説明

電動リクライニングシート

【課題】シートバックの傾動可能範囲を容易に設定することができる電動リクライニングシートを提供する。
【解決手段】電動リクライニングシート10は、シートバック12の傾動可能範囲の下限を検出するためのリクライニング下限検出センサ82によりシートバック12が下限に位置していると判別すると、このときの傾動角度検出センサ63からのA/D値を下限値としてEEPROM93に保存する。次いで傾動可能範囲の上限を検出するためのリクライニング上限検出センサ81によりシートバック12が上限に位置していると判別すると、このときの傾動角度検出センサ63からのA/D値を上限値としてEEPROM93に保存する。そして、保存した下限及び上限のA/D値に基づいてシートバック12の傾動可能範囲を規定するA/D値−角度テーブルを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リクライニングシートに関し、特に、身体障害者や高齢者が移動手段として使用する走行支援装置を備える電動車椅子に好適な電動リクライニングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車椅子や自動車等の車両には、シートバック(背もたれ)をシートクッション(着座シート)に対して傾動可能にする電動リクライニングシートを備えるものがある。従来の電動リクライニングシートには、シートバックの傾動可能範囲を規定するためにシートバックの傾動角度(リクライニング角度)検出するリクライニング角度検出センサを備えるものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭62−101551号公報
【特許文献2】実公平04−000741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電動リクライニングシートにおいては、シートバックのリクライニング角度を精度良く制御するためにはリクライニング角度を精度良く検出する必要があり、例えば、1°以下の精度でリクライニング角度を検出するためには、1°以下の分解能を持つ高価な高精度パルスセンサを用いる必要があった。
【0004】
これに対して、回転角度に応じて出力電圧を変更する低精度なポテンショメータを用いてリクライニング角度を検出する場合には、ポテンショメータの出力電圧のばらつきにより検出されるリクライニング角度がばらつくことを抑制するために、基準値の再設定等の精度調整を行う必要があり、使用者にとって不便であった。
【0005】
電気的精度が整っている高精度パルスセンサを用いる場合であっても、センサを電動リクライニングシートに組み付けるときに、センサの位置調整を行う必要があり、使用者にとって不便であった。
【0006】
さらに、電動リクライニングシートの傾動可能範囲は、使用者毎に要求が異なっており、使用者毎に傾動可能範囲の再設定を行う必要があり、使用者にとって不便であった。
【0007】
本発明の目的は、シートバックの傾動可能範囲を容易に設定することができる電動リクライニングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の電動リクライニングシートは、シートクッションと、前記シートクッションに着座する使用者の背部を受けるシートバックと、リクライニング駆動スイッチと、リクライニング駆動用装置とを有し、前記リクライニング駆動スイッチの操作により前記リクライニング駆動用装置を駆動させて前記シートバックを前記シートクッションに対して傾動させるリクライニング装置とを備える電動リクライニングシートであって、前記シートバックの傾動角度を検出する傾動角度検出手段を備え、前記傾動角度検出手段は、前記シートバックの傾動量を検出する傾動量検出センサと、前記シートバックの傾動可能範囲の上限値を検出する上限値検出手段と、前記シートバックの傾動可能範囲の下限値を検出する下限値検出手段と、前記上限検出手段によって検出された上限値と前記下限値検出手段によって検出された下限値とに基づいて前記シートバックの傾動角度を検出するための角度テーブルを作成し、前記角度テーブル及び前記傾動量検出センサの検出値に基づいて前記シートバックの傾動角度を検出する制御ユニットとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の電動リクライニングシートは、請求項1記載の電動リクライニングシートにおいて、前記上限値検出手段はリミットスイッチであり、前記下限値検出手段はリミットスイッチであることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の電動リクライニングシートは、請求項1又は2記載の電動リクライニングシートにおいて、前記シートバックをスライド駆動するスライド駆動用装置を備え、前記制御ユニットは、前記検出する前記シートバックの傾動角度に応じて前記シートバックをスライド駆動するように前記スライド駆動用装置を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の電動リクライニングシートは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動リクライニングシートにおいて、電動車椅子に搭載されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の電動リクライニングシートによれば、上限検出手段及び下限検出手段によって夫々検出された上限値及び下限値に基づいて、シートバックの傾動可能範囲を規定する角度テーブルを作成するので、シートバックの傾動可能範囲を容易に設定することができる。また、上限検出手段及び下限検出手段によって夫々検出された上限値及び下限値に基づいて作成された角度テーブルと、傾動量検出センサの検出値とに基づいてシートバックの傾動角度を検出するので、傾動量検出センサが検出精度の低いものであっても精度良くシートバックの傾動角度を検出することができる。このため、電動リクライニングシートを安価にすることができる。
【0013】
請求項2記載の電動リクライニングシートによれば、上限値検出手段及び下限値検出手段はリミットスイッチであるので、電動リクライニングシートをより安価にすることができる。
【0014】
請求項3記載の電動リクライニングシートは、シートバックをスライド駆動するスライド駆動用装置を備え、制御ユニットが、検出するシートバックの傾動角度に応じてシートバックをスライド駆動するようにスライド駆動用装置を制御する。このため、使用者の背中がシートバック上を摩擦に抗して動くことを抑制することができる。これにより、使用者のシートバックに対する背中の接触部が擦れるようにずれてしまうことを抑制することができる。このため、使用者がリクライニング動作の度に座り直して姿勢を元に戻す必要を低減することができ、リクライニング動作時に使用者に不便が生ずることを抑制することができる。加えて、リクライニング動作時に使用者の背中が擦れることを抑制することができ、使用者に不快感を与えることを抑制することができる。
