電動アクチュエータ
【課題】バックアップコンデンサに適切な量の電気エネルギーを常に蓄積させながら、いつ停電が生じても期待されるリターン動作を確実に行わせるようにする。負担をかけない適切な値の電流でバックアップコンデンサの充電を行う。
【解決手段】バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewを定期的に測定する。最新の静電容量値Cnewを測定する毎に、その測定された静電容量値Cnewに基づいてバルブ200をその時の設定開度θspから緊急開閉位置(例えば、全閉位置)までリターン動作させるために必要な充電電圧(必要充電電圧)VCminを算出する。算出された必要充電電圧VCminが検出された端子間電圧VCよりも高い場合、バルブの実開度θpvと設定開度θspとに基づいて充電電流Iaの値を決定し、端子間電圧VCが必要充電電圧VCminとなるまでバックアップコンデンサ16への充電を行う。
【解決手段】バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewを定期的に測定する。最新の静電容量値Cnewを測定する毎に、その測定された静電容量値Cnewに基づいてバルブ200をその時の設定開度θspから緊急開閉位置(例えば、全閉位置)までリターン動作させるために必要な充電電圧(必要充電電圧)VCminを算出する。算出された必要充電電圧VCminが検出された端子間電圧VCよりも高い場合、バルブの実開度θpvと設定開度θspとに基づいて充電電流Iaの値を決定し、端子間電圧VCが必要充電電圧VCminとなるまでバックアップコンデンサ16への充電を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータの駆動力によってバルブの開閉を制御する電動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調設備やプラント等に使用されるバルブの開閉を制御する装置として、電動アクチュエータが用いられている。この電動アクチュエータでは、モータの駆動力によって、冷水や温水、高温の蒸気などが流れる配管に装着されたボール弁やバタフライ弁等を弁体として用いたバルブの開閉を制御する。
【0003】
このような電動アクチュエータとしてスプリングリターン型の電動アクチュエータが存在する。このスプリングリターン型の電動アクチュエータは、停電時のバルブの緊急開閉手段としてバルブの弁軸やそれを回動させる出力軸にスプリングを備え、通常の稼働時にはバルブを回転駆動するモータの回転力を利用してスプリングを巻き上げておき、停電時にモータの回転力がなくなると、巻き上げられたスプリングの付勢力で緊急開閉位置までの開動作又は閉動作を強制的に行わせる。なお、緊急開閉位置は、全閉位置として定められる場合もあるし、全開位置として定められる場合もある。
【0004】
しかし、このようなスプリングリターン型の電動アクチュエータでは、バルブの停電時の開動作や閉動作が非常に迅速に行われるという利点があるが、(1)開閉時に比較的大きな音がする、(2)通常稼働時にスプリングを巻き上げるために大きなトルクを発生するモータが必要となり消費電力が大きくなる、(3)緊急開閉時にスプリングがオーバランすなわち必要以上に開動作や閉動作をして装置に大きなダメージを与える等の問題点を有している。
【0005】
そこで、スプリングの代わりに、電気二重層コンデンサをバックアップコンデンサとして電動アクチュエータに搭載して、通常時にバックアップコンデンサを充電しておき、停電時にバックアップコンデンサに蓄えられている電気エネルギーで電動モータを駆動してバルブを強制的に開動作や閉動作させる電動アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−218433号公報
【特許文献2】特開2008−89109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、バックアップコンデンサに蓄電できる電気エネルギーは、バックアップコンデンサの静電容量に依存し、この静電容量は経年変化、印加電圧、温度変化等によって減少するため、バックアップコンデンサの端子間電圧を監視して常に予め定められた電圧値を保つものとしても、時間を経た後に停電が起こった場合、蓄電エネルギーが足らず、期待される開動作や閉動作(リターン動作)を行うことができない、という事態が発生する虞がある。
【0008】
また、停電時のバルブの開度は特定することができないため、通常、バックアップコンデンサには常に全開から全閉又は全閉から全開まで動作させるのに必要な電気エネルギーを蓄えるようにする。これに対して、電動アクチュエータはバルブを必ずしも全閉(開度0%)又は全開(開度100%)の位置に制御するとは限らず、中間開度に制御される場合が多い。中間開度にバルブを制御中に停電が発生した場合、その中間開度から全閉または全開まで動作させればよいのにも拘わらず、バックアップコンデンサには全開から全閉又は全閉から全開まで動作させるのに必要な電気エネルギーが蓄えられている。このため、バックアップコンデンサへの電気エネルギーの過剰蓄積(過剰充電)となり、省エネルギーが妨げられると共に、バックアップコンデンサの寿命も短くなる。
【0009】
なお、特許文献2には、停電時におけるバルブの開動作又は閉動作に必要なだけの電力をバックアップコンデンサに充電させることについて記載されている。しかしながら、この記載に基づいて、バルブの現在の開度位置から緊急開閉位置までの開動作又は閉動作に必要なだけの電力を算出し、この電力をバックアップコンデンサに充電させるようにしたとしても、バックアップコンデンサの静電容量は経年変化、印加電圧、温度変化等によって減少するため、適切な量の電気エネルギーがバックアップコンデンサに蓄積されるとは限らず、期待される開動作や閉動作(リターン動作)を行うことができない虞がある。
【0010】
また、バックアップコンデンサとして用いられる電気二重層コンデンサは、大電流による急速充電が可能であるという特色がある。しかし、大電流で充電を行うと、電気二重層コンデンサの内部抵抗での発熱を生じて静電容量が劣化してしまう。また、充電回路の電流容量の高出力化が必要となり、コストアップとなる。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、バックアップコンデンサに適切な量の電気エネルギーを常に蓄積させながら、いつ停電が生じても期待されるリターン動作を確実に行わせることが可能な電動アクチュエータを提供することにある。
また、バックアップコンデンサの内部抵抗での発熱による静電容量の劣化を防止すると共に、充電回路の電流容量の高出力化を不要としてコストダウンを図ることが可能な電動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために本発明は、電源部と、この電源部からの電力の供給を受けてバルブを駆動するモータと、電源部からの電力の供給を受けて充電されるバックアップコンデンサとを備え、停電時にバックアップコンデンサに蓄えられている電気エネルギーによってモータを強制的に駆動しバルブを所定の開度位置までリターン動作させる電動アクチュエータにおいて、バルブの実開度を検出する開度検出手段と、バックアップコンデンサの端子間電圧を検出する端子間電圧検出手段と、バックアップコンデンサの最新の静電容量値を定期的に測定する静電容量測定手段と、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいてバルブをその時の開度設定値から所定の開度位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧を必要充電電圧として算出する必要充電電圧算出手段と、必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高い場合、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値を決定し、端子間電圧検出手段によって検出される端子間電圧が必要充電電圧となるまでバックアップコンデンサへの充電を行う充電手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が定期的に測定され、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいてバルブをその時の開度設定値から所定の開度位置(緊急開閉位置)までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧が必要充電電圧として算出される。そして、算出された必要充電電圧と検出されたバックアップコンデンサの端子間電圧とが比較され、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高い場合には、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値が決定され、端子間電圧が算出された必要充電電圧となるまでバックアップコンデンサへの充電が行われる。
【0014】
本発明では、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高い場合、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する。この場合、例えば、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高く、かつ、バルブの開度設定値が実開度以下である場合、バックアップコンデンサへの充電電流の値を予め定められた最小充電電流値とするようにする。
【0015】
また、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高く、かつ、バルブの開度設定値が実開度よりも大きい場合、バックアップコンデンサの最新の静電容量値、検出された端子間電圧、算出された必要充電電圧および予め定められた充電時間に基づいて、バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定するようにする。例えば、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとして、バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する。但し、Ia:充電電流の値、Cnew:最新の静電容量値、VCmin:算出された必要充電電圧、VC:検出された端子間電圧、ΔT:充電時間。
【0016】
本発明において、バックアップコンデンサの最新の静電容量値は、例えば次のようにして求めるようにするとよい。バックアップコンデンサに蓄積されている電気エネルギーを所定の放電電流値Ibで放電させ、この放電によって降下して行くバックアップコンデンサの端子間電圧を監視し、この端子間電圧が所定の電圧値V1となった時の放電開始からの時間T1と、電圧値V1よりも低い値として定められた所定の電圧値V2となった時の放電開始からの時間T2とを測定し、この測定した時間T1,T2と放電電流値Ibと電圧値V1,V2よりバックアップコンデンサの最新の静電容量値Cnewを求める。例えば、Cnew=Ib・(T2−T1)/(V1−V2)として、最新の静電容量値Cnewを求める。
【0017】
