説明

電子マネー入金システム

【課題】入金処理前に通信が出来なくなった場合の二重入金の問題を無くし、入金機が記憶媒体の履歴を確認できるようにする。
【解決手段】記憶媒体10は、電子マネーを入金する前に入金履歴に入金未了を書き込むとともに、入金が完了後に入金未了の履歴を入金完了へと書き替える。入金機20は、記憶媒体10に記憶された入金処理の履歴と記憶部26に記憶された入金処理の履歴とを照合する。そして、入金未了と判定した場合に入金処理を実行して記憶媒体の入金履歴を入金完了に更新し、入金処理完了信号を受信すると記憶部の入金処理の履歴を入金完了に更新する。また、入金完了と判定すると記憶部の入金履歴を入金完了に更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子決済を行うICカードや携帯端末等に対して電子マネー入金機を介して入金処理を行う、電子マネー入金システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の電子マネー入金機(以下、単に入金機という)は、ICカードや携帯端末等の電子マネー記憶媒体(以下、単に記憶媒体という)に対する入金処理の履歴を内蔵するメモリに記憶する。ここでいう入金処理とは、記憶媒体に記憶される電子マネー残高に入金(チャージ)された入金金額を加算する処理をいう。入金機は、記憶媒体から入金完了を示す信号を受信すると、入金処理が完了したものと認識して内蔵するメモリへ入金処理完了の履歴を記憶し、入金処理完了を示す信号を受信できない場合には、入金未了であると認識して内蔵するメモリへ入金未了の履歴を記憶する。
【0003】
ところで、従来、人を検出する人感センサを用い、入金処理に異常が発生した場合に返却された紙幣が持ち去られることが無いように、入金処理異常が発生した時点で人を検出していた場合に紙幣を返却し、人を検出していない場合に紙幣を収容する入金機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この入金機によれば、入金機に再度電子マネーを記憶しているICカードがかざされると、入金機や管理サーバが記憶する入金処理の履歴を参照し、入金未了の履歴があると、入金未了の金額をICカードの電子マネー残高に加算する、リカバリーのための入金処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−234107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記した特許文献1に開示された入金機によれば、入金機が、ICカードから入金完了信号を受信する前に、入金機からICカードが引き抜かれて通信が中断した場合には、例え、ICカードに入金されたとしても、入金機は入金未了と判断し、入金機の入金処理履歴に入金未了の履歴が記憶される。したがって、入金された状態のICカードを再び入金機が読み取った場合には、入金済みのICカードに対し、再度、入金処理を行うといった二重入金の問題が発生する。
【0006】
また、従来のICカードは、入金する前に通信が出来なくなった場合にはICカードには一切の履歴が残らない。したがって、入金機がICカードの入金履歴を参照できるようになり、その入金履歴から入金完了が確認できるようになっても入金未了の発生を確認することができない。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、入金処理前に通信が中断した場合の二重入金の問題を回避し、入金機が記憶媒体の入金履歴を確認できるようにした電子マネー入金システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために本発明は、電子マネーの残金と電子マネーの入金履歴が記憶される記憶媒体と、前記記憶媒体と通信を行なうリーダライタ部を備え、前記リーダライタ部を介して、前記記憶媒体に電子マネーの入金処理を実行し、前記記憶媒体から入金処理完了信号を受信すると、内蔵する記憶部に入金完了の履歴を書き込み、前記記憶媒体から入金処理完了信号を受信できなかった場合に、前記記憶部に入金未了の履歴を書き込む入金機と、を備えた電子マネー入金システムであって、前記記憶媒体は、電子マネーを入金する前に前記入金履歴に入金未了を書き込むとともに入金が完了後に該入金未了の履歴を入金完了へと書き