説明

電子ペン、電子黒板システム、およびプロジェクタシステム

【課題】超音波送信部から送信される超音波が反射物にあたって生ずる反射波の発生を抑制する。
【解決手段】電子ペンは、長軸を有する筐体と、筐体の筆記側先端部付近に設けられ、超音波を送信する超音波送信部21a〜21dと、超音波送信部を制御する制御部23とを有している。制御部23は、超音波送信部21a〜21dから送信された超音波を受信する超音波受信部が筐体の長軸周りのどの方位にあるかを示す超音波受信部方位を検出し、超音波受信部方位から離れた方位への超音波の送信を阻止または抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ペン、電子黒板システム、およびプロジェクタシステムに関し、特に、電子ペンの超音波送信機構に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波と赤外線を利用した電子黒板システムが広く利用されている。図10は、従来技術の電子黒板システムの概略構成図である。電子黒板システム101は、電子ペン102と、筆記面S(スクリーン、壁、ホワイトボード等)に取り付けられた超音波受信部3a、3bおよび赤外線受信部4a、4bと、超音波受信部3a、3bおよび赤外線受信部4a、4bに接続された座標検出部5とを有している。超音波受信部3a、赤外線受信部4aは組になって筆記面Sのコーナー部6aに隣接配置されている。超音波受信部3b、赤外線受信部4bも同様に、コーナー部6bに隣接配置されている。
【0003】
図11は、従来技術の電子ペンの概略外形図である。電子ペン102は、一つの長軸Cを有する細長い筐体20を備えた、ペン状の形状をした送信機器である。筐体20の筆記側先端部124付近には、超音波送信部121と赤外線送信部122とが設けられ、同心円状に超音波と赤外線を送信する。このため、電子ペン102の長軸C周りの方位を気にすることなく、人間が通常ペンを使用する持ち方で、超音波および赤外線を超音波受信部3a、3bおよび赤外線受信部4a、4bに到達させることができる。このような構造は特許文献1,2などに記載がある。また、複数の超音波送信部を電子ペンの長軸C周りに等間隔で複数個設ける技術も知られている(特許文献3参照)。なお、本明細書では、「方位」とは電子ペンの長軸周りの回転方向の角度をいう。
【0004】
電子ペン102の先端部が筆記面Sに押し当てられると、超音波送信部121および赤外線送信部122から超音波および赤外線が同時に送信される。図12は、図11の12−12線に沿った断面図である。超音波および赤外線は、同図に示すように、電子ペン102の先端部から同心円を描いて伝播する(同図破線参照)。超音波受信部3a、3bおよび赤外線受信部4a、4bは、伝播してきたこれらの超音波(図10の破線)および赤外線(図10の一点差線)を受信する。図13は、赤外線と超音波の到達時間の差を説明する概念図である。光である赤外線は赤外線受信部4a(または4b)に瞬時に到達する。音波である超音波は赤外線に比べて伝播が遅いため、赤外線よりも遅れて超音波受信部3a(または3b)に到達する。座標検知部5は、赤外線を受信した時点から超音波を受信した時点までの時間t1を測定し、到達時間差からコーナー部6aと電子ペン102(の先端部)との距離D1(図10参照)を算出する。赤外線受信部4b、超音波受信部3bについても同様の処理をおこない、コーナー部6bと電子ペン102(の先端部)との距離D2(図10参照)を算出する。座標検知部5は、算出された距離D1,D2から、三角測量の原理を用いて、電子ペン102の所定の基準点に対する座標を特定する。超音波および赤外線は、図13に示すように、一定の時間間隔で間欠的に送信されるため、特定された座標をつないでいくことで、電子ペン102が筆記面に描いた文字図形情報を電子データとして再現することができる。
【0005】
さらに近年では図14に示すようなミラー光学系による超短焦点のプロジェクタを利用した電子黒板システム(プロジェクタシステム)も開発されている。同図(a)はスクリーンの正面から見た概要図を、同図(b)はスクリーンの側面から見た概要図を各々示している。プロジェクタ67は、赤外光受信部65と、超音波受信部66a,66bとを有している。プロジェクタ67は座標検出部(図示せず)を有し、座標検出部は、赤外光受信部65が受光する電子ペン62からの赤外光パルス63と、超音波受信部66a、66bが受信する超音波パルス64a,64bとの時間差、並びに、プロジェクタ67が計測するスクリーン61までの距離情報とから、スクリーン61上の電子ペン62とプロジェクタ67との三次元座標距離を演算する。赤外光受信部65および超音波受信部66a、66bは、図10の例と異なりプロジェクタ67に集中して配置されているので、赤外線と超音波との到達時間差の基準時間を与える赤外光受信部65は最低限1つあればよい。このような電子黒板システムでは、プロジェクタ本体に超音波受信部と赤外線受信部を有するので特別にスクリーンを用意する必要がなく、場合によっては部屋の壁等を利用することができ、また超音波受信部、赤外線受信部とパソコン等と接続する必要がないという利点がある。このような電子黒板システムの詳細については特許文献4を参照されたい。
