電動ポンプ
【課題】モータの振動による騒音をより確実に低減でき、例えば、電気自動車のバキュームポンプに好適な電動ポンプを提供する。
【解決手段】ポンプ31とモータ1のモータ軸2側となる前端部との間に配置されるとともにモータ軸2が貫通された状態で、ポンプ31およびモータ1を支持している取り付け架台51が備えられている。モータ1を覆う有底筒状で開放端側が取り付け架台51に固定されたモータカバー8を備える。モータ1の後端部とモータカバー8の底部10との間にモータ軸2の軸方向に沿って圧縮された状態の第1の弾性部材21が備えられている。モータ軸2を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態の第2の弾性部材が設けられている。第1の弾性部材21によりモータ1がモータ軸2の軸方向に沿って取り付け架台51側に付勢され、第2の弾性部材によりモータ1がモータ軸2側に径方向に沿って付勢されている。
【解決手段】ポンプ31とモータ1のモータ軸2側となる前端部との間に配置されるとともにモータ軸2が貫通された状態で、ポンプ31およびモータ1を支持している取り付け架台51が備えられている。モータ1を覆う有底筒状で開放端側が取り付け架台51に固定されたモータカバー8を備える。モータ1の後端部とモータカバー8の底部10との間にモータ軸2の軸方向に沿って圧縮された状態の第1の弾性部材21が備えられている。モータ軸2を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態の第2の弾性部材が設けられている。第1の弾性部材21によりモータ1がモータ軸2の軸方向に沿って取り付け架台51側に付勢され、第2の弾性部材によりモータ1がモータ軸2側に径方向に沿って付勢されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータのモータ軸にポンプが連結された電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車において、ガソリンエンジン車と同様のブレーキ倍力装置を作動させる場合に、電気自動車では、ガソリンエンジンのようにインテークマニホールドで負圧を生じないため、別途バキュームポンプが必要となる(例えば、特許文献1参照)。
このようなバキュームポンプは、電動モータのモータ軸が突出する側にモータ軸に連結されたポンプ(例えば、ベーンタイプのバキュームポンプ)が設けられている。
【0003】
また、バキュームポンプではないが、電動モータのモータ軸にポンプを直結してアッセンブリー化した電動ポンプが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2のポンプアッセンブリにおいては、モータ部と当該モータ部のモータ軸に直結されたポンプ部とからなるポンプアッセンブリが1つの筒状のケースに収納されている。
【0004】
ケース内においては、ポンプアッセンブリのポンプ側端部に、ポンプ側端部を覆うように皿状に形成されたクッションラバーがポンプ側端部外面とケース内面との間に配置されている。
また、ケース内においては、ポンプアッセンブリのモータ部側端部に、モータ部側端部を覆うように皿状に形成されたクッションラバーが、モータ部側端部外面とケース内面との間に配置されている。これにより、ポンプアッセンブリにおける振動や騒音の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−329701号公報
【特許文献2】実開昭63−21786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2においては、ポンプとモータとからなるポンプアッセンブリがクッションラバーを介してケースに支持されるようになっており、振動がポンプおよびモータからケースに伝達されるのを防止して、振動と騒音の低減を図ることができるが、クッションラバーでの振動の吸収には限界がある。また、振動を吸収するようなゴム状の振動吸収部材を適用する必要があり、使用環境による劣化および耐久性の問題がある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、モータとモータ軸に連結されたポンプとからなり、モータの振動による騒音を十分に抑制することができる電動ポンプを提供することを目的とする。また、本発明は、振動による騒音を防止する機構の耐久性が高い電動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の電動ポンプは、ポンプと、
当該ポンプにモータ軸が連結されて当該ポンプを駆動するモータと、
前記ポンプと前記モータの前記モータ軸側となる前端部との間に配置されるとともに前記モータ軸が貫通された状態で、前記ポンプおよび前記モータを支持している支持部材と、
前記モータを覆う有底筒状で開放端側が前記支持部材に固定されたモータカバーとが備えられ、
前記モータの後端部と前記モータカバーの底部との間に圧縮された状態の弾性部材が設けられ、
前記弾性部材により前記モータを前記支持部材に付勢し支持する
ことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明においては、ポンプとモータとの間に設けられた支持部材でモータが片持ち状態に支持されるが、この際に当該支持部材に固定された有底筒状のモータカバー内にモータが配置されるとともに、モータカバーの底部と、モータの後端部との間に圧縮された状態の弾性部材が配置されていることにより、モータは弾性部材によって、支持部材側に付勢された状態となる。なお、この際に弾性部材は、モータの軸方向に圧縮された状態となっているものとする。
【0010】
この状態で、弾性部材はモータを支持部材に付勢し、それに伴い弾性部材に生じる反力はモータカバーの底部に向かう方向に作用する。また、弾性部材の圧縮状態によっては、弾性部材がモータの径方向に圧縮された状態となる場合もあり、弾性部材からの付勢力がモータの径方向に沿ってモータの軸心方向に向かって付勢力が作用する。この場合には、弾性部材の弾性力により、モータカバーからモータの軸心側への付勢力が作用するとともに、モータ側から外周側に向う反力が作用する。
