説明

電子ボードシステム、座標点補正装置、座標点補正方法及びプログラム

【課題】一対の光学式センサーユニットの取り付け位置が検出面の左右両端位置より内側に配置される電子ボードシステムにおいて、入力物体が一対の光学式センサーユニットの外側に位置する場合、検出座標にずれが生じ難くする。
【解決手段】一対の光学式センサーユニットの取り付け位置の内側に入力物体が位置する場合にも外側に位置する場合にも、検出面の縦方向に、検出された入力物体のサイズに応じた補正量だけ当初の検出座標を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ボードシステムにおける検出座標を補正する装置、方法、当該機能を実装する電子ボードシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子ボードシステムに対する注目が高まっている。電子ボードシステムは、指や専用の電子ペンを座標入力に使用し、文字、図形その他のオブジェクトを画面上に描画し、又は、画像オブジェクトに対する操作を受付けることができる。例えば描画する線の色や太さの変更、イベントの発行、オブジェクトの拡大・縮小、オブジェクトの削除などのコマンドを実行することができる。
【0003】
電子ボードシステムは、座標検出装置と、表示装置と、画像生成装置を基本構成とする。座標検出装置は、入力物体の位置を検出するシステムであり、様々な検出方式が提案されている。例えば赤外線方式(光学式)、電磁誘導方式、超音波方式等が提案されている。
【0004】
図1に、入力物体の影を使用して、複数点の座標や入力物体の大きさを取得できる座標検出装置の概念構成を示す。図1の(A)及び(B)に示す電子ボード101及び151は、いずれも赤外線方式の座標検出装置に対応する。
【0005】
電子ボード101は、検出面102の左辺、右辺、下辺の3辺を取り囲むように配置される再帰反射性の反射テープ103と、検出面102の上部に配置される位置検出装置104とで構成される。位置検出装置104は、左右一対のセンサーユニット104A及び104Bと、入力物体の座標位置を三角測量の原理に従い算出する算出ユニット104Cとで構成される。因みに、センサーユニット104A及び104Bは、所定の放射角を有する赤外線を検出面102に沿ってスキャンする赤外線光源と、反射テープ103で再帰反射した赤外線像を撮像するイメージセンサで構成される。
【0006】
ところが、センサーユニット104A及び104Bが検出面102の左右両端に配置される電子ボード101の場合には、筐体長が長いために歪みが生じ易く、当該歪みによりイメージセンサ間の位置ずれが大きくなり易い。結果的に、イメージセンサに死角が生じ易くなる。このため、座標や物体の大きさを正しく取得できないことがある。
【0007】
一方、センサーユニット104A及び104Bが検出面102の水平方向中心寄りに配置される電子ボード151の場合には、筐体長が短い分だけ筐体に歪みが生じ難く、たとえ歪みが発生した場合でもイメージセンサ間の位置ずれは小さく済む。結果的に、死角の発生を減らすことができる。このため、電子ボード151は、座標や物体の大きさを正しく取得する上で優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、入力物体が赤外線を遮光することで生じる影をイメージセンサで検出する赤外線方式においては、検出面102に指を押し付ける場合のように、指先を検出してから指の腹を押し付けるまでの間に検出される入力物体のサイズ(太さ)が変化する。
【0009】
ここで、従来装置は、検出された物体サイズ(太さ)の中心位置を検出座標として算出する。このため、検出座標が、使用者の意図する指先位置からぶれてしまい、操作画面のボタンを押し難くなることがある。また、拡大・縮小、回転などのコマンドを実行した際に影の太さが変化し、意図しないところまで拡大・縮小、回転してしまうことがある。そこで、従来装置には、検出座標の補正機能を搭載している。
【0010】
図2を用い、従来用いられている検出座標の補正機能を説明する。図2の(A)及び(B)は、それぞれ図1の(A)及び(B)に対応する。図2の場合、一対の赤外線の交点位置に検出座標を補正する。例えば図2の(A)に示すように、センサーユニット104A及び104Bの間の検出領域については、縦方向の座標のみが補正対象となる。電子ボード151の場合でも、入力物体がセンサーユニット104A及び104Bの取り付け位置の間に位置する場合には同じ結果が得られる。
【0011】
