説明

電子内視鏡システム、電子内視鏡用のプロセッサ装置、および血管情報取得方法

【課題】血管情報のロバスト性を向上させた分布画像を提供する。
【解決手段】照明光を照射する照射手段と、反射光を受光して被写体組織の画像を撮像して、反射光の輝度を表す撮像信号を出力する撮像素子を有する電子内視鏡と、撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、第1画像データから血管情報を生成する血管情報生成手段と、画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、基準値領域内の第2画像データに基づいて血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、血管情報と基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、相対値血管情報から疑似カラーの相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡で撮像した画像から血管に関する情報を取得するとともに、取得した情報を画像化する電子内視鏡システム、電子内視鏡用のプロセッサ装置、および血管情報取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野では、電子内視鏡を用いた診断や治療が数多く行なわれている。電子内視鏡は、被検者の体腔内に挿入される細長の挿入部を備えており、この挿入部の先端にはCCDなどの撮像装置が内蔵されている。また、電子内視鏡は光源装置に接続されており、光源装置で発せられた光は、挿入部の先端から体腔内部に対して照射される。このように体腔内部に光が照射された状態で、体腔内の被写体組織が、挿入部の先端の撮像装置によって撮像される。撮像により得られた画像は、電子内視鏡に接続されたプロセッサ装置で各種処理が施された後、モニタに表示される。したがって、電子内視鏡を用いることによって、被検者の体腔内の画像をリアルタイムに確認することができるため、診断などを確実に行うことができる。
【0003】
光源装置には、波長が青色領域から赤色領域にわたる白色の広帯域光を発することができるキセノンランプなどの白色光源が用いられている。体腔内の照射に白色の広帯域光を用いることで、撮像画像から被写体組織全体を把握することができる。しかしながら、広帯域光を照射したときに得られる撮像画像からは、被写体組織全体を大まかに把握することはできるものの、微細血管、深層血管、ピットパターン(腺口構造)、陥凹や隆起といった凹凸構造などの被写体組織は明瞭に観察することが難しいことがある。このような被写体組織に対しては、波長を特定領域に制限した狭帯域光を照射することで、明瞭に観察できるようになることが知られている。また、狭帯域光を照射したときの画像データからは、血管中の酸素飽和度など被写体組織に関する各種情報を得られることが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、内視鏡画像の信号レベルに基づき、血液情報量算出部で被検体における血液情報量を算出すると共に、領域設定部で内視鏡画像の所定領域を設定し、これらの所定領域の情報と算出された血液情報量から定量的な変化が認識可能な疑似画像データを疑似画像データ生成部で生成して、画像合成部で内視鏡画像と合成して出力している。
【0005】
また、特許文献2では、酸素飽和度によって血管の吸光度が変化する近赤外領域の狭帯域光IR1,IR3と、血管の吸光度が変化しない近赤外領域の狭帯域光IR2とを照射し、各光の照射毎に撮像を行なっている。そして、血管の吸光度が変化する狭帯域光IR1,IR3を照射したきの画像と吸光度が変化しない狭帯域光IR2を照射したときの画像とに基づいて画像間の輝度の変化を算出し、算出した輝度の変化をモノクロあるいは擬似カラーで画像に反映させている。この画像から、血管中の酸素飽和度の情報を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−37718号公報
【特許文献2】特許2648494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2には、特定領域の血液情報量(血管情報)を基準として相対値を算出することはできず、血液情報量、例えば酸素飽和度のロバスト性に問題がある場合があった。
【0008】
本発明の目的は、血管情報のロバスト性を向上させた分布画像を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射手段と、前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を出力する撮像素子を有する電子内視鏡と、前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする電子内視鏡システムを提供する。
【0010】
また、前記画像生成手段は、さらに、前記血管情報生成手段により生成される血管情報から、該血管情報の絶対値を疑似カラーで表す絶対値血管情報画像を生成するものであり、当該電子内視鏡システムは、さらに、前記絶対値血管情報画像と前記相対値血管情報画像とを切り換える画像切換手段を備え、前記画像表示手段は、前記画像切換手段により切り換えられる前記絶対値血管情報画像および前記相対値血管情報画像の一方を表示するのが好ましい。
【0011】
さらに、前記撮像信号は、波長帯域の異なる第1および第2狭帯域光に対応する、第1および第2狭帯域信号であるのが好ましい。
また、前記撮像信号は、さらに、前記第1および第2狭帯域光とは異なる波長領域を持つ第3狭帯域光に対応する第3狭帯域信号を含み、前記血管情報は、前記血管中の血中ヘモグロビンの酸素飽和度であるのが好ましい。
【0012】
さらに、前記第1および第2狭帯域光は、酸素と結合した酸化ヘモグロビンと結合していない還元ヘモグロビンに対して異なる吸光度を示し、かつ、酸素飽和度によって各ヘモグロビンのそれぞれに対する吸光度に差が生じるような波長を含んでいるのが好ましい。
さらに、前記第1狭帯域光の波長領域は440±10nmであり、前記第2狭帯域光の波長領域は470±10nmであり、前記第3狭帯域光の波長領域は400±10nmであるのが好ましい。
また、前記基準値領域設定手段は、第1および第3狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第1輝度比と、第2および第3狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第2輝度比とを算出し、さらに、前記第1輝度比と前記第2輝度比とから血管深さ情報を算出し、前記血管深さ情報から表層血管領域と非表層血管領域とを判別し、該非表層血管領域を前記基準値領域として設定するものであるのが好ましい。
【0013】
また、前記第1狭帯域光の波長領域は540±10nmであり、前記第2狭帯域光の波長領域は560±10nmであり、前記第3狭帯域光の波長領域は500±10nmであって、前記基準値領域設定手段は、さらに、第3および第1狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第3輝度比を算出し、前記第3輝度比に基づき太い血管領域を判別し、該太い血管領域を前記基準値領域として設定し、該基準値領域内の第1および第2狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第4輝度比を算出し、前記画像生成手段は、前記第4輝度比の分布に基づき相対値酸素飽和度画像を生成するのが好ましい。