【0015】
請求項4記載の電動リクライニングシートは、電動車椅子に搭載されるので、電動車椅子において、上記請求項1乃至3と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1〜5は、本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシートが適用された電動車椅子の概略構成を示す図であり、図1は右側面図であり、図2は正面図であり、図3は背面図であり、図4は平面図であり、図5は駆動系を示す部分拡大図である。以降、電動車椅子の前後方向及び左右方向は電動車椅子の使用者(運転者)を基準にして呼称する。
【0018】
図1〜4に示すように、電動車椅子1は電動リクライニングシート10を備える。電動リクライニングシート10は、運転者(図1のP参照)が着座するシートクッション(着座シート)11と、シートクッション11に着座する運転者の背部を受けるシートバック(背もたれ)12(図1の斜線部分)と、シートクッション11に着座する運転者の脚部の膝下部位を支えると共に足置きとなるフットレスト(足置き)13とを備える。電動リクライニングシート10は、後述するリクライニング駆動用装置を備え、リクライニング駆動用装置が制御されて、座位状態とフルフラット状態との間の状態をとる。電動リクライニングシート10が座位状態の場合は、図1に示すように、シートクッション11は側面視やや斜めとなり、即ち、後端が水平状態を維持したまま上端より下方に下がった状態となり、シートバック12は、この状態のシートクッション11に対して略垂直となり、フットレスト13は、シートバック12に対して平行な位置よりやや後方に傾いた状態となる。また、電動リクライニングシート10がフルフラット状態の場合は、図6に示すように、シートクッション11、シートバック12、及びフットレスト13が同一の略水平な平面上に位置する状態となる。
【0019】
シートクッション11の下方には、左右一対のメインフレーム14が、前後方向に延設されている。左右一対のメインフレーム14は複数のブリッジ部材15(パイプ材)によって結合され、必要かつ十分な強度剛性を有している(図3参照)。各メインフレーム14の前部近傍及び後部近傍には、前後方向に延設されるブラケット16が立設され、シートクッション11は、ブラケット16を介してメインフレーム14に支持されている。
【0020】
メインフレーム14は前方下方向に傾斜して配置され、その前端部には支軸17が垂直方向に延設されており、支軸17の下端には支軸17を中心に回転自在に支持されたキャスタ式の前輪18が配設されている。また、メインフレーム14の後端部近傍には、後述するパワーユニットによって左右独立に駆動可能な後輪19が配設されている。後輪19は、メインフレーム14の前部に枢支された懸架アーム20、及びメインフレーム14の後端部近傍に枢支されたクッションユニット21を介して、メインフレーム14に取り付けられている。クッションユニット21は、クッションスプリングを備えており、後輪19をメインフレーム14に対して上下方向に移動可能し、ダンパとして機能する。
【0021】
一対のブラケット16の後端には、前後方向に回転可能に軸支された略コの字型のシートバックフレーム23が配設されている。シートバック12は、シートバックフレーム23に沿って(図1の矢印A方向に)スライド自在に、シートバックフレーム23に取り付けられている。シートバック13の上部にはヘッドレスト24が取り付けられている。また、シートバックフレーム23の背面側には手押し用の一対のハンドル25が取り付けられている。
【0022】
シートバック12の左右両側部には左右一対のアームレスト27が配置されている。アームレスト27は、運転者がシートクッション11に着座した状態で運転者が肘を置くことが可能な位置に配置されており、その後端がシートバック12に上下方向(図1の矢印B方向)に回転可能に軸支されている。アームレスト27の前端部には、支持フレーム28の一端が回転可能に軸支されており、支持フレーム28の他端は、後述するシートクッションフレーム51に回転可能に軸支されている。
【0023】
また、右側のアームレスト27の前端部には前側から、電動車椅子1を操作するためのコントローラ29が取り付けられている。コントローラ29は、運転者がシートクッション11に着座した状態でアームレスト27に肘を置きながら、無理なく後述する走行操作レバー30等を操作し得るように配置されている。尚、右側のアームレスト27ではなく左側のアームレスト27にコントローラ29を設けることも可能である。コントローラ29は、後述する後輪駆動用の電動モータを駆動制御して電動車椅子1の走行、右或いは左旋回動作等を行わせるための走行操作レバー30や、運転その他電動車椅子1を操作するために必要なスイッチ類31等を備えている。スイッチ類31には、例えば、電動車椅子1の走行を可能にしたり、リクライニング動作を可能にしたり、電動車椅子1の電源をOFF状態にしたりすることができる切換スイッチ等が含まれる。
【0024】
フットレスト13は、左右一対のフットレストフレーム32と、フットレストフレーム32の下端に夫々図2の矢印C,D方向に回転可能に取り付けられた一対の足乗せ33とを備える。フットレストフレーム32はその上端部に取り付けられたブラケット34を有し、ブラケット34はその上端部において上下方向に回転可能にシートクッション11に軸支されている。ブラケット34の下端部には、回転範囲を規制するストッパ34aが設けられている。メインフレーム14の前端部にはブラケット34のストッパ34aに当接可能にストッパ35が設けられており、ストッパ34aとストッパ35が当接することにより、フットレスト13の下方向の回転可能範囲が規制される。
【0025】
左右一対の後輪19の内側には、後輪19を駆動するパワーユニット40が夫々配設されている(図3,5参照)。パワーユニット40は、動力源である電動モータ41とこの電動モータ41の動力を後輪19に減速伝達する減速ギヤ列を含むギヤボックス42とを備える。電動モータ41は略筒状の形状であり、水平配置される。ギヤボックス42のケーシング内には減速ギヤ列を構成する複数のギヤが収容されており、電動モータ41はその主軸41aが減速ギヤ列に動力を伝達するようにギヤボックス42に一体的に結合されている。
【0026】
ギヤボックス42は後輪19の内側に配置され、前後方向略中央部には車幅方向の外方に突出する後輪車軸43を備え、後輪車軸43は後輪19を支持する。電動モータ41は、図5に示すように、ギヤボックス42の内側に取り付けられているが、後輪車軸43に対して平行かつ後方に偏倚して配置されている。このように電動モータ41を後方に偏倚して配置することによって、電動モータ41の前側にスペースを確保することができる。
