説明

電動圧縮機

【課題】大型化することなく、性能低下の少ない電動圧縮機を提供する。
【解決手段】固定スクロール11と旋回スクロール12とを有する圧縮機構部4と、圧縮機構部4を駆動する電動機5と、圧縮機構部4と電動機5とを収容する本体ケーシング3と、本体ケーシング3の開口側において固定スクロール11とにより冷媒の吸入通路61を構成する仕切り部112を備えたサブケーシング102と、仕切り部112の吸入通路61とは反対面に備えられ電動機5を駆動する電動機駆動回路部101と、仕切り部112に備えられると共に、電動機5と電動機駆動回路部101を接続するための接続空間104とを備え、接続空間104に断熱材200を設けたもので、接続空間104側から吸入通路61側への熱伝熱が減少し、電動機駆動回路部101への熱影響は悪化しない。そのため、圧縮機構部4、本体ケーシング3が大型化、重量化することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関するもので、特に、圧縮機構部と電動機と電動機駆動回路部を本体ケーシングに内蔵した電動圧縮機の電動機駆動回路部の冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電動圧縮機は、電動機駆動回路部と圧縮機構部および電動機とを互いに仕切って設けることが一般的に行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、上記特許文献1に記載された従来の電動圧縮機の断面図、図5は、同電動圧縮機のサブケーシングと固定スクロールの分解斜視図である。
【0004】
図4、図5において、従来の電動圧縮機の電動機駆動回路部101は、サブケーシング102の仕切り部112において、吸入通路61の反対面に、回路基板103と、図示しない電解コンデンサを備えている。
【0005】
また、回路基板103には、発熱度の高いスイッチング素子を含むIPM(インテリジェントパワーモジュール)の発熱体105が、仕切り部112に熱的に密着するように搭載されている。
【0006】
電動機駆動回路部101は、電動機5とハーネスコネクタ106によって接続される圧縮機ターミナル107を介して電気的な接続が行われ、電動機5を、温度などの必要な情報をモニタしながら電動機駆動回路部101によって駆動するようにしてある。
【0007】
吸入口8から流入した冷媒30は、U字形状の吸入通路61を流れる。低温の冷媒30は、最初に仕切り部112を挟んで相対する発熱体105に沿って流れることにより、発熱体105と熱交換を効果的に行って冷却する。その後、他の制御部品に相対した部分にも流れて電動機駆動回路部101の全体を冷却し、固定鏡板11aの吸入通路出口孔70から圧縮空間10に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−224809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような電動圧縮機の構造では、電動機駆動回路部101の発熱体105を吸入冷媒で冷却する吸入通路61と、電動機5と電動機駆動回路部101を接続するための接続空間104が分離壁を介して熱伝導の高い同一面内に構成されているため、電動機5を収容している空間が高温化した場合、接続空間104側から吸入通路61側への伝熱が増大し、電動機駆動回路部101への熱影響が悪化するという課題を有している。
【0010】
電動機駆動回路部101への熱影響の悪化を抑制するには電動機駆動回路部101の発熱体105を吸入冷媒で冷却する吸入通路61と接続空間104との分離壁を厚肉化する必要があり、圧縮機構部4、本体ケーシング3の大型化、重量化の原因になる。
【0011】
また、接続空間104側から吸入通路61側への熱伝導が増大することより、吸入冷媒
温度の上昇を招くことによって体積効率が低下し、電動圧縮機の性能にも大きな影響を及ぼすという、課題があった。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、大型化することなく、電動機駆動回路部の冷却向上を図り、性能低下の少ない電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電動圧縮機は、固定スクロールと旋回スクロールとを有する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する電動機と、前記圧縮機構部と前記電動機とを収容する本体ケーシングと、前記本体ケーシングの開口側において前記固定スクロールとにより冷媒の吸入通路を構成する仕切り部を備えたサブケーシングと、前記仕切り部の前記吸入通路とは反対面に備えられると共に前記電動機を駆動する電動機駆動回路部と、前記仕切り部に備えられると共に、前記電動機と前記電動機駆動回路部を接続するための接続空間とを備え、前記接続空間に断熱材を設けたもので、接続空間側から吸入通路側への伝熱が減少し、電動機駆動回路部への熱影響は悪化しない。そのため、圧縮機構部、本体ケーシングが大型化、重量化することはない。また、接続空間側から吸入通路側への熱伝導が減少することより、吸入冷媒温度の上昇を招くことなく、電動圧縮機の性能に影響を及ぼさない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動圧縮機は、小型化および軽量化が図れる。更に、接続空間側から吸入通路側への熱伝導が低減することより、吸入冷媒温度上昇の抑制が可能で、体積効率が良化し、圧縮機の性能改善も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における電動圧縮機の断面図