【0014】
また、前記撮像素子は、R色、G色、B色の3色のカラーフィルタが設けられたR画素、G画素、B画素の3色の画素を有しており、前記撮像信号は、G画素の撮像信号GとR画素の撮像信号Rとを含み、前記血管情報は、血液濃度であるのが好ましい。
さらに、前記基準値領域設定手段は、該電子内視鏡システムの操作者により入力される、前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を前記基準値領域として設定するものであるのが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明は、体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射して、前記被写体組織に照射される照明光の反射光を電子内視鏡の撮像素子で撮像することにより得られる、前記反射光の輝度を表す撮像信号を前記電子内視鏡から受信する受信手段と、前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする電子内視鏡用のプロセッサ装置を提供する。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明は、体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射ステップと、前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を得る撮像ステップと、前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成ステップと、前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成ステップと、前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定ステップと、前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出ステップと、前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出ステップと、前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成ステップと、前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示ステップとを有することを特徴とする血管情報取得方法を提供する。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明は、体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射手段と、前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を出力する撮像素子を有する観察手段と、前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする病理観察装置を提供する。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明は、体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射手段と、前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を出力する撮像素子を有する観察手段と、前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする病理顕微鏡装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、血管情報の基準値領域の値を基準として、全領域について血管情報を相対値で算出することにより、血管情報のロバスト性を向上させた分布画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第1実施形態の電子内視鏡システムの外観図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態および第2実施形態の電子内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】R色、G色、B色のカラーフィルタの分光透過率を示すグラフである。
【図4】(A)は通常光画像モード時におけるCCDの撮像動作を、(B)は特殊光画像モード時におけるCCDの撮像動作を説明する説明図である。
【図5】ヘモグロビンの吸収係数を示すグラフである。
【図6】第1および2輝度比S1/S3,S2/S3と血管深さおよび酸素飽和度との相関関係を示すグラフである。
【図7】(A)は第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3から輝度座標系における座標(X,Y)を求める方法を、(B)は座標(X,Y)に対応する血管情報座標系の座標(U,V)を求める方法を説明する説明図である。
【図8】絶対値酸素飽和度画像または相対値酸素飽和度画像のいずれか一方が表示されるモニタの一例を示す画像図である。
【図9】絶対値酸素飽和度画像または相対値酸素飽和度画像の両方が同時表示されるモニタの一例を示す画像図である。
【図10】血管に関する血管深さ情報および絶対値酸素飽和度情報が文字情報として同時表示されるモニタの一例を示す画像図である。
【図11】絶対値、基準値、および相対値酸素飽和度情報を算出する手順と、それら情報を反映した絶対値および相対値酸素飽和度画像を生成する手順を示すフローチャートである。
【図12】図11のフローの続きを示すフローチャートである。
【図13】本発明に係る第3実施形態の電子内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図14】ロータリーフィルタの概略図である。
【図15】本発明に係る第4実施形態の電子内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る電子内視鏡システムを、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の電子内視鏡システムの構成を表す第1実施形態の外観図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態の電子内視鏡システム10は、被検者の体腔内を撮像する電子内視鏡11と、撮像により得られた信号に基づいて体腔内の被写体組織の画像を生成するプロセッサ装置12と、体腔内を照射する光を供給する光源装置13と、体腔内の画像を表示するモニタ14とを備えている。
電子内視鏡11は、体腔内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部分に設けられた操作部17と、操作部17とプロセッサ装置12および光源装置13との間を連結するユニバーサルコード18とを備えている。
【0023】
