電動格納式ドアミラーの駆動構造
【課題】ブレ音の発生を防止することのできる電動格納式ドアミラーの駆動構造を提供する。
【解決手段】モータ60の駆動軸61とウオーム51の回転軸51Aの一端部51bとを連結するジョイント部材70の一端面に軸孔77を形成し、その他端面に軸孔78を形成し、駆動軸61および回転軸51Aの一端部51bを偏平させ、相対向した一対の第1突起部を軸孔77に設け、相対向した一対の第2突起部を軸孔78に設け、駆動軸61を軸孔77に挿入して一対の第1突起部間に圧入させ、回転軸51Aの一端部51bを軸孔78に挿入して一対の第2突起部間に圧入させ、駆動軸61の圧平方向と回転軸51Aの一端部51bの偏平面の圧平方向とのなす角度をほぼ90度にした。
【解決手段】モータ60の駆動軸61とウオーム51の回転軸51Aの一端部51bとを連結するジョイント部材70の一端面に軸孔77を形成し、その他端面に軸孔78を形成し、駆動軸61および回転軸51Aの一端部51bを偏平させ、相対向した一対の第1突起部を軸孔77に設け、相対向した一対の第2突起部を軸孔78に設け、駆動軸61を軸孔77に挿入して一対の第1突起部間に圧入させ、回転軸51Aの一端部51bを軸孔78に挿入して一対の第2突起部間に圧入させ、駆動軸61の圧平方向と回転軸51Aの一端部51bの偏平面の圧平方向とのなす角度をほぼ90度にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構を備えた電動格納式ドアミラーの駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる電動格納式ドアミラーが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる電動格納式ドアミラーは、ウオームギアを有するとともにミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構と、前記ウオームギアを回転駆動させる駆動モータと、この駆動モータの駆動軸とウオームギアの回転軸の一端部とを連結するジョイント部材とを備えている。
【0004】
ジョイント部材は、円柱状に形成されており、その両端にスリットがそれぞれ形成され、一方のスリットに偏平された駆動軸が挿入され、他方のスリットに偏平された回転軸が挿入されている。そして、駆動モータの駆動軸が回転すると、ジョイント部材を介して回転軸がウオームギアとともに回転していくようになっている。
【0005】
しかしながら、ジョイント部材は両端部でスリットを形成しているので、その強度上問題があった。
【0006】
そこで、図13および図14に示すように円筒状に形成して強度を図ったジョイント部材1が提案されている。
【0007】
このジョイント部材1の孔2内には、軸線に沿って断面がほぼ3角形状の相対向した一対の突条部3,3が形成されている。そして、図15および図16に示すように、モータMの駆動軸4とウオームギア5の回転軸5aとが孔2内に挿入されている。駆動軸4および回転軸5aは、偏平されているとともに突条部3,3間に圧入され、ジョイント部材1に対して偏平方向に傾くことが許容されないようになっているが、偏平方向と直交する方向に多少の傾きが許容されるようになっている。
【特許文献1】実開平5−58485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、図17に示すように、プレート6の軸線6aに対してモータMの軸線4aが右側に少し傾いた状態にモータMがプレート6に組み付けられた場合、このモータMの駆動軸4が回転して、例えば駆動軸4が図18に示す位置(駆動軸の偏平方向とモータMの傾きとが直交する方向の位置)へきたときには、ジョイント部材1は駆動軸4の偏平方向と直交する方向の傾きを許容することができることにより、モータMの傾きはジョイント部材1により吸収される。また、このときには、ジョイント部材1はウオームギア5に対する偏平方向と直交する方向の傾きも吸収することができるので、図19に示すようにウオームギア5はその軸線がプレート6の軸線6aと一致して回転し、ウオームギア5がプレート6に強く押し付けられてしまうことがなく、ウオームギア5とプレート6とが干渉しないことになる。
【0009】
しかし、モータMの駆動軸4が図15および図16に示す位置(モータMの傾き方向と駆動軸4の偏平方向とが一致する位置)へ回転してきたときには(図18から90度回転したとき)、ジョイント部材1は駆動軸4の偏平方向と同方向の傾きを許容することができないことにより、図17に示すように、モータMの傾きとともにジョイント部材1も傾いてしまう。また、このときには、ジョイント部材1はウオームギア5に対する偏平方向の傾きを吸収することができないので、ウオームギア5もジョイント部材1とともに同方向へ傾いてしまう。