替える制御部を備え、前記入金機は、前記記憶媒体に記憶された入金履歴と前記記憶部に記憶された入金処理履歴とを照合し、前記記憶部に記憶された入金処理履歴に対する前記記憶媒体の入金履歴が入金未了か否かを判定する未入金判定部と、前記未入金判定部が入金未了と判定した時、前記記憶媒体へ入金未了金額の入金処理を実行して前記入金処理履歴を入金完了に更新すると共に、前記記憶媒体から前記入金処理完了信号を受信したことを契機に前記記憶部の入金処理履歴を入金完了に更新し、入金完了と判定した時、前記記憶部の入金処理履歴を入金完了に更新する制御部、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、記憶媒体は、電子マネーを入金する前に入金履歴に入金未了を書き込むとともに入金が完了後に入金未了の履歴を入金完了へと書き替える。入金機は、制御部が、記憶媒体に記憶された入金履歴と、内蔵する記憶部に記憶された入金処理履歴とを照合し、記憶部の入金処理履歴に対する記憶媒体の入金履歴が入金未了か否かを判定する。ここで、入金未了と判定された場合、入金処理を実行して記憶媒体の入金履歴を入金完了に更新し、記憶媒体からの入金処理完了信号の送信を待って記憶部の入金処理履歴を入金完了に更新する。一方、入金完了と判定されると記憶部の入金履歴を入金完了に更新する。このように、入金処理に先立ち、記憶媒体の入金履歴に入金未了を書き込む機能を付加すると共に、入金機に、記憶媒体の入金履歴を参照する機能を付加することにより、入金機の入金未了の入金処理履歴に対する記憶媒体の入金履歴が入金未了か否かを判別できるようになる。このため、入金機では、入金未了と判別された場合にのみ入金未了の金額を記憶媒体に入金処理することができるようになり、二重入金の問題を回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入金処理前に通信が中断した場合の二重入金の問題を回避し、入金機が記憶媒体の入金履歴を確認できるようにした電子マネー入金システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子マネー入金システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子マネー入金システムの入金処理を示す動作シーケンス図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子マネー入金システムの記憶媒体の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る電子マネー入金システムの入金機の動作を示すフローチャートである。
【図5】図4の続きを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る電子マネー入金システムによる入金未了確認前の入金(処理)履歴の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電子マネー入金システムによる入金未了確認後の入金(処理)履歴の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0013】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る電子マネー入金システム1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態に係る電子マネー入金システム1は、記憶媒体(以下、ICカード10という)と、入金機20と、管理サーバ30と、により構成される。入金機20は、通信回線40(公知のLAN、インターネットや電話回線等)経由で管理サーバ30に接続されている。
【0014】
ICカード10は、固有の識別情報(ID)と電子マネー残高の他に、入金処理履歴が記憶される記憶媒体であり、通信部11と、制御部12と、認証部13と、記憶部14とを含み構成される。
【0015】
通信部11は、後述する入金機20のリーダライタ部21と近距離通信を行なうことにより入金処理の履歴を含むデータの入出力を行ない、このデータは、制御部12、および認証部13へ出力される。