挿入部16の先端には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部19が形成されている。湾曲部19は、操作部のアングルノブ21を操作することにより、上下左右方向に湾曲動作する。湾曲部19の先端には、体腔内撮影用の光学系等を内蔵した先端部16aが設けられており、この先端部16aは、湾曲部19の湾曲動作によって体腔内の所望の方向に向けられる。
【0024】
ユニバーサルコード18には、プロセッサ装置12および光源装置13側にコネクタ24が取り付けられている。コネクタ24は、通信用コネクタと光源用コネクタからなる複合タイプのコネクタであり、電子内視鏡11は、このコネクタ24を介して、プロセッサ装置12および光源装置13に着脱自在に接続される。
【0025】
図2に示すように、光源装置13は、広帯域光源30と、シャッター31と、シャッター駆動部32と、第1〜第3狭帯域光源33〜35と、カプラー36と、光源切替部37とを備えている。
広帯域光源30は、キセノンランプ、白色LED、マイクロホワイト光源などであり、波長が赤色領域から青色領域(約470〜700nm)にわたる広帯域光BBを発生する。広帯域光源30は、電子内視鏡11の使用中、常時点灯している。広帯域光源30から発せられた広帯域光BBは、集光レンズ39により集光されて、広帯域用光ファイバ40に入射する。
【0026】
シャッター31は、広帯域光源30と集光レンズ39との間に設けられており、広帯域光BBの光路に挿入されて広帯域光BBを遮光する挿入位置と、挿入位置から退避して広帯域光BBが集光レンズ39に向かうことを許容する退避位置との間で移動自在となっている。
シャッター駆動部32は、プロセッサ装置12内のコントローラー59に接続されており、コントローラー59からの指示に基づいてシャッター31の駆動を制御する。
【0027】
第1〜第3狭帯域光源33〜35は、レーザーダイオードなどであり、第1狭帯域光源33は波長が440±10nmに、好ましくは445nmに制限された狭帯域の光(以下「第1狭帯域光N1」とする)を、第2狭帯域光源34は波長が470±10nmに、好ましくは473nmに制限された狭帯域の光(以下「第2狭帯域光N2」とする)を、第3狭帯域光源35は波長が400±10nmに、好ましくは405nmに制限された狭帯域の光(以下「第3狭帯域光N3」とする)を発生する。第1〜第3狭帯域光源33〜35はそれぞれ第1〜第3狭帯域用光ファイバ33a〜35aに接続されており、各光源で発せられた第1〜第3狭帯域光N1〜N3は第1〜第3狭帯域用光ファイバ33a〜35aに入射する。
【0028】
カプラー36は、電子内視鏡内のライトガイド43と、広帯域用光ファイバ40および第1〜第3狭帯域用光ファイバ33a〜35aとを連結する。これにより、広帯域光BBは、広帯域用光ファイバ40を介して、ライトガイド43に入射することが可能となる。また、第1〜第3狭帯域光N1〜N3は、第1〜第3狭帯域用光ファイバ33a〜35aを介して、ライトガイド43に入射することが可能となる。
【0029】
光源切替部37は、プロセッサ装置内のコントローラー59に接続されており、コントローラー59からの指示に基づいて、第1〜第3狭帯域光源33〜35をON(点灯)またはOFF(消灯)に切り替える。広帯域光BBを用いた通常光画像モードに設定されている場合には、広帯域光BBが体腔内に照射されて通常光画像の撮像が行なわれる一方、第1〜第3狭帯域光源33〜35はOFFにされる。これに対して、第1〜第3狭帯域光N1〜N3を用いた特殊光画像モードに設定されている場合には、広帯域光BBの体腔内への照射が停止される一方、第1〜第3狭帯域光源33〜35が順次ONに切り替えられて特殊光画像の撮像が行なわれる。
【0030】
具体的には、まず、第1狭帯域光源33が光源切替部37によりONに切り替えられる。そして、第1狭帯域光N1が体腔内に照射された状態で、被写体組織の撮像が行なわれる。撮像が完了すると、コントローラー59から光源切替の指示がなされ、第1狭帯域光源33がOFFに、第2狭帯域光源34がONに切り替えられる。そして、第2狭帯域光N2を体腔内に照射した状態での撮像が完了すると、同様にして、第2狭帯域光源34がOFFに、第3狭帯域光源35がONに切り替えられる。さらに、第3狭帯域光N3を体腔内に照射した状態での撮像が完了すると、第3狭帯域光源35がOFFに切り替えられる。
【0031】
電子内視鏡11は、ライトガイド43、CCD44、アナログ処理回路45(AFE:Analog Front End)、撮像制御部46を備えている。
ライトガイド43は、大口径光ファイバ、バンドルファイバなどであり、入射端が光源装置内のカプラー36に挿入されており、出射端が先端部16aに設けられた照射レンズ48に向けられている。光源装置13で発せられた光は、ライトガイド43により導光された後、照射レンズ48に向けて出射する。照射レンズ48に入射した光は、先端部16aの端面に取り付けられた照明窓49を通して、体腔内に照射される。体腔内で反射した広帯域光BBおよび第1〜第3狭帯域光N1〜N3は、先端部16aの端面に取り付けられた観察窓50を通して、集光レンズ51に入射する。
【0032】
CCD44は、集光レンズ51からの光を撮像面44aで受光し、受光した光を光電変換して信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を撮像信号として読み出す。読み出された撮像信号は、AFE45に送られる。また、CCD44はカラーCCDであり、撮像面44aには、R色、G色、B色のいずれかのカラーフィルタが設けられたR画素、G画素、B画素の3色の画素が配列されている。
【0033】
R色、G色、B色のカラーフィルタは、図3に示すような分光透過率52,53,54を有している。集光レンズ51に入射する光のうち、広帯域光BBは波長が約470〜700nmにわたるため、R色、G色、B色のカラーフィルタは、広帯域光BBのうちそれぞれの分光透過率52,53,54に応じた波長の光を透過する。ここで、R画素で光電変換された信号を撮像信号R、G画素で光電変換された信号を撮像信号G、B画素で光電変換された信号を撮像信号Bとすると、CCD44に広帯域光BBが入射した場合には、撮像信号R、撮像信号G、および撮像信号Bからなる広帯域撮像信号が得られる。
【0034】
一方、集光レンズ51に入射する光のうち第1狭帯域光N1は、波長が440±10nmであるため、B色のカラーフィルタのみを透過する。したがって、CCD44に第1狭帯域光N1が入射することで、撮像信号Bからなる第1狭帯域撮像信号が得られる。また、第2狭帯域光N2は、波長が470±10nmであるため、B色およびG色のカラーフィルタの両方を透過する。したがって、CCD44に第2狭帯域光N2が入射することで、撮像信号Bと撮像信号Gとからなる第2狭帯域撮像信号が得られる。また、第3狭帯域光N3は、波長が400±10nmであるため、B色のカラーフィルタのみを透過する。したがって、CCD44に第3狭帯域光N3が入射することで、撮像信号Bからなる第3狭帯域撮像信号が得られる。
【0035】
AFE45は、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲイン制御回路(AGC)、およびアナログ/デジタル変換器(A/D)(いずれも図示省略)から構成されている。CDSは、CCD44からの撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD44の駆動により生じたノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された撮像信号を増幅する。A/Dは、AGCで増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタルな撮像信号に変換してプロセッサ装置12に入力する。