【特許文献1】特開2004−192199号公報
【特許文献2】特開平11−237950号公報
【特許文献3】特開平11−203043号公報
【特許文献4】特開2005−115870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、超音波送信部から送信される超音波は、図12に示したように同心円状に広がるため(実際には3次元状に広がる。)、超音波受信部とは異なる方向に送信された超音波は、他の反射物にあたり、反射波となって超音波受信部に到達することがあり得る。電子黒板システムでは、超音波は超音波送信部から超音波受信部に直線ルートで直接到達することを前提としており、このような反射波が存在すると、座標を正確に検出することができない。例えば、反射して、遅れて超音波受信部に到達した超音波が、後から送信され超音波受信部に直線ルートで到達した超音波と重畳されると、本来検出されるべき超音波のパルスが正しく認識されない可能性がある。超音波のパルスが直線ルートで超音波受信部に到達した後、次のパルスが直線ルートで超音波受信部に到達する前に、反射した超音波が到達した場合は、反射波が次に到達するべき超音波のパルスであると誤認識され、同様の問題が生じる。図10に示すような従来の電子黒板システムでは、超音波受信部はスクリーンと略同一平面に取り付けられており、超音波受信部にひさしを付ける等によって超音波受信部に指向性を持たせることにより、反射波の影響を軽減することが可能である。しかし、ひさし部分により超音波受信部が大きくなったり、ひさし部分のコストが余計にかかるという問題が生じる。一方、図14に示すような超短焦点プロジェクタを利用した電子黒板システム(プロジェクタシステム)では、超音波受信部はスクリーン(投射面)と離れて設置されているために、ひさし等により指向性を持たせることは困難である。このような電子黒板システムではプロジェクタと投射面の距離は投射画面のサイズにより異なるため、特定の方向に対して超音波受信機に指向性を持たせることは極めて難しい。
【0007】
本発明はこのような事情に基づいてなされ、超音波送信部から送信される超音波が反射物にあたって生ずる反射波の発生を抑制し、特に受信部に指向性を持たせることが困難な電子黒板システム等において座標の算出精度の改善を可能とする電子ペン、電子黒板システム、およびプロジェクタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子ペンは、長軸を有する筐体と、筐体の筆記側先端部付近に設けられ、超音波を送信する超音波送信部と、超音波送信部を制御する制御部とを有している。制御部は、超音波送信部から送信された超音波を受信する超音波受信部が筐体の長軸周りのどの方位にあるかを示す超音波受信部方位を検出し、超音波受信部方位から離れた方位への超音波の送信を阻止または抑制する。
【0009】
超音波は超音波送信部を中心に全方位に伝播するため、超音波受信部の方位とは異なる方位に伝播する成分は、周囲の床壁や設置物等に反射して、超音波受信部に直接到達する成分よりも遅れて超音波受信部に到達することがある。しかし、本発明の電子ペンは、超音波受信部方位を検出し、その方位から離れた方位への超音波の送信を阻止または抑制するので、周囲の床壁や設置物等に反射して超音波受信部に到達する超音波成分を抑えることができる。
【0010】
超音波送信部は、電子ペンの長軸の周りに互いに異なる方位を向いて複数個設けられ、制御部は、超音波受信部方位を検出する方位検出部と、方位検出部で検出された超音波受信部方位に近い方位を向いた一部の超音波送信部だけを選択作動させる超音波送信部選択部とを有していてもよい。
【0011】
超音波送信部は、電子ペンの長軸を取り囲んで設けられ、制御部は、超音波受信部方位を検出する方位検出部と、超音波送信部の、方位検出部で検出された超音波受信部方位から離れた方位となる部位の作動を抑制する超音波抑制部とを有していてもよい。
【0012】
超音波抑制部は、超音波送信部の周囲に互いに異なる方位で複数個設けられた押圧体と、方位検出部で検出された超音波受信部方位から遠い方位にある押圧体を選択する押圧体選択部と、押圧体選択部によって選択された押圧体を超音波送信部に押圧させる押圧体駆動部とを有していてもよい。
【0013】
