説明

電動工具

【課題】装飾性を高めた電動工具を提供する。
【解決手段】モータを収容する本体ハウジングの前方に、駆動機構を収容する金属製の前ハウジングを組み付け、前ハウジングの先端から出力軸を突出させる一方、前ハウジングの外周を、合成樹脂製で筒状の透明カバー30で保護する電動工具であって、透明カバーの内表面に装飾模様61を形成した。装飾模様は、内表面R1〜R4に形成された凹凸形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータを収容する本体ハウジングの前方に、駆動機構を収容する金属製の前ハウジングを組み付けて、前ハウジングの外周を、合成樹脂製で筒状の透明カバーで保護する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、打撃機構を収容するハンマケースの外周に、樹脂製のカバーを装着して、弾性を有するストッパを、前記カバーよりも前方側で前記ハンマケースに係合させることで、ハンマケースからカバーが離脱することを防止した電動工具が開示されている。特許文献1の電動工具では、上記の打撃機構等で発生する熱により、アルミニウム製のハンマケースの温度が上昇することがあっても、上記のカバーによって、作業者が直接ハンマケースに触れることを防止できる。このため、作業者に対して熱による不快感を与えることを抑えることで、作業性が低下することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−220272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の電動工具では、装飾を施す部分が限られていたことから、装飾性を際立たせることが容易ではなかった。このため、従来の電動工具については、見栄えに乏しく装飾性が優れているとは言い難かった。
【0005】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、装飾性を高めた電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る電動工具は、モータを収容する本体ハウジングの前方に、駆動機構を収容する金属製の前ハウジングを組み付け、前記前ハウジングの先端から出力軸を突出させる一方、前記前ハウジングの外周を、合成樹脂製で筒状の透明カバーで保護する電動工具であって、前記透明カバーの内表面に、装飾模様を形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記装飾模様は、前記内表面に形成された凹凸形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係る電動工具によれば、装飾模様を透明カバーの外側から透視できる。よって、この装飾模様が電動工具の見栄えを良くして、電動工具の装飾性が高まる。
請求項2の発明によれば、凹凸形状によって奥行き感が強調されて、電動工具の装飾が斬新なものになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1のインパクトドライバの側面図である。
【図2】(a)図は実施形態1のカバーの全体斜視図であり、(b)図は同カバーの側面図であり、(c)図は同カバーの内表面に装飾模様を形成した状態を示した図であり、(d)図は(c)図の部分拡大図である。
【図3】(a)図は実施形態2のカバーの全体斜視図であり、(b)図は同カバーの側面図であり、(c)図は同カバーの内表面に装飾模様を形成した状態を示した図であり、(d)図は(c)図の部分拡大図である。
【図4】(a)図は実施形態3のカバーの全体斜視図であり、(b)図は同カバーの側面図であり、(c)図は同カバーの内表面に装飾模様を形成した状態を示した図であり、(d)図は(c)図の部分拡大図である。
【図5】(a)図は実施形態4のカバーの全体斜視図であり、(b)図は同カバーの側面図であり、(c)図は同カバーの内表面に装飾模様を形成した状態を示した図であり、(d)図は(c)図の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1に示すインパクトドライバ1は、本体ハウジング10と、ハンマケース20と、カバー30と、バンパー40と、フック50とを備えている。
【0011】
本体ハウジング10は、樹脂製の左右の半割ハウジングを組み付けて形成され、胴体部11と、ハンドル部12と、バッテリーパック装着部13とを有する。胴体部11は、筒状に形成されてインパクトドライバ1の前後方向(図1の左右方向)に延設されている。この胴体部11の内部には、モータ(図示せず。)が収容されている。
【0012】
ハンドル部12は、図1に示すように、インパクトドライバ1の側面視で略T字形状となるように、胴体部11から連設されている。ハンドル部12の内部には、トリガ14を有するスイッチ(図示せず。)が収容されている。バッテリーパック装着部13には、バッテリーパック15が着脱自在に装着される。バッテリーパック15は、上記のモータへ給電する。なお、インパクトドライバ1は、本発明の電動工具の一例である。