【0036】
撮像制御部46は、プロセッサ装置12内のコントローラー59に接続されており、コントローラー59から指示がなされたときにCCD44に対して駆動信号を送る。CCD44は、撮像制御部46からの駆動信号に基づいて、所定のフレームレートで撮像信号をAFE45に出力する。通常光画像モードに設定されている場合、図4(A)に示すように、1フレームの取得期間内で、広帯域光BBを光電変換して信号電荷を蓄積するステップと、蓄積した信号電荷を広帯域撮像信号として読み出すステップとの合計2つの動作が行なわれる。この動作は、通常光画像モードに設定されている間、繰り返し行なわれる。
【0037】
これに対して、通常光画像モードから特殊光画像モードに切り替えられると、図4(B)に示すように、まず最初に、1フレームの取得期間内で、第1狭帯域光N1を光電変換して信号電荷を蓄積するステップと、蓄積した信号電荷を第1狭帯域撮像信号として読み出すステップとの合計2つの動作が行なわれる。第1狭帯域撮像信号の読み出しが完了すると、1フレームの取得期間内で、第2狭帯域光N2を光電変換して信号電荷を蓄積するステップと、蓄積した信号電荷を第2狭帯域撮像信号として読み出すステップとが行なわれる。第2狭帯域撮像信号の読み出しが完了すると、1フレームの取得期間内で、第3狭帯域光N3を光電変換して信号電荷を蓄積するステップと、蓄積した信号電荷を第3狭帯域撮像信号として読み出すステップとが行なわれる。
【0038】
図2に示すように、プロセッサ装置12は、デジタル信号処理部55(DSP(Digital Signal Processor))と、フレームメモリ56と、血管画像生成部57と、表示制御回路58を備えており、コントローラー59が各部を制御している。
DSP55は、電子内視鏡のAFE45から出力された広帯域撮像信号および第1〜第3狭帯域撮像信号に対し、色分離、色補間、ホワイトバランス調整、ガンマ補正などを行うことによって、広帯域画像データおよび第1〜第3狭帯域画像データ(第1画像データ)を生成する。つまり、DSP55は第1画像データ生成手段である。
フレームメモリ56は、DSP55で作成された広帯域画像データおよび第1〜第3狭帯域画像データを記憶する。広帯域画像データは、R色、G色、B色が含まれるカラー画像データである。
【0039】
血管画像生成部57は、輝度比算出部60と、相関関係記憶部61と、血管深さ−酸素飽和度算出部62と、酸素飽和度画像生成部64と、相対画像生成部200と、基準値領域設定部210とを備えている。
輝度比算出部60は、フレームメモリ56に記憶した第1〜第3狭帯域光画像データから、血管が含まれる血管領域を特定する。そして、輝度比算出部60は、血管領域内の同じ位置の画素について、第1および第3狭帯域画像データ間の第1輝度比S1/S3を求めるとともに、第2および第3狭帯域画像データ間の第2輝度比S2/S3を求める。ここで、S1は第1狭帯域光画像データの画素の輝度値を、S2は第2狭帯域光画像データの画素の輝度値を、S3は第3狭帯域光画像データの画素の輝度値を表している。なお、血管領域の特定方法としては、例えば、血管部分の輝度値とそれ以外の輝度値の差から血管領域を求める方法がある。
【0040】
相関関係記憶部61は、第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3と、血管中の酸素飽和度および血管深さとの相関関係を記憶している。この相関関係は、血管が図5に示すヘモグロビンの吸光係数を有する場合の相関関係であり、これまでの診断等で蓄積された多数の第1〜第3狭帯域光画像データを分析することにより得られたものである。図5に示すように、血管中のヘモグロビンは、照射する光の波長によって吸光係数μaが変化する吸光特性を持っている。吸光係数μaは、ヘモグロビンの光の吸収の大きさである吸光度を表すもので、ヘモグロビンに照射された光の減衰状況を表すIexp(−μa×x)の式の係数である。ここで、Iは光源装置から被写体組織に照射される光の強度であり、x(cm)は被写体組織内の血管までの深さである。
【0041】
また、酸素と結合していない還元ヘモグロビン70と、酸素と結合した酸化ヘモグロビン71は、異なる吸光特性を持っており、同じ吸光度(吸光係数μa)を示す等吸収点(図5における各ヘモグロビン70,71の交点)を除いて、吸光度に差が生じる。吸光度に差があると、同じ血管に対して、同じ強度かつ同じ波長の光を照射しても、輝度値が変化する。また、同じ強度の光を照射しても、波長が異なれば吸光係数μaが変わるので、輝度値が変化する。
【0042】
以上のようなヘモグロビンの吸光特性を鑑みると、酸素飽和度によって吸光度に違いが出る波長が445nmと405nmにあること、および血管深さ情報抽出のためには深達度の短い短波長領域が必要となることから、第1〜第3狭帯域光N1〜N3には、中心波長が450nm以下の波長領域を持つ狭帯域光を少なくとも1つ含めることが好ましい。このような狭帯域光は、第1、第2実施形態では第1および第3狭帯域光に相当する。また、酸素飽和度が同じでも、波長が異なれば吸収係数の値も異なり、粘膜中の深達度も異なっている。したがって、波長によって深達度が異なる光の特性を利用することで、輝度比と血管深さの相関関係を得ることができる。
【0043】
相関関係記憶部61は、図6に示すように、第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3を表す輝度座標系66の座標と、酸素飽和度および血管深さを表す血管情報座標系67の座標との対応付けによって、相関関係を記憶している。輝度座標系66はXY座標系であり、X軸は第1輝度比S1/S3を、Y軸は第2輝度比S2/S3を表している。血管情報座標系67は輝度座標系66上に設けられたUV座標系であり、U軸は血管深さを、V軸は酸素飽和度を表している。U軸は、血管深さが輝度座標系66に対して正の相関関係があることから、正の傾きを有している。このU軸に関して、右斜め上に行くほど血管は浅いことを、左斜め下に行くほど血管が深いことを示している。一方、V軸は、酸素飽和度が輝度座標系66に対して負の相関関係を有することから、負の傾きを有している。このV軸に関して、左斜め上に行くほど酸素飽和度が低いことを、右斜め下に行くほど酸素飽和度が高いことを示している。
【0044】
また、血管情報座標系67においては、U軸とV軸とは交点Pで直交している。これは、第1狭帯域光N1の照射時と第2狭帯域光N2の照射時とで吸光の大小関係が逆転しているためである。即ち、図5に示すように、波長が440±10nmである第1狭帯域光N1を照射した場合には、還元ヘモグロビン70の吸光係数は、酸素飽和度が高い酸化ヘモグロビン71の吸光係数よりも大きくなるのに対して、波長が470±10nmである第2狭帯域光N2を照射した場合には、酸化ヘモグロビン71の吸光係数のほうが還元ヘモグロビン70の吸光係数よりも大きくなっているため、吸光の大小関係が逆転している。なお、第1〜第3狭帯域光N1〜N3に代えて、吸光の大小関係が逆転しない狭帯域光を照射したときには、U軸とV軸とは直交しなくなる。また、波長が400±10nmである第3狭帯域光N3を照射したときには、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数はほぼ等しくなっている。
