説明

電動車両の充電制御装置

【課題】電動車両において、充電方法が最適化された充電制御装置を提供する。
【解決手段】外部電源によって充電することが可能なバッテリと、バッテリによって力行または回生を行う回転電機とを有し、回転電機によって駆動力の一部または全部を得る電動車両の充電制御装置であって、ステップ52で充電制御切り替えスイッチがONの場合、ステップ55でユーザの電動車両の使用状況に応じた最適な目標充電量を演算し、ステップ56でユーザの電動車両の使用状況に応じた最適な充電速度を演算し、当該目標充電量と当該充電速度に基づいて充電を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力の一部または全部を回転電機によって得る、電気自動車やハイブリッド自動車に代表される電動車両として、車両の外部にある電源(以下「外部電源」とする)によってバッテリを充電し、充電されたバッテリの電力を回転電機に供給するものが知られている。
【0003】
外部電源からバッテリを充電する方法としては、例えば走行を開始する予定の時刻までに充電を行い、予定の時刻を過ぎると放電を行う方法が知られている(例えば特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−278585号公報
【特許文献2】特開2009−5450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電動車両における充電制御は、充電後の走行性能や航続距離に影響を与えると共に、バッテリの劣化量にも影響を与える。
【0006】
特にバッテリの劣化量は、劣化量が大きいと、車両を購入した後、車両の航続距離やハイブリッド自動車では燃費が大幅に悪化するため、劣化の抑制を考えた充電制御は、外部電源による充電機能を備える電動車両にとって重要な技術である。
【0007】
しかしながら従来の技術においては、充電方法の最適化については十分に考慮されていない。例えば従来技術の場合、満充電状態で放置することを抑制するために放電が必要であり、放電する電力、もしくは放電すべき電力を他の蓄電装置に貯める場合には、放電時のロスが問題となる。また、バッテリの劣化抑制のみを考慮し、劣化の最も少ない充電量とすると、航続距離や燃費の悪化につながるなどの問題がある。
【0008】
本発明は上記に鑑み、電動車両において、充電方法が最適化された充電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外部電源によって充電することが可能なバッテリと、バッテリによって力行または回生を行う回転電機とを有し、回転電機によって駆動力の一部または全部を得る電動車両の充電制御装置であって、バッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、車両の情報を検出する車両情報検出手段と、バッテリの充電量または充電速度を制御する充電制御手段と、を有し、充電制御手段は、充電量検出手段で検出した現在の充電量と、車両情報検出手段で検出した車両情報に基づいて、バッテリの充電量または充電速度を制御する電動車両の充電制御装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動車両において、充電方法が最適化された充電制御装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態をなすプラグインハイブリッド車のシステム図を示す。
【図2】保存時の温度とバッテリの劣化速度の関係図を示す。
【図3】保存時のSOCとバッテリの劣化速度の関係図を示す。
【図4】本発明の一実施形態をなすバッテリ充電制御のフローチャートを示す。
【図5】図4のステップ55における演算ブロック図を示す。
【図6】図4のステップ56における演算ブロック図を示す。
【図7】図5、図6のL_WDrvSTtime、L_DrvLoad_int、L_WDrvSTtimeの演算のタイミングを示すフローチャートを示す。
【図8】図7のステップ82、ステップ84、ステップ85の演算ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態をなすプラグインハイブリッド車のシステム図である。
【0014】
