説明

電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造

【課題】コストや重量の増加を招くことなく、スタータモータやオルタネータから発生する電磁波の作動制御装置への影響を抑制する。
【解決手段】車両のエンジン3に備えられた可変動弁機構20の電動モータ21のモータコントローラ22(作動制御装置)の配置構造であって、モータコントローラ22は、スタータモータ11との間にエンジン3が位置するとともに、オルタネータ10との間にエンジンマウント7が位置するように、エンジンルーム2内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電動アクチュエータの作動制御装置の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンの排出ガスの改善や燃焼効率の改善を図るために、例えばレシプロエンジンのおいては可変圧縮機構(特許文献1)や可変動弁機構等(特許文献2)を用いることがある。これら機構を駆動するためにはエンジンの動弁系等のフリクションに打ち勝つモータートルクが必要となるため、大容量の電動アクチュエータが用いられる。
【0003】
また、電動アクチュエータを作動する制御装置は、電動アクチュエータと別体でエンジンルーム内に配置され、電動アクチュエータに電源を供給する配線と電動アクチュエータを作動制御するための制御線が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−104232号
【特許文献2】特開2009−30577号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジンルーム内には、大電流を扱うスタータモータやオルタネータ等のように電磁波を発生する虞のある機器が存在する。
したがって、スタータモータやオルタネータから発生した電磁波が、エンジンルーム内の電動アクチュテータ作動制御装置にノイズとして混入し、電動アクチュエータの作動に影響を及ぼす虞がある。
【0006】
そこで、電動アクチュエータの作動制御装置を電磁波を遮断する遮蔽物で覆う方法が考えられるが、コストや重量の増加を招いてしまう。
また、電動アクチュエータの作動制御装置から電動アクチュエータに大電流が供給される場合には、電動アクチュエータの作動制御装置やその配線から電磁波が発生する虞があり、エンジンルーム内の他の作動制御装置、例えばエンジンを作動制御するECU(エンジンコントロールユニット)に影響を及ぼす虞がある。
【0007】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、
コストや重量の増加を招くことなく、スタータモータやオルタネータから発生する電磁波が電動アクチュエータ作動へ影響することを抑制することが可能となる電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載された発明では、車両のエンジンに備えられた電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造であって、前記エンジンは、エンジンマウントによって前記車両に連結されており、前記作動制御装置は、前記エンジンの電装補機との間に前記エンジンまたは前記エンジンマウントが位置するように、前記車両のエンジンルーム内に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載された発明では、請求項1において、前記電装補機はスタータモータ及びオルタネータであり、前記スタータモータは前記エンジンの一方の車幅方向側面で、かつ、車両前後方向前側に配置され、前記オルタネータは前記エンジンの他方の車幅方向側面で、かつ、車両前後方向前側に配置され、前記エンジンマウントは前記他方の車幅方向側面で、かつ、前記オルタネータより車両前後方向後側に配置され、前記電動アクチュエータは前記他方の車幅方向側面に配置され、前記作動制御装置は前記他方の車幅方向側面で、かつ、前記エンジンマウントより車両前後方向後側に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された発明では、請求項2において、前記エンジンは可変動弁機構を備え、前記電動アクチュエータは前記可変動弁機構のバルブリフト特性を連続的に変更する電動アクチュエータであり、前記エンジンマウントの車両高さ方向上方に配置され、前記オルタネータは、前記エンジンマウントの車両高さ方向下方に配置され、前記作動制御装置は、前記エンジンマウントの車両高さ方向上方に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載された発明では、請求項1〜3のいずれか1項において、前記エンジンルーム内にはエンジンを作動制御するエンジンコントロールユニットが備えられ、前記作動制御装置は、前記エンジンコントロールユニットとの間に前記エンジンが位置するように配置されることを特徴とする。
