説明

電子ビーム殺菌デバイスの制御方法及びその方法を実施するデバイス

電子ビーム殺菌デバイスは、電子発生フィラメントと、ビーム成形器と、出力窓と、電子の加速用に電子発生フィラメントと出力窓との間に高電圧を生成させる高電圧源と、電子発生フィラメントを通る駆動電流を流すための高電圧源と、電子ビーム殺菌デバイスの動作を制御するための制御ユニットとを備える。本デバイスは、電子発生フィラメントを通る駆動電流が存在しないオフ状態と、電子発生フィラメントが殺菌用の電子を発生させる放出温度以上に保たれるオン状態と、電子発生フィラメントが放出温度直下の所定の温度に保たれるオフ状態とオン状態との間のスタンバイ状態との少なくとも三つの動作状態を有し、制御ユニットが、電子ビーム殺菌デバイスをスタンバイ状態にあるように制御することができることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ビーム殺菌デバイス、特にパッケージング容器用のパッケージングラミネートの殺菌用に構成されたそのようなデバイスの制御方法に関する。また、本発明は、その制御方法を用いた殺菌デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム殺菌デバイスは既知であり、殺菌目的でパッケージラミネート等の材料のウェブに電子を放出する。殺菌レベルは、壁に与えられる照射線量によって決められる。与えられる照射線量が低過ぎると殺菌は十分なものではなく、照射線量が高過ぎると、パッケージングラミネートに悪影響がある。悪影響としては、パッケージングラミネートから形成されるパッケージング容器内の最終製品の味が影響されること(味が落ちる問題)や、パッケージングラミネートが変形及び/又は損傷することが挙げられる。パッケージングラミネートが飲料等の食品用の容器として使用される場合には、味が落ちる問題が考慮しなければならない問題であることは明らかである。
【0003】
照射線量は、特に照射強度及び照射時間によって影響される。また、電子ビーム殺菌デバイス出口と照射される表面との間の距離によっても影響される。
【0004】
全てのパラメータが何ら制約無しに変更可能である状況では、電子ビームによってパッケージングラミネートを殺菌することの問題は、難しいものではない。しかしながら、現代の食品処理工場では、膨大な数のパッケージング容器が、速いペースで製造、殺菌、充填及び密封されていて、その条件は大きく異なるものである。例えば、要求されるペースが高いと、殺菌機器は高速で動作しなければならない。
【0005】
パッケージングラミネートは一般的に、大きな材料ロールで充填ステーションに提供される。ロールは解かれて、パッケージング容器が形成、充填及び密封される実際の場所にウェブとして導入される。パッケージングラミネートのウェブは、電子照射によって殺菌され得る。このプロセスの当面の問題は、停止の発生である。何ら措置を講じないと、ウェブの同じ領域が過度の長期間にわたって照射されて、材料の破壊が避けられず、これは、材料の欠陥や味が落ちる問題につながり得る。
【0006】
上記のことの一般的なアイディア及び特定の実施形態については同一出願人の特許文献1に記載されている。
【0007】
また、本発明は、個々のパッケージング容器の殺菌用の電子ビーム殺菌デバイスにおいても利用可能であり、追加的な利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第04/110868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、本願独立項に従った改良された電子ビーム殺菌デバイス及びその制御方法を提供することによって、上述の問題を解消又は低減することである。好ましい実施形態については従属項に定められている。以下において、“ビーム形状”との用語は、伝播方向に垂直な方向におけるビーム強度プロファイル(ビームプロファイル)に対するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】材料のウェブを照射するように配置された電子ビーム殺菌デバイスの長さ方向に垂直な平面内の断面図である。
【図2】材料のウェブを照射するように配置された本発明の第一の実施形態による電子ビーム殺菌デバイスの長さ方向に平行な平面内の断面図である。
【図3】第一の実施形態による本発明の方法を例示する概略的なフローチャートである。
【図4】本発明の第一の実施形態による殺菌デバイスの概略的な断面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態による殺菌デバイスの概略的な断面図である。
