説明

電圧制御回路

【課題】変化範囲が大きい入力電圧に対応して制御容易に任意一定の大きさの出力電圧に変換できる電圧制御回路を提供すること。
【解決手段】トランス一次側TPと、トランス二次側TSと、を含む。トランス一次側TPは、複数のトランス一次巻線TL11,TL21と、複数の共振回路RS1,RS2と、複数のスイッチング素子回路SW1,SW2と、複数の駆動回路DV1,DV2と、を含む。トランス二次側TSは、複数の二次巻線TL21,TL22と、複数のダイオードD1−D4を含む整流回路DCと、整流回路DC出力を合成する合成回路SUMと、を含む。トランス一次側TPの駆動回路DV1,DV2は、太陽電池PV1からの入力電圧Viに対してその周波数をf0の同一に維持し、かつ、その位相を変えることでトランス二次側TSで合成回路SUMにより合成される出力電圧VOの大きさを可変する制御を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い入力電圧範囲に対して一定の出力電圧に制御することが可能な電圧制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、太陽電池とパワーコンディショナとから構成されており、太陽電池は太陽エネルギーを電気に変換し、パワーコンディショナは負荷や電力系統への供給条件に対応した電力の変換機能を有している。こうした太陽光発電システムにおいて、パワーコンディショナは、太陽電池の入力電圧を別の出力電圧にDC/DC変換するDC/DCコンバータを備える。
【0003】
一方、太陽電池は例えば日照や負荷等によりその入力電圧の変化範囲が広く、そのためにDC/DCコンバータでは、太陽電池からの広い範囲の入力電圧を安定的に一定の出力電圧にDC/DC変換できることが求められる。
【0004】
もちろん、こうしたDC/DC変換は、太陽電池に限らず、他の分散電源、例えば風力発電システムにおける電源やその他の電源などでも同様の課題があり、そうした場合にも広い入力電圧の変化範囲に対して出力電圧を一定にDC/DC変換する制御を容易に可能とし、かつその際に高効率に電力伝送することが可能なDC/DCコンバータが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−038969号公報
【特許文献2】特開2006−149170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明においては、変化範囲が大きい直流の入力電圧に対応して制御容易に任意の大きさの直流の出力電圧に変換制御ができる電圧制御回路を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電圧制御回路は、トランス一次側と、トランス二次側と、を含み、
上記トランス一次側は、複数のトランス一次巻線と、各トランス一次巻線に個別に接続され所定周波数で共振する複数の共振回路と、直流電源の入力電圧を所定周波数でスイッチングして各一次巻線に個別に印加する複数のスイッチング素子回路と、上記各スイッチング素子回路を個別にスイッチング駆動する複数の駆動回路と、を含み、
上記トランス二次側は、互いに直列接続される複数の二次巻線と、各二次巻線出力をそれぞれ整流する複数のダイオードを含む整流回路と、上記整流回路出力を合成する合成回路と、を含み、
上記トランス一次側の各駆動回路は、直流電源からの入力電圧に対してその周波数を同一に維持し、かつ、その位相を変えることでトランス二次側で合成回路により合成される出力電圧の大きさを可変する制御を可能とした、ことを特徴とする。
【0008】
本発明では、当該電圧制御回路に対して、太陽電池等の変化範囲が大きい直流の入力電圧を入力するように直流電源に対して、トランス一次側それぞれで入力電圧の位相を制御することで、容易に出力電圧の大きさを任意に調整することができる。
【0009】
好ましくは、上記トランス一次側の上記複数のスイッチング素子回路は、それぞれ、ハーフブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含み、上記複数の駆動回路は、それぞれ、対応する上記ハーフブリッジ回路内の各スイッチング素子を一定の同一周波数でかつ180度反対位相で交互にオンオフ駆動する。
【0010】
好ましくは、上記電圧制御回路は、スイッチング電源である。
【0011】
好ましくは、上記電圧制御回路は、DC/DCコンバータである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、直流電源からの入力電圧が大きく変化しても、出力電圧の大きさを任意一定の大きさに制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る電圧制御回路の回路図である。
【図2】図2は、図1の回路においてトランス一次側における駆動回路の駆動電圧波形を示す図である。
【図3】図3は、図1の回路においてトランス二次側における各二次巻線の出力電圧の位相状態を示す図である。
