説明

電力線通信装置及びノイズ検出方法

【課題】A/D変換器のダイナミックレンジの幅を広げることなく周期的に発生するノイズを検出することができる電力線通信装置及びノイズ検出方法を提供すること
【解決手段】本発明にかかる電力線通信装置は、電力線11を介したデータの送受信に用いられる通信スロットの電力を検出する電力検出部16と、通信スロットのうちデータを送受信するために割り当てられていない未使用スロットの所定期間内の平均電力と、未使用スロットの瞬時電力との差分を用いて、伝送路状態を推定する伝送路推定部27と、推定された伝送路状態と、電力線11の交流サイクルとを用いて、周期的に発生するノイズを検出する周期性判定部30と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力線通信装置及びノイズ検出方法に関し、特に周期性ノイズを検出する電力線通信装置及び周期性ノイズを検出するノイズ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内の通信において、電力線を用いた電力線通信が多く用いられている。電力線通信は、非常にノイズが多い中で通信をする通信方式である。例えば、電力線には、多くの電気機器が接続されている。そのため、電力線に接続されている電気機器からノイズが発生し、発生したノイズは、重畳され増幅される。電気機器から発生するノイズには、電力線の交流(ACサイクル)に同期したインパルスノイズや、インピーダンス変動がある。電力線通信において、通信品質を向上させるために、インパルスノイズや、インピーダンス変動を避けて通信を行うことが必要である。
【0003】
ここで、図13を用いて同期性のインパルスノイズについて説明する。図13には、縦軸を振幅の絶対値、横軸を時間として、ノイズ信号の一例として振幅変動が示されている。また、信号の振幅変動を示すグラフの下に、ACサイクルを示している。本図の例では、ACサイクルの振幅のピークを迎えるタイミングに、電力線に発生するノイズ信号の振幅が急激に大きくなる。このように、ACサイクルに同期して現れるノイズを、同期性のインパルスノイズとする。次に、図14を用いて同期性のインピーダンス変動について説明する。図14には、縦軸を振幅の絶対値、横軸を時間として、電力線信号の振幅変動が示されている。また、振幅変動を示すグラフの下に、ACサイクルを示している。本図の例では、ACサイクルの振幅のピークを迎えるタイミングに、電圧値の急激な変動(減少)がみられる。この現象は、電力線における負荷(インピーダンス)が変動(減少)することにより発生する現象である。
【0004】
インパルスノイズが発生することにより、アナログデジタル(A/D)変換器の入力ダイナミックレンジを超えるような強いインパルスノイズがA/D変換器に入力される。これにより、時間域信号が正しくA/D変換されず、矩形波を含むようになる。そのため、FFT後の周波数帯域全域にわたってSNRが劣化する現象が起こる。ただし、これはA/D変換器によって引き起こされた現象であり、実際の電力線の品質を示すものではない。
【0005】
インパルスノイズ等の影響を回避するために、特許文献1の電力線搬送通信装置は、MAC層において周期性ノイズを判定し、品質の悪い時間スロットは、通信に使用しないことにより通信品質を向上させている。図15を用いて、特許文献1の電力線搬送通信装置の具体的な構成例について説明する。電力線搬送通信装置は、電力線101を介して送信された信号をAFE(アナログフロントエンド部)102において受け取る。AFE102は、受け取った信号をA/D(アナログデジタル変換部)103へ出力する。A/D103は、受け取った信号をデジタル信号に変換し、物理層100の信号強度測定部105及びキャリア周波数同期部106へ出力する。信号強度測定部105は、デジタル信号の信号強度をモニターし、AFE102へフィードバックする。これにより、A/Dへ入力される信号の振幅が調整される。
【0006】
また、キャリア周波数同期部106は、デジタル信号の同期をとり、FFT部107へ出力する。FFT部107は、受け取ったデジタル信号を、時間域信号から周波数域信号へ変換する。各サブキャリアの信号は、チャネル推定部108において推定された伝送路歪みに基づいてチャネル推定部108において等化される。等化された信号は、サブキャリア復調部110において復調された後に、誤り訂正・復号部111において誤り訂正処理が行われ、MAC層120へ出力される。
【0007】
データ送信時には、MAC層120から出力された信号を誤り訂正・符号化部112において誤り訂正可能なように符号化処理する。次に、誤り訂正・符号化部112から出力された信号は、IFFT部114においてIFFT処理され、D/A104によりアナログ信号に変換され、AFE102へ出力される。
【0008】