しかし、図2の(B)に示すように、電子ボード151の場合には、センサーユニット104A及び104Bの取り付け位置の外側に入力物体が位置する場合がある。この場合に、一対の赤外線の交点位置に検出座標を補正すると、図に示すように、検出面の縦方向だけでなく横方向についても補正成分が発生する。すなわち、検出面の斜め方向に座標点が補正される。
【0012】
しかし、この補正の方向は、使用者の直感的な操作方向とは一般に異なっている。また、当初の検出座標に対する補正量も大きくなる。このため、検出面102を通じてボタン等を操作することが難しくなる。
【0013】
そこで、本発明では、検出面の左右両端位置より内側に一対の光学式センサーユニットが配置される電子ボードシステムであって、各センサー出力を通じて入力物体の座標及びサイズを検出する電子ボードシステムにおいて、入力物体が光学式センサーユニットの取付位置に対して外側に位置する場合でも、システムによる検出座標と使用者の操作位置との間に位置ずれが生じ難い電子ボードシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、かかる技術的課題を鋭意検討した結果、一対の光学式センサーユニットの取付位置が検出面の左右両端位置より内側に配置される電子ボードシステムに好適な座標点の補正技術を発明した。具体的には、入力物体の中心位置として算出された入力座標を、検出された入力物体のサイズに応じて定まる補正量だけ検出面の縦方向に補正する機能を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一対の光学式センサーユニットの取付位置の内側に入力物体が位置する場合にも外側に位置する場合にも、検出面の縦方向に、検出された入力物体のサイズに応じた補正量だけ当初の検出座標を補正することができる。このように補正方向が縦方向だけに限定され、かつ、補正量が入力物体のサイズに応じて定まるため、補正後の座標を使用者の操作位置に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】複数点の同時検出が可能な電子ボードによる入力物体の検出原理を説明する図。
【図2】従来方式による入力点の補正動作を説明する図。
【図3】形態例に係る電子ボードシステムの構成を説明する図。
【図4】検出可能な入力状態を説明する図。
【図5】座標検出装置から出力される座標データのデータ構造を示す図。
【図6】指先が検出された時点と指の腹で操作した時点における入力座標のずれを説明する図(従来例)。
【図7】座標点補正装置の機能構成を説明する図。
【図8】座標点補正プログラムの処理動作を説明するフローチャート。
【図9】形態例による入力点の補正動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の形態例を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する形態例は、専ら発明を説明するために使用するものであり、実製品への搭載時には既存技術との組み合わせにより様々な形態が考えられる。また、以下の説明では、本発明に係る座標点の補正機能がコンピュータ上で実行されるプログラムを通じて実現されるものとして説明するが、当該プログラムの一部又は全部はハードウェアを通じて実現することもできる。
【0018】
(電子ボードシステムの概要)
図3に、形態例に係る電子ボードシステム301の形態例を説明する。電子ボードシステム301は、座標検出装置と、表示装置と、画像生成装置を基本構成とする。なお、座標検出装置は、位置検出装置303と反射板304で構成される。
【0019】
位置検出装置303は、左右一対のセンサーユニットと不図示の算出ユニットとで構成される。左右一対のセンサーユニットは、水平方向について検出面305の中央付近に配置されている。この形態例の場合、赤外線光源による赤外線のスキャン範囲は、ほぼ180度である。また、センサーユニット内のイメージセンサは、同じくほぼ180度の角範囲を受光範囲とする。図中、各センサーユニットは、検出面305の左辺、下辺、右辺をいずれも撮像範囲とする。
【0020】
算出ユニットは、左右一対のセンサーユニットから出力される撮像画像に含まれる影の位置に基づいて、検出面305に接触した1つ又は複数の入力物体302の各検出座標を算出する。この形態例に係る算出ユニットは、検出された入力物体302のサイズと数を判定する機能も搭載する。これらの情報は、入力物体に対する入力データとして出力される。なお、この形態例の場合、座標の原点は、検出面305の左上隅に設定されているものとし、右辺側ほどx座標が大きくなり、下辺側ほどy座標が大きくなるものとする。
