説明

電力線

【課題】従来の電力線においては、抵抗値を低くするとともに、厚さを薄くすることができないという課題があった。
【解決手段】扁平した断面形状を有し、当該断面の長手方向において互いに並列に配列された2本の導電線10と、2本の導電線10を直接被覆するよう、導電線10に沿って設けられた第一絶縁体20と、2本の導電線10を被覆するよう設けられたシールド材30と、シールド材30を直接被覆するよう設けられた第二絶縁体40とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドされた電力線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドされたフラット電線が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、2つの線心を備えたフラット電線が知られていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−45240号公報(第1頁、第1図等)
【特許文献2】特開2000−106040号公報(第1頁、第1図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のフラット電線においては、線心、すなわち導電線の断面形状が円形であるため、電線の厚さを薄くするためには、線心の断面の直径を小さくする必要があった。しかしながら、断面積を小さくすると、抵抗値が高くなってしまい、電力線としての所望の電気特性が得られなくなってしまうという課題があった。その一方で、十分な抵抗値を確保しようとした場合、電線の厚さが厚くなってしまい、電線を配設する際の邪魔になってしまうという課題があった。例えば、カーペット等の下にフラット電線を配設した場合、カーペットに大きな段差等が発生したり、ドアと床等の隙間に電線を配設できなくなってしまうため、フラット電線のメリットが得られなくなってしまう。このように、従来の、フラット電線においては、抵抗値を低くしたまま、厚さを薄くすることが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電力線は、扁平した断面形状を有し、当該断面の長手方向において互いに並列に配列された2本の導電線と、前記2本の導電線を被覆するよう設けられたシールド材とを備えた電力線である。
【0006】
かかる構成により、断面の高さを保ったまま、幅を拡げることで、断面積を所望の広さに保つことができ、抵抗値を低くするとともに、厚さを薄くした電力線を提供することができる。
【0007】
また、本発明の電力線は、前記電力線を電力線通信に用いられるものとしたものである。
【0008】
かかる構成により、厚さを薄く保ったまま、電力供給に適した抵抗値とすることができるとともに、シールド材により、信号送信による電磁波の漏れを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による電力線によれば、抵抗値を低くするとともに、厚さを薄くした電力線を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、電力線等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における電力線の断面図である。電力線1は、2本の導電線10と、第一絶縁体20と、シールド材30と、第二絶縁体40とを備えている。ここでは、2本の導電線を第一導電線10aおよび第二導電線10bとする。
【0012】
第一導電線10aおよび第二導電線10bは、扁平した断面形状を有し、当該断面の長手方向において互いに並列に配列されている。扁平した断面形状とは、具体的には、高さが幅よりも狭い断面形状のことであり、例えば、長方形や楕円形等の形状である。なお、導電線10の断面形状は、長方形、あるいは角丸長方形等の、上面や下面に平坦な辺を有する形状であることが、後述するように、導電線同士を接続する上で好ましい。ここでの幅とは、導電線10の断面の長手方向の長さ、すなわち第一導電線10aおよび第二導電線10bの配列されている方向の長さを指すものとする。第一導電線10aおよび第二導電線10bは、高さが十分に低い場合、リボン状の導電線と考えても良い。第一導電線10aおよび第二導電線10bの材質は、通常の電線に利用可能な導電性を有する材質、例えば、銅等の金属等であれば、どのような材質であっても良い。なお、導電線10の材質については、公知技術であるので説明は省略する。
【0013】
第一絶縁体20は、第一導電線10aおよび第二導電線10bを直接被覆するよう、第一導電線10aおよび第二導電線10bに沿って設けられている。第一導電線10aと第二導電線10bとの間は、第一絶縁体20によって絶縁されている。第一絶縁体20の材質は、通常の電線に利用可能な絶縁性を有する材質であれば、どのような材質であっても良く、例えば、絶縁性を有する合成樹脂等が利用可能である。なお、第一絶縁体20の材質については、公知技術であるので説明は省略する。
【0014】
シールド材30は、2本の導電線10を被覆するよう設けられている。具体的には、シールド材30は、第一絶縁体20の表面を直接被覆するように設けられており、これにより、第一絶縁体20を介して、第一導電線10aおよび第二導電線10bを間接的に被覆している。シールド材30の材質は、通常のシールド材として利用可能な材質であれば、どのような材質であっても良く、例えば、金属箔や金属テープ等が利用可能である。なお、シールド材30の材質については、公知技術であるので説明は省略する。
【0015】
第二絶縁体40は、シールド材30を直接被覆するよう設けられている。第二絶縁体40の材質は、第一絶縁体20の材質等と同様の材質が利用可能であるので、ここでは説明を省略する。ただし、第二絶縁体40は、表面が外部に露出するため、電力線1の用途等に応じて耐食性の高い材質等を用いることが好ましい。
【0016】