MAC層120は、品質管理部121と、周期性ノイズ判定部122と、トレーニング部123と、スケジューリング部124とを備えている。品質管理部121は、物理層100においてモニターされる信号強度等の情報を用いて、伝送路の変化をモニターする。トレーニング部123は、品質管理部121からのトレーニング命令を受け取ると、定められたトレーニングを実施し、トレーニング結果をスケジューリング部124へ通知する。
【0009】
周期性ノイズ判定部122は、物理層100における信号強度又はチャネル推定結果等から、時間区間ごとの伝送路状況を定量的に把握し、周期性ノイズを判定する。スケジューリング部124は、周期性ノイズ判定部122で検出された周期性ノイズを避けるように、各スロットへのリソース割当等を行い、フレームを構成する。
【0010】
また、特許文献2の電力線通信システムは、対向装置から送信される送信データの受信電力値を測定し、インパルスノイズ及びインピーダンス変動を検出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−258897号公報
【特許文献2】特開2008−010948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示されている受信装置は、A/D変換器によりアナログ信号をデジタル信号へ変換後の復調データの誤り率やSNRによって品質を推定し、ノイズからの干渉を検出している。この場合、受信装置は、強いインパルス性ノイズが含まれる受信信号を正しく復調するために、A/D変換器のダイナミックレンジの幅を広げる必要がある。これにより、A/D変換器における有効変換ビット数をより多く必要とする。しかし、A/D変換器のダイナミックレンジの幅を広げると、A/D変換器の回路規模の増大、更には、消費電力の増大につながり、装置コストが増加するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様にかかる電力線通信装置は、電力線を介したデータの送受信に用いられる通信スロットの電力を検出する電力検出部と、前記通信スロットのうちデータを送受信するために割り当てられていない未使用スロットの平均電力と、前記未使用スロットの瞬時電力とに基づいて、伝送路の状態を推定する伝送路推定部と、前記推定された前記伝送路の状態と、前記電力線の交流サイクルとに基づいて、周期的に発生するノイズを検出する周期性判定部と、を備えるものである。
【0014】
このような電力線通信装置を用いることにより、未使用スロットの電力を用いて伝送路状態を推定することができる。そのため、対向装置から送信されるデータを正確に復調する必要がないため、A/D変換器のダイナミックレンジの幅を広げなくとも周期的に発生するノイズを検出することができる。
【0015】
本発明の第2の態様にかかるノイズ検出方法は、電力線を介したデータの送受信に用いられる通信スロットの電力を検出し、前記通信スロットのうちデータを送受信するために割り当てられていない未使用スロットの平均電力と、前記未使用スロットの瞬時電力とに基づいて、伝送路の状態を推定し、前記推定された前記伝送路の状態と、前記電力線の交流サイクルとに基づいて、周期的に発生するノイズを検出するものである。
【0016】
このようなノイズ検出方法を用いることにより、未使用スロットの電力を用いて伝送路状態を推定することができる。そのため、対向装置から送信されるデータを正確に復調する必要がないため、A/D変換器のダイナミックレンジの幅を広げなくとも周期的に発生するノイズを検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、A/D変換器のダイナミックレンジの幅を広げることなく周期的に発生するノイズを検出することができる電力線通信装置及びノイズ検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1にかかる電力線通信装置の構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる通信要求に関する処理の流れを示す図である。
【図3】実施の形態1にかかる通信スロットの使用可否判定に関する処理の流れを示す図である。
【図4】実施の形態1にかかる伝送路状態の推定処理の流れを示す図である。
【図5】実施の形態1にかかるインパルス検出部の構成図である。
【図6】実施の形態1にかかるインピーダンス変動検出部の構成図である。
【図7A】実施の形態1にかかるインパルスノイズ検出の処理の流れを示す図である。
【図7B】実施の形態1にかかるインピーダンス変動検出の処理の流れを示す図である。
【図8】実施の形態1にかかるACサイクルと通信スロットとの関係を示す図である。
【図9】実施の形態1にかかる周期性判定部のメモリ構成を示す図である。
【図10】実施の形態1にかかる周期性判定部の構成図である。
【図11】実施の形態1にかかる周期性判定部のレジスタの構成を示す図である。