【0013】
ハンマケース20は、金属(例えばアルミニウム)によって形成されて、胴体部11の前方(図1の左方向)に組み付けられている。ハンマケース20の内部には、打撃機構(図示せず。)やアンビル21が収容されている。ハンマケース20の先端面からは、アンビル21が突出する。アンビル21は、軸受によって、ハンマケース20の内部で回転可能に軸支されている。アンビル21の先端には、先端工具を装着可能なチャック22が設けられている。前記打撃機構は、上記のモータの回転を回転打撃力に変換して前記先端工具に伝達する。なお、ハンマケース20は本発明の前ハウジングの一例であり、アンビル21は本発明の出力軸の一例であり、打撃機構は本発明の駆動機構の一例である。
【0014】
カバー30は、透明な合成樹脂によって筒状に形成されている。カバー30は、ハンマケース20の前方外周で胴体部11から露出する部分に装着されている。後述するように、カバー30の内表面には装飾模様が形成されている。バンパー40は、合成ゴムによってリング状に形成されている。バンパー40は、カバー30の前端に組み付けられて、前記露出する部分に装着される。カバー30の前端にバンパー40が組み付けられた状態では、バンパー40の外周面はカバー30の外周面と連続しており、カバー30及びバンパー40によって、ハンマケース20の前方外周が露出することを防止する。これにより、カバー30及びバンパー40が前記前方外周を保護する。なお、カバー30は本発明の透明カバーの一例である。
【0015】
フック50は、ネジ51を用い、インパクトドライバ1の正面視でバッテリーパック装着部13の右側面に取り付けられている。フック50は、インパクトドライバ1の正面視及び背面視で略U字形状となるように、金属板を折り曲げて形成した。このフック50は、インパクトドライバ1を作業者のベルトに吊り下げ可能である。
【0016】
図2の各図には、カバー30の内表面に装飾模様を形成した例を示した。本実施形態では、カバー30の内周面の上左隅領域R1、上右隅領域R2、下左隅領域R3、下右隅領域R4に複数の装飾線をそれぞれ形成した。これらの装飾線は、カバー30の前後方向(軸方向)に延びている。装飾線同士は、カバー30の周方向に所定の間隔を保っている。
【0017】
図2の(d)図に示すように、各装飾線は、リブ状の突起61によって構成されている。これにより、上記の内周面に段差を設け、装飾模様として、前記領域R1〜R4に凹凸形状を設けることができる。本実施形態では、成形金型の成形面に装飾模様用の凹凸部を形成しておいて、該成形金型によってカバー30の成形を行う際に、突起61を前記領域R1〜R4にそれぞれ形成した。カバー30が透明であることから、カバー30をその外側から見たときには、図2の(a)図、(b)図に示すように、前記装飾模様(凹凸形状)を前記外側から透視できる。
【0018】
<実施形態1の効果>
実施形態1のインパクトドライバ1では、上記のように、カバー30をその外側から見たときに、装飾模様を前記外側から透視できる。よって、この装飾模様がインパクトドライバ1の見栄えを良くして、インパクトドライバ1の装飾性が高まる。
【0019】
また、装飾模様として、上記の凹凸形状を設けることで奥行き感が強調されて、インパクトドライバ1の装飾が斬新なものになる。
【0020】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、図3を参照しつつ説明する。ここでは、実施形態1と同一の構成はその説明を省略する。カバー30Aは、実施形態1のカバー30に代えて、インパクトドライバ1(図1参照。)に装着可能である。カバー30Aの内周面の上左隅領域R11、上右隅領域R12、下左隅領域R13、下右隅領域R14には複数の装飾線がそれぞれ形成されている。これらの装飾線は、実施形態1と同様に、カバー30Aの前後方向に延びている。
【0021】
本実施形態では、実施形態1とは異なり、装飾線の存在を判別できる程度で、リブ状の突起62の突出高さを実施形態1の突起61の突出高さに比べて低くした。加えて、突起62(装飾線)同士の間隔を、上記の突起61(装飾線)同士の間隔よりも広くした。これにより、実施形態1とは異なる装飾模様(凹凸形状)を前記領域R11〜R14に施すことができる。本実施形態においても、図3の(a)図、(b)図に示すように、装飾模様(凹凸形状)をカバー30Aの外側から透視できる。
【0022】
<実施形態2の効果>
実施形態2では、装飾模様として、実施形態1とは異なる凹凸形状を設けることで、実施形態1とは異なる奥行き感が強調されて、インパクトドライバ1の装飾を斬新なものにできる。
