説明

電動工具

【課題】 電力の浪費を軽減させることのできる電動工具、特に芝刈り機を提供する。
【解決手段】 芝刈り機1は、モータ32と、モータ32にかかる負荷を検出する電流検出抵抗27と、モータ32に駆動電力を供給するインバータ2と、インバータ2からモータ32への駆動電力の供給を指示するトリガスイッチ31と、トリガスイッチ31が駆動電力の供給を指示している場合に、電流検出抵抗27により検出された負荷に基づきモータ32に供給する駆動電力を変更するようにインバータ2を制御するマイコン29と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータに供給された電圧により駆動される電動工具、例えば芝刈り機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の芝刈り機では、常に一定の電圧がモータに供給されているため、芝を刈っていない空転時等に電力を浪費していた。
【0005】
そこで、本発明は、電力の浪費を軽減させることのできるインバータを備えた電動工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動工具は、モータと、前記モータにかかる負荷を検出する負荷検出部と、前記モータに駆動電力を供給する電力供給部と、前記電力供給部から前記モータへの駆動電力の供給を指示するトリガスイッチと、前記トリガスイッチが前記駆動電力の供給を指示している場合に、前記負荷検出部により検出された負荷に基づき前記モータに供給する駆動電力を変更するように前記電力供給部を制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、モータにかかる負荷に基づきモータに供給する駆動電力を変更するので、芝刈り機の電力の浪費を軽減させることが可能となる。
【0008】
また、前記電力供給部は、前記電力供給部に接続された電池パックからの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を備えており、前記制御部は、前記インバータ回路に出力するPWM信号のデューティを変更することにより前記駆動電力を変更させることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、電源として電池パックを用いた場合に、電池の持ち時間を長くすることが可能となる。
【0010】
また、前記制御部は、前記負荷検出部によって検出された負荷状態に応じて前記インバータを構成するスイッチング素子のデューティを変更することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、負荷に応じてデューティを変更するため、スイッチング素子の発熱を抑えることができると共に電池の消費電力を抑えることが可能となる。
【0012】
また、本発明の電動工具は、前記電池パックが前記電力供給部と接続されている状態で前記電池パックと前記インバータ回路との間に配置されたスイッチング素子を更に備え、前記制御部は、前記スイッチング素子をオン・オフさせることにより前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換し、前記電力供給部は、前記スイッチング素子により変換された交流電力を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流平滑回路と、を更に備え、前記インバータ回路は、前記整流・平滑回路から出力された直流電力を前記交流電力に変換し、前記制御部は、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティを変更することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、負荷に応じてデューティを変更するため、前記電池パックと前記インバータ回路との間に配置されたスイッチング素子の発熱を抑えることができると共に電池の消費電力を抑えることが可能となる。
【0014】
また、前記負荷検出部は、前記モータに流れる電流に基づき前記負荷を検出することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、簡単な構成で負荷状態を検出することができる。
【0016】
また、前記電力供給部は、電池パックからの直流電力を所定の電圧に昇圧する昇圧回路と、前記昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流平滑回路と、前記整流平滑回路の出力を交流電力に変換するインバータ回路と、を備え、前記昇圧回路は、前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子を有し、前記インバータ回路は、前記モータと接続される複数の第2のスイッチング素子を有し、前記制御部は、前記負荷検出部によって検出された負荷状態に応じて、前記第1及び第2のスイッチング素子の少なくとも一方に入力される信号のデューティを制御することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、負荷状態に応じてスイッチング素子を制御するため、スイッチング素子の発熱を抑えることができると共に消費電力を抑えることができる。
【0018】