【図6】本発明の第一の実施形態による殺菌デバイスの概略的な断面図である。
【図7】本発明の第一の実施形態による殺菌デバイスの概略的な断面図である。
【図8】本発明の第二の実施形態による殺菌デバイス用の異なる動作モードを示す図5〜図7と同様の部分図である。
【図9】本発明の第二の実施形態による殺菌デバイス用の異なる動作モードを示す図5〜図7と同様の部分図である。
【図10】本発明の第二の実施形態による殺菌デバイス用の異なる動作モードを示す図5〜図7と同様の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1を参照して、電子ビーム殺菌について簡単に説明する。図1は、パッケージングラミネートのウェブ3を備えてレジスタ内に配置された電子ビーム殺菌デバイス2つまりエミッタを示す。殺菌デバイス2は、基本的には電子銃として動作して、一般的に、高電圧源8に接続されている電子ビーム発生器6を備える。発生器6は、自由電子を発生させているフィラメント10を備え、そのフィラメントは、その目的のためのフィラメント電源12に接続されている。フィラメント10は一般的にタングステン製であり、その基本的な機能は、2000℃のオーダ等の高温に加熱された際に電子雲eを放出することである。
【0012】
フィラメント10にはグリッド14が隣接し、グリッド制御電源16によってグリッド14に正又は負の電圧を印加すること又は印加しないことによって、フィラメント10で発生した電子がグリッド14を出て行く又は出て行かない。これらの構成要素は真空チャンバ15内に配置されている。カソード筐体28は、ビーム成形器として機能し、放出される電子に肯定的な影響を与える。基本的に、本デバイスの大抵の構成要素は、電子の経路に否定的な影響を与えないように設計されているという意味において少なくともパッシブなビーム成形器である。このため、参照符号28が図2の複数の構成要素に対して使用されている。一般的に、カソード筐体及びその電場成形素子は以下の二つの目的を果たす: 第一に、形状、特に半径は電場強度が過度なものにならないように設計され、第二に、隆起素子128の形状及び幾何学的構成は、ビームプロファイルが最適なものになるように設計される。
【0013】
また、図1に示されるようなフィラメント10から出口窓18への電子経路は例示的なものに過ぎず、実際の電子経路を反映していないことは理解されたい。
【0014】
デバイス2の出力端に出口窓18が配置されていて、出口窓に向かう間に電子が高電圧電場で加速される。高電圧電場の電位差は一般的に300kV以下であり、本発明の目的に対しては、70〜120kVのオーダであり、出口窓18を通過する前に、電子ビーム20の各電子に対して70〜120keVの運動エネルギーが与えられる。しかしながら、他の応用では、上限がより高くなり得て、他の設定では下限もより低くなり得るので、例示的な値は、本発明を限定するものではない。出口窓18は一般的にチタン等の金属箔であり、4〜12μmの厚さを有し、アルミニウム、銅又は他の適切な材料製の支持ネット19によって支持されている。支持ネットは、デバイス内部の真空によって箔が壊れるのを防止する。更に、支持ネットは、ヒートシンク又は冷却素子として機能して、箔から熱を逃がす。アルミニウムは、製造プロセス中の条件下において劣化する傾向があるので、銅が本願の目的に対して好ましい代替物になるが、他の代替物も可能である。
【0015】
図2は、材料のウェブを照射するように配置された本発明の第一の実施形態による電子ビーム殺菌デバイスの長さ方向に平行な平面内の断面図である。理解を容易にするため、図1と同じ参照符号を用いている。
【0016】
出口窓18から出て行くと、電子20は、空気中の通常圧力及び温度ではブラウン運動に従って、5〜50mmの最適作動距離(この場合は作動半径)を有する。特定の例では、ポリエチレン中の略10μmの殺菌深度で、76kVの電圧に対して5mm、80〜82kVの電圧に対して17mmである。エミッタの周りの周囲環境の雰囲気を変更することによって、作動距離が変更され得る。圧力を50%低下させることは基本的に、作動距離を二倍にし、雰囲気中の気体を空気から窒素又はヘリウムに交換することも、作動距離に影響する。また、酸素フリーな雰囲気を生成することは、オゾンが発生しないことにもつながる。
【0017】
ウェブ3を殺菌する際、二つの電子ビーム殺菌デバイスを並べて“ウィンドウ・ツー・ウィンドウ”に配置して、ウェブの両面を殺菌することが考えられる。この方法では、連続的な殺菌領域がウェブ3の両面に形成されて、ウェブの殺菌を完全に制御することができる。実用面については、同一出願人による上記特許文献1で更に説明されている。
