説明

電動ウォーターポンプ固定装置

【課題】呼吸孔の外部への連通を確保しつつ防水機能を持たせること、及びブラケットにより保持される電動ウォーターポンプの周方向の位置決めの確実化ならびに振動等により周方向への回動を防ぐこと。
【解決手段】内部にインペラ14、これを駆動するモータ30を備えたポンプボディ2と、このポンプボディの内部と連通し、該ポンプボディ2に形成の呼吸孔27とを有する電動ウォーターポンプ1において、前記電動ウォーターポンプの呼吸孔にポンプボディから突出してボス部28を設ける。それから、前記ポンプボディ2に添着される弾性体に、前記呼吸孔27のボス部28を覆うカバー47を突出して形成すると共に、該呼吸孔27と外部と連通する呼吸通路50を内側に形成する。この弾性体45の外側から挾持して前記ポンプボディ2を支えるブラケット7に、前記カバー47が嵌入される嵌合孔44を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に用いられ、エンジンの冷却水を循環させる電動ウォーターポンプの固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ウォーターポンプを固定する装置として、例えば特許文献1を示すことができる。この例では電動ウォーターポンプの中央に位置する円筒状のカップリング室の外周に、弾性の帯状部材(ゴム状部材)を巻き、さらにその外周にブラケットで包み込むことで保持している。
【特許文献1】特開2005−299602
【0003】
一般に、モータ等を備えたポンプボディを密閉すると、温度変化等で、内部に結露が発生し、その水分がショート等の原因となったり、錆の発生の原因ともなっていた。この対策のため、電動ウォーターポンプにあっては、ポンプボディに外部と連通する呼吸孔を穿設している。
【0004】
特許文献1にあっては、ポンプボディに通気孔4が形成され、該孔4から雨水等が侵入を防ぐために、前記帯状部材Bを利用しているが、外部と連通状態を保つために、該帯状部材Bに貫通孔17と溝状通路18を形成している。
【0005】
また、実際に車両に組付られている電動ウォーターポンプの例では、円筒状カップリング室の外周に3ヶ所のボス部を設け、それぞれに弾性部材(グロメット)を取り付けたうえでブラケットに固定している。それから、換気穴はボス形状とし、そこに通気可能とする防水フィルタと防水カバーを設けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1にあっては、ポンプボディに設けられた通気孔4への水の侵入の防止が充分でない。通気孔4はポンプボディの下方に位置しているとともに、溝状通路18と連通する空気の出入り口21が近傍に存在している。この空気の出入り口21から水が浸入してきた場合は、通気孔4の出口周囲が冠水し、外部との連通状態が遮断されるおそれがある。
【0007】
また、円筒状のポンプボディの上から帯状部材8を介してブラケットCに支えているため、ポンプボディの周方向の位置決めが難しい。そして組付後は車両の振動による周方向への回転、それによる通気孔4と貫通孔17、溝状通路18の連通状態の不具合の発生、さらには、組付作業である通気孔4と貫通孔17との位置を一致させてからのブラケットCの固定作業における作業性の繁雑さがあった。また、前記車両に組付られている公知の電動ウォーターポンプの例では、部品点数が多いし、組付の作業性も良くなかった。
【0008】
そこで、この発明は、電動ウォーターポンプにあって、呼吸孔の外部への連通を確保しつつ防水機能を持たせると共に、周方向の位置決めの確実化のみならず振動などによる周方向への回転を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電動ウォーターポンプは、内部に少なくともインペラ、それを駆動する電動モータを備えたポンプボディと、このポンプボディの内部と連通し、該ポンプボディに形成の呼吸孔とを有する電動ウォーターポンプにおいて、前記ポンプボディに添着され、前記呼吸孔のボス部を覆うカバーを突出して形成した弾性体と、前記ポンプボディと前記弾性体との少なくとも一方に形成した、前記呼吸孔と外部とを連通する呼吸通路とより成ることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
これにより、内部の空気と外部とを連通する呼吸孔にボス部があることから、たとえ呼吸通路に水が浸入しても呼吸孔のボス部の高さを乗り越えられず、ポンプボディ内に水が浸入できない。
【0011】
前記呼吸孔のボス部及びそれを包むカバーを、このポンプボディを支えるブラケットに形成の嵌合部に嵌入することから(請求項2)、周方向の位置の決定の確実化のみならず、振動等による周方向の回転も防がれる。
【0012】
前記呼吸孔のボス部と、これを覆う前記カバーとの間に隙間を有し、前記呼吸通路に連通したことを特徴としている(請求項3)。これにより、呼吸孔と呼吸通路は確実に連通される。
【0013】
