説明

電力変換装置

【課題】発熱性の半導体スイッチング素子に対して、効果的な冷却作用を発揮できる手段を備え、別言すれば、能動的で積極的な空気の流れを形成して、さらに一層効果的に冷却させることができるようにした電力変換装置を提供する。
【解決手段】再生可能エネルギーから得られる直流電力を交流電力に変換して系統へ供給する電力変換装置1において、背面12上側に吸気口と下面に排気口とを有する筺体10に収容され、背面12と平行に配置される制御基板2と背面12との間に設けられた半導体スイッチング素子(IPM)が熱伝達可能に取り付けられたヒートシンク3と、ヒートシンク3の放熱用フィン3Aを収納し第1の風路W1を形成する第1のダクト14と、このダクト14の吸気口側に設けられた送風ファンと、を備え、送風ファンと吸気口とがほぼ直角の関係に配置され、ダクト14外部の両側にフィルタを成すリアクトルL1〜L3とコンデンサC1〜C4とをそれぞれ配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光などの再生可能エネルギーから得られた直流電力を交流電力に変換させる電力変換装置に係り、特に、この電力変換装置の筺体内部に備えた各種電子部品の発熱部分に対して放熱作用を効果的に発揮できる電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内設置式の太陽光発電システム用電力変換装置(パワーコンディショナ)として、放熱特性がよく、かつ、筐体表面が高温にならないものを得るために、筐体を金属筐体とし、その筐体内に、太陽電池が発電する直流電力を交流電力に変換する直交変換回路と、この直交変換回路のパワーモジュール、特に発熱性の半導体スイッチング素子を取り付けたヒートシンクなどとを備えたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1では、電力変換装置の筐体内の放熱が良好に行なえると共に、電力変換装置の筐体に人が触れたときに火傷や感電などを防止できる効果が記載されている。即ち、この電力変換装置では、パワーモジュールを一体に取り付けたヒートシンクによって空冷方式による放熱を行うものであって、ヒートシンクに付設した多数のフィンが有する大きな面積の表面部分を筺体内の空気に触れさせることで、発熱中のパワーモジュールに対する冷却を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−164351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の電力変換装置のように、ヒートシンクを用いることである程度は効果的な放熱が行えるものである。それでも、しかしながら、例えば、筺体内部での空気の流れがスムースでないような場合には、部分的に電力変換装置の回路素子のうち特に半導体スイッチング素子などの発熱の大きな素子から発するジュール熱が筐体内に篭ってしまう虞がある。
【0006】
つまり、従来のものは、筐体内が素子の動作不良や破壊をもたらすような高温になる事態を効果的に防止できるわけではなかった。換言すれば、筺体内部での空気が効果的に流れるような有効手段を講じないと、これら回路素子のうちのいくつかの素子の耐熱限度を超え、その素子の特性が変化してパワーコンディショナとして所期の動作が得られなくなったり、またはその素子が破壊したりする虞がある。
【0007】
そこで、上述の電力変換装置では、筺体の内外を貫通し、特にヒートシンクのフィン間を通過する状態にスリット孔を穿設することで、筺体外に抜ける空気の流れを形成するように構成されている。しかしながら、この電力変換装置では、スリット孔を通る空気の流れについては、自然上昇気流を生成させることで冷却する構成であって、原理的には、言わば受動的な作用を利用して冷却させているようなものである。
【0008】
このように、上述の電力変換装置では、能動的で積極的な空気の流れを形成して冷却させる構成とはなっておらず、十分に効果的な放熱作用を発揮することができない。このような事情から、積極的で能動的な空気の流れを形成して冷却させることができる冷却手段を備えた電力変換装置の開発が切望されている。
【0009】