【図2】同電動圧縮機のサブケーシングと固定スクロールの分解斜視図
【図3】本発明の実施の形態2における電動圧縮機のサブケーシングと固定スクロールの分解斜視図
【図4】従来の電動圧縮機の断面図
【図5】同電動圧縮機のサブケーシングと固定スクロールの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、固定スクロールと旋回スクロールとを有する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する電動機と、前記圧縮機構部と前記電動機とを収容する本体ケーシングと、前記本体ケーシングの開口側において前記固定スクロールとにより冷媒の吸入通路を構成する仕切り部を備えたサブケーシングと、前記仕切り部の前記吸入通路とは反対面に備えられると共に前記電動機を駆動する電動機駆動回路部と、前記仕切り部に備えられると共に、前記電動機と前記電動機駆動回路部を接続するための接続空間とを備え、前記接続空間に断熱材を設けたもので、接続空間側から吸入通路側への伝熱が減少し、電動機駆動回路部への熱影響は悪化しない。そのため、圧縮機構部、本体ケーシングが大型化、重量化することはない。また、接続空間側から吸入通路側への熱伝導が減少することより、吸入冷媒温度の上昇を招くことなく、電動圧縮機の性能に影響を及ぼさない。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の断熱材を、吸入通路側にも設けたもので、接続空間側から吸入通路側への伝熱が更に減少し、大きな効果が得られる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における電動圧縮機について、図1、図2を用いて説明する。図1は、本実施の形態における電動圧縮機の断面図である。
【0020】
図1は、電動圧縮機1の胴部の周りにある取付け脚2によって横向きに設置される横型の電動圧縮機の場合の1つの例を示している。
【0021】
図1において、本実施の形態における電動圧縮機1は、その本体ケーシング3内に電動機5を内蔵し、この本体ケーシング3に、嵌入または圧入される圧縮機構部4を駆動する。電動機5は、サブケーシング102に組み込まれた電動機駆動回路部101によって駆動される。また、本体ケーシング3内に、圧縮機構部4を含む各摺動部の潤滑に供する液を貯留する貯液部6を備えている。
【0022】
取り扱う冷媒は、ガス冷媒であり、各摺動部の潤滑や圧縮機構部4の摺動部のシールに供する液としては潤滑油7などの液を採用している。また、潤滑油7は、冷媒に対して相溶性のあるものである。
【0023】
本実施の形態における電動圧縮機1の圧縮機構部4は、ひとつの例としてスクロール方式のものである。
【0024】
図1において、本体ケーシング3内の軸線方向の一方の端部壁3a側から、ポンプ13、副軸受41、電動機5、主軸受42を持った主軸受部材51を配置してある。ポンプ13は、端壁部3aの外面から収容して、その後に嵌め付けた蓋体52との間に保持し、蓋体52の内側に、貯液部6に通じるポンプ室53を形成して、吸上げ通路54を介して貯液部6に通じるようにしてある。
【0025】
副軸受41は、端部壁3aにて支持し、駆動軸14のポンプ13に連結している側を軸支するようにしてある。電動機5は、固定子5aを本体ケーシング3に焼き嵌め固定されるか、または環状部材17によって固定され、駆動軸14の途中まわりに固定した回転子5bとによって駆動軸14を回転駆動できるようにしている。主軸受部材51は、固定スクロール11と図示しないボルトなどによって固定し、本体ケーシング3の開口側に嵌合されるサブケーシング102でもって挟持する状態で、駆動軸14の圧縮機構部4側を主軸受42により軸支している。
【0026】
さらに、主軸受部材51と固定スクロール11との間に旋回スクロール12を挟み込んでスクロール圧縮機を構成している。主軸受部材51と旋回スクロール12との間には、オルダムリングなどからなり、旋回スクロール12の自転を防止して円運動させるための自転拘束部57が設けられ、駆動軸14を偏心軸受43を介して、旋回スクロール12に接続して、旋回スクロール12を円軌道上で旋回させられるようにしている。
【0027】
サブケーシング102においては、吸入口8から通じる空間を、シール部材11bを用いて固定スクロール11の固定鏡板11aと気密的に組み合せることにより、吸入通路61を形成している。吸入通路61の後述の吸入通路出口孔70は、固定スクロール11における吸入孔に相当する。また、固定スクロール11には、吐出孔31及びリード弁31aが設けられ、固定鏡板11aと蓋体62で構成されて吸入通路61に突出した吐出室63に開口される。吐出室63は、固定スクロール11および主軸受部材51と本体ケーシング3との間に形成した連絡通路64を通じて電動機5側に連通している。
【0028】
電動機駆動回路部101は、サブケーシング102の仕切り部112において、吸入通路61の反対面に、回路基板103と、図示しない電解コンデンサと備えて構成される。
また、回路基板103には、発熱度の高いスイッチング素子を含むIPM(インテリジェントパワーモジュール)の発熱体105が、仕切り部112に熱的に密着するように搭載されている。
【0029】