また、本発明において、バックアップコンデンサの必要充電電圧は、例えば次のようにして求めるようにするとよい。モータの出力をP、バルブの全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブの開度設定値をθsp、バルブの全閉から全開までの全回転角度をθa、バックアップコンデンサの最新の静電容量値をCnewとし、VCmin=〔2P・Ta・θsp/(Cnew・θa)〕1/2として、バックアップコンデンサの必要充電電圧VCminを求める。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、、バックアップコンデンサの最新の静電容量値を定期的に測定し、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいてバルブをその時の開度設定値から所定の開度位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧を必要充電電圧として算出し、算出された必要充電電圧が検出されたバックアップコンデンサの端子間電圧よりも高い場合、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値を決定し、端子間電圧が算出された必要充電電圧となるまでバックアップコンデンサへの充電を行うようにしたので、バックアップコンデンサに適切な量の電気エネルギーを蓄積させながら、いつ停電が生じても期待されるリターン動作を確実に行わせることが可能となる。また、バルブの開度設定値が実開度以下である場合には予め定められた最小充電電流値とするなど、負担をかけない適切な値の電流でバックアップコンデンサの充電を行うようにして、バックアップコンデンサの内部抵抗での発熱による静電容量の劣化を防止すると共に、充電回路の電流容量の高出力化を不要としてコストダウンを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態の要部を示すブロック図である。
【図2】この電動アクチュエータにおける制御回路が実行するメイン動作シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図3】図2に続くメイン動作シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図4】メイン動作シーケンスの処理で実行される充電シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図5】メイン動作シーケンスの処理で実行される静電容量測定シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図6】静電容量測定シーケンスの処理で実行される静電容量値測定の処理を示すフローチャートである。
【図7】静電容量値測定に際するバックアップコンデンサの端子間電圧の変化を示す図である。
【図8】静電容量値測定後にバックアップコンデンサの端子間電圧が充電によって必要充電電圧へ調整される様子を示す図である。
【図9】メイン動作シーケンスの処理で実行される全電気特性測定シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図10】図9に続く全電気特性測定シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図11】全電気特性測定シーケンスの処理で実行される内部抵抗値測定の処理を示すフローチャートである。
【図12】内部抵抗値測定に際するバックアップコンデンサの端子間電圧の変化を示す図である。
【図13】内部抵抗値測定後の静電容量値測定に際するバックアップコンデンサの端子間電圧の変化を示す図である。
【図14】内部抵抗値測定後の静電容量値測定の後にバックアップコンデンサの端子間電圧が充電によって必要充電電圧へ調整される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態の要部を示すブロック図である。同図において、100は本発明に係る電動アクチュエータであり、ボール弁やバタフライ弁等のバルブ200に取り付けられ、電動調節弁として一体化される。また、外部コントローラ300との間で、情報の授受を行う。
【0021】
電動アクチュエータ100は、制御回路1と、不揮発性メモリ2と、A/D変換回路3と、通信回路4と、マルチプレクサ5と、開度指令入力回路6と、電動モータ7と、モータ駆動回路8と、減速機構9と、位置検出機構(ポテンショメータ)10と、温度センサ11と、電源回路12と、電源停止検出回路13と、電源供給切替回路14と、制御電源回路15と、バックアップコンデンサ(電気二重層コンデンサ)16と、コンデンサ端子電圧測定回路17と、充電回路18と、放電回路19と、放電電流測定回路20とを備えている。
【0022】
制御回路1は、中央演算処理装置(CPU)を備えており、不揮発性メモリ2に格納されているプログラムに従って処理動作を行う。不揮発性メモリ2には、バルブ200における弁体の開度を制御するプログラムが格納されている。また、不揮発性メモリ2には、上述したプログラムに従う制御回路(CPU)1の処理動作において用いられる調整データや設定データが格納されている。また、不揮発性メモリ2には、上述したプログラムに従う制御回路(CPU)1の処理動作において得られる測定データが格納される。
【0023】
制御回路(CPU)1には、外部コントローラ300からの弁開度の設定値(設定開度)が開度指令入力回路6→マルチプレクサ5→A/D変換回路3の経路で与えられ、位置検出機構10からの弁開度の実測値(実開度)がマルチプレクサ5→A/D変換回路3の経路で与えられる。
【0024】
制御回路(CPU)1は、A/D変換回路3からの設定開度と実開度とを比較し、設定開度と実開度とが一致するように、モータ駆動回路8へ駆動指令を送る。これにより、電動モータ7が駆動され、この電動モータ7の駆動力が減速機構9を介してバルブ200の弁軸に伝わり、この弁軸に軸着された弁体を操作することによりバルブ200の開度が調整される。位置検出機構10は、減速機構9を介してバルブ200の弁軸の変位量を検出し、弁開度の実測値(実開度)としてマルチプレクサ5へ送る。
【0025】
通信回路4は、外部コントローラ300からのデータ通信を送受信して、制御回路(CPU)1に入出力する。開度指令入力回路6は、外部コントローラ300からの開度指示(アナログ値)を入力してマルチプレクサ5に出力する。電源回路12は、交流電源から直流電源を生成する。電源供給切替回路14は、通常時は電源回路12からの直流電圧を選択出力し、停電時はバックアップコンデンサ16からの直流電圧(充電電圧)を選択出力する。制御電源回路15は電源供給切替回路14からの直流電圧を各電圧に変換し、各回路への制御電源として供給する。電源停止検出回路13は、電源回路12への交流電源の供給の停止(停電)を検出し、電源供給切替回路14および制御回路(CPU)1にその旨を通知する。
【0026】
充電回路18は、電源回路12からの直流電圧を入力とし、バックアップコンデンサ16への充電を行う。充電回路18におけるバックアップコンデンサ16に対する充電タイミングおよび充電電流Iaは制御回路(CPU)1より指示される。放電回路19はバックアップコンデンサ16の放電を行う。放電回路19におけるバックアップコンデンサ16に対する放電タイミングおよび放電電流Ibは制御回路(CPU)1より指示される。
【0027】
放電電流測定回路20は放電回路19における放電電流を検出しマルチプレクサ5に出力する。コンデンサ端子電圧測定回路17はバックアップコンデンサ16の端子間電圧を測定しマルチプレクサ5に出力する。温度センサ11は装置内の温度(バックアップコンデンサ16の近傍の温度)を検出しマルチプレクサ5に出力する。マルチプレクサ5は、温度センサ11、開度指令入力回路6、放電電流測定回路20、コンデンサ端子電圧測定回路17、位置検出機構10からの各出力を切り替えて、A/D変換回路3に出力する。
【0028】
図2および図3に制御回路(CPU)1が不揮発性メモリ2に格納されているプログラムに従って実行する処理動作のフローチャート(メイン動作シーケンスのフローチャート)を分割して示す。以下、このフローチャートに従って、制御回路(CPU)1が実行する処理動作について説明する。
【0029】
制御回路(CPU)1は、電源が投入されると(ステップS101のYES)、電動アクチュエータ100内の各部の自己診断を行い(ステップS102)、自己診断の結果が「異常」であれば(ステップS103のNO)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS104)、その自己診断の結果と動作を停止させた旨の情報を通信回路4を介して外部コントローラ300へ送信する(ステップS105)。
【0030】
自己診断の結果が「正常」であれば(ステップS103のYES)、制御回路(CPU)1は、温度センサ11が検出する装置内の温度を取り込む(ステップS106)。そして、外部コントローラ300からの開度指令の指示があるか否かを確認し(ステップS107)、開度指令の指示がなければ(ステップS107のNO)、直ちにステップS110へ進む。
【0031】
開度指令の指示があれば(ステップS107のYES)、その開度指令の指示によって与えられる弁開度の設定値(設定開度)θspと位置検出機構10からの弁開度の実測値(実開度)θpvとを比較し(ステップS108)、設定開度θspと実開度θpvとが一致するように、モータ駆動回路8へ駆動指令を送り、電動モータ7を駆動する(ステップS109)。これにより、設定開度θspと実開度θpvとが一致すれば(ステップS108のYES)、ステップS110へ進む。
【0032】
制御回路(CPU)1は、ステップS110において、外部コントローラ300からコマンドを受信したか否かをチェックする。外部コントローラ300からコマンドを受信しなかった場合には(ステップS110のNO)、ステップS113(図3)へ進む。外部コントローラ300からコマンドを受信した場合には(ステップS110のYES)、そのコマンドの処理を実行する(ステップS111)。そして、外部コントローラ300へレスポンスを送信し(ステップS112)、ステップS113(図3)へ進む。
【0033】
制御回路(CPU)1は、ステップS113において、充電シーケンスが完了しているか否かをチェックする。充電シーケンスが完了していなかった場合には(ステップS113のNO)、充電シーケンスを実行する(ステップS114)。
【0034】
〔充電シーケンス〕
図4にステップS114で実行される充電シーケンスのフローチャートを示す。この充電シーケンスにおいて、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されているバックアップコンデンサ16の静電容量の初期設定値C0を読み出す(ステップS201)。そして、この読み出した静電容量の初期設定値C0とその時の設定開度θspより、その時の設定開度θspから緊急開閉位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサ16の最低限の充電電圧を必要充電電圧VCminとして計算する(ステップS202)。
【0035】
なお、この実施の形態において、緊急開閉位置は全閉位置とする。また、必要充電電圧VCminは、電動モータ7の出力をP、バルブ200の全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブ200の全閉から全開までの全回転角度をθaとし、読み出した静電容量の初期設定値C0とその時の設定開度θspより、下記(1)式によって求める。
VCmin=〔2P・Ta・θsp/(C0・θa)〕1/2 ・・・・(1)
【0036】
そして、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の端子間電圧の測定値VCとステップS202で求めた必要充電電圧VCminとを比較し(ステップS203)、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上でなければ(ステップS203のNO)、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている最小充電電流値Iaminを充電電流Iaとして読み出し(ステップS204)、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS205)。そして、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上となったことを確認して(ステップS206のYES)、メイン動作シーケンスへ戻る。なお、ステップS203において、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上であった場合には、ステップS204以降の処理は行わず、直ちにメイン動作シーケンスに戻る。
【0037】
〔静電容量測定シーケンス〕
