説明

電力配線装置

【課題】低コストで小型、高信頼性が達成できる電力変換器の電力配線装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一対の金属板11、12と、電流を制御するスイッチング素子10と、を備え、一対の金属板11、12はスイッチング素子10を介して接続され、かつ、一対の金属板11、12間の距離がスイッチング素子10近傍で異なる(短くなる)ように配置して、その部分の一対の金属板でコンデンサを構成するようにした電力配線装置を提供する。一対の金属板の距離をスイッチング素子近傍のみ短くなるようにしているので、部品の追加なく、かつ簡単な構成で、効率よくスイッチング素子近傍にコンデンサ機能を配置することができ、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。さらには、スイッチング素子近傍にのみコンデンサ機能を集中させているので、スイッチング素子近傍以外の金属板の設計自由度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング動作するスイッチング素子(IGBTもしくは、MOSFETなど)が組み込まれた電力変換器における、電力の入出力を行うための電力入出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のような電圧駆動型半導体素子による半導体電力変換器は広く用いられている。この半導体電力変換器は、内部に組込まれたスイッチング素子を所定のスイッチング周波数でオン・オフさせることにより、直流電力を交流電力に変換する機能を有している。
【0003】
この半導体電力変換器の出力電圧は、直流電圧をスイッチングした電圧波形を有するので、スイッチング周波数に対応した周波数成分を含んでいる。この周波数成分はこの電力変換器の負荷としてのモータなどにストレスを与えるため、電力変換器ではフィルタ回路を用いてこの周波数成分を取り除いている。
【0004】
また、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を抑制するために、周辺回路であるスナバ回路をスイッチング素子に接続することにより、スイッチングにて生じる雑音やEMI(電磁干渉)の低減は可能である。
【0005】
しかし、前述したフィルタ回路の体積は一般的に大きく、これに伴い、フィルタ回路を設けた電力変換器も大型になってしまう。また、スナバ回路を設けるとなると、回路の増加につながる。そこで、回路の大型化を抑制するために、スイッチング周波数を高くすることによって、フィルタ回路及び、スナバ回路の小型化を図るような検討も行われている。
【0006】
しかし、周辺回路が付加されていない電力変換器では、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を抑制することが困難となる。さらに、従来のスナバ回路では、配線によるインダクタンスや抵抗も生じてしまう。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1ではブスバーでコンデンサを押圧挟持することにより、高周波ノイズを効率的に吸収する方法が提唱されている。図9に、この提唱されたコンデンサのブスバーに対する取付状態を示す。ブスバー12と14の間に、複数の積層されたコンデンサ24を配置し、支持板25aと25bでコンデンサ24を支持し、留め具26で固定している。また、積層されたコンデンサ24は接続具27aと27bで電気的、機械的に接続されたいる。
【0008】
これにより、電力変換器を大型化することなく、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を抑制することができる。
【特許文献1】特開2005−341643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1による、コンデンサの機能をブスバーに持たせる構成では、ブスバーの間に誘電体を有するコンデンサを挟み込んでボルト締めしているため、コンデンサを形成する誘電体やコンデンサ固定用ボルトなどにより高コストとなり、また、固定用ボルトが必要となるのでコンデンサ部が大型化するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解消するために、本発明の電力配線装置は、互いに所定の距離だけ離間して配置された少なくとも一対の金属板と、電流を制御するスイッチング素子と、を備え、前記一対の金属板は前記スイッチング素子を介して接続され、前記スイッチング素子近傍に位置する前記一対の金属板の一部がコンデンサとして機能することを特徴とする。
【0011】
前記一対の金属板間の距離は前記スイッチング素子近傍のみ短いことが好ましい。
【0012】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、一対の金属板の距離をスイッチング素子近傍のみ短くなるようにしているので、部品の追加なく、かつ簡単な構成で、効率よくスイッチング素子近傍にコンデンサ機能を配置することができ、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。さらには、スイッチング素子近傍にのみコンデンサ機能を集中させているので、スイッチング素子近傍以外の金属板の設計自由度が向上する。
【0013】
また、前記少なくとも一対の金属板は、少なくとも一つの屈曲部を有し、前記屈曲部は、前記スイッチング素子近傍に配置されていることが好ましい。