【図12】実施の形態1にかかる電力線通信装置の動作におけるタイミングチャートである。
【図13】同期性のインパルスノイズを説明する図である。
【図14】同期性のインピーダンス変動を説明する図である。
【図15】特許文献1の電力線搬送通信装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態1にかかる電力線通信装置は、物理層10と、電力線11と、AFE(アナログフロントエンド)12と、ADC(アナログデジタル変換部)13と、DAC(デジタルアナログ変換部)14と、ACサイクル検出部15と、電力検出部16と、AGC(Automatic Gain Control)17と、FFT18と、等化部19と、復調部20と、誤り訂正・復号化部21と、受信部22と、送信部23と、誤り訂正・符号化部24と、変調部25と、IFFT26と、伝送路推定部27と、インパルス検出部28と、インピーダンス変動検出部29と、周期性判定部30と、MAC層40とを備えている。
【0020】
AFE12は、他の電力線通信装置等から送信されたデータを、電力線11を介して受け取る。AFE12は、他の電力線通信装置等から送信されたデータをアナログ信号により受け取る。AFE12は、受け取ったデータを、ADC13へ出力する。また、AFE12は、DAC14から受け取ったアナログ信号データを、電力線11を介して他の電力線通信装置等へ送信する。
【0021】
ADC13は、AFE12からアナログ信号として受け取ったデータを、デジタル信号へ変換する。ADC13は、デジタル信号へ変換したデータを電力検出部16へ出力する。ADC13は、ダイナミックレンジを超える電力を有するアナログ信号が入力された場合、入力されたアナログ信号を特定値のデジタル信号へ変換するようにしてもよい。
【0022】
電力検出部16は、ADC13から受け取ったデジタル信号データの受信電力を検出する。もしくは、電力検出部16は、ADC13から受け取ったデジタル信号データの受信レベルを検出する。電力検出部16は、単位時間(通信スロット)毎の受信電力を検出する。電力検出部16は、検出したデジタル信号データの受信電力を、AGC17及び伝送路推定部27へ出力する。また、電力検出部16は、デジタル信号データを、FFT18へ出力する。
【0023】
AGC17は、電力検出部16から受け取った受信電力値に応じて、AFE12の利得を調整し、AFE12から出力され、ADC13へ入力されるアナログ信号のレベルを一定に保つように制御する。
【0024】
FFT18は、電力検出部16から受け取ったデジタル信号データをFFT処理する。つまり、FFT18は、電力検出部16から受け取ったデジタル信号データを、時間域信号から周波数域信号へ変換する。周波数域信号へ変換されたデジタル信号データは、複数のサブキャリアを有する。サブキャリアは、一定の周波数帯域幅を有する信号である。FFT18は、周波数域信号へ変換したデジタル信号データを等化部19へ出力する。
【0025】
等化部19は、電力線11等の伝送路の影響により歪んだ信号について、歪み補償を行う。等化部19は、歪み補償を行ったデジタル信号データを復調部20へ出力する。復調部20は、受け取ったデジタル信号データを復調する。復調部20は、復調した復調信号を誤り訂正・復号化部21へ出力する。誤り訂正・復号化部21は、受け取った復調信号の誤り検出を行い、検出した誤りを訂正する。誤り訂正・復号化部21は、誤り訂正を行った信号を、受信部22を介してMAC層40へ出力する。
【0026】
データ送信を行う場合、送信部23は、MAC層40から受け取ったデータを誤り訂正・符号化部24へ出力する。誤り訂正・符号化部24は、受け取ったデータを誤り訂正可能なように符号化処理し、変調部25へ出力する。変調部25は、受け取ったデータを変調し、IFFT26へ出力する。IFFT26は、変調部25から受け取ったデータをIFFT処理、つまり、周波数域信号から時間域信号へ変換し、DAC14へ出力する。DAC14は、IFFT26から受け取ったデジタル信号データをアナログ信号へ変換し、AFE12へ出力する。
【0027】
次に、伝送路推定部27及び周期性判定部30の機能について説明する。伝送路推定部27は、インパルス検出部28とインピーダンス変動検出部29とを有している。伝送路推定部27は、電力検出部16において検出された受信電力値に関する情報を受け取る。伝送路推定部27は、通信スロット毎の受信電力値に関する情報を受け取る。ここで、伝送路推定部27は、データを送受信するために割り当てられていない未使用スロットの受信電力値を用いて、伝送路状態を推定する。
【0028】
ここで、未使用スロットについて説明する。ACサイクル1周期を任意の等しい時間で分割した単位時間をスロットと定義し、電力線11を介して送受信などの通信が行われていないスロットを未使用スロットと定義する。
【0029】