制御回路(CPU)1は、ステップS115(図3)おいて、静電容量の測定タイミングか否かをチェックする。この実施の形態では、静電容量の測定間隔をTC1とし、TC1が経過する毎に静電容量の測定タイミングが発生するものとする。静電容量の測定タイミングが発生すると(ステップS115のYES)、制御回路(CPU)1は、静電容量測定シーケンスの処理を実行する(ステップS116)。図5にステップS116で実行される静電容量測定シーケンスのフローチャートを示す。
【0038】
〔最新の静電容量値の測定〕
この静電容量測定シーケンスにおいて、制御回路(CPU)1は、先ず、バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewを測定する(ステップS301)。このバックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewの測定は次のようにして行う。図6にステップS301で実行される静電容量値測定の処理のフローチャートを示す。
【0039】
制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている放電電流値Ibを読み出し、放電回路19へ指示を与えて、その読み出した放電電流値Ibでバックアップコンデンサ16の放電を行う(ステップS401、図7に示すt1点)。
【0040】
そして、この放電によって降下して行くバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCを監視し、この端子間電圧VCが所定の電圧値V1となった時(ステップS402のYES、図7に示すt2点)の放電開始からの時間T1を計測する(ステップS403)。また、バックアップコンデンサ16の端子間電圧VCが電圧値V1よりも低い値として定められた所定の電圧値V2となった時(ステップS404のYES、図7に示すt3点)の放電開始からの時間T2を計測する(ステップS405)。
【0041】
そして、放電を停止し(ステップS406)、測定した時間T1,T2と放電電流値Ibと電圧値V1,V2より、バックアップコンデンサの最新の静電容量値CnewをCnew=Ib・(T2−T1)/(V1−V2)として求める(ステップS407)。
【0042】
制御回路(CPU)1は、このようにして最新の静電容量値Cnewを求めた後、この求めた最新の静電容量値Cnewを不揮発性メモリ2に保存する(ステップS302)。
【0043】
〔測定した最新の静電容量値と限界設定値および注意設定値との比較〕
そして、制御回路(CPU)1は、ステップS301で測定した最新の静電容量値Cnewと不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている限界設定値と比較し(ステップS303)、最新の静電容量値Cnewが限界設定値を超えていれば(ステップS303のYES)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS304)、外部コントローラ300に最新の静電容量値Cnewと動作を停止させた旨の情報を送信する(ステップS305)。
【0044】
最新の静電容量値Cnewが限界設定値を超えていなければ(ステップS303のNO)、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている注意設定値と比較する(ステップS306)。ここで、最新の静電容量値Cnewが注意設定値を超えていれば(ステップS306のYES)、外部コントローラ300に最新の静電容量値Cnewと注意を要する旨の情報を送信する(ステップS307)。
【0045】
〔測定した最新の静電容量値に基づく必要充電電圧の算出〕
次に、制御回路(CPU)1は、測定した最新の静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、その時の設定開度θspから緊急開閉位置(全閉位置)までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサ16の最低限の充電電圧を必要充電電圧VCminとして計算する(ステップS308)。
【0046】
この場合、電動モータ7の出力をP、バルブ200の全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブ200の全閉から全開までの全回転角度をθaとし、測定した最新の静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、下記(2)式によって必要充電電圧VCminを求める。
VCmin=〔2P・Ta・θsp/(Cnew・θa)〕1/2 ・・・・(2)
【0047】
〔バックアップコンデンサの端子間電圧の必要充電電圧への調整〕
そして、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の端子間電圧の測定値VCとステップS308で計算した必要充電電圧VCminとを比較する(ステップS309)。
【0048】
ここで、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS309のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpv以下である場合には、不揮発性メモリ2から最小充電電流値Iaminを充電電流値Iaとして読み出し、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS310、図8に示すt4点)。すなわち、設定開度θspが実開度θpv以下であるときには、充電電流値Iaを最小充電電流値Iaminとして、大電流での充電を避ける。
【0049】
また、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS309のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとしてバックアップコンデンサ16への充電電流値Iaを決定し、充電回路18へ指示を与えて、その決定した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS310、図8に示すt4点)。但し、Ia:充電電流の値、Cnew:最新の静電容量値、VCmin:算出された必要充電電圧、VC:検出された端子間電圧、ΔT:充電時間。すなわち、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、充電すべき電気エネルギーを多く必要とするが、最新の静電容量値Cnew、必要充電電圧VCmin、端子間電圧VC、充電時間ΔDから必要最小限の充電電流値Iaを計算し、負担をかけない適切な値の電流でバックアップコンデンサ16への充電を行う。
【0050】
そして、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCminとなれば(ステップS311のYES、図8に示すt5点)、静電容量測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0051】
端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上であれば(ステップS309のYES)、静電容量測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0052】
〔全電気特性測定シーケンス〕
次に、制御回路(CPU)1は、全電気特性の測定タイミングか否かをチェックする(ステップS117(図3))。この実施の形態では、全電気特性の測定間隔をTC2とし、TC2が経過する毎に全電気特性の測定タイミングが発生するものとする。制御回路(CPU)1は、全電気特性の測定タイミングが発生すると(ステップS117のYES)、全電気特性測定シーケンスの処理を実行する(ステップS118)。なお、この実施の形態において、全電気特性の測定間隔TC2は、静電容量の測定間隔TC1よりも長く設定されているものとする。
【0053】
〔内部抵抗値の測定〕
図9および図10にステップS118で実行される全電気特性測定シーケンスのフローチャートを分割して示す。この全電気特性測定シーケンスにおいて、制御回路(CPU)1は、先ず、バックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdを測定する(ステップS501)。このバックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdの測定は次のようにして行う。図11にステップS501での内部抵抗値測定の処理のフローチャートを示す。
【0054】
制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に格納されている最小充電電流値Iaminを充電電流値Iaとして読み出し、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16を充電させる(ステップS601、図12に示すt1点)。そして、バックアップコンデンサ16の満充電を確認した後(ステップS602のYES、図12に示すt2点)、不揮発性メモリ2に格納されている放電電流値Ibを読み出し、放電回路19へ指示を与えて、その読み出した放電電流値Ibでバックアップコンデンサ16を放電させる(ステップS603、図12に示すt3点)。
【0055】
制御回路(CPU)1は、この放電電流値Ibでの放電を続け、予め定められた時間Txが経過すると(ステップS604のYES、図12に示すt4点)、放電を停止する(ステップS605)。そして、この時間Txの間の急峻に低下した部分での電圧降下ΔV1を求め(ステップS606)、この電圧降下ΔV1と放電電流値Ibとからバックアップコンデンサ16の内部抵抗値RdをRd=ΔV1/Ibとして求める(ステップS607)。
【0056】
〔静電容量値の測定〕
次に、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の静電容量値Cnewを測定する(ステップS502)。このバックアップコンデンサ16の静電容量値Cnewの測定は、図5に示したステップS301と同様にして、図6に示したフローチャートに従って実行する。
【0057】
すなわち、図13に内部抵抗値Rdを測定した後のバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCの変化を示すように、内部抵抗値Rdを測定した後のt5点において放電電流値Ibによる放電を開始し、バックアップコンデンサ16の端子間電圧VCが所定の電圧値V1となった時の放電開始からの時間T1を計測し(図13に示すt6点)、所定の電圧値V2となった時の放電開始からの時間T2を計測し(図13に示すt7点)、Cnew=Ib・(T2−T1)/(V1−V2)としてバックアップコンデンサ16の静電容量値Cnewを求める。
【0058】
制御回路(CPU)1は、このようにしてバックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewを求めた後、その求めた内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewを不揮発性メモリ2に保存する(ステップS503)。
【0059】
〔測定した内部抵抗値と限界設定値および注意設定値との比較〕
そして、制御回路(CPU)1は、測定した内部抵抗値Rdと不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている限界設定値と比較し(ステップS504)、内部抵抗値Rdが限界設定値を超えていれば(ステップS504のYES)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS505)、外部コントローラ300に内部抵抗値Rdと動作を停止させた旨の情報を送信する(ステップS506)。
【0060】
内部抵抗値Rdが限界設定値を超えていなければ(ステップS504のNO)、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている注意設定値と比較する(ステップS507)。ここで、内部抵抗値Rdが注意設定値を超えていれば(ステップS507のYES)、外部コントローラ300に測定した内部抵抗値Rdと注意を要する旨の情報を送信する(ステップS508)。