【0027】
シートクッション11の下方には、パワーユニット40に給電するバッテリ44が配設されている。バッテリ44は、メインフレーム14に取り付けられたバッテリホルダ45(図2参照)によって着脱可能に保持されている。本実施の形態においては、バッテリホルダ45は2個のバッテリ44を前後方向に並べて搭載可能に構成されている。
【0028】
シートクッション11は、図1に示すように、下端面に前後方向に延びる左右一対のシートクッションフレーム51を備え、シートクッショ11は、このシートクッションフレーム51によって支持される。シートクッションフレーム51は、前端部がブラケット16の前端部に形成されたスライドブラケット16aによって前後方向にスライド移動可能に支持されており、後端部がブラケット16の後端部に形成されたガイドブラケット16bによって前方斜め上方に移動可能に支持されている。これにより、シートクッション11は、座位状態(図1の状態)において前方に押されると、後端が上端より下方にやや下がった状態から、即ちシートクッション11の上面が水平より側面視左斜め下方向に傾いた状態から、前方にスライド移動すると共に後端が上方に上がってシートクッション11の上面が水平になった状態(図6のフルフラット状態)に移動可能に構成されている。即ち、シートクッション11は、後端が前端より下方に下がった座位状態から、所定の距離だけ前方にスライド移動して後端が前端と略水平位置になるように移動可能に構成されている。シートクッションフレーム51の前後方向略中央部には、アームレスト27を支持する支持フレーム28の下端部が上下方向に回転可能に軸支されている。
【0029】
シートバックフレーム23は、下端においてブラケット16のガイドブラケット16bの上端に前後方向(図1の矢印F方向)に傾動可能に軸支されており、また、下端にはリクライニング機構52が取り付けられている。リクライニング機構52は、後述するリクライニング駆動用装置61によって、電動リクライニングシート10を座位状態からフルフラット状態に変動可能にする。
【0030】
また、リクライニング機構52には、シートクッションフレーム51の後端が連結されていると共に、リンク機構53を介してフットフレーム32が連結されている。具体的には、リクライニング機構52は、シートバック12が座位状態から後方(図1の矢印F方向)に傾動されるに従って、シートクッション11が座位状態から前方にスライド移動されると共にその後端が上方に移動され、シートバック12が略水平になった場合に、シートクッション11が略水平となる(その前端と後端とが水平となる)ように、シートバックフレーム23とシートクッションフレーム51とを連結している。また、リクライニング機構52は、シートバック12が座位状態から後方(図1の矢印F方向)に傾動されるに従って、フットレスト13が座位状態から前方に(図1の矢印E方向)に傾動され、シートバック12が略水平になった場合に、フットレスト13が所定の角度となるように、シートバックフレーム23とフットレストフレーム32とを連結している。このように、シートクッション11及びフットレスト13がリクライニング機構52によってシートバックフレーム23に連結されることにより、電動リクライニングシート10は、座位状態からフルフラット状態に変位可能になっている。
【0031】
上記アームレスト27を支持する支持フレーム28は、電動リクライニングシート10が座位状態においてシートクッション11と略平行に、フルフラット状態においてシートクッション11に対して所定の角度になるようにその長さが設定されている。この所定の角度は、フルフラット状態において、シートクッション11、シートバック12、及びフットレスト13上に仰臥する運転者がコントローラ29を操作しやすい角度に設定されている。
【0032】
電動リクライニングシート10は更に、図3に示すように、電動リクライニングシート10を座位状態からフルフラット状態のいずれかの状態にするリクライニング動作を行うためのリクライニング駆動用モータ67を有するリクライニング駆動用装置61と、シートバック12をシートバックフレーム23に沿って(図1の矢印A方向に)スライド駆動させるスライド駆動用モータ62と、シートバック12の傾動角度を検出する傾動角度検出センサ63と、シートバック12のスライド量を検出するスライド量検出センサ64とを備える。また、電動リクライニングシート10は、シートバック12の傾動方向の位置であるリクライニング角度及びスライド方向の位置であるシートバックスライド位置(以下、シートバック位置と総称する)を任意の位置に操作するためのリクライニング駆動スイッチ65と、運転者のリクライニング駆動スイッチ65の操作に対応してリクライニング駆動用装置61及びスライド駆動用モータ62を夫々駆動制御する制御ユニット66とを備える。
【0033】
また、電動リクライニングシート10は、シートバック12のリクライニング動作可能範囲である傾動可能範囲の上限を検出するためのリクライニング上限検出センサ81と、傾動可能範囲の下限を検出するためのリクライニング下限検出センサ82とを備える。リクライニング上限検出センサ81及びリクライニング下限検出センサ82は、図1に示すように、リクライニング機構52に配設されている。リクライニング上限検出センサ81及びリクライニング下限検出センサ82は、共にリミットスイッチである。リクライニング上限検出センサ81は、シートバック12が座位状態の場合においてHighレベルの出力信号を出力し、シートバック12が座位状態ではない場合においてLowレベルの出力信号を出力するように構成及び配置されている。一方、リクライニング下限検出センサ82は、シートバック12がフルフラット状態の場合においてHighレベルの出力信号を出力し、シートバック12がフルフラット状態ではない場合においてLowレベルの出力信号を出力するように構成されている。つまり、リクライニング上限検出センサ81及びリクライニング下限検出センサ82は、シートバック12の傾動可能範囲の上限及び下限において夫々Highレベルの出力信号を出力する。尚、リクライニング上限検出センサ81及びリクライニング下限検出センサ82はリミットスイッチに限るものではなく、他のセンサであってもよい。また、リクライニング上限検出センサ81及びリクライニング下限検出センサ82の構成や配設位置も上述のものに限るものではなく、他の構成を有していてもよく、他の位置に配設されていてもよい。
【0034】