【0010】
このため、ウオームギア5がプレート6に強く押し付けられ、ウオームギア5とプレート6とが強干渉する。
【0011】
このように、強干渉と無干渉とがモータMの1回転に対して2回発生し、このためブレ音が発生する問題があった。
【0012】
この発明の目的は、ブレ音の発生を防止することのできる電動格納式ドアミラーの駆動構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ウオームを有するとともにミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構を備え、この回動機構は、前記ウオームを回転駆動させる駆動モータと、この駆動モータの駆動軸と前記ウオームの回転軸の一端部とを連結するジョイント部材とを有し、前記駆動モータはミラーハウジングに設けたプレートに取り付けられ、前記ウオームの回転軸の一端部が前記プレートに回転自在に保持される電動格納式ドアミラーの駆動構造であって、
前記ジョイント部材の一端面に前記駆動軸を挿入する第1挿入孔を形成し、その他端面に前記回転軸の一端部を挿入する第2挿入孔を形成し、
前記駆動軸および回転軸を偏平させ、
前記駆動軸の偏平面に当接する相対向した一対の第1突起部を第1挿入孔に設け、
前記回転軸の偏平面に当接する相対向した一対の第2突起部を第2挿入孔に設け、
前記駆動軸を第1挿入孔に挿入するとともに一対の第1突起部間に圧入させ、
前記回転軸を第2挿入孔に挿入するとともに一対の第2突起部間に圧入させ、
前記駆動軸の圧平方向と回転軸の圧平方向とのなす角度をほぼ90度にしたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、前記回転軸は第1挿入孔に対して所定角度だけ相対回転可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、駆動モータがプレートに対して傾いて組み付けられても、駆動モータの駆動の際のブレ音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明に係る電動格納式ドアミラーの駆動構造を適用した電動格納式ドアミラーの実施形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0017】
図1に示す電動格納式ドアミラー10は、自動車のドア(図示せず)に固定するミラーベース11と、このミラーベース11に固定するとともに中空状のシャフト21を有するシャフトホルダ20と(図2参照)、シャフト21に回動可能に装着されたミラーアセンブリ30等とを備えている。
【0018】
ミラーアセンブリ30は、シャフト21に回動可能に支持されたユニットブラケット31と、このユニットブラケット31に固定したミラーハウジング32およびパワーユニット33と、パワーユニット33に傾動可能に取り付けられるとともにミラーハウジング32の前面開口に配設したミラー34とを有している。
【0019】
ミラーアセンブリ30は、内蔵した回動機構40によって前方傾倒位置P1と後方傾倒位置(格納位置)P2とその中間位置である使用位置P3とに移動できるようになっている。
【0020】
回動機構40は、クラッチ機構41と減速機構50とモータ(駆動モータ)60とを有している。
【0021】
クラッチ機構41は、図2に示すように、シャフトホルダ20のシャフト21に装着されるプッシュナット42と圧縮スプリング43とクラッチギア44とクラッチホルダ45とワッシャ46等とから構成されている。このクラッチ機構41は、ミラーアセンブリ30を手動で回動させたり、ミラーアセンブリ30に何かが当たった際にその緩衝のために回動させたりするときに、減速機構50とシャフトホルダ20のシャフト21との間の機械的な結合を遮断するものである。
【0022】
クラッチ機構41は、図2に示すケース47内に配置されるものであり、ケース47はシャフトホルダ20に回動自在に装着される。
【0023】
減速機構50は、モータ60の駆動軸61に後述するジョイント部材70を介して取り付けたウオーム(第1ウオーム)51と、このウオーム51に噛合するウオームホイール(第1ウオームホイール)52と、Dカット面53aによりウオームホイール52の中心孔に52Aに回転軸53の一端を軸方向に移動可能に回転不能に装着したウオーム(第2ウオーム)54と、このウオーム54に噛合する第2ウオームホイール(図示せず)等とを有している。
【0024】