従って、本発明の目的は、発熱性の半導体素子に対して、効果的な冷却作用を発揮できる手段を備え、別言すれば、能動的で積極的な空気の流れを形成して、効果的に冷却させることができるようにした電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の請求項1に係る電力変換装置は、
再生可能エネルギーから得られる直流電力を系統と同期した単相または三相の交流電力に変換して前記系統へ重畳可能に成した電力変換装置において、
少なくとも背面又は側面のいずれか一方の上側に設けられる吸気口と、下面に設けられる排気口と、を有する箱型の筺体と、
前記筺体内に収容され、その筺体内の背面と平行に配置される制御基板と、
前記制御基板と背面との間に設けられた発熱性の半導体素子が熱伝導可能に取り付けられたヒートシンクと、
少なくとも前記ヒートシンクの放熱用フィンを収納し前記吸気口から排気口へ向けて空気が流れる風路を形成するダクトと、
前記ダクトの入口から前記排気口に接続された出口に向かって、ダクト内を強制的に送風する第1の送風ファンと、
が備えられているとともに、
第1の送風ファンを設置したダクトの前記入口と、前記吸気口とは、ほぼ直角の関係に配置され、かつ、
前記制御基板と背面との間の、前記ダクト外部の側部分に、リアクトルとコンデンサとがそれぞれ配置されている、
ことを特徴する。
(2)本発明の請求項2に係る電力変換装置は、請求項1の電力変換装置において、
前記制御基板は、筺体内の背面と背面に対面する表面を構成する扉との間に平行に設けた上下が開放された略コ字状のシャーシに、一定の隙間を保持して設けられ、
前記シャーシ内側の、前記ヒートシンクの放熱フィンが収納された前記ダクトの内部には、前記放熱フィンが風路に沿って平行になるように設置され、かつ、
前記リアクトルと前記コンデンサとは、前記シャーシ内側の前記制御基板と背面との間に、前記ダクトと平行にかつダクトの外側の側部分に配置されている
ことを特徴する。
(3)本発明の請求項3に係る電力変換装置は、請求項2の電力変換装置において、
前記制御基板は、筺体内の背面と背面に対面する表面を構成する扉との間に平行に設けた、上下が開放された略コ字状のシャーシに、一定の隙間を保持して設けられ、
前記シャーシ内側には、前記ダクトを第1のダクトとするほかに、これと平行に併設し前記リアクトルが収納された第2のダクトを備え、
前記第2のダクトは、入口に第2の送風ファンを備えるとともに、入口が前記吸気口とほぼ直角の関係となるように配置し、かつ、出口が前記排気口との間にダクト内の空気の一部が前記シャーシ内へ漏出可能な隙間を有するように配置され、
前記シャーシ内部の前記第1及び第2のダクト外に設置されている前記コンデンサは、前記第2のダクトの出口から漏出する空気の一部が、前記隙間から前記シャーシ内部の前記第1のダクト及び第2のダクトの外部へ流入するとともに、第1の送風ファン又は第2の送風ファンのいずれかの送風ファンから再び少なくともいずれかの一方のダクトへ流入する風によって、冷却されている
ことを特徴する。
(4)本発明の請求項4に係る電力変換装置は、請求項2または3の電力変換装置において、
前記シャーシは、一部に一段下がったステップ状の段部を設けるとともに、
前記シャーシ外部の前記段部の表面にブレーカが搭載されている、
ことを特徴する。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明の請求項1に係る電力変換装置によれば、少なくともヒートシンクの放熱用フィンをダクト内に設置しており、このダクトの入口に設けた送風ファンで強制的にダクト内部へ空気を送り込むように構成してある。従って、特に放熱用フィンを設けたヒートシンクに取り付けてある発熱性の半導体スイッチング素子に対して、効果的な冷却作用を発揮できる。別言すれば、ヒートシンクに取り付けてある発熱性の半導体素子に対して、能動的で積極的な空気の流れを形成して、効果的に冷却させることができるようになるわけである。
(2)本発明の請求項2に係る電力装置によれば、シャーシ内側の、ダクト内部に、ヒートシンクの放熱フィンの各フィンが風路に沿って互いに平行になるように設置されている。従って、このように放熱フィンが設置されていることによってダクト内の送風抵抗を低く押させることができ、風路における空気の流量を得ることができてフィンに対する冷却効果を確保することができる。
