説明

電子キャンバス装置

【課題】本発明は、会議などに用いられる、電子黒板装置を拡張した装置に関するものである。
特に、プレゼンテーションのみならず、フルカラー絵画などの描画が可能なキャンバス装置に関するものである。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、色の混合が可能な筆記具と、筆記具によって混合色で筆記が可能な筆記用シートと、この筆記用シートを保持する本体と、本体を支える脚部と、前記筆記面の筆記画像を読み取る読み取り装置と、読み取った画像を記録する記憶手段と筆記画像を消去するイレイサーを有することを特徴としている。
また、描きやすくするため、筆記面が、前後、左右に傾斜することが可能な構造を特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会議などに用いられる、電子黒板装置を拡張した装置に関するものである。
特に、プレゼンテーションのみならず、通常の画材を用いた絵画などの描画が可能なキャンバス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子黒板装置は、白色の書込みシートに、マーカーで文字や図形を筆記すると共に、この筆記した表面を光学センサーにて画像情報として読み取り、読み取った画像情報を縮小して紙に印刷し、或いは記録する機能を有することを特徴としている。
【0003】
電子黒板装置は、本来的に利用者がマーカーによって筆記し、イレーサーによってその筆記を消去するものであり、書きやすく、消しやすいことに重点がおかれており、筆記シートとして光沢のあるフィルムが用いられている。
【0004】
また、筆記には黒色、赤色、青色、緑色のマーカーが用いられ、これらのマーカーは色の重ね合わせができない。
例えば、赤色のマーカーで筆記した上に緑色のマーカーで筆記すると、下の赤色の筆記は削り取られ、緑色の筆記のみ筆記シートに残る。
【0005】
【特許文献1】特開平2002−249691号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電子黒板装置は、会議におけるプレゼンテーション専用の装置であり、種々のマーカーを用いても描けて、種々のイレーサーを用いても簡単に消去でき、また長期間放置した筆記も簡単に消去できることを目的としている。
また、白黒での印刷を主な目的としているため、白黒の2値化を行っている。
このため、例えば、フルカラーでの水彩画の描画や、白黒であっても、グラデーションを用いた絵を描くことには利用できなかった。
また、カラー印刷可能な電子黒板であっても、マーカーによる色の混合色はできない点や、会議の議事録用の筆記については、色の再現性は特に要求されないため、フルカラーの階調表現はできない。
【0007】
上記特許文献1には、電子黒板のスクリーンに、インクジェットによって、書込む技術が示されている。
しかしながら、これは、例えばパソコンで作成した画像などを、筆記スクリーンに印刷する技術であり、利用者が、画材で筆記することは考慮されていない。
印刷の場合、各色のインクは夫々重ねることなく離間して配置し、各色のドットの大きさで色を表現している。
これに対して、画材で直接筆記する場合、各色の重なりで、混合色を表現する。
従って、印刷と筆記とでは、色の表現手法は異なったものであり、技術的にも異なったものである。
【0008】
本発明は、従来の限定した用途の電子黒板装置の用途を拡張するためになされたものであり、大画面において、絵画などの作成が可能であり、かつ作成された絵画を読み取り、記憶することが可能な電子キャンバス装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、色の混合が可能な筆記具と、筆記具による混合色での筆記が可能な筆記用シートと、この筆記用シートを保持する本体と、前記筆記面の筆記画像を読み取る読み取り装置と、読取った画像を記録する記憶手段と筆記画像を消去するイレーサーを有することを特徴としている。
【0010】
尚、従来の電子黒板装置は、大型スキャナとしての利用はある程度は、行えるが、会議の議事録の記録を主な目的としおり、筆記画像の色再現性、階調表現などは考慮されていない。
現在、例えば、写真などのフルカラー原稿を読み取るスキャナーとしては、大型のものでもA3程度のものしか存在しない。