また、前記制御部は、前記モータに流れる電流が第1の閾値より大きい場合には、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子に入力される信号のデューティを最大にし、前記電流が前記第1の閾値より小さい第2の閾値より小さい場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の少なくとも一方に入力される信号のデューティを最大より小さくすることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、負荷状態に応じてスイッチング素子を制御するため、スイッチング素子の発熱を抑えることができると共に消費電力を抑えることができる。
【0020】
また、前記電流が前記第1の閾値より小さい第2の閾値より小さい場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子に入力される信号のデューティを最大より小さくすることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、負荷が小さい場合には2つのスイッチング素子のデューティを抑えるため、スイッチング素子の発熱を抑えることができると共に消費電力を抑えることができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記負荷検出部により検出された負荷に基づき、前記モータの駆動状態を判断し、前記判断に基づき、前記モータに供給する駆動電力を変更するように前記電力供給部を制御することが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、モータの負荷状態に応じてモータへの電力供給を変更するため、電力消費を低減することができる。
【0024】
また、前記制御部は、前記モータが待機状態であると判断した場合には、前記作業中であると判断した場合よりも小さな駆動電力を前記モータに供給するよう前記電力供給部を制御することが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、モータの負荷状態に応じてモータへの電力供給を変更するため、電力消費を低減することができる。
【0026】
また、前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記電力供給部への直流電力の供給を停止させることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、電源として電池パックを用いた場合に、電池の寿命が短くなることを防止することが可能となる。
【0028】
また、本発明の別の観点による芝刈り機は、モータと、前記モータに駆動電力を供給する電力供給部と、前記電力供給部から前記モータへの駆動電力の供給を指示するトリガスイッチと、前記電力供給部から前記モータに供給される駆動電力を設定可能な設定部と、前記トリガスイッチが前記駆動電力の供給を指示している場合に、前記設定部で設定された駆動電力を前記前記モータに供給するように前記電力供給部を制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0029】
このような構成によれば、モータに供給される駆動電力が設定可能なので、ユーザの意思に応じてモータに供給する駆動電力を変更することが可能となり、電力消費を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の電動工具によれば、電力の浪費を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明となる電動工具である芝刈り機の側面図。
【図2】第1の実施の形態による芝刈り機の回路図
【図3】第1の実施の形態によるACモータへの供給電圧の制御についてのフローチャート
【図4】第1の実施の形態によるACモータへの供給電圧の制御についての説明図
【図5】第2の実施の形態による芝刈り機の回路図
【図6】第2の実施の形態によるACモータへの供給電圧の制御についてのフローチャート
【図7】変形例によるACモータへの供給電圧の制御についての説明図
【図8】一の変形例によるACモータへの供給電圧の制御についてのフローチャート
【図9】他の変形例によるACモータへの供給電圧の制御についてのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1〜図4を用いて、本発明の第1の実施の形態による電動工具、例えば芝刈り機1について説明する。
【0033】
図1は、芝刈り機1の側面図である。芝刈り機1は、芝刈り機本体3にラッチ部2Aによって着脱可能に設けられたインバータ2を備えている。作業者はハンドル5を把持し後述のトリガスイッチ31を操作することによって、電池パック4からの電力がインバータ2を介してモータ32に供給される。芝刈り機本体3には、進行方向前方側に設けられた前輪6と、後方側に設けられた後輪7が設けられ、移動可能に構成されている。また、本体3の進行方向後方側には、図示しない回転刃によって刈られた草等を集めるための集草バック8が着脱可能に設けられている。
【0034】
図2は、芝刈り機1の回路図である。本実施の形態では、芝刈り機1は、上記したように、インバータ2と、芝刈り機本体3と、を備えており、芝刈り機本体3のトリガスイッチ31が操作されると、インバータ2は、電池パック4から供給された直流電力をインバータ2によって交流電力に変換し、芝刈り機本体3のACモータ32に供給するものとする。インバータ2、芝刈り機本体3、及び、電池パック4は、それぞれ着脱可能であるが、以下では、それぞれが接続されているものとして説明する。