尚、ここでは本発明の実施形態として、外部電源からのバッテリ充電が可能なプラグインハイブリッド車を用いて説明するが、本発明の実施形態は必ずしもプラグインハイブリッド車に限定されるべきものではなく、外部電源からのバッテリ充電が可能であり、バッテリの電力供給により駆動されるモータを駆動源とする車両であれば、すべてに適用可能である。
【0015】
図1に示すプラグインハイブリッド車100は、エンジン4と回転電機3を有する。回転電機3は、インバータ2を介してバッテリ1と電気的に接続され、力行または回生を行う。車両の駆動力の一部または全部は、この回転電機3によって得られる。加速時には回転電機3は力行し、バッテリ1に蓄えられた電気エネルギーをインバータを介して駆動力に変換する。減速時には回転電機3にて回生した電力を、インバータ2を介しバッテリ1に蓄電する。上記の動作は、ハイブリッドコントローラ7から各部へ通信を行うことで実現する。
【0016】
また、車両を停止し、外部電源6からバッテリ1へ充電を行う際は、外部電源6からバッテリチャージャ5を介してバッテリ1を充電する。上記の動作は、ハイブリッドコントローラ7とも通信を行うバッテリコントローラ8にて制御する。
【0017】
尚、車両外部に取り付けられた外気温センサ9の出力信号は、ハイブリッドコントローラ7に接続され、走行制御に用いられるとともに、バッテリコントローラ8へも送られる。
【0018】
次に、バッテリの劣化特性について説明する。
【0019】
電動車両の蓄電装置として用いられるリチウムイオンバッテリは、劣化することにより、充電可能な容量の低下と、内部抵抗増加による出力電圧の低下を引き起こし、回転電機走行における航続距離の低下や、回転電機出力低下の要因となる。
【0020】
上記のようなバッテリ特性の劣化の原因としては、保存劣化とサイクル劣化の2つに大別される。
【0021】
保存劣化とは、充電状態のバッテリに発生する劣化であり、電極と電解質との界面領域での電気化学反応による、電極や電解質の損傷により引き起こされる劣化であり、主に電動車両を駐車している間に進行する劣化である。
【0022】
保存劣化による劣化量を変化させる要因としては、温度と充電量(以下SOC:State of Chargeと称す)が知られており、下式に示す特性を持つ。
【0023】
保存劣化量(充電可能容量の低下、内部抵抗の増加)
=Kc×t(1/2) …(式1)
Kc:劣化速度 t:保存時間
【0024】
式1において、充電可能容量の低下量と、内部抵抗の増加量の絶対値は異なるが、同様の特性を示す。Kcは温度とSOCにより変化する劣化速度である。温度に関しては、図2に示すように、温度が高い程、劣化速度が大きくなる特性を持つ。また、図3に示す様に、SOCに関しては、満充電状態の劣化速度が最も大きく、充電していない状態の劣化速度が最も小さい特性を持つ。
【0025】
サイクル劣化とは、バッテリに対して充放電サイクルを繰り返すことによって発生する劣化であり、主に、電動車両走行中の回転電機に対する放電、回生中の回転電機からの充電、また、外部電源による充電時に進行する劣化である。
【0026】
サイクル劣化による劣化量を変化させる要因としては、充放電時の電気負荷である電流値が知られており、下式に示す特性を持つ。
【0027】
サイクル劣化量(充電可能容量の低下、内部抵抗の増加)
=Kc×(電流値n) …(式2)
Kc:劣化速度 n:整数
【0028】
式2において、充電可能容量の低下量と、内部抵抗の増加量の絶対値は異なるが、同様の特性を示す。Kcは温度とSOCにより変化する劣化速度であり、保存劣化と同様、温度に関しては、温度が高い程劣化速度が大きくなる特性を持ち、SOCに関しては、満充電状態の劣化速度が最も大きく、充電していない状態の劣化速度が最も小さい特性を持つ。
【0029】
このようなバッテリ劣化のメカニズムを考慮すると、充電量を示すSOCが100%に近い状態になるまで充電し、かつ環境温度が高い状態でバッテリを放置した場合や、バッテリの充電速度を早めて充電時に流れる電流を大きくした場合、回転電機による駆動または回生が頻発するような走行を行うと、バッテリ劣化を促進することになる。
【0030】
このような状態が定常的に続くと、短期間で、航続距離や燃費が大きく悪化する状態となる。
【0031】