(3)本発明の請求項3に係る電力装置によれば、シャーシ内側の第1のダクトと平行に、リアクトルが収納された第2のダクトを備えている。従って、シャーシ内側の第1及び第2のダクト外側に設置されているコンデンサに対して、第2のダクトの出口付近の隙間からダクト外部に漏出される空気の一部により、強制的に冷却させることができ、一層効果的な冷却作用を行うことができる。
(4)本発明の請求項4に係る電力装置によれば、シャーシの一部に一段下がったステップ状の段部を設け、この段部の表面にブレーカが搭載されている。このため、通常、一般の電子部品に比べると背高または嵩高のブレーカを搭載させてあっても、段差の分だけ高さ寸法を抑えることができ、その分、シャーシを内部に設けた筺体の薄型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の扉を開けたときの状態を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1に示した電力変換装置の外観を示す斜視図、(B)は図1に示した電力変換装置の外観を示す背面図である。
【図3】図1に示した電力変換装置の筺体内部を底面側から見たときの状態を示す説明図である。
【図4】図1に示した電力変換装置の筺体内部を表面側から見たときの状態を示す正面図である。
【図5】(A)は図4におけるVA−VA線矢視断面図、(B)は図4におけるVB−VB線矢視断面図である。
【図6】図1に示した電力変換装置の電気的構成を示す回路図である。
【図7】図1に示した電力変換装置に備える半導体スイッチング素子がパッケージに収容される形態でモジュール化された、IPMを取付けたヒートシンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
再生可能エネルギーから得られる直流電力を系統と同期した単相または三相の交流電力に変換して前記系統へ重畳可能に成した電力変換装置において、少なくとも背面又は側面のいずれか一方の上側に設けられる吸気口と、下面に設けられる排気口と、を有する箱型の筺体と、前記筺体内に収容され、その筺体内の背面と平行に配置される制御基板と、前記制御基板と背面との間に設けられた発熱性の半導体素子が熱伝導可能に取り付けられたヒートシンクと、少なくとも前記ヒートシンクの放熱用フィンを収納し前記吸気口から排気口へ向けて空気が流れる風路を形成するダクトと、前記ダクトの入口から前記排気口に接続された出口に向かって、ダクト内を強制的に送風する第1の送風ファンと、が備えられているとともに、第1の送風ファンを設置したダクトの前記入口と、前記吸気口とは、ほぼ直角の関係に配置され、かつ、前記制御基板と背面との間の、前記ダクト外部の側部分に、リアクトルとコンデンサとが配置されている構成であり、以下にその実施例を図に基づき説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置1は、正面(フロント面)側が全面開口された開口部10Cを有する金属製で略箱状の筺体10の内部に、高電圧となる電装部品を含み所期の動作をする電気回路部が収容されている。筺体10は、天面寄りの背面12にエアーフィルタ(例えばメッシュ状のエアーフィルタ)を備えた吸気口10Aが形成されているとともに底面部分に同様のエアーフィルタを備えた排気口10Bが形成されている。吸気口10Aは筐体10の天面寄りの側面に形成してもよく、また背面と側面との両方に形成しても良い。また、筺体10は、正面側の開口部10Cが扉11によって開放可能な構成となっている。
【0015】
筺体10の内部には、図3乃至図5に示すように、背面12と背面12に対面する表面を構成する扉11との間に、平行な状態で上下が開放された金属製で断面略コ字状のシャーシ13が設けられているととともに、このシャーシ13の表面側にシャーシ13と一定の隙間を保持して制御基板2が設けられている。
【0016】
また、シャーシ13には、内側に上下方向に沿って第1のダクト14と第2のダクト15とが一体で並設されており、図5に示すように、それぞれ、第1の風路W1と第2の風路W2とが形成されている。
【0017】
また、本実施形態のシャーシ13は、第1のダクト14と第2のダクト15とが設置された部位(以下、これを「ダクト設置部」とよぶことがある)を避けた部分に、ダクト設置部よりも一段高さ(H)を下げたステップ状の段部13Aが形成されており、この段部13Aの表面には他の電子部品などよりも背高(若しくは嵩高)寸法を有するブレーカBK1及びBK2などが設置されている。このうち、ブレーカBK1は直流用のものである。また、ブレーカBK2は(3相)交流用のものであって、各相に対応する3つの開閉接片がまとめて1つにパッケージ化されてある。
