説明

電動式移動棚

【課題】前面カバーを改良することにより、操作盤の点検作業を容易にした電動式移動棚を提供する。
【解決手段】各単位棚3の前面における互いに等高をなす部分に、操作盤15とその前面を覆う前面カバー8とを設け、前面カバー8の下端部を左右方向を向く軸21をもって各単位棚3に枢着することにより、前面カバー8の上部を前下方に向かって開閉可能とし、かつ前面カバー8を前方を向く開放位置で保持する保持手段を23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍やファイル等を載置して保管する際などに用いられる電動式移動棚に関し、特にその前面に設けられている、操作盤の前面カバーの支持構造を改良した電動式移動棚に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動式移動棚においては、各単位棚を左右方向に移動させる制御部である操作盤およびその前面を覆う前面カバーを、各単位棚の前面に設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平6―32884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載されている電動式移動棚では、操作盤の前面カバー(点検パネル)が横開き、すなわち、縦方向の軸により横向きに回転して開閉する構造であるため、以下のような不都合が生じる。
【0004】
前面カバーを開放して操作盤の点検作業を行う際、隣接する操作盤から電力の供給を受けることがある。その場合、隣接する操作盤の相互間を配線で結ぶ必要があるが、その場合横開きの前面カバーが、隣接する操作盤との間に突出した状態で存在するため、配線を前面カバーの上下いずれかから迂回させる必要があり、そのため配線がしにくく、点検作業に時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、前面カバーの支持構造を改良することにより、操作盤の点検作業を容易に行えるようにした利便性のよい電動式移動棚を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)床面に敷設したレール上に、複数の単位棚を左右方向に移動可能に載置してなる電動式移動棚において、前記各単位棚の前面における互いに等高をなす部分に、操作盤とその前面を覆う前面カバーとを設け、前記前面カバーの下端部を左右方向を向く軸をもって各単位棚に枢着することにより、前記前面カバーの上部を前下方に向かって開閉可能とし、かつ前記前面カバーを前方を向く開放位置で保持する保持手段を設ける。
【0007】
(2)上記(1)項において、保持手段を、両端が操作盤の上部と前面カバーの上部とに止着され、前面カバーの閉止時には垂下し、かつ前面カバーを開放位置としたときは、緊張して、前面カバーを開放位置に保持する索条とする。
【0008】
(3)上記(2)項において、前面カバーを開放位置に保持する索条の緊張時の長さを調整可能とする。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、前面カバーに、操作スイッチを前方より操作可能として設けるとともに、前面カバーの後面における前記操作スイッチと、操作盤に設けた制御機器とを、可撓性の配線をもって接続した請求項1〜3のいずれかに記載の電動式移動棚。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、前面カバーの外周縁に、後方を向くフランジを設けた請求項1〜4のいずれかに記載の電動式移動棚。
【0011】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、各単位棚の前面上下部に、上部パネル下部パネルとを設け、それらの間の空所に、操作盤と前面カバーとを配設し、閉止時の前面カバーの前面と上部パネルおよび下部パネルの前面とを同一面とする。
【0012】
(7)上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、操作盤および前面カバーの上端部のいずれか一方に、他方に吸着するマグネットキャッチを設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a)請求項1記載の発明によると、前面カバーを前下方に向かって開閉し、前方を向く位置で保持するようにしたので、前面カバーの開放時、操作盤の左右は開放された状態となり、したがって、複数の単位棚の前面カバーを全て開いて、隣接する操作盤同士を、点検のために配線をもって一時的に接続する作業を簡単に行うことができるとともに、開いた前面カバーを作業台として使用することも可能となる。
【0014】
(b)請求項2記載の発明によると、操作盤の上部と前面カバーの上部とを索条で連結することにより、簡単な構造で前面カバーを開放位置に保持することができる。
【0015】
(c)請求項3記載の発明によると、索条の緊張時の長さを調整することにより、前面カバーの開放角度を調整することができる。
【0016】