これに対して、本発明によれば、写真画質のフルカラー画像を読み取ることが可能な大型のスキャナとして利用が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大画面でポスターや絵画を作成することが可能となり、また、その作成した作品をフルカラーの画像データとして記録することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
以下、図に沿って本発明の一実施例を説明する。
図1は本発明の一実施例を示す正面図である。
1は電子キャンバス装置本体、2は本体1の表面において、筆記具によって描画を行う筆記シート、3は筆記シートの筆記画像を読取る読み取り装置、4はこの読み取り装置の前面に設けられた操作パネル、5はこの読み取り装置3を手動で動作させるための取っ手部、6は手動で読取動作を行うための操作スイッチ、7は本体1を傾斜されるためのスイッチ、8は本体1を支える脚部である。
【0014】
操作パネル4には、図示しないモータを駆動して、筆記シート2を移送する動作を行うスイッチ、読取動作を行うスイッチ、印刷を行うスイッチ、図示しない外部記憶装置に読取データを転送するスイッチなどが設けられている。
尚、図示しないプリンタ、外付けメモリを接続する端子が、本体下面に設けられている。
【0015】
筆記シート2は、鉛筆、木炭、或いは水彩絵の具での描画が可能で、かつ容易に消去することが可能な樹脂性のシートであり、例えば、特開2005−28602号に記載されたシートを用いる。
この筆記シートは、例えば、ポリプロピレンなどの基材シート上に、シリコーン粒子からなるマット材とアクリル系ポリマーからなる剥離材を固定したものである。
【0016】
この筆記シート2は、エンドレスに環状に繋がれている。
図示しないローラーによって左右端が張力を持って、本体1に保持されており、このローラの1つはモータによって回転駆動される。
従って、筆記面は本体表面に露出した第1の面及び、本体裏面に位置する第2の面の2面が利用できる。
【0017】
読み取り装置3は、筆記シート2面上を移動しながら、筆記面を読み取る装置であり、読み取り装置3内には、図示しないが、光源としての半導体発光素子、CIS型画像読み取センサ、微小光学系、移動用モータが内蔵されている。
また、この読み取り装置3のケース表面には操作パネル4が設けられており、この操作パネル4の読取スイッチをオンすることにより、読み取り装置3は、本体1の上面に設けられたレールに沿って移動すると共に、筆記シート2の筆記面を連続的に読み取っていく。
連続的に読み取られた縦長の、複数の画像データは、画像メモリ上に展開され、1つの画像データが記録される。
【0018】
このような読み取り装置移動用モータの駆動による、自動的な読み取りモードの他に、本実施例装置では、手動で読み取るモードを有している。
手動読み取りモードは、読み取り装置3に設けられた手動用スイッチ6をオンにして、取っ手部5を持ち、筆記シート2上を移動させることで動作する。
手動用スイッチ6をオンにすると、移動用モータが回転駆動されることなく、前述の光源が駆動されると共に、移動用モータの位置信号(回転数信号)に基づいて、所定の移動(所定の回転数)毎に、読み取センサの読取動作が連続的に行われる。
手動用スイッチ6をオフにすることにより、光源はオフとなり、読取動作も終了する。
【0019】
尚、手動モードでは、所定の位置で手動用スイッチ6をオンにして、所定の移動後手動用スイッチ6をオフにすることによって、筆記シート2の部分的な読取が可能である。
【0020】
尚、従来の電子黒板装置は筆記面を、多数の人に見せることを主な目的としているため、本体は地面に対して垂直に固定されている。
しかしながら、本発明の電子キャンバス装置では、見せることよりも、描きやすさが求められる。
このため、本体1は、脚部8に対して前後、左右の傾斜可能な構造を有している。
【0021】
図2に本体1を後に傾斜させた実施例を示す。
本体1の側面に設けられた傾斜用スイッチ7を押すことで、脚部8との接合点を中心に回転することが可能となる。
所定の傾斜角度で、傾斜用スイッチ7を離すと、その傾斜角度で、本体1は脚部8に固定される。
【0022】
図3に本体2を左右に傾斜させた実施例を示す。
本図は、電子キャンバス装置の背後を表している。
リング状の本体保持用部材9が、脚部8に回転可能に取り付けられており、この本体保持用部材9のリングの中央の円形の開口部には、この開口に係合する本体の円柱部10が回転可能に保持される。