前記呼吸通路は、前記弾性体の内側に一つ又は複数個形成されていることを特徴としている(請求項4)。また前記呼吸孔のボス部は、少なくとも車両に固定時に、上方又は斜め上方に向けて設けられていることを特徴としている(請求項5)。即ち、ボス部は、車両搭載状態において、水平面より上向きであれば良いことを示している。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、呼吸孔にボス部があり、カバーで覆うことから、仮に弾性体に形成の呼吸通路に水が浸入したとしても、ボス部の高さを越えることができず、水の浸入を防ぐことができる(請求項1)。
【0015】
また、呼吸孔のボス部及びそれを覆うカバーがブラケットの嵌合部に嵌入されるため、周方向の位置決めの確実化、振動等による周方向の回転を防ぐことができる(請求項2)。
【0016】
前記呼吸孔のボス部と、これを覆う前記カバーとの間に隙間を有し、前記呼吸通路に連通していることから、呼吸孔と前記弾性体に形成の呼吸通路とは確実に連通することができる(請求項3)。
【0017】
前記呼吸孔のボス部は、少なくとも車両への固定時に、上方に向けて設置されるため、該ボス部の突出の利益(高さ)を得ることが可能で、これがあることから水が乗り越えられず、浸入を防ぐことができる。仮に弾性体に形成の呼吸通路に水が浸入したとしても、カバーに水が溜まらず、外部との連通状態が遮断されるのを防ぐこともできる(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明を図面にもとづいて説明する。
【0019】
図1,図2において、電動ウォーターポンプ1の固定装置と分解斜視図が示されている。まず、電動ウォーターポンプ1の概略を説明すると、ポンプボディ2は細長い円筒状部材で、大別して3つの部材であるポンプ部3と、カップリング部4及びモータ部5より成っている。そして、ブラケット7により固定され、図示しない車両に取付られている。
【0020】
ポンプ部3は、図3を加えて説明すると、円筒状をなし、吸入口9と排出口10が形成され、また反吸入口側に分離支持体12が全面に形成され、密閉したポンプ室13が形成されている。
【0021】
このポンプ室13内には、インペラ14が配され、一端に前記分離支持体12に支えられている。このインペラ14は、下記する電動モータ30により回転されるもので、回転軸15に従動マグネット17が取付られている。この従動マグネット17により、下記するモータ30から回転力が伝えられ、前記インペラ14が回転され、エンジンの冷却水を吸入口9から吸込み、加圧し排出口10より流出させている。
【0022】
カップリング部4は、円筒状の部材18で、一面を前記ポンプ部3の分離支持体12により区切られ、他面は、分離壁体19が配され、密閉のカップリング室20が形成されている。このカップリング室20内には、駆動マグネット22が円筒状に配され、保持部23を介して支えられ、下記する電動モータ30の駆動軸33に固定されている。
【0023】
この駆動マグネット22は、前記した従動マグネット17と分離支持体12を介して対峙しており、回転するとトルクが伝達され、インペラ14を回転させることができる。この駆動マグネット22が配されるカップリング室20は、前記分離壁体19に通孔25が穿設され、下記するモータ室31と連通している。また、カップリング部4の円筒状の部材18の径方向に呼吸孔27が穿設され、外方に突出するボス部28を持っている。なおカップリング部4は前記ポンプ部3にねじ29にて取付られている。
【0024】
モータ部5は、円筒状を成し、内部に電動モータ30が配されるモータ室31となっている。このモータ室31は、その一面を構成する前記カップリング部4の分離壁体19により区画されているが、前記通孔25により連通されている。モータ室31内の電動モータ30は、その駆動軸33が前記分離壁体19を貫通していて、その貫通部位に前記保持部23を固定している。なお、モータ部5は前記カップリング部4に図示しないねじにて取付られている。
【0025】
上述のように電動ウォーターポンプ1が構成されているが、ブラケット7との固定は、下記するように行われる。まず、ブラケット7は、図1乃至図4にもとづいて説明すると、基体部7aと蓋部7bとより成り、前記基体部7aは係止片37aを持つ半円弧部37と、孔38aを有する重合部38と、車両に固定する孔39aを有する固定部39とより成っている。
【0026】
そして、前記蓋部7bは、半円弧部41と、その左右に重合部42,43と、半円弧部47の頂上に形成の嵌合孔44とより成り、前記重合部42には、図示しないが係合孔が、他方の重合部43には、孔43aが形成されている。それから、嵌合孔44の内径は、下記するカバー47の外径と等しいか少し大きくなっている。
【0027】
このようなブラケット7にて電動ウォーターポンプ1を支えるためには、ゴム等より作られる弾性体45を介して取付られている。即ち、弾性体45は、2つの円弧状部材45a,45bとより成っており、一方の円弧状部材45aには、径方向に突設するカバー47が形成されている。このカバー47は円筒状で、前記した呼吸孔27のボス部28の径よりも大きい内径を有し、前記ボス部28に被嵌した時に周囲に隙間48が生じるように構成されている。