伝送路推定部27は、電力検出部16からの受信電力値に関する情報を、インパルス検出部28及びインピーダンス変動検出部29において受け取る。インパルス検出部28は、所定期間内における未使用スロットの平均電力と、未使用スロットの瞬時電力との差分を用いて、インパルスノイズを検出する。未使用スロットの平均電力は、複数の未使用スロットにおける受信電力の平均値である。未使用スロットの瞬時電力は、例えば、ひとつの未使用スロットにおける受信電力である。もしくは、瞬時電力は、平均電力に用いられる未使用スロットの数よりも少ない数の未使用スロットにおける平均受信電力であってもよい。インパルス検出部28は、瞬時電力と平均電力との比が予め定められた閾値を超える場合に、インパルスノイズが発生しているものと判定してもよい。
【0030】
インピーダンス変動検出部29は、所定期間内における未使用スロットの平均電力と、平均電力において用いられる所定期間よりも少ない期間における未使用スロットの平均電力とを用いてインピーダンス変動を検出する。ここで、平均電力において用いられる所定期間よりも短い期間における未使用スロットの平均電力を、インパルス検出部28における説明時と同様に、瞬時電力として定義する。インピーダンス変動検出部29は、瞬時電力と平均電力との比が予め定められた閾値を下回る場合に、インピーダンス変動が発生しているものと判定してもよい。
【0031】
インパルス検出部28及びインピーダンス変動検出部29は、未使用スロットにおけるインパルス検出処理及びインピーダンス変動検出処理の結果を周期性判定部30へ出力する。例えば、インパルス検出部28は、インパルスノイズを検出した場合、Highレベル信号を周期性判定部30へ出力し、インパルスノイズを検出しなかった場合、Lowレベル信号を周期性判定部30へ出力するようにしてもよい。インピーダンス変動検出部29も同様である。
【0032】
ACサイクル検出部15は、電力線11から受け取ったアナログ信号を用いてACサイクルを検出する。例えば、ACサイクル検出部15は、アナログ信号の受信電力が0となる通信スロットを検出し、ACサイクルを検出するようにしてもよい。ACサイクル検出部15は、ACサイクルの検出結果を周期性判定部30へ出力する。
【0033】
周期性判定部30は、ACサイクルの検出結果と、インパルスノイズの検出結果と、インピーダンス変動の検出結果とを用いて、周期的に発生するノイズを検出する。周期性判定部30は、複数周期のACサイクルにおいて、周期的に発生しているインパルスノイズとインピーダンス変動と(以下、周期性ノイズと称する)があるか否かを判定する。周期性判定部30は、周期性ノイズの発生有無に関する情報をMAC層40へ出力する。MAC層40は、受け取った周期性ノイズの発生有無に関する情報をMAC層40内のメモリ等へ保持する。
【0034】
MAC層40は、周期性ノイズが発生している通信スロットへのデータ割り当てを避けるようにして、データの割り当てスケジューリングを行う。
【0035】
次に、図2を用いて本発明の実施の形態1にかかる通信要求に関する処理の流れについて説明する。はじめに、MAC層40の制御部(図示せず)は、他の電力線通信装置に対する通信要求が発生したか否かを判定する。通信要求が発生した場合、MAC層40の制御部は、周期性判定部30における周期性ノイズの発生有無に関する情報をMAC層40のメモリから読み出す(S12)。次に、MAC層40の制御部は、周期性ノイズが発生していない通信スロットにデータを割り当てるよう通信スロットの予約を行う(S13)。ステップS11において通信要求の発生がない場合、図3に示す通信スロットの使用可否判定処理を行う。
【0036】
次に、図3を用いて本発明の実施の形態1にかかる通信スロットの使用可否判定に関する処理の流れについて説明する。MAC層40の制御部は、任意の通信スロットを選択し、選択した通信スロットが、自局に割り当てられた通信スロットか否かを判定する(S14)。つまり、MAC層40の制御部は、選択した通信スロットに自局を宛先とするデータが設定されているか否かを判定する。選択した通信スロットが、自局に割り当てられた通信スロットである場合、MAC層40の制御部は、受信に関するデータ通信処理を実行する(S15)。選択した通信スロットが、自局に割り当てられた通信スロットではない場合、MAC層40の制御部は、他の電力線通信装置において使用される予定の通信スロットもしくは他の電力線通信装置宛てのデータが設定されている通信スロットか否かを判定する(S16)。通信スロットが、他の電力通信装置において使用される予定又は他の電力線通信装置宛てのデータが設定されている場合、ステップS14の処理に戻る。通信スロットが、他の電力通信装置において使用される予定はない又は他の電力線通信装置宛てのデータが設定されていない場合、図4に示す伝送路状態の推定処理を行う。
【0037】