超音波送信部は、電子ペンの長軸を取り囲んで設けられ、制御部は、超音波送信部の周囲に異なる方位で複数個設けられた押圧体と、押圧体の各々を、鉛直方向下向きに移動自由に、かつ鉛直方向上向きの方位に近い方位にある少なくとも一つの押圧体が超音波送信部を押圧するように支持する押圧体支持部とを有していてもよい。
【0014】
本発明の電子ペンは、超音波送信部の超音波送信と同期して赤外線を送信する赤外線送信部を有していることが望ましい。
【0015】
本発明の電子黒板システムは、上記の電子ペンと、電子ペンによって筆記される筆記面に互いに離れて配置されるようにされた、少なくとも2つの超音波受信部と、筆記面に超音波受信部の各々と隣接配置されるようにされた、赤外線受信部で受信した赤外線と、隣接する超音波受信部で受信した超音波の受信時間との差を、赤外線受信部と超音波受信部の組毎に算出し、電子ペンの筆記面上での座標情報を計算する座標検出部とを有している。
【0016】
本発明のプロジェクタシステムは、上記の電子ペンと、電子ペンによって筆記される筆記面に画像を投写するようにされたプロジェクタ装置とを有している。プロジェクタ装置は、少なくとも2つの超音波受信部と、超音波受信部の各々と隣接配置された、赤外線を受信する少なくとも1つの赤外線受信部と、赤外線受信部で受信した赤外線と、超音波受信部で受信した超音波の受信時間との差を超音波受信部毎に算出し、電子ペンのプロジェクタ装置に対する3次元座標情報を計算する座標検出部とを有している。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、超音波受信部方位から離れた方位への超音波の送信が阻止または抑制されるので、座標の算出精度の改善が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態) 本発明の電子黒板システムは、電子ペンの構成を除いては従来の電子黒板システムと同じである。すなわち、図10を参照すると、電子黒板システム1は、電子ペン2と、少なくとも2つの超音波受信部3a,3bと、赤外線受信部4a、4bと、座標検出部5とを有している。超音波受信部3a,3bは、電子ペン2によって筆記される筆記面Sの左側コーナー部6a,6bに、互いに離れて配置されている。赤外線受信部4a、4bは赤外線を受信し、筆記面Sに、対応する超音波受信部3a,3bと隣接して配置されている。座標検出部5は、超音波受信部3a,3bおよび赤外線受信部4a、4bと接続されている。座標検出部5は、赤外線受信部4aで受信した赤外線と、超音波受信部3aで受信した超音波の受信時間の差から、コーナー部6aと電子ペン2との距離D1を計算する。同様に、座標検出部5は、赤外線受信部4bで受信した赤外線と、超音波受信部3bで受信した超音波の受信時間の差から、コーナー部6bと電子ペン2との距離D2を計算する。座標検出部5はさらに、距離D1,D2より、電子ペン2の筆記面S上での座標情報を計算する。作動方法の詳細については、背景技術の欄、および図12,13も併せて参照されたい。
【0019】
図1は、電子ペン2の概略外形図である。電子ペン2は、長軸Cを有する細長い円筒形の筐体20と、超音波を送信する超音波送信部21a〜21d(図中には21aのみ表記)と、赤外線を送信する赤外線送信部22とを有している。筐体20の内部には制御部23が、筐体20の筆記側先端部24には指示部29が設けられている。超音波送信部21a〜21dは制御部23と接続されている。
【0020】
図2は、図1の2−2線に沿った電子ペンの先端部付近の断面図である。超音波送信部21a〜21dは、電子ペン2の筐体20の筆記側先端部24付近に、電子ペン2の長軸C周りに90°間隔の方位25a〜25dを向いて設けられている。超音波送信部の個数はここでは4つとしたが任意である。超音波送信部の構成は、小型で超音波の発生が可能なものであれば特に限定されないが、一例では圧電素子からなる振動子26の周りを振動板27で囲んだものが挙げられる。赤外線送信部22は電子ペン2の筆記側先端部24付近に、超音波送信部21a〜21dと同軸に設けられ、超音波送信部21a〜21dの超音波送信と同期して赤外線を送信する。
【0021】
図3は、電子ペンの超音波送信に関連する主要構成要素のブロック図である。制御部23は、方位検出部23aと超音波送信部選択部23bとを備えている。方位検出部23aは超音波受信部3a,3bの方位を検出する。超音波受信部3a,3bの方位とは、ユーザーが電子ペン2を手に持った状態で、超音波受信部3a,3bが筐体20の長軸C周りのどの方位にあるかを示す指標である。方位検出部23aの構造としては、例えば筐体20の内部に設けられた空間内(図示せず)を筐体20の長軸Cと直交する面内で自由に動くボール(図示せず)と、ボールの接触を検知する複数のセンサ(図示せず)とを組み合わせた方式が挙げられるが、これに限定されない。方位検出部23aはさらに、後述する電子ペンの方位判定を行なうための演算部(図示せず)を備えているが、この演算は超音波送信部選択部23bまたは座標検出部5がおこなうようにしてもよい。超音波送信部選択部23bは、方位検出部23aで検出された超音波受信部3a,3bの方位に近い方位を向いた一部の超音波送信部だけを選択作動させる。
