示されている。商用電源からの出力は、全波整流回路によって整流されて昇圧型力率改善回路に入力される。昇圧型力率改善回路からの出力は、ブリッジ回路によって高周波電圧に変換されてトランスに入力される。トランスからの出力は、全波整流回路によって整流された後に平滑回路によって平滑されてバッテリに供給される。ブリッジ回路は、IGBT等の複数のパワースイッチング素子を用いて構成されている。
【0003】
一般的に、パワースイッチング素子からの発熱を効果的に放熱すべく、パワースイッチング素子は単一のヒートシンク上に配列して実装される。その際、複数のパワースイッチング素子が導電性のヒートシンクを介して意図せず電気的に接続されることを防止すべく、各パワースイッチング素子は絶縁シートを介してヒートシンク上に実装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−233818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、治具を用いた位置決め作業や、複数のパワースイッチング素子をねじ止めによって1個ずつヒートシンクに固定する作業は、作業者にとって煩雑であり、作業効率が悪いという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、ヒートシンク上へ複数のパワースイッチング素子を実装する際の作業を簡略化して作業効率を向上することが可能な電力変換装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る電力変換装置は、所定のブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子の放熱を行うためのヒートシンクと、前記スイッチング素子の外形に対応する形状の複数の凹部が所定方向に沿って形成された押さえ板と、を備え、各前記凹部に各前記スイッチング素子が嵌め込まれた前記押さえ板を、前記ヒートシンクの所定の箇所に固定することにより、前記複数のスイッチング素子が前記ヒートシンクに接触することを特徴とするものである。
【0008】
第1の態様に係る電力変換装置によれば、各凹部に各スイッチング素子が嵌め込まれた押さえ板を、ヒートシンクの所定の箇所に固定することにより、複数のスイッチング素子がヒートシンクに接触する。従って、複数のスイッチング素子をネジ止めによって一個ずつヒートシンクに固定する必要ないため、ヒートシンクへ複数のスイッチング素子を実装する際の固定作業が簡略化され、作業効率を向上することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る電力変換装置は、第1の態様に係る電力変換装置において特に、前記ヒートシンクは、前記押さえ板を収容するための収容部を有し、前記収容部には、第1の位置決め構造が形成されており、前記押さえ板には、前記第1の位置決め構造に対応する第2の位置決め構造が形成されており、前記押さえ板が前記ヒートシンクに固定されることにより、前記第1の位置決め構造及び前記第2の位置決め構造によって、前記複数のスイッチング素子が前記ヒートシンクに押し付けられることを特徴とするものである。
【0010】
第2の態様に係る電力変換装置によれば、押さえ板がヒートシンクに固定されることにより、第1の位置決め構造及び第2の位置決め構造によって、複数のスイッチング素子がヒートシンクに押し付けられる。スイッチング素子がヒートシンクに押し付けられることにより、スイッチング素子はヒートシンクに確実に接触する。その結果、スイッチング素子からヒートシンクへの熱伝導が良好となるため、スイッチング素子の放熱効率を向上することが可能となる。しかも、複数のスイッチング素子に関して一括して位置決めを行うことができるため、ヒートシンク上へ複数のスイッチング素子を実装する際の位置決め作業が簡略化され、作業効率を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒートシンク上へ複数のパワースイッチング素子を実装する際の作業を簡略化して作業効率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力変換装置の適用例を簡略化して示す図である。
【図2】電力変換装置の構成を簡略化して示す回路図である。
【図3】放熱部の構造を示す斜視図である。
【図4】放熱部の構造を示す側面図である。
【図5】ヒートシンクの構造を示す斜視図である。
【図6】押さえ板の構造を示す斜視図である。
【図7】パワースイッチング素子の構造を示す斜視図である。
【図8】パワースイッチングユニットの構造を示す斜視図である。
【図9】パワースイッチングユニットの構造を示す側面図である。