【0011】
これらの状態で、モータを作動させることにより、モータの回転アンバランスやポンプの振動の伝達等により、モータが振動した場合に、モータの振動の力により弾性部材の付勢力および反力は大きくなるが、弾性部材の付勢力および反力は同部材である支持部材に作用することから、付勢力及び反力は相殺され、振動を減衰させることができ、モータの振動による騒音の低減を図ることができる。
この場合に、クッションラバー等でモータをケースに支持した状態、すなわち、モータとケースとの間での振動の伝達を遮断するようにした場合よりも、より確実にモータの振動による騒音の軽減を図ることができる。また、振動を吸収するような振動吸収部材を使用する必要が無い為、使用環境などの影響を受けることなく、耐久性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の電動ポンプは、請求項1に記載の発明において、前記弾性部材として、
前記モータ軸の軸方向に沿って圧縮された状態の第1の弾性部材が設けられ、
第1の弾性部材により前記モータが前記モータ軸の軸方向に沿って支持部材側に付勢されている
ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明においては、弾性部材としての第1の弾性部材がモータ軸の軸方向にそって圧縮されているので、上述のようにモータ軸の軸方向に沿って弾性部材の付勢力とそれに伴なう反力が作用した状態となっている。軸方向に弾性部材を配置することで、モータ及びモータカバーに対して弾性部材の設置面積を好適に確保することができることから、弾性部材で発生する付勢力及びその反力を支持部材で確実に受けて力を相殺させるので、振動の変位が減衰して、振動および騒音が防止される。
【0014】
請求項3に記載の電動ポンプは、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記弾性部材として、
前記モータ軸を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態の第2の弾性部材が設けられ、
第2の弾性部材により前記モータが前記モータ軸側に径方向に沿って付勢されている
ことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の電動ポンプにおいては、弾性部材としての第2の弾性部材がモータ軸を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態とされているので、上述のようにモータ軸の径方向に沿って付勢力やその反力が作用した状態となっている。この状態でモータが振動した場合に、振動の力により生じる弾性部材の径方向の付勢力と反力とが支持部材で相殺され、振動の変位が減衰して、振動および騒音が防止される。
特に、モータは、前端部側が支持部材に支持された片持ち状態となっており、モータが前端部を中心に後端部側が変位するように振動する虞があるが、モータの後端部側が第2弾性部材により径方向側に付勢されることで、このような振動による騒音を効率的に防止することができる。また、弾性部材を軸方向に配置するのに比べ、コンパクトに配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電動ポンプによれば、振動や騒音をより確実に低減できるので、例えば、電動ポンプを電動自動車に車載するような場合に、電動自動車の乗車する者に、より静粛な環境を提供することができる。また、モータカバーにおける騒音対策用の構造を削減することが可能となり、モータカバーの騒音対策用の構造にかかるコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の電動ポンプを示す側面図である。
【図2】前記電動ポンプを示す断面図である。
【図3】前記電動ポンプを示す分解斜視図である。
【図4】前記電動ポンプの第1の弾性部材を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態の電動ポンプを示す断面図である。
【図6】第2実施形態の電動ポンプを示す分解斜視図である。
【図7】前記電動ポンプの第2の弾性部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施形態の電動ポンプを示す側面図、図2は前記電動ポンプを示す断面図、図3は前記電動ポンプを示す分解斜視図、図4は前記電動ポンプの第1の弾性部材を示す斜視図である。
【0019】
この例の電動ポンプは、例えば、電気自動車に搭載されるバキュームポンプであり、電気自動車に搭載されたバッテリーの直流電流により駆動される。
図1から図3に示すように電動ポンプは、モータ1とポンプ31とを備えるとともに、モータ1のモータ軸2がポンプ31のロータ32に接続されている。
また、電動ポンプは、電動ポンプを自動車の所定位置に固定するための取り付け架台(支持部材)51を備えている。
【0020】
取り付け架台51は、自動車側に固定されるベース52と、当該ベース52に立設(垂設)されて前記モータ1およびポンプ31が取り付けられる概略板状の接続板53とを備えており、接続板53の一方の側面にモータ1が固定され、他方の側面にポンプ31が固定されている。
モータ1は、概略円筒状のケース3内に図示しない回転子と固定子とを備えた直流モータで、ケース3の先端部から回転子と一体に回転するモータ軸2が突出している。
【0021】
モータ1のモータ軸2が突出する先端部は、その中央部に突出する突出部が設けられている。そして、モータ1の先端部には、当該突出部が係合する係合孔を備えた取付板4がビス5により固定されている。
また、この取付板4は、取り付け架台51の接続板53の一方の側面にビス6により固定されている。
【0022】
また、接続板53の中央部には、モータ1のモータ軸2が貫通する貫通孔が形成されており、接続板53を貫通するモータ軸2の先端部は、ポンプ31内のロータ32に達している。
モータ1の中央の突出部の周囲は、取付板4を介して接続板53に接続されて接続板53に覆われた状態となっている。
【0023】