【0035】
インバータ2は、電池電圧検出部21と、電源部22と、昇圧回路(昇圧回路部)23と、整流・平滑回路(整流平滑回路部)24と、昇圧電圧検出部25と、スイッチング回路(インバータ回路部)26と、電流検出抵抗27と、PWM信号出力部28と、制御部となるマイクロコンピュータ(マイコン)29と、を備えている。
【0036】
電池電圧検出部21は、互いに直列に接続された抵抗211及び212から構成されており、電池パック4からの電圧を検出し、分圧電圧としてマイコン29に出力する。なお、本実施の形態では、電池パック4は3.6V/セルのリチウム電池セルが4本接続され、定格電圧14.4Vを出力する。
【0037】
電源部22は、電池パック4とマイコン29との間に直列に接続された電源スイッチ221及び定電圧回路222を備えている。定電圧回路222は、三端子レギュレータ222aと、発振防止用コンデンサ222b及び222cと、を備えており、ユーザにより電源スイッチ221がオンされると、電池パック4からの電圧14.4Vを所定の直流電圧(例えば5V)に変換し、マイコン29に駆動電力として供給する。なお、電源スイッチ221がオフされると、マイコン29に駆動電力が供給されなくなるので、インバータ2全体がオフされることとなる。
【0038】
昇圧回路(昇圧回路部)23は、トランス231と、第1のスイッチング素子となるFET232と、を備えている。トランス231の一次側は、電池パック4とGNDとの間に直列に接続されており、また、トランス231の一次側とGNDとの間にはFET232が配置されている。FET232のゲートはマイコン29に接続されており、FET232は、後述するマイコン29からの第1のPWM信号によりオン・オフされ、これにより、電池パック4からトランス231の一次側に供給された直流電力は交流電力に昇圧される。
【0039】
トランス231の2次側には、整流・平滑回路(平滑整流回路部)24と、昇圧電圧検出部25と、スイッチング回路(インバータ回路部)26と、電流検出抵抗27と、が接続されている。
【0040】
整流・平滑回路(整流平滑回路部)24は、ダイオード241及び242と、コンデンサ243と、を備えており、これらにより、トランス231により昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力(例えば141V)として出力する。
【0041】
昇圧電圧検出部25は、互いに直列に接続された抵抗251及び252から構成されており、整流・平滑回路24から出力された直流の昇圧電圧(例えば141V)を検出し、分圧電圧としてマイコン29に出力する。
【0042】
スイッチング回路(インバータ回路部)26は、第2のスイッチング素子となる4つのFET261−264から構成されており、直列に接続されたFET261及び262(第1のスイッチ群)と、直列に接続されたFET263及び264(第2のスイッチ群)とが、整流・平滑回路24の出力端子に並列に接続されている。詳細には、FET261のドレインは、整流・平滑回路24の出力端子(プラス側)に接続され、FET261のソースは、FET262のドレインに接続されている。また、FET263のドレインは、整流・平滑回路24の出力端子(プラス側)に接続され、FET263のソースは、FET264のドレインに接続されている。
【0043】
更に、FET261のソース及びFET262のドレインは、トリガスイッチ31を介して芝刈り機本体3のACモータ32の第1端子32aに接続されており、FET263のソース及びFET264のドレインは、ACモータ32の第2端子32bに接続されている。FET261−264のゲートは、PWM信号出力部28に接続されており、FET261−264は、後述するPWM信号出力部28からの第2のPWM信号によりオン・オフされ、これにより、整流・平滑回路24から出力された直流電力は、交流電力に変換されて芝刈り機本体3のACモータ32に供給される。ここで、少なくとも電源部22、昇圧回路23、整流・平滑回路24、インバータ回路部26は、電力供給部を構成する。
【0044】
電流検出抵抗27は、FET262のソース及びFET264のソースと、GNDとの間に直列に接続されており、電流検出抵抗27の高電圧側の端子はマイコン29と接続されている。このような構成により、電流検出抵抗27は、ACモータ32に流れる電流を検出し、電圧としてマイコン29に出力する。
【0045】
マイコン29は、昇圧電圧検出部25によって検出された昇圧電圧に基づき、目標の実効電圧を有する交流電力がトランス231の2次側から出力されるための第1のPWM信号をFET232のゲートに出力し、FET232をオン・オフさせる。
【0046】
また、マイコン29は、電流検出抵抗27によって検出されたACモータ32に流れる電流、すなわち、ACモータ32にかかっている負荷に基づき、負荷に応じた電力がACモータ32に供給されるための第2のPWM信号をPWM信号出力部28に出力する。PWM信号出力部28は、マイコン29から出力された第2のPWM信号をFET261−264のゲートに出力し、FET261−264をオン・オフさせる。
【0047】
ここで、本実施の形態では、電流検出抵抗27によって検出された電流(負荷)が所定値以上の場合には、マイコン29は、芝刈り機本体3が芝を刈っている状態と判断し、FET261とFET264のセット(以降、第1のセット)とFET262とFET263のセット(以降、第2のセット)をデューティ100%で交互にオン・オフさせるための第2のPWM信号を出力する。このような構成により、芝刈り機本体3が芝を刈っている場合には、大きな駆動電力をACモータ32に供給して効率よく芝を刈ることが可能となる。