【0045】
血管深さ−酸素飽和度算出部62は、相関関係記憶部61の相関関係に基づき、輝度比算出部60で算出された第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3に対応する酸素飽和度と血管深さを特定する。ここで、輝度比算出部60で算出された第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3のうち、血管領域内の所定画素についての第1輝度比をS1/S3とし、第2輝度比をS2/S3とする。
【0046】
血管深さ−酸素飽和度算出部62は、図7(A)に示すように、輝度座標系66において、第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3に対応する座標(X,Y)を特定する。座標(X,Y)が特定されたら、図7(B)に示すように、血管情報座標系67において、座標(X,Y)に対応する座標(U,V)を特定する。これにより、血管領域内の所定位置の画素について、血管深さ情報Uおよび酸素飽和度情報Vが求まる。血管深さ情報Uおよび酸素飽和度情報Vは、基準値を求める場合、基準値血管深さ情報Uavおよび基準値酸素飽和度情報Vavであり、絶対値を求める場合、絶対値血管深さ情報Uabおよび絶対値酸素飽和度情報Vabとなる。
【0047】
血管深さ−酸素飽和度算出部62では、後述する基準値領域設定部210で設定された基準値領域について、基準値血管深さ情報Uavおよび基準値酸素飽和度情報Vavが求められ、撮像された血管領域全体について、絶対値血管深さ情報Uabおよび絶対値酸素飽和度情報Vabが求められる。つまり、輝度比算出部60、相関関係記憶部61、および血管深さ−酸素飽和度算出部62は、血管情報生成手段および基準値血管情報算出手段である。
ここで、血管深さ情報は、第2実施形態において表層血管領域(微細血管領域)か、非表層血管領域(中層血管、深層血管)であるかを判別するのに用いられる。
【0048】
基準値領域設定部210は、基準値血管深さ情報Uavおよび基準値酸素飽和度情報Vavを求めるための、基準値領域を設定する。基準値領域は、相対値血管情報(酸素飽和度情報、血液濃度情報)を求めるための基準値を算出するための領域である。基準値領域は、コンソール23からマウス等のポインティングデバイスによって入力されてもよいし、例えば、基準値領域を表層血管(微細血管)領域以外とするために、絶対値血管深さ情報Uabが、中層血管(直径20〜100μm程度)または深層血管(直径100μm以上)である領域が、自動的に基準値領域に選択されるようにしてもよい。なお、基準値領域に設定された領域内の画像データを、第2画像データとする。
【0049】
酸素飽和度画像生成部64は、酸素飽和度の程度に応じてカラー情報が割り当てられたカラーマップ64a(CM(Color Map))を備えている。カラーマップ64aには、例えば、低酸素飽和度であるときにはシアン、中酸素飽和度であるときにはマゼンダ、高酸素飽和度であるときにはイエローというように、酸素飽和度の程度に応じて、明瞭に区別することができる色が割り当てられている。酸素飽和度画像生成部64は、カラーマップ64aから血管深さ−酸素飽和度算出部62で算出された絶対値酸素飽和度情報Vabに対応するカラー情報を特定する。
【0050】
酸素飽和度画像生成部64は、血管領域内の全ての画素についてカラー情報が特定されると、フレームメモリ56から広帯域画像データを読み出し、読み出された広帯域光画像データに対してカラー情報を反映させる。これにより、絶対値酸素飽和度の情報が反映された絶対値酸素飽和度画像データが生成される。生成された絶対値酸素飽和度画像データは再度フレームメモリ56に記憶される。なお、カラー情報は、広帯域光画像データにではなく、第1〜第3狭帯域画像データのいずれか、あるいはこれらを合成した合成画像に対して反映させてもよい。
【0051】
相対値画像生成部200は、酸素飽和度の相対値に応じてカラー情報が割り当てられたカラーマップ200a(CM(Color Map))を備えている。カラーマップ200aには、例えば、基準値よりも低酸素飽和度であるときには青色、基準値と同じ酸素飽和度であるときには黄色、基準値よりも高酸素飽和度であるときには赤色というように、酸素飽和度の相対値に応じて、明瞭に区別することができる色が割り当てられている。
相対画像生成部200は、血管深さ−酸素飽和度算出部62で算出された、絶対値酸素飽和度情報Vabと、基準値酸素飽和度情報Vavとから、差分である相対値酸素飽和度情報Vrを求める相対値血管情報算出手段である。
また、相対値画像生成部200は、酸素飽和度画像生成部64と同様に、カラーマップ200aから相対値酸素飽和度情報Vrに対応するカラー情報を特定する。そして、このカラー情報を広帯域画像データに反映させることにより、相対値酸素飽和度画像データを生成する。つまり、画像生成手段である。
生成された相対値酸素飽和度画像データは、絶対値酸素飽和度画像データと同様、フレームメモリ56に記憶される。
【0052】
表示制御回路58は、フレームメモリ56から1または複数の画像を読み出し、読み出した画像をモニタ14に表示する。画像の表示形態としては様々なパターンが考えられる。例えば、図8に示すように、モニタ14の一方の側に広帯域画像72を表示させ、他方の側に、画像切替SW68(図2参照)により選択された絶対値酸素飽和度画像73または相対値酸素飽和度画像74のいずれかを表示させるようにしてもよい。図8の絶対値酸素飽和度画像73では、血管画像75は低酸素飽和度を示すシアンで、血管画像76は中酸素飽和度を示すマゼンダで、血管画像77は高酸素飽和度を示すイエローで表されている。また、相対値酸素飽和度画像74では、血管画像80は基準値に対して低酸素飽和度を示すシアンで、血管画像81は基準値と同じ酸素飽和度を示すマゼンダで、血管画像82は基準値に対して高酸素飽和度を示すイエローで表されている。
【0053】
図8に対して、図9に示すように、絶対値酸素飽和度画像73および相対値酸素飽和度画像74の両方を同時に表示するようにしてもよい。なお、図10に示すように、絶対値酸素飽和度画像73および相対値酸素飽和度画像74を表示せず、広帯域画像72のうち所定の血管画像85を指定し、その指定した血管画像85について酸素飽和度(StO(Saturated Oxygen))を文字情報として表示するようにしてもよい。
【0054】
次に、血管深さ−酸素飽和度情報を算出する手順と、それら情報を反映した絶対値酸素飽和度画像、および相対値酸素飽和度画像を生成する手順を、図11および図12に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、操作者のコンソール23の操作により、静止画を取得するフリーズ操作が行われ、併せて通常光画像モードから特殊光画像モードに切り替える(ステップS10)。特殊光画像モードに切り替えられると、この切替時点での広帯域画像データが、酸素飽和度画像の生成に用いられる画像データとしてフレームメモリ56に記憶される(ステップS12)。なお、酸素飽和度画像等の生成に用いる広帯域画像データは、コンソール操作前のものを使用してもよい。
【0055】