【0061】
また、制御回路(CPU)1は、測定した静電容量値Cnewと不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている限界設定値と比較し(ステップS509(図10))、静電容量値Cnewが限界設定値を超えていれば(ステップS509のYES)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS510)、外部コントローラ300に静電容量値Cnewと動作を停止させた旨の情報を送信する(ステップS511)。
【0062】
静電容量値Cnewが限界設定値を超えていなければ(ステップS509のNO)、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている注意設定値と比較する(ステップS512)。ここで、静電容量値Cnewが注意設定値を超えていれば(ステップS512のYES)、外部コントローラ300に静電容量値Cnewと注意を要する旨の情報を送信する(ステップS513)。
【0063】
〔測定した静電容量値に基づく必要充電電圧の算出〕
次に、制御回路(CPU)1は、測定した静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、その時の設定開度θspから緊急開閉位置(全閉位置)までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサ16の最低限の充電電圧を必要充電電圧VCminとして計算する(ステップS514)。
【0064】
この場合、電動モータ7の出力をP、バルブ200の全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブ200の全閉から全開までの全回転角度をθaとし、測定した静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、前記(2)式によって必要充電電圧VCminを求める。
【0065】
〔バックアップコンデンサの端子間電圧の必要充電電圧への調整〕
そして、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の端子間電圧の測定値VCとステップS514で計算した必要充電電圧VCminとを比較する(ステップS515)。
【0066】
ここで、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS515のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpv以下である場合には、不揮発性メモリ2から最小充電電流値Iaminを充電電流値Iaとして読み出し、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS516、図14に示すt8点)。
【0067】
また、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS515のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとしてバックアップコンデンサ16への充電電流値Iaを決定し、充電回路18へ指示を与えて、その決定した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS516、図14に示すt8点)。
【0068】
そして、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCminとなれば(ステップS517のYES、図14に示すt9点)、全電気特性測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0069】
端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上であれば(ステップS515のYES)、全電気特性測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0070】
制御回路(CPU)1は、メイン動作シーケンス(図2、図3)において、上述したステップS101〜103の処理を終了した後、ステップS103で正常という自己診断結果が得られれば、上述したステップS106〜S118の処理を繰り返し実行する。
【0071】
すなわち、ステップS106〜S118の処理の繰り返しにおいて、外部コントローラ200から開度指令の指示が与えられれば(ステップS107のYES)、電動モータ7を駆動してバルブ200の実開度θpvを設定開度θspに一致させ、外部コントローラ200からコマンドが与えられれば(ステップS110のYES)、そのコマンドの処理を実行する。
【0072】
また、静電容量の測定タイミングが発生すれば(ステップS115のYES)、バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewを測定し、その測定した最新の静電容量値Cnewが正常な範囲にあるか否かをチェックすると共に、その測定した最新の静電容量値Cnewに基づいて必要充電電圧VCminを計算し、その計算した必要充電電圧VCminにバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCを調整する。
【0073】
また、全電気特性の測定タイミングが発生すれば(ステップS117のYES)、バックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewを測定し、その測定した内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewが正常な範囲にあるか否かをチェックすると共に、その測定した静電容量値Cnewに基づいて必要充電電圧VCminを計算し、その計算した必要充電電圧VCminにバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCを調整する。
【0074】
このようにして、本実施の形態では、バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewが定期的に測定され、バックアップコンデンサの最新の静電容量値Cnewが測定される毎に、その測定された最新の静電容量値Cnewに基づいてバルブ200をその時の開度設定値θspから緊急開閉位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧が必要充電電圧VCminとして算出され、この算出された必要充電電圧VCminとなるようにバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCが調整されるので、バックアップコンデンサ16に適切な量の電気エネルギーを蓄積させながら、いつ停電が生じても期待されるリターン動作を確実に行わせることができるようになる。これにより、停電時の動作不能の解消と省エネルギーが図られるものとなる。
【0075】
また、本実施の形態では、バックアップコンデンサの必要充電電圧VCminを算出した後、この必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く、かつ、設定開度θspが実開度θpv以下である場合には、最小充電電流値Iaminでバックアップコンデンサ16の充電が行われ、 必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く、かつ、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとしてバックアップコンデンサ16への充電電流値Iaが決定され、この決定された充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電が行われるので、設定開度θspに応じ、負担をかけない適切な値の電流でバックアップコンデンサ16の充電が行われるものとなる。これにより、バックアップコンデンサ16の内部抵抗での発熱によって静電容量が劣化してしまうということが避けられ、また、充電回路18の電流容量を高出力化する必要がなくなり、コストダウンを図ることができるようになる。
【0076】
なお、本実施の形態において、静電容量の測定間隔TC1や全電気特性の測定間隔TC2は、下記の状況により可変として最適な測定間隔とし、測定時の充放電の回数を少なくするようにして、長寿命化を図るようにする。
【0077】
(1)内部抵抗値および静電容量値の劣化状況
・内部抵抗/静電容量劣化小→測定間隔長い
・内部抵抗/静電容量劣化大→測定間隔短い
(2)装置内部の温度の状況
・内部温度が低い→測定間隔長い
・内部温度が高い→測定間隔短い
【0078】
また、本実施の形態において、充電中に何回か設定開度θspの変更に充電が追いつかないような場合には、充電電流値を自動的に上昇させるようにするとよい。
【0079】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術的範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…制御回路、2…不揮発性メモリ、3…A/D変換回路、4…通信回路、5…マルチプレクサ、6…開度指令入力回路、7…電動モータ、8…モータ駆動回路、9…減速機構、10…位置検出機構(ポテンショメータ)、11…温度センサ、12…電源回路、13…電源停止検出回路、14…電源供給切替回路、15…制御電源回路、16…バックアップコンデンサ(電気二重層コンデンサ)、17…コンデンサ端子電圧測定回路、18…充電回路、19…放電回路、20…放電電流測定回路、100…電動アクチュエータ、200…バルブ、300…外部コントローラ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータの駆動力によってバルブの開閉を制御する電動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調設備やプラント等に使用されるバルブの開閉を制御する装置として、電動アクチュエータが用いられている。この電動アクチュエータでは、モータの駆動力によって、冷水や温水、高温の蒸気などが流れる配管に装着されたボール弁やバタフライ弁等を弁体として用いたバルブの開閉を制御する。
【0003】
このような電動アクチュエータとしてスプリングリターン型の電動アクチュエータが存在する。このスプリングリターン型の電動アクチュエータは、停電時のバルブの緊急開閉手段としてバルブの弁軸やそれを回動させる出力軸にスプリングを備え、通常の稼働時にはバルブを回転駆動するモータの回転力を利用してスプリングを巻き上げておき、停電時にモータの回転力がなくなると、巻き上げられたスプリングの付勢力で緊急開閉位置までの開動作又は閉動作を強制的に行わせる。なお、緊急開閉位置は、全閉位置として定められる場合もあるし、全開位置として定められる場合もある。
【0004】
しかし、このようなスプリングリターン型の電動アクチュエータでは、バルブの停電時の開動作や閉動作が非常に迅速に行われるという利点があるが、(1)開閉時に比較的大きな音がする、(2)通常稼働時にスプリングを巻き上げるために大きなトルクを発生するモータが必要となり消費電力が大きくなる、(3)緊急開閉時にスプリングがオーバランすなわち必要以上に開動作や閉動作をして装置に大きなダメージを与える等の問題点を有している。
【0005】
そこで、スプリングの代わりに、電気二重層コンデンサをバックアップコンデンサとして電動アクチュエータに搭載して、通常時にバックアップコンデンサを充電しておき、停電時にバックアップコンデンサに蓄えられている電気エネルギーで電動モータを駆動してバルブを強制的に開動作や閉動作させる電動アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−218433号公報
【特許文献2】特開2008−89109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、バックアップコンデンサに蓄電できる電気エネルギーは、バックアップコンデンサの静電容量に依存し、この静電容量は経年変化、印加電圧、温度変化等によって減少するため、バックアップコンデンサの端子間電圧を監視して常に予め定められた電圧値を保つものとしても、時間を経た後に停電が起こった場合、蓄電エネルギーが足らず、期待される開動作や閉動作(リターン動作)を行うことができない、という事態が発生する虞がある。