また、上記とは逆に、SOCを0%程度とし、かつ低温でバッテリを放置する場合や、バッテリの充電速度を遅くし充電時に流れる電流を小さくした場合、回転電機による駆動または回生が発生しにくくなるような走行をした場合、バッテリの劣化は抑制される。但し、走行開始時のSOCが満充電に比べ低くなることから、航続距離の低下や、充電速度を遅くすることによる充電時間の長期化が生じる。また回転電機による駆動・回生が発生しにくくなるような走行を行うことにより運転性の悪化や、回生量低下による燃費の悪化が生じ、走行性能が悪化する。
【0032】
従って、外部電源によるバッテリの充電量は、基本的には上記のトレードオフを取り、最適化することが望ましい。
【0033】
しかしながら、生活環境に依存する環境温度や、走行パターンはユーザによって異なるため、一概にすべてのユーザにとって最適な充電量を設定することは困難である。
【0034】
また、ユーザ毎に生活環境に依存する環境温度や、走行パターンが異なることにより、ユーザ毎にバッテリの劣化速度が異なると、ユーザにとっては、数年後の車両性能を予想することが困難である。車両購入時に適切な車両を選択することが難しく、バッテリを搭載する電動車両を供給する側にとっては、購入者に対するサポートを適切なタイミングで実施することが困難である。これらの課題があり、使用環境・条件によるバッテリの劣化ばらつきを抑制することが望ましい。
【0035】
そこで、本実施形態では、上記に鑑み、各ユーザの電動車両の保存状態、走行状態に応じて、外部電源によるバッテリの充電量、および充電時の電流値と相関のある充電速度を設定することで、上記のバッテリ劣化抑制と走行性能悪化抑制のトレードオフを最適化し、かつ使用環境・条件によるバッテリの劣化ばらつきを抑制する。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態をなすバッテリ充電制御のフローチャートを示す。外部電源6を接続して電動車両のバッテリ1に充電を行う際に、バッテリコントローラ8で行う充電制御のフローチャートである。
【0037】
尚、本実施形態では、本充電制御をバッテリコントローラ8で行うことを前提に記載するが、同様の信号入出力、演算機能を有するコントローラであれば、他のコントローラで実施してもよい。
【0038】
まず、ステップ51において、外部電源6が車両に接続されたことを検知すると充電制御を開始する。その後、ステップ52で、車両の運転席に取り付けられ、ユーザが切り替え可能な充電制御切り替えSWの状態を判定し、SWがOFFである場合には、ステップ53で目標充電量であるTargetSOCを満充電状態に近く次回走行時の航続距離が長い90%とし、ステップ54で充電速度CSPEEDを固定値C1に設定する。SWがONである場合には、ステップ55でTargetSOC演算により、ユーザの電動車両の使用状況に応じた最適な目標充電量TargetSOCを演算し、ステップ56でCSPEED演算により、ユーザの電動車両の使用状況に応じた最適な充電速度CSPEEDを演算する。その後、ステップ57で設定されたTargetSOC,CSPEEDに応じて充電を開始し、ステップ58で、変化するSOC値RtSOCを取得し、ステップ59でTargetSOCとRtSOCの差が固定値C2以下になるまで待機し、ステップ60でC2以下となったら充電を終了する。
【0039】
このように、ユーザが操作可能なSWにより、充電量・充電速度をユーザの趣向に合わせて切り替える構成とすることで、ユーザの満足度を上げるとともに、最適な充電量・充電速度を設定する際にも、ユーザは本SWを切り替えるだけで実現可能な構成とし、ユーザの負担を軽減する。
【0040】
尚、ここではステップ55、ステップ56の順番で説明したが、これが逆でも良く、またどちらか一方だけでも本実施形態の効果が得られる。
【0041】
次に、ステップ55とステップ56の演算内容を図5、図6を用いて説明する。
【0042】
図5はステップ55の演算内容を示すブロック図である。まず曜日毎SOC消費量推定演算71において、バッテリコントローラ8またはハイブリッドコントローラの内部に設置されたタイマICから日時情報Tinfを取得する。その後、Tinfから曜日を特定し、特定した曜日に応じたSOC変化量の学習値L_WDeltaSOCを、不揮発性メモリであるEEPROM77から取得する。その後、L_WDeltaSOCに、事前に設定した走行終了時の目標SOC量を加え、充電量の暫定目標値TgSOC1を演算する。