【0048】
一方、電流検出抵抗27によって検出された電流(負荷)が所定値未満の場合には、マイコン29は、芝刈り機本体3が空転している状態と判断し、第1セットと第2セットをデューティ100%よりも低い、例えばデューティ40%で交互にオン・オフさせるための第2のPWM信号を出力する。このような構成により、芝刈り機本体3が空転している場合には、電力の浪費を軽減させることが可能となる。
【0049】
更に、マイコン29は、電池電圧検出部21によって検出された電池電圧に基づき、電池パック4の過放電を判別する。具体的には、電池電圧検出部21によって検出された電池電圧が所定値以下の場合には、電池パック4に過放電が生じていると判断し、FET232及び261−264をオフさせるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。また、電池パック4は、その内部に保護ICやマイコンを備え、自ら過放電を検出してLD端子(図2)から過放電信号をマイコン29に出力する機能を有しており、マイコン29は、過放電信号を受信した場合にもFET232及び261−264をオフさせるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。このような構成により、電池パック4の寿命が短くなることを防止することが可能となる。
【0050】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施の形態におけるマイコン29によるACモータ32への供給電圧の制御について説明する。
【0051】
図3のフローチャートは、電池パック4がインバータ2に装着されている状態で電源スイッチ221がオンされた時、又は、電源スイッチ221がオンされた状態で電池パック4がインバータ2に装着された時にスタートする。
【0052】
まず、マイコン29は、トリガスイッチ31がオンされたか否かを判断する(S201)。トリガスイッチ31がオンされたと判断した場合には(S201:YES)、FET232をオン・オフさせるための第1のPWM信号をFET232のゲートに出力し、トランス231に昇圧動作を行わせる(S202)。
【0053】
続いて、昇圧電圧検出部25によって検出された昇圧電圧に基づき、昇圧電圧が目標電圧(例えば141V)より大きいか否かを判断する(S203)。目標電圧より大きい場合には(S203:YES)、デューティを減少させた第1のPWM信号をFET232のゲートに出力し(S204)、目標電圧以下の場合には(S203:NO)、デューティを増加させた第1のPWM信号をFET232のゲートに出力する(S205)。
【0054】
続いて、第2のPWM信号のデューティを40%に設定する(S206)。これにより、ACモータ32には、実効値40Vの交流電圧が供給されることとなる。なお、後述するが、本実施の形態では、第2のPWM信号のデューティは、40%及び100%のいずれか一方に設定される。
【0055】
続いて、第2のPWM信号のデューティが40%と100%のいずれに設定されているかを判断する(S207)。40%に設定されている場合には、電流検出抵抗27によって検出された電流(負荷)が第1の閾値より大きいか否かを判断する(S208)。第1の閾値より大きい場合には(S208:YES)、芝刈り機本体3が芝を刈っている状態と判断し、第2のPWM信号のデューティを100%に変更した上で(S209)、S212に進む。これにより、図4に示すように、ACモータ32には、実効値100Vの交流電圧が供給されることとなる。なお、S208で第1の閾値以下の場合には(S208:NO)、空転状態、或いは、芝刈り機本体3が芝を刈っている状態ではあるが負荷が小さいと判断し、そのままS212に進む。
【0056】
一方、S207で、第2のPWM信号のデューティが100%に設定されている場合には、電流検出抵抗27によって検出された電流(電圧)が第1の閾値と比べて小さい第2の閾値よりも小さいか否かを判断する(S210)。第2の閾値よりも小さい場合には(S210:YES)、芝刈り機本体3が空転している状態と判断し、第2のPWM信号のデューティを40%に変更した上で(S211)、S212に進む。これにより、ACモータ32には、実効値40Vの交流電圧が供給されることとなる。なお、S210で第2の閾値以上の場合には(S210:NO)、芝刈り機本体3が芝を刈っている状態と判断し、そのままS212に進む。
【0057】
続いて、電池電圧検出部21によって検出された電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S212)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S212:YES)、電池パック4が過放電状態にあると判断し、FET232及びFET261−264をオフさせるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力して昇圧回路23及びスイッチング回路26の動作を停止させる(S213)。これにより、電池パック4からの電力の供給が停止される。
【0058】