また、請求項5に記載された発明では、請求項1〜4のいずれか1項において、前記作動制御装置は、前輪サスペンション装置のスプリングを収納するスプリングハウスの前方、かつ、前記エンジンマウントの後方に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、エンジンルーム内で電流を扱う電装補機から電磁波が発生しても、エンジンやエンジンマウントによって遮られ、電動アクチュエータの作動制御装置へ電磁波によるノイズが混入し難くなる。即ち、エンジンやエンジンマウントといったエンジンルーム内にある機器を利用して、電装補機から発生した電磁波による作動制御装置への影響を抑制することができ、コストや重量の増加を招くことなく、コントロールユニット、延いては電動アクチュエータの誤作動を容易に防止することができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、比較的大電流を扱う電装補機であるスタータモータはエンジンの一方の車幅方向側面に配置される。一方、作動制御装置はエンジンの他方の車幅方向側面に配置されるので、スタータモータと作動制御装置との間にエンジンが配置されることになり、スタータモータから電磁波が発生してもエンジンによって遮られ、電動アクチュエータの作動制御への影響を抑制することができる。
【0014】
また、エンジンの他方の車幅方向側面には、スタータモータと同様に比較的大電流を扱う電装補機であるオルタネータが車両前後方向前側に配置されるとともに、エンジンマウントがオルタネータより車両前後方向後側に配置される。さらに、作動制御装置がエンジンマウントより車両前後方向後側に配置されるので、オルタネータから電磁波が発生してもエンジンマウントによって遮られ、電動アクチュエータの作動制御への影響を抑制することができる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、電動アクチュエータ間と作動制御装置間の配線をエンジンマウント上に配置でき、動弁系のバルブリフト特性を制御する作動制御装置およびハーネスに、オルタネータから発生する電磁波によるノイズが制御線に混入することが防がれ、エンジンの性能を左右するバルブリフト機構が誤作動することを抑制できる。
また、請求項4の発明によれば、作動制御装置とエンジンコントロールユニットとの間にエンジンが存在しているので、作動制御装置から電磁波が発生してもエンジンによって遮られ、エンジンコントロールユニットへ電磁波の混入が妨げられる。よって、作動制御装置から発生した電磁波のエンジンコントロールユニットへの影響を抑制することができる。
【0016】
また、請求項5の発明によれば、作動制御装置が比較的強度の高い構造物であるスプリングハウスの近傍に配置されることで、作動制御装置に電磁波の混入を防ぐとともに、固い材料を用いた前記装置が車両衝突時においてキャビンへ侵入することを防止し、エンジンルーム内の衝突時の乗員の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のエンジンルーム内の構成を示す上面図である。
【図2】モータコントローラ(作動制御装置)付近の構造を示す拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造を採用した車両のエンジンルーム内の構成を示す上面図である。図2は、モータコントローラ(作動制御装置)付近の構造を示す拡大上面図である。
図1に示すように、車両(自動車)の車体1の前部には、エンジンルーム2が形成されている。エンジンルーム2は、エンジン3等を格納するために車両のボディ4内に設けられた空間であり、図示しないフードによって上部を開閉可能に覆われている。
【0019】
エンジンルーム2内に搭載されたエンジン3は、シャシフレーム5に支持されている。詳しくは、シャシフレーム5は、左右に間隔をおいて前後方向に延びる1対のサイドメンバ6a、6bを含んで構成されている。エンジン3は、この左右のサイドメンバ6a、6bに夫々エンジンマウント7を介して支持されている。エンジンマウント7は、ゴム等の弾性体を有しており、例えばカップ状に形成された2つの鋼製のブラケットの間に円柱状のゴムを挟んで構成されている。
【0020】
エンジンマウント7は、エンジン3の左右及び後方に複数設けられ、いずれもエンジン3の前端より10cm以上は後方に配置されている。
エンジン3には、電装補機として、オルタネータ10及びスタータモータ11が備えられている。オルタネータ10は、エンジン3の出力(回転駆動力)を電力に変換する発電機であって、エンジン3の右前側方に配置されている。エンジン3を始動させるスタータモータ11は、エンジン3の左側方に配置されている。これらのオルタネータ10及びスタータモータ11は、エンジンルーム2内の電装補機の中でも特に大電流を扱う機器である。
