説明

電動工具システム

【課題】工具の使い勝手と大出力化を両立させることで様々な作業内容に適応できる電動工具システムを提供すること。
【解決手段】複数の電池セルを直列接続して構成した電池パック12と、互いに並列接続した電池セルからなるセル組を複数直列接続して構成した電池パック3とを、共通の電動工具に使用可能な電動工具システムであって、電池パック12に用いられる電池セル8は、電池パック3に用いられる電池セル1の内部抵抗よりも相対的に小さい内部抵抗とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを直列接続して構成した電池パックと、互いに並列接続した電池セルからなるセル組を複数直列接続して構成した電池パックとを、共通の電動工具に使用可能な電動工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動工具用電池は、小型軽量を図るために、ニッケルカドミウム電池からリチウムイオン電池にシフトしてきている。リチウムイオン電池はニッケルカドミウム電池と比較すると、電池セル当りの電圧が3倍、容量が1/2であるため、同電圧、同容量では、1.5倍小型軽量化が図れる。一方、電動工具の電池は高負荷作業にも耐えられるように、大電流が流せる高出力電池が要求され、リチウムイオン電池はニッケルカドミウム電池と比較すると、電池の寿命、電池の安全性の面から大電流を流せないため、下記特許文献1に示すように、並列接続した電池セルからなるセル組を複数直列接続して構成した電池パックとすることにより、電池パックの容量は2倍、前記セルアセンブリの一方に流れる電流を1/2に低減して安全性を保ちつつ大電流放電が可能となるように構成している。
【0003】
【特許文献1】特開2008−182779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成では、大出力に対応できるものの、電池パックのサイズが大型化するために電動工具の使い勝手が犠牲になってしまう。一方、工具の使い勝手を優先させる場合には、電池セルを直列接続して構成した小型の電池パックを使用することとなり、工具の出力及び作業時間を犠牲にしなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、工具の使い勝手と大出力化を両立させることで様々な作業内容に適応できる電動工具システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、複数の電池セルを直列接続して構成した第1の電池パックと、互いに並列接続した電池セルからなるセル組を複数直列接続して構成した第2の電池パックとを、共通の電動工具に使用可能な電動工具システムであって、第1の電池パックに用いられる電池セルは、第2の電池パックに用いられる電池セルの内部抵抗よりも相対的に小さい内部抵抗とされていることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明では、第1の電池パックまたは第2の電池パックには、電動工具との間に流れる電流を制限する過電流防止回路が備えられていることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明では、第1の電池パックまたは第2の電池パックには、電池セルの温度が所定以上になったときに電池パックの放電を禁止する高温防止回路が備えられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の電池パックから取り出せる電流を多くできるため、この第1の電池パックを用いれば安全に大出力を得ることができるとともに、少ない電池セルで構成したことで工具を操作性良く使用することができる。また、第2の電池パックを用いることにより大出力を維持しつつ作業時間を長時間確保することができる。これにより、工具の操作性を損なうことなく安全に大出力を得ることができるため、様々な作業内容に適応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る実施形態について図1および図2を用いて説明する。本実施形態の電動工具は、2種類の電池パックを共通の電動工具に使用可能に構成された電動工具システムである。図1に示すように、電池パック12は正負の接続端子を解して電動工具に接続されており、電動工具に備えられたトリガスイッチの操作により電動工具に対して電力供給が行われる。
【0011】
図1に示す電池パック12(第1の電池パック)は、いわゆる1並タイプの電池パックであり、電動工具と接続されるターミナル5に備えられる正負端子間には1つのセルアセンブリ7が接続されている。セルアセンブリ7は、複数の電池セル8を直列接続して構成されている。また、セルアセンブリ7にはセルアセンブリ7に流れる電流を検出するための電流検出用抵抗が接続されている。
【0012】
制御回路4は、セルアセンブリ7に流れる電流を検出し、セルアセンブリ7の過電流を判別する。過電流状態であると判別したときには、電動工具側に放電停止の信号を送信して、電動工具側に備えられているスイッチを開くことによって放電経路を遮断するようになっている。
【0013】