また、電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S212:NO)、電池パック4から過放電信号が入力されたか否かを判断する(S214)。過放電信号が入力されていた場合には(S214:YES)、電池電圧が所定の過放電電圧より大きい場合(S212:YES)と同様に、昇圧回路23及びスイッチング回路26の動作を停止させる(S213)。一方、過放電信号が入力されていなかった場合には(S214:NO)、S207に戻り、負荷に基づくACモータ32への供給電圧の制御を引き続き行うこととなる。
【0059】
なお、本実施の形態では、電池パック4の過放電検出を、電池パック4及びインバータ2の両方で行っているが、過放電電圧の閾値は、電池パック4よりインバータ2の方が小さく設定されている。逆に、電池パック4に設定された過放電閾値の方が小さい場合には、S212とS214の順番が逆になる。すなわち、本実施の形態では、電池パック4の過放電検出を電池パック4とインバータ2の両方で行っているため、確実に過放電を防止することができる。また、過放電だけではなく過電流についても同様に、電池パック4とインバータ2の両方で検出し、過電流を防止することも可能である。
【0060】
上記実施の形態において、電源スイッチ221と直列に更なるFETを配置し、電池パック4が過放電を検出した場合には、当該FETのゲートに過放電信号をするような構成を採用してもよい。すなわち、マイコン29への電源供給をも遮断するように構成することにより、電池パック4の寿命が短くなることを防止することが可能となる。更に、過放電を報知する表示部やブザー等を設けて、使用者に過放電を報知し、その後、マイコン29への電源供給を遮断するようにすれば、作業中に芝刈り機1が停止しても作業者に違和感を与えることなく電池パック4の寿命短縮を防止することができる。
【0061】
上記したように、本実施の形態による芝刈り機1では、ACモータ32にかかる負荷に基づきACモータ32に供給する駆動電力を変更する。具体的には、ACモータ32にかかる負荷が所定以上の場合には駆動電力を増加させ、所定未満の場合には駆動電力を減少させる。これにより、芝刈り機1の空転時の電力の浪費を軽減させることが可能となる。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態による芝刈り機10について図5及び図6を用いて説明する。
【0063】
第1の実施の形態では、モータ32にかかる負荷に基づきACモータ32に供給する駆動電力を変更したが、本実施の形態では、ユーザの操作によってACモータ32に供給する駆動電力を変更することができる。
【0064】
図5は、第2の実施の形態による芝刈り機10の回路図である。なお、図5において図2と同一の構成に関しては、図2と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第2の実施の形態による芝刈り機10では、第1の実施の形態における電流検出抵抗27を備えていない代わりに、省エネスイッチ201及び抵抗202を備えており、省エネスイッチ201をオンさせることにより、芝刈り機本体3を省エネモードで駆動させることができる。
【0066】
省エネスイッチ201及び抵抗202は、三端子レギュレータ222aとGNDの間に、抵抗202が高電位側となるように直列に接続されており、また、抵抗202の低電位側の端子は、マイコン29に接続されている。このような構成により、省エネスイッチ201がオンしている場合には、0V(Low)がマイコン29に入力され、省エネスイッチ201がオフしている場合には、三端子レギュレータ222aによって変換された所定の直流電圧がマイコン29に入力されることとなる。
【0067】
マイコン29は、省エネスイッチ201がオフしている場合には、第2のPWM信号をデューティ100%でオン・オフさせるが、省エネスイッチ201がオンしている場合には、デューティ70%でオン・オフさせる。このような構成により、ユーザの意思に応じてACモータ32に供給する駆動電力を変更することが可能となる。例えば、少量の芝を刈るような場合に省エネモードで駆動させることで、電力の浪費を軽減させることが可能となる。
【0068】
図6は、本実施の形態におけるマイコン29によるACモータ32への供給電圧の制御について説明するフローチャートである。S501−S505及びS509−S511は、図3におけるS201−S205及びS212−S214と同じ動作であるので説明を省略する。
【0069】
第2の実施の形態では、S506で、省エネスイッチ201がオンしているか否かを判断し、オンしている場合には(S506:YES)、第2のPWM信号のデューティを70%に設定し(S507)、オフしている場合には(S506:NO)、100%に設定する(S508)。
【0070】
上記したように、本実施の形態による芝刈り機10では、省エネスイッチ201を備えているので、ユーザの意思に応じてACモータ32に供給する駆動電力を変更することが可能となる。例えば、少量の芝を刈るような場合に省エネモードで駆動させることで、電力の浪費を軽減させることが可能となる。
【0071】
尚、本発明の芝刈り機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0072】
例えば、上記実施の形態では、インバータ2に接続された電池パック4から供給された直流電力をインバータ2によって交流電力に変換して芝刈り機本体3のACモータ32に供給したが、インバータ2を備えず、DC電源から供給された直流電力を交流電力に変更して芝刈り機本体3のACモータ32に構成するものであってもよい。この場合には、昇圧電圧検出部25と、スイッチング回路26と、電流検出抵抗27と、PWM信号出力部28と、マイコン29と、を芝刈り機本体3に備えることとなる。ここで、モータ32をACモータとしたことにより、AC駆動の芝刈り機とモータの共通化が図れ、開発コストを大幅に低減することができる。