【0018】
第1のダクト14には、上部に送風ファン16を備えるとともに、ヒートシンク3(図2(B)、図3〜図5(A)参照)が設置されており、発熱部品、つまり後述するIPM(インテリジェントパワーモジュール)を構成する半導体スイッチング素子T1〜T5及びダイオードD1を、ヒートシンク3を介して効率的に空気冷却(空冷)させるようになっている。
【0019】
この第1のダクト14は、図5(A)に示すように、送風ファン16を取り付ける上端の開口した入口14Aが、背面12に形成されているエアーフィルタを備えた吸気口10Aに対して直交する方向に開口しているとともに、下端の開口した出口14Bが下面12の排気口10Bに当接した状態に形成されている。このため、風路W1を通過する空気が排気口10Bから直接筐体10外へ排気され、この空気は第1のダクト14からシャーシ12の内部に漏れ込まないようになっている。なお、送風ファンを設置している入口14Aと吸気口10Aとをほぼ直角の関係に配置させることによって吸気口10Aから導入する空気と筐体10内の上部に溜まった空気との両方を第1のダクト14へ吸い込みやすくしている。すなわち、後記する第2のダクト15から筐体10内の下面側へ供給される空気のうち上部へ上昇してきた空気を吸い込みやすくしているものである。
【0020】
吸気口10Aは第1のダクト14と第2のダクト15の双方の入口をカバーするような横長長尺状に形成されており、同様に、排気口10Bは第1のダクト14と第2のダクト15の双方の出口をカバーするような固有形状に形成されている。
【0021】
ヒートシンク3には、放熱用の表面積を稼ぐために多数のフィン3Aが付設されているとともに、詳細は図6、図7を用いて後述するが、昇圧部(DC/DCコンバータ)やインバータ部(INV)の一部を構成する半導体スイッチング素子T1〜T5及びダイオードD1が、熱伝導可能に設置されている。
【0022】
フィン3Aは、これが設置されている第1のダクト14の第1の風路W1に倣い空気、つまり風の流れる上から下方向に沿って、これに平行に多数のフィンが密な状態で等間隔に設置されている。このようにして、第1のダクト14内では、空気の流れを損なうことのないスムースな層流状態の風路W1が形成されることで、風路抵抗の不必要な増加を抑制し各フィン3Aの間には効率的に多量の風が吹き抜けることができ、効果的な冷却効果がもたらされるようになっている。
【0023】
ヒートシンク3によって冷却させる半導体スイッチング素子T1〜T5及びダイオードD1は、IPM(インテリジェントパワーモジュール)の状態で、一つのパッケージ(図PAC(図5(A)参照)にまとめられていてもよく又スイッチング素子T1、ダイオードD1を別パッケージとしてもよい。
【0024】
このIPMは、裏側面(図3の下側面、図5(A)の右側面)が熱電導性の良好なアルミニウム等の金属製の放熱面となっており、この放熱面が、ヒートシンク3のベース3Bにおけるフィン3Aを設置した面とは反対面(図3の上側面、図5(A)の左側面)である発熱部品の搭載面に熱伝導シート又は熱伝導性を有するグリスを介して密着状態で取り付けられている。このような構成のヒートシンク3により、これに搭載されたIPMを構成する半導体スイッチング素子T1〜T5及びダイオードD1が風路W1を通過する空気の流れで効果的に放熱されて冷却されるわけである。
【0025】
このように、ヒートシンク3によって冷却させるダイオードD1も半導体スイッチング素子T1〜T5と同様に発熱するが、このほかに、発熱の大きな素子として、インバータ部(INV)、昇圧部(DC/DCコンバータ)に備えたリアクトルL1、及びフィルタ部(ローパスフィルター:LPF)に備えたリアクトルL2、L3がある。そこで、本発明では特に発熱量の大きなリアクトルL1、L2、L3からの発熱を放散させるための有効な技術的手段についても、次に説明する。
【0026】
第2のダクト15も第1のダクト14と同様に、上部に送風ファン17を備えるが、この第2のダクト15には、内部に、発熱部品として昇圧部(DC/DCコンバータ)及びフィルタ部(LPF)の一部を構成する複数のリアクトルL1〜L3が設置されており、これらのリアクトルL1〜L3が効率的に空気冷却(空冷)されるようになっている。この第2のダクト15でも、送風ファン17を取り付ける上端の開口した入口15Aが、背面12に形成されているエアーフィルタを備えた吸気口10Aに対して直交する方向に開口している。