制御部12は、ICカード10の制御全般を司り、入金装置20との通信や記憶部14の読み出しや書込みを行う。また、入金機20から出力される指令(コマンド)にしたがい、後述するICカード10の入金処理による記憶部14への電子マネーの入金や入金履歴の更新等を行う。認証部13は、後述する電子マネー入金処理に先立ち、入金機20から送信される認証指令を受信して認証を行う。制御部12は、認証が成立した場合には、記憶部14に記憶される入金履歴に入金未了を書き込んで認証応答を送信する機能を有する。
【0016】
なお、制御部12と認証部13は一体のもので良く、例えば、CPUで構成される。また、ここでいう「認証」とは、ICカード10と入金機20が相互に通信相手であることを確認しあうもので、ICカード10は、入金機20から、認証指令とともに入金機20の自己の正当性を示す情報(暗号化されたID情報等)を受けとることにより認証を行う。ICカード10は認証を行うと、入金機20にICカード10の正当性を示す情報を送り、これを受けて入金機20は、ICカード10を認証する。ICカード10は、入金機20で認証が成立しないと、入金機20からの指令に基づく入金や決済処理を受け付けない。入金機20も同様に、認証が成立しないICカード10からの決済を受け付けない。
【0017】
なお、記憶部14には、電子マネー残高14a、ICカード10固有の識別情報(ID14b)の他に、入金履歴14cが記憶される。この入金履歴14cは、後述する図6(a)、図7(a)にそのデータ構造の一例が示されるように、入金通番#1〜#4毎に、処理日時のフィールドと、入金処理により電子マネー残高14aに入金未了金額の加算が行われたか否かを示す加算情報フィールドとから構成され、対応するデータがそれぞれのフィールドに記憶される。
【0018】
入金機20は、ICカード10と通信を行なうことにより入金処理履歴を内蔵する記憶部26の所定の領域に記憶する。入金機20は、ICカード10から入金処理完了信号を受信すると入金完了の履歴を書き込み、ICカード10から入金処理完了信号を受信できなかった場合に入金未了の履歴を書き込む。後述するように、入金機20は、ICカード10から認証応答を受信すると、ICカード10に記憶された入金履歴と自身で記憶する入金処理履歴とを照合し、自身の入金処理履歴に対するICカード10の入金履歴が入金未了か否かを判定する。照合の結果、入金未了と判定されると、ICカード10に入金未了金額の入金処理を実行して入金履歴を入金完了に更新すると共に、ICカード10から入金処理完了信号を受信したことを契機に自身の入金処理履歴も入金完了に更新する。また、照合の結果、入金完了と判定されると、自身の入金処理履歴を入金完了に更新する。このため、入金機20は、リーダライタ部21と、操作部22と、表示部23と、通信部24と、紙幣処理部25と、記憶部26と、制御部27と、を含み構成される。
【0019】
リーダライタ部21は、利用者により不図示のアンテナ部分にICカード10がかざされることにより、ICカード10との間で電子マネーを交換するための近距離無線通信を行う。リーダライタ部21は、アンテナ経由でキャリアを送信しており、電磁誘導によってICカード10に電力が供給される。このように電力を得たICカード10とリーダライタ部21との間で、キャリアを変復調することによって通信を可能にしている。
【0020】
操作部22は、利用者からの入金の指示を受け付ける入金ボタンと、利用者からのキャンセルの指示を受け付けるキャンセルボタンとを含み、これらボタンが利用者により押下された場合に、その内容に対応する信号を発生し、これを利用者の指示として制御部27に出力する。表示部23は、多数の画素(複数色の発光素子の組み合わせ)を縦横に配して構成される、例えばLCD(Liquid Crystal Display Device)デバイスを用いて構成され、ここに表示されるデータは、例えば入金金額等である。
【0021】
通信部24は、通信回線40を通じて外部の管理サーバ30との間で所定のプロトコルにしたがう通信を行なう。紙幣処理部25は、紙幣を受け入れると、その紙幣の真偽判別と金種判別とを行い、正貨を一時的に装置内に保持した状態で、入金された金額を制御部27に送信し、制御部27の指令に基づき保留した紙幣を金庫に収納し、あるいは返却する。
【0022】