また、モータ1の先端面を除く、外周面および後端面は、有底筒状のモータカバー8に覆われた状態となっている。モータカバー8は、その開放された一方の端部側がモータ1の先端部の周囲で、接続板53にビス11で固定されている。なお、モータカバー8の先端部は、フランジ状となっており、接続板53とモータカバー8の先端面との間にはシールリング12が配置されている。
【0024】
また、モータカバー8は、概略円筒状の筒部9と、当該筒部9の後端部に取り付けられて後端部の開口を閉塞する概略円板状の底部10とを備えている。底部10は、筒部9の後端部にビス13により固定される。
また、底部10と筒部9との間にはシールリング14が配置される。
モータ1とモータカバー8とは、接続板53を介して接続された状態となるが、モータ1の外周面とモータカバー8の筒部9の内周面との間には、間隔があけられている。また、モータ1の後端面とモータカバー8の底部10との間にも間隔があけられている。したがって、モータ1とモータカバー8とは接触していない状態となっている。
【0025】
前記接続板53の他方の側面には、ポンプ31が接続されている。ポンプ31は、モータ軸2が接続されたロータ32が内部に配置されたポンプユニット33と、ポンプユニット33の周囲を覆うポンプカバー34を備える。
ポンプユニット33は、例えば、ベーンを備えたロータ32を有するもので、ポンプユニット33のケースには、吸引口と排出口とを備える。
【0026】
吸引口は、ポンプユニット33の接続板53に接続される面側に設けられている。そして、ポンプユニット33は、ビスにより接続板53に接続される。
接続板53内には、前記ポンプユニットの吸引口に連通する凹部が設けられ、当該凹部に吸引路が接続され、吸引路は、接続板53の外周面に開口し、当該吸引路に吸引管54が接続されている。
【0027】
また、ポンプユニット33を覆うポンプカバー34は、有蓋筒状に形成され、開放側の端部(底部)が接続板53の他方の側面のポンプユニット33より外側となる部分にビス56により接続されている。また、ポンプカバー34と接続板53との間には、シールリング55が配置されている。
ポンプカバー34とポンプユニット33との間には空間があり、ポンプカバー34とポンプユニット33とは接続板53を介して接続されるが、ポンプカバー34とポンプユニット33とは直接接していない。
【0028】
前記モータ1の後端部には、中央部に円筒状の突出部7が設けられている。突出部7とモータ軸2とは同軸上に配置されている。
また、モータカバー8の底部10には、突出部7と対向する部分に、突出部7の周囲に向かって突出する円筒状突出部16が形成されている。
円筒状突出部16は、モータ1の後端面の前記突出部7の外周面を覆った状態となっているとともに、先端がモータ1の後端面の突出部7の周囲となる部分に近接した状態となっている。
【0029】
また、モータ1の後端部の突出部7の外周面と、モータカバー8の底部10の円筒状突出部16の内周面とが間隔をあけて対向した状態となっている。また、モータ1の突出部7と、底部10の円筒状突出部16とは同軸上に配置されている。
また、円筒状突出部16は、内周部17と外周部18との間に段差19を有し、内周部17が上述のようにモータ1の後端面に近接するように長く突出しているのに対して、外周部18は、一段低くなった状態となっている。すなわち、底部10の内面からの突出量が外周部18より内周部17の方が大きくなっており、内周部17がモータ1の後端面に近接し、外周部18がモータ1の後端面から離れた状態となっている。
【0030】
そして、外周部18の先端面と、モータ1の後端面との間には、概略ダイヤフラム状(皿バネ状)の板バネとしての第1の弾性部材21が配置されている。
当該第1の弾性部材21は、図4に示すように、概略円錐台状でかつ筒状(皿状、ダイヤフラム状)となっているとともに、中央部に前記円筒状突出部16の内周部17が挿入される円状開口部22が形成されている。
また、第1の弾性部材21の当該円状開口部22の周囲は、短い円筒状部分とその先端側端部(底部10側端部)から周囲に円環状に広がる部分とからなるリング部23が形成されている。
【0031】
そして、リング部23の周囲には、径方向外側に向うにつれて底部10内面側からモータ1の後端面側に向うように斜めに傾斜された(円錐台状にされた)板バネ部24が設けられている。板バネ部24には、板バネ部24の外周縁からリング部23の外周縁に至り、かつ、周方向に沿った幅の広い第1の切欠部25が互いに対向する位置に2つ設けられている。
これら2つの第1の切欠部25により、板バネ部24は、2つに分かれた状態となっている。また、板バネ部24の2つに分かれた各部分の中央には、前記切欠部25より幅が狭く、かつ浅い第2の切欠部26がそれぞれ設けられている。
【0032】
そして、第1の弾性部材21は、リング部23内側の円状開口部22内に前記モータカバー8の底部10の円筒状突出部16の内周部17が挿入された状態となっているとともに、リング部23の先端側の側面が円筒状突出部16の外周部18の端面に当接している。
また、板バネ部24の先端部は、モータ1の後端面に接触した状態となっているとともに、板バネ部24が湾曲して軸方向に圧縮した状態となっている。これにより、第1の弾性部材21は、モータ1の後端面と、底部10とが離れる方向に付勢している。
【0033】
したがって、第1の弾性部材21である板バネは、モータ1を接続板53に向かって付勢しておりその板ばねの反力が底部10側に向けて作用する。底部10は筒部9に固定され、筒部9は接続板53に固定されている。また、モータ1の先端面も接続板53に固定されている。したがって、第1の弾性部材21の板バネの付勢力及び反力は、接続板53で力を受け、平衡状態を保ち、モータ1は安定した状態に維持される。モータ1がモータ1自身の回転やポンプ31の回転に基づく力により、振動する力が発生した場合、板バネにかかる力(負荷)が大きくなる為、板バネの付勢力及び反力も大きくなる。しかし、板バネで発生する付勢力及び反力は接続板53で受ける構成となっているため、力が大きくなっても付勢力及び反力は接続板53で相殺されてモータ1は安定した状態に維持されることができる。
【0034】