【0008】
また、停電時のバルブの開度は特定することができないため、通常、バックアップコンデンサには常に全開から全閉又は全閉から全開まで動作させるのに必要な電気エネルギーを蓄えるようにする。これに対して、電動アクチュエータはバルブを必ずしも全閉(開度0%)又は全開(開度100%)の位置に制御するとは限らず、中間開度に制御される場合が多い。中間開度にバルブを制御中に停電が発生した場合、その中間開度から全閉または全開まで動作させればよいのにも拘わらず、バックアップコンデンサには全開から全閉又は全閉から全開まで動作させるのに必要な電気エネルギーが蓄えられている。このため、バックアップコンデンサへの電気エネルギーの過剰蓄積(過剰充電)となり、省エネルギーが妨げられると共に、バックアップコンデンサの寿命も短くなる。
【0009】
なお、特許文献2には、停電時におけるバルブの開動作又は閉動作に必要なだけの電力をバックアップコンデンサに充電させることについて記載されている。しかしながら、この記載に基づいて、バルブの現在の開度位置から緊急開閉位置までの開動作又は閉動作に必要なだけの電力を算出し、この電力をバックアップコンデンサに充電させるようにしたとしても、バックアップコンデンサの静電容量は経年変化、印加電圧、温度変化等によって減少するため、適切な量の電気エネルギーがバックアップコンデンサに蓄積されるとは限らず、期待される開動作や閉動作(リターン動作)を行うことができない虞がある。
【0010】
また、バックアップコンデンサとして用いられる電気二重層コンデンサは、大電流による急速充電が可能であるという特色がある。しかし、大電流で充電を行うと、電気二重層コンデンサの内部抵抗での発熱を生じて静電容量が劣化してしまう。また、充電回路の電流容量の高出力化が必要となり、コストアップとなる。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、バックアップコンデンサに適切な量の電気エネルギーを常に蓄積させながら、いつ停電が生じても期待されるリターン動作を確実に行わせることが可能な電動アクチュエータを提供することにある。
また、バックアップコンデンサの内部抵抗での発熱による静電容量の劣化を防止すると共に、充電回路の電流容量の高出力化を不要としてコストダウンを図ることが可能な電動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために本発明は、電源部と、この電源部からの電力の供給を受けてバルブを駆動するモータと、電源部からの電力の供給を受けて充電されるバックアップコンデンサとを備え、停電時にバックアップコンデンサに蓄えられている電気エネルギーによってモータを強制的に駆動しバルブを所定の開度位置までリターン動作させる電動アクチュエータにおいて、バルブの実開度を検出する開度検出手段と、バックアップコンデンサの端子間電圧を検出する端子間電圧検出手段と、バックアップコンデンサの最新の静電容量値を定期的に測定する静電容量測定手段と、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいてバルブをその時の開度設定値から所定の開度位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧を必要充電電圧として算出する必要充電電圧算出手段と、必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高い場合、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値を決定し、端子間電圧検出手段によって検出される端子間電圧が必要充電電圧となるまでバックアップコンデンサへの充電を行う充電手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が定期的に測定され、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいてバルブをその時の開度設定値から所定の開度位置(緊急開閉位置)までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧が必要充電電圧として算出される。そして、算出された必要充電電圧と検出されたバックアップコンデンサの端子間電圧とが比較され、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高い場合には、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値が決定され、端子間電圧が算出された必要充電電圧となるまでバックアップコンデンサへの充電が行われる。
【0014】
本発明では、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高い場合、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する。この場合、例えば、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高く、かつ、バルブの開度設定値が実開度以下である場合、バックアップコンデンサへの充電電流の値を予め定められた最小充電電流値とするようにする。
【0015】
また、算出された必要充電電圧が検出された端子間電圧よりも高く、かつ、バルブの開度設定値が実開度よりも大きい場合、バックアップコンデンサの最新の静電容量値、検出された端子間電圧、算出された必要充電電圧および予め定められた充電時間に基づいて、バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定するようにする。例えば、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとして、バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する。但し、Ia:充電電流の値、Cnew:最新の静電容量値、VCmin:算出された必要充電電圧、VC:検出された端子間電圧、ΔT:充電時間。
【0016】
本発明において、バックアップコンデンサの最新の静電容量値は、例えば次のようにして求めるようにするとよい。バックアップコンデンサに蓄積されている電気エネルギーを所定の放電電流値Ibで放電させ、この放電によって降下して行くバックアップコンデンサの端子間電圧を監視し、この端子間電圧が所定の電圧値V1となった時の放電開始からの時間T1と、電圧値V1よりも低い値として定められた所定の電圧値V2となった時の放電開始からの時間T2とを測定し、この測定した時間T1,T2と放電電流値Ibと電圧値V1,V2よりバックアップコンデンサの最新の静電容量値Cnewを求める。例えば、Cnew=Ib・(T2−T1)/(V1−V2)として、最新の静電容量値Cnewを求める。
【0017】
また、本発明において、バックアップコンデンサの必要充電電圧は、例えば次のようにして求めるようにするとよい。モータの出力をP、バルブの全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブの開度設定値をθsp、バルブの全閉から全開までの全回転角度をθa、バックアップコンデンサの最新の静電容量値をCnewとし、VCmin=〔2P・Ta・θsp/(Cnew・θa)〕1/2として、バックアップコンデンサの必要充電電圧VCminを求める。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、、バックアップコンデンサの最新の静電容量値を定期的に測定し、バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいてバルブをその時の開度設定値から所定の開度位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧を必要充電電圧として算出し、算出された必要充電電圧が検出されたバックアップコンデンサの端子間電圧よりも高い場合、バルブの実開度と開度設定値とに基づいてバックアップコンデンサへの充電電流の値を決定し、端子間電圧が算出された必要充電電圧となるまでバックアップコンデンサへの充電を行うようにしたので、バックアップコンデンサに適切な量の電気エネルギーを蓄積させながら、いつ停電が生じても期待されるリターン動作を確実に行わせることが可能となる。また、バルブの開度設定値が実開度以下である場合には予め定められた最小充電電流値とするなど、負担をかけない適切な値の電流でバックアップコンデンサの充電を行うようにして、バックアップコンデンサの内部抵抗での発熱による静電容量の劣化を防止すると共に、充電回路の電流容量の高出力化を不要としてコストダウンを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態の要部を示すブロック図である。
【図2】この電動アクチュエータにおける制御回路が実行するメイン動作シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図3】図2に続くメイン動作シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図4】メイン動作シーケンスの処理で実行される充電シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図5】メイン動作シーケンスの処理で実行される静電容量測定シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図6】静電容量測定シーケンスの処理で実行される静電容量値測定の処理を示すフローチャートである。
【図7】静電容量値測定に際するバックアップコンデンサの端子間電圧の変化を示す図である。
【図8】静電容量値測定後にバックアップコンデンサの端子間電圧が充電によって必要充電電圧へ調整される様子を示す図である。
【図9】メイン動作シーケンスの処理で実行される全電気特性測定シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図10】図9に続く全電気特性測定シーケンスの処理を示すフローチャートである。
【図11】全電気特性測定シーケンスの処理で実行される内部抵抗値測定の処理を示すフローチャートである。
【図12】内部抵抗値測定に際するバックアップコンデンサの端子間電圧の変化を示す図である。
【図13】内部抵抗値測定後の静電容量値測定に際するバックアップコンデンサの端子間電圧の変化を示す図である。
【図14】内部抵抗値測定後の静電容量値測定の後にバックアップコンデンサの端子間電圧が充電によって必要充電電圧へ調整される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態の要部を示すブロック図である。同図において、100は本発明に係る電動アクチュエータであり、ボール弁やバタフライ弁等のバルブ200に取り付けられ、電動調節弁として一体化される。また、外部コントローラ300との間で、情報の授受を行う。
【0021】
電動アクチュエータ100は、制御回路1と、不揮発性メモリ2と、A/D変換回路3と、通信回路4と、マルチプレクサ5と、開度指令入力回路6と、電動モータ7と、モータ駆動回路8と、減速機構9と、位置検出機構(ポテンショメータ)10と、温度センサ11と、電源回路12と、電源停止検出回路13と、電源供給切替回路14と、制御電源回路15と、バックアップコンデンサ(電気二重層コンデンサ)16と、コンデンサ端子電圧測定回路17と、充電回路18と、放電回路19と、放電電流測定回路20とを備えている。
【0022】
制御回路1は、中央演算処理装置(CPU)を備えており、不揮発性メモリ2に格納されているプログラムに従って処理動作を行う。不揮発性メモリ2には、バルブ200における弁体の開度を制御するプログラムが格納されている。また、不揮発性メモリ2には、上述したプログラムに従う制御回路(CPU)1の処理動作において用いられる調整データや設定データが格納されている。また、不揮発性メモリ2には、上述したプログラムに従う制御回路(CPU)1の処理動作において得られる測定データが格納される。