【0043】
上記の処理により、ユーザの電動車両の使い方に応じた充電量の最適化が可能である。たとえば、平日は会社までの短い往復、休日は旅行・レジャーのため、中・長距離運転を行うユーザの場合、平日は充電量を少なくすることでバッテリの劣化を図り、休日は充電量を大きくし車両の後続距離を伸ばすことができ、ユーザに不満を感じさせることなく、バッテリの劣化を抑制することが可能である。
【0044】
TgSOC1を演算した後、保存温度補正演算74にて、前記TgSOC1に対し、保存温度補正値STRAGE_TEMP_COMPを乗じ、保存温度補正を行い、充電量の暫定目標値TgSOC2を演算する。
【0045】
上記STRAGE_TEMP_COMPの演算方法を以下に説明する。まず、外部電源6もしくはGPSを搭載したナビゲーションシステムから充電地点の緯度・経度の位置情報Linfを取得する。温度変化推定演算部72では、上記Linfを用い、予め地点と気温の変化パターンを記憶させたEEPROM77から、充電地点に応じた気温の変化パターンL_TEMPPATTERNを取得し、TEMP_PATTERNとして、保存n温度補正量演算部に引き渡す。これにより、緯度・経度に応じ、異なる気温の変化パターンを保存温度補正に反映することが可能である。
【0046】
保存温度補正量演算73では、外気温センサ9から充電開始時の外気温度RtTEMP、温度変化推定演算72から温度変化パターンTEMP_PATTERN、EEPROM77に保存された保存温度学習値L_STRAGE_TEMPの前回値であるL_STRAGE_TEMPzを取得する。
【0047】
また、Tinfから充電を開始する曜日を特定し、特定した曜日毎に異なる値として、EEPROM77に保存された曜日毎走行開始時刻学習値L_WDrvSTtimeを取得する。
【0048】
上記で得られた情報を用い、まず、RtTEMPとTEMP_PATTERN,L_WDrvSTtimeから、充電後、車両を停車している間の保存温度を推定する。
【0049】
これは、例えば、平日午後7時に帰宅して充電を開始し、翌朝午前7時に出発するユーザの場合、午後7時で計測した温度に対し、出発する午前7時の温度は低下する。そこで、充電開始時の温度が温度パターンTEMP_PATTERNに温度が変化し、曜日毎走行開始時刻学習値L_WDrvSTtime、までの間車両を保存することを前提に、車両保存時間の平均温度を保存温度として推定する。
【0050】
その後、前記推定した保存温度と、L_STRAGE_TEMPzの加重平均を取り、L_STRAGE_TEMPとして、EEPROM77に保存するとともに、L_STRAGE_TEMPに応じた目標SOCの補正量STRAGE_TEMP_COMPを演算する。
【0051】
この際、L_STRAGE_TEMPが高い程、温度によるバッテリの劣化が大きいことを鑑み、L_STRAGE_TEMPが高い程、STRAGE_TEMP_COMPに小さい値を設定しバッテリの充電量を減量することで、バッテリの劣化を抑制する。
【0052】
上記演算にて算出されたSTRAGE_TEMP_COMPを保存温度補正演算74に用いることで、一日の気温変化、位置による気温変化パターンの違い、また、学習値を使用することによりユーザ毎の環境の違いを吸収し、保存時の温度を精度良く推定することが可能である。
【0053】
また、保存温度補正演算74にて温度を用いて目標SOCであるTgSOC2を補正することで、ユーザの使用温度環境によるバッテリ劣化のばらつきを低減することが可能である。
【0054】
TgSOC2を演算した後、前回負荷補正演算76にて、上記TgSOC2に対し、負荷補正値DrvLoad_COMPを乗じて補正を行い、充電量の目標値TargetSOCを演算する。
【0055】
上記DrvLoad_COMPは、前回負荷補正量演算75にて、EEPROM77より、前回走行時の負荷積算記憶値L_DrvLoad_intを取得し、このL_DrvLoad_intに応じて演算する。この際、DrvLoad_COMPは、L_DrvLoad_intが大きい程、走行中のサイクル劣化によるバッテリ劣化が進行したと判断し、小さな値を設定することで充電量を減らし、保存劣化によるバッテリ劣化を抑制し、ユーザの走行パターンによるバッテリ劣化のばらつきを低減することが可能である。