減速機構50は、ケース47内に配置され、モータ60は図3に示すようにプレート71に取り付けられている。プレート71はケース47内に装着され、ケース47にはカバーケース80が装着されている。
【0025】
なお、クラッチ機構41および減速機構50は、従来と同様な構成なのでその詳細な説明は省略する。
【0026】
プレート71には、モータ60を駆動するための駆動回路を設けた回路基板81が取り付けられている。
【0027】
また、プレート71にはモータ60を装着した筒部72が形成され、この筒部72の下部には小径の円筒部73が形成され、円筒部73内にはジョイント部材70が配置されている。円筒部73の底壁部73Aには軸孔74が形成され、この軸孔74にはウオーム51の回転軸51Aの上部(図3において)が回動自在に保持され、回転軸51Aの下部51B(図3において)がケース47に設けた軸孔47Hに回転自在に保持されている。
【0028】
回転軸51Aの上部51bは偏平され、その上部51bはプレート71の円筒部73内に進入している。
【0029】
ジョイント部材70は、図4ないし図6に示すように、円柱状の本体76を有し、この本体76の上面(一端面)76Aおよび下面(他端面)76B(図5において)には軸方向に延びた軸孔77,78が形成されている。そして、軸孔(第1挿入孔)77には軸方向に沿って相対向した一対の突条部(第1突起部)77A,77Aが形成され、この突条部77A,77Aは平面視がほぼ三角形状を呈している。同様に、軸孔(第2挿入孔)78には軸方向にそって相対向した一対の突条部(第2突起部)78A,78Aが形成され、この突条部78A,78Aは平面視がほぼ三角形状を呈している。
【0030】
また、突条部77A,77Aの相対向する向きと、突条部78A,78Aの相対向する向きとが図4および図5に示すようにほぼ90度ずれている。
【0031】
そして、図7および図8に示すように、ジョイント部材70の軸孔77にモータ60の駆動軸61が挿入されている。駆動軸61は偏平されていて軸孔77の突条部77A,77A間に圧入されている。この圧入により駆動軸61は、ジョイント部材70に対して、図7において左右方向(X方向)への傾動は許容することができないようになっており、上下方向(図7においてY方向)の多少の傾動のみが許容されるようになっている。
【0032】
また、ジョイント部材70の軸孔78にウオーム51の回転軸51Aの上部51bが挿入されているとともに、軸孔78の突条部78A,78A間に圧入されている。この圧入によりウオーム51の回転軸51Aは、ジョイント部材70に対して、図8(B)において左右方向(X方向)への多少の傾動のみが許容されるようになっており、上下方向(図8(B)においてY方向)の傾動が許容されないようになっている。
【0033】
そして、モータ60とジョイント部材70とプレート71とウオーム51等とで、電動格納式ドアミラー10の駆動構造が構成されている。
[動 作]
次に、上記のように構成される電動格納式ドアミラー10の動作と電動格納式ドアミラー10の駆動構造の動作について説明する。
【0034】
モータ60が駆動されると、減速機構50およびクラッチ機構41を介してミラーアセンブリ30がミラーベース11のシャフト21を中心にして回動移動され、図1に示す所定の前方傾倒位置P1や後方傾倒位置P2や使用位置P3に移動される。このミラーアセンブリ30の回転移動は従来と同様にして行われるのでその説明は省略する。
【0035】
いま、例えば図9に示すように、モータ60がプレート71の円筒部73に対して傾斜して組み付けられた場合、すなわち、円筒部73の軸線73Jに対してモータ60の軸線60Jが右方向(X方向)に傾いて取り付けられた場合、モータ60の駆動軸61が図7に示す位置へ回転していくと、ジョイント部材70に対して駆動軸61はX方向への傾動は許容されないことにより、ジョイント部材70は図9に示すように駆動軸61とともに傾くことになる。
【0036】
一方、図8(B)に示すように、ウオーム51の回転軸51Aは、ジョイント部材70の軸孔78の突条部78A,78AがY方向に位置しているので、Y方向への傾動は許容されないが、X方向への傾動は許容される。このため、ウオーム51の回転軸51Aに対してジョイント部材70は図9に示すように傾動し、第1ウオーム51の回転軸51Aはプレート71の円筒部73の軸孔74に強く押し付けられて、ウオーム51とプレート71ととが強干渉してしまうことが防止される。
【0037】