以上の状態で、モータ1が振動する場合に、振動により板バネに力(負荷)が作用し、板バネにより発生する付勢力及び反力は増加するが、板バネの付勢力及び反力は互いに相殺され、振動の変位を小さく抑えることができる。また、振動を抑えることで騒音を防止することができる。
【0035】
以上のように、この例では、例えば、モータとカバーとの間に防振ゴムのような部材を配置して、モータの振動をカバーに伝わらないように遮断することでカバーの振動を抑制することを主な機能とする従来と異なり、弾性部材としての圧縮バネを介在させて付勢力(バネ荷重)をかけた状態とすることで、モータの振動をバネの付勢力及び反力に変え、双方の力を相殺することで振動を減衰させることを主とするものである。
これにより、従来より確実に振動と騒音を抑制することができる。
【0036】
図5から図7は、本発明の第2の実施形態の電動ポンプを示すものであり、図5は第2実施形態の電動ポンプを示す断面図、図6は第2実施形態の電動ポンプを示す分解斜視図、図7は前記電動ポンプの第2の弾性部材を示す斜視図である。
なお、第2実施形態の電動ポンプは、弾性部材として第1の弾性部材21が備えられず、後述の第2の弾性部材41を備えるものとなっている以外は、第1実施形態の電動ポンプと同様の構成を有するものであり、図1〜図4に示す第1実施形態の電動ポンプと同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
前記モータ1の後端面の突出部7の外周面と、モータカバー8の底部10の円筒状突出部16(内周部17)の内周面との間には、円筒状の第2の弾性部材41が径方向に圧縮した状態に配置されている。第2の弾性部材41は、短い円筒状に形成された円筒部42と、当該円筒部42から外周側に突出する複数の矩形状の凸部43とを備えている。
【0038】
凸部43は、円筒部42を内側から外側に曲げて形成したものであり、径方向に弾性変形可能で、板バネとして機能するようになっている。すなわち、径方向に圧縮された際に、径方向に付勢力を生じる板バネとして機能する凸部43が周方向に複数並んで配置されている。なお、矩形状の凸部43は、円筒部42の周方向に沿った矩形状の天板と、天板の四辺に対応して円筒部42のほぼ径方向に沿った4つの面を有することになるが、これら4つ面にそれぞれ壁状の部分が存在する場合に、角部で隣接する壁部どうしが切り離された構成となっていてもよい。また、4つの面のうちの対向する二面にだけ壁状の部材が存在し、残りの対向する裏面には、部材が存在せず開口した状態となっていてもよい。
【0039】
この凸部43が圧縮変形された状態で、上述のように第2の弾性部材41は、モータ1の突出部7の外周面と、モータカバー8の円筒状突出部16の内周面との間の挟持された状態に配置され、モータ1の突出部7を中心軸に向かって径方向に付勢し、その第2の弾性部材41により生じる反力がモータカバー8の円筒状突出部16を径方向外側に作用する。第1実施形態と同様に、モータ1の先端側は、取り付け架台51の接続板53に固定されている。また、底部10は筒部9に固定され、筒部9は接続板53に固定されている。したがって、第2の弾性部材41の板バネの付勢力及び反力は、接続板53で力を受け、平衡状態を保つ。これにより、モータ1は安定した状態に維持される。モータ1がモータ1自身の回転やポンプ31の回転に基づく力により、径方向に振動する力が発生した場合、板バネにかかる力(負荷)が大きくなる為、板バネの付勢力及び反力も大きくなるが、板バネで発生する付勢力及び反力は接続板53で受ける構成となっているため、付勢力及び反力は相殺されて、モータ1は安定した状態に維持されることができる。すなわち、振動を発生させる径方向の力により板バネで発生する付勢力及び反力は大きくなるが、これらの力が互いに相殺されて、振動を抑えることになる。
【0040】
また、上述のようにモータ1の先端側が、取り付け架台51に取り付けられた状態で、モータ1の後端部は、モータ軸2の軸心方向に付勢された状態となるので、モータ1の先端を中心として、モータ1の後端が揺れるような振動も第2の弾性部材41を配置させることで抑えることが可能となる。
【0041】
本発明の他の実施例としては、前記第1の弾性部材21と前記第2の弾性部材41との両方を備える構成であっても良い。この構成によっても、モータ1の振動と騒音を抑制することができる。なお、第1の弾性部材21は、モータ1とモータカバー8との間に軸方向に配置させることにより振動を抑制することができ、第2の弾性部材41は、モータ1とモータカバー8との間に径方向に配置させることで、振動を抑制することができる構成となっている。しかし、この構成に限らず、振動による力をバネの付勢力及び反力に変換し、互いの力を相殺することで振動を減衰する構成となっていれば他の構成でも良い。
【0042】
なお、上述のように弾性部材は、ゴム状の部材ではなく、僅かな弾性変形でも付勢力を発生できる圧縮バネ、特に板バネ(皿バネを含む)であることが好ましい。板バネとすることで、僅かな隙間に配置することが可能となる。本発明の弾性部材は、例えば、従来の防振ゴム等の各種インシュレータのように振動を吸収したり、逃がしたりすることにより、振動を遮断することを目的とする部材ではなく、圧縮されることにより生じる弾性力により上述の反力を生じることを目的とし、振動を発生させる力を相殺するものである。
【符号の説明】
【0043】
1 モータ
8 モータカバー
21 第1の弾性部材
31 ポンプ
41 第2の弾性部材
51 取り付け架台(支持部材)
53 接続板(支持部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータのモータ軸にポンプが連結された電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車において、ガソリンエンジン車と同様のブレーキ倍力装置を作動させる場合に、電気自動車では、ガソリンエンジンのようにインテークマニホールドで負圧を生じないため、別途バキュームポンプが必要となる(例えば、特許文献1参照)。
このようなバキュームポンプは、電動モータのモータ軸が突出する側にモータ軸に連結されたポンプ(例えば、ベーンタイプのバキュームポンプ)が設けられている。