【0022】
制御部23の作動方法をさらに詳細に説明する。ここでは筆記面が略鉛直面となっている場合(スクリーン、壁など)を想定する。図4を参照すると、超音波受信部3a,3bは筆記面Sのコーナー部6a,6bに設置されている。説明の便宜上、鉛直方向上向きを0°とし、時計回りに角度θを定義する。超音波受信部3a,3bの方向は筆記面Sの左上および左下のコーナー部6a,6bであるが、超音波は超音波受信部3a,3bの両方で受信される必要があることから、超音波受信部の位置は、例えば270°で代表することができる。この超音波受信部の位置情報はあらかじめ電子ペン2に入力されている。ただし、超音波受信部3a,3bは上述のように左側に設けられているとは限らないため、超音波受信部の位置情報(0°、90°、180°、270°など)をユーザーが設定できるようにしてもよい。
【0023】
ユーザーが電子ペン2を任意の方位に固定して持ちながら筆記面に押圧すると、方位検出部23aが作動する。方位検出部23aは、例えば指示部29が一定以上の圧力を検知したときに作動するようにしてもよい。方位検出部23aが上述の機構を備えている場合、方位検出部23aは以下のように作動する。ボールは180°側に動くので、その近くにあるセンサがどれだけ反応したかを解析することによって電子ペン2のどの方位が180°側を向いているのかが判定される。図4では、180°側を向いているのは超音波送信部21bに近い方位であると判定される。方位検出部23aは次に、この電子ペン2の方位情報と上述した超音波受信部の位置情報とから、電子ペン2のどの方位が超音波受信部を向いているのかを判定する。図4では、超音波受信部3a,3bのある方位は、超音波送信部21b付近からさらに時計回りに90°程度回った部分、すなわち超音波送信部21cの付近であると判定される。このようにして、方位検出部23aはどの超音波送信部が超音波受信部に近い方位を向いているのかを検出する。
【0024】
超音波送信部選択部23bは、この結果を方位検出部23aから受け取り、超音波送信部21cだけを作動させる。換言すれば、超音波送信部選択部23bは、超音波受信部3a,3bの設置方位から相対的に離れた方位を向いた超音波送信部21a,21b,21dを作動させず、これらの超音波送信部から超音波が送信されないように超音波送信部21a〜21dを制御する。これによって、不要な方向への超音波の発生が抑えられ、壁などの反射による反射波の影響を低減することができる。
【0025】
(第2の実施形態) 第2の実施形態は、電子ペンの超音波送信部および制御部の構造が異なる他は、第1の実施形態と同様である。図5は、電子ペンの筆記側先端部からみた先端部付近の断面図である。超音波送信部71は、電子ペン7の筆記側先端部付近に、電子ペン7の長軸Cを取り囲んで一つだけ設けられている。図示の実施形態では、超音波送信部71は、電子ペン7の長軸Cと同軸に設けられた振動子76と、振動子76を取り囲むように設けられた振動板77とからなっている。
【0026】
図6は、電子ペンの超音波送信に関連する主要構成要素のブロック図である。制御部73は、超音波受信部3a,3bの方位を検出する方位検出部73aと、超音波抑制部73bとを有している。方位検出部73aの構成は第1の実施形態の方位検出部23aと同様である。超音波抑制部73bは、押圧体78a〜78dと、押圧体選択部81と、押圧体78a〜78dの各々と組み合わされた押圧体駆動部79a〜79dとを有している。押圧体78a〜78dは、図5に示すように、超音波送信部71の周囲に、90°間隔の方位75a〜75dで設けられている。押圧体選択部81は、方位検出部73aで検出された超音波受信部3a,3bの方位から遠い方位にある押圧体を選択する。押圧体駆動部79a〜79dは選択された押圧体を駆動する。押圧体駆動部79a〜79dは押圧体選択部81に接続されている。押圧体および押圧体制御部はここでは4つとしたが、任意の個数でかまわない。
【0027】