【0056】
このように、目標充電量TargetSOCを演算することで、バッテリの劣化を抑制と走行性能の悪化防止のトレードオフを取り、かつ、ユーザの生活環境に依存する環境温度や、走行パターンの違いによるバッテリの劣化ばらつきの抑制が可能である。
【0057】
図6は、図4のステップ56の演算内容を示すブロック図である。
【0058】
ステップ56では、まず標準のバッテリ充電速度C1に対し、保存温度補正演算83にて、STRAGE_TEMP_COMPSを乗ずることで暫定バッテリ充電速度TCSPEEDを演算する。
【0059】
上記STRAGE_TEMP_COMPSの演算方法を以下に説明する。
【0060】
まず、図5で説明したステップ55と同様に、温度変化推定演算部72にて、TEMP_PATTERNを算出する。
【0061】
その後、保存温度補正量演算S82では、図5の保存温度補正量演算73と同様に、RtTEMPとTEMP_PATTERN,L_WDrvSTtime、およびL_WDrvSTtimeを用いてL_STRAGE_TEMPを演算し、L_STRAGE_TEMPに応じた充電速度の補正量STRAGE_TEMP_COMPSを演算する。
【0062】
この際、L_STRAGE_TEMPが高い程、温度によるバッテリの劣化が大きいことに鑑み、L_STRAGE_TEMPが高い程、STRAGE_TEMP_COMPSに小さい値を設定しバッテリの充電速度を遅くすることで、バッテリの劣化を抑制する。
【0063】
上記演算にて算出されたSTRAGE_TEMP_COMPSを保存温度補正演算83に用いることで、一日の気温変化、位置による気温変化パターンの違い、また、学習値を使用することによりユーザ毎の環境の違いを吸収し、保存時の温度を精度良く推定することが可能である。
【0064】
また、保存温度補正演算83にて温度を用いて充電速度C1を補正することで、ユーザの使用温度環境によるバッテリ劣化のばらつきを低減することが可能である。
【0065】
TCSPEEDを演算した後、前回負荷補正演算S85にて、上記TCSPEEDに対し、負荷補正値DrvLoad_COMPSを乗じて補正を行い、充電速度CSPEEDを演算する。
【0066】
上記DrvLoad_COMPSは、前回負荷補正量演算S84にて、EEPROM77より、前回走行時の負荷積算記憶値L_DrvLoad_intを取得し、上記L_DrvLoad_intに応じて演算する。この際、DrvLoad_COMPSは、L_DrvLoad_intが大きい程、走行中のサイクル劣化によるバッテリ劣化が進行したと判断し、小さな値を設定することで充電速度を遅くし、充電時のサイクル劣化によるバッテリ劣化を抑制し、ユーザの走行パターンによるバッテリ劣化のばらつきを低減することが可能である。
【0067】
以上の様に、充電速度CSPEEDを演算することで、バッテリの劣化を抑制と走行性能の悪化防止のトレードオフを取り、かつ、ユーザの生活環境に依存する環境温度や、走行パターンの違いによるバッテリの劣化ばらつきの抑制が可能である。
【0068】
次に、図5のステップ55、ステップ56の演算で使用するL_WDrvSTtime、L_DrvLoad_int、L_WDrvSTtimeの演算方法を、図7、図8を用いて説明する。
【0069】
図7は、L_WDrvSTtime、L_DrvLoad_int、L_WDrvSTtimeの演算のタイミングを示すフローチャートである。これら3つの演算値は、外部電源6による充電中ではなく、バッテリを登載する電動車両の走行中に演算する。
【0070】
まず、ステップ81で電動車両がキーオンされ、バッテリコントローラ8、ハイブリッドコントローラ7が起動された後、ステップ82においてキーオンした時間の学習値である走行開始時刻学習値を演算し、L_WDrvSTtimeを更新する。その後、ステップ83で車両の走行を開始し、キーオフを判定すると、ステップ84の走行時負荷記憶値演算とステップ85のSOC変化量学習値演算により、L_DrvLoad_int、L_WDeltaSOCを更新して終了する。
【0071】
図8は、図7のステップ82、ステップ84、ステップ85の演算ブロック図である。
【0072】