【0023】
制御回路(CPU)1には、外部コントローラ300からの弁開度の設定値(設定開度)が開度指令入力回路6→マルチプレクサ5→A/D変換回路3の経路で与えられ、位置検出機構10からの弁開度の実測値(実開度)がマルチプレクサ5→A/D変換回路3の経路で与えられる。
【0024】
制御回路(CPU)1は、A/D変換回路3からの設定開度と実開度とを比較し、設定開度と実開度とが一致するように、モータ駆動回路8へ駆動指令を送る。これにより、電動モータ7が駆動され、この電動モータ7の駆動力が減速機構9を介してバルブ200の弁軸に伝わり、この弁軸に軸着された弁体を操作することによりバルブ200の開度が調整される。位置検出機構10は、減速機構9を介してバルブ200の弁軸の変位量を検出し、弁開度の実測値(実開度)としてマルチプレクサ5へ送る。
【0025】
通信回路4は、外部コントローラ300からのデータ通信を送受信して、制御回路(CPU)1に入出力する。開度指令入力回路6は、外部コントローラ300からの開度指示(アナログ値)を入力してマルチプレクサ5に出力する。電源回路12は、交流電源から直流電源を生成する。電源供給切替回路14は、通常時は電源回路12からの直流電圧を選択出力し、停電時はバックアップコンデンサ16からの直流電圧(充電電圧)を選択出力する。制御電源回路15は電源供給切替回路14からの直流電圧を各電圧に変換し、各回路への制御電源として供給する。電源停止検出回路13は、電源回路12への交流電源の供給の停止(停電)を検出し、電源供給切替回路14および制御回路(CPU)1にその旨を通知する。
【0026】
充電回路18は、電源回路12からの直流電圧を入力とし、バックアップコンデンサ16への充電を行う。充電回路18におけるバックアップコンデンサ16に対する充電タイミングおよび充電電流Iaは制御回路(CPU)1より指示される。放電回路19はバックアップコンデンサ16の放電を行う。放電回路19におけるバックアップコンデンサ16に対する放電タイミングおよび放電電流Ibは制御回路(CPU)1より指示される。
【0027】
放電電流測定回路20は放電回路19における放電電流を検出しマルチプレクサ5に出力する。コンデンサ端子電圧測定回路17はバックアップコンデンサ16の端子間電圧を測定しマルチプレクサ5に出力する。温度センサ11は装置内の温度(バックアップコンデンサ16の近傍の温度)を検出しマルチプレクサ5に出力する。マルチプレクサ5は、温度センサ11、開度指令入力回路6、放電電流測定回路20、コンデンサ端子電圧測定回路17、位置検出機構10からの各出力を切り替えて、A/D変換回路3に出力する。
【0028】
図2および図3に制御回路(CPU)1が不揮発性メモリ2に格納されているプログラムに従って実行する処理動作のフローチャート(メイン動作シーケンスのフローチャート)を分割して示す。以下、このフローチャートに従って、制御回路(CPU)1が実行する処理動作について説明する。
【0029】
制御回路(CPU)1は、電源が投入されると(ステップS101のYES)、電動アクチュエータ100内の各部の自己診断を行い(ステップS102)、自己診断の結果が「異常」であれば(ステップS103のNO)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS104)、その自己診断の結果と動作を停止させた旨の情報を通信回路4を介して外部コントローラ300へ送信する(ステップS105)。
【0030】
自己診断の結果が「正常」であれば(ステップS103のYES)、制御回路(CPU)1は、温度センサ11が検出する装置内の温度を取り込む(ステップS106)。そして、外部コントローラ300からの開度指令の指示があるか否かを確認し(ステップS107)、開度指令の指示がなければ(ステップS107のNO)、直ちにステップS110へ進む。
【0031】
開度指令の指示があれば(ステップS107のYES)、その開度指令の指示によって与えられる弁開度の設定値(設定開度)θspと位置検出機構10からの弁開度の実測値(実開度)θpvとを比較し(ステップS108)、設定開度θspと実開度θpvとが一致するように、モータ駆動回路8へ駆動指令を送り、電動モータ7を駆動する(ステップS109)。これにより、設定開度θspと実開度θpvとが一致すれば(ステップS108のYES)、ステップS110へ進む。
【0032】
制御回路(CPU)1は、ステップS110において、外部コントローラ300からコマンドを受信したか否かをチェックする。外部コントローラ300からコマンドを受信しなかった場合には(ステップS110のNO)、ステップS113(図3)へ進む。外部コントローラ300からコマンドを受信した場合には(ステップS110のYES)、そのコマンドの処理を実行する(ステップS111)。そして、外部コントローラ300へレスポンスを送信し(ステップS112)、ステップS113(図3)へ進む。
【0033】
制御回路(CPU)1は、ステップS113において、充電シーケンスが完了しているか否かをチェックする。充電シーケンスが完了していなかった場合には(ステップS113のNO)、充電シーケンスを実行する(ステップS114)。
【0034】
〔充電シーケンス〕
図4にステップS114で実行される充電シーケンスのフローチャートを示す。この充電シーケンスにおいて、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されているバックアップコンデンサ16の静電容量の初期設定値C0を読み出す(ステップS201)。そして、この読み出した静電容量の初期設定値C0とその時の設定開度θspより、その時の設定開度θspから緊急開閉位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサ16の最低限の充電電圧を必要充電電圧VCminとして計算する(ステップS202)。
【0035】
なお、この実施の形態において、緊急開閉位置は全閉位置とする。また、必要充電電圧VCminは、電動モータ7の出力をP、バルブ200の全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブ200の全閉から全開までの全回転角度をθaとし、読み出した静電容量の初期設定値C0とその時の設定開度θspより、下記(1)式によって求める。
VCmin=〔2P・Ta・θsp/(C0・θa)〕1/2 ・・・・(1)
【0036】
そして、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の端子間電圧の測定値VCとステップS202で求めた必要充電電圧VCminとを比較し(ステップS203)、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上でなければ(ステップS203のNO)、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている最小充電電流値Iaminを充電電流Iaとして読み出し(ステップS204)、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS205)。そして、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上となったことを確認して(ステップS206のYES)、メイン動作シーケンスへ戻る。なお、ステップS203において、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上であった場合には、ステップS204以降の処理は行わず、直ちにメイン動作シーケンスに戻る。
【0037】
〔静電容量測定シーケンス〕
制御回路(CPU)1は、ステップS115(図3)おいて、静電容量の測定タイミングか否かをチェックする。この実施の形態では、静電容量の測定間隔をTC1とし、TC1が経過する毎に静電容量の測定タイミングが発生するものとする。静電容量の測定タイミングが発生すると(ステップS115のYES)、制御回路(CPU)1は、静電容量測定シーケンスの処理を実行する(ステップS116)。図5にステップS116で実行される静電容量測定シーケンスのフローチャートを示す。
【0038】
〔最新の静電容量値の測定〕
この静電容量測定シーケンスにおいて、制御回路(CPU)1は、先ず、バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewを測定する(ステップS301)。このバックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewの測定は次のようにして行う。図6にステップS301で実行される静電容量値測定の処理のフローチャートを示す。
【0039】
制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている放電電流値Ibを読み出し、放電回路19へ指示を与えて、その読み出した放電電流値Ibでバックアップコンデンサ16の放電を行う(ステップS401、図7に示すt1点)。
【0040】
そして、この放電によって降下して行くバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCを監視し、この端子間電圧VCが所定の電圧値V1となった時(ステップS402のYES、図7に示すt2点)の放電開始からの時間T1を計測する(ステップS403)。また、バックアップコンデンサ16の端子間電圧VCが電圧値V1よりも低い値として定められた所定の電圧値V2となった時(ステップS404のYES、図7に示すt3点)の放電開始からの時間T2を計測する(ステップS405)。
【0041】
そして、放電を停止し(ステップS406)、測定した時間T1,T2と放電電流値Ibと電圧値V1,V2より、バックアップコンデンサの最新の静電容量値CnewをCnew=Ib・(T2−T1)/(V1−V2)として求める(ステップS407)。
【0042】
制御回路(CPU)1は、このようにして最新の静電容量値Cnewを求めた後、この求めた最新の静電容量値Cnewを不揮発性メモリ2に保存する(ステップS302)。
【0043】
〔測定した最新の静電容量値と限界設定値および注意設定値との比較〕
そして、制御回路(CPU)1は、ステップS301で測定した最新の静電容量値Cnewと不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている限界設定値と比較し(ステップS303)、最新の静電容量値Cnewが限界設定値を超えていれば(ステップS303のYES)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS304)、外部コントローラ300に最新の静電容量値Cnewと動作を停止させた旨の情報を送信する(ステップS305)。
【0044】
最新の静電容量値Cnewが限界設定値を超えていなければ(ステップS303のNO)、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている注意設定値と比較する(ステップS306)。ここで、最新の静電容量値Cnewが注意設定値を超えていれば(ステップS306のYES)、外部コントローラ300に最新の静電容量値Cnewと注意を要する旨の情報を送信する(ステップS307)。
【0045】
〔測定した最新の静電容量値に基づく必要充電電圧の算出〕
次に、制御回路(CPU)1は、測定した最新の静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、その時の設定開度θspから緊急開閉位置(全閉位置)までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサ16の最低限の充電電圧を必要充電電圧VCminとして計算する(ステップS308)。
【0046】
この場合、電動モータ7の出力をP、バルブ200の全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブ200の全閉から全開までの全回転角度をθaとし、測定した最新の静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、下記(2)式によって必要充電電圧VCminを求める。