図7,8は図5のA部部分拡大図で、図7は押圧体が超音波送信部を押圧していないときの、図8は押圧体が超音波送信部を押圧しているときの状態を示す。以下、押圧体78aおよび押圧体駆動部79aを対象に説明するが、他の押圧体および押圧体制御部についても同様である。押圧体78aはスリット82によって電子ペン7の半径方向に案内されている。押圧体駆動部79aは、一端を押圧体78aに、他端を永久磁石84に連結され、支点83で回転可能に支持された軸86と、永久磁石84を両側から挟むように設けられた電磁石85a、85bとを有している。押圧体選択部81からの選択信号に応じて電磁石85a、85bに与えられる電流の向きが変えられ、永久磁石84が動かされると、押圧体78aはスリット82に沿って移動し、図7に示す解放状態と図8に示す押圧状態とをとる。このようにして、押圧体駆動部79aは超音波送信部71の一部の振動を機械的に抑制することができる。図5の場合は、押圧体78a,78b,78dが超音波送信部71の対応する部分を押圧して振動を抑えており、これらの方向から不要な超音波が発生することが抑制されている。
【0028】
このように、本実施形態においては、超音波送信部71の一部を機械的に押圧し、押圧された部位の振動を抑制することができる。これによって、押圧された部位で発生する超音波の大きさが低減し、反射波の影響を低減することができる。
【0029】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、電子ペンの制御部の構造が異なる他は、第2の実施形態と同様である。具体的には、押圧体を押圧するために重力を利用している点が第2の実施形態と異なる。図9は、超音波送信部周辺の構造を示す電子ペン先端部の側面図である。超音波送信部91は、電子ペン9の筆記側先端部94付近に、電子ペン9の長軸Cを取り囲んで設けられている。制御部は、超音波送信部91の周囲に90°間隔の方位で複数個設けられた押圧体98a〜98dと、押圧体98a〜98dの各々を支持する押圧体支持部99a〜99dとで構成されている(一部図示省略)。押圧体支持部99a〜99dは振り子構造となっており、押圧体98a〜98dは、重力によって鉛直方向下向きに自由に動くことができる。押圧体98a〜98dは90°間隔で均等に4つ設けられているので、電子ペン9がどのような方位にあるときでも、鉛直方向上向きの方位に近い方位にある少なくとも一つの押圧体が超音波送信部を押圧する。
【0030】
このように、本実施形態では、押圧体が振り子状の支持体で支持されているため、重力によって、超音波送信部の鉛直方向上側の部分に部分的に圧力がかけられ、その部分からの超音波の発生を抑制することができる。本実施形態は、図14に示すような鉛直方向下向きで、投射面から離れた位置に超音波受信部を備えた電子黒板システムに有効であり、特に上方の天井からの不要な反射波の影響を低減することができる。
【0031】
なお、以上の実施形態では超音波受信部および赤外線受信部がスクリーン上に設けられた場合について説明したが、背景技術で説明したように、これらをプロジェクタ装置に搭載し、スクリーン上の電子ペンとプロジェクタ装置との三次元座標距離を演算するよう構成することも可能である。この場合、超音波受信部および赤外線受信部をプロジェクタ装置の投写側となる外面に設け、また、三次元座標距離を計算する座標検出部はプロジェクタに内蔵することができる。その他の構成については上述したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態における電子ペンの概略外形図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における電子ペンの、図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】図1に示す電子ペンの、超音波送信に関連する主要構成要素のブロック図である。
【図4】図1に示す電子ペンの作動方法を示す概念図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における電子ペンの、筆記側先端部からみた先端部付近の断面図である。
【図6】図5に示す電子ペンの、超音波送信に関連する主要構成要素のブロック図である。
【図7】押圧体が超音波送信部を押圧していない状態を示した、図5のA部の部分拡大図である。
【図8】押圧体が超音波送信部を押圧している状態を示した、図5のA部の部分拡大図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における電子ペンの、超音波送信部周辺の構造を示す先端部の側面図である。
【図10】従来技術の電子黒板システムの概略構成図である。
【図11】従来技術の電子ペンの概略外形図である。
【図12】電子ペンから送信される超音波および赤外線の伝播を示す概念図である。
【図13】赤外線と超音波の到達時間の差を説明する概念図である。
【図14】超短焦点プロジェクタを利用した電子黒板システム(プロジェクタシステム)の概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1 電子黒板システム
2 電子ペン
21a〜21d 超音波送信部
22 赤外線送信部
23 制御部
23a 方位検出部