【図4】図4は、図1の回路においてトランス二次側における合成回路により合成された出力電圧の大きさをベクトルで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る電圧制御回路を説明する。図1に本発明の実施形態に係る電圧制御回路の構成を示す。実施形態では電圧制御回路は、太陽光発電システムのパワーコンディショナにおけるDC/DCコンバータに適用するが、これに特に限定されるわけではなく、単にスイッチング電源やその他でもよい。そして、本実施形態の電圧制御回路における制御対象とする電圧は、直流電源である太陽電池からの入力電圧であり、実施形態の電圧制御回路は、その太陽光発電システムにおけるパワーコンディショナ内のDC/DCコンバータとして、太陽電池からの入力電圧を一定の出力電圧にDC/DC変換する例を示す。
【0015】
図1を参照して実施形態のDC/DCコンバータは、トランス一次側TPと、トランス二次側TSとを含む。これらは2つのトランスT1,T2それぞれの一次側と二次側である。トランス一次側TPは、複数のトランスT1,T2それぞれの一次巻線TL11,TL21と、各一次巻線TL11,TL21に個別に接続される所定周波数f0で共振する複数の共振回路RS1,RS2と、所定周波数f0でスイッチング動作して各一次巻線TL11,TL21に直流電源PV1の入力電圧Viを個別に印加する複数のスイッチング素子回路SW1,SW2と、上記各スイッチング素子回路SW1,SW2を所定周波数f0で個別にスイッチング駆動する複数の駆動回路DV1,DV2と、を含む。スイッチング素子回路SW1,SW2は、ハーフブリッジ構成に直列接続されたIGBTやMOSFET等のトランジスタQ1−Q4を含む。駆動回路DV1,DV2はパルス発振する発振回路V1,V2と、反転回路INV1,INV2とを含む。
【0016】
トランス二次側TSは、互いに直列接続される2つのトランスT1,T2それぞれの複数の二次巻線TL21,TL22と、各二次巻線TL21,TL22の出力VS1,VS2を個別に整流する整流回路DCと、この整流回路DC出力を合成して出力電圧Voとして出力する合成回路SUMと、を含む。
【0017】
整流回路DCは、トランスT1の二次巻線TL12の一端側にアノードが接続されたダイオードD1と、トランスT2の二次巻線TL22の他端側にアノードが接続されたダイオードD2と、トランスT1の二次巻線TL12の一端側にカソードが接続されたダイオードD3と、トランスT2の二次巻線TL22の他端側にカソードが接続されたダイオードD4とを含む。ダイオードD1とD2とはカソードが共通に接続され、ダイオードD3とD4とはアノードが共通に接続されている。合成回路SUMは、ダイオードD1とD2とのカソード共通接続部aと、ダイオードD3とD4とのアノード共通接続部bとに並列接続された抵抗Rを含む。
【0018】
以上の構成を備えたDC/DCコンバータにおいて、トランス一次側TPにおける駆動回路V1は図2(a)で示す波形のパルス出力S1を出力している。同トランス一次側TPにおける駆動回路V2は図2(b1)ではパルス出力S1と同相のパルス出力S2を出力し、図2(b2)ではパルス出力S1に対して90度位相遅れのパルス出力S2を出力し、図2(b3)ではパルス出力S1に対して180度位相遅れのパルス出力S2を出力している。これらパルス出力S1,S2の周波数はf0で同一である。
【0019】
トランス一次側TPの駆動回路V1では図2(a)で示す周波数f0のパルス出力S1でスイッチング素子回路SW1をスイッチング駆動する。この場合、スイッチング素子Q1には、直接、パルス出力S1が、また、スイッチング素子Q2にはパルス出力S1が反転回路INV1で位相反転されて印加され、これによりスイッチング素子Q1,Q2は交互にオンオフする。これにより共振回路RS1にその周波数f0に対応するスイッチング素子回路SW1出力が入力され、共振回路RS1はこの出力に共振する。この結果、トランスT1の一次巻線TL11から二次巻線TL12の両端間に図3(a)で示す正弦波形の交流出力VS1が誘起される。
【0020】
また、トランス一次側TPの駆動回路V2では図2(b1)で示す周波数f0のパルス出力S2でスイッチング素子回路SW2をスイッチング駆動する。この場合、スイッチング素子Q3には、直接、パルス出力S2が、また、スイッチング素子Q4にはパルス出力S2が反転回路INV2で位相反転されて印加され、これによりスイッチング素子Q3,Q4は交互にオンオフする。これにより共振回路RS2にその周波数f0に対応するスイッチング素子回路SW2出力が入力され、共振回路RS2はこの出力に共振する。この結果、トランスT2の一次巻線TL21から二次巻線TL22の両端間に図3(b1)で示す正弦波形の交流出力VS2が誘起される。
【0021】
図2(a)のパルス出力S1と図2(b1)のパルス出力S2とは同相であるので、トランスT1の二次巻線TL12の両端間における図3(a)で示す正弦波形の交流出力VS1とトランスT2の二次巻線TL22の両端間における図3(b1)で示す正弦波形の交流出力VS2とは同相である。
【0022】
また、同様に、図2(a)のパルス出力S1と図2(b2)のパルス出力S2とは90度位相ずれしているので、トランスT1の二次巻線TL12の両端間における図3(a)で示す正弦波形の交流出力VS1とトランスT2の二次巻線TL22の両端間における図3(b2)で示す正弦波形の交流出力VS2とは90度位相ずれしている。
【0023】
さらに同様に、図2(a)のパルス出力S1と図2(b3)のパルス出力S2とは180度位相ずれしているので、トランスT1の二次巻線TL12の両端間における図3(a)で示す正弦波形の交流出力VS1とトランスT2の二次巻線TL22の両端間における図3(b3)で示す正弦波形の交流出力VS2とは180度位相ずれしている。