そして、コントローラー59からシャッター駆動部32に対して照射停止信号が送られると、シャッター駆動部32は、シャッター31を退避位置から挿入位置に移動させ、体腔内への広帯域光BBの照射を停止する。広帯域光BBの照射が停止されると、コントローラー59から光源切替部37に対して照射開始指示が送られる。これにより、光源切替部37は、第1狭帯域光源33をONにし、第1狭帯域光N1を体腔内に照射する(ステップS14)。第1狭帯域光N1が体腔内に照射されると、コントローラー59から撮像駆動部46に対して撮像指示が送られる。これにより、第1狭帯域光N1が照射された状態で撮像が行なわれ、撮像により得られた第1狭帯域撮像信号は、AFE45を介して、DSP55に送られる。DSP55では第1狭帯域撮像信号に基づいて第1狭帯域画像データが生成される。生成された第1狭帯域画像データは、フレームメモリ56に記憶される(ステップS16)。
【0056】
第1狭帯域画像データがフレームメモリ56に記憶されたら、光源切替部37は、コントローラー59からの光源切替指示により、体腔内に照射する光を第1狭帯域光N1から第2狭帯域光N2へと切り替える(ステップS18)。そして、第1狭帯域光N1の場合と同様に撮像が行なわれ、撮像により得られた第2狭帯域撮像信号に基づいて第2狭帯域画像データが生成される。生成された第2狭帯域画像データは、フレームメモリ56に記憶される(ステップS20)。
【0057】
第2狭帯域画像データがフレームメモリ56に記憶されたら、光源切替部37は、コントローラー59からの光源切替指示により、体腔内に照射する光を第2狭帯域光N2から第3狭帯域光N3へと切り替える(ステップS22)。そして、第1および第2狭帯域光N1,N2の場合と同様に撮像が行なわれ、撮像により得られた第3狭帯域撮像信号に基づいて第3狭帯域画像データが生成される。生成された第3狭帯域画像データは、フレームメモリ56に記憶される(ステップS24)。つまり、面順次で各波長ごとの画像データが取得される。
【0058】
フレームメモリ56に広帯域画像データ、第1〜第3狭帯域画像データが記憶されたら、輝度比算出部60は、第1狭帯域画像データ、第2狭帯域画像データ、第3狭帯域画像データの3つの画像データから、血管を含む血管領域を特定する。そして、血管領域内の同じ位置の画素について、第1および第3狭帯域画像データ間の第1輝度比S1/S3と、第2および第3狭帯域画像データ間の第2輝度比S2/S3が算出される(ステップS26)。
【0059】
次に、血管深さ−酸素飽和度算出部62は、相関関係記憶部61の相関関係に基づいて、第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3に対応する輝度座標系の座標(X,Y)を特定する。さらに、座標(X,Y)に対応する血管情報座標系の座標(U,V)を特定することにより、血管領域内の所定画素についての絶対値血管深さ情報Uabおよび絶対値酸素飽和度情報Vabが求められる(ステップS28)。
【0060】
絶対値酸素飽和度情報Vabが求められると、絶対値酸素飽和度情報Vabに対応するカラー情報が酸素飽和度画像生成部64のCM64aから特定される。特定されたカラー情報は、プロセッサ装置12内のRAM(図示省略)に記憶される(ステップS30)。
【0061】
そして、カラー情報がRAMに記憶されると、血管領域内の全ての画素について、上述した手順で、絶対値血管深さ情報Uabおよび絶対値酸素飽和度情報Vabを求めるとともに、絶対値酸素飽和度情報Vabに対応するカラー情報を特定する(ステップS32)。
【0062】
そして、血管領域内の全ての画素について絶対値酸素飽和度情報と対応するカラー情報が得られると、酸素飽和度画像生成部64は、フレームメモリ56から広帯域画像データを読み出し、この広帯域画像データに対して、RAMに記憶されたカラー情報を反映させることにより、擬似カラー画像である絶対値酸素飽和度画像データを生成する。生成された絶対値酸素飽和度画像データは、再度フレームメモリ56に記憶される(ステップS34)。
【0063】
そして、表示制御回路58は、フレームメモリ56から広帯域画像データ、および絶対値酸素飽和度画像データを読み出し、これら読み出した画像データに基づいて、絶対値酸素飽和度画像をモニタ14に表示する(ステップS36)。
【0064】
表示された絶対値酸素飽和度画像に対して、基準値領域設定部210は、操作者がコンソール23のポインティングデバイス(例えば、マウス)によって、酸素飽和度の基準値を算出する基準値領域を設定することができるように、メッセージ等をモニタ14に表示する。次に、操作者のポインティングデバイスの操作により、基準値領域が設定される(ステップS38)。基準値領域としては、例えば、非病変部分の領域等が挙げられる。なお、メッセージ等を表示することなく、絶対値酸素飽和度画像が表示されたら、いつでも基準値領域が設定可能にしてもよい。
【0065】
基準値領域が設定されると、相対値画像生成部200は、基準値領域設定部210により設定された基準値領域内の画像データ(第2画像データ)の、絶対値酸素飽和度情報Vabの平均値を算出し、基準値酸素飽和度情報Vavを生成する(ステップS40)。相対値画像生成部200は、血管領域内全ての画素の絶対値酸素飽和度情報Vabと、基準値酸素飽和度情報Vavとの差分を算出し、血管領域内全ての画素の相対値酸素飽和度情報Vrを生成する(ステップS42)。
【0066】
相対値酸素飽和度情報Vrが生成されると、血管領域内全ての画素の相対値酸素飽和度情報Vrに対応するカラー情報が相対値画像生成部200のCM200aから特定される。特定されたカラー情報は、プロセッサ装置12内のRAM(図示省略)に記憶される(ステップS44)。
【0067】
そして、相対値画像生成部200は、フレームメモリ56から広帯域画像データを読み出し、この広帯域画像データに対して、RAMに記憶されたカラー情報を反映させることにより、擬似カラー画像である相対値酸素飽和度画像データを生成する。生成された相対値酸素飽和度画像データは、再度フレームメモリ56に記憶される(ステップS46)。
【0068】
そして、表示制御回路58は、フレームメモリ56から広帯域画像データ、絶対値酸素飽和度画像データ、および相対値酸素飽和度画像データを読み出し、これら読み出した画像データに基づいて、図8に示すような広帯域画像72、絶対値酸素飽和度画像73、および相対値酸素飽和度画像74をモニタ14に表示する(ステップS48)。図8に示すモニタ14では、通常光画像である広帯域画像72と、絶対値酸素飽和度画像73が同時に並列表示され、画像切替SW68によって表示画像が切り替えられると(ステップS50)、通常光画像である広帯域画像72と、相対値酸素飽和度画像74とが同時に並列表示される(ステップS52)。なお、絶対値酸素飽和度画像73と、相対値酸素飽和度画像74とは、操作者によって任意に切り替えることができる。また、図9に示すモニタ14のように、広帯域画像72、絶対値酸素飽和度画像73、および相対値酸素飽和度画像74の3つの画像が同時に並列表示されてもよい。
【0069】
本発明の第2実施形態は、図2に示す上述の第1実施形態の電子内視鏡システムと比べ、絶対値血管深さ情報を用いて、血管領域内の全ての画素について、表層血管領域(微細血管領域)か、非表層血管領域(中層血管、深層血管)であるかを判別し、非表層血管領域を自動的に基準値領域とするものであり、基本的に同様の構成を有するものである。よって、同様の構成要素には同一の符号を付し、図示およびその詳細な説明は省略する。