【0027】
リアクトルL1、L2、L3は、図5(B)に示すように、その上部及び下部における外面部分が、柔軟性の熱伝導シートと電気絶縁シートを介して、シャーシ13内側の第2のダクト15の内部に配置されており、一部コイルが露出している。このような状態で第2のダクト15に取り付けたリアクトルL2、L3は、露出しているコイル部分が第2の風路W2を通る風によって効率的に冷却させるように構成されている。なお、ここで、熱伝導シート18Aは、例えばシリコンオイルを含浸させたシリコン高分子材で構成され、厚さが略3mm〜10mmのシートである。
【0028】
リアクトルL1L1〜L3は、発熱量の多いほうから順に、例えば、L1、L2、L3の順で(但し、L1、L2はほぼ同一発熱量であるので、L2、L1、L3の順でもよい)、送風ファン17を上部に備える入口15A寄りから出口15B寄りに、所定の間隔で、かつ、直列状態で設置されている。
【0029】
このように、リアクトルL1は、送風ファン17によって強制的に風路W2に送り込まれる風により、そのコイルの外周面から効果的放熱を得ることができる。そのため、リアクトルL1から発するジュール熱によって筐体1内が高温によるなることにより生じる電気回路素子の特性の変化や素子の破壊等の虞がなく、安定動作の電力変換装置1が得られるものとなる。また、リアクトルL1、L2についても、同様に、そのコイル外周面からの効果的放熱を得ることができる。
【0030】
なお、リアクトルL1はその発熱量が少ない場合、発熱量の大きいリアクトルL2、L3を上流側に配置した構成とすることで、効果的な放熱作用を得ることが可能となる。
【0031】
また、第2のダクト15では、下端の開口した出口15Bが下面の排気口10Bに当接した直結状態に形成されているのではなく、排気口10Bから若干の隙間S(図5(B)参照)を保持して離間した状態に形成されている。このため、風路W2を通過する空気の一部を,第2のダクト15から隙間Sを介してシャーシ13の内部の下面側へ漏れ出させることができる。
【0032】
このように構成することで、風路W2を通過する空気の一部が、シャーシ13内部で、かつ、第1のダクト14と第2のダクト15の外側領域を下方から上方へ上昇し、筺体10内の上側に溜まった後、再度、第1のダクト14と第2のダクト15の双方の入口若しくはいずれか一方の入口からダクト内へ流入するような外風路W3も形成される。このように、外風路W3を構成する、シャーシ13内であって、かつ、第1のダクト14及び第2のダクト15の外部を、空気が流れることによって、この外風路W3の流路にあるコンデンサC1〜C4を効果的に冷却させることもできるわけである。
【0033】
なお、本実施形態では、発熱部品として昇圧部(DC/DCコンバータ)及びフィルタ部(LPF)の一部を構成する複数のリアクトルL1〜L3を効果的に空冷させるために、この第2のダクト15を設置しているが、とくにこの第2のダクト15は必須とするものではなく、コンデンサC1〜C4と同様に、第1のダクト14の外側の外風路W3を流れる空気で冷却させるように構成してもよい。
【0034】
その場合、第1のダクト14の出口14Bを、下面の排気口10Bに直結させるのではなく若干の隙間を保持して排気口10Bに対面させればよい。このように構成することで、第1のダクト14内の第1の風路W1からの風の一部がシャーシ13内の第1のダクト14外側領域へ漏れ出し、シャーシ13内部の底面部から天面部へ向かう上昇流としてコンデンサC1〜C4とともにリアクトルL1〜L3を効果的に冷却させるようにするのが好ましい。即ち、リアクトルL1〜L3の方へ流れる空気の流量をコンデンサC1〜C4の方へ流れる空気の流量よりも多く(若しくは流速を速く)するような構成とするのが好ましい。
【0035】
例えば、外風路W3については、シャーシ13内部において、第1のダクト14を境界として左右に分離配置させるともに、シャーシ13内部でのコンデンサC1〜C4側の風路断面積とリアクトルL1〜L3側の風路断面積との比率を、これらの断面積比に応じた毎秒あたりの空気の流量についてベルヌーイの定理などを用いて流体力学的に算出し、これに基づき適宜に設定するようにしてもよい。