【0023】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を、図4を参照しつつ説明する。ここでは、実施形態1及び2と同一の構成はその説明を省略する。カバー30Bも、実施形態2の場合と同様に、インパクトドライバ1に装着可能である。カバー30Bの内周面の上左隅領域R21、上右隅領域R22、下左隅領域R23、下右隅領域R24には複数の装飾線がそれぞれ形成されている。これらの装飾線は、実施形態1及び2とは異なり、カバ−30Bの周方向に延びている。
【0024】
本実施形態では、図4の(d)図に示すように、各装飾線は、カバー30Bの前方側の突出高さよりも後方側の突出高さが高くなるように上り傾斜させた段差63によって構成されている。さらに、各装飾線をカバー30Bの前後方向において互いに隣設した。本実施形態においても、実施形態1及び2と同様に、カバー30Bの成形を行う際に、段差63を前記領域R21〜R24にそれぞれ形成可能である。図4の(a)図、(b)図に示すように、複数の段差63からなる装飾模様(凹凸形状)は、カバー30Bの外側から透視可能である。
【0025】
<実施形態3の効果>
実施形態3では、実施形態1及び2とは異なり、各装飾線の延設方向をカバ−30Bの周方向にしたことで、実施形態1及び2とは異なる奥行き感が強調されて、インパクトドライバ1の装飾をより斬新なものにできる。
【0026】
<実施形態4>
本発明の実施形態4を、図5を参照しつつ説明する。ここでは、実施形態1ないし3と同一の構成はその説明を省略する。カバー30Cも、実施形態2及び3と同様に、インパクトドライバ1に装着可能である。カバー30Cの内周面の上左隅領域R31、上右隅領域R32、下左隅領域R33、下右隅領域R34には細かい凹凸模様(シボ模様)が形成されている。図5では、前記凹凸模様を斜線で図示した。
【0027】
本実施形態では、凹凸形状を形成した成形金型によってカバー30Cの成形を行う際に、シボ模様を前記領域R31〜R34にそれぞれ形成可能である。本実施形態においても、シボ模様はカバー30Cの外側から透視可能である。
【0028】
<実施形態4の効果>
実施形態4では、シボ模様によって細かい凹凸が繰り返すことで、装飾模様が立体的に浮き出た感じを与えて、奥行き感を持たせることができる。加えて、実施形態1ないし3とは異なり細かい凹凸で装飾模様を形成したことから、インパクトドライバ1の装飾がさらに斬新なものになる。
【0029】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば、実施形態1及び2のように、装飾線によって装飾模様を形成する場合には、装飾線の数、装飾線同士の間隔、リブ状の突起の突出高さを、各実施形態1、2とは異なる適宜のものに変更してもよい。
【0030】
また、上述した実施形態3のように、上り傾斜させた段差63によって装飾線を構成する場合には、上り傾斜の角度を適宜に変更してもよい。さらに、実施形態3とは異なり、各装飾線を、カバー30Bの前方側の突出高さよりも後方側の突出高さが低くなるように下り傾斜させた段差によって構成してもよい。
【0031】
加えて、上述の各実施形態1ないし4では、カバーの内周面の上下の左隅領域や上下の右隅領域に装飾模様を形成したが、これに代えてカバーの内面の全周に装飾模様を形成してもよい。さらに加えて、装飾模様は、各実施形態1ないし4の凹凸形状を適宜に組み合わせたものであってもよい。また、凹凸形状の凹部又は凸部に塗料を塗布して着色したり、金属メッキによって凹凸形状を形成してもよい。さらに、各実施形態1ないし4とは異なり、バンパー40を設けずに、カバーをハンマケース20の前方外周で胴体部11から露出する部分に装着してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1・・インパクトドライバ、10・・本体ハウジング、20・・ハンマケース、21・・アンビル、30・・カバー、61、62・・リブ状の突起、63・・段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容する本体ハウジングの前方に、駆動機構を収容する金属製の前ハウジングを組み付け、前記前ハウジングの先端から出力軸を突出させる一方、前記前ハウジングの外周を、合成樹脂製で筒状の透明カバーで保護する電動工具であって、
前記透明カバーの内表面に、装飾模様を形成したことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記装飾模様は、前記内表面に形成された凹凸形状であることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40659(P2012−40659A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185347(P2010−185347)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】