そして、モータ60の駆動軸61が図10に示す位置へ回転すると、すなわち図7に示す位置から90度回転すると、ジョイント部材70の軸孔77の突条部77A,77AがY方向に位置しているので、ジョイント部材70に対して駆動軸61はX方向への傾動は許容される。このため、図11に示すようにジョイント部材70に対してモータ60の駆動軸61が傾動し、ジョイント部材70はプレート71の円筒部73に対して傾動しない。
【0038】
このため、ウオーム51の回転軸51Aはプレート71の円筒部73の軸孔74に強く押し付けられて、ウオーム51とプレート71とが強干渉してしまうことが防止される。
【0039】
このように、モータ60がプレート71に対して傾斜して組み付けられても、ウオーム51とプレート71とが強干渉してしまうことが防止されることにより、モータ60の駆動の際のブレ音の発生を防止することができる。また、ジョイント部材70に対するモータ60の軸ズレの吸収効果が上がるため、プレート71やウオーム51の寸法精度を上げずに済み、このためコストダウンを図ることができる。
【0040】
ところで、モータ60の駆動軸61は、ジョイント部材70内で図12(A)および図12(B)に示すように所定角度だけ空転可能となっている。このため、動作後に反転動作させた時には、モータ60の駆動軸61が一瞬空転する。この空転によるモータ60のロータに角速度が発生し、この角速度の勢いでウオーム51を回転させることができる。
【0041】
このため、ウオーム51とウオームホイール52とのギア部が食いついている場合、これを解除する際に必要な力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明に係る電動格納式ドアミラーの駆動構造を適用した電動格納式ドアミラーの実施例を示した説明図である。
【図2】図1に示す電動格納式ドアミラーの主要部を示した分解斜視図である。
【図3】モータおよび減速機構の一部の組み付けを示した断面図である。
【図4】ジョイント部材を示した平面図である。
【図5】ジョイント部材を示した断面図である。
【図6】ジョイント部材の底面図である。
【図7】ジョイント部材とモータの回転軸との結合状態を示した説明図である。
【図8】(A)はジョイント部材によってモータの回転軸とウオームとを結合した状態を示した断面図であり、(B)はジョイント部材とウオームの回転軸との結合状態を示した説明図である。
【図9】モータがプレートの円筒部に対して傾斜して組み付けられた状態を示した説明図である。
【図10】モータの回転軸が所定位置へ回転したときの状態を示した説明図である。
【図11】ジョイント部材がプレートの円筒部に対して傾動しない状態を示した説明図である。
【図12】(A)はジョイント部材内でモータの回転軸が一方向へ空転することを示した説明図であり、(B)はジョイント部材内でモータの回転軸が他方向へ空転することを示した説明図である。
【図13】従来のジョイント部材の構成を示した断面図である。
【図14】図13のジョイント部材の平面図である。
【図15】モータの駆動軸が所定位置へ回転したときの状態を示した説明図である。
【図16】モータの駆動軸とジョイント部材とウオームの回転軸との関係を示した説明図である。
【図17】モータの傾きによってジョイント部材およびウオームが傾いた状態を示した説明図である。
【図18】モータの傾きと直交する方向とモータの駆動軸の偏平方向とが一致したときの状態を示した説明図である。
【図19】モータの傾きがジョイント部材により吸収された状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0043】
51 ウオーム
51A 回転軸
51b 一端部
60 モータ
61 駆動軸
70 ジョイント部材
71 プレート
77 軸孔
78 軸孔
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構を備えた電動格納式ドアミラーの駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる電動格納式ドアミラーが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる電動格納式ドアミラーは、ウオームギアを有するとともにミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構と、前記ウオームギアを回転駆動させる駆動モータと、この駆動モータの駆動軸とウオームギアの回転軸の一端部とを連結するジョイント部材とを備えている。
【0004】
ジョイント部材は、円柱状に形成されており、その両端にスリットがそれぞれ形成され、一方のスリットに偏平された駆動軸が挿入され、他方のスリットに偏平された回転軸が挿入されている。そして、駆動モータの駆動軸が回転すると、ジョイント部材を介して回転軸がウオームギアとともに回転していくようになっている。