【0021】
図2に示すように、エンジン3には、吸気バルブのリフト量を可変させる可変動弁機構20が備えられている。本実施形態の可変動弁機構20は、クランクシャフトの回転に伴って回転するカムシャフト20aに対して、ロッカーアーム20bを介して吸気バルブを駆動する動弁機構に電動モータ21が備えられている。電動モータ21は、ウォームシャフト20c及びウォームホイール20dを介して、カムシャフト20aに設けられた吸気カムに対する図示しないセンターロッカーアームの転接位置を可変させ、揺動カム20eを介してロッカーアーム20bの揺動角を可変させて、吸気バルブのリフト量を変化させる機能を有している。電動モータ21は、エンジン3の上部右側に設けられている。
【0022】
可変動弁機構20には可変状態をセンシングするセンサ(図示せず)が備えられており、現在のセンサ値が目標値となるように電動モータ21は、モータコントローラ22により作動制御される。モータコントローラ22は、本発明で言う作動制御装置の一例であり、負荷、回転速度、アクセル開度等、各種エンジン3の運転状況を入力し、これに対応した吸気バルブのリフト量となるように、電動モータ21に電力を供給して作動制御する。たとえば、電動モータ21がホールセンサを内蔵し、そのホールセンサ信号のON、OFF回数をモータコントローラ22でカウントすることで制御するものもある。このため、モータコントローラ22に他電装機器からの電磁波によるノイズが混入することによりセンサ値や目標値が誤った値になると、可変動弁機構20の制御が誤った状態となるためエンジン本体が設定された性能、燃費、ドライバビリティを発揮することができなくなる。
【0023】
モータコントローラ22は衝突時にその基盤が損傷しないようその一部にアルミダイキャストが用いられその他を樹脂材料によって覆われている。モータコントローラ22は、エンジンルーム2内、右前輪側のスプリングハウス25の前方に配置されており、エンジン3の上部右側に配置された電動モータ21と配線26を介して接続されている。スプリングハウス25は、サスペンション装置のスプリングを収納する筒状の鋼性の部材であって、車両のシャシフレーム5と一体で形成されている。電動モータ21とモータコントローラ22とを別体にすることで、電動モータ21を他車種と共通化して部品コストを低減させるとともに、エンジン3の振動を直接受けないようにすることができる。
【0024】
特に、本実施形態では、モータコントローラ22は右前輪側のスプリングハウス25の前方に配置されることで、モータコントローラ22とオルタネータ10との間をエンジンマウント7が遮るようなレイアウトとなっている。また、電動モータ21とモータコントローラ22間の配線26はエンジンマウント上に配置されている。更には、モータコントローラ22とスタータモータ11との間をエンジン3が遮るように配置されている。
【0025】
更には、エンジン3を作動制御するECU(エンジンコンロトールユニット)30は、
エンジン3の左側に配置されている。即ち、エンジン3の右側に配置されたモータコントローラ22とECU30との間をエンジン3が遮るように配置されている。
以上のように、本実施形態では、モータコントローラ22とオルタネータ10との間をエンジンマウント7が遮るように配置している。さらに、電動モータ21とモータコントローラ22の配線26をエンジンマウント7の上方に配置することで、オルタネータ10から発生した電磁波がモータコントローラ22及び配線26に到達することをエンジンマウント7によって妨げられる。これにより、オルタネータ10から発生した電磁波がモータコントローラ22から発せられる信号に対しノイズとして混入することを抑え、電動モータ21即ち可変動弁機構20の誤作動を防止することができる。
【0026】
また、モータコントローラ22とスタータモータ11との間をエンジン3が遮るように配置することで、スタータモータ11から発生した電磁波がモータコントローラ22に到達することをエンジン3によって妨げられ、スタータモータ11から発生した電磁波によるモータコントローラ22から発せられる信号に対しノイズとして混入することを抑えることができる。特にエンジン3はエンジンルーム内で最も大きい物体であるので、モータコントローラ22だけでなく、モータコントローラ22と電動モータ21との間を接続する配線26に対しても、スタータモータ11から発生した電磁波を遮り、配線26への電磁波の侵入を抑制することができる。
【0027】
一方、電動モータ21を作動させるためにモータコントローラ22から電動モータ21へ電力供給する際に、モータコントローラ22から、あるいはモータコントローラ22と電動モータ21とを接続する配線26から電磁波が発生する虞がある。本実施形態では、モータコントローラ22及び配線26がエンジン3の右側に配置されているので、エンジン3の左側に配置されているECU30との間をエンジン3が遮ることになり、ECU30に電磁波が到達し難くなる。よって、電動モータ21の作動回路から発生する電磁波によりECU30から発せられる信号に対しノイズとして混入することを抑制することができる。