さらに、電動リクライニングシート10は、シートバック12のスライド移動可能範囲であるスライド可能範囲の上限を検出するためのスライド上限検出センサ83と、スライド可能範囲の下限を検出するためのスライド下限検出センサ84とを備える。スライド上限検出センサ83及びスライド下限検出センサ84は、図3に示すように、シートバックフレーム23の前面に配設されている。スライド上限検出センサ83及びスライド下限検出センサ84は、共にリミットスイッチである。スライド上限検出センサ83は、シートバック12が最上位に位置する場合においてHighレベルの出力信号を出力し、シートバック12が最上位に位置しない場合においてLowレベルの出力信号を出力するように構成及び配置されている。一方、スライド下限検出センサ83は、シートバック12が最下位に位置する場合においてHighレベルの出力信号を出力し、シートバック12が最下位に位置しない場合においてLowレベルの出力信号を出力するように構成されている。つまり、スライド上限検出センサ83及びスライド下限検出センサ84は、シートバック12のスライド可能範囲の上限及び下限において夫々Highレベルの出力信号を出力する。尚、スライド上限検出センサ83及びスライド下限検出センサ84はリミットスイッチに限るものではなく、他のセンサであってもよい。また、スライド上限検出センサ83及びスライド下限検出センサ84の構成や配設位置も上述のものに限るものではなく、他の構成を有していてもよく、他の位置に配設されていてもよい。
【0035】
本実施の形態においては、シートバック12の傾動可能範囲は、0°〜80°の範囲に設定されており、フルフラット状態のときのリクライニング角度を0°とする。また、シートバック12のスライド可能範囲は、0mm〜180mmの範囲に設定されており、シートバック12の最下位置は、座位状態においてシートバック12の後端がシートクッション11の上面に接触する位置とする。シートバック12が最下位に位置するときのシートバックスライド位置を0mmとする。
【0036】
図7に示すように、スライド駆動用モータ62、傾動角度検出センサ63、スライド量検出センサ64、リクライニング駆動スイッチ65、リクライニング駆動用モータ67、バッテリ44、リクライニング上限検出センサ81、リクライニング下限検出センサ82、スライド上限検出センサ83、及びスライド下限検出センサ84は、制御ユニット66に電気的に接続されている。スライド駆動用モータ62及びリクライニング駆動用モータ67は、例えばステッピングモータである。
【0037】
リクライニング駆動用装置61は、シートバック12の背面側であって例えば右側のリクライニング機構52の近傍に配設されている。リクライニング駆動用装置61は、リクライニング駆動用モータ67によって前後方向に伸縮する図示しない伸縮部材を介してリクライニング機構52に接続されている。リクライニング機構52は、リクライニング駆動用装置61によって駆動されることにより電動リクライニングシート10が座位状態とフルフラット状態との間で移動することができるように構成されている。リクライニング駆動用モータ67は、制御ユニット66から電力が供給されることにより作動する。
【0038】
傾動角度検出センサ63は、シートバックフレーム23の背面において例えば左側のリクライニング機構52の近傍に配設されている。傾動角度検出センサ63は、例えば、ポテンショメータから構成されており、図示しない検出部がシートバック12あるいはシートフレーム23の傾動(リクライニング動作)に応じて回転し、シートバック12の角度に対応した信号例えば電圧信号を制御ユニット66に出力する。
【0039】
スライド駆動用モータ62及びスライド量検出センサ64は、図3に示すように、シートバックフレーム23の背面側に取り付けられたスライドメカプレート68に取り付けられている。スライド量検出センサ64は傾動角度検出センサ63と同様に、例えばポテンショメータから構成されている。スライドメカプレート68は所定の間隔を開けてシートバックフレーム23に取り付けられている。
【0040】
図8に示すように、スライドメカプレート68の背面側において下方にスライド駆動用モータ62がその出力軸62aが略垂直上方に延びるように取り付けられている。主軸62aには螺旋状の歯車であるウオームギヤ62bが取り付けられている。また、スライドメカプレート68の背面側には、図8及び図9に示すように、大径の上段ギヤ69aと小径の下段ギヤ69bとが同軸に重ね合わされて形成された減速ギヤ69が取り付けられている。減速ギヤ69の下段ギヤ69bは、スライドメカプレート68の貫通孔70に受容されている。
【0041】
スライドメカプレート68の前面側には、図9に示すように、扇形歯車であるセクタ71が減速ギヤ69の下段ギヤ69bに噛み合うように取り付けられている。セクタ71には、電動車椅子1の幅方向の内側に延びる板状のセクタアーム72が固定されている。セクタアーム72は、セクタ71の回転と共にセクタ71の回転軸71aを中心として上下方向(図9の矢印G方向)に回転する。セクタアーム72は、その先端部が図示しない接続部を介してシートバック12の背面に接続されている。
【0042】
また、図8に示すように、スライドメカプレート68の背面側には、スライド量検出センサ64と、スライド量検出センサ64の検出部64aと噛み合うセクタであるセンサギヤ73が取り付けられている。センサギヤ73は、セクタ71の回転軸71aに取り付けられている。即ち、センサギヤ73とセクタ71とは同軸(回転軸71a)に一体的に取り付けられており、回転軸71aを中心に一体的に回転する。また、スライドメカプレート68の背面側には、制御ユニット66が取り付けられている。
【0043】
上述の構成により、制御ユニット66から電力が供給されてスライド駆動用モータ62が作動され、主軸62aに取り付けられたウオームギヤ62bが回転し、減速ギヤ69が回転する。これにより、セクタ71が回転してセクタアーム72の先端部が上下方向に移動し、この上下方向の動きに連動してシートバック12がシートバックフレーム23に沿って上下方向(図1の矢印A方向)にスライド移動する。また、セクタ71の回転によりセンサギヤ73がセクタ71と一体的に回転してスライド量検出センサ64の検出部64aが回転し、スライド量検出センサ64は検出部64aの回転量に応じた信号、例えば電圧信号を制御ユニット66に送信する。
【0044】
リクライニング駆動スイッチ65は、電動リクライニングシート10を座位状態に近づくように動作させるための指示をする上昇指示と、フルフラット状態に近づくように動作させるための指示をする下降指示との2つの動作指示信号を出力可能なスイッチである。具体的には、リクライニング駆動スイッチ65は前方に操作されることにより、制御ユニット66に上昇指示信号を送信し、リクライニング駆動スイッチ65は後方に操作されることにより、制御ユニット66に下降指示信号を送信する。
【0045】