電動機駆動回路部101は、電動機5とハーネスコネクタ106によって接続される圧縮機ターミナル107を介して電気的な接続が行われ、電動機5を温度などの必要な情報をモニタしながら電動機駆動回路部101によって駆動するようにしてある。なお、電動機駆動回路部101を覆うようにカバー113が設けられている。
【0030】
以上のように構成された本実施の形態における電動圧縮機の作用、効果について、以下に述べる。
【0031】
電動機5は、電動機駆動回路部101によって駆動され、駆動軸14を介して圧縮機構部4を円軌道運動させるとともに、ポンプ13を駆動する。このとき圧縮機構部4は、ポンプ13により、貯液部6の潤滑油7を駆動軸14の給油路15を通じて供給されて潤滑およびシール作用を受けながら、冷凍サイクルからの帰還冷媒を、サブケーシング102に設けた吸入口8と吸入通路61と吸入通路出口孔70を通じて吸入し、圧縮空間10で圧縮して、吐出孔31から吐出室63に吐出する。
【0032】
吐出室63に吐出された冷媒30は、連絡通路64を通じて電動機5側に入り、電動機5を冷却しながら、本体ケーシング3の吐出口9から吐出される。なお、吐出口9までの過程で、冷媒30は、衝突、遠心、絞りなど各種の気液分離を図って潤滑油7の分離を受けながらも、随伴している一部の潤滑油7によって副軸受41の潤滑も行う。
【0033】
次に、サブケーシング102の吸入通路61における、電動機駆動回路部101の発熱体105を効果的に冷却する構成について説明する。
【0034】
図2は、本実施の形態における電動圧縮機のサブケーシングと固定スクロールの分解斜視図である。
【0035】
図2において、固定スクロール11に構成された吐出室63が、サブケーシング102の凹部63aに嵌まり込むようにして組み立てられて吸入通路61が形成される。
【0036】
吸入通路61は、中央壁71を設けて、吸入口8から吸入通路出口孔70にかけて矢印Aで示すようにU字形状に形成している。図において吸入通路61の底面となる部分が裏面に電動機駆動回路部101を有する仕切り部112であり、特に、吸入口8から流入した直後の部分が、仕切り部112を挟んで発熱体105に沿うように構成するとともに、発熱体105に相対する部分には、フィン72を形成して熱交換効率の向上を図っている。
【0037】
ここで、電動機駆動回路部101は、電動機5とハーネスコネクタ106によって接続される圧縮機ターミナル107を介して電気的な接続が行われている。この接続空間104の壁面には、図1、図2に示す如く断熱材200が設けられている。
【0038】
これにより、接続空間104側から吸入通路61側への伝熱が減少し、電動機駆動回路部101への熱影響は悪化しない。そのため、圧縮機構部4、本体ケーシング3が大型化、重量化することはない。また、接続空間104側から吸入通路61側への熱伝導が減少することより、吸入冷媒温度の上昇を招くことなく、電動圧縮機の性能に影響を及ぼさない。
【0039】
尚、吸入口8をサブケーシング102側に設けたが、これに限るものではなく、本体ケーシング3側などに設けても良い。
【0040】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における電動圧縮機のサブケーシングの斜視図である。なお、上記実施の形態1における電動圧縮機と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
本実施の形態における電動圧縮機は、図3に示すように、断熱材200を、吸入通路61側にも設けたもので、これにより、接続空間104側から吸入通路61側への伝熱が更に減少し、大きな効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる電動圧縮機は、従来のインバータ内蔵式の電動圧縮機と比較して小型軽量化が図られ、さらに冷却面の向上により電子部品の信頼性も向上する。これにより、ハイブリッド車等の車両に幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 電動圧縮機
3 本体ケーシング
4 圧縮機構部
5 電動機
8 吸入口
11 固定スクロール
11a 固定鏡板
12 旋回スクロール
30 冷媒
52、62 蓋体
61 吸入通路
63 吐出室
70 吸入通路出口孔
101 電動機駆動回路部
102 サブケーシング
104 接続空間
105 発熱体
112 仕切り部
200 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールと旋回スクロールとを有する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する電動機と、前記圧縮機構部と前記電動機とを収容する本体ケーシングと、前記本体ケーシングの開口側において前記固定スクロールとにより冷媒の吸入通路を構成する仕切り部を備えたサブケーシングと、前記仕切り部の前記吸入通路とは反対面に備えられると共に前記電動機を駆動する電動機駆動回路部と、前記仕切り部に備えられると共に、前記電動機と前記電動機駆動回路部を接続するための接続空間とを備え、前記接続空間に断熱材を設けたことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
断熱材を、吸入通路側にも設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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