ここで、選択した通信スロットに自局をあて先とするデータが設定されているか否か、選択した通信スロットが自局において送信用に割り当てられた通信スロットか否か、及び、他の電力線通信装置において使用される予定の通信スロットもしくは他の電力線通信装置宛のデータが設定されている通信スロットか否かについては、マスター装置として動作する他の電力線通信装置から送信されるビーコン信号によって通知されても良い。又は、ビーコン信号を用いて未使用スロットが通知されても良い。又は、あらかじめ未使用スロットが決定されており、その未使用スロットの位置をすべての電力線通信装置が予め認識していてもよい。マスター装置は、電力線11に接続されている電力線通信装置に対して、定期的にビーコン信号を送信してもよい。
【0038】
続いて、図4を用いて本発明の実施の形態1にかかる伝送路状態の推定処理の流れについて説明する。図3において、未使用スロットの選択が行われた場合、周期性判定部30は、MAC層40の制御部から、伝搬路状況時間方向推定開始指示を受け取る(S17)。次に、物理層10の制御部は、周期性判定部30に対して、周期性ノイズの検出処理動作の実行指示を行う(S18)。次に、周期性判定部30は、周期性ノイズの検出動作を実行する(S19)。周期性ノイズの検出動作として、周期性判定部30は、インパルス検出部28及びインピーダンス変動検出部29から出力されるインパルスノイズ等の検出結果が保持されているメモリ等から、周期性ノイズの発生有無を検出する。もしくは、周期性判定部30は、インパルス検出部28及びインピーダンス変動検出部29から、インパルスノイズ等の検出結果を収集し、周期性ノイズの発生有無を検出してもよい。
【0039】
続いて、図5を用いて本発明の実施の形態1にかかるインパルス検出部28の構成例について説明する。インパルス検出部28は、平均電力推定部51と、瞬時電力推定部55と、閾値判定保持部57と、比較部58とを備えている。また、平均電力推定部51は、自乗電力演算部52と、移動平均演算部53と、平均区間保持部54とを有している。さらに、瞬時電力推定部55は、自乗電力演算部56を有している。
【0040】
平均電力推定部51の自乗電力演算部52は、電力検出部16からデジタルデータの受信電力値に関する情報を受け取る。自乗電力演算部52は、受け取った受信電力の値から、自乗電力を演算する。自乗電力演算部52は、通信スロット毎の自乗電力を演算する。自乗電力演算部52は、算出した自乗電力の値に関する情報を移動平均演算部53へ出力する。
【0041】
平均区間保持部54は、平均電力を算出するための区間又は期間に関する情報を保持する。たとえば、平均区間保持部54は、平均電力を算出するための通信スロットの数を保持していてもよい。平均電力を算出するために用いられる通信スロットは、未使用スロットが用いられる。平均区間保持部54は、平均電力を算出するための区間又は期間に関する情報を移動平均演算部53へ出力する。
【0042】
移動平均演算部53は、平均区間保持部54から受け取った平均電力を算出するための区間又は期間内の自乗電力を用いて、当該区間又は期間における平均電力を演算する。移動平均演算部53は、演算した平均電力に関する情報を比較部58へ出力する。
【0043】
瞬時電力推定部55の自乗電力演算部56は、平均電力推定部51における自乗電力演算部52と同様に、電力検出部16からデジタルデータの受信電力値に関する情報を受け取り、受け取った受信電力の値から自乗電力を演算する。自乗電力演算部56は、演算した自乗電力の値を比較部58へ出力する。ここで、本図においては平均電力推定部51及び瞬時電力推定部55がそれぞれ自乗電力演算部を有しているが、一つの自乗電力演算部が、平均電力推定部51及び瞬時電力推定部55に共有して用いられてもよい。
【0044】
比較部58は、平均電力推定部51において算出された平均電力と、瞬時電力推定部55において算出された瞬時電力とに基づいて、インパルスノイズが発生しているか否かを判定する。例えば、比較部58は、瞬時電力と平均電力との比が、所定の値以上である場合、瞬時電力が算出された通信スロットには、インパルスノイズが発生していると判定する。インパルスノイズが発生しているか否かを判定するために用いられる所定の値は、閾値判定保持部57に保持されている。比較部58は、瞬時電力と平均電力との比が、閾値判定保持部57から受け取った値より大きいか否かを判定し、インパルスノイズの発生有無を判定する。比較部58は、インパルスノイズの発生有無に関する情報を周期性判定部30へ出力する。
【0045】
続いて、図6を用いて本発明の実施の形態1にかかるインピーダンス変動検出部29の構成例について説明する。インピーダンス変動検出部29は、平均電力推定部61と、準瞬時電力推定部65と、閾値判定保持部69と、比較部70とを備えている。平均電力推定部61は、自乗電力演算部62と、移動平均演算部63と、平均区間保持部64とを有している。また、準瞬時電力推定部65は、自乗電力演算部66と、移動平均演算部67と、平均区間保持部68とを備えている。
