説明

電動機

【課題】ブラシレスの電動機を小型軽量化する。
【解決手段】ステータコイル7と、ロータコイル6と、ロータコイル6と一体に回転するロータ軸4と、ステータコイル7に交流電圧を加える三相インバータ12と、ロータコイル6の界磁用交流電源である単相インバータ13と、ロータ軸4と一体に設けられ、単相インバータ13から加えられる交流電圧を整流してロータコイル6に加える整流器11と、ロータ軸4と相対回転可能にロータ軸4の外側に対向配置され単相インバータ13に電気接続される電極10と、ロータ軸4と一体に設けられ、且つ、電極10と離間して対向配置され整流器11に電気接続される電極9と、を備え、電極9,10によりコンデンサ20を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機には、ロータコイルの界磁用電源である交流電圧を回転トランスによりロータ側に供給し、ロータ軸側に設置された整流器で整流してロータコイルに直流電圧を印加し、励磁する構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−261582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、回転トランスは巻線が必須の構成となるため大型化が否めず、電動機の小型化を図る上で障害となっていた。
そこで、この発明は、回転トランスに変わる電気機器を用いてロータ側に交流電圧を供給することができ、且つ小型化も可能な電動機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係る電動機では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、ステータコイル(例えば、後述する実施例におけるステータコイル7)と、ロータコイル(例えば、後述する実施例におけるロータコイル6)と、前記ロータコイルと一体に回転するロータ軸(例えば、後述する実施例におけるロータ軸4)と、前記ステータコイルに交流電圧を加える第1の電圧制御部(例えば、後述する実施例における三相インバータ12)と、前記ロータコイルの界磁用交流電源である第2の電圧制御部(例えば、後述する実施例における単相インバータ13)と、前記ロータ軸と一体に設けられ、前記第2の電圧制御部から加えられる交流電圧を整流して前記ロータコイルに加える整流器(例えば、後述する実施例における整流器11)と、前記ロータ軸に対して相対回転可能に該ロータ軸の外側に対向配置され前記第2の電圧制御部に電気接続される第1の電極(例えば、後述する実施例における電極10)と、前記ロータ軸と一体に設けられ、且つ、前記第1の電極と離間して対向配置され、前記整流器に電気接続される第2の電極(例えば、後述する実施例における電極9)と、を備え、前記第1の電極と前記第2の電極によりコンデンサ(例えば、後述する実施例におけるコンデンサ20)を形成することを特徴とする電動機(例えば、後述する実施例における電動機1)である。
このように構成することにより、第2の電圧制御部から加えられる交流電圧を第1の電極と第2の電極とからなるコンデンサを介して整流器に加えることができ、整流器で整流した出力電圧(直流電圧)をロータコイルに加えることができる。つまり、コンデンサを用いることで、回転トランスを用いることなく交流電圧をロータ側に供給することができる。
【0005】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の電極と前記第2の電極との間に誘電体を封入することを特徴とする.
このように電極間に誘電体を封入することにより、コンデンサの静電容量が大きくなり、交流電流が流れ易くなる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、コンデンサを用いることにより回転トランスを用いることなく交流電圧をロータ側に供給することができるので、電動機を小型軽量化することができる。
請求項2に係る発明によれば、コンデンサの静電容量が大きくなり、交流電流が流れ易くなるので、損失を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明に係る電動機の一実施例を図1から図4の図面を参照して説明する。なお、この実施例における電動機は、燃料電池車両の車両駆動用DCブラシレスモータとしての態様である。
【0008】
電動機1は、図1に示すように、軸受2,3によって回転可能に支持されたロータ軸4と、ロータ軸4に固定されたロータ5と、ロータ5の外周部に巻き付けられたロータコイル6と、ロータ軸4と同心上に環状に配置されロータコイル6から若干離間した外側に対向配置されたステータコイル7と、を備えている。ロータコイル6はロータ軸4と一体となって回転し、ステータコイル7は図示しないモータハウジングに固定され、回転不能にされている。
【0009】
また、図2に示すように、ロータ5と一方の軸受2との間に位置するロータ軸4には、絶縁材からなる円筒状の絶縁体8が固定されている。