【0073】
また、図3及び図6のフローチャートでは、S201−S205及びS501−S505で昇圧電圧の制御、S212−S214及びS509−S511で過放電の検出を行ったが、これらは、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0074】
また、第2の実施の形態において、省エネスイッチ201の替わりに可変抵抗を配置し、ダイヤルにより可変抵抗の抵抗値を変更することにより、ACモータ32に供給する駆動電力を変更してもよい。この場合、図7に示すように、ACモータ32に供給する駆動電力を無段階に変更することが可能となる。
【0075】
また、上記実施の形態では、モータとしてACモータが用いられていたが、DCモータを用いてもよく、その場合であっても、DCモータに供給される前の段階で電圧を変更すればよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、昇圧回路23の出力電圧(FET232のオン・オフデューティ)を一定としたが、負荷状態に応じて昇圧回路23の出力電圧を変更しても良い。その場合には、電源スイッチ221をオンし、インバータ2を起動させた後、まず、昇圧回路23の出力が第1の電圧になるようにマイコン29がFET232をオン・オフ制御する。その後、電流検出抵抗27によって検出された負荷電流に応じてFET232のオン・オフのデューティを変更する。例えば、無負荷状態では、昇圧回路23の出力を第1の電圧になるようにし、負荷状態では第1の電圧より大きい第2の電圧となるようにFET232をスイッチング制御するようにしても良い。この場合、第2のスイッチング素子となるFET261−264のオンデューティを100%にしても良いし、第2のスイッチング素子も第1のスイッチング素子FET232に応じてデューティを変更するようにしても良い。
【0077】
この場合、図8に示すように、S803〜S805で、昇圧電圧の目標電圧が第1の目標電圧となるような第1のPWM信号でFET232を制御し、S806で、第2のスイッチング素子FET261−264の第2のPWM信号を40%に設定する。S807でデューティが40%であり、S808で負荷電流が第1の閾値より大きかった場合には、S808aで、昇圧回路23の出力が第1の目標電圧より大きい第2の目標電圧(例えば141V)になるような第1のPWM信号でFET232を制御しつつ、S809で第2のPWM信号のデューティを100%に設定し、S812〜S814を実行する。
【0078】
S812〜S814で、過放電状態でないと判断された場合には、S807からS810に進み、負荷電流が第2の閾値より小さい場合すなわち、無負荷又は低負荷状態の場合には、S810aで、昇圧回路23の昇圧電圧を第1の目標電圧に低下させるような第1のPWM信号でFET232を制御しつつ、S811で第2のPWM信号のデューティを下げる(40%)。
【0079】
このようにすれば、無負荷或いは低負荷状態において、昇圧回路23及びインバータ回路26による電池パック4の電力消費を抑制することができると共に、FET232、FET261−264の発熱を抑えることができる。
【0080】
更に、第2の実施形態では、省エネスイッチ201の状態に応じて第2のスイッチング素子FET261−264のデューティを変更するようにしたが、第1のスイッチング素子FET232を制御して昇圧回路23の出力電圧を変更するようにしても良い。すなわち、図9に示すように、S903の処理における昇圧回路23の昇圧電圧の目標電圧を第1の目標電圧とし、S906で省エネスイッチ201がオンされていると判断した場合に、S906aで、昇圧回路23の出力を低下させる(第3の目標電圧)ような第1のPWM信号でFET232を制御すると共にS907で第2のPMW信号のデューティを70%にすれば良い。なお、S906で省エネスイッチ201がオフの場合に、S906bで、昇圧回路23の昇圧電圧を増加させる(第2の目標電圧)ような第1のPWM信号でFET232を制御すれば良い。
【0081】
このように、省エネスイッチ201がオンの場合には、昇圧回路の昇圧電圧を第1の目標電圧よりも小さい第3の目標電圧にすると共に第2のPWM信号のデューティを70%とすれば、無負荷或いは低負荷状態において、昇圧回路23及びインバータ回路26による電池パック4の電力消費を抑制することができると共に、FET232、FET261−264の発熱を抑えることができる。
【符号の説明】
【0082】
2 インバータ
3 芝刈り機本体
4 電池パック
26 スイッチング回路
27 電流検出抵抗
29 マイコン
31 トリガスイッチ
32 ACモータ
201 省エネスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにかかる負荷を検出する負荷検出部と、
前記モータに駆動電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部から前記モータへの駆動電力の供給を指示するトリガスイッチと、