【0005】
しかしながら、ジョイント部材は両端部でスリットを形成しているので、その強度上問題があった。
【0006】
そこで、図13および図14に示すように円筒状に形成して強度を図ったジョイント部材1が提案されている。
【0007】
このジョイント部材1の孔2内には、軸線に沿って断面がほぼ3角形状の相対向した一対の突条部3,3が形成されている。そして、図15および図16に示すように、モータMの駆動軸4とウオームギア5の回転軸5aとが孔2内に挿入されている。駆動軸4および回転軸5aは、偏平されているとともに突条部3,3間に圧入され、ジョイント部材1に対して偏平方向に傾くことが許容されないようになっているが、偏平方向と直交する方向に多少の傾きが許容されるようになっている。
【特許文献1】実開平5−58485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、図17に示すように、プレート6の軸線6aに対してモータMの軸線4aが右側に少し傾いた状態にモータMがプレート6に組み付けられた場合、このモータMの駆動軸4が回転して、例えば駆動軸4が図18に示す位置(駆動軸の偏平方向とモータMの傾きとが直交する方向の位置)へきたときには、ジョイント部材1は駆動軸4の偏平方向と直交する方向の傾きを許容することができることにより、モータMの傾きはジョイント部材1により吸収される。また、このときには、ジョイント部材1はウオームギア5に対する偏平方向と直交する方向の傾きも吸収することができるので、図19に示すようにウオームギア5はその軸線がプレート6の軸線6aと一致して回転し、ウオームギア5がプレート6に強く押し付けられてしまうことがなく、ウオームギア5とプレート6とが干渉しないことになる。
【0009】
しかし、モータMの駆動軸4が図15および図16に示す位置(モータMの傾き方向と駆動軸4の偏平方向とが一致する位置)へ回転してきたときには(図18から90度回転したとき)、ジョイント部材1は駆動軸4の偏平方向と同方向の傾きを許容することができないことにより、図17に示すように、モータMの傾きとともにジョイント部材1も傾いてしまう。また、このときには、ジョイント部材1はウオームギア5に対する偏平方向の傾きを吸収することができないので、ウオームギア5もジョイント部材1とともに同方向へ傾いてしまう。
【0010】
このため、ウオームギア5がプレート6に強く押し付けられ、ウオームギア5とプレート6とが強干渉する。
【0011】
このように、強干渉と無干渉とがモータMの1回転に対して2回発生し、このためブレ音が発生する問題があった。
【0012】
この発明の目的は、ブレ音の発生を防止することのできる電動格納式ドアミラーの駆動構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ウオームを有するとともにミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構を備え、この回動機構は、前記ウオームを回転駆動させる駆動モータと、この駆動モータの駆動軸と前記ウオームの回転軸の一端部とを連結するジョイント部材とを有し、前記駆動モータはミラーハウジングに設けたプレートに取り付けられ、前記ウオームの回転軸の一端部が前記プレートに回転自在に保持される電動格納式ドアミラーの駆動構造であって、
前記ジョイント部材の一端面に前記駆動軸を挿入する第1挿入孔を形成し、その他端面に前記回転軸の一端部を挿入する第2挿入孔を形成し、
前記駆動軸および回転軸を偏平させ、
前記駆動軸の偏平面に当接する相対向した一対の第1突起部を第1挿入孔に設け、
前記回転軸の偏平面に当接する相対向した一対の第2突起部を第2挿入孔に設け、
前記駆動軸を第1挿入孔に挿入するとともに一対の第1突起部間に圧入させ、
前記回転軸を第2挿入孔に挿入するとともに一対の第2突起部間に圧入させ、
前記駆動軸の圧平方向と回転軸の圧平方向とのなす角度をほぼ90度にしたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、前記回転軸は第1挿入孔に対して所定角度だけ相対回転可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、駆動モータがプレートに対して傾いて組み付けられても、駆動モータの駆動の際のブレ音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明に係る電動格納式ドアミラーの駆動構造を適用した電動格納式ドアミラーの実施形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0017】