記憶部26には、入金処理履歴26aと、ICカード入金履歴26bとが所定の領域に割り当てられ記憶される。入金処理履歴26aは、後述する図6(b)、図7(b)にそのデータ構造の一例が示されるように、入金通番#1〜#4毎に、処理日時フィールドと、ICカード識別情報(ID)フィールドと、入金金額フィールドと、入金処理の完了/未了を示す完了情報フィールドとから構成され、対応するデータがそれぞれのフィールドに記憶される。なお、ICカード入金履歴26bは、ICカード10の入金履歴14cの写しである。記憶部26として、例えば、不揮発性の記憶デバイス(不揮発性半導体メモリ、ハードディスク等)やランダムアクセス可能な記憶デバイス(例えばSRAM、DRAM)等が実装される。
【0023】
制御部27は、ICカード10に記憶された入金履歴14cと、記憶部26に記憶された入金処理履歴26aとを照合し、記憶部26の入金処理履歴26aに対するICカード10の入金履歴14cが入金未了か否かを判定する。制御部27は、判定の結果、入金未了と判定された場合に、ICカード10の電子マネー残高14aに入金未了金額を加算する入金処理を実行してICカード10の入金履歴14cを「入金完了」に更新する。更に、ICカード10からの入金処理完了信号受信を契機に、入金処理履歴26aを「入金完了」に更新する。一方、照合の結果入金完了と判定されると、記憶部26の入金処理履歴26aを「入金完了」に更新する。このため、制御部27は、未入金判定部271と、入金処理部272と、履歴更新部273とを含み構成される。
【0024】
未入金判定部271は、ICカード10に記憶された入金履歴14cと、記憶部26に記憶された入金処理履歴26aとを照合し、記憶部26の入金処理履歴26aに対するICカード10の入金履歴14cが入金未了か否かを判定する。入金処理部272は、未入金判定部271が入金未了と判定すると、入金未了金額をICカード10の電子マネー残高14aに加算する入金処理を実行する。
履歴更新部273は、照合の結果、未入金判定部271が入金未了と判定し、かつ、ICカード10からの入金処理完了信号を受信すると、記憶部26の入金処理履歴26aを「入金完了」に更新する。一方、照合の結果、未入金判定部271が入金未了と判定すると、履歴更新部273は、記憶部26の入金処理履歴26aを入金完了に更新する。
【0025】
なお、管理サーバ30は、電子マネーの流通状態を管理するサーバであって、複数の入金機20と通信回線40で接続されており、接続される複数の入金機20を統括して管理している。この管理サーバ30は、例えば電子マネーの運用業者により管理・運用されており、各入金機20から電子マネーの入金処理に係る情報を収集して入金したICカード情報や入金金額等の管理を行う。
【0026】
(実施形態の動作)
まず、本実施形態に係る電子マネー入金システム1の入金処理を、図2に示す動作シーケンス図を参照しながら説明する。
【0027】
利用者の操作により入金機20が入金モードに移行した状態において、貨幣処理装置25が正貨を受け入れており、かつ、入金機20にICカード10がかざされ、入金機20がICカード10を検知することにより、ICカード10、入金機20のそれぞれによる入金処理が開始される。図2によれば、まず、入金機20からICカード10に対して捕捉指令が送信される(ステップS11)。ここでいう「捕捉指令」とは、以降、ICカード10が入金機20とだけ通信を行うように設定するためのコマンドである。
【0028】
入金機20は、ICカード10から捕捉指令応答を受信すると(ステップS12)、ICカード10に対して認証指令を送信する(ステップS13)。ここでの認証は、入金機20がICカード10からICカード10に対するデータ更新の許可を取得するために送信されるコマンドである。認証は、Felica(登録商標)カードの相互認証、および入金処理を行う電子マネーの種類の確認を含む。入金機20は、ICカード10から認証成立の応答を受信することによりICカード10のデータ更新が許可される。
【0029】
ICカード10は、入金機20から認証指令を受信すると認証処理を実行し、認証が成立すれば、ICカード10の入金履歴に入金未了の履歴を書き込み(ステップS14)、入金機20は、入金の処理を許可する認証応答を行う(ステップS15)。その後、入金機20から入金指令を受信すると(ステップS16)、ICカード10は、電子マネー残高に入金金額を加算する入金処理を実行する(ステップS17)。ここで、入金処理が正常に終了した場合、ICカード10は、先に入金履歴として書き込んだ「入金未了」を「入金完了」に更新したうえで(ステップS18)、入金機20に対して入金完了応答を行う(ステップS19)。なお、入金機20は、ICカード10に対して捕捉指令を送信してから入金完了応答を受信するまで、後述する入金処理を実行し(ステップS20)、最終的にICカード10から入金完了応答を受信すると、自身の入金処理履歴にも同様の入金完了の履歴を書き込んで一連の電子マネー入金処理を終える(ステップS21)。