【0070】
第2実施形態の電子内視鏡システムの動作は、第1実施形態の電子内視鏡システムの場合とほぼ同様であるから、繰り返しの説明は省略し、異なる部分である図11および図12に示すフローチャートの、ステップS10およびS38について説明する。
本発明の第2実施形態では、ステップS10において、操作者のコンソール23の操作によって、特殊光画像モードに切り替えられると、自動的にフリーズ操作がされるか(静止画)、あるいは、画像の出力を動画とする場合には、CCD44からの出力が順次、リアルタイム処理される。
【0071】
ステップS38では、基準値領域設定部210がステップS32で取得した、血管領域内の全ての画素についての絶対値血管深さ情報を用いて、血管領域内の全ての画素について、表層血管領域か、非表層血管領域(中層血管、深層血管)であるかを判別し、非表層血管領域を自動的に基準値領域とする。ここで、基準値領域は、非表層血管領域全域でもよいし、非表層血管領域の中の所定位置および所定サイズの領域でもよい。
各画素が表層血管領域であるか否かは、波長405nmと473nmの2画像における画像信号の比を用いて判別することができる。つまり、表層の微細血管ならば、画素値の比S(405)/S(473)が小さくなる性質があるため、閾値処理により当該比が大きい領域を選択することで、非表層血管領域(中層血管、深層血管)を判別することができる。ここで、表層血管領域(微細血管領域)とは、対象とする消化管粘膜表層に存在する、太さ10〜20μm程度の血管部分をいう。また、非表層血管領域は、表層血管領域以外の領域、すなわち、中層血管および深層血管の領域をいう。なお、中層血管は直径20〜100μm程度、深層血管は、直径100μm以上のものをいう。
【0072】
その後、第1実施形態と同様に、基準値酸素飽和度情報が取得され、絶対値酸素飽和度情報と基準値酸素飽和度情報との差分から相対値酸素飽和度情報が取得されて、相対値酸素飽和度画像が生成される。
このように、第2実施形態では非表層血管領域を自動的に基準値領域とすることで、操作者による基準値領域の設定を不要とすることができる。
【0073】
図13は上述の第1および第2実施形態と異なる、本発明に係る電子内視鏡システム110の構成を表す第3実施形態のブロック図である。
電子内視鏡システム110は、図2に示す本発明の第2実施形態の電子内視鏡システムと比べ、照明光の光源に広帯域光源と光学フィルタを用いて、第2実施形態と波長の異なる3つの狭帯域光を発生させるものであり、基本的に同様の構成を有するものである。よって、同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
フィルタ切替部202は、光学フィルタを切り替えるものであり、広帯域光源30から発せられた広帯域光BBが、集光レンズ39により集光されて入射される。フィルタ切替部202は、光学フィルタを切り替えることで第1〜第3狭帯域光N1〜N3を発生させ、第1〜第3狭帯域光N1〜N3および広帯域光BBを切り替える。電子内視鏡システム110では、第1〜第3狭帯域光N1〜N3として、それぞれ、中心波長が540nm、560nm、500nmの狭帯域光を用いる。
【0075】
光学フィルタは、例えば図14に示すようなロータリーフィルタ130を用いることができる。ロータリーフィルタ130は、広帯域光源30からの広帯域光BBをそのまま透過させる広帯域光透過領域131と、広帯域光BBのうち第1狭帯域光N1を透過させる第1狭帯域光透過領域132と、広帯域光BBのうち第2狭帯域光N2を透過させる第2狭帯域光透過領域133と、広帯域光BBのうち第3狭帯域光N3を透過させる第3狭帯域光透過領域134とを備えている。ロータリーフィルタ130は回転自在であり、広帯域光BBを発生させるときには広帯域光透過領域131が、第1〜第3狭帯域光N1〜N3いずれかの光を発生させるときにはその光に対応する第1〜第3狭帯域光透過領域132〜134が、広帯域光源30の光軸上にセットされるように、ロータリーフィルタ130を回転させる。
【0076】
第3実施形態の電子内視鏡システム110の動作は、第2実施形態の電子内視鏡システムの場合と基本的に同様であるから、繰り返しの説明は省略し、異なる部分である図11および図12に示すフローチャートのステップS26以降について説明する。
【0077】
本発明の第3実施形態では、ステップS26に代わり、輝度比算出部60で第3輝度比S3/S1が算出される。
第3輝度比S3/S1は、波長500nmと540nmの2画像における画像信号の所定画素の比であり、中層以深の太い血管ならば、画素値の比S(500)/S(540)が特に小さくなる性質がある。なお、太い血管とは、対象とする消化管粘膜の中層以深(深さ100μm以上)に存在する太さ100μm以上の血管をいう。
基準値領域設定部210が、血管領域内の全ての画素について、第3輝度比の閾値処理を行って、当該比が小さい領域を判別する。つまり、太い血管(深層血管)領域であるかを判別する。次に、血管領域内のうち、該太い血管領域を自動的に基準値領域とする。ここで、基準値領域は、太い血管領域全域でもよいし、太い血管領域の中の所定位置および所定サイズの領域でもよい。
【0078】
次に、輝度比算出部60で基準値領域に設定された太い血管領域内について、第4輝度比S1/S2が算出される。第4輝度比S1/S2は、波長540nmと560nmの2画像における画像信号の所定画素の比であり、酸素飽和度が大きいほど、画素値の比S(540)/S(560)が大きくなる。
【0079】
太い血管領域は動脈か静脈のいずれかであり、正常な状態であれば、それぞれ典型的に酸素飽和度は100%、70%程度になることが知られている。そこで、基準値領域内の第4輝度比の分布を求め、上位20%の平均値を酸素飽和度100%に、下位20%の平均値を酸素飽和度70%に割り当て、それぞれ、第1基準値酸素飽和度情報、および第2基準値酸素飽和度情報とする。すると、動脈は第1基準値酸素飽和度情報を基準として相対値で表され、静脈は第2基準値酸素飽和度情報を基準として相対値で表される。また、動脈と静脈以外の部分は、例えば、第1基準値酸素飽和度情報と第2基準値酸素飽和度情報の値の間を等間隔で分割して相対値を割り当てることで、血管領域全体の相対値酸素飽和度画像を生成することができる。
【0080】
図15は上述の第1〜第3実施形態と異なる、本発明に係る電子内視鏡システム120の構成を表す第4実施形態のブロック図である。
電子内視鏡システム120は、図2に示す本発明の第1実施形態の電子内視鏡システムと比べ、広帯域光を直接体腔内に照射すること、および狭帯域光の代わりにCCDのRチャンネルとGチャンネルの画像を用いることを除いて、基本的に同様の構成を有するものである。よって、同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0081】
血液濃度画像生成部212は、第1実施形態の酸素飽和度画像生成部64と同様に、血液濃度に応じてカラー情報が割り当てられたカラーマップ212a(CM(Color Map))を備えている。血液濃度画像生成部212は、カラーマップ212aから輝度比算出部60で算出された信号比G/R(絶対値血液濃度情報)に対応するカラー情報を特定する。
【0082】