【0028】
また、モータコントローラ22は、比較的強度の高いスプリングハウス25の近傍に配置されているので、固い材料を用いたモータコントローラ22が車両衝突時においてキャビンへ侵入することを防止し、エンジンルーム内の衝突時の乗員の安全性を向上させることができる。
また、モータコントローラ22のキャビンへの進入防止のために、衝突時のエネルギーにより折損するブラケットを用いてモータコントローラ22を保持する必要や、モータコントローラ22を衝突時にキャビン以外の方向へ向かうようガイドを設ける必要がなく、モータコントローラ22と電動モータ21とを接続する配線26がこれらブラケットにより損傷することを防止し、漏電による火災発生を防止することができる。
【0029】
さらに、電磁波によるノイズが混入した結果、可変リフト量へ影響が及び、可変動弁機構20の制御が誤った状態となり、エンジン本体が設定された性能、燃費、ドライバビリティを発揮することができなくなることを回避できる。なお、上記の可変動弁機構20は一例であって、上記の構成に限定されるものではない。電動アクチュエータにより駆動するものであれば、吸気バルブまたは排気バルブの種々の構成の可変動弁機構に対しても本願発明を適用することができる。
【0030】
更には、可変動弁機構以外でも、エンジンルーム内に設けられた電動アクチュエータを作動制御するコントロールユニットに対しても、本願発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
2 エンジンルーム
3 エンジン
7 エンジンマウント
10 オルタネータ
11 スタータモータ
20 可変動弁機構
21 電動モータ
22 モータコントローラ
25 スプリングハウス
26 配線
30 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンに備えられた電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造であって、
前記エンジンは、エンジンマウントによって前記車両に連結されており、前記作動制御装置は、前記エンジンの電装補機との間に前記エンジンまたは前記エンジンマウントが位置するように、前記車両のエンジンルーム内に配置されることを特徴とする電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造。
【請求項2】
前記電装補機は、スタータモータ及びオルタネータであり、
前記スタータモータは前記エンジンの一方の車幅方向側面に配置され、
前記オルタネータは前記エンジンの他方の車幅方向側面で、かつ、車両前後方向前側に配置され、
前記エンジンマウントは前記他方の車幅方向側面で、かつ、前記オルタネータより車両前後方向後側に配置され、
前記電動アクチュエータは前記他方の車幅方向側面に配置され、
前記作動制御装置は前記他方の車幅方向側面で、かつ、前記エンジンマウントより車両前後方向後側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造。
【請求項3】
前記エンジンは可変動弁機構を備え、
前記電動アクチュエータは前記可変動弁機構のバルブリフト特性を連続的に変更する電動アクチュエータであり、前記エンジンマウントの車両高さ方向上方に配置され、
前記オルタネータは、前記エンジンマウントの車両高さ方向下方に配置され、
前記作動制御装置は、前記エンジンマウントの車両高さ方向上方に配置されることを特徴とする請求項2に記載の電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造
【請求項4】
前記エンジンルーム内には前記エンジンを作動制御するエンジンコントロールユニットが備えられ、
前記作動制御装置は、前記エンジンコントロールユニットとの間に前記エンジンが位置するように配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造。
【請求項5】
前記作動制御装置は、前輪サスペンション装置のスプリングを収納するスプリングハウスの前方かつ、前記エンジンマウントの後方に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動アクチュエータの作動制御装置の配置構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−137046(P2012−137046A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290510(P2010−290510)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】