VCmin=〔2P・Ta・θsp/(Cnew・θa)〕1/2 ・・・・(2)
【0047】
〔バックアップコンデンサの端子間電圧の必要充電電圧への調整〕
そして、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の端子間電圧の測定値VCとステップS308で計算した必要充電電圧VCminとを比較する(ステップS309)。
【0048】
ここで、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS309のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpv以下である場合には、不揮発性メモリ2から最小充電電流値Iaminを充電電流値Iaとして読み出し、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS310、図8に示すt4点)。すなわち、設定開度θspが実開度θpv以下であるときには、充電電流値Iaを最小充電電流値Iaminとして、大電流での充電を避ける。
【0049】
また、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS309のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとしてバックアップコンデンサ16への充電電流値Iaを決定し、充電回路18へ指示を与えて、その決定した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS310、図8に示すt4点)。但し、Ia:充電電流の値、Cnew:最新の静電容量値、VCmin:算出された必要充電電圧、VC:検出された端子間電圧、ΔT:充電時間。すなわち、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、充電すべき電気エネルギーを多く必要とするが、最新の静電容量値Cnew、必要充電電圧VCmin、端子間電圧VC、充電時間ΔDから必要最小限の充電電流値Iaを計算し、負担をかけない適切な値の電流でバックアップコンデンサ16への充電を行う。
【0050】
そして、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCminとなれば(ステップS311のYES、図8に示すt5点)、静電容量測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0051】
端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上であれば(ステップS309のYES)、静電容量測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0052】
〔全電気特性測定シーケンス〕
次に、制御回路(CPU)1は、全電気特性の測定タイミングか否かをチェックする(ステップS117(図3))。この実施の形態では、全電気特性の測定間隔をTC2とし、TC2が経過する毎に全電気特性の測定タイミングが発生するものとする。制御回路(CPU)1は、全電気特性の測定タイミングが発生すると(ステップS117のYES)、全電気特性測定シーケンスの処理を実行する(ステップS118)。なお、この実施の形態において、全電気特性の測定間隔TC2は、静電容量の測定間隔TC1よりも長く設定されているものとする。
【0053】
〔内部抵抗値の測定〕
図9および図10にステップS118で実行される全電気特性測定シーケンスのフローチャートを分割して示す。この全電気特性測定シーケンスにおいて、制御回路(CPU)1は、先ず、バックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdを測定する(ステップS501)。このバックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdの測定は次のようにして行う。図11にステップS501での内部抵抗値測定の処理のフローチャートを示す。
【0054】
制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に格納されている最小充電電流値Iaminを充電電流値Iaとして読み出し、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16を充電させる(ステップS601、図12に示すt1点)。そして、バックアップコンデンサ16の満充電を確認した後(ステップS602のYES、図12に示すt2点)、不揮発性メモリ2に格納されている放電電流値Ibを読み出し、放電回路19へ指示を与えて、その読み出した放電電流値Ibでバックアップコンデンサ16を放電させる(ステップS603、図12に示すt3点)。
【0055】
制御回路(CPU)1は、この放電電流値Ibでの放電を続け、予め定められた時間Txが経過すると(ステップS604のYES、図12に示すt4点)、放電を停止する(ステップS605)。そして、この時間Txの間の急峻に低下した部分での電圧降下ΔV1を求め(ステップS606)、この電圧降下ΔV1と放電電流値Ibとからバックアップコンデンサ16の内部抵抗値RdをRd=ΔV1/Ibとして求める(ステップS607)。
【0056】
〔静電容量値の測定〕
次に、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の静電容量値Cnewを測定する(ステップS502)。このバックアップコンデンサ16の静電容量値Cnewの測定は、図5に示したステップS301と同様にして、図6に示したフローチャートに従って実行する。
【0057】
すなわち、図13に内部抵抗値Rdを測定した後のバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCの変化を示すように、内部抵抗値Rdを測定した後のt5点において放電電流値Ibによる放電を開始し、バックアップコンデンサ16の端子間電圧VCが所定の電圧値V1となった時の放電開始からの時間T1を計測し(図13に示すt6点)、所定の電圧値V2となった時の放電開始からの時間T2を計測し(図13に示すt7点)、Cnew=Ib・(T2−T1)/(V1−V2)としてバックアップコンデンサ16の静電容量値Cnewを求める。
【0058】
制御回路(CPU)1は、このようにしてバックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewを求めた後、その求めた内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewを不揮発性メモリ2に保存する(ステップS503)。
【0059】
〔測定した内部抵抗値と限界設定値および注意設定値との比較〕
そして、制御回路(CPU)1は、測定した内部抵抗値Rdと不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている限界設定値と比較し(ステップS504)、内部抵抗値Rdが限界設定値を超えていれば(ステップS504のYES)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS505)、外部コントローラ300に内部抵抗値Rdと動作を停止させた旨の情報を送信する(ステップS506)。
【0060】
内部抵抗値Rdが限界設定値を超えていなければ(ステップS504のNO)、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている注意設定値と比較する(ステップS507)。ここで、内部抵抗値Rdが注意設定値を超えていれば(ステップS507のYES)、外部コントローラ300に測定した内部抵抗値Rdと注意を要する旨の情報を送信する(ステップS508)。
【0061】
また、制御回路(CPU)1は、測定した静電容量値Cnewと不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている限界設定値と比較し(ステップS509(図10))、静電容量値Cnewが限界設定値を超えていれば(ステップS509のYES)、電動アクチュエータ100の動作を停止させ(ステップS510)、外部コントローラ300に静電容量値Cnewと動作を停止させた旨の情報を送信する(ステップS511)。
【0062】
静電容量値Cnewが限界設定値を超えていなければ(ステップS509のNO)、制御回路(CPU)1は、不揮発性メモリ2に設定データとして格納されている注意設定値と比較する(ステップS512)。ここで、静電容量値Cnewが注意設定値を超えていれば(ステップS512のYES)、外部コントローラ300に静電容量値Cnewと注意を要する旨の情報を送信する(ステップS513)。
【0063】
〔測定した静電容量値に基づく必要充電電圧の算出〕
次に、制御回路(CPU)1は、測定した静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、その時の設定開度θspから緊急開閉位置(全閉位置)までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサ16の最低限の充電電圧を必要充電電圧VCminとして計算する(ステップS514)。
【0064】
この場合、電動モータ7の出力をP、バルブ200の全閉から全開までの全駆動時間をTa、バルブ200の全閉から全開までの全回転角度をθaとし、測定した静電容量値Cnewとその時の設定開度θspより、前記(2)式によって必要充電電圧VCminを求める。
【0065】
〔バックアップコンデンサの端子間電圧の必要充電電圧への調整〕
そして、制御回路(CPU)1は、バックアップコンデンサ16の端子間電圧の測定値VCとステップS514で計算した必要充電電圧VCminとを比較する(ステップS515)。
【0066】
ここで、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS515のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpv以下である場合には、不揮発性メモリ2から最小充電電流値Iaminを充電電流値Iaとして読み出し、充電回路18へ指示を与えて、その読み出した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS516、図14に示すt8点)。
【0067】
また、必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く(ステップS515のNO)、かつ、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとしてバックアップコンデンサ16への充電電流値Iaを決定し、充電回路18へ指示を与えて、その決定した充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電を行う(ステップS516、図14に示すt8点)。
【0068】
そして、端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCminとなれば(ステップS517のYES、図14に示すt9点)、全電気特性測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0069】
端子間電圧の測定値VCが必要充電電圧VCmin以上であれば(ステップS515のYES)、全電気特性測定シーケンスを終了し、メイン動作シーケンスに戻る。
【0070】
制御回路(CPU)1は、メイン動作シーケンス(図2、図3)において、上述したステップS101〜103の処理を終了した後、ステップS103で正常という自己診断結果が得られれば、上述したステップS106〜S118の処理を繰り返し実行する。
【0071】
すなわち、ステップS106〜S118の処理の繰り返しにおいて、外部コントローラ200から開度指令の指示が与えられれば(ステップS107のYES)、電動モータ7を駆動してバルブ200の実開度θpvを設定開度θspに一致させ、外部コントローラ200からコマンドが与えられれば(ステップS110のYES)、そのコマンドの処理を実行する。