【0014】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、スイッチング素子近傍で、一対の金属板の形状を、(平行かつ、)少なくとも一つの屈曲部としているので、スイッチング素子の投影面積内において、一対の金属板が対向している面積を広くとることができ、金属板によるコンデンサ機能を向上することができる。さらには、金属板による配線インダクタンスを低減させることができる。それにより、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。
【0015】
また、本発明の電力配線装置は、互いに所定の距離だけ離間して配置された少なくとも一対の金属板と、電流を制御するスイッチング素子と、を備え、前記一対の金属板は前記スイッチング素子を介して接続され、前記少なくとも一対の金属板は、前記スイッチング素子近傍以外は、、互いに対向する位置に重ならないように複数の穴を備えていることを特徴とする。
【0016】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、スイッチング素子近傍以外は、一対の金属板が交互に、かつ、互いに重ならないように穴を備えているので、スイッチング素子近傍以外の配線インダクタンスを低減し、平板形状で、コンデンサ容量を部分的に異ならせることができるため、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。さらには、電力配線装置の低コストが図れる。
【0017】
前記少なくとも一対の金属板は、前記スイッチング素子近傍のみ、対向する面に複数の突起が形成されていることが好ましい。
【0018】
これにより、スイッチング素子の投影面積内において、一対の金属板が対向している面積を広くとることができ、金属板によるコンデンサ機能を向上することができる。それにより、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。
【0019】
また、前記少なくとも一対の金属板は、前記スイッチング素子近傍のみ、対向する面積が広くなっていることが好ましい。
【0020】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、スイッチング素子近傍は、一対の金属板の対向する面積が広くなっているので、スイッチング素子近傍のコンデンサ容量を部分的に異ならせることができる。ゆえに、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。さらには、電力配線装置の低コストが図れる。
【0021】
また、前記少なくとも一対の金属板間に少なくとも一つの誘電体が挟持されていることが好ましい。
【0022】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、スイッチング素子近傍とその箇所以外で、異なる誘電体を用いることができるので、スイッチング素子近傍のコンデンサ容量を部分的に異ならせることができる。ゆえに、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。
【0023】
前記少なくとも一対の金属板は、絶縁材料でコーティングされていることが好ましい。
【0024】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、スイッチング素子近傍に、コンデンサ機能を配置することができる。さらに、金属板が絶縁材料によりコーティングされているので、金属板で構成されるコンデンサ容量を比較的大きくできる。ゆえに、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を発生位置近傍で確実に低減できる。
【0025】
また、前記少なくとも一対の金属板の間に、前記スイッチング素子が配置され、かつ前記一対の金属板に直接接合されていることが好ましい。
【0026】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、一対の金属板が、スイッチング素子に直接接合されているので、スイッチング素子で発生する熱を金属板を介して、放熱することができる。
【0027】
また、前記少なくとも一対の金属板と、前記少なくとも1つのスイッチング素子は、モジュール化されていることが好ましい。
【0028】
このように構成された電力変換器の電力配線装置においては、金属板とスイッチング素子が例えば絶縁性樹脂でモールドされているので、スイッチング素子近傍の金属板の距離を極限まで短くすることができる。また、モールドした樹脂が金属板の固定も兼ねる。
【0029】
ゆえに、スイッチング素子近傍のコンデンサ機能を向上させつつ、高信頼性の電力配線装置を実現できる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明の電力変換器の電力配線装置においては、一対の金属板の形状を工夫することにより、効率よくスイッチング素子近傍にのみ大容量のコンデンサ機能を持たせることができる。したがって、追加部品がなく、サイズは小型のままで、金属板形状で容易にコンデンサ機能を向上させ、スイッチングによる雑音やEMI(電磁干渉)を十分に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置の全体構成を示す斜視図であり、図2はその等価回路図である。
【0033】
図1において、スイッチング素子10にはドレイン端子101、ソース端子102及び、ゲート端子103が任意に配置されている。また、金属板11及び12は、ラミネート状になるように配置され、かつ互いの距離が、スイッチング素子10近傍のみで短くなるように配置されている。さらに、一対の金属板11、12のうち、一方の金属板11のスイッチング素子接続部110がスイッチング素子10のドレイン端子101に配線経路が極力短くなるように接続され、他方の金属板12のスイッチング素子接続部120がスイッチング素子10のソース端子102に配線経路が極力短くなるように接続されている(接続状態は図示しない)。これらの一対の金属板11、12は、スイッチング素子10を介して電気的に接続されている。