ステップ82では、車両のキーオンが検出されたタイミングにて、バッテリコントローラ8またはハイブリッドコントローラの内部に設置されたタイマICから取得した日時情報Tinfを読み取り、キーオンされた時刻と、曜日を特定する。その後、特定した曜日に応じ、曜日毎に異なる値としてEEPROM77に記憶された曜日毎走行開始時刻学習値の前回値であるL_WDrvSTtimezを取得する。そして、L_WDrvSTtimezとキーオンされた時刻の時間差に1よりも小さい固定値C3を乗じた時間分をL_WDrvSTtimezからキーオンされた時刻に近づけL_WDrvSTtimeとし、EEPROM77に記憶する。
【0073】
この演算により、L_WDrvSTtimeには、ユーザの曜日毎の最も頻度の高い走行開始時刻が記憶される。
【0074】
ステップ84では、走行中のバッテリの充電、放電時に流れる電流を積分演算91にて積算した値DrvLoad_intを演算する。尚、積分演算91は外部電源6からの充電を実行した後一度だけリセットし、当該充電を実行するまでは積算値を保持する。この間、バッテリコントローラ8の電源がオフされる場合は、バッテリコントローラ8の電源が落ちる前に積算値をEEPROM77に記憶し、次回のバッテリコントローラ8起動時に前回記憶した積算値をEEPROM77から取得して、積算演算を継続する。
【0075】
その後、キーオフのタイミングにて走行時負荷記憶演算92により、DrvLoad_intをEEPROM77へ保存する。
【0076】
上記演算により、L_DrvLoad_intには、前回外部電源6による充電を行ってから前回のキーオフまでの間の走行時の電流積算値が保存される。
【0077】
ステップ85では、まず、初期値記憶93にて、キーオン時のSOCの値を記憶する。その後、キーオフを検出すると、差分計算94にてキーオフ時のSOCと前記記憶したキーオン時のSOCの差分を演算しDeltaSOCとする。DeltaSOCを演算した直後、曜日毎SOC変化量学習値更新演算では、日時情報Tinfからキーオフ時の曜日を特定する。そして、特定した曜日に従い、曜日毎に異なる値としてEEPROMに記憶された曜日毎SOC変化量学習値の前回値L_WDeltaSOCzを取得する。その後、上記L_WDeltaSOCzと、DeltaSOCの加重平均を行いL_WDeltaSOCとして、EEPROM77に保存する。
【0078】
この演算により、L_WDeltaSOCには、曜日毎に、最も頻度の高いSOC変化量が保存される。
【0079】
このように本実施形態では、車両の過去の走行状態や、停止時の環境の情報から、バッテリ劣化が進行する状態にあれば、車両保存時のバッテリの充電量を減らす、もしくはバッテリの充電速度を下げることでバッテリ劣化を遅らせる。
【0080】
また停止時の環境の情報を、車両保存時の外気温とし、高温での保存によるバッテリの劣化を抑制する。また車両保存時の外気温を、充電開始時の車両の外気温と、充電開始後の外気温の変化予想値、推定される車両始動時刻から算出することで、車両保存期間の平均外気温を推定し、車両保存時の外気温推定精度を向上させる。
【0081】
また外気温の変化予想値を、ナビゲーションシステムや、外部電源装置から取得した充電地点の位置情報を元に、位置に応じた外気温の変化予想値を用いることで、車両保存時の外気温推定精度を向上させる。
【0082】
また車両保存時の外気温の推定時に、過去に経験した充電時の外気温情報を反映させることで、ユーザの車両保存状況に応じた推定を行い、車両保存時の外気温の推定精度を向上させる。
【0083】
また車両の過去の走行状態を、過去に経験した頻度の高い充電量の消費量とすることで、ユーザの使用状況に応じ、必要最小限の充電量とすることで、ユーザに不満を与えることなく、バッテリの劣化を抑制する。
【0084】
また過去に経験した頻度の高い充電量の消費量を、曜日毎に分けて演算することで、ユーザの電動車両の使用パターンに応じた消費量を算出し、適切な充電量を設定する。
【0085】
また車両の過去の走行状態を、前回の充電後に経験したバッテリ充放電時の電流の積算値とし、充電制御手段により、積算値が大きい場合は、充電量を少なくする、もしくは、充電速度を下げることで、積算値が大きく走行時のバッテリ劣化が大きいときは、充電時、および車両保存じのバッテリ劣化を抑制し、ユーザの使用環境によるバッテリ劣化のばらつきを抑制する。