【0018】
本発明の制御方法によると、電子ビーム発生器に接続されている高電圧ユニット8の電圧は、フィラメントからの電子放出を制御するように制御される。停止期間中に電圧を完全にキャンセルする代わりに、単にフィラメント10を通る電流を、本質的に電子が発生しないレベルに低下させる。こうすることによって、複数の利点が得られる: 第一に、電子ビーム発生器に対して電圧源を完全に乱すことなく、加速電圧を乱すことなく、又は停止中に電子の放出を乱す他の動作を行うことなく、本発明によって電子の放出が制御可能になる。第二に、電子の放出を再開する際に、電圧の上昇、又はフィラメント温度の上昇が劇的なものにならず、1000Kのオーダではなくて数100Kのオーダになる。これは、放出無しから放出への移行を高速にすることを意味する。また、フィラメント10の負荷が大きくない。また、本発明の制御方法は、図3を参照して説明されるように電子の放出が急速に変更される場合にも使用可能である。
【0019】
上記の一例は、2200Kのフィラメント温度が適切な電子の放出をもたらす一方で、1850Kのフィラメント温度が、それまでの値の1パーセントに放出を低下させるというものであり、これは本発明の目的には十分である。より低い温度への低下は更に放出を低下させる。
【0020】
本方法は、図4から図10を参照する他の実施形態に関して説明されるグリッド電圧制御と組み合わせることが有用であり得る。
【0021】
以上の説明及び以下の説明においては、同様の構成要素は下二桁が同一の参照符号を共有する。
【0022】
本発明の方法は、パッケージング容器用の殺菌デバイスにも適用可能であり、以下、図4〜図10を参照しながら詳述する。これは、本発明の第二の態様に関し、デバイスのオン及びオフを急速に切り替えることができることを利用する。まず、この分野における本発明の使用に関する背景を説明する。
【0023】
図4は、図1のデバイスとは異なる構成を有する電子ビーム殺菌デバイス102を示すが、主な構成要素は対応していて、フィラメント110の形状の電子ビームエミッタ、グリッド114、及び出力窓118につながる加速空間が示されている。また図4には、“ビーム成形器”128も示されている。ビーム成形器128でフィラメントと窓との間の電場に影響を与えることによって、電子ビームを適切にコリメート(又はフォーカス/デフォーカス)することができる。ビーム成形器128の機能は、当該分野においては周知であり、複数の異なる変形例が可能である。端的には、ビーム成形器の目的は、電子を加速する電場を成形すること、つまりは電子をその経路内に導くことである。ビーム成形器は、電子の経路の前に及び電子の経路に沿って配置された複数の構成要素を備えることができる。図4のデバイスは、RTF(ready‐to‐fill)パッケージング容器(図示せず)等の殺菌対象内に挿入されるように構成されている。
【0024】
図4のデバイスと従来技術のデバイスの主な違いは、グリッド114が少なくとも二つの動作部分を備える点である。図示される実施形態では、半径方向に内側のグリッド114b(以下では内側グリッドとする)及び半径方向に外側のグリッド114a(以下では外側グリッドとする)が存在する。グリッド114a及び114bは電圧によって個別に制御可能である。このことは、変更可能な電圧をグリッド114a、114bのいずれか一方又は両方に印加して、好ましいビーム構成、例えば好ましいビームプロファイルを得ることができることを意味する。
【0025】
図示される実施形態では、内側グリッド114b及び外側グリッド114aに印加される電圧を制御することによって、電子が外側グリッド114aを通ることを防止して小半径のビーム形状を生成すること(図7を参照)、電子が内側グリッド114bを通ることを防止して環状のビーム形状(ドーナツ型プロファイル)を生成すること(図6を参照)、又は両方のグリッドを通過することを許容して、シリンダー状ビーム形状(本質的に一様)を生成すること(図5を参照)が可能になる。電子のビーム経路は、実線120によって示されている。グリッド114a、114bに印加される電圧は正又は負のいずれでもあり得る点に留意されたい。更に、グリッド114a、114bに印加される電圧は非常に高いものではなく、±100Vのオーダである点に留意されたい。図示される実施形態では、−30〜−40Vの電圧を用いて、電子の通過を効率的に遮断する。図2を参照して説明される実施形態に対しては、対応する電圧は略−150Vである。より高い電圧(図2の実施形態に対して−80V)を印加することによって、電子がグリッドを通過することができる。このことは、異なるビーム形状モード間の切替が、基本的には電圧が切替可能なのと同じ速さで実施可能であり、デバイスを多用途なものにすることを意味する。更に、本発明のデバイスは空間効率的なものであり、高殺菌性能を限られた空間内に収めることができる。