【0034】
ここで、スイッチング素子接続部110と120は、金属板11、12において、距離が短くなるように配置されている。このようにすることで、スイッチング素子10近傍に、金属板11のスイッチング素子接続部110と、金属板12のスイッチング素子120との間で構成されるコンデンサ20を配置することができる。
【0035】
図2に示す電力変換器の電力配線装置の等価回路において、スイッチング素子10のドレイン端子10aとソース端子10b間に、フライホイールダイオード30が逆並列接続されている。また、前述したコンデンサ20が、金属板11及び12各々との間に配線インダクタンスL1及びL2を介して接続されている。
【0036】
このような回路構成を有する電力変換器において、金属板11からスイッチング素子10を介して金属板12へ電力を供給する状態において、ゲート端子103へ駆動信号を印加すると、スイッチング素子10はターンオン・ターンオフを行う。しかし、ターンオン時には流れる電流が急激に増大し、ターンオフ時にはスイッチング素子10のドレイン端子とソース端子間にサージ電圧が発生してしまう。これにより、雑音やEMI(電磁干渉)が発生するが、本発明は、上記構成とすることで、コンデンサ20にてターンオフ時におけるサージ電圧が抑制される。さらに、金属板11及び12と、コンデンサ20を接続するための配線インダクタンスL1及びL2を極力短くできるため、効率よくサージ電圧を抑制することが可能となる。また、フィルムコンデンサ及びセラミックコンデンサを別部品をドレイン端子とソース端子間に接続する場合においては、各々のコンデンサにおける温度変化及び経時変化なども考慮する必要があるが、本発明においては、そのようなことを考慮する必要がない。
【0037】
ここで、金属板11及び12を絶縁材料などでコーティングすることで、金属板11及び12のスイッチング素子接続部110と120の距離を空気中より短くできるので、コンデンサ容量を大きくすることが可能となり、さらなる効果が期待できる。
【0038】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置の全体構成を示す斜視図である。
【0039】
図3において、スイッチング素子10aにはドレイン端子101a、ソース端子102a及び、ゲート端子103aが任意に配置されている。また、金属板11a及び12aは、ラミネート状になるように配置され、かつ金属板11a及び12aの対向する面積が局所的に広くなるように各々形成されている。さらに、一対の金属板11a、12aのうち、一方の金属板11aのスイッチング素子接続部110aがスイッチング素子10aのドレイン端子101aに配線経路が極力短くなるように接続され、他方の金属板12aのスイッチング素子接続部120aがスイッチング素子10aのソース端子102aに配線経路が極力短くなるように接続されている(接続状態は図示しない)。これらの一対の金属板11a、12aは、スイッチング素子10を介して電気的に接続されている。
【0040】
ここで、スイッチング素子接続部110aと120aは、スイッチング素子10の近傍になるように構成されている。
【0041】
このようにすることで、スイッチング素子10近傍に、金属板11aのスイッチング素子接続部110aと、金属板12aのスイッチング素子120aとの間で構成されるコンデンサ20aを配置できる。
【0042】
よって本発明は、上記構成とすることで、コンデンサ20aにてターンオフ時におけるサージ電圧が抑制される。さらに、金属板11a及び12aと、コンデンサ20aを接続するための配線インダクタンスL1及びL2を極力短くできるため、効率よくサージ電圧を抑制することが可能となる。また、フィルムコンデンサ及びセラミックコンデンサを別部品をドレイン端子とソース端子間に接続する場合においては、各々のコンデンサにおける温度変化及び経時変化なども考慮する必要があるが、本発明においては、そのようなことを考慮する必要がない。
【0043】
さらには、単なる平板で金属板11a及び12aを形成することができるため、電力配線装置の低コスト化が図れる。
【0044】
また、スイッチング素子を並列使用する場合などには、スイッチング素子部の平面配置する面積が単独使用より広くなるため、特に有効である。
【0045】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置において、金属板のスイッチング素子接続部が構成しているコンデンサ20bを抽出して示す図である。このコンデンサ20b以外の構成は、図1に示す第1実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置とほぼ同じであるので詳細説明を省略する。
【0046】
この第3実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置のコンデンサ20bにおいては、スイッチング素子接続部110b及び120bにより、構成されている。また、スイッチング素子接続部110b及び120bは、少なくとも一つの屈曲部1000(図4では9つの屈曲部)を備え、かつスイッチング素子接続部110bと120b互いの距離が等しくなるように並行配置されている。
【0047】
このように構成された第3実施形態のコンデンサ20bにおいては、スイッチング素子接続部110bと120bの対向する単位あたり面積が、スイッチング素子の近傍において広く構成できるため、コンデンサ容量を大きくすることができる。したがって、スイッチング素子の近傍に、比較的容量の大きいコンデンサを配置することができるため、装置の小型化が図れる。
【0048】
なお、スイッチング素子接続部110b、120bの互いに対向する面側に、多数の突起形状を備えることでも、屈曲部1000と同様な効果が得られる。
【0049】