(d)請求項4記載の発明によると、前面カバーに設けた操作スイッチの後部と操作盤の制御機器とを可撓性の配線をもって接続することにより、短い配線で操作盤と操作スイッチを接続することができ、しかもその配線を僅かに撓ませるだけで前面カバーを開閉することができる。
【0017】
(e)請求項5記載の発明によると、前面カバーを開いて、それを作業台として利用する際に、前面カバーの外周縁に設けたフランジが作業台に載せた電気部品やねじ等が落下するのを防止することができる。
【0018】
(f)請求項6記載の発明によると、閉止時の前面カバーの前面と上部パネルおよび下部パネルの前面とを同一面とすることにより、外観上の体裁が良好になる。
【0019】
(g)請求項7記載の発明によると、操作盤または前面カバーのいずれか一方に設けたマグネットキャッチにより、簡単な構造で前面カバーを閉止位置に保持し、かつ前面カバーを前方に引くだけで保持を解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の電動式移動棚の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の電動式移動棚の正面図を示すもので、床面に敷設された左右方向を向く複数のガイドレール(1)上の最左端部に設置されている不動の固定単位棚(2)と、この右側方のガイドレール(1)上を左右方向に移動する複数の移動単位棚(3)とからなり、各移動単位棚(3)は、個々に内蔵された駆動機構(図示せず)により、単独で移動させることができる。
【0021】
各移動単位棚(3)に給電するためのパンタグラフ(4)が、隣接する移動単位棚(3)の上端部同士を連結するように設けられている。固定単位棚(2)および各移動単位棚(3)の前面パネル(5)は、上部パネル(6)と下部パネル(7)、およびそれらの間の前面カバー(8)により構成されている。
【0022】
図2は、単位棚の前面パネルの分解斜視図、図3は、操作盤ケースおよび前面カバーの分解斜視図、図4は、前面カバー開放時の縦断側面図である。
図2に示すように、上部パネル(6)における前面板(6a)の左右両側には、側板部(6b)が折曲形成されており、下部パネル(7)も同様に、前面板(7a)の左右両側に、側板部(7b)が折曲形成されている。上部パネル(6)および下部パネル(7)のそれぞれの側板部(6b)(7b)は、左右1対の支柱(10)(10)に止めねじ(図示せず)をもって固定されている。上部パネル(6)の前面板(6a)には、係止孔(11)が形成され、この係止孔(11)に名札差(12)が取り付けられている。
【0023】
上部パネル(6)と下部パネル(7)との間には、ケース(13)とその内部に収容されている制御機器(14)(図4参照)により構成された操作盤(15)が取り付けられ、この操作盤(15)の前面を覆うように、開閉可能の前面カバー(8)が取り付けられている。ケース(13)は、後面板(13a)の左右縁に前方を向く側板部(13b)が、同じく上下縁に上板部(13c)および底板部(13d)がそれぞれ折曲形成されたものであり、上板部(13c)および下板部(13d)は、それぞれ上部パネル(6)の下面および下部パネル(7)の上面にねじ止めされている。
【0024】
図3および図4に示すように、前面カバー(8)における前面板(8a)の外周縁には、後方を向くフランジ(8b)が折曲形成されている。このフランジ(8b)の先端縁には、直角内向きの折曲縁(8c)が形成されている(図4参照)。前面板(8a)の左右両側部には、操作スイッチ(16)(図4参照)の取付孔(17)が形成されている。
【0025】
図3および図4に示すように、ケース(13)の底板部(13d)の上面には、取付片(18)が固着されている。この取付片(18)は、底板部(13d)に固着された基部(18a)から段状をなして若干上方に立ち上がって、底板部(13d)から前上方に突出する突出部(18b)を有し、この突出部(18b)に取付孔(19)が形成されている。ヒンジ部材(20)は、ほぼ下向きコ字状の固定部(20a)と軸(20b)を介して回転自在に連結された可動部(20c)とからなり、固定部(20a)は突出部(17b)の取付孔(18)に止めねじ(22)により固定され、可動部(20c)は前面カバー(8)の前面板(8a)の下端部の裏面に溶接等により固着されている。前面カバー(8)を閉止した際には、その前面板(8a)と上部パネル(6)および下部パネル(7)の前面板(6a)(7a)が同一面をなすように構成されている。
【0026】
前面カバー(8)の上端部中央と操作盤(15)におけるケース(13)の上板部(13c)の中央との間には、保持手段をなす鎖等の索条(23)の各端部または適宜の中間部が止着または係止され、前面カバー(8)を開放した際に緊張して、前面カバー(8)を開放位置に保持するようになっている。なお、前面カバー(8)を閉じた際には、索条(23)はケース(13)内で垂下する。索条(23)の緊張時の長さを調整することにより、前面カバー(8)を任意の開放角度で保持することができる。
【0027】