【0036】
制御基板2には、発熱部品を除く電子部品などが搭載されており、この電気回路部が本発明に係る電力変換装置の主回路(MC)を構成している。この主回路(MC)には、太陽電池(PV)が発電する直流電力の直流電圧を昇圧する昇圧回路を構成する昇圧部(DC/DCコンバータ)と、この昇圧部で昇圧した直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するインバータ部(INV)と、ローパスフィルタ回路を構成するフィルタ部(LPF)と、系統への交流電力の出力を開閉制御するリレー部(RY)と、を備える。
【0037】
図6に示すように、電力変換装置1の主回路(MC)は、図1に点線で囲む大枠部分が一つのプリント配線基板に配線されている。スイッチング素子T1〜T5のそれぞれは、通常、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と称するものである。スイッチング素子T2〜T5は、図7に示すように、単一(一つ)のパッケージに収容される形態でモジュール化されており、IPM(インテリジェントパワーモジュール)と称する。なお、製造上のメリットを出すために、スイッチング素子T1及びダイオードD1もスイッチング素子T2〜T5と共に単一(一つ)のパッケージに収容される形態でモジュール化することができる。このため、図7に示すものは、スイッチング素子T1〜T5及びダイオードD1が1つのパッケージに収容された前述のIPMを示している。
【0038】
IPMには、上述のように、発熱量の大きい回路素子として、インバータ部(INV)のスイッチング素子T2〜T5などを設けているが、後述のように、このスイッチング素子T2〜T5などを収容したIPMは、裏側面(図2の内側面、図3の下面側)がアルミニウム等の金属製の放熱面となっている。この放熱面が後述のヒートシンク3のベース3B(図3、図5(A)及び図7参照)の表面に密着するように、ネジによってIPMの取り付けフランジ部がヒートシンク3に固定され、IPMから発生する熱がヒートシンク3によって放熱される構成である。
【0039】
図6において、昇圧部(DC/DCコンバータ)は、リアクトルL1、スイッチング素子T1、及びダイオードD1(さらにコンデンサC0)で昇圧回路が構成され、太陽電池(PV)から供給される直流電圧は、制御部CNTによる制御によってスイッチング素子T1がON(オンという)及びOFF(オフという)動作して所定電圧に昇圧される。
【0040】
図6において、昇圧部(DC/DCコンバータ)は、スイッチング素子T1がオン(ONとする)状態になるとリアクトルL1にエネルギーが蓄積され、スイッチング素子T1がオフ(OFFとする)状態になると、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーが放出されてコンデンサC0に充電される。この場合、スイッチング素子T1がON時間とOFF時間の割合を制御することにより、昇圧部(DC/DCコンバータ)は、太陽電池(PV)から供給される直流電力の電圧を所定の電圧に昇圧する。ダイオードD1は、電流が太陽電池(PV)側へ逆流しないようにするためであり、スイッチング素子T1に並列のダイオードは、スイッチング素子T1の保護のためである。
【0041】
また、インバータ部(INV)は、スイッチング制御のために4個のスイッチング素子T2〜T5が単相フルブリッジ接続されていると共に、コンデンサC1、C2が接続されている。4個のスイッチング素子T2〜T5が、昇圧部(DC/DCコンバータ)から供給される直流電力を制御部(CNT)によってON(オンという)及びOFF(オフという)動作して、商用電力系統(GRID)の周波数に相当する所定の周波数の交流電力に変換される。このため、インバータ部(INV)は、DC/AC変換部と称することができる。ちなみに、コンデンサC1、C2は平滑用のコンデンサである。また、コンデンサC1、C2の接続点をV結線方式の三相交流のV相出力端子としている。
【0042】
このインバータ部(INV)は、最大値(PWとする)に基づいて算出した電流が商用電力系統(GRID)へ出力されるように、制御部(CNT)によって商用電力系統(GRID)へ重畳される正弦波の交流電圧のピーク値電圧又は実効値電圧を制御する。
【0043】