【0026】
グリッド114は、適切な導電性で機械加工可能な材料、一般的には金属製である。図示される実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。グリッド114の形状は、結果物のビームの所望の形状に適合されていて、一般的には、グリッドは、電子の通過可能な孔を備えた金属プレート又はワイヤメッシュである。グリッド114のソリッド部分は、適切な特性の電場を発生させる目的と、フィラメント表面における電場強度を制御することによってフィラメント110からの電流を調節する目的とを有する。孔は、円形、楕円形、スリット状、六角形(グリッドをハニカム形状にするため)等であり得る。高電場勾配がフィラメントに達するとグリッドの意図した目的を邪魔するので、孔は大き過ぎないことが望ましい。
【0027】
本発明のコンセプトによる代替的なデバイスの制御方法が提供される。図8〜図10は、デバイスの実施形態を示し、フィラメント210は、少なくとも二つの個別に制御可能な部分、半径方向に内側のフィラメント210b及び半径方向に外側のフィラメント210aを備える。これらの図面は、フィラメント210a、210b、グリッド214、及びビーム経路の第一の領域を含む部分図である。本実施形態は、上述の実施形態の二つのグリッド114a、114bで実施されるものと同様に、フィラメント210a、210bの制御によってビーム形状及びビーム電流の制御を可能にする。図8は外側フィラメント210aを環状のビーム形状用に作動させる様子を示し、図9は内側フィラメント210bを小半径のビーム形状用に作動させる様子を示し、図10は両方のフィラメント210a、210bを完全なシリンダー状のビーム形状用に作動させる様子を示す。電子のビーム経路は実線220によって示されている。本発明の方法を用いてフィラメント210a及び210bを動作させることができて、フィラメントの損耗を最小化しながら、フィラメントを高速にオン及びオフに切り替えることができる。この場合、フィラメントの制御用の入力は、殺菌対象に対する相対的なデバイスの位置であり得る。
【0028】
図示しない他の実施形態では、図8〜図10のデバイスが、グリッドが除去されるように変更される。本実施形態では、電子の放出は、純粋にフィラメントの制御によって制御される。他の実施形態では、二つフィラメントを用いるが、一つのグリッドがフィラメントの両方又は一方のみを覆うように変更可能である。
【0029】
更に他の実施形態では、上述の二つの実施形態を組み合わせて、二つ以上のグリッド及び二つ以上のフィラメントを備え、更に優れた制御性を得ることができる。
【0030】
他の実施形態では、フィラメントが、長さ及び直径に関して設計され得て、直径方向に接続される場合には、同一の電流で最適な放出へと加熱可能である。この場合、一つのフィラメント電源のみが必要である。更に他の実施形態では、一つのグリッドのみが使用される。グリッドは、一つのフィラメントをそれぞれ覆う二つの同心部分を有し、例えば、外側部分が、内側部分よりも下流にある。従って、グリッド電圧が無いと、両方のビームがオンになる(広いビーム)。負のグリッド電圧を増大させていくと、まず外側ビームが遮断されて、内側ビームはアクティブなままである(狭いビーム)。その後、内側ビームも遮断される(ビームオフ)。このような構成では、切り替え及び電流の制御機能を、一つのグリッド電源のみでなすことができる。
【0031】
電流制御は、フィラメント設計及びフィラメント加熱電流によってなされる。放出電流の非常に高速な微調整は、グリッド電圧を制御することによって行うことができる。これは、両方の場合、つまり、全ビームの場合と内側ビームのみの場合に行うことができる。
【0032】
上述の実施形態の特性は、当業者によって組み合わせられ得て、また、特定の実施形態の一つの特徴の利点は、他の実施形態の同一又は同様の利点にもたらされるものとして理解されたい。
【0033】
本発明のこの態様が二つのフィラメント(又はグリッド)のものに限定される訳ではない点に留意されたい。個々の動作フィラメントの数は、結果物の電子ビームの適切な性能が得られるようにデバイスの物理的制約内において変更可能である。特定の一例は、外側フィラメントからフィラメントへの段階的な移行によって、肩部等のパッケージの傾斜内壁に対してより一様な照射を得ることができる。傾斜壁が大きくなるほど、グリッド/フィラメントの数が多くなる。