ケース(13)の上端部には、前面カバー(8)を閉鎖時に吸着するマグネットキャッチ(24)が取り付けられている。なお、マグネットキャッチ(24)は、前面カバー(8)側に取り付けてもよい。前面カバー(8)のフランジ(16b)の下端面には、スペーサを兼ねる緩衝材(25)が取り付けられている。
【0028】
前面カバー(8)の取付孔(17)には、操作スイッチ(16)が取り付けられ、この操作スイッチ(16)の後部と制御機器(14)とは、可撓性の配線(26)により接続されている。この操作スイッチ(16)を移動単位棚(3)の前方で操作することにより、制御機器(14)が作動し、移動単位棚(3)はガイドレール(1)に沿って左右方向に移動する。
【0029】
前面カバー(8)は、閉止時にはマグネットキャッチ(24)により吸着保持され、点検等で開放するときは、左右の側板部(8b)を手で押さえて手前に引っ張ればマグネットキャッチ(24)との吸着が解除され、前面カバー(8)はヒンジ部材(20)の軸(20b)を中心に回転し、前面カバー(8)の上部が前下方に向かって開放され、最終的に索条(23)の緊張により開放位置に保持される。
【0030】
この状態で、操作盤(13)の左右両側は開放された状態となるので、隣接する操作盤(13)相互間に配線を通すことも容易になる。また、必要に応じて開放されている前面カバー(8)に修理部品や工具等を置いて作業台として使用することができる。
【0031】
なお、図4に示す例では、前面カバー(8)は、前上向き傾斜状態で停止するようにしてあるが、ほぼ水平をなして前方を向く位置や、前下方を向く位置で停止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の電動式移動棚の一実施形態を示す正面図である。
【図2】単位棚の前面パネルの分解斜視図である。
【図3】操作盤ケースおよび前面カバーの分解斜視図である。
【図4】前面カバー開放時の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0033】
(1) ガイドレール
(2) 固定単位棚
(3) 移動単位棚
(4) パンタグラフ
(5) 前面パネル
(6) 上部パネル
(6a) 前面板
(6b) 側板部
(7) 下部パネル
(7a) 前面板
(7b) 側板部
(8) 前面カバー
(8a) 前面板
(8b) フランジ
(8c) 折曲縁
(10) 支柱
(11) 係止孔
(12) 名札差
(13) ケース
(13a) 前面板
(13b) 側板部
(13c) 上板部
(13d) 底板部
(14) 制御機器
(15) 操作盤
(16) 操作スイッチ
(17) 取付孔
(18) 取付片
(18a) 基部
(18b) 突出部
(19) 取付孔
(20) ヒンジ部材
(20a) 固定部
(20b) 軸部
(20c) 可動部
(22) 止めねじ
(23) 索条(保持手段)
(24) マグネットキャッチ
(25) 緩衝材
(26) 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に敷設したレール上に、複数の単位棚を左右方向に移動可能に載置してなる電動式移動棚において、
前記各単位棚の前面における互いに等高をなす部分に、操作盤とその前面を覆う前面カバーとを設け、前記前面カバーの下端部を左右方向を向く軸をもって各単位棚に枢着することにより、前記前面カバーの上部を前下方に向かって開閉可能とし、かつ前記前面カバーを前方を向く開放位置で保持する保持手段を設けたことを特徴とする電動式移動棚。
【請求項2】
保持手段を、両端が操作盤の上部と前面カバーの上部とに止着され、前面カバーの閉止時には垂下し、かつ前面カバーを開放位置としたときは、緊張して、前面カバーを開放位置に保持する索条とした請求項1記載の電動式移動棚。
【請求項3】
前面カバーを開放位置に保持する索条の緊張時の長さを調整可能とした請求項2記載の電動式移動棚。
【請求項4】
前面カバーに、操作スイッチを前方より操作可能として設けるとともに、前面カバーの後面における前記操作スイッチと、操作盤に設けた制御機器とを、可撓性の配線をもって接続した請求項1〜3のいずれかに記載の電動式移動棚。
【請求項5】
前面カバーの外周縁に、後方を向くフランジを設けた請求項1〜4のいずれかに記載の電動式移動棚。
【請求項6】
各単位棚の前面上下部に、上部パネルと下部パネルとを設け、それらの間の空所に、操作盤と前面カバーとを配設し、閉止時の前面カバーの前面と上部パネルおよび下部パネルの前面とを同一面とした請求項1〜5のいずれかに記載の電動式移動棚。
【請求項7】
操作盤および前面カバーの上端部のいずれか一方に、他方に吸着するマグネットキャッチを設けた請求項1〜6のいずれかに記載の電動式移動棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−34493(P2006−34493A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217011(P2004−217011)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】