また、屈曲部1000及び突起形状の先端部は、尖らずに滑らかな形状にすることが望ましい。そうすることにより、不要なスパークなどを抑制でき、信頼性の向上が図れる。
【0050】
(第4実施形態)
図5は本発明の第4実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置の全体構成を示す斜視図である。ただし、第1の実施形態に示したスイッチング素子10を備えているが、このスイッチング素子10については、図示を省略している。
【0051】
この第4実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置においては、金属板11b、12bで構成され、金属板11bと12bは平行配置されている。ここで、スイッチング素子の近傍以外は、配線金属板110c及び120cにより、構成されている。また、配線金属板110c及び120cは、少なくとも一つの貫通穴2000を備え、こららは互いに重ならないように配置され、かつ配線金属板110cと120cは互いの距離が等しくなるように並行配置されている。ここで、金属板110c、120cは、スイッチング素子近傍の金属板110d、120dと、各々電気的及び機械的に接続されている。
【0052】
平行配置される一対の金属板110c、120cは、対向する面積や互いの距離に依存して、コンデンサ容量をもつ。しかしながら、先に説明したように、スイッチング素子のターンオフ時に発生するサージ電圧は、スイッチング素子近傍に任意のコンデンサを配置することで、抑制される。
【0053】
ここで、第4実施形態の配線金属板110cと120cにおいては、互いに重ならないように貫通穴を形成されているので、ラミネート形状による配線インダクタンス低減効果を保ちつつ、金属板110cと120cで構成されるコンデンサ容量を減らすことができる。したがって、スイッチング素子近傍以外に配線金属板110cと120cを用い、かつスイッチング素子近傍には、貫通穴などを形成していない110d、120dを配置することで、スイッチング素子近傍にのみ、サージ電圧抑制効果のあるコンデンサ機能を配置できる。
【0054】
(第5実施形態)
図6は本発明の第5実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置における図である。一対の金属板11c、12cの間に少なくとも一つの誘電体を配置する以外は、図1に示す第1実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置と同じであるので詳細説明を省略する。
【0055】
この第5実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置においては、一対の金属板11c、12cの間に、誘電体40、41a及び41bを配置している。それ以外の構成は、図1に示す構成と同じである。これらの一対の金属板11c、12cは、スイッチング素子10を介して電気的に接続されている。
【0056】
また、誘電体40と、41a及び41bは誘電率が異なっており、誘電体40は41a及び40bよりも高誘電率である。さらに、高誘電率である誘電体40を、スイッチング素子接続部110と120の間に配置し、低誘電率である誘電体41a及び40bを、スイッチング素子接続部以外に配置する。
【0057】
このように構成された第5実施形態においては、スイッチング素子接続部110と120で構成されるコンデンサ容量を、誘電体が配置されていない場合よりも大きくすることができる。したがって、スイッチング素子近傍に、比較的容量の大きいコンデンサを配置することができるため、装置の小型化が図れる。
【0058】
(第6実施形態)
図7は本発明の第6実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置における図である。一対の金属板11d、12dを等間隔距離で配置し、この間にスイッチング素子10aを直接接合で配置するものであり、その他については図1に示す第1実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置と同様であるので詳細説明を省略する。
【0059】
この第6実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置においては、一対の金属板11d、12dの間に、スイッチング素子10aを配置し、かつ金属板に対して直接接合している。
【0060】
このように構成された第6実施形態においては、スイッチング素子10aと、金属板が構成するコンデンサとの間の配線インダクタンスを最大限小さくすることができ、さらには、スイッチング素子10aで発生する熱を金属板により放熱できる。したがって、上記した各実施形態と同様の効果が得られると同時に、スイッチング素子が発生する熱を効率よく放熱でき、装置の小型化が図れる。
【0061】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態に係わる電力変換器のモジュールは、電力配線装置とスイッチング素子をモジュール化したことを特徴とする。それ以外の構成は、図7に示す第6実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置とほぼ同じであるので詳細説明を省略する。
【0062】
図8は、本発明の第7実施形態に係わる電力変換器のモジュール200の構成図である。
【0063】
このように構成された第7実施形態においては、少なくとも一つのスイッチング素子10aと少なくとも一対の金属板11d、12dが、絶縁樹脂130などでモジュール化されており、コンデンサ機能を内蔵した半導体モジュールを構成している。したがって、コンデンサを構成する金属板間に、モジュール化するための絶縁樹脂を配置することができる。さらに、上記した各実施形態と同様の効果が得られ、さらには、金属板の固定が強固なものになり、信頼性の向上が図れる。