【0034】
使用時には、これらの実施形態は、同じ目的で基本的には同じ方法で用いられる。ビーム形状を急速に変更可能であることは、パッケージの多様な部分に対して適切なビーム形状を選択することを可能にする。デバイスがパッケージの中又は外に並進移動されると、ビーム形状が、デバイスの通過するパッケージの特定部分を殺菌するように調節される。例えば、デバイスが本体部を通過する際には、外側グリッド及び/又は外側フィラメントを作動させることによって、環状のビーム形状が使用され得る。デバイスが肩部に近づくと、両方のグリッド及び/又はフィラメントを作動させることによって、ビーム形状を一様プロファイルに切り替える。首部及び開放デバイスの殺菌用には、内側グリッド及び/又はフィラメントを使用する。このようにして、過度に露光すること無く、全ての箇所において十分な殺菌を達成することができる。
【0035】
異なるビームプロファイル間の移行を極めて高速に行うことができるので、製造ラインの流れに影響を与えること無く、殺菌デバイスが動作可能である。
【0036】
また、実施形態で図示されたような円対称では無い代わりのグリッド及びフィラメントの設計を用いることもできる。その設計は、所望のビーム形状に従い、また殺菌されるパッケージの形状の変化に従って適切に変更可能である。
【0037】
一般的な電子ビーム殺菌デバイスの技術的機能は既知であると思うが、以下において、図8〜図10に示される実施形態によるデバイスの機能についてより詳細に説明する。
【0038】
殺菌の前に、高電圧場を印加する。略−40Vの負電圧を外側及び内側グリッドに印加して、自由電子がグリッドを通過するのを防止する。フィラメントを通る電流を供給して、自由電子の発生が無視できる略1600℃にフィラメントを加熱する。デバイスを殺菌されるパッケージ内に挿入する。代替例では、デバイスを静止させたままで、パッケージをデバイスに通す。他の代替例では、デバイス及びパッケージの両方を並進移動させる。
【0039】
デバイスがパッケージ内に挿入されると、グリッドの電位をより高い値(それでも負であり得る)に設定し、外側フィラメントに印加される電圧を、温度が略2200℃に上昇するようなレベルに設定して、パッケージの本体部の内壁を殺菌するように環状ビームの電子を出力窓から放出する。デバイスがパッケージの肩部に近づくと、外側フィラメントの電位をスタンバイ状態に戻す一方で、電圧を内側フィラメントに印加して、フィラメントの温度を上昇させて、キャップ部の殺菌用の小半径のビームを生成する。例えば、ボトルのテーパ状肩部を殺菌するために必要であれば、一部期間にわたって両方のフィラメントがオン状態である重複が存在し得る点には留意されたい。デバイスの挿入の間において両方のフィラメントがオン状態にあると、環状のビームの代わりに完全なシリンダー状のビームを生成可能である。デバイスが戻されると、上記プロセスを繰り返す。代替的な殺菌プロセスでは、デバイスは挿入又は戻しのいずれかの間のみアクティブである。また、上記のことは、上述のグリッド制御と組み合わせることもできる。このようにして、本発明のコンセプトを、出力ビームを変調する際に利用可能である。
【0040】
使用時には、本発明のデバイスは、照射チャンバ(つまり照射から周囲環境を保護する筐体)内に配置される。殺菌されるパッケージは、実際の照射設計に従って照射の漏れを防止するように照射チャンバ内に入れられる。このことは、ロックゲート、照射チャンバの内部設計及び内部の機能によって、又は単に照射チャンバ内のデバイスが電子を放出していない際にパッケージを入れることによって達成可能である。
【0041】
パッケージの種類は任意であるが、本デバイスは、ポリマーを備えた製品接触表面(内面)を有するパッケージの殺菌に特に適している。RTFパッケージは一般的に、プラスチックのトップを備えた紙のラミネートスリーブで形成された本体部を備える。しかしながら、本デバイスを、医療機器等の他の物の殺菌に使用することもできる。本発明の殺菌デバイスの特徴は高度に順応性があり、多様な形状のパッケージに適した解決策が単純化されて、パッケージの各領域を適切な照射線量に晒すことができる。
【符号の説明】
【0042】
2 電子ビーム殺菌デバイス
3 ウェブ
6 電子ビーム発生器
8 高電圧源
10 フィラメント
12 フィラメント電源
14 グリッド
15 真空チャンバ
16 グリッド制御電源
18 出口窓
19 支持ネット
110 フィラメント
114a 外側グリッド
114b 内側グリッド
118 出力窓
128 ビーム成形器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム殺菌デバイスであって、