【0021】
反射板304は、赤外線を入射方向に再帰反射する微小な光学素子を配列した反射テープを枠体に取り付けた構造を有している。従って、赤外線の光路上に何らの物体が存在しない場合、反射板304に入射した赤外線は入射方向に反射され、イメージセンサで撮像される。一方、入力物体302(図では、ペン)が赤外線の光路上に位置するとき、赤外線は入力物体302によって遮光され、イメージセンサにおいて影として撮像される。なお、各辺を構成する反射板304は単一の枠体に固定されていても良いし、それぞれが独立した枠体に分割して固定されていても良い。
【0022】
この形態例の場合、表示装置には、プロジェクタ310を使用する。表示装置は、PDP、液晶ディスプレイその他のフラットパネルディスプレイでも良い。
【0023】
画像生成装置は、制御用コンピュータ306と、その周辺機器であるキーボード307及び表示装置308で構成される。制御用コンピュータ306は、汎用のパーソナルコンピュータと同等の機能を有している。制御用コンピュータ306の内部メモリには、位置検出装置303から一定のサンプリングレートで入力される入力データが逐次格納される。この他、内部メモリには、入力データに基づいて、文字オブジェクトや画像オブジェクトを認識し若しくは処理し又はこれらのオブジェクトから操作画面を生成する表示内容制御プログラム309が格納される。なお、表示内容制御プログラム309の一部として、入力物体302の検出座標を補正するための座標点補正プログラムも格納される。
【0024】
(検出可能な入力態様の例)
図4に、形態例に係る位置検出装置303の制御ユニットにおいて検出可能な入力態様を示す。位置検出装置303は、図4の(A)〜(C)に示す3つの入力態様を検出できる。すなわち、1本の指だけを検出面305に接触させた場合に対応する一点入力状態、2本の指を同時に検出面305に接触させた場合に対応する2点入力状態、手のひら全体を検出面に接触させた場合に対応する手のひら入力状態を検出できる。
【0025】
これらの入力状態の判定は、検出面305に対する手又は指の接触状態により相互に遷移可能である。これらの遷移判定は、位置検出装置303に搭載される入力状態判定プログラムが実行する。例えば1点入力状態と判定されている状態で、独立した2点目の座標が検出された場合、現在の入力状態は2点入力状態と判定される。また例えば1点入力状態又は2点入力状態と判定されている場合でも、入力物体のサイズが所定サイズを越える場合、現在の入力状態は手のひら入力状態と判定される。
【0026】
このように、識別可能な複数の入力状態に対し、それぞれ個別の操作イベントを割り当てると、使用者による入力状態の切り換えに応じて特定の操作イベントの発行を、表示内容制御プログラム309に対して指示することができる。例えば1点入力状態では線を描く、2点入力状態では線を消す、手のひら入力状態では画面をスクロールさせるといった具合に、各種のイベントを表示内容制御プログラム309に指示することができる。
【0027】
(パケットデータの構造例)
図5に、位置検出装置303から制御用コンピュータ306に通知される入力データのデータ構造例を示す。図5の(A)はパケットデータのフォーマット例を示し、図5の(B)はパケットデータの具体例を示す。
【0028】
1フレーム分の入力データ501は、n個(nは2以上)の物体が同時に検出された場合に用いられるデータ構造例である。この明細書において、1フレームは、検出面305の全範囲について入力物体302の検出処理が終了する最小単位期間(周期)に対応する。
【0029】
入力データ501は、入力物体302(例えばペンや指)を検出した時刻502と、検出物体数503と、検出された個々の入力物体302に対応する座標情報504と、そのサイズ情報505を1つの入力データ501として扱う。
【0030】
図5の(B1)は、検出面305上に何らの入力物体302が存在しない場合に出力される入力データ506を示す。この場合、検出を実行したときの検出時刻「T1」と、検出物体数「0」とで構成されるデータが発生される。
【0031】
図5の(B2)は、検出面305上に指、ペンその他の入力物体302が1つだけ存在する場合に出力される入力データ507を示す。この場合、検出を実行したときの検出時刻「T2」と、検出物体数「1」と、対応する座標情報504と、サイズ情報505とで構成されるデータが発生される。
【0032】