【0003】
また、バキュームポンプではないが、電動モータのモータ軸にポンプを直結してアッセンブリー化した電動ポンプが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2のポンプアッセンブリにおいては、モータ部と当該モータ部のモータ軸に直結されたポンプ部とからなるポンプアッセンブリが1つの筒状のケースに収納されている。
【0004】
ケース内においては、ポンプアッセンブリのポンプ側端部に、ポンプ側端部を覆うように皿状に形成されたクッションラバーがポンプ側端部外面とケース内面との間に配置されている。
また、ケース内においては、ポンプアッセンブリのモータ部側端部に、モータ部側端部を覆うように皿状に形成されたクッションラバーが、モータ部側端部外面とケース内面との間に配置されている。これにより、ポンプアッセンブリにおける振動や騒音の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−329701号公報
【特許文献2】実開昭63−21786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2においては、ポンプとモータとからなるポンプアッセンブリがクッションラバーを介してケースに支持されるようになっており、振動がポンプおよびモータからケースに伝達されるのを防止して、振動と騒音の低減を図ることができるが、クッションラバーでの振動の吸収には限界がある。また、振動を吸収するようなゴム状の振動吸収部材を適用する必要があり、使用環境による劣化および耐久性の問題がある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、モータとモータ軸に連結されたポンプとからなり、モータの振動による騒音を十分に抑制することができる電動ポンプを提供することを目的とする。また、本発明は、振動による騒音を防止する機構の耐久性が高い電動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の電動ポンプは、ポンプと、
当該ポンプにモータ軸が連結されて当該ポンプを駆動するモータと、
前記ポンプと前記モータの前記モータ軸側となる前端部との間に配置されるとともに前記モータ軸が貫通された状態で、前記ポンプおよび前記モータを支持している支持部材と、
前記モータを覆う有底筒状で開放端側が前記支持部材に固定されたモータカバーとが備えられ、
前記モータの後端部と前記モータカバーの底部との間に圧縮された状態の弾性部材が設けられ、
前記弾性部材により前記モータを前記支持部材に付勢し支持する
ことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明においては、ポンプとモータとの間に設けられた支持部材でモータが片持ち状態に支持されるが、この際に当該支持部材に固定された有底筒状のモータカバー内にモータが配置されるとともに、モータカバーの底部と、モータの後端部との間に圧縮された状態の弾性部材が配置されていることにより、モータは弾性部材によって、支持部材側に付勢された状態となる。なお、この際に弾性部材は、モータの軸方向に圧縮された状態となっているものとする。
【0010】
この状態で、弾性部材はモータを支持部材に付勢し、それに伴い弾性部材に生じる反力はモータカバーの底部に向かう方向に作用する。また、弾性部材の圧縮状態によっては、弾性部材がモータの径方向に圧縮された状態となる場合もあり、弾性部材からの付勢力がモータの径方向に沿ってモータの軸心方向に向かって付勢力が作用する。この場合には、弾性部材の弾性力により、モータカバーからモータの軸心側への付勢力が作用するとともに、モータ側から外周側に向う反力が作用する。
【0011】
これらの状態で、モータを作動させることにより、モータの回転アンバランスやポンプの振動の伝達等により、モータが振動した場合に、モータの振動の力により弾性部材の付勢力および反力は大きくなるが、弾性部材の付勢力および反力は同部材である支持部材に作用することから、付勢力及び反力は相殺され、振動を減衰させることができ、モータの振動による騒音の低減を図ることができる。
この場合に、クッションラバー等でモータをケースに支持した状態、すなわち、モータとケースとの間での振動の伝達を遮断するようにした場合よりも、より確実にモータの振動による騒音の軽減を図ることができる。また、振動を吸収するような振動吸収部材を使用する必要が無い為、使用環境などの影響を受けることなく、耐久性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の電動ポンプは、請求項1に記載の発明において、前記弾性部材として、
前記モータ軸の軸方向に沿って圧縮された状態の第1の弾性部材が設けられ、
第1の弾性部材により前記モータが前記モータ軸の軸方向に沿って支持部材側に付勢されている
ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明においては、弾性部材としての第1の弾性部材がモータ軸の軸方向にそって圧縮されているので、上述のようにモータ軸の軸方向に沿って弾性部材の付勢力とそれに伴なう反力が作用した状態となっている。軸方向に弾性部材を配置することで、モータ及びモータカバーに対して弾性部材の設置面積を好適に確保することができることから、弾性部材で発生する付勢力及びその反力を支持部材で確実に受けて力を相殺させるので、振動の変位が減衰して、振動および騒音が防止される。
【0014】
請求項3に記載の電動ポンプは、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記弾性部材として、
前記モータ軸を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態の第2の弾性部材が設けられ、
第2の弾性部材により前記モータが前記モータ軸側に径方向に沿って付勢されている
ことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の電動ポンプにおいては、弾性部材としての第2の弾性部材がモータ軸を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態とされているので、上述のようにモータ軸の径方向に沿って付勢力やその反力が作用した状態となっている。この状態でモータが振動した場合に、振動の力により生じる弾性部材の径方向の付勢力と反力とが支持部材で相殺され、振動の変位が減衰して、振動および騒音が防止される。
特に、モータは、前端部側が支持部材に支持された片持ち状態となっており、モータが前端部を中心に後端部側が変位するように振動する虞があるが、モータの後端部側が第2弾性部材により径方向側に付勢されることで、このような振動による騒音を効率的に防止することができる。また、弾性部材を軸方向に配置するのに比べ、コンパクトに配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電動ポンプによれば、振動や騒音をより確実に低減できるので、例えば、電動ポンプを電動自動車に車載するような場合に、電動自動車の乗車する者に、より静粛な環境を提供することができる。また、モータカバーにおける騒音対策用の構造を削減することが可能となり、モータカバーの騒音対策用の構造にかかるコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の電動ポンプを示す側面図である。
【図2】前記電動ポンプを示す断面図である。
【図3】前記電動ポンプを示す分解斜視図である。
【図4】前記電動ポンプの第1の弾性部材を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態の電動ポンプを示す断面図である。
【図6】第2実施形態の電動ポンプを示す分解斜視図である。
【図7】前記電動ポンプの第2の弾性部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施形態の電動ポンプを示す側面図、図2は前記電動ポンプを示す断面図、図3は前記電動ポンプを示す分解斜視図、図4は前記電動ポンプの第1の弾性部材を示す斜視図である。
【0019】
この例の電動ポンプは、例えば、電気自動車に搭載されるバキュームポンプであり、電気自動車に搭載されたバッテリーの直流電流により駆動される。
図1から図3に示すように電動ポンプは、モータ1とポンプ31とを備えるとともに、モータ1のモータ軸2がポンプ31のロータ32に接続されている。
また、電動ポンプは、電動ポンプを自動車の所定位置に固定するための取り付け架台(支持部材)51を備えている。
【0020】
取り付け架台51は、自動車側に固定されるベース52と、当該ベース52に立設(垂設)されて前記モータ1およびポンプ31が取り付けられる概略板状の接続板53とを備えており、接続板53の一方の側面にモータ1が固定され、他方の側面にポンプ31が固定されている。
モータ1は、概略円筒状のケース3内に図示しない回転子と固定子とを備えた直流モータで、ケース3の先端部から回転子と一体に回転するモータ軸2が突出している。
【0021】
モータ1のモータ軸2が突出する先端部は、その中央部に突出する突出部が設けられている。そして、モータ1の先端部には、当該突出部が係合する係合孔を備えた取付板4がビス5により固定されている。
また、この取付板4は、取り付け架台51の接続板53の一方の側面にビス6により固定されている。
【0022】
また、接続板53の中央部には、モータ1のモータ軸2が貫通する貫通孔が形成されており、接続板53を貫通するモータ軸2の先端部は、ポンプ31内のロータ32に達している。
モータ1の中央の突出部の周囲は、取付板4を介して接続板53に接続されて接続板53に覆われた状態となっている。
【0023】
また、モータ1の先端面を除く、外周面および後端面は、有底筒状のモータカバー8に覆われた状態となっている。モータカバー8は、その開放された一方の端部側がモータ1の先端部の周囲で、接続板53にビス11で固定されている。なお、モータカバー8の先端部は、フランジ状となっており、接続板53とモータカバー8の先端面との間にはシールリング12が配置されている。
【0024】
また、モータカバー8は、概略円筒状の筒部9と、当該筒部9の後端部に取り付けられて後端部の開口を閉塞する概略円板状の底部10とを備えている。底部10は、筒部9の後端部にビス13により固定される。
また、底部10と筒部9との間にはシールリング14が配置される。
モータ1とモータカバー8とは、接続板53を介して接続された状態となるが、モータ1の外周面とモータカバー8の筒部9の内周面との間には、間隔があけられている。また、モータ1の後端面とモータカバー8の底部10との間にも間隔があけられている。したがって、モータ1とモータカバー8とは接触していない状態となっている。
【0025】
前記接続板53の他方の側面には、ポンプ31が接続されている。ポンプ31は、モータ軸2が接続されたロータ32が内部に配置されたポンプユニット33と、ポンプユニット33の周囲を覆うポンプカバー34を備える。
ポンプユニット33は、例えば、ベーンを備えたロータ32を有するもので、ポンプユニット33のケースには、吸引口と排出口とを備える。
【0026】
吸引口は、ポンプユニット33の接続板53に接続される面側に設けられている。そして、ポンプユニット33は、ビスにより接続板53に接続される。
接続板53内には、前記ポンプユニットの吸引口に連通する凹部が設けられ、当該凹部に吸引路が接続され、吸引路は、接続板53の外周面に開口し、当該吸引路に吸引管54が接続されている。
【0027】
また、ポンプユニット33を覆うポンプカバー34は、有蓋筒状に形成され、開放側の端部(底部)が接続板53の他方の側面のポンプユニット33より外側となる部分にビス56により接続されている。また、ポンプカバー34と接続板53との間には、シールリング55が配置されている。
ポンプカバー34とポンプユニット33との間には空間があり、ポンプカバー34とポンプユニット33とは接続板53を介して接続されるが、ポンプカバー34とポンプユニット33とは直接接していない。
【0028】
前記モータ1の後端部には、中央部に円筒状の突出部7が設けられている。突出部7とモータ軸2とは同軸上に配置されている。