【0030】
(ICカード10の動作)
次に、図3に示すフローチャートを参照しながら、図1、図2に示すICカード10の入金処理の動作について詳細に説明する。
【0031】
図3によれば、利用者が入金機20のアンテナ部分にICカード10をかざした状態において、ICカード10は通信部11で入金機20から送信される捕捉指令を受信する(ステップS101)。ICカード10は通信部11でこの捕捉指令を受信すると、制御部12が通信部11を介して入金機20に対して捕捉指令応答を送信する(ステップS102)。制御部12は、入金機20から認証指令を受信すると認証部13を起動し(ステップS103)、これを受けて認証部13は、入金機20との間で相互認証を行なう。
【0032】
ここで、使用する電子マネーの種類も含めて相互認証が成立すると(ステップS104“YES”)、制御部12は、記憶部14の入金履歴14cに新規のレコードを割り当て、入金未了の履歴(例えば、後述する図6(a)の吹き出しブロックに示す「加算処理・未」)を書き込み(ステップS105)、入金機20に認証応答(入金処理の許可)を行う(ステップS106)。認証が不成立の場合(ステップS104“NO”)、その旨を入金機20に送信して入金処理の実行を禁止する(ステップS111)。その後、ICカード10は、入金機20から入金指令を受信すると(ステップS107)、記憶部14の電子マネー残高14aに入金金額を加算する入金処理を実行する(ステップS108)。そして、この入金処理が正常に終了すると、先に入金履歴14cに書き込んだ「入金未了」を「入金完了」に更新(例えば、後述する図7(a)の吹き出しブロックで示す「加算処理・完」)したうえで(ステップS109)、入金機20へ入金応答送信を行う(ステップS110)。
【0033】
(入金機20の動作)
以下、図4、図5のフローチャートを参照しながら、入金機20の動作について詳細に説明する。
【0034】
利用者が入金機20の操作部22の入金ボタンを押下すると、制御部27では、入金ボタンが押下されたことを検知することにより入金処理モードへ移行する。
続いて、紙幣処理部25に紙幣が投入されると、紙幣処理部25は、紙幣の真偽と金種を判別し、判別した紙幣の入金額を制御部27へ送信する。ここで、紙幣処理部25は、投入された紙幣を一時的に装置内に保留する。これにより、制御部27は、入金情報を取得して入金があることを認識する。
【0035】
次に、リーダライタ部21のアンテナ部分にICカード10がかざされ、ICカード10から記憶部14に記憶された識別情報14bを受信すると、制御部27は、ICカード10がかざされたことを認識する。制御部27は、この入金モードにおいて、入金があることが認識され、かつ、ICカード10がかざされていることを認識すると、以下に説明する入金処理を実行する。
【0036】
図4によれば、制御部27は、最初、待機状態(待機モード)にある(ステップS201)。制御部27は、操作部22の入金ボタンが押下されたことを検知すると(ステップS202“YES”)入金モードに移行し(ステップS203)、紙幣処理部25への入金情報の有無が判定される(ステップS204)。制御部27は、紙幣処理部25から金額に関する情報を取得すると(ステップS204“YES”)、表示部23にその入金金額を表示する(ステップS205)。なお、紙幣処理部25から入金金額に関する情報が取得できない場合は(ステップS204“NO”)、ステップS206の「キャンセル操作判定処理」にスキップする。
【0037】
利用者が操作部22によりキャンセルボタンを押下すると、制御部27は、操作部22からキャンセル信号を受信して(ステップS206“YES”)、後述するステップS214の「入金情報有無判定処理」に進む。ここで、キャンセル信号の受信がないと(ステップS206“NO”)、制御部27は、入金モード以降からスタートしている内蔵タイマーのタイムアウト判定を行う(ステップS207)。ここでタイムアウトが検知されると(ステップS207“YES”)、後述する図5のステップS241の「入金情報有無判定処理」に進む。