フィルタ部(LPF)は、リアクトルL2、リアクトルL3、及びコンデンサC3、コンデンサC4にて高周波数を遮断するローパスフィルタ回路を構成し、インバータ部(INV)のスイッチング素子T2とスイッチング素子T3との接続点がリアクトルL2に接続され、スイッチング素子T4とスイッチング素子T5との接続点がリアクトルL3に接続されている。そして、インバータ部(INV)から出力されるパルス電圧を平滑して(高周波成分を除去して)商用電力系統(GRID)の周波数に相当する周波数の正弦波の交流電圧とし、リレー部(RY)を介して商用電力系統(GRID)へ出力される。
【0044】
このような構成の本実施形態の電力変換装置1では、再生可能エネルギーである太陽電池(PV)からの直流電力が、チョッパ動作により昇圧部(DC/DCコンバータ)にて昇圧され、この昇圧部(DC/DCコンバータ)で昇圧した直流電力が、インバータ部(INV)により交流電力に変換(DC/AC変換)された後、ローパスフィルタ回路を構成するフィルタ部(LPF)を介して商用電力系統(GRID)の周波数に相当する所定の低周波数の正弦波の交流電力として商用電力系統(GRID)へ重畳される。
【0045】
このように、本実施形態によれば、ヒートシンク3の放熱用フィン3Aを第1のダクト14内に設置しており、このダクト14の入口14Aに設けた送風ファン16で強制的にダクト14内部へ風を送り込むように構成してある。したがって、特に放熱用フィン3Aを設けたヒートシンク3に取り付けてある発熱性の半導体スイッチング素子T1〜T5に対して、効果的な冷却作用を発揮できる。別言すれば、ヒートシンク3に取り付けてある発熱性の半導体スイッチング素子T1〜T5に対して、能動的で積極的な空気の流れを形成して、効果的に冷却させることができるようになる。
【0046】
また、本実施形態によれば、シャーシ13内側の、ヒートシンク3の多数のものからなるフィン3Aが収納された第1のダクト14内部には、各フィン3Aが風路W1に沿って互いに平行になるように設置されている。このため、フィン3Aによって第1のダクト14内の風路W1における風の流れが阻害されることがなく、フィン3Aに対する冷却効果が高まる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、シャーシ13内部の第1のダクト14と平行に、第1のダクト14と同様の構成で、かつ、リアクトルL1〜L3が収納された第2のダクト15を備えている。このため、シャーシ13内部の第1のダクト14及び第2のダクト15外に設置されているコンデンサC1〜C4に対して、第2のダクト15の出口15Bから排出される空気の一部による風により強制的に冷却させることができ、一層効果的な冷却作用を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、シャーシ13の一部に一段下がったステップ状の段部13Aを設け、この段部13Aの表面側にブレーカBK1、BK2が搭載されている。従って、通常、一般の電子部品に比べると背高または嵩高のブレーカBK1、BK2を搭載させてあっても、その高さの一部を段部13Aの高低差(H)で稼ぐことができ、その分、シャーシ13を内部に設けた筺体10の薄型化が図れる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の要旨を逸脱しない範囲で各種の変形実施が可能である。
【0050】
例えば、筺体10の部分は水密構造にするとともに、筺体10と扉11との間から水や湿気が入り込まないようにするために、扉11には周囲にゴム製のパッキンなどを取り付ける。一方、吸気口10Aは筺体10の外部に露出しない背面12に形成してあるので雨水が入り込み難い構造であるが、庇などを付設して雨水対策を講じる。
【0051】
このようにすれば、雨水の入り込み難い構造が得られるので、庇で保護された屋外の壁面またはその付近での設置が可能である。なお、排気口10Bは筺体10の下面に形成されているので、表面側寄りにダクトから排気される空気の排出を阻害しない状態で小さな庇などを設けることで、効果的に雨水の侵入を回避できる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・・電力変換装置
10・・・・・筺体
10A・・・・・吸気口
10B・・・・・排気口
10C・・・・・開口部
11・・・・・扉
12・・・・・背面
13・・・・・シャーシ