前記トリガスイッチが前記駆動電力の供給を指示している場合に、前記負荷検出部により検出された負荷に基づき前記モータに供給する駆動電力を変更するように前記電力供給部を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記電力供給部は、電池パックからの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を備えており、
前記制御部は、前記インバータ回路に出力するPWM信号のデューティを変更することにより前記駆動電力を変更させることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記制御部は、前記負荷検出部によって検出された負荷状態に応じて前記インバータを構成するスイッチング素子のデューティを変更することを特徴とする請求項2記載の電動工具。
【請求項4】
前記電池パックが前記電力供給部と接続されている状態で前記電池パックと前記インバータ回路との間に配置されたスイッチング素子を更に備え、
前記制御部は、前記スイッチング素子をオン・オフさせることにより前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換し、
前記電力供給部は、
前記スイッチング素子により変換された交流電力を昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流平滑回路と、を更に備え、
前記インバータ回路は、前記整流・平滑回路から出力された直流電力を前記交流電力に変換し、
前記制御部は、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティを変更することにより前記昇圧回路の昇圧電圧を変更させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記負荷検出部は、前記モータに流れる電流に基づき前記負荷を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の芝刈り機。
【請求項6】
前記電力供給部は、
電池パックからの直流電力を所定の電圧に昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流平滑回路と、
前記整流平滑回路の出力を交流電力に変換するインバータ回路と、を備え、
前記昇圧回路は、前記電池パックからの直流電力を交流電力に変換するための第1のスイッチング素子を有し、
前記インバータ回路は、前記モータと接続される複数の第2のスイッチング素子を有し、
前記制御部は、前記負荷検出部によって検出された負荷状態に応じて、前記第1及び第2のスイッチング素子の少なくとも一方に入力される信号のデューティを制御することを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記制御部は、前記モータに流れる電流が第1の閾値より大きい場合には、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子に入力される信号のデューティを最大にし、
前記電流が前記第1の閾値より小さい第2の閾値より小さい場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の少なくとも一方に入力される信号のデューティを最大より小さくすることを特徴とする請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記電流が前記第1の閾値より小さい第2の閾値より小さい場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子に入力される信号のデューティを最大より小さくすることを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記制御部は、前記負荷検出部により検出された負荷に基づき、前記モータの駆動状態を判断し、前記判断に基づき、前記モータに供給する駆動電力を変更するように前記電力供給部を制御することを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項10】
前記制御部は、前記モータが待機状態であると判断した場合には、作業中であると判断した場合よりも小さな駆動電力を前記モータに供給するよう前記電力供給部を制御することを特徴とする請求項9に記載の芝刈り機。
【請求項11】
前記制御部は、前記電池パックから過放電検出信号が入力された場合には、前記電池パックから前記電力供給部への直流電力の供給を停止させることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項12】
モータと、
前記モータに駆動電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部から前記モータへの駆動電力の供給を指示するトリガスイッチと、
前記電力供給部から前記モータに供給される駆動電力を設定可能な設定部と、
前記トリガスイッチが前記駆動電力の供給を指示している場合に、前記設定部で設定された駆動電力を前記前記モータに供給するように前記電力供給部を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30323(P2012−30323A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172318(P2010−172318)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】