【0086】
また充電制御を切り替えるスイッチを備え、当該スイッチがONの場合に、上記充電制御を行うことで、ユーザの趣向にあわせた充電制御を行う。
【0087】
以上に示す構成にて、各ユーザの電動車両の保存状態、走行状態に応じて、外部電源によるバッテリの充電量、および充電時の電流値と相関のある充電速度を設定することで、上記のバッテリ劣化抑制と走行性能悪化抑制のトレードオフを最適化し、かつ使用環境・条件によるバッテリの劣化ばらつきの抑制が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 バッテリ
2 インバータ
3 回転電機
4 エンジン
5 バッテリチャージャ
6 外部電源
7 ハイブリッドコントローラ
8 バッテリコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源によって充電することが可能なバッテリと、前記バッテリによって力行または回生を行う回転電機とを有し、前記回転電機によって駆動力の一部または全部を得る電動車両の充電制御装置であって、
前記バッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
車両の情報を検出する車両情報検出手段と、
前記バッテリの充電量または充電速度を制御する充電制御手段と、を有し、
前記充電制御手段は、前記充電量検出手段で検出した現在の充電量と、前記車両情報検出手段で検出した車両情報に基づいて、前記バッテリの充電量または充電速度を制御する電動車両の充電制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両の充電装置であって、
前記車両情報検出手段は、充電時の車両の外気温を前記車両情報として検出し、
前記充電制御手段は、前記充電時の車両の外気温が所定値より高い場合には、充電量を小さくする、または充電速度を遅くする電動車両の充電制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の電動車両の充電装置であって、
前記車両情報検出手段は、充電開始時の車両の外気温と、充電開始後の外気温の変化予想値、推定される車両始動時刻から前記外気温を算出する電動車両の充電制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の電動車両の充電装置であって、
前記車両情報検出手段は、充電場所の緯度、経度に応じて前記外気温を補正する電動車両の充電制御装置。
【請求項5】
請求項2記載の電動車両の充電装置であって、
前記車両情報検出手段は、充電開始時の車両の外気温と、過去に経験した充電時の外気温に応じて前記外気温を算出する電動車両の充電制御装置。
【請求項6】
請求項1記載の電動車両の充電装置であって、
前記車両情報検出手段は、過去に経験した頻度の高い充電量の消費量を車両情報として検出し、
前記充電制御手段は、前記頻度の高い走行パターンに必要な充電量を充電する電動車両の充電制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の電動車両の充電装置であって、
前記車両情報検出手段は、頻度の高い充電量の消費量を、週の曜日毎に抽出する電動車両の充電制御装置。
【請求項8】
請求項1記載の電動車両の充電装置であって、
前記車両情報検出手段は、前回の充電後に経験したバッテリ充放電時の電流の積算値を車両情報として検出し、
前記充電制御手段は、前記積算値が大きい場合は、充電量を少なくする、または充電速度を下げる電動車両の充電制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の電動車両の充電装置であって、
充電制御のON/OFFを切り替えるスイッチを有し、前記スイッチがONの場合に、前記充電制御を行う電動車両の充電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51809(P2013−51809A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188163(P2011−188163)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】