【0046】
平均電力推定部61及び準瞬時電力推定部65のそれぞれの構成要素は、インパルス検出部28の平均電力推定部51と同様であるため、詳細な説明を省略する。ここで、平均電力推定部61の平均区間保持部63と、準瞬時電力推定部65の平均区間保持部67との差異について説明する。移動平均演算部63は、移動平均演算部67と比較して長い区間を用いて平均電力を算出する。インピーダンス変動検出部29においては、平均電力よりも短い区間を用いて算出された電力が瞬時電力として、比較部70へ出力される。
【0047】
続いて、図7Aを用いて本発明の実施の形態1にかかるインパルスノイズ検出の処理の流れについて説明する。はじめに、インパルス検出部28の平均電力推定部51は、受信したデジタル信号の所定区間における平均電力を算出する(S21)。また、平均電力推定部51において平均電力が算出されるとともに、インパルス検出部28の瞬時電力推定部55は、瞬時電力を算出する(S22)。次に、比較部58は、瞬時電力と平均電力との比が、閾値判定保持部57において予め定められた閾値よりも大きいか否かを判定する(S23)。瞬時電力と平均電力との比が、閾値判定保持部57において予め定められた閾値よりも大きい場合(ステップS23における条件式を満たす場合)、インパルス検出部28は、周期性判定部30に対してHighレベル信号を出力する(S24)。瞬時電力と平均電力との比が、閾値判定保持部57において予め定められた閾値よりも小さい場合(ステップS23の式を満たさない場合)、インパルス検出部28は、周期性判定部30に対してLowレベル信号を出力する(S25)。
【0048】
続いて、図7Bを用いて本発明の実施の形態1にかかるインピーダンス変動検出の処理の流れについて説明する。はじめに、インピーダンス変動検出部29の平均電力推定部61は、受信したデジタル信号の所定区間における平均電力を算出する(S31)。また、平均電力推定部61において平均電力が算出されるとともに、インピーダンス変動検出部29の準瞬時電力推定部65は、瞬時電力を算出する(S32)。次に、比較部70は、瞬時電力と平均電力との比が、閾値判定保持部69において予め定められた閾値よりも小さいか否かを判定する(S33)。瞬時電力と平均電力との比が、閾値判定保持部69において予め定められた閾値よりも小さい場合(ステップS23における条件式を満たす場合)、インピーダンス変動検出部29は、周期性判定部30に対してHighレベル信号を出力する(S34)。瞬時電力と平均電力との比が、閾値判定保持部69において予め定められた閾値よりも大きい場合(ステップS33の式を満たさない場合)、インピーダンス変動検出部29は、周期性判定部30に対してLowレベル信号を出力する(S35)。
【0049】
続いて、図8及び図9を用いて本発明の実施の形態1にかかる周期性判定部30の処理概要について説明する。図8は、周期性を有する通信スロットを示している。1サイクルは、ACサイクルのゼロクロス点からゼロクロス点までの期間である。本図に示されているように、1サイクルに、通信スロット#0〜#m(mは1以上の自然数)が含まれている。本図においては、サイクルn〜サイクルn+2(nは1以上の自然数)の例が、示されている。
【0050】
図9は、周期性判定部30のメモリの構成を示している。周期性判定部30のメモリは、サイクルn〜n+k(kは自然数)における通信スロット#0〜#mの出力値を関連付けて管理している。本図においては、サイクル数(サイクル番号)が増加する方向をビット方向とし、スロット番号が増加する方向をワード方向としている。また、周期性判定部30のレジスタは、スロット毎にビット方向に加算した値と所定の閾値とを比較し、その判定結果を保持する。周期性判定部30は、判定結果を用いて周期性ノイズを検出する。
【0051】
続いて、図10を用いて本発明の実施の形態1にかかる周期性判定部30の構成例について説明する。周期性判定部30は、OR回路71と、データ生成部72と、書き込み制御部73と、メモリ74と、加算部75と、読出し制御部76と、閾値保持部77と、比較部78と、書き込み制御部79と、レジスタ80とを備えている。
【0052】
OR回路71は、インパルス検出部28とインピーダンス変動検出部29とから、インパルスノイズ及びインピーダンス変動の検出結果を受け取る。OR回路71は、インパルス検出部28及びインピーダンス変動検出部29の少なくとも一方から、インパルスノイズ又はインピーダンス変動を検出した検出結果を受け取ると、ノイズを検出したことを示すHighレベル信号をデータ生成部72へ出力する。
【0053】
データ生成部72は、OR回路71から受け取ったノイズ検出結果をメモリ74へ書き込むため、書き込みを行うメモリ74のビット位置を決定する。メモリ74のビット位置は、ノイズ検出が行われた通信スロット番号及びサイクル番号から決定される。データ生成部72は、決定したメモリ74のビット位置に、OR回路71から受け取ったノイズ検出結果を書き込む。また、書き込み制御部73は、データ生成部72がメモリ74へノイズ検出結果を書き込むタイミングを制御する。