さらに、絶縁体8の外周であって軸受2に近い側には、筒状の電極(第2の電極)9が固定されており、この電極9の外側に筒状の他の電極(第1の電極)10が対向配置されている。電極10は前記モータハウジングに連結されており、固定系にされている。つまり、電極9はロータ軸4と一体となって回転可能であり、固定系の電極10はロータ軸4に対して相対回転可能と言える。これら電極9,10の間には全周に亘って均一間隔の空間15が形成されており、これら電極9,10はコンデンサ20を形成する。
【0010】
一方、絶縁体8の外周であってロータ5に近い側には、整流器11が固定されている。整流器11の交流入力側は電極9とロータ軸4に電気接続されており、整流器11の整流出力側はロータコイル6に電気接続されている。
モータ駆動用電源(例えば、燃料電池や蓄電池)の直流電力は三相インバータ12によって三相交流電力に変換されステータコイル7に供給され、これによりロータコイル6の外側に回転磁界を形成することができる。
【0011】
また、前記モータ駆動用電源の直流電力は、単相インバータ13によって単相交流電力に変換されてロータコイル6の界磁用交流電源とされ、電極10と軸受2との間に供給される。これにより、単相交流は、単相インバータ13、コンデンサ20、整流器11、ロータ軸4、軸受2を通る閉回路を流れ、整流器11に単相交流電力を供給することができる。そして、単相交流は整流器11により整流され、直流電圧としてロータコイル6に印加される。図4は、このように構成された電動機1の電気回路を示す。
【0012】
なお、ロータ軸4にはロータ位置検出センサ14が取り付けられており、このロータ位置検出センサ14により検出されるロータ軸4の回転位置に基づいて三相インバータ12が制御される。すなわち、電動機1に対する要求回転数あるいは要求トルク、およびロータ位置検出センサ14から入力したロータ位置情報に基づいて、図示しない制御装置がステータコイル7に対する適切な供給電流、周波数、位相、界磁電力を算出し、三相インバータ12を制御する。
また、単相インバータ13についても電動機1に対する要求回転数あるいは要求トルクに応じて制御する。
【0013】
このように構成された電動機1においては、コンデンサ20の電極9,10が相対回転可能であり、電極9はロータ軸4に固定されてロータ軸4と同期して回転し、電極10は固定系となっているので、界磁用交流電源である単相インバータ13の単相交流電力を、コンデンサ20を介して回転体であるロータ5側に供給することができる。
【0014】
しかも、電極9をロータ軸4に固定し、電極10を電極9の外側に対向配置することによりコンデンサ20を構成しているので、従来の回転トランスの場合に必要だった巻線が不要となり、回転トランスよりも構成が簡単で小型軽量にできるという利点がある。
【0015】
なお、空間15は空気充填でもよいが、空間15に誘電率の大きい誘電体を充填したり、空間15の径方向幅を小さくすることで、コンデンサ20の静電容量を大きくし、コンデンサ20に電流を流し易くすることができる。例えば、空間15に電気絶縁油を封入すると、電気絶縁油は誘電率が高いので静電容量を大きくでき、しかも潤滑剤としても機能するので効果的である。この場合には、空間15から電気絶縁油が漏れないようにシール機構を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る電動機の実施例における概略構成図である。
【図2】前記実施例の電動機における要部拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】前記実施例の電動機における電気回路図である。
【符号の説明】
【0017】
1 電動機
4 ロータ軸
6 ロータコイル
7 ステータコイル
9 電極(第2の電極)
10 電極(第1の電極)
11 整流器
12 三相インバータ(第1の電圧制御部)
13 単相インバータ(第2の電圧制御部)
20 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイルと、
ロータコイルと、
前記ロータコイルと一体に回転するロータ軸と、
前記ステータコイルに交流電圧を加える第1の電圧制御部と、
前記ロータコイルの界磁用交流電源である第2の電圧制御部と、
前記ロータ軸と一体に設けられ、前記第2の電圧制御部から加えられる交流電圧を整流して前記ロータコイルに加える整流器と、
前記ロータ軸に対して相対回転可能に該ロータ軸の外側に対向配置され前記第2の電圧制御部に電気接続される第1の電極と、
前記ロータ軸と一体に設けられ、且つ、前記第1の電極と離間して対向配置され、前記整流器に電気接続される第2の電極と、
を備え、前記第1の電極と前記第2の電極によりコンデンサを形成することを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に誘電体を封入することを特徴とする請求項1に記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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