この形態例の場合、検出物体のサイズ情報505は、センサーユニットで検出された影の大きさを示している。なお、検出された座標情報には、影として検出された物体の中心座標が用いられる。
【0033】
(入力物体のサイズの変更に伴う入力ずれの例)
図6に、位置検出装置303から入力される入力データ501(506、507)をそのまま用いる場合の入力ずれ例を示す。図6の上段は、入力開始以降における検出面305と指先との接触状態の変化を強調して表した図である。図6の下段は、それぞれが上段に対応する時点における表示画面の内容を表した図である。
【0034】
なお、図6は、指先の検出座標に矢印カーソルを表示する例を表している。図6に示すように、指先を検出面305に押し付ける場合、位置検出装置303で検出される入力物体のサイズは変化する。すなわち、図6の上段において網掛けで示す接触面積は、小面積から大面積へと変化する。入力開始時には指先だけの接触であったものが、入力終了時には指の腹での接触になるためである。
【0035】
前述したように、この場合、位置検出装置303は、入力物体302(指先)が赤外線を遮光する範囲(検出物体のサイズ)の中心位置を座標値とする入力データ501を出力する。すなわち、入力データ501の座標情報504は、検出される物体のサイズが大きくなるほど、入力開始時の座標から下方にずれてしまう。結果的に、図6の右下段に示すように、矢印カーソルが画面上のボタン位置から外れてしまう。これでは、表示内容制御プログラム309において、ボタンの押下イベントが発生したことを識別することが困難になる。
【0036】
(座標点補正機能の内容)
以下では、座標点補正プログラムの制御用コンピュータ306による実行を通じて実現される座標点補正装置の構成を説明する。前述の通り、座標点補正プログラムは、表示内容制御プログラム309の一部分を構成する。
【0037】
図7に、座標点補正装置3091の機能構成例を示す。座標点補正装置3091は、入力情報解析部701と、実行機能制御部702と、入力情報記憶部703とで構成される。
【0038】
入力情報解析部701は、位置検出装置303から入力データ501を入力し、入力データ501を検出時刻502、検出物体数503、座標情報504、サイズ情報505に分解する。
【0039】
実行機能制御部702は、前段より与えられる入力情報と入力情報記憶部703に格納されている入力情報の履歴情報とに基づいて、表示内容制御プログラム309の基本的な動作を実行する。この動作の一部として、入力物体の補正座標の算出処理が実行される。補正座標の算出処理が、本発明者の提案する処理機能である。なお、入力情報解析部701から与えられる入力物体の座標情報504を補正座標で置換した入力情報が、入力情報記憶部703に最新の履歴情報として格納される。
【0040】
(座標点補正プログラムの処理手順)
図8に、形態例に係る座標点補正プログラムの処理手順例を示す。実行機能制御部702としてのコンピュータは、入力開始が検出されたか否かを常時監視する。具体的には、コンピュータは、検出物体数503が「0」から「1」以上に変化したか否かを判定する(ステップ801)。コンピュータは、否定結果が得られている間、当該判定動作を繰り返す。
【0041】
検出物体数503が「0」から「1」以上に変化したことが検出された場合、コンピュータは、入力情報として検出物体数503、座標情報504、サイズ情報505を抽出する(ステップ802)。
【0042】
次に、コンピュータは、入力数を「0」に初期化した後、現在の入力数に「1」を足す(ステップ803、804)。
【0043】
次に、コンピュータは、1番目の入力物体について、入力物体サイズが閾値1(第1の閾値)より大きいか否か判定する(ステップ805)。ここで、1番目の入力物体とは、図5の(A)に示すパケットフォーマットの先頭に記録された検出物体1に対応する。
【0044】
ここでの閾値1は、手のひら入力状態の判定閾値であるものとする。従って、入力物体サイズが閾値1より大きい場合、コンピュータは、手のひら入力と判定し、座標点の補正処理を行うことなく処理を終了する。従って、入力情報記憶部703には、入力データ501の座標情報504がそのまま保存される。
【0045】
これに対し、入力物体サイズが閾値1より小さい場合、コンピュータは、入力物体サイズが閾値2(第2の閾値)より小さいか否かを判定する(806)。ここでの閾値2は、座標点補正の実行マージンに当たる。例えば図6の左図に示すように、入力物体サイズが小さい場合には、座標ずれは無視できるためである。閾値2の値は、初期設定値を用いても良いし、サービススタッフ等が個別に設定しても良いし、使用者の好みに応じて調整できるようにしても良い。使用者による調整はGUI画面を通じて実行可能であることが好ましい。