【0054】
メモリ74は、図9において説明したように、通信スロット番号とサイクル番号とによって定まるビット位置に、データ生成部72から出力されるノイズ検出結果を保持する。
【0055】
加算部75は、メモリ74において、それぞれのビットに保持されている値を、通信スロット毎にビット方向に加算する。それぞれのビットに保持されている値とは、ノイズの検出を示す「1」又は、ノイズが発生していないことを示す「0」等である。また、読出し制御部76は、加算部75がメモリ74内のデータを読み出すタイミングを制御する。加算部75は、加算した値を比較部78へ出力する。
【0056】
比較部78は、閾値保持部77に保持されている閾値と、加算部75から出力された値とを比較し、周期性ノイズの発生有無を判定する。比較部78は、加算部75から出力された値が、閾値を超えている場合、該当する通信スロットに周期性ノイズが発生していることをレジスタ80へ通知する。比較部78は、加算部75から出力された値が、閾値を超えていない場合、該当する通信スロットに周期性ノイズが発生していないことをレジスタ80へ通知する。また、書き込み制御部79は、比較部78がレジスタ80へ周期性ノイズの発生有無を通知(書き込み)するタイミングを制御する。
【0057】
レジスタ80は、比較部78から通知された周期性ノイズの発生有無に関する情報を保持し、MAC層40へ通知する。
【0058】
続いて、図11を用いて本発明の実施の形態1にかかるレジスタ80の構成例について説明する。レジスタ80は、通信スロット毎の周期性判定結果を保持するためのDフリップフロップ(DFF)回路を備えている。本図においては、通信スロット#0にはDFF81が対応し、通信スロット#1にはDFF82が対応し、通信スロット#mには、DFF83が対応する。DFF81〜83は、比較部78から受け取った値を書き込み制御部79によって制御されたタイミングに保持し、保持した値をMAC層40へ出力する。
【0059】
続いて、図12を用いて本発明の実施の形態1にかかる電力線通信装置の動作におけるタイミングチャートについて説明する。本図においては、1サイクル中の通信スロット数を8とする。未使用スロット判定は、ビーコン信号等によって通知され、通信スロットが使用されているか否かを示す。Highレベル信号は、通信スロットが未使用であることを示し、Lowレベル信号は、通信スロットが使用されていることを示している。本図においては、サイクルn及びサイクルn+1におけるスロット#0〜#7は、未使用スロットであることを示している。
【0060】
ACサイクルは、電力線の交流信号を示している。また、ACサイクル検出部出力は、ACサイクルのゼロクロス点においてHighレベル信号を出力する。インパルス検出は、インパルス検出部28においてインパルスノイズが検出された通信スロットにおいてHighレベル信号を出力する。また、インピーダンス変動は、インピーダンス変動検出部29においてインピーダンス変動が検出された通信スロットにおいてHighレベル信号を出力する。
【0061】
OR回路出力は、OR回路71においてノイズを検出したと判定された場合に、Highレベル信号を出力する。本図においては、インパルスノイズが検出された通信スロット又はインピーダンス変動が検出されたスロットにおいて、ノイズを検出したと判定されている。書き込み制御及び読み出し制御は、それぞれの通信スロットにおいて、データを書き込む及び読み出すタイミングを示している。レジスタ出力は、レジスタ80において周期性ノイズが検出された場合、Highレベル信号が出力され、周期性ノイズが検出されなかった場合、Lowレベル信号が出力される。
【0062】
以上説明したように本発明の実施の形態1にかかる電力線通信装置を用いることにより、FFT処理を行う前の未使用スロットの受信電力値を用いて、周期性ノイズが発生しているか否かを検出することができる。これにより、対向装置から送信されるデータを正確にFFT処理及び復調処理等を行うために、ADC13のダイナミックレンジの幅を広げることなく、周期性ノイズの発生を検出することができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 物理層
11 電力線
12 AFE
13 ADC
14 DAC
15 ACサイクル検出部
16 電力検出部
17 AGC
18 FFT
19 等化部
20 復調部
21 誤り訂正部
22 受信部
23 送信部
24 誤り訂正部
25 変調部
26 IFFT
27 伝送路推定部
28 インパルス検出部
29 インピーダンス変動検出部
30 周期性判定部
40 MAC層
51 平均電力推定部
52 自乗電力演算部
53 移動平均演算部