前述の傾斜用スイッチ7を押すことで、この円柱部を中心に本体1は、回転することが可能となる。
所定の傾斜角度で、傾斜用スイッチ7を離すと、その傾斜角度で、本体1は脚部8に固定される。
【0023】
例えば、右手で、右斜め下に斜線を描く困難性を解消するため、本体の右側を上になるように傾斜させると、描きやすくなる。
本筆記シート2は、鉛筆や木炭、水彩絵の具などの利用が可能であり、また、描いた画像は容易に消去できる。
尚、従来の電子黒板装置では、専用のマーカーでのみ筆記が可能であったが、本装置では、筆の利用が可能である。
【0024】
このため、絵の具が筆記シート2からたれることがある。
この絵の具のたれが、地面を汚すことを防止するため、本実施例装置では、図4に示すように、トレイ11によって、絵の具のたれを回収するような構造としている。
筆記シート2の下端部は、絵の具のたれが、本体との隙間に表面張力で吸い上げられないように、本体1は凹部を形成しかつ傾斜を設けて、トレイ11と接合している。
また、第1の面に描いた筆記シートを移送し、第2の面に描く場合、本体の後側で、絵の具がたれる場合も想定されるため、本体の裏面にも同様の加工が施されている。
また、本体裏面の後カバー12の下には、後トレイの清掃を可能とするため、開口を設けている。
【0025】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、例えば、操作パネルは、本体に設けてもよい。
また、本体にパソコンとの接続端子を設け、パソコンで読取動作などを制御し、読取画像データをパソコンに取り込んでもよい。
更に、前後の傾斜、左右の傾斜を行う機構はどちらか一方だけであってもよい。
また、画材の収納ケースを本体或いは、脚部に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、電子黒板装置の用途を拡張したものであり、フルカラーで従来の水彩画の描画および、フルカラーでの読込みが可能となり、デザイン制作や、学校などでの絵画の学習などに利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施例の形態に係る主要な構成を示す正面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例を後に傾斜させた状態を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例を左右に傾斜させた状態を示す後面図である。
【図4】図4は、本発明の実施例の形態に係る本体トレイの構成を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1:本体
2:筆記シート
3:読み取り装置
6:手動用スイッチ
7:傾斜用スイッチ
8:脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色の混合が可能な筆記具と、筆記具による混合色での筆記が可能な筆記用シートと、この筆記用シートを保持する本体と、本体を支える脚部と、前記筆記面の筆記画像を読み取る読み取り装置と、読み取った画像を記録する記憶手段と筆記画像を消去するイレーサーを有することを特徴とする電子キャンバス装置。
【請求項2】
前記筆記具は毛筆型の筆記具であることを特徴とする請求項1項記載の電子キャンバス装置。
【請求項3】
前記読み取り装置は、筆記用シート上を走査する自走式読み取り装置であると共に、この読み取り装置に操作パネルを有することを特徴とする請求項1項記載の電子キャンバス装置。
【請求項4】
前記読み取り装置は、手動で走査するモードを有することを特徴とする請求項3項記載の電子キャンバス装置。
【請求項5】
前記本体は傾斜可能に、前記脚部に保持されることを特徴とする請求項1項記載の電子キャンバス装置。
【請求項6】
前記本体は、前後、左右に傾斜可能に、前記脚部に保持されることを特徴とする請求項5項記載の電子キャンバス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−23325(P2009−23325A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211956(P2007−211956)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000113034)プラスビジョン株式会社 (70)
【Fターム(参考)】