【0038】
タイムアウトが検知されない場合(ステップS207“NO”)、制御部27は、ICカード10の記憶部14から、電子マネー残高14aと識別情報(ID14b)とを取得し(ステップS208“”YES“)、入金金額を再度確認し、入金情報があると(ステップS209”YES“)、ICカード10に対して図2に示した入金処理を実行する(ステップS210)。入金金額情報が無い場合(ステップS209”NO“)、所謂、紙幣の受入が無い状態の場合は、図5に示すステップS217の「ICカード入金履歴読み出し処理」に分岐する。
【0039】
ステップS210において、ICカード10が入金機20からの指示にしたがい入金処理を実行すると、ICカード10の記憶部14には入金履歴14cに「入金完了」の履歴が書き込まれ、ICカード10から入金機20に対し、入金完了を示す信号が送信される。
入金機20がICカード10から入金完了応答を受信すると(ステップS211“YES”)、制御部27では、履歴更新部273が、記憶部26の入金処理履歴26aに「入金完了」の履歴を書き込む(ステップS212)。そして、紙幣処理部25を介して紙幣を金庫へ収納して一連の電子マネー入金処理を終了する(ステップS213)。
【0040】
なお、入金機20がICカード10から入金完了応答を受信できなかった場合には(ステップS211“NO”)、制御部27では、履歴更新部273が、記憶部26の入金処理履歴26aに「入金未了」の履歴を記憶し(ステップS216)、紙幣処理部25を介して紙幣を金庫へ収納し、上述した一連の電子マネー入金処理を終了する(ステップS213)。
【0041】
また、ステップS206の「キャンセル操作判定処理」で、キャンセルボタンが押下され(ステップS206“YES”)、あるいは、ステップS207の「タイムアウト判定処理」でタイムアウトが検出されると(ステップS207“YES”)、制御部27は、入金金額情報を参照し(ステップS214)、ここで、入金金額情報があれば(ステップS214“Yes”)、紙幣処理部25を制御して投入紙幣を返却し(ステップS215)、入金金額情報がなければ(ステップS214“NO”)、上述した一連の電子マネー入金処理を終了する。
【0042】
ところで、ステップS208の「ICカードのIDと残高取得判定処理」で、制御部27は、ICカード10との通信が中断した等の理由でこれらの情報が取得できなかった場合(ステップS208“NO”)にはステップS204へ戻る。
ステップS209において入金金額情報が無い場合(ステップS209で“NO”)、記憶部26のICカード入金履歴26bからICカード10に記憶された入金履歴を読み出す(ステップS217)。続いて、制御部27は、記憶部26の入金処理履歴26aを参照し、「入金未了」の履歴に一致するICカードの識別情報(ID)の有無を判定する(ステップS218)。
【0043】
ここで、一致する識別情報(ID)ありと判定されると(ステップS218“YES”)、未入金判定部271は、記憶媒体に記憶された入金履歴と記憶部に記憶された入金処理履歴とを照合する。すなわち、未入金判定部271は、記憶部26の入金処理履歴26a中の「処理日時」と、ICカード入金履歴26b中の「処理日時」とが一致し、かつ、記憶部26の入金処理履歴26a中の履歴が「入金未了」であり、対応するICカード入金履歴26bの加算処理が「未了」の場合、ICカード10への入金未了と判定し(ステップS219“YES”)、入金処理部272による入金処理を起動する。これを受けて入金処理部272では、ICカード10へ入金未了金額を電子マネー残高に加算する入金処理を実行する(ステップS220)。
【0044】
続いて、制御部27は、ICカード10から入金完了応答(入金完了信号)を受信すると(ステップS221“YES”)、履歴更新部273が入金処理履歴26aの「入金未了」を「入金完了」に更新する(ステップS222)。ICカード10から入金完了応答を受信しなかった場合は(ステップS221“NO”)、何もせず上述した一連の電子マネー入金処理を終了する。
【0045】