【図10】パワースイッチングユニットをヒートシンクに取り付ける工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置2の適用例を簡略化して示す図である。電力変換装置2は、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の電動自動車に適用され、当該電動自動車に搭載されているバッテリ3を商用電源1によって充電するための充電装置として使用される。
【0015】
図2は、電力変換装置2の構成を簡略化して示す回路図である。図2の接続関係で示すように、電力変換装置2は、整流回路5、力率改善回路6、ブリッジ回路7、トランス8、整流回路9、及び平滑回路10を備えて構成されている。ブリッジ回路7は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の複数のパワースイッチング素子15を用いて構成されている。商用電源1からの出力は、整流回路5によって整流されて力率改善回路6に入力される。力率改善回路6からの出力は、ブリッジ回路7によって高周波電圧に変換されてトランス8に入力される。トランス8からの出力は、整流回路9によって整流された後に平滑回路10によって平滑されてバッテリ3に供給される。
【0016】
図3は、放熱部100の構造を示す斜視図である。図4は、図3中に示したXYZ直交座標のX方向から眺めた放熱部100の構造を示す側面図である。図3,4に示すように、放熱部100は、押さえ板21及びヒートシンク22を備えて構成されている。押さえ板21は樹脂等によって形成されており、ヒートシンク22は金属等によって形成されている。図3を参照して、図示しないファンによってヒートシンク22の一方の側面内にX方向から冷却風が送り込まれることにより、ヒートシンク22が冷却される。冷却風は、ヒートシンク22の他方の側面から排出される。
【0017】
図5、図6、図7はそれぞれ、ヒートシンク22、押さえ板21、パワースイッチング素子15の単体の構造を示す斜視図である。
【0018】
図5を参照して、ヒートシンク22には、表面積の増大によって放熱効率を高めるための放熱フィンが形成されている。また、ヒートシンク22には、押さえ板21を収容するための収容部30が形成されている。収容部30には、上面61及び傾斜面62を有する位置決め構造60が形成されている。
【0019】
図6を参照して、押さえ板21には、それぞれに1個のパワースイッチング素子15を収容するための複数(この例では6個)の凹部41が形成されている。凹部41は、X方向に沿って互いに離間して形成されている。凹部41の形状は、パワースイッチング素子15の外形形状に対応しており、1個の凹部41に1個のパワースイッチング素子15を嵌め込んで固定することが可能である。また、押さえ板21には、底面51及び傾斜面52を有する位置決め構造50が形成されている。傾斜面52の傾斜角度は、ヒートシンク22における傾斜面62の傾斜角度に等しく設定されている。
【0020】
図7を参照して、パワースイッチング素子15は樹脂によってパッケージングされており、例えばIGBTのゲート電極、コレクタ電極、エミッタ電極に接続された3本のリードがパッケージ本体から突出している。
【0021】
図4を参照して、放熱部100を組み立てる際には、押さえ板21の各凹部41に各パワースイッチング素子15が嵌め込まれる。そして、全ての凹部41にパワースイッチング素子15が嵌め込まれた状態の押さえ板21が、ヒートシンク22の収容部30に収容される。その後、図3に示すように、ヒートシンク22と押さえ板21とが、複数箇所でネジ止めされることによって互いに固定される。これにより、図4に示すように、押さえ板21から突出している各パワースイッチング素子15の放熱面がヒートシンク22に接触する。なお、各パワースイッチング素子15とヒートシンク22との間には絶縁シート70が介在しており、これにより、複数のパワースイッチング素子15が導電性のヒートシンク22を介して意図せず電気的に接続されることが防止される。また、必要に応じて各パワースイッチング素子15とヒートシンク22との間にグリースを塗布してもよい。
【0022】
また、図4を参照して、ヒートシンク22と押さえ板21とを固定することにより、押さえ板21の位置決め構造50の底面51及び傾斜面52と、ヒートシンク22の位置決め構造60の上面61及び傾斜面62とがそれぞれ当接する。これにより、各パワースイッチング素子15がヒートシンク22に押し付けられ、両者の接触が確実なものとなる。
【0023】