【0028】
また、円弧状部材45aの内側に前記カバー47と連通し、外部と連通する呼吸通路50が形成されている。この呼吸通路50は、前記隙間48を介して前記呼吸孔27に連通し、ポンプボディ2内のカップリング室20とモータ室31と連通している。これにて、カップリング室20とモータ室31とは外気と連通し、内部にて結露が発生することが防がれる。なお、呼吸通路50は複数本形成しても良く、また格子状など迷路状にしても良い。他方の弾性体45の円弧状部材45bは、単なる円弧となっているだけである。なお、円弧状部材45aの形状をカップ部もしくはモータ部の外周に沿って適宜に設計し、円弧状部4bを省いても良い。
【0029】
このような弾性体45の円弧状部材45a,45bを前記ポンプボディ2のカップリング部4に添着するが、カバー47を前記呼吸孔27のボス部28に被嵌する。それから、ブラケット7の基体部7aと蓋部7bを添着する。その際に蓋部7bの嵌合孔44を前記カバー47に被嵌する。そして、ねじ52により、基体部7aと蓋部7bとが結合され、ブラケット7により電動ウォーターポンプ1が支持される。
【0030】
このように、ブラケット7により電動ウォーターポンプ1が支持されると、カバー47が嵌合孔44にて固定され、周方向の位置決めならず、振動などから周方向の回転することも防がれる。それから、ポンプボディ2内部は、呼吸孔27と、隙間48と、呼吸通路50を介して外部と連通されることになり、ポンプボディ2内部に結露が生じなくなる。仮に振動が与えられても、カバー47と嵌合孔44とが係止状態にあり、回転せずに呼吸手段の連通状態が遮断されることはない。
【0031】
以上説明したように、呼吸孔27にボス部28があることから、仮に弾性体45に形成の呼吸通路50に水が侵入しても、ボス部28の高さを越えることができず、水がポンプボディ2内への浸入を防ぐことができる。
【0032】
なお、前記ポンプボディ2のカップリング部4に突設の呼吸孔27のボス部28は、組付時上方に向けて設置されているが、斜め上方に向けて設置するようにしても充分に水の浸入を防ぐ効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施例を示し、電動ウォーターポンプ固定装置の斜視図である。
【図2】同上の電動ウォーターポンプ固定装置の分解斜視図である。
【図3】同上の電動ウォーターポンプ固定装置により固定された状態時の電動ウォーターポンプの拡大断面図である。
【図4】ポンプボディに突設の呼吸孔のボス部と、これを包む弾性体のカバーと、ブラケットの嵌合孔との関係を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電動ウォーターポンプ
2 ポンプボディ
3 ポンプ部
4 カップリング部
5 モータ部
7 ブラケット
13 ポンプ室
14 インペラ
15 回転軸
18 円筒状の部材
20 カップリング室
25 通孔
27 呼吸孔
28 ボス部
30 電動モータ
31 モータ室
37 半円弧部
41 半円弧部
44 嵌合孔
45 弾性体
47 カバー
48 隙間
50 呼吸通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に少なくともインペラ、それを駆動する電動モータを備えたポンプボディと、このポンプボディの内部と連通し、該ポンプボディに形成の呼吸孔とを有する電動ウォーターポンプにおいて、
前記電動ウォーターポンプの呼吸孔にポンプボディから突出して設けたボス部と、
前記ポンプボディに添着され、前記呼吸孔のボス部を覆うカバーを突出して形成した弾性体と、
前記ポンプボディと前記弾性体との少なくとも一方に形成した、前記呼吸孔と外部とを連通する呼吸通路とより成ることを特徴とする電動ウォーターポンプ固定装置。
【請求項2】
前記弾性体の外側から挾接して前記ポンプボディを支え、前記カバーが嵌入される嵌合部を形成したブラケットとより成ることを特徴とする請求項1記載の電動ウォーターポンプ固定装置。
【請求項3】
前記呼吸孔のボス部とこれを覆う前記カバーとの間に隙間を有し、前記呼吸通路に連通したことを特徴とする請求項1又は2記載の電動ウォーターポンプ固定装置。
【請求項4】
前記呼吸通路は前記弾性体の内側に一つ又は複数個形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動ウォーターポンプ固定装置。
【請求項5】
前記呼吸孔のボス部は、少なくとも車両固定時に上方又は斜め上方に向けて設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動ウォーターポンプ固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−240543(P2008−240543A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78358(P2007−78358)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】