【0046】
入力物体サイズが閾値2より大きい場合、コンピュータは、入力データ501の座標情報504に座標ずれが含まれていると判定する。すなわち、コンピュータは、座標点の補正処理を実行する。このとき、コンピュータは、入力データ501の入力物体サイズを用い、入力物体サイズの半分(半径)分を、座標情報504のy座標から減算する補正イベントを発行する(ステップ807)。
【0047】
ここで、y座標についてのみ補正イベントを発行するのは、使用者の指先による入力操作は、基本的に縦方向(y方向)について実行されるためである。従って、縦方向のみの補正を行う。また、入力物体サイズの半分(半径)を補正量として用いるのは、位置検出装置303から制御用コンピュータ306に出力される入力データ501では、入力物体の座標情報504が、検出された入力物体サイズの中心位置として与えられるためである。このように、補正量は、入力物体サイズにより決まる。従って、入力物体302が検出面のどの地点に位置しても、すなわち一対のセンサーユニット104A及び104Bの中間にあっても外側にあっても補正量は同じになる。
【0048】
図9に、形態例に係る補正機能を適用した場合の補正イメージを示す。なお、本形態例で使用する位置検出装置104は、左右一対のセンサーユニット104A及び104Bの取り付け位置が検出面102の左右両端位置より内側にある。このため、図9の(A)及び(B)のいずれについても、位置検出装置104の水平方向長が検出面102の水平方向長より短い電子ボード151について描いている。
【0049】
因みに、図9の(A)は、入力物体が左右一対のセンサーユニット104A及び104Bの中間に位置する場合を示し、図9の(B)は、入力物体が左右一対のセンサーユニット104A及び104Bの外側に位置する場合を示している。いずれの場合も、補正入力点(補正後の入力点)は、当初の検出入力点に対して縦方向(y方向)についてのみ補正されていることが分かる。このため、電子ボード151の使用者が検出面102に指先を押し付けた場合でも、押し付けによる座標点の下方への移動分をキャンセルすることができる。
【0050】
なお、入力物体サイズが閾値2より小さい場合、コンピュータは、入力座標に大きなずれが発生していないと判定し、前述した補正処理を実行することなく次の処理ステップに移行する。
【0051】
次に、コンピュータは、入力物体数が「2」であるか否かを判定する(ステップ808)。否定結果が得られた場合、コンピュータは、処理済の入力数と入力物体数が同じであると判定し、処理を終了する。
【0052】
なお、入力物体数が「2」であった場合、コンピュータは、現時点の入力数が「2」であるか否かを判定する(ステップ809)。この判定は、既に全ての入力物体について補正処理が終了したか否かを判定するために用いられる。ここで、否定結果が得られた場合、コンピュータは、2つ目の入力物体に対する補正処理を実行すべく、ステップ804に戻り、入力数を「1」から「2」に更新する。
【0053】
この後、コンピュータは、2つ目の入力物体について検出座標の補正処理を実行する。なお、ステップ809において、肯定結果が得られた場合、コンピュータは、2つ目の入力物体についても検出座標の補正処理が終了したものと判定し、処理動作を終了する。
【0054】
(まとめ)
以上説明したように、位置検出装置104の水平方向の長さが検出面102の水平方向の長さより短い場合における検出座標の補正技術として、検出座標を入力物体サイズの半分だけ画面上方に補正する処理手法を採用する。これにより、検出面102のいずれの場所に入力物体302が位置する場合にも、使用者の操作位置の近傍に補正後の座標値を定めることができる。特に、一対のセンサーユニットの外側に指先が位置する場合でも、その補正量及び補正方向を一対のセンサーユニットの内側に指先が位置する場合と一致させることができる。
【0055】
また、補正量を入力物体サイズの半分に定めたことにより、指先の検出面102への押し付けに伴う中心位置の移動量をほぼキャンセルすることができる。検出座標を、指先が当初触れた領域付近に補正することができる。
【0056】
(他の形態例)
図8の場合には、同時に検出可能な入力物体数が「2」の場合について説明したが、同時に検出可能な入力物体数は3個以上でも良い。この場合、入力物体数と入力数が一致するか否かを判定するステップを、ステップ808及びステップ809に代えて配置し、否定結果が得られている間はステップ804に戻り、肯定結果が得られた場合に処理を終了するようにすれば良い。