図1に示す電動格納式ドアミラー10は、自動車のドア(図示せず)に固定するミラーベース11と、このミラーベース11に固定するとともに中空状のシャフト21を有するシャフトホルダ20と(図2参照)、シャフト21に回動可能に装着されたミラーアセンブリ30等とを備えている。
【0018】
ミラーアセンブリ30は、シャフト21に回動可能に支持されたユニットブラケット31と、このユニットブラケット31に固定したミラーハウジング32およびパワーユニット33と、パワーユニット33に傾動可能に取り付けられるとともにミラーハウジング32の前面開口に配設したミラー34とを有している。
【0019】
ミラーアセンブリ30は、内蔵した回動機構40によって前方傾倒位置P1と後方傾倒位置(格納位置)P2とその中間位置である使用位置P3とに移動できるようになっている。
【0020】
回動機構40は、クラッチ機構41と減速機構50とモータ(駆動モータ)60とを有している。
【0021】
クラッチ機構41は、図2に示すように、シャフトホルダ20のシャフト21に装着されるプッシュナット42と圧縮スプリング43とクラッチギア44とクラッチホルダ45とワッシャ46等とから構成されている。このクラッチ機構41は、ミラーアセンブリ30を手動で回動させたり、ミラーアセンブリ30に何かが当たった際にその緩衝のために回動させたりするときに、減速機構50とシャフトホルダ20のシャフト21との間の機械的な結合を遮断するものである。
【0022】
クラッチ機構41は、図2に示すケース47内に配置されるものであり、ケース47はシャフトホルダ20に回動自在に装着される。
【0023】
減速機構50は、モータ60の駆動軸61に後述するジョイント部材70を介して取り付けたウオーム(第1ウオーム)51と、このウオーム51に噛合するウオームホイール(第1ウオームホイール)52と、Dカット面53aによりウオームホイール52の中心孔に52Aに回転軸53の一端を軸方向に移動可能に回転不能に装着したウオーム(第2ウオーム)54と、このウオーム54に噛合する第2ウオームホイール(図示せず)等とを有している。
【0024】
減速機構50は、ケース47内に配置され、モータ60は図3に示すようにプレート71に取り付けられている。プレート71はケース47内に装着され、ケース47にはカバーケース80が装着されている。
【0025】
なお、クラッチ機構41および減速機構50は、従来と同様な構成なのでその詳細な説明は省略する。
【0026】
プレート71には、モータ60を駆動するための駆動回路を設けた回路基板81が取り付けられている。
【0027】
また、プレート71にはモータ60を装着した筒部72が形成され、この筒部72の下部には小径の円筒部73が形成され、円筒部73内にはジョイント部材70が配置されている。円筒部73の底壁部73Aには軸孔74が形成され、この軸孔74にはウオーム51の回転軸51Aの上部(図3において)が回動自在に保持され、回転軸51Aの下部51B(図3において)がケース47に設けた軸孔47Hに回転自在に保持されている。
【0028】
回転軸51Aの上部51bは偏平され、その上部51bはプレート71の円筒部73内に進入している。
【0029】
ジョイント部材70は、図4ないし図6に示すように、円柱状の本体76を有し、この本体76の上面(一端面)76Aおよび下面(他端面)76B(図5において)には軸方向に延びた軸孔77,78が形成されている。そして、軸孔(第1挿入孔)77には軸方向に沿って相対向した一対の突条部(第1突起部)77A,77Aが形成され、この突条部77A,77Aは平面視がほぼ三角形状を呈している。同様に、軸孔(第2挿入孔)78には軸方向にそって相対向した一対の突条部(第2突起部)78A,78Aが形成され、この突条部78A,78Aは平面視がほぼ三角形状を呈している。
【0030】
また、突条部77A,77Aの相対向する向きと、突条部78A,78Aの相対向する向きとが図4および図5に示すようにほぼ90度ずれている。
【0031】
そして、図7および図8に示すように、ジョイント部材70の軸孔77にモータ60の駆動軸61が挿入されている。駆動軸61は偏平されていて軸孔77の突条部77A,77A間に圧入されている。この圧入により駆動軸61は、ジョイント部材70に対して、図7において左右方向(X方向)への傾動は許容することができないようになっており、上下方向(図7においてY方向)の多少の傾動のみが許容されるようになっている。
【0032】