なお、ステップS218の「ICカードのID判定処理」において、一致する識別情報(ID)が無いと判定されると(ステップS218“NO”)、ステップS204の処理に戻る。また、ステップS219において、未入金判定部271は、記憶部26の入金処理履歴26a中の「処理日時」と、ICカード入金履歴26b中の「処理日時」とが一致し、かつ、記憶部26の入金処理履歴26a中の履歴が「入金未了」であり、対応するICカード入金履歴26b中の加算処理フィールドが「完了」の場合に、ICカード10への入金は完了していたと判定し(ステップS219“NO”)、履歴更新部273が入金処理履歴26aの「入金未了」を「入金完了」に更新する(ステップS222)。このため、入金処理部272は、未入金金額をICカード10の電子マネー残高14aに加算する入金処理は実行しない。
【0046】
ICカード10の入金履歴が「入金未了」であった場合のステップS222の履歴更新処理の具体的な処理の事例が図6、図7に示されている。図6は、入金未了確認前のICカード10と入金機20における入金(処理)履歴を、図7は、入金未了確認後のICカード10と入金機20における入金(処理)履歴を、それぞれ示す。なお、図6、図7共に、(a)にICカード10の入金履歴を、(b)に入金機20の入金処理履歴を示さしている。ここでは、同じICカード10に対し、同じ入金機20で4回の入金処理(入金通番が#1〜#4)を実行した場合を例示している。
【0047】
ここでは、入金通番#1に吹き出しブロックで説明されているように、図6(a)の入金未了確認前のICカード10の加算処理フィールドが「未」、図6(b)の入金機20の完了情報フィールドが「未」と記憶されてあったものが、未了金額を入金してその入金(処理)履歴を更新した結果、図7(a)の入金未了確認後のICカード10の加算処理フィールドが「完」、図7(b)の入金機20の完了情報フィールドが「完了」にそれぞれ更新されていることがわかる。なお、入金通番#4では、同じく吹き出しブロックに説明されているように、入金機20の完了情報フィールドのみ「未了」から「完了」に更新されていることがわかる。
【0048】
なお、ICカード10に記憶可能な履歴の数には制限があるため、それを超えた場合には入金履歴が消去されてしまう。このため、容量を超えて入金履歴が消去された場合も図5のステップS218の「ICカードのID判定処理」で入金未了の履歴に一致する識別情報(ID)が無いと判定される。このような場合、未入金金額を電子マネー残高に加算する入金処理が出来ない。但し、ICカード10の入金履歴14c中の「入金未了」を確認できるようになれば、ICカード10の中に「入金完了」の入金履歴が無かった場合でもその理由が入金履歴の消滅によるものか入金未了によるものかを判別することができる。
【0049】
(実施形態の効果)
以上説明のように、本実施形態に係る電子マネー入金システム1によれば、ICカード10では、認証部13によって、認証が成立すると入金履歴に入金未了を書き込んで入金機20に認証応答を送信し、入金機20では、制御部27が、ICカード10に記憶された入金履歴14cと、内蔵する記憶部26に記憶された入金処理履歴26aとを照合し、記憶部26の入金処理履歴26aに対するICカード10の入金履歴14cが入金未了か否かを判定する。そして、入金未了と判定された場合、入金処理を実行してICカード10の入金履歴14cを入金完了に更新し、入金処理完了信号を受信して記憶部26の入金処理履歴26aを入金完了に更新する。一方、入金完了と判定されると記憶部26の入金履歴を入金完了に更新する。
【0050】
このように、入金処理に先立ち、ICカード10の入金履歴14cに入金未了を書き込む機能を付加すると共に、入金機20に、ICカード10の入金履歴14cを参照する機能を付加することにより、入金機20の入金未了の入金処理履歴26aに対するICカード10の入金履歴14cが入金未了か否かを判別できるようになる。このため、入金機20では、入金未了と判別された場合にのみ入金未了の金額をICカード10に入金処理することができるようになり、したがって、二重入金の問題を回避することができる。
【0051】