この電力線1は、電力を供給するために用いられる電線であり、第一導電線10aおよび第二導電線10bが電源等と接続されることで、電力が供給される。電力線1に供給される電流は、直流であっても良いし、交流であっても良い。例えば、第一導電線10aに、第一の電位、また、第二導電線10bに第二の電位を印加することで、電力線1に直流電流を流すことができる。また、この電力線1は、例えば、電力通信線(Power Line Communications)として利用可能な電力線である。例えば、電力線通信により送信したい信号を電力に重畳して電力線1に送信することで、電力とともに、信号を送信することが可能である。
【0017】
この電力線1においては、導電線10が、扁平な断面形状を有している。このため、導電線10の高さを一定に保つと共に、幅を拡げていくことで、導電線10の断面積を広くできる。このため、厚さを変化させることなく、導電線10断面積を自由に変更することが可能となる。この結果、抵抗値を低くするとともに、厚さを、カーペットの下や、ドアの隙間等に、邪魔になることなく配設可能となるよう薄くした電力線1を提供することができる。
【0018】
また、通常の電力線、特に直流用の電力線は、シールドを有していないが、この電力線1は、特に、シールド材30を備えている。このシールド材30は、導電線10に信号を流した場合に漏れる電磁波等をシールドする役割を果たす。すなわち、電力線1を上述したような電力線通信用の電力線、すなわち電力通信線として利用した場合において、電力に信号を重畳して送信する際に発生する電磁波の漏れを防ぐことができる。なお、この電力線1を用いて信号を送信する際には、差動伝送を行うようにすることが好ましい。差動伝送とは、対となる導電線にそれぞれ逆位相の信号を伝送するデータの伝送方式である。差動伝送を行うことで、シングル伝送に比べて、信号振幅を小さくできる分、信号の第一の電位から、第二の電位への遷移に必要な電位差を小さくして、信号の第一の電位から、第二の電位への切り替えに要する時間を短くでき、データ伝送速度を高速にすることができる。また、差動伝送は、第一導電線10aおよび第二導電線10bに逆位相の信号を用いるため、コモンモード雑音が発生しても、受信側で信号間の差分をことにより、雑音の影響を相殺でき、ノイズを削減することが可能となり、受信側の機器において誤動作を防ぐことが可能となる。
【0019】
図2は、2つの電力線1同士を接続した状態を示す上面図である。ここでは、第一の電力線1aの一部の、第一絶縁体20と、シールド材30と、第二絶縁体40との被覆を剥がして表面に露出された第一導電線10aおよび第二導電線10bに、第一絶縁体20と、シールド材30と、第二絶縁体40との被覆を剥がして表面に露出された第一導電線10aおよび第二導電線10bを、それぞれ接続した状態を示す図である。ここでは、第一の電力線1aの第一導電線10aと第二の電力線1bの第一導電線10aが半田により接続されており、第一の電力線1aの第二導電線10bと第二の電力線1bの第二導電線10bが半田60により接続されている。なお、図2においては、第二の電力線1bの第一導電線10aと、第一の電力線1aの第二導電線10bとが重なる部分には、第一絶縁体20等と同様の絶縁体21が挟み込まれているものとする。
【0020】
また、図3は、図2に示した第一の電力線1aの第一導電線10aと第二の電力線1bの第一導電線10aとが半田60により接続されている部分の側面図である。
【0021】
図2および図3に示すように、第一導電線10aと第二導電線10bとのいずれも断面形状が扁平であるため、導電線同士を半田や導電性の接着剤等で接続する際に、導電線間の隙間が少なく、従来の断面が円形の導電線同士を半田等で接続する場合に比べて接続強度が強くなる。また、接続される部分の面積も広くとれるため、接続部における抵抗の増加等も少なくすることができる。また、導電線同士の厚さが薄いため、接続部分における厚さの増加も抑えることができる。なお、導電線10同士をより強固に、また、より接合される面積が広くなるよう接続できるようにするためには、導電線10の断面形状を、上面や下面に平坦な辺を有する形状とすることが好ましい。
【0022】
以上、本実施の形態においては、扁平した断面形状を有し、当該断面の長手方向において互いに並列に配列された2本の導電線10と、2本の導電線10を被覆するよう設けられたシールド材30とを備えるようにしたことにより、抵抗値を低くするとともに、厚さを薄くした電力線を提供することができる。
【0023】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明にかかる電力線は、電力線として適しており、特に、電力線通信に利用可能なフラットな電力線等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における電力線の断面図
【図2】同電力線同士を接続した状態を示す上面図
【図3】同電力線の接続部分の側面図
【符号の説明】
【0026】
1 電力線
1a 第一の電力線
1b 第二の電力線
10 導電線
10a 第一導電線
10b 第二導電線
20 第一絶縁体
21 絶縁体
30 シールド材
40 第二絶縁体
60 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平した断面形状を有し、当該断面の長手方向において互いに並列に配列された2本の導電線と、
前記2本の導電線を被覆するよう設けられたシールド材とを備えた電力線。
【請求項2】
前記電力線は、電力線通信に用いられるものである請求項1記載の電力線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−176489(P2009−176489A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12118(P2008−12118)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(507299758)株式会社アウトスタンディングテクノロジー (16)
【Fターム(参考)】