また、ジョイント部材70の軸孔78にウオーム51の回転軸51Aの上部51bが挿入されているとともに、軸孔78の突条部78A,78A間に圧入されている。この圧入によりウオーム51の回転軸51Aは、ジョイント部材70に対して、図8(B)において左右方向(X方向)への多少の傾動のみが許容されるようになっており、上下方向(図8(B)においてY方向)の傾動が許容されないようになっている。
【0033】
そして、モータ60とジョイント部材70とプレート71とウオーム51等とで、電動格納式ドアミラー10の駆動構造が構成されている。
[動 作]
次に、上記のように構成される電動格納式ドアミラー10の動作と電動格納式ドアミラー10の駆動構造の動作について説明する。
【0034】
モータ60が駆動されると、減速機構50およびクラッチ機構41を介してミラーアセンブリ30がミラーベース11のシャフト21を中心にして回動移動され、図1に示す所定の前方傾倒位置P1や後方傾倒位置P2や使用位置P3に移動される。このミラーアセンブリ30の回転移動は従来と同様にして行われるのでその説明は省略する。
【0035】
いま、例えば図9に示すように、モータ60がプレート71の円筒部73に対して傾斜して組み付けられた場合、すなわち、円筒部73の軸線73Jに対してモータ60の軸線60Jが右方向(X方向)に傾いて取り付けられた場合、モータ60の駆動軸61が図7に示す位置へ回転していくと、ジョイント部材70に対して駆動軸61はX方向への傾動は許容されないことにより、ジョイント部材70は図9に示すように駆動軸61とともに傾くことになる。
【0036】
一方、図8(B)に示すように、ウオーム51の回転軸51Aは、ジョイント部材70の軸孔78の突条部78A,78AがY方向に位置しているので、Y方向への傾動は許容されないが、X方向への傾動は許容される。このため、ウオーム51の回転軸51Aに対してジョイント部材70は図9に示すように傾動し、第1ウオーム51の回転軸51Aはプレート71の円筒部73の軸孔74に強く押し付けられて、ウオーム51とプレート71ととが強干渉してしまうことが防止される。
【0037】
そして、モータ60の駆動軸61が図10に示す位置へ回転すると、すなわち図7に示す位置から90度回転すると、ジョイント部材70の軸孔77の突条部77A,77AがY方向に位置しているので、ジョイント部材70に対して駆動軸61はX方向への傾動は許容される。このため、図11に示すようにジョイント部材70に対してモータ60の駆動軸61が傾動し、ジョイント部材70はプレート71の円筒部73に対して傾動しない。
【0038】
このため、ウオーム51の回転軸51Aはプレート71の円筒部73の軸孔74に強く押し付けられて、ウオーム51とプレート71とが強干渉してしまうことが防止される。
【0039】
このように、モータ60がプレート71に対して傾斜して組み付けられても、ウオーム51とプレート71とが強干渉してしまうことが防止されることにより、モータ60の駆動の際のブレ音の発生を防止することができる。また、ジョイント部材70に対するモータ60の軸ズレの吸収効果が上がるため、プレート71やウオーム51の寸法精度を上げずに済み、このためコストダウンを図ることができる。
【0040】
ところで、モータ60の駆動軸61は、ジョイント部材70内で図12(A)および図12(B)に示すように所定角度だけ空転可能となっている。このため、動作後に反転動作させた時には、モータ60の駆動軸61が一瞬空転する。この空転によるモータ60のロータに角速度が発生し、この角速度の勢いでウオーム51を回転させることができる。
【0041】
このため、ウオーム51とウオームホイール52とのギア部が食いついている場合、これを解除する際に必要な力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明に係る電動格納式ドアミラーの駆動構造を適用した電動格納式ドアミラーの実施例を示した説明図である。
【図2】図1に示す電動格納式ドアミラーの主要部を示した分解斜視図である。
【図3】モータおよび減速機構の一部の組み付けを示した断面図である。
【図4】ジョイント部材を示した平面図である。
【図5】ジョイント部材を示した断面図である。
【図6】ジョイント部材の底面図である。
【図7】ジョイント部材とモータの回転軸との結合状態を示した説明図である。
【図8】(A)はジョイント部材によってモータの回転軸とウオームとを結合した状態を示した断面図であり、(B)はジョイント部材とウオームの回転軸との結合状態を示した説明図である。
【図9】モータがプレートの円筒部に対して傾斜して組み付けられた状態を示した説明図である。
【図10】モータの回転軸が所定位置へ回転したときの状態を示した説明図である。