制御ユニット66は、図7に示すように、CPU(マイクロコンピュータ)91と、CPU91の演算処理の作業領域としてのRAM92と、CPU91の実行するプログラム等を格納する領域である不揮発性メモリ、例えばEEPROM93と、スライド駆動用モータ62を駆動制御するためのスライド駆動用モータ制御部94と、リクライニング駆動用モータ67を駆動制御するためのリクライニング駆動用モータ制御部95と、傾動角度検出センサ63及びスライド量検出センサ64の出力電圧をアナログ/デジタル変換するA/D変換器96とを備える。また、制御ユニット66は、後述するように、傾動可能範囲の上限値及び下限値、及びスライド可能範囲の上限値及び下限値の設定値を初期化するA/D値イニシャライズ処理を実行するイニシャライズ動作装置97を備える。イニシャライズ動作装置97は、CPU91に接続された複数のスイッチや、CPU91と通信可能にする通信機能を備える。
【0046】
EEPROM93には、運転者のリクライニング駆動スイッチ65の操作に応じて、傾動角度検出センサ63及びスライド量検出センサ64の検出値に基づいてシートバック位置を座位状態からフルフラット状態の間の任意の位置に移動制御するためのシートバック位置制御データが予め記憶されている。このシートバック位置制御データは、具体的には、図10に示すように、各リクライニング角度に対応したシートバックスライド位置が設定されたマップデータやテーブルデータである。制御ユニット66は、使用者が、EEPROM93内のシートバック位置制御データを任意に設定及び変更可能に構成されている。即ち、使用者は、各リクライニング角度に応じたシートバックスライド位置、つまりシートバック12の動特性を示すシートバック動特性設定値を任意に設定及び変更することができる。
【0047】
本実施の形態において、制御ユニット66は、シートバック位置制御データとして、リクライニング角度を水平面に対して0°〜80°の間で設定することができ、シートバックスライド位置をスライド方向(図1の矢印A方向)最下位置を基準として0mm〜180mmの間で設定することができるように構成されている。また、シートバック位置制御データは、シートバック12の上昇動作時とシートバック12の下降動作時において夫々独立したシートバック動特性を示すように設定することができるように構成されている。例えば、図10に示すように、シートバック12の上昇及び下降動作を、線aや線eに示すような動特性を示すように設定することや、線b,c,dに示すようなヒステリシスループを描くような動特性を示すように設定することができる。
【0048】
スライド駆動用モータ制御部94は、例えば、PWM回路から構成されており、スライド駆動用モータ62に出力するパルス幅を変化させることによりスライド駆動用モータ62を駆動制御する。
【0049】
リクライニング駆動用モータ制御部95は、スライド駆動用モータ制御部94と同様に、例えば、PWM回路から構成されており、リクライニング駆動用モータ67に出力するパルス幅を変化させることによりリクライニング駆動用モータ67を駆動制御する。
【0050】
制御ユニット66は、傾動角度検出センサ63及びスライド量検出センサ64の検出値に応じて図17及び図18で後述するA/D値イニシャライズ処理で作成されるAD値−角度テーブル及びAD値−スライド量テーブルを参照して現在のシートバック位置を検出し、上記シートバック位置制御データを参照して、リクライニング駆動スイッチ65の操作に応じて設定されているシートバック動特性に従ってスライド駆動用モータ62及びリクライニング駆動用モータ67を夫々駆動してシートバック位置を駆動制御するシートバック駆動制御処理を実行する。シートバック駆動制御処理は、CPU91によって実行される。
【0051】
以下、シートバック駆動制御処理について具体的に説明する。
【0052】
図11は、シートバック駆動制御処理のフローチャートである。
【0053】
シートバック駆動制御処理において、まず、傾動角度検出センサ63及びスライド量検出センサ64の検出値に基づいて現在のシートバック位置を検出する(ステップS1)。具体的には、後述する図14のA/D値−角度テーブルを参照して、後述する図13の角度検出処理を実行して取り込んだ傾動角度検出センサ63の検出値に対応する角度を検索し、検索した角度を現在のシートバック12のリクライニング角度とする。また、同様に、後述する図16のA/D値−スライド量テーブルを参照して、後述するシートバックスライド位置検出処理を実行して取り込んだスライド量検出センサ64の検出値に対応するスライド量を検索し、検索したスライド量を現在のシートバック12のシートバックスライド位置とする。
【0054】
次いで、リクライニング駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号であるか否かを判別する(ステップS2)。リクライニング駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号である場合は、EEPROM93内のシート位置制御データを検索して、電動リクライニングシート10の上昇動作時のシートバック動特性設定値を読み出し(ステップS3)、ステップS5の処理に移行する。一方、リクライニング駆動スイッチ65からの入力信号が上昇動作指示信号ではなく下降動作指示信号である場合は、EEPROM93内のシート位置制御データを検索して、電動リクライニングシート10の下降動作時のシートバック動特性設定値を読み出し(ステップS4)、ステップS5の処理に移行する。
【0055】
次いで、ステップS5において、ステップS3又はステップS4において読み出したシートバック動特性設定値に基づいて、図10に示すような各設定値を滑らかに結んだシートバック動特性ライングラフを算出する。次いで、ステップS1において検出した現在のシートバック位置に対応するシートバック位置をステップS5において算出したシートバック動特性ライングラフから検出し、この検出値からシートバック動特性ライングラフに沿ってシートバック12がリクライニング動作及びスライド動作するようにスライド駆動用モータ62及びリクライニング駆動用モータ67を駆動制御して、シートバック12の位置を制御する(ステップS6)。
【0056】
上記シートバック駆動制御処理により、図12(A)〜(G)に示すように、シートバック12を座位状態からフルフラット状態の所望の位置に制御することができる。
【0057】
上述のように、電動リクリアニングシート10は、シートバック12のリクライニング動作時にリクライニング角度に応じてシートフレーム23に沿ってシートバック12をスライド駆動させるので、運転者の背中がシートバック上を摩擦に抗して動くことを抑制することができる。これにより、運転者のシートバックに対する背中の接触部が擦れるようにずれてしまうことを抑制することができる。このため、運転者がリクライニング動作の度に座り直して姿勢を元に戻す必要を低減することができ、リクライニング動作時に運転者に不便が生ずることを抑制することができる。加えて、リクライニング動作時に運転者の背中が擦れることを抑制することができ、運転者に不快感を与えることを抑制することができる。