【0024】
そして、トランス二次側TSの整流回路DCでは、トランスT1,T2それぞれの二次巻線TL12,TL22の両端間電圧VS1,VS2それぞれを整流し、また、合成回路SUMでは整流回路DC出力を合成するが、二次巻線TL12,TL22の両端間電圧VS1,VS2が図3(a)と図3(b1)の関係にある場合では、図4(a)で示すように合成回路SUMにおける抵抗Rの両端間電圧つまりDC/DCコンバータの出力電圧VOはそれら両端間電圧VS1,VS2の合成ベクトルとなり最大の値をとる。また、二次巻線TL12,TL22の両端間電圧VS1,VS2が図3(a)と図3(b2)の関係にある場合では、図4(b)で示すように該出力電圧VOはそれら両端間電圧VS1,VS2の合成ベクトルとなりVO=√2VSとなる。ただし、VS1=VS2=VSとする。また、二次巻線TL12,TL22の両端間電圧VS1,VS2が図3(a)と図3(b3)の関係にある場合では、図4(c)で示すように該出力電圧Voはそれら両端間電圧VS1,VS2の合成ベクトルとなりVo=0となる。
【0025】
以上からトランス一次側TPにおける駆動回路DV1,DV2それぞれのパルス出力S1,S2の周波数をf0とし、パルス出力S1に対してパルス出力S2の位相を制御することで、DC/DCコンバータの出力電圧Voを任意の値に制御することができる。
【0026】
なお、上記実施形態ではトランスは2つであったが、それ以上の数のトランスで構成してもよい。
【0027】
また、上記実施形態では電源PV1は太陽電池であったが、これ限定されず、風力発電における電源や電気自動車等の電池電源、その他を含む。
【0028】
以上のように本実施形態では、トランス一次側TPと、トランス二次側TSと、を含み、トランス一次側TPは、複数のトランス一次巻線TL11,TL21と、各トランス一次巻線TL11,TL21に個別に接続され所定周波数f0で共振する複数の共振回路RS1,RS2と、直流電源PV1の入力電圧Viを所定周波数f0でスイッチングして各一次巻線TL11,TL21に個別に印加する複数のスイッチング素子回路SW1,SW2と、上記各スイッチング素子回路SW1,SW2を個別に所定周波数f0でスイッチング駆動する複数の駆動回路DV1,DV2と、を含み、トランス二次側TSは、互いに直列接続される複数の二次巻線TL21,TL22と、各二次巻線出力をそれぞれ整流する複数のダイオードD1−D4を含む整流回路DCと、整流回路DC出力を合成する合成回路SUMと、を含み、トランス一次側TPの駆動回路DV1,DV2は、太陽電池PV1からの入力電圧Viに対してその周波数をf0の同一に維持し、かつ、その位相を変えることでトランス二次側TSの合成回路SUMにより合成される出力電圧Voの大きさを可変する制御を可能としたので、トランス一次側TPそれぞれで駆動回路DV1,DV2のパルス出力S1,S2の位相を制御することでもって、太陽電池PV1のように入力電圧Viの変化範囲を大きい電源に対して、容易に出力電圧Voの大きさを0−2倍の内の一定に調整することができる。また、一定の周波数f0でトランスT1,T2を駆動するので、トランス一次側TPにおける共振回路RS1,RS2のQ値を大きくして高効率に電力伝送することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
TP トランス一次側
DV1,DV2 駆動回路
SW1,SW2 スイッチング素子回路
RS1,RS2 共振回路
TS トランス二次側
DC 整流回路
SUM 合成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス一次側と、トランス二次側と、を含み、
上記トランス一次側は、複数のトランス一次巻線と、各トランス一次巻線に個別に接続され所定周波数で共振する複数の共振回路と、直流電源の入力電圧を所定周波数でスイッチングして各一次巻線に個別に印加する複数のスイッチング素子回路と、上記各スイッチング素子回路を個別にスイッチング駆動する複数の駆動回路と、を含み、
上記トランス二次側は、互いに直列接続される複数の二次巻線と、各二次巻線出力をそれぞれ整流する複数のダイオードを含む整流回路と、上記整流回路出力を合成する合成回路と、を含み、
上記トランス一次側の各駆動回路は、直流電源からの入力電圧に対してその周波数を同一に維持し、かつ、その位相を変えることでトランス二次側で合成回路により合成される出力電圧の大きさを可変する制御を可能とした、
ことを特徴とする電圧制御回路。
【請求項2】
上記トランス一次側の上記複数のスイッチング素子回路は、それぞれ、ハーフブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含み、上記複数の駆動回路は、それぞれ、対応する上記ハーフブリッジ回路内の各スイッチング素子を一定の同一周波数でかつ180度反対位相で交互にオンオフ駆動する、請求項1に記載の電圧制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−222998(P2012−222998A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87921(P2011−87921)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】