【図11】ジョイント部材がプレートの円筒部に対して傾動しない状態を示した説明図である。
【図12】(A)はジョイント部材内でモータの回転軸が一方向へ空転することを示した説明図であり、(B)はジョイント部材内でモータの回転軸が他方向へ空転することを示した説明図である。
【図13】従来のジョイント部材の構成を示した断面図である。
【図14】図13のジョイント部材の平面図である。
【図15】モータの駆動軸が所定位置へ回転したときの状態を示した説明図である。
【図16】モータの駆動軸とジョイント部材とウオームの回転軸との関係を示した説明図である。
【図17】モータの傾きによってジョイント部材およびウオームが傾いた状態を示した説明図である。
【図18】モータの傾きと直交する方向とモータの駆動軸の偏平方向とが一致したときの状態を示した説明図である。
【図19】モータの傾きがジョイント部材により吸収された状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0043】
51 ウオーム
51A 回転軸
51b 一端部
60 モータ
61 駆動軸
70 ジョイント部材
71 プレート
77 軸孔
78 軸孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウオームを有するとともにミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構を備え、この回動機構は、前記ウオームを回転駆動させる駆動モータと、この駆動モータの駆動軸と前記ウオームの回転軸の一端部とを連結するジョイント部材とを有し、前記駆動モータはミラーハウジングに設けたプレートに取り付けられ、前記ウオームの回転軸の一端部が前記プレートに回転自在に保持される電動格納式ドアミラーの駆動構造であって、
前記ジョイント部材の一端面に前記駆動軸を挿入する第1挿入孔を形成し、その他端面に前記回転軸の一端部を挿入する第2挿入孔を形成し、
前記駆動軸および回転軸を偏平させ、
前記駆動軸の偏平面に当接する相対向した一対の第1突起部を第1挿入孔に設け、
前記回転軸の偏平面に当接する相対向した一対の第2突起部を第2挿入孔に設け、
前記駆動軸を第1挿入孔に挿入するとともに一対の第1突起部間に圧入させ、
前記回転軸を第2挿入孔に挿入するとともに一対の第2突起部間に圧入させ、
前記駆動軸の圧平方向と回転軸の圧平方向とのなす角度をほぼ90度にしたことを特徴とする電動格納式ドアミラーの駆動構造。
【請求項2】
前記回転軸は第1挿入孔に対して所定角度だけ相対回転可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の電動格納式ドアミラーの駆動構造。
【請求項1】
ウオームを有するとともにミラーハウジングを格納位置と使用位置とに回動移動させる回動機構を備え、この回動機構は、前記ウオームを回転駆動させる駆動モータと、この駆動モータの駆動軸と前記ウオームの回転軸の一端部とを連結するジョイント部材とを有し、前記駆動モータはミラーハウジングに設けたプレートに取り付けられ、前記ウオームの回転軸の一端部が前記プレートに回転自在に保持される電動格納式ドアミラーの駆動構造であって、
前記ジョイント部材の一端面に前記駆動軸を挿入する第1挿入孔を形成し、その他端面に前記回転軸の一端部を挿入する第2挿入孔を形成し、
前記駆動軸および回転軸を偏平させ、
前記駆動軸の偏平面に当接する相対向した一対の第1突起部を第1挿入孔に設け、
前記回転軸の偏平面に当接する相対向した一対の第2突起部を第2挿入孔に設け、
前記駆動軸を第1挿入孔に挿入するとともに一対の第1突起部間に圧入させ、
前記回転軸を第2挿入孔に挿入するとともに一対の第2突起部間に圧入させ、
前記駆動軸の圧平方向と回転軸の圧平方向とのなす角度をほぼ90度にしたことを特徴とする電動格納式ドアミラーの駆動構造。
【請求項2】
前記回転軸は第1挿入孔に対して所定角度だけ相対回転可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の電動格納式ドアミラーの駆動構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−240348(P2006−240348A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55532(P2005−55532)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
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