また、モータカバー8の底部10には、突出部7と対向する部分に、突出部7の周囲に向かって突出する円筒状突出部16が形成されている。
円筒状突出部16は、モータ1の後端面の前記突出部7の外周面を覆った状態となっているとともに、先端がモータ1の後端面の突出部7の周囲となる部分に近接した状態となっている。
【0029】
また、モータ1の後端部の突出部7の外周面と、モータカバー8の底部10の円筒状突出部16の内周面とが間隔をあけて対向した状態となっている。また、モータ1の突出部7と、底部10の円筒状突出部16とは同軸上に配置されている。
また、円筒状突出部16は、内周部17と外周部18との間に段差19を有し、内周部17が上述のようにモータ1の後端面に近接するように長く突出しているのに対して、外周部18は、一段低くなった状態となっている。すなわち、底部10の内面からの突出量が外周部18より内周部17の方が大きくなっており、内周部17がモータ1の後端面に近接し、外周部18がモータ1の後端面から離れた状態となっている。
【0030】
そして、外周部18の先端面と、モータ1の後端面との間には、概略ダイヤフラム状(皿バネ状)の板バネとしての第1の弾性部材21が配置されている。
当該第1の弾性部材21は、図4に示すように、概略円錐台状でかつ筒状(皿状、ダイヤフラム状)となっているとともに、中央部に前記円筒状突出部16の内周部17が挿入される円状開口部22が形成されている。
また、第1の弾性部材21の当該円状開口部22の周囲は、短い円筒状部分とその先端側端部(底部10側端部)から周囲に円環状に広がる部分とからなるリング部23が形成されている。
【0031】
そして、リング部23の周囲には、径方向外側に向うにつれて底部10内面側からモータ1の後端面側に向うように斜めに傾斜された(円錐台状にされた)板バネ部24が設けられている。板バネ部24には、板バネ部24の外周縁からリング部23の外周縁に至り、かつ、周方向に沿った幅の広い第1の切欠部25が互いに対向する位置に2つ設けられている。
これら2つの第1の切欠部25により、板バネ部24は、2つに分かれた状態となっている。また、板バネ部24の2つに分かれた各部分の中央には、前記切欠部25より幅が狭く、かつ浅い第2の切欠部26がそれぞれ設けられている。
【0032】
そして、第1の弾性部材21は、リング部23内側の円状開口部22内に前記モータカバー8の底部10の円筒状突出部16の内周部17が挿入された状態となっているとともに、リング部23の先端側の側面が円筒状突出部16の外周部18の端面に当接している。
また、板バネ部24の先端部は、モータ1の後端面に接触した状態となっているとともに、板バネ部24が湾曲して軸方向に圧縮した状態となっている。これにより、第1の弾性部材21は、モータ1の後端面と、底部10とが離れる方向に付勢している。
【0033】
したがって、第1の弾性部材21である板バネは、モータ1を接続板53に向かって付勢しておりその板ばねの反力が底部10側に向けて作用する。底部10は筒部9に固定され、筒部9は接続板53に固定されている。また、モータ1の先端面も接続板53に固定されている。したがって、第1の弾性部材21の板バネの付勢力及び反力は、接続板53で力を受け、平衡状態を保ち、モータ1は安定した状態に維持される。モータ1がモータ1自身の回転やポンプ31の回転に基づく力により、振動する力が発生した場合、板バネにかかる力(負荷)が大きくなる為、板バネの付勢力及び反力も大きくなる。しかし、板バネで発生する付勢力及び反力は接続板53で受ける構成となっているため、力が大きくなっても付勢力及び反力は接続板53で相殺されてモータ1は安定した状態に維持されることができる。
【0034】
以上の状態で、モータ1が振動する場合に、振動により板バネに力(負荷)が作用し、板バネにより発生する付勢力及び反力は増加するが、板バネの付勢力及び反力は互いに相殺され、振動の変位を小さく抑えることができる。また、振動を抑えることで騒音を防止することができる。
【0035】
以上のように、この例では、例えば、モータとカバーとの間に防振ゴムのような部材を配置して、モータの振動をカバーに伝わらないように遮断することでカバーの振動を抑制することを主な機能とする従来と異なり、弾性部材としての圧縮バネを介在させて付勢力(バネ荷重)をかけた状態とすることで、モータの振動をバネの付勢力及び反力に変え、双方の力を相殺することで振動を減衰させることを主とするものである。
これにより、従来より確実に振動と騒音を抑制することができる。
【0036】
図5から図7は、本発明の第2の実施形態の電動ポンプを示すものであり、図5は第2実施形態の電動ポンプを示す断面図、図6は第2実施形態の電動ポンプを示す分解斜視図、図7は前記電動ポンプの第2の弾性部材を示す斜視図である。
なお、第2実施形態の電動ポンプは、弾性部材として第1の弾性部材21が備えられず、後述の第2の弾性部材41を備えるものとなっている以外は、第1実施形態の電動ポンプと同様の構成を有するものであり、図1〜図4に示す第1実施形態の電動ポンプと同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
前記モータ1の後端面の突出部7の外周面と、モータカバー8の底部10の円筒状突出部16(内周部17)の内周面との間には、円筒状の第2の弾性部材41が径方向に圧縮した状態に配置されている。第2の弾性部材41は、短い円筒状に形成された円筒部42と、当該円筒部42から外周側に突出する複数の矩形状の凸部43とを備えている。
【0038】
凸部43は、円筒部42を内側から外側に曲げて形成したものであり、径方向に弾性変形可能で、板バネとして機能するようになっている。すなわち、径方向に圧縮された際に、径方向に付勢力を生じる板バネとして機能する凸部43が周方向に複数並んで配置されている。なお、矩形状の凸部43は、円筒部42の周方向に沿った矩形状の天板と、天板の四辺に対応して円筒部42のほぼ径方向に沿った4つの面を有することになるが、これら4つ面にそれぞれ壁状の部分が存在する場合に、角部で隣接する壁部どうしが切り離された構成となっていてもよい。また、4つの面のうちの対向する二面にだけ壁状の部材が存在し、残りの対向する裏面には、部材が存在せず開口した状態となっていてもよい。