23b 超音波送信部選択部
3a,3b 超音波受信部
4a、4b 赤外線受信部
5 座標検出部
6 プロジェクタシステム
61 スクリーン(投射面)
62 電子ペン
63 赤外線パルス
64a,64b 超音波パルス
65 赤外線受信部
66a,66b 超音波受信部
67 プロジェクタ
7 電子ペン
71 超音波送信部
73a 方位検出部
73b 超音波抑制部
78a〜78d 押圧体
79a〜79d 押圧体駆動部
81 押圧体選択部
9 電子ペン
91 超音波送信部
98a〜98d 押圧体
99a〜99d 押圧体支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸を有する筐体と、
前記筐体の筆記側先端部付近に設けられ、超音波を送信する超音波送信部と、
前記超音波送信部から送信された超音波を受信する超音波受信部が前記筐体の前記長軸周りのどの方位にあるかを示す超音波受信部方位を検出し、該超音波受信部方位から離れた方位への超音波の送信を阻止または抑制するように前記超音波送信部を制御する制御部と、
を有する電子ペン。
【請求項2】
前記超音波送信部は、前記電子ペンの前記長軸の周りに互いに異なる方位を向いて複数個設けられ、
前記制御部は、
前記超音波受信部方位を検出する方位検出部と、
前記方位検出部で検出された前記超音波受信部方位に近い方位を向いた一部の前記超音波送信部だけを選択作動させる超音波送信部選択部と、
を有している、請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記超音波送信部は、前記電子ペンの前記長軸を取り囲んで設けられ、
前記制御部は、
前記超音波受信部方位を検出する方位検出部と、
前記超音波送信部の、前記方位検出部で検出された前記超音波受信部方位から離れた方位となる部位の作動を抑制する超音波抑制部と、
を有している、請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記超音波抑制部は、
前記超音波送信部の周囲に異なる方位で複数個設けられた押圧体と、
前記方位検出部で検出された前記超音波受信部方位から遠い方位にある前記押圧体を選択する押圧体選択部と、
前記押圧体選択部によって選択された前記押圧体を前記超音波送信部に押圧させる押圧体駆動部と、
を有している、請求項3に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記超音波送信部は、前記電子ペンの前記長軸を取り囲んで設けられ、
前記制御部は、
前記超音波送信部の周囲に互いに異なる方位で複数個設けられた押圧体と、
前記押圧体の各々を、鉛直方向下向きに移動自由に、かつ鉛直方向上向きの方位に近い方位にある少なくとも一つの該押圧体が前記超音波送信部を押圧するように支持する押圧体支持部と、
を有している、請求項1に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記超音波送信部の超音波送信と同期して赤外線を送信する赤外線送信部を有している、請求項1から5のいずれか1項に記載の電子ペン。
【請求項7】
請求項6に記載の電子ペンと、
前記電子ペンによって筆記される筆記面に互いに離れて配置されるようにされた、少なくとも2つの前記超音波受信部と、
前記筆記面に前記超音波受信部の各々と隣接配置されるようにされた、赤外線を受信する赤外線受信部と、
前記赤外線受信部で受信した赤外線と、隣接する前記超音波受信部で受信した超音波の受信時間との差を、該赤外線受信部と該超音波受信部の組毎に算出し、該電子ペンの該筆記面上での座標情報を計算する座標検出部と、
を有する、電子黒板システム。
【請求項8】
請求項6に記載の電子ペンと、
前記電子ペンによって筆記される筆記面に画像を投写するようにされたプロジェクタ装置と、
を有し、
前記プロジェクタ装置は、
少なくとも2つの前記超音波受信部と、
前記超音波受信部の各々と隣接配置された、赤外線を受信する少なくとも1つの赤外線受信部と、
前記赤外線受信部で受信した赤外線と、前記超音波受信部で受信した超音波の受信時間との差を該超音波受信部毎に算出し、該電子ペンの前記プロジェクタ装置に対する3次元座標情報を計算する座標検出部と、
を有する、プロジェクタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−58425(P2007−58425A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241297(P2005−241297)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(300016765)NECビューテクノロジー株式会社 (289)
【Fターム(参考)】