【0058】
また、制御ユニット66のEEPROM93に予め設定されたシート位置制御データに基づいてリクライニング角度及びシートバックスライド位置が制御されるので、運転者の体型や好みに合わせてシートバック動特性を設定することができる。このため、運転者毎に、シートバックに対する背中の接触部が擦れるようにずれてしまうことを抑制することができる。これにより、運転者毎に、リクライニング動作時に不便が生ずること、及び不快感を与えることを抑制することができる。
【0059】
加えて、EEPROM93に設定されたシート位置制御データは、使用者によって任意の設定値に設定及び変更することができると共に、シートバック12の上昇動作時とシートバック12の下降動作時において夫々独立したシートバック動特性を示すように設定することができる。このため、種々のシートバック動特性を設定することができる。
【0060】
次いで、図11のシートバック駆動制御処理のステップS1において実行する角度検出処理及びスライド位置検出処理について説明する。図13は、角度検出処理のフローチャートである。本処理はCPU91において実行される。
【0061】
角度検出処理において、まず、A/D変換器96によってA/D変換された傾動角度検出センサ63の検出値(以下、A/D値とも称する)を読み込む(ステップS11)。次いで、図14に示すA/D値−角度テーブルを参照して、ステップS11において読み込んだA/D値に対応する角度を算出する(ステップS12)。ステップS12における角度の算出は、A/D値−角度テーブルに基づいて、図15に示すA/D値−角度グラフを算出して、このグラフにおいて検出したA/D値に対応する角度を算出することにより行う。A/D値−角度テーブルには、図14に示すように、0°〜80°の角度1°毎に対応するA/D値が設定されている。
【0062】
次いで、ステップS12において算出した角度が上限値(80°)又は下限値(0°)に達しているか否かを夫々判別する(ステップS13,14)。算出した角度が上限値又は下限値に達している場合は、データエラー又は装置異常と判断して(ステップS15)、本処理を終了する。一方、算出した角度が上限値又は下限値に達していない場合は、ステップS12において算出された角度を現在のリクライニング角度と判断して取り込み(ステップS16)、本処理を終了する。
【0063】
スライド位置検出処理は、図13の角度検出処理と同様に、A/D変換器96によってA/D変換されたスライド量検出センサ64の検出値(以下、A/D値とも称する)を読み込み、図16のA/D値−スライド量テーブルを参照して、上記読み込んだA/D値に対応するスライド量を算出し、算出したスライド量が上限値(180mm)又は下限値(0mm)に達している場合は、データエラー又は装置異常と判断し、一方、算出したスライド量が上限値又は下限値に達していない場合は、算出したスライド量を現在のシートバックスライド位置と判断して取り込む。スライド位置検出処理は、上記図13の角度検出処理と基本的に同じなので詳細な説明は省略する。A/D値−スライド量テーブルには、図16に示すように、0mm〜180mmのスライド量1mm毎に対応するA/D値が設定されている。
【0064】
次いで、図13のA/D値−角度テーブルを作成するために実行するA/D値イニシャライズ処理について説明する。図17は、A/D値イニシャライズ処理のフローチャートである。本処理はCPU91において実行される。A/D値イニシャライズ処理は、使用者がイニシャライズ動作装置97に対して所定の操作をすることによってイニシャライズ動作装置97から送信されるイニシャライズ動作指示を受信することにより開始される。
【0065】
A/D値イニシャライズ処理において、まず、リクライニング下限検出センサ82がHighレベルの出力信号を出力しているか否かを判別することにより、シートバック12が下限(フルフラット状態)まで傾動されているか否かを判別する(ステップS21)。下限でない場合は、シートバック12が傾動可能範囲の下限位置に達するまでリクライニング駆動用モータ67を下降方向へ駆動する(ステップS21,S22)。
【0066】
リクライニング下限検出センサ82からのHighレベルの出力信号を認識してシートバック12が下限に位置していると判別すると、このときの傾動角度検出センサ63からのA/D値を下限のA/D値としてEEPROM93に保存する(ステップS23)。ステップS23において保存する下限のA/D値は、リクライニング下限検出センサ82からのHighレベル信号を認識したときに検出したA/D値より所定の微小時間前に検出したA/D値とすることが好ましい。
【0067】
次いで、ステップS21,22と同様にして、シートバック12が上限位置に達するまでリクライニング駆動用モータ67を上昇方向に駆動する(ステップS24,25)。リクライニング上限検出センサ81からのHighレベルの出力信号を認識して、シートバック12が上限に位置していると判別すると、このときの傾動角度検出センサ63からのA/D値を上限のA/D値としてEEPROM93に保存する(ステップS26)。ステップS26において保存する上限のA/D値は、ステップS23と同様に、リクライニング上限検出センサ81からのHighレベル信号を認識したときに検出したA/D値より所定の微小時間前に検出したA/D値とすることが好ましい。
【0068】
次いで、ステップS23及びステップS26において夫々保存した下限及び上限のA/D値に基づいてA/D値−角度テーブルを作成し(ステップS27)、本処理を終了する。
【0069】
ステップS27におけるA/D値−角度テーブルの作成は、以下のように行う。つまり、まず、上限のA/D値を傾動可能範囲の上限角度(80°)に対応付け、下限のA/D値を傾動可能範囲の下限角度(0°)に対応付ける。そして、A/D値−角度座標系を考えて、上限のA/D値と角度、下限のA/D値と角度から、上限と下限を結ぶ線の傾きを算出して、各角度に対応するA/D値を算出する(図15参照)。そして、各角度(0°〜80°)に対応するA/D値をテーブル形式にまとめてA/D値−角度テーブル(図14参照)を作成する。
【0070】
次いで、図16のA/D値−スライド量テーブルを作成するために実行するA/D値イニシャライズ処理について説明する。図18は、A/D値イニシャライズ処理のフローチャートである。本処理はCPU91において実行される。A/D値イニシャライズ処理は、使用者がイニシャライズ動作装置97に対して所定の操作をすることによってイニシャライズ動作装置97からのイニシャライズ動作指示を受信することにより開始される。
【0071】