また、高温防止回路11は、例えばサーマルプロテクタ10により構成されており、充電時における電池パック12内の温度が所定温度以上となるとこのサーマルプロテクタ10のスイッチ状態が開状態となることにより充電経路が遮断されるようになっている。この高温防止回路11は、充電経路遮断機能のみでなく放電経路の遮断機能を持たせるように構成しても良い。
【0014】
本実施形態では、図2に示すように、いわゆる2並タイプの電池パック3(第2の電池パック)も電動工具に接続することができる。これは、互いに並列接続した電池セル1からなるセル組2を複数直列接続して構成されている。また、その他の構成は、電池パック12と同様の構成である。
【0015】
ここで、電池パック3の電流容量は電池パック12の電流容量の2倍となっている。また、放電電流を同一とした場合、電池パック3の各電池セル1に流れる電流は電池パック12のセルアセンブリ7に流れる電流の1/2になっている。
【0016】
また、電池パック12の電池セル8の内部抵抗は、電池3電池セル1の40%以上改善品を使用している。電流容量は電池パック3の1/2、放電電流を同一とした場合は電池パック3の各電池セル1に流れる電流の2倍流れることとなる。
【0017】
基板6には、電動工具と充電器との電力の授受を行うためのターミナル5が設けられている。電池パック3または電池パック12を電動工具に装着すると電動工具のターミナルと電池のターミナル5が嵌合して、SW、整流子、モータ、と電流が流れて出力軸が回転する。ターミナル、SW、整流子、モータ等の電動工具全体の内部抵抗は、通常電池パック3の電池セル1の内部抵抗の約2倍程度であるため、電池3の電池セル1の内部抵抗をRとすると、電動工具全体の内部抵抗を2Rと仮定でき、電池パック3を含めた電動工具全体の内部抵抗は4R、流せる電流値は1×(V/R)、電池パック12を取付けた電動工具全体の内部抵抗は22/5R、流せる電流値は10/11×(V/R)となるため、電池パック12を取付けた電動工具の流せる電流値は電池3の10/11(0.91倍)となり工具実用時、9%程度の出力ダウンですむ。
【0018】
この結果、電池パック3を電動工具に取付けたときの作業と、電池パック12を電動工具に取付けて作業した場合で、電動工具の出力に差を感じることもなく、電池パック3と遜色なく作業することが可能となる。また、電池パック12は電池パック3に比べて電池セルの数を半分にして軽くすることができるため、工具使用時の操作性を良好に保つことができる。また、電動工具を長時間使用したい場合には、電流容量の多い電池パック3を用いれば大出力を維持しながら作業時間を適切に確保することができる。
【0019】
このように、要求される作業内容に応じて電池パックを使い分けることができるため、使い勝手のよい電動工具システムを提供することができる。
【0020】
また、過電流防止回路9および高温防止回路11を搭載しているので、電池パック12を使用して電動工具で高負荷作業を行って電池パック12に電池3の2倍の電流が流れても、電流値とセル温度を常に監視して、ある一定値を超えると電動工具への電力供給を停止させるので、すべての電動工具、作業に対応できるため、電池パック3と電池パック12の互換性をキープすることができ、更には高寿命で安全性の高いシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示した回路図
【図2】本発明の実施形態を示す電動工具システムのブロック回路図
【符号の説明】
【0022】
1…電池セル
2…セル組
3…電池パック
4…充電制御回路
5…ターミナル
6…基板
7…セルアセンブリ
8…電池セル
9…過電流防止回路
10…サーマルプロテクタ
11…高温防止回路
12…電池パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列接続して構成した第1の電池パックと、
互いに並列接続した電池セルからなるセル組を複数直列接続して構成した第2の電池パックとを、共通の電動工具に使用可能な電動工具システムであって、
前記第1の電池パックに用いられる前記電池セルは、前記第2の電池パックに用いられる前記電池セルの内部抵抗よりも相対的に小さい内部抵抗とされていることを特徴とする電動工具システム。
【請求項2】
前記第1の電池パックまたは前記第2の電池パックには、前記電動工具との間に流れる電流を制限する過電流防止回路が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項3】
前記第1の電池パックまたは前記第2の電池パックには、前記電池セルの温度が所定以上になったときに前記電池パックの放電を禁止する高温防止回路が備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動工具システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−50002(P2010−50002A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214591(P2008−214591)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】