説明

電子レンジ加熱容器

【課題】加熱したい部分を集中的に加熱することのできる電子レンジ加熱容器において、取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で壊れにくく耐久性に優れた、電子レンジ加熱容器を提供することである。
【解決手段】電子レンジ加熱容器10の容器底面11の一点または複数点を中心に複数の導電性線状アンテナ15を容器底面11に沿って放射状に配設したのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジで食品等を加熱する際に用いる電子レンジ加熱容器に関し、特に加熱したい部分を集中的に加熱することのできる電子レンジ加熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年食品等を加熱する際に、その利便性から電子レンジを用いる機会が増えている。電子レンジは食品等にマイクロ波を照射し、水分子を振動させ、その摩擦熱により、発熱体などを介さず、直接加熱する仕組みである。
【0003】
上記したような誘電加熱の原理に起因して、電子レンジには、以下のような欠点がある。すなわち、庫内に照射したマイクロ波が、庫内で反射することで干渉し合い、3次元の定常波が出来るため、加熱にむらが生じ、あたたまりにくい箇所が生じてしまう。加熱にむらがある場合には、例えば加熱物が食品である場合、食品内部が冷たいと著しく味が落ちる事態が生じる。
【0004】
そこで本発明者は、特願2004−213388号で、固形物または半固形物からなる食品を容器内に収納し、前記食品に単数または複数の棒状アンテナを、前記食品の表面から一部が突出した状態でほぼ垂直に挿入し、これを電子レンジにより加熱する食品加熱方法を先に提案している。
【0005】
このように構成することで、棒状アンテナは、マイクロ波を集める性質があるため、固形物や半固形物の食品について、適宜箇所に棒状アンテナを設置することにより、その箇所を重点的に加熱することが可能となる。
【0006】
しかし、この方法によると、棒状アンテナを加熱物に直接垂直に挿入する必要があるため、固定がむずかしいうえ、棒状アンテナが加熱物から抜けてしまうなどして壊れやすく、取り扱いが困難である問題を有し、また、棒状アンテナと食品とが直接接触するため棒状アンテナおよび食品が劣化してしまったり、棒状アンテナが食品に混入してしまう恐れもあり、いまだ改善の余地が残されているといえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明の解決すべき課題は、加熱したい部分を集中的に加熱することのできる電子レンジ加熱容器において、取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で壊れにくく耐久性に優れた、電子レンジ加熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、この発明は、マイクロ波透過性電子レンジ加熱容器底面の、一点または複数点を中心に複数の導電性線状アンテナを、容器底面に沿って放射状に配設したのである。ここでアンテナとは導電性金属よりなるマイクロ波収集体のことを言う。
【0009】
このようにアンテナを配設することで、放射線の中心には複数のアンテナの内端が近接して存在するためマイクロ波がとくに集中し、その近辺を重点的に加熱することができる。
【0010】
放射状に配設したアンテナの中心点は、容器に内容物を収納した際に内容物の加熱したい部分の直下に位置するのが好ましい。ここでアンテナの中心点とは、各アンテナを延長した場合に交わる交点のことを言う。
【0011】
また、アンテナの長さは、15〜65mmであるのがよい。さらに、放射状に配設したアンテナの中心点と、前記各アンテナの内端との平均距離は、2〜9mmであるのがよい。アンテナは、2〜12本であるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
容器底面の一点または複数点を中心に、複数の導電性線状アンテナを容器底面に沿って放射状に配設することで、本出願人が先に提案したような容器内容物にアンテナを挿入する場合と異なり、アンテナの固定が簡単であり壊れにくく、内容物にアンテナが接触することもないため耐久性に優れ、また取り扱いも容易な電子レンジ加熱容器とすることができる。
【0013】
放射状に配設したアンテナの中心点を、容器に内容物を収納した際に内容物の加熱したい部分の直下に配置することで、加熱したい部分を重点的に温めることができる。
【0014】
導電性線状アンテナの長さを、15〜65mmとすることで、マイクロ波の波長である122mmの1/4前後となるためマイクロ波が集中し加熱効果を高めることができる。
【0015】
放射状に配設したアンテナの中心点と、各アンテナの内端との平均距離を、2〜9mmとすることで、隣接するアンテナ同士が干渉しない範囲でアンテナの端部を近接させることができるため、マイクロ波が集中し加熱効果を高めることができる。
【0016】
アンテナを2〜12本とすることで、隣接するアンテナ同士が干渉しない範囲でアンテナの本数を増やし、アンテナの本数が多いほどマイクロ波が集中することから加熱効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。図1のようにこの発明にかかる電子レンジ加熱容器10は、ほぼ円形の底面11と底面周縁から立ち上がる側面12と、側面の上部開口周縁に設けられたフランジ13と、フランジの一部外縁から延びるタブ14とからなり、図2のように、容器10の底面11中心から放射状に、底面11に沿って線状または短冊状の導電性金属箔からなるアンテナ15が6本貼り付けられている。なお、容器10は、PP、PE、PET等のマイクロ波透過性材料よりなる。
【0018】
ここで導電性金属箔としてはアルミニウム、銅、ステンレス等が用いられる。なお、この実施の形態では金属箔を貼り付けているが、導電性塗料の塗布、導電性金属のスパッタリング、エッチングなどにより導電性金属よりなるアンテナ15を形成してもよい。
【0019】