【0039】
この凸部43が圧縮変形された状態で、上述のように第2の弾性部材41は、モータ1の突出部7の外周面と、モータカバー8の円筒状突出部16の内周面との間の挟持された状態に配置され、モータ1の突出部7を中心軸に向かって径方向に付勢し、その第2の弾性部材41により生じる反力がモータカバー8の円筒状突出部16を径方向外側に作用する。第1実施形態と同様に、モータ1の先端側は、取り付け架台51の接続板53に固定されている。また、底部10は筒部9に固定され、筒部9は接続板53に固定されている。したがって、第2の弾性部材41の板バネの付勢力及び反力は、接続板53で力を受け、平衡状態を保つ。これにより、モータ1は安定した状態に維持される。モータ1がモータ1自身の回転やポンプ31の回転に基づく力により、径方向に振動する力が発生した場合、板バネにかかる力(負荷)が大きくなる為、板バネの付勢力及び反力も大きくなるが、板バネで発生する付勢力及び反力は接続板53で受ける構成となっているため、付勢力及び反力は相殺されて、モータ1は安定した状態に維持されることができる。すなわち、振動を発生させる径方向の力により板バネで発生する付勢力及び反力は大きくなるが、これらの力が互いに相殺されて、振動を抑えることになる。
【0040】
また、上述のようにモータ1の先端側が、取り付け架台51に取り付けられた状態で、モータ1の後端部は、モータ軸2の軸心方向に付勢された状態となるので、モータ1の先端を中心として、モータ1の後端が揺れるような振動も第2の弾性部材41を配置させることで抑えることが可能となる。
【0041】
本発明の他の実施例としては、前記第1の弾性部材21と前記第2の弾性部材41との両方を備える構成であっても良い。この構成によっても、モータ1の振動と騒音を抑制することができる。なお、第1の弾性部材21は、モータ1とモータカバー8との間に軸方向に配置させることにより振動を抑制することができ、第2の弾性部材41は、モータ1とモータカバー8との間に径方向に配置させることで、振動を抑制することができる構成となっている。しかし、この構成に限らず、振動による力をバネの付勢力及び反力に変換し、互いの力を相殺することで振動を減衰する構成となっていれば他の構成でも良い。
【0042】
なお、上述のように弾性部材は、ゴム状の部材ではなく、僅かな弾性変形でも付勢力を発生できる圧縮バネ、特に板バネ(皿バネを含む)であることが好ましい。板バネとすることで、僅かな隙間に配置することが可能となる。本発明の弾性部材は、例えば、従来の防振ゴム等の各種インシュレータのように振動を吸収したり、逃がしたりすることにより、振動を遮断することを目的とする部材ではなく、圧縮されることにより生じる弾性力により上述の反力を生じることを目的とし、振動を発生させる力を相殺するものである。
【符号の説明】
【0043】
1 モータ
8 モータカバー
21 第1の弾性部材
31 ポンプ
41 第2の弾性部材
51 取り付け架台(支持部材)
53 接続板(支持部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、
当該ポンプにモータ軸が連結されて当該ポンプを駆動するモータと、
前記ポンプと前記モータの前記モータ軸側となる前端部との間に配置されるとともに前記モータ軸が貫通された状態で、前記ポンプおよび前記モータを支持している支持部材と、
前記モータを覆う有底筒状で開放端側が前記支持部材に固定されたモータカバーとが備えられ、
前記モータの後端部と前記モータカバーの底部との間に圧縮された状態の弾性部材が設けられ、
前記弾性部材により前記モータを前記支持部材に付勢し支持する
ことを特徴とする電動ポンプ。
【請求項2】
前記弾性部材として、
前記モータ軸の軸方向に沿って圧縮された状態の第1の弾性部材が設けられ、
第1の弾性部材により前記モータが前記モータ軸の軸方向に沿って支持部材側に付勢されている
ことを特徴とする請求項1記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記弾性部材として、
前記モータ軸を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態の第2の弾性部材が設けられ、
第2の弾性部材により前記モータが前記モータ軸側に径方向に沿って付勢されている
ことを特徴とする請求項1ないし2記載の電動ポンプ。
【請求項1】
ポンプと、
当該ポンプにモータ軸が連結されて当該ポンプを駆動するモータと、
前記ポンプと前記モータの前記モータ軸側となる前端部との間に配置されるとともに前記モータ軸が貫通された状態で、前記ポンプおよび前記モータを支持している支持部材と、
前記モータを覆う有底筒状で開放端側が前記支持部材に固定されたモータカバーとが備えられ、
前記モータの後端部と前記モータカバーの底部との間に圧縮された状態の弾性部材が設けられ、
前記弾性部材により前記モータを前記支持部材に付勢し支持する
ことを特徴とする電動ポンプ。
【請求項2】
前記弾性部材として、
前記モータ軸の軸方向に沿って圧縮された状態の第1の弾性部材が設けられ、
第1の弾性部材により前記モータが前記モータ軸の軸方向に沿って支持部材側に付勢されている
ことを特徴とする請求項1記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記弾性部材として、
前記モータ軸を略中心とする径方向に沿って圧縮された状態の第2の弾性部材が設けられ、
第2の弾性部材により前記モータが前記モータ軸側に径方向に沿って付勢されている
ことを特徴とする請求項1ないし2記載の電動ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−265833(P2010−265833A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118768(P2009−118768)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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