【0064】
以上に述べた各実施形態においては、金属板は例えば銅で構成することが可能であるが、アルミもしくはそれらの合金などの材料であっても構わない。
【0065】
また、スイッチング素子は、シリコンやSiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)材料などで構成されるIGBT及びMOSFETで実現することができる。
【0066】
また、複数相のインバータにおいて適用する場合には、スイッチング素子ごとに任意のコンデンサ容量となるように、金属板構成を設計すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の電力配線装置を電力変換器に用いることにより、低コストで、小型かつ高信頼性のコンデンサ機能を備えた金属板を提供することができ、スイッチング素子の高速スイッチング動作により発生するサージ電圧を大幅に低減することが可能となるため、ハイブリッド電気自動車及び電気自動車の車載電源(インバータ、コンバータなど)、産業用ロボット及び家庭用ロボット、エレベータの電源を含めたあらゆる電源、さらには高速回転が要求されるモータ及びジェネレータ用の電力変換器、等々に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置の全体構成を示す斜視図
【図2】同実施形態の電力変換器のブスバー装置の等価回路図
【図3】本発明の第2実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置の全体構成を示す斜視図
【図4】本発明の第3実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置において、金属板のスイッチング素子接続部が構成しているコンデンサを示す図
【図5】本発明の第4実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置において、金属板のスイッチング素子接続部以外が構成している金属板を示す図
【図6】本発明の第5実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置の全体構成を示す斜視図
【図7】本発明の第6実施形態に係わる電力変換器の電力配線装置の全体構成を示す斜視図
【図8】本発明の第7実施形態に係わる電力変換器のモジュールの構成図
【図9】従来の電力変換器を示す図
【符号の説明】
【0069】
10,10a スイッチング素子
11,12,11a,12a,11b,12b,11c,12c,11d,12d 金属板
20,20a,20b,20c コンデンサ
30 フライホイールダイオード
40,41a,41b 誘電体
101 ドレイン端子
102 ソース端子
103 ゲート端子
110,110a,110b,110c,120,120a,120b,120c スイッチング素子接続部
200 半導体モジュール
1000 屈曲部
2000 貫通穴
L1,L2 配線インダクタンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の距離だけ離間して配置された少なくとも一対の金属板と、電流を制御するスイッチング素子と、を備え、
前記一対の金属板は前記スイッチング素子を介して接続され、
前記スイッチング素子近傍に位置する前記一対の金属板の一部がコンデンサとして機能することを特徴とする電力配線装置。
【請求項2】
前記一対の金属板間の距離が前記スイッチング素子近傍のみ短いことを特徴とする請求項1記載の電力配線装置。
【請求項3】
前記少なくとも一対の金属板は、少なくとも一つの屈曲部を有し、前記屈曲部は、前記スイッチング素子近傍に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電力配線装置。
【請求項4】
互いに所定の距離だけ離間して配置された少なくとも一対の金属板と、電流を制御するスイッチング素子と、を備え、
前記一対の金属板は前記スイッチング素子を介して接続され、
前記少なくとも一対の金属板は、前記スイッチング素子近傍以外は、互いに対向する位置に重ならないように複数の穴を備えていることを特徴とする電力配線装置。
【請求項5】
前記少なくとも一対の金属板は、前記スイッチング素子近傍のみ、対向する面に複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載の電力配線装置。
【請求項6】
前記少なくとも一対の金属板は、前記スイッチング素子近傍のみ、対向する面積が広くなっていることを特徴とする請求項1記載の電力配線装置。
【請求項7】
前記少なくとも一対の金属板間に少なくとも一つの誘電体が挟持されていることを特徴とする請求項1記載の電力配線装置。
【請求項8】
前記少なくとも一対の金属板は、絶縁材料でコーティングされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電力配線装置。
【請求項9】
前記少なくとも一対の金属板の間に、前記スイッチング素子が配置され、かつ前記一対の金属板に直接接合されていることを特徴とする請求項1記載の電力配線装置。
【請求項10】
前記少なくとも一対の金属板と、前記少なくとも1つのスイッチング素子は、モジュール化されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電力配線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−77470(P2009−77470A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241871(P2007−241871)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】