電子発生フィラメントと、
電圧源に接続されたグリッド電極と、
ビーム成形器と、
出力窓と、
電子の加速用に前記電子発生フィラメントと前記出力窓との間に高電圧を生成させる高電圧源と、
前記電子発生フィラメントを通る駆動電流を流すための高電圧源と、
前記電子ビーム殺菌デバイスの動作を制御するための制御ユニットとを備え、
前記電子発生フィラメントを通る駆動電流が存在しないオフ状態と、
前記電子発生フィラメントが殺菌用の電子を発生させる放出温度以上に保たれるオン状態と、
前記電子発生フィラメントが前記放出温度直下の所定の温度に保たれる前記オフ状態と前記オン状態との間のスタンバイ状態との少なくとも三つの動作状態を有し、
前記制御ユニットが、前記電子ビーム殺菌デバイスを前記スタンバイ状態にあるように制御することができることを特徴とする、電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項2】
電圧源に接続されたグリッド電極を更に備えた請求項1に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項3】
前記スタンバイ状態が、シャットダウン処理若しくはスタートアップ処理に対する応答、又は出力ビームを変調する処理におけるステップであるとされる、請求項1又は2に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項4】
前記オン状態と前記スタンバイ状態との間のフィラメント温度の差が、600K以下、好ましくは400K以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項5】
前記電子発生フィラメント及び/又は前記グリッド電極が、出力電子ビームの電流及び/又はプロファイルの変更用の少なくとも二つの動作部分を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項6】
前記電子発生フィラメント及び/又は前記グリッド電極が、半径方向に内側の部分及び半径方向に外側の部分の二つの動作部分を備える、請求項3に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項7】
パッケージングラミネートのウェブを殺菌するように構成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項8】
パッケージ、好ましくはポリマーを備えた製品接触表面を有するパッケージを殺菌するように構成されている、請求項1から7のいずれかに一項に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電子ビーム殺菌デバイスを動作させる方法であって、
前記制御ユニットを用いて前記電子発生フィラメントを通る電流を調節することによって、前記電子ビーム殺菌デバイスを前記スタンバイ状態にあるように制御するステップを備えた方法。
【請求項10】
前記スタンバイ状態にあるように前記電子ビーム殺菌デバイスを制御するステップが、
殺菌対象に関連した停止の状況と、
シャットダウン処理が開始されている状況と、
スタートアップ処理が開始されている状況と、
前記オン状態と前記スタンバイ状態との間で出力電子ビームを変調するように前記電子ビーム殺菌デバイスが動作している状況とから成る群の状況のうちいずれかに対する応答として実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電子ビーム殺菌デバイスを前記スタンバイ状態にあるように制御するステップが、電子が前記グリッド電極を通過しないように前記グリッド電極に印加される電位を低下させる追加のステップを備える、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−504981(P2012−504981A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530392(P2011−530392)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006942
【国際公開番号】WO2010/040454
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(593205554)テトラ・ラヴァル・ホールディングス・アンド・ファイナンス・ソシエテ・アノニム (9)
【氏名又は名称原語表記】TETRA LAVAL HOLDINGS & FINANCE S.A.
【Fターム(参考)】