なお、入金機20は、管理サーバ30へ入金処理履歴を送信後は、入金未了の金額をICカード10へ入金する処理は行なわない。その理由は、管理サーバ30へ送った入金処理履歴は更新出来ないためであり、また、その容量は有限であり、管理サーバ30へ送信した後はその入金処理履歴を消去してしまうためである。但し、管理サーバ30へ入金処理履歴を送信後、未了の金額を入金できなくなっても、未了に関する入金処理履歴を入金機20に保持しておけば、入金が未了か否かのチェックが可能である。したがって、ICカード10が入金未了の場合には、利用者へ表示画面を通じて、「入金未了があるためコールセンタへ連絡してください」等のメッセージを通知することで注意喚起が可能である。管理センターへ入金処理履歴を送信後に、入金機20がICカード10の入金履歴を読み取ったとき、ICカード10の入金履歴が完了であることが認識できれば、入金機20から管理センターへ入金履歴の更新情報を送信することも可能である。
【0052】
また、入金機20に入金処理履歴26aが無くても、ICカード10の入金履歴14cに「入金未了」があった場合に、入金機20の表示部23にコールセンタに誘導する文言等を表示しても良い。なお、入金機20を電子マネー決済装置兼入金機としてもよい。この場合、図1に示す装置構成と同様のハードウエアで良く、上述した入金処理に、決済処理のためのプログラムを付加した構成になる。例えば、入金機20が自動販売機に搭載された場合、自動販売機の主制御が入金機20を制御する構成も考えられる。
【0053】
なお、上述した本実施形態に係る電子マネー入金システム1によれば、入金機20に特化し、入金機20がICカード10から入金履歴を取得する場合の処理についてのみ説明したが、入金機20が管理サーバ30から取得する構成としても良く、また、管理サーバ30が入金未了の判別を行ってもよい。また、ICカード10や入金機20に入金処理履歴のみ記憶する構成についてのみ説明したが、ICカード10が決済処理やポイントの処理を行った場合には、記憶容量が許す限りその履歴も記憶することができる。したがって、入金(処理)履歴は、単独の履歴としてではなく、他の処理履歴と関連付けて保持しても良い。また、本実施形態に係る電子マネー入金システム1では、記憶媒体としてICカードについてのみ説明したが、携帯端末等の情報端末であってもよい。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1・・電子マネー入金システム、10・・記憶媒体(ICカード)、11・・通信部、12・・制御部、13・・認証部、14・・記憶部、14a・・電子マネー残高、14b・・識別情報(ID)、14c・・入金履歴、20・・入金機、21・・リーダライタ部、22・・操作部、23・・表示部、24・・通信部、25・・紙幣処理部、26・・記憶部、26a・・入金処理履歴、26b・・ICカード入金履歴、27・・制御部、30・・管理サーバ、40・・通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子マネーの残金と電子マネーの入金履歴が記憶される記憶媒体と、
前記記憶媒体と通信を行なうリーダライタ部を備え、前記リーダライタ部を介して、前記記憶媒体に電子マネーの入金処理を実行し、前記記憶媒体から入金処理完了信号を受信すると、内蔵する記憶部に入金完了の履歴を書き込み、前記記憶媒体から入金処理完了信号を受信できなかった場合に、前記記憶部に入金未了の履歴を書き込む入金機と、を備えた電子マネー入金システムであって、
前記記憶媒体は、
電子マネーを入金する前に前記入金履歴に入金未了を書き込むとともに入金が完了後に該入金未了の履歴を入金完了へと書き替える制御部を備え、
前記入金機は、
前記記憶媒体に記憶された入金履歴と前記記憶部に記憶された入金処理履歴とを照合し、前記記憶部に記憶された入金処理履歴に対する前記記憶媒体の入金履歴が入金未了か否かを判定する未入金判定部と、前記未入金判定部が入金未了と判定した時、前記記憶媒体へ入金未了金額の入金処理を実行して前記入金処理履歴を入金完了に更新すると共に、前記記憶媒体から前記入金処理完了信号を受信したことを契機に前記記憶部の入金処理履歴を入金完了に更新し、入金完了と判定した時、前記記憶部の入金処理履歴を入金完了に更新する制御部、を備えたことを特徴とする電子マネー入金システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−238269(P2012−238269A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108242(P2011−108242)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】