54 平均区間保持部
55 瞬時電力推定部
56 自乗電力演算部
57 閾値判定保持部
58 比較部
61 平均電力推定部
62 自乗電力演算部
63 移動平均演算部
64 平均区間保持部
65 準瞬時電力推定部
66 自乗電力演算部
67 移動平均演算部
68 平均区間保持部
69 閾値判定保持部
70 比較部
71 OR回路
72 データ生成部
73 書き込み制御部
74 メモリ
75 加算部
76 読出し制御部
77 閾値保持部
78 比較部
79 書き込み制御部
80 レジスタ
81〜83 DFF
100 物理層
101 電力線
102 AFE
103 A/D
104 D/A
105 信号強度測定部
106 キャリア周波数同期部
107 FFT部
108 チャネル推定部
109 等化部
110 サブキャリア復調部
111 誤り訂正部
112 誤り訂正部
113 サブキャリア変調部
114 IFFT部
120 MAC層
121 品質管理部
122 周期性ノイズ判定部
123 トレーニング部
124 スケジューリング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線を介したデータの送受信に用いられる通信スロットの電力を検出する電力検出部と、
前記通信スロットのうちデータを送受信するために割り当てられていない未使用スロットの平均電力と、前記未使用スロットの瞬時電力とに基づいて、伝送路の状態を推定する伝送路推定部と、
前記推定された前記伝送路の状態と、前記電力線の交流サイクルとに基づいて、周期的に発生するノイズを検出する周期性判定部と、を備える電力線通信装置。
【請求項2】
前記伝送路状態推定部は、
前記未使用スロットの平均電力と、前記未使用スロットの瞬時電力との比に基づいて、前記伝送路のインパルスノイズを検出するインパルス検出部を有する、請求項1記載の電力線通信装置。
【請求項3】
前記伝送路状態推定部は、
前記未使用スロットの所定期間内の第1の平均電力と、前記所定期間よりも短い期間における前記未使用スロットの第2の平均電力との比に基づいて前記伝送路のインピーダンス変動を検出するインピーダンス変動検出部を有する、請求項1又は2記載の電力線通信装置。
【請求項4】
前記周期性判定部は、前記周期的にノイズが発生する通信スロットを検出し、
前記ノイズが発生する通信スロット以外の通信スロットに前記データを送受信する通信スロットを割り当てる割当制御部をさらに備える、請求項3に記載の電力線通信装置。
【請求項5】
前記周期性判定部は、
前記伝送路推定部によって推定された伝送路状態を単位時間毎に記憶し、前記記憶した複数の伝送路状態と、前記電力線の交流サイクルとを用いて、前記周期的に発生するノイズを検出する、請求項4に記載の電力線通信装置。
【請求項6】
前記周期性判定部は、
前記伝送路状態推定部においてインパルスノイズ及びインピーダンス変動の少なくともいずれか一方が検出された前記未使用スロットと、前記電力線の交流サイクルとを用いて、周期的に発生するノイズを検出する、請求項5に記載の電力線通信装置。
【請求項7】
前記未使用スロットは、前記電力線通信装置及び前記電力線通信装置とは異なる他の電力線通信装置においてデータを送受信するために割り当てられていないスロットである、請求項6に記載の電力線通信装置。
【請求項8】
前記割当制御部は、
前記電力線通信装置に送信されるビーコン信号に基づいて、前記未使用スロットの位置を決定する、請求項7に記載の電力線通信装置。
【請求項9】
前記電力検出部、前記伝送路推定部及び前記周期性判定部は、物理層に配置され、前記割当制御部は、MAC層に配置される、請求項1に記載の電力線通信装置。
【請求項10】
電力線上の未使用の通信スロットを検出する制御部と、
前記未使用の通信スロットにおいて平均電力を算出する平均電力算出部と、
前記未使用の通信スロットにおいて瞬時電力を算出する瞬時電力算出部と、
前記平均電力と前記瞬時電力との比に基づく検出結果を単位時間毎に記憶し、前記記憶した複数の検出結果に基づいて周期性ノイズを検出する周期性判定部と、
を有し、
前記制御部は、前記未使用の通信スロットの前記周期性ノイズの検出結果に基づいて、前記未使用のスロットの中から使用するスロットを選択することを特徴とする電力線通信装置。
【請求項11】
電力線を介したデータの送受信に用いられる通信スロットの電力を検出し、
前記通信スロットのうちデータを送受信するために割り当てられていない未使用スロットの平均電力と、前記未使用スロットの瞬時電力とに基づいて、伝送路の状態を推定し、
前記推定された前記伝送路の状態と、前記電力線の交流サイクルとに基づいて、周期的に発生するノイズを検出するノイズ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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