13A・・・・・ステップ状の段部
14・・・・・第1のダクト(ダクト)
14A・・・・・入口
14B・・・・・出口
15・・・・・第2のダクト
15A・・・・・入口
15B・・・・・出口
2・・・・・制御基板
3・・・・・ヒートシンク
3A・・・・・フィン
3B・・・・・ベース
BK1,BK2・・・・・ブレーカ
C1〜C4・・・・・コンデンサ
D1・・・・ダイオード
DC/DC・・・・・昇圧部
LPF・・・・・フィルタ部
GRID・・・・・商用電力系統
IPM・・・・・インテリジェントパワーモジュール
INV・・・・・インバータ部
L1・・・・・昇圧部のリアクトル
L2、L3・・・・・フィルタ部のリアクトル
MC・・・・・電力変換装置の主回路
PV・・・・・太陽電池
S・・・・・隙間
T1〜T5・・・・・スイッチング素子
W1・・・・・第1の風路
W2・・・・・第2の風路
W3・・・・・外風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーから得られる直流電力を系統と同期した単相または三相の交流電力に変換して前記系統へ重畳可能に成した電力変換装置において、
少なくとも背面又は側面のいずれか一方の上側に設けられる吸気口と、下面に設けられる排気口と、を有する箱型の筺体と、
前記筺体内に収容され、その筺体内の背面と平行に配置される制御基板と、
前記制御基板と背面との間に設けられた発熱性の半導体素子が熱伝導可能に取り付けられたヒートシンクと、
少なくとも前記ヒートシンクの放熱用フィンを収納し前記吸気口から排気口へ向けて空気が流れる風路を形成するダクトと、
前記ダクトの入口から前記排気口に接続された出口に向かって、ダクト内を強制的に送風する第1の送風ファンと、
が備えられているとともに、
第1の送風ファンを設置したダクトの前記入口と、前記吸気口とは、ほぼ直角の関係に配置され、かつ、
前記制御基板と背面との間の、前記ダクト外部の側部分に、リアクトルとコンデンサとが配置されている、
ことを特徴する電力変換装置。
【請求項2】
前記制御基板は、筺体内の背面と背面に対面する表面を構成する扉との間に平行に設けた上下が開放された略コ字状のシャーシに、一定の隙間を保持して設けられ、
前記シャーシ内側の、前記ヒートシンクの放熱フィンが収納された前記ダクトの内部には、前記放熱フィンが風路に沿って平行になるように設置され、かつ、
前記リアクトルと前記コンデンサとは、前記シャーシ内側の前記制御基板と背面との間に、前記ダクトと平行にかつダクトの外側の側部分に配置されている、
ことを特徴する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御基板は、筺体内の背面と背面に対面する表面を構成する扉との間に平行に設けた、上下が開放された略コ字状のシャーシに、一定の隙間を保持して設けられ、
前記シャーシ内側には、前記ダクトを第1のダクトとするほかに、これと平行に併設し前記リアクトルが収納された第2のダクトを備え、
前記第2のダクトは、入口に第2の送風ファンを備えるとともに、入口が前記吸気口とほぼ直角の関係となるように配置し、かつ、出口が前記排気口との間にダクト内の空気の一部が前記シャーシ内へ漏出可能な隙間を有するように配置され、
前記シャーシ内部の前記第1及び第2のダクト外に設置されている前記コンデンサは、前記第2のダクトの出口から漏出する空気の一部が、前記隙間から前記シャーシ内部の前記第1のダクト及び第2のダクトの外部へ流入するとともに、第1の送風ファン又は第2の送風ファンのいずれかの送風ファンから再び少なくともいずれかの一方のダクトへ流入する風によって、冷却されている
ことを特徴する請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記シャーシは、一部に一段下がったステップ状の段部を設けるとともに、
前記シャーシ外部の前記段部の表面にブレーカが搭載されている
ことを特徴する請求項2または3に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78216(P2013−78216A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217080(P2011−217080)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】