A/D値イニシャライズ処理において、まず、スライド下限検出センサ84がHighレベルの出力信号を出力しているか否かを判別することにより、シートバック12が最下位置までスライド移動されているか否かを判別する(ステップS31)。最下位置でない場合は、シートバック12が最下位置に達するまでスライド駆動用モータ62を下降方向へ駆動する(ステップS31,S32)。
【0072】
スライド下限検出センサ84からのHighレベルの出力信号を認識してシートバック12が最下位に位置していると判別すると、このときのスライド量検出センサ64からのA/D値を下限のA/D値としてEEPROM93に保存する(ステップS33)。ステップS33において記憶する下限のA/D値は、スライド下限検出センサ84からのHighレベル信号を認識したときに検出したA/D値より所定の微小時間前に検出したA/D値とすることが好ましい。
【0073】
次いで、ステップS31,32と同様にして、シートバック12が最上位置に達するまでスライド駆動用モータ62を上昇方向に駆動する(ステップS34,35)。スライド上限検出センサ83からのHighレベルの出力信号を認識して、シートバック12が最上位に位置していると判別すると、このときのスライド量検出センサ64からのA/D値を上限のA/D値としてEEPROM93に保存する(ステップS36)。ステップS36において保存する上限のA/D値は、ステップS33と同様に、スライド上限検出センサ83からのHighレベル信号を認識したときに検出したA/D値より所定の微小時間前に検出したA/D値とすることが好ましい。
【0074】
次いで、ステップS33及びステップS36において夫々保存した下限及び上限のA/D値に基づいてA/D値−スライド量テーブルを作成し(ステップS37)、本処理を終了する。ステップS37におけるA/D値−スライド量テーブルの作成は、上記ステップS27と同様に作成する。
【0075】
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシート10によれば、A/D値イニシャライズ処理を実行して、リクライニング上限検出センサ81及びリクライニング下限検出センサ82によって夫々検出された上限及び下限のA/D値に基づいて、シートバック12の傾動可能範囲を規定するA/D値−角度テーブルを作成するので、シートバック12の傾動可能範囲を容易に設定することができる。同様に、A/D値イニシャライズ処理を実行して、スライド上限検出センサ83及びスライド下限検出センサ84によって夫々検出された上限及び下限のA/D値に基づいて、シートバック12のスライド可能範囲を規定するA/D値−スライド量テーブルを作成するので、シートバック12のスライド可能範囲を容易に設定することができる。このため、使用者の利便性を向上させることができる。
【0076】
電動リクライニングシート10は、上述のように上限値及び下限値に基づいて作成されたA/D値−角度テーブルと、傾動角度検出センサ63の検出値とに基づいてシートバック12のリクライニング角度を検出するので、傾動角度検出センサ63が検出精度の低いものであっても精度良くシートバック12のリクライニング角度を検出することができる。このため、電動リクライニングシート10を安価にすることができる。同様に、スライド量検出センサ64が検出精度の低いものであっても精度良くシートバック12のシートバックスライド位置を検出することができ、電動リクライニングシート10をより安価にすることができる。
【0077】
電動リクライニングシート10は、リクライニング上限検出センサ81、リクライニング下限検出センサ82、スライド上限検出センサ83、及びスライド下限検出センサ84として、リミットスイッチを用いることにより、電動リクライニングシート10をより安価にすることができる。
【0078】
上記イニシャライズ処理は、傾動角度検出センサ63やスライド量検出センサ64を電動リクライニングシート10に組み付けた後に1度行えばよいので、シートバック12の可能範囲を容易に設定することができる。
【0079】
シートバック12の可動範囲の変更は、リクライニング上限検出センサ81、リクライニング下限検出センサ82、スライド上限検出センサ83や、スライド下限検出センサ84の取り付け位置を変更した後に再度上記A/D値イニシャライズ処理を実行すればよく、シートバック12の可動範囲の再設定を容易に行うことができる。
【0080】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係る電動リクライニングシートについて説明する。
【0081】
本実施の形態に係る電動リクライニングシートは、上記本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシート10に対して、リクライニング上限検出センサ81、リクライニング下限検出センサ82、スライド上限検出センサ83や、スライド下限検出センサ84を備えない点が異なる。以下、上記本発明の第1の実施の形態と同じ構成部材には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0082】
以下、本実施の形態におけるA/D値イニシャライズ処理について説明する。A/D値−角度テーブルを作成するためのA/D値イニシャライズ処理とA/D値−スライド量テーブルを作成するためのA/D値イニシャライズ処理とは基本的に同じであるので、A/D値−角度テーブルを作成するためのA/D値イニシャライズ処理についてのみ説明する。図19は、A/D値イニシャライズ処理のフローチャートである。
【0083】
本処理においては、まず、リクライニング角度が下限になるようにシートバック12を手動で動かす(ステップS41)。ステップS41においては、リクライニング駆動用モータ67を電動リクライニングシート10から取り外すか、若しくは、リクライニング駆動用モータ67とシートバック12との結合を解除することができるクラッチを設けてこれを操作してリクライニング駆動用モータ67とシートバック12との結合を解除した後にシートバック12を手動で動かす。次いで、イニシャライズ動作装置97を操作してイニシャライズ動作装置97から下限のA/D値を取り込むように指示する(ステップS42)。そして、このときの傾動角度検出センサ64からのA/D値を下限のA/D値としてEEPROM93に保存する(ステップS43)。
【0084】
次いで、リクライニング角度が上限になるようにシートバック12を手動で動かす(ステップS44)。ステップS44においては、ステップS41と同様にしてシートバック12を手動で動かす。次いで、イニシャライズ動作装置97を操作してイニシャライズ動作装置97から上限のA/D値を取り込むように指示する(ステップS45)。そして、このときの傾動角度検出センサ64からのA/D値を上限のA/D値としてEEPROM93に保存する(ステップS46)。