このように本実施の形態に係る電力変換装置2によれば、各凹部41に各パワースイッチング素子15が嵌め込まれた押さえ板21を、ヒートシンク22の所定の箇所に固定することにより、複数のパワースイッチング素子15がヒートシンク22に接触する。従って、複数のパワースイッチング素子15をネジ止めによって1個ずつヒートシンク22に固定する必要ないため、ヒートシンク22へ複数のパワースイッチング素子15を実装する際の固定作業が簡略化され、作業効率を向上することが可能となる。
【0024】
また、本実施の形態に係る電力変換装置2によれば、押さえ板21がヒートシンク22に固定されることにより、位置決め構造50,60によって、複数のパワースイッチング素子15がヒートシンク22に押し付けられる。パワースイッチング素子15がヒートシンク22に押し付けられることにより、パワースイッチング素子15はヒートシンク22に確実に接触する。その結果、パワースイッチング素子15からヒートシンク22への熱伝導が良好となるため、パワースイッチング素子15の放熱効率を向上することが可能となる。しかも、複数のパワースイッチング素子15に関して一括して位置決めを行うことができるため、ヒートシンク22へ複数のパワースイッチング素子15を実装する際の位置決め作業が簡略化され、作業効率を向上することが可能となる。
【0025】
<変形例>
図8及び図9はそれぞれ、変形例に係るパワースイッチングユニット95の構造を示す斜視図及び側面図である。パワースイッチングユニット95は、複数(この例では6個)のパワースイッチング素子15を互いに離間しつつ一列に並べた状態で、エポキシ樹脂を用いた射出成形等によって一体的にモールドしたものである。図9に示すように、パワースイッチング素子15はその周囲が全体的にパッケージ90によって覆われており、パワースイッチング素子15の放熱面16とパッケージ90の主面91との間の樹脂の厚みは、0.5mm程度に設定されている。これにより、約10kV以上の耐圧が確保される。なお、IGBTの複数(この例では6個)のベアチップを一列に並べた状態で一体的に樹脂封止することによって、パワースイッチングユニット95を形成することもできる。
【0026】
図10は、パワースイッチングユニット95をヒートシンク22に取り付ける工程を示す斜視図である。パワースイッチングユニット95は、複数の箇所でネジ止めされることによってヒートシンク22に固定される。なお、本変形例の構造においては、ヒートシンク22とパワースイッチング素子15の放熱面16との間にパッケージ90の樹脂が介在しているため、絶縁シート70(図4参照)を省略することもできる。また、必要に応じてパワースイッチングユニット95とヒートシンク22との間にグリースを塗布してもよい。
【0027】
本変形例によれば、パワースイッチングユニット95をヒートシンク22の所定の箇所に固定することにより、複数のパワースイッチング素子15がヒートシンク22に一括して固定される。従って、複数のパワースイッチング素子15をネジ止めによって1個ずつヒートシンク22に固定する必要ないため、ヒートシンク22へ複数のパワースイッチング素子15を実装する際の固定作業が簡略化され、作業効率を向上することが可能となる。
【0028】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0029】
2 電力変換装置
7 ブリッジ回路
15 パワースイッチング素子
21 押さえ板
22 ヒートシンク
30 収容部
41 凹部
50,60 位置決め構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子の放熱を行うためのヒートシンクと、
前記スイッチング素子の外形に対応する形状の複数の凹部が所定方向に沿って形成された押さえ板と、
を備え、
各前記凹部に各前記スイッチング素子が嵌め込まれた前記押さえ板を、前記ヒートシンクの所定の箇所に固定することにより、前記複数のスイッチング素子が前記ヒートシンクに接触する、電力変換装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、前記押さえ板を収容するための収容部を有し、
前記収容部には、第1の位置決め構造が形成されており、
前記押さえ板には、前記第1の位置決め構造に対応する第2の位置決め構造が形成されており、
前記押さえ板が前記ヒートシンクに固定されることにより、前記第1の位置決め構造及び前記第2の位置決め構造によって、前記複数のスイッチング素子が前記ヒートシンクに押し付けられる、請求項1に記載の電力変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−161178(P2012−161178A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19578(P2011−19578)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】