【0057】
前述の形態例の場合には、入力物体サイズの半分を検出座標から減算しているが、これは検出面の下方側ほどy座標の値が大きくなるためである。従って、他の座標系の場合には、検出面の上方に座標を補正するための演算内容として他の演算処理を適用しても良い。例えば検出面の上方側ほど座標値が大きくなる場合には、補正量を検出座標に加算すれば良い。
【0058】
前述の形態例の場合には、補正量を入力物体サイズの半分に定めている。しかし、入力物体サイズに応じて補正量を決定するのであれば、必ずしも入力物体サイズの半分に限らない。例えば3分の1でも良い。
【0059】
前述の形態例の場合には、入力物体サイズが閾値2以上の場合に限って座標値を補正したが、手のひら入力状態と判定されない限り(ステップ805で否定結果が得られる限り)、常に座標値を補正しても良い。
【0060】
前述の形態例の場合、センサーユニット104A及び104Bは、赤外線をほぼ180度の範囲でスキャンするものとして説明した。しかしながら、赤外線の照射範囲がそれぞれ異なるように複数の光源を配置し、複数の照射範囲の全体がほぼ180度の範囲を照明できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0061】
101 電子ボード
102 検出面
103 反射テープ
104 位置検出装置
104A センサーユニット
104B センサーユニット
104C 算出ユニット
151 電子ボード
301 電子ボードシステム
302 入力物体
303 位置検出装置
304 反射板
305 検出面
306 制御用コンピュータ
309 表示内容制御プログラム
310 プロジェクタ
701 入力情報解析部
702 実行機能制御部
703 入力情報記憶部
3091 座標点補正装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出面との重複領域に画像を表示する表示装置と、
検出面の右辺、左辺及び下辺を取り囲むように配置されると共に、各反射面が検出面に対して垂直に配置される再帰性の反射板と、
検出面の左右両端位置より内側に取り付けられる一対の光学式センサーユニットと、
前記一対の光学式センサーユニットから出力される各センサー出力に基づいて、検出面に対する入力物体の入力座標及びサイズを算出する算出ユニットと、
入力物体の中心位置として算出された前記入力座標を、入力物体のサイズに応じて定まる補正量だけ検出面の縦方向に補正する座標点補正装置と
を有することを特徴とする電子ボードシステム。
【請求項2】
検出面の左右両端位置より内側に取り付けられる一対の光学式センサーユニットと、各センサー出力に基づいて検出面に対する入力物体の入力座標及びサイズを算出する算出ユニットと共に電子ボードシステムを構成する座標点補正装置において、
入力物体の中心位置として算出された前記入力座標を、入力物体のサイズに応じて定まる補正量だけ検出面の縦方向に補正する
ことを特徴とする座標点補正装置。
【請求項3】
検出面の左右両端位置より内側に取り付けられる一対の光学式センサーユニットと、各センサー出力に基づいて検出面に対する入力物体の入力座標及びサイズを算出する算出ユニットと共に、電子ボードシステムにおいて使用される座標点補正方法において、
入力物体の中心位置として算出された前記入力座標を、前記算出ユニットから入力する処理と、
入力物体のサイズに応じて定まる補正量だけ、前記入力座標を検出面の縦方向に補正する処理と
を有することを特徴とする座標点補正方法。
【請求項4】
検出面の左右両端位置より内側に取り付けられる一対の光学式センサーユニットと、各センサー出力に基づいて検出面に対する入力物体の入力座標及びサイズを算出する算出ユニットと共に電子ボードシステムを構成するコンピュータに、
入力物体の中心位置として算出された前記入力座標を、前記算出ユニットから入力する処理と、
入力物体のサイズに応じて定まる補正量だけ、前記入力座標を検出面の縦方向に補正する処理と
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−78974(P2012−78974A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221972(P2010−221972)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】