【0085】
そして、ステップS43及びステップS46において夫々保存した下限及び上限のA/D値に基づいてA/D値−角度テーブルを作成し(ステップS47)、本処理を終了する。ステップS47におけるA/D値−角度テーブルの作成は、図17のステップS27と同様に行う。
【0086】
上述のように、リクライニング上限検出センサ81、リクライニング下限検出センサ82、スライド上限検出センサ83や、スライド下限検出センサ84を備えない電動リクライニングシートにおいても、A/D値−角度テーブル及びA/D値−スライド量テーブルの作成を容易に行うことができる。このように、本実施の形態に係る電動リクライニングシートによれば、リクライニング上限検出センサ81、リクライニング下限検出センサ82、スライド上限検出センサ83や、スライド下限検出センサ84を省略することができ、電動リクライニングシートをより安価にすることができる。
【0087】
上記第1及び第2の実施の形態において、電動リクライニングシートは電動車椅子に適用されるものとしたが、電動リクライニングシートは、マッサージチェアや他のシートに適用してもよく、また、介護ベッドに応用することもできる。
【0088】
上記第1及び第2の実施の形態に係る電動リクライニングシートは、シートバック12がスライド駆動可能なものであるが、電動リクライニングシートは、スライド駆動用モータ62、スライド量検出センサ64、スライド上限検出センサ83、スライド下限検出センサ84、及びスライド駆動用モータ制御部94等を備えず、シートバック12がスライド駆動できないものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動リクライニングシートが適用された電動車椅子の概略構成を示す右側面図である。
【図2】図1の電動車椅子の正面図である。
【図3】図1の電動車椅子の背面図である。
【図4】図1の電動車椅子の平面図である。
【図5】図1の電動車椅子の駆動系を示す部分拡大図である。
【図6】フルフラット状態における図1の電動リクライニングシートの状態を示す図である。
【図7】図1の電動リクライニングシートの電気的構成を示すブロック図である。
【図8】図3における電動リクライニングシートに取り付けられたスライドメカプレートの背面側を示す図である。
【図9】図8のスライドメカプレートの前面側を示す図である。
【図10】図7のEEPROMに記憶されるシート位置制御データを説明するための図である。
【図11】図7の制御ユニットが実行するシートバック駆動制御処理のフローチャートである。
【図12】図12(A)〜図12(B)はシートバックのリクライニング動作及びスライド動作を模式的に示す図である。
【図13】図11のシートバック駆動制御処理において実行される角度検出処理のフローチャートである。
【図14】図13の角度検出処理において用いるA/D値−角度テーブルを示す図である。
【図15】図13の角度検出処理において用いるA/D値−角度グラフを示す図である。
【図16】図11のシートバック駆動制御処理において実行されるスライド位置検出処理において用いるA/D値−スライド量テーブルを示す図である。
【図17】図14のA/D値−角度テーブルを作成するために実行されるA/D値イニシャライズ処理のフローチャートである。
【図18】図16のA/D値−スライド量テーブルを作成するために実行されるA/D値イニシャライズ処理のフローチャートである。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る電動リクライニングシートにおいて実行されるA/D値−角度テーブルを作成するために実行されるA/D値イニシャライズ処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 電動車椅子
10,100 電動リクライニングシート
11 シートクッション
12 シートバック
13 フットレスト
23 シートバックフレーム
52 リクライニング機構
61 リクライニング駆動用装置
62 スライド駆動用モータ
63 傾動角度検出センサ
64 スライド量検出センサ
65 リクライニング駆動スイッチ
66 制御ユニット
67 リクライニング駆動用モータ
81 リクライニング上限検出センサ
82 リクライニング下限検出センサ
83 スライド上限検出センサ
84 スライド下限検出センサ
91 CPU
93 EEPROM
96 A/D変換器
97 イニシャライズ動作装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに着座する使用者の背部を受けるシートバックと、
リクライニング駆動スイッチと、リクライニング駆動用装置とを有し、前記リクライニング駆動スイッチの操作により前記リクライニング駆動用装置を駆動させて前記シートバックを前記シートクッションに対して傾動させるリクライニング装置とを備える電動リクライニングシートであって、
前記シートバックの傾動角度を検出する傾動角度検出手段を備え、
前記傾動角度検出手段は、前記シートバックの傾動量を検出する傾動量検出センサと、前記シートバックの傾動可能範囲の上限値を検出する上限値検出手段と、前記シートバックの傾動可能範囲の下限値を検出する下限値検出手段と、前記上限検出手段によって検出された上限値と前記下限値検出手段によって検出された下限値とに基づいて前記シートバックの傾動角度を検出するための角度テーブルを作成し、前記角度テーブル及び前記傾動量検出センサの検出値に基づいて前記シートバックの傾動角度を検出する制御ユニットとを備えることを特徴とする電動リクライニングシート。
【請求項2】
前記上限値検出手段はリミットスイッチであり、前記下限値検出手段はリミットスイッチであることを特徴とする請求項1記載の電動リクライニングシート。
【請求項3】
前記シートバックをスライド駆動するスライド駆動用装置を備え、
前記制御ユニットは、前記検出する前記シートバックの傾動角度に応じて前記シートバックをスライド駆動するように前記スライド駆動用装置を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の電動リクライニングシート。
【請求項4】
電動車椅子に搭載されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動リクライニングシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−167146(P2007−167146A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365556(P2005−365556)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】