【0072】
また、静電容量の測定タイミングが発生すれば(ステップS115のYES)、バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewを測定し、その測定した最新の静電容量値Cnewが正常な範囲にあるか否かをチェックすると共に、その測定した最新の静電容量値Cnewに基づいて必要充電電圧VCminを計算し、その計算した必要充電電圧VCminにバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCを調整する。
【0073】
また、全電気特性の測定タイミングが発生すれば(ステップS117のYES)、バックアップコンデンサ16の内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewを測定し、その測定した内部抵抗値Rdおよび静電容量値Cnewが正常な範囲にあるか否かをチェックすると共に、その測定した静電容量値Cnewに基づいて必要充電電圧VCminを計算し、その計算した必要充電電圧VCminにバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCを調整する。
【0074】
このようにして、本実施の形態では、バックアップコンデンサ16の最新の静電容量値Cnewが定期的に測定され、バックアップコンデンサの最新の静電容量値Cnewが測定される毎に、その測定された最新の静電容量値Cnewに基づいてバルブ200をその時の開度設定値θspから緊急開閉位置までリターン動作させるために必要なバックアップコンデンサの充電電圧が必要充電電圧VCminとして算出され、この算出された必要充電電圧VCminとなるようにバックアップコンデンサ16の端子間電圧VCが調整されるので、バックアップコンデンサ16に適切な量の電気エネルギーを蓄積させながら、いつ停電が生じても期待されるリターン動作を確実に行わせることができるようになる。これにより、停電時の動作不能の解消と省エネルギーが図られるものとなる。
【0075】
また、本実施の形態では、バックアップコンデンサの必要充電電圧VCminを算出した後、この必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く、かつ、設定開度θspが実開度θpv以下である場合には、最小充電電流値Iaminでバックアップコンデンサ16の充電が行われ、 必要充電電圧VCminが端子間電圧の測定値VCよりも高く、かつ、設定開度θspが実開度θpvよりも大きい場合には、Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔTとしてバックアップコンデンサ16への充電電流値Iaが決定され、この決定された充電電流値Iaでバックアップコンデンサ16の充電が行われるので、設定開度θspに応じ、負担をかけない適切な値の電流でバックアップコンデンサ16の充電が行われるものとなる。これにより、バックアップコンデンサ16の内部抵抗での発熱によって静電容量が劣化してしまうということが避けられ、また、充電回路18の電流容量を高出力化する必要がなくなり、コストダウンを図ることができるようになる。
【0076】
なお、本実施の形態において、静電容量の測定間隔TC1や全電気特性の測定間隔TC2は、下記の状況により可変として最適な測定間隔とし、測定時の充放電の回数を少なくするようにして、長寿命化を図るようにする。
【0077】
(1)内部抵抗値および静電容量値の劣化状況
・内部抵抗/静電容量劣化小→測定間隔長い
・内部抵抗/静電容量劣化大→測定間隔短い
(2)装置内部の温度の状況
・内部温度が低い→測定間隔長い
・内部温度が高い→測定間隔短い
【0078】
また、本実施の形態において、充電中に何回か設定開度θspの変更に充電が追いつかないような場合には、充電電流値を自動的に上昇させるようにするとよい。
【0079】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術的範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…制御回路、2…不揮発性メモリ、3…A/D変換回路、4…通信回路、5…マルチプレクサ、6…開度指令入力回路、7…電動モータ、8…モータ駆動回路、9…減速機構、10…位置検出機構(ポテンショメータ)、11…温度センサ、12…電源回路、13…電源停止検出回路、14…電源供給切替回路、15…制御電源回路、16…バックアップコンデンサ(電気二重層コンデンサ)、17…コンデンサ端子電圧測定回路、18…充電回路、19…放電回路、20…放電電流測定回路、100…電動アクチュエータ、200…バルブ、300…外部コントローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、この電源部からの電力の供給を受けてバルブを駆動するモータと、前記電源部からの電力の供給を受けて充電されるバックアップコンデンサとを備え、停電時に前記バックアップコンデンサに蓄えられている電気エネルギーによって前記モータを強制的に駆動し前記バルブを所定の開度位置までリターン動作させる電動アクチュエータにおいて、
前記バルブの実開度を検出する開度検出手段と、
前記バックアップコンデンサの端子間電圧を検出する端子間電圧検出手段と、
前記バックアップコンデンサの最新の静電容量値を定期的に測定する静電容量測定手段と、
前記バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいて前記バルブをその時の開度設定値から前記所定の開度位置までリターン動作させるために必要な前記バックアップコンデンサの充電電圧を必要充電電圧として算出する必要充電電圧算出手段と、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高い場合、前記バルブの実開度と開度設定値とに基づいて前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定し、前記端子間電圧検出手段によって検出される端子間電圧が前記必要充電電圧となるまで前記バックアップコンデンサへの充電を行う充電手段と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記充電手段は、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高く、かつ、前記バルブの開度設定値が実開度以下である場合には、前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を予め定められた最小充電電流値とする
ことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記充電手段は、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高く、かつ、前記バルブの開度設定値が実開度よりも大きい場合には、前記バックアップコンデンサの最新の静電容量値、前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧、前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧および予め定められた充電時間に基づいて、前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する
ことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記充電手段は、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高く、かつ、前記バルブの開度設定値が実開度よりも大きい場合には、下記(1)式によって前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する
ことを特徴とする電動アクチュエータ。
Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔT ・・・・(1)
但し、Ia:充電電流の値、Cnew:最新の静電容量値、VCmin:算出された必要充電電圧、VC:検出された端子間電圧、ΔT:充電時間。
【請求項1】
電源部と、この電源部からの電力の供給を受けてバルブを駆動するモータと、前記電源部からの電力の供給を受けて充電されるバックアップコンデンサとを備え、停電時に前記バックアップコンデンサに蓄えられている電気エネルギーによって前記モータを強制的に駆動し前記バルブを所定の開度位置までリターン動作させる電動アクチュエータにおいて、
前記バルブの実開度を検出する開度検出手段と、
前記バックアップコンデンサの端子間電圧を検出する端子間電圧検出手段と、
前記バックアップコンデンサの最新の静電容量値を定期的に測定する静電容量測定手段と、
前記バックアップコンデンサの最新の静電容量値が測定される毎に、その測定された最新の静電容量値に基づいて前記バルブをその時の開度設定値から前記所定の開度位置までリターン動作させるために必要な前記バックアップコンデンサの充電電圧を必要充電電圧として算出する必要充電電圧算出手段と、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高い場合、前記バルブの実開度と開度設定値とに基づいて前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定し、前記端子間電圧検出手段によって検出される端子間電圧が前記必要充電電圧となるまで前記バックアップコンデンサへの充電を行う充電手段と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記充電手段は、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高く、かつ、前記バルブの開度設定値が実開度以下である場合には、前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を予め定められた最小充電電流値とする
ことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記充電手段は、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高く、かつ、前記バルブの開度設定値が実開度よりも大きい場合には、前記バックアップコンデンサの最新の静電容量値、前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧、前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧および予め定められた充電時間に基づいて、前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する
ことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記充電手段は、
前記必要充電電圧算出手段によって算出された必要充電電圧が前記端子間電圧検出手段によって検出された端子間電圧よりも高く、かつ、前記バルブの開度設定値が実開度よりも大きい場合には、下記(1)式によって前記バックアップコンデンサへの充電電流の値を決定する
ことを特徴とする電動アクチュエータ。
Ia=Cnew・(VCmin−VC)/ΔT ・・・・(1)
但し、Ia:充電電流の値、Cnew:最新の静電容量値、VCmin:算出された必要充電電圧、VC:検出された端子間電圧、ΔT:充電時間。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−96551(P2013−96551A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242643(P2011−242643)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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