このような容器10に米飯等の加熱物16を収納し、電子レンジにかけると底面に貼り付けたアンテナ15の両端にマイクロ波が集中するところ、とくにアンテナの内端15aは、底面11中心に複数が近接して存在するため一層マイクロ波を集中させることができる。そのため通常温まりにくい加熱物16の中心近辺を集中して加熱することができる。
【0020】
ここでマイクロ波をアンテナ15に集中させるには、アンテナ15の長さをマイクロ波の波長である122mmの1/4にあたる30.5mm前後、すなわち15〜65mm程度の長さとすることが好ましい。これは、30.5mmより極端に短くても長くてもマイクロ波の集中効果が落ちるためである。なお、アンテナ15の幅および厚みはマイクロ波集中効果に大きく関与することはないが、取り扱いの便から幅は約2mmとするのが適当である。
【0021】
放射線状に配設した6本のアンテナ15の中心点17と、アンテナの内端15aとの距離は、2〜9mmとするのが好ましい。これは、アンテナ15同士が近接するほど集中加熱効果が高まる一方で、隣接するアンテナ15間の距離があまりに近すぎると、干渉が生じスパークが生じるからである。
【0022】
なお、この実施の形態ではアンテナ15の本数を6本としたが、勿論これに限られず2〜11本が適当な本数である。これは、本数が多いほど集中加熱効果が高まる一方で、隣接する金属箔間の距離が近すぎると、スパークしてしまい都合が悪いからである。
【0023】
また、この実施の形態ではアンテナ15の形状を線状または短冊状としたが勿論これに限られず、波形などさまざまなものが考えられる。例えば図3のように、短冊状アンテナ15の隣接する外端15b同士を連結してコの字形に形成してもかまわない。このようにすれば、マイクロ波の集中する場所を中心近辺のみとすることができる。また、アンテナ15の幅も一定でなくともよく、内端15aから外端15bにかけて次第に幅広にしたり、内端15aを尖鋭にするなど種々の形状を採用することができる。
【0024】
また、この実施の形態では容器10の形状を平面視円形のものとしたが勿論これに限られず、楕円形、多角形、ひょうたん型などさまざまなものが考えられる。また、弁当箱のように複数の小部屋に区画されている容器10において、特定の複数の小部屋に収納された内容物16のみを集中加熱したい場合には、加熱したい複数の小部屋の下に中心点17を置いてもよい。すなわち中心点17の数および位置は任意である。
【実施例および比較例】
【0025】
以下、さらに詳細な実施例および比較例を挙げる。
【0026】
ポリプロピレンからなり、図4(ロ)に示すような形および寸法(図中単位はmm)の電子レンジ加熱容器本体に−20℃の冷凍米飯を収納し、後述するようなアルミニウム箔(厚みは30μm)を容器本体の底面中央から放射線状に貼り付け、容器本体を同様にポリプロピレンからなり、形および寸法が図4(イ)に示すような蓋をする。これを家庭用電子レンジ(三洋電機社製、型式EMO−FR20、600Wで使用)で2分30秒加熱し、加熱後の温度を中心1箇所、中心付近(中心から20mm離れた位置で90度間隔)4箇所、周辺部(内容物上面外周から20mm入った位置で90度間隔)の各位置で測定する。なお、測定高さはいずれも内容物の中心高さである。また、比較例4および実施例8は、図3のようにアルミ箔をコの字型に形成している。
【0027】
結果を図5に示す。図5より、アルミニウム箔が長さ30.5mm、幅2mm、内端と中心との距離が5mmの場合の結果に見られるように、アルミ箔の枚数2、3、4、6枚の場合、枚数が多いほど中心の加熱効果が高いことがわかる。これは枚数が多いほどマイクロ波の集積効果が高いからである。
【0028】
また、アルミ箔の内端と中心との距離が2.5、5.0、10.0mmの場合、距離が短いほど中心の加熱効果が高いことがわかる。これは距離が短いほどマイクロ波が集中するからである。
【0029】
さらにアルミ箔の長さが20.0、30.5、61.0、91.5mmの場合30.5mmが一番中心の加熱効果が高いことがわかる。長さがマイクロ波の波長の1/4であるためマイクロ波の集積効果が高いからである。なお、比較例4および実施例8のようにアルミ箔をコの字型に形成している場合においては、アンテナの長さが61.0mmの場合には集中加熱効果があるが、長さが91.5mmの場合には集中加熱効果がないことがわかる。これも同様の理由からである。
【0030】
なお、アンテナの幅は2mmでも3mmでも加熱効果にほとんど差はなく、幅と加熱効果との関係はあまりないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】電子レンジ加熱容器の斜視図
【図2】電子レンジ加熱容器の底面図
【図3】電子レンジ加熱容器の底面図
【図4】(イ)は実施例および比較例の容器蓋を示す断面図、(ロ)は実施例および比較例の容器を示す断面図
【図5】実施例および比較例の試験結果を示す表
【符号の説明】
【0032】
10 電子レンジ加熱容器
11 底面
12 側面
13 フランジ
14 タブ
15 アンテナ
15a アンテナの内端
15b アンテナの外端
16 内容物(加熱物)
17 中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波透過性容器底面の一点または複数点を中心に複数の導電性線状アンテナを、前記容器底面に沿って放射状に配設した電子レンジ加熱容器。
【請求項2】
前記放射状に配設したアンテナの中心点を、容器に内容物を収納した際に内容物の加熱したい部分の直下に配置した請求項1に記載の電子レンジ加熱容器。
【請求項3】
前記アンテナの長さは、15〜65mmである請求項1または2に記載の電子レンジ加熱容器。
【請求項4】
前記放射状に配設したアンテナの中心点と、前記各アンテナの内端との平均距離は、2〜9mmである請求項1から3のいずれかに記載の電子レンジ加熱容器。
【請求項5】
前記アンテナは、2〜12本である請求項1から4のいずれかに記載の電子レンジ加熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−204516(P2006−204516A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20029(P2005−20029)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】