血液濃度画像生成部212は、血管領域内の全ての画素についてカラー情報が特定されると、フレームメモリ56から広帯域画像データを読み出し、読み出された広帯域光画像データに対してカラー情報を反映させる。これにより、絶対値血液濃度の情報が反映された絶対値血液濃度画像データが生成される。
【0083】
第4実施形態の電子内視鏡システム120の動作は、広帯域光を直接体腔内に照射すること、および狭帯域光の代わりにCCDのRチャンネルとGチャンネルの画像を用いることを除いて、基本的に第1実施形態の電子内視鏡システムの場合と同様であるから、繰り返しの説明は省略して説明する。
【0084】
本発明の第4実施形態では、広帯域光源30から出射された広帯域光が体腔内に照射され、操作者のコンソール23の操作により、静止画を取得するフリーズ操作が行われ、第1実施形態の通常光画像モードと同様の、広帯域画像信号が取得される。
輝度比算出部60では、取得された広帯域画像信号の撮像信号G、および撮像信号Rの画素値の比である信号比G/Rが算出される。信号比G/Rは、絶対値血液濃度情報であり、第1実施形態の絶対値酸素飽和度情報に相当する。つまり、撮像信号Gおよび撮像信号Rによる画像データは、それぞれ第1実施形態の第1、第2狭帯域画像データに相当する。
ここで、信号比G/Rは、CCD44のRチャンネルとGチャンネルの2画像における画像信号の比であり、血液が濃くなると、つまり血中ヘモグロビン濃度が濃くなると、信号比G/Rは小さくなる性質がある。なお、絶対値血液濃度情報は、信号比G/Rだけでなく、信号比G/Rの対数でもよい。
【0085】
その後、第1実施形態と同様に、血液濃度画像生成部212により絶対値血液濃度画像データが生成される。そして、操作者によってコンソール23が操作されて、基準値領域設定部210により基準値領域が設定され、基準値領域内の絶対値血液濃度情報の平均値から、基準値血液濃度情報が生成される。また、血管領域内の全ての絶対値血液濃度情報と基準値血液濃度情報との差分が算出され、相対値血液濃度情報が生成されて、擬似カラー画像である相対値血液濃度画像を生成することができる。
【0086】
上述のように、本発明の第1実施形態によれば、操作者の入力に応じて酸素飽和度の擬似カラー表示を絶対値表示と相対値表示とで、任意に切り替えることができる。また、本発明の第2実施形態によれば、自動的に非表層血管領域を判別し基準値領域として、相対値の酸素飽和度の擬似カラー表示をすることができる。さらに、本発明の第3実施形態によれば、太い血管領域を判別し、太い血管領域の相対値の酸素飽和度を擬似カラー表示することで、動脈と静脈を容易に判別することができる。また、本発明の第4実施形態によれば、操作者の入力に応じて血液濃度の擬似カラー表示を絶対値表示と相対値表示とで、任意に切り替えることができる。このように相対値表示を行うことで、酸素飽和度および血液濃度のロバスト性を向上させることができる。
【0087】
なお、上記第1、第2実施形態では、第1〜第3狭帯域光源を用いて血管深さおよび酸素飽和度を求めたが、さらに波長が532nm近傍(例えば530±10nm)に制限された第4狭帯域光N4を発生する第4狭帯域光源を追加し、第1〜第4狭帯域光N1〜N4の照射によって第1〜第4狭帯域画像データを生成し、これら画像データに基づいて血管深さおよび酸素飽和度を求めてもよい。なお、光は波長が長くなるほど被写体組織の深い層に到達する性質を有するため、第2狭帯域光N2よりも波長が長い第4狭帯域光N4を用いることで、更に深い位置にある血管に関する情報を得ることができる。
【0088】
この場合、輝度比算出部60は、第1〜第4狭帯域画像データから血管領域を特定する。そして、第1実施形態と同様に、第1および第2輝度比S1/S3,S2/S3を求めるとともに、第1および第4狭帯域画像データ間の第3輝度比S4/S3を求める。ここで、S4は、第4狭帯域画像データの画素の輝度値を表している。そして、血管深さ−酸素飽和度算出部62は、予め実験等により得られた第1〜第3輝度比S1/S3,S2/S3,S4/S3と血管深さおよび酸素飽和度との相関関係に基づき、第1実施形態と同様の手順で、輝度比算出部60で算出した第1〜第3輝度比に対応する血管深さ情報および酸素飽和度情報を求める。
【0089】
また、第1〜第4狭帯域光N1〜N4の照射毎に撮像を行なうのではなく、第1〜第4狭帯域光N1〜N4のいずれかを合成した光を照射して撮像することにより、撮像信号のフレーム数を減らしてもよい。例えば、まず、最初に第1狭帯域光N1と第4狭帯域光N4とを同時に体腔内に照射して撮像する。その後に、第2狭帯域光N2と第3狭帯域光N3とを同時に体腔内に照射して撮像をする。これにより、合計2フレームの撮像信号が得られる。
【0090】
最初の撮像で得られる撮像信号は、以下に示すような輝度値を有する撮像信号B1と撮像信号G1である。また、次の撮像により得られる撮像信号は、以下のような輝度値を有する撮像信号B2と撮像信号G2である。
撮像信号B1=第1狭帯域光N1による輝度値L1+第4狭帯域光N4による輝度値L4
撮像信号G1=第4狭帯域光N4による輝度値L4
撮像信号B2=第2狭帯域光N2による輝度値L2+第3狭帯域光N3による輝度値L3
撮像信号G2=第2狭帯域光N2による輝度値L2
【0091】
ここで、輝度値L2のみ有する撮像信号G2から第2狭帯域画像データが、輝度値L4のみ有する撮像信号G1から第4狭帯域画像データが生成される。また、B1−(定数)×G1の演算により、撮像信号B1から輝度値L4を分離することで、第1狭帯域画像データが生成される。ここで、「定数」は第1狭帯域光N1と第4狭帯域光N4の強度比から決められる。さらに、B2−(定数)×G2の演算により、撮像信号B2から輝度値L3を分離することで、第2狭帯域画像データが生成される。ここで、「定数」は第2狭帯域光N2と第3狭帯域光N3の強度比から決められる。
【0092】
なお、上述の第1、第4実施形態では、絶対値酸素飽和度画像または絶対値血液濃度画像が一旦表示された後に基準値領域が操作者により設定されたが、絶対値酸素飽和度画像または絶対値血液濃度画像が表示される前に、広帯域画像上で基準値領域が操作者により設定されるようにしてもよい。また、第2実施形態では、広帯域画像の次に絶対値酸素飽和度画像が表示され、その後相対値酸素飽和度画像が表示されるのではなく、広帯域画像の次に相対値酸素飽和度画像が表示されてもよい。
【0093】
また、第1、第2実施形態では、第1〜第3狭帯域光N1〜N3の発生に第1〜第3狭帯域光源を用いたが、第3実施形態と同様に、第1〜第3狭帯域光源を設置せず、図14に示すロータリーフィルタ130を設けて、第1〜第3狭帯域光N1〜N3を発生させてもよい。
【0094】
なお、本発明は、挿入部等を有する挿入型の電子内視鏡の他、CCDなどの撮像素子等をカプセルに内蔵させたカプセル型の電子内視鏡に対しても適用することができる。
【0095】
以上、本発明の電子内視鏡システム、電子内視鏡用のプロセッサ装置、および血管情報取得方法について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0096】
10,110,120 電子内視鏡システム
11 電子内視鏡
12 プロセッサ装置
13 光源装置
14 モニタ
16 挿入部
16a 先端部
17 操作部
18 ユニバーサルコード
19 湾曲部
21 アングルノブ
23 コンソール
24 コネクタ
30 広帯域光源
31 シャッター
32 シャッター駆動部
33〜35 第1〜第3狭帯域光源
33a〜35a 第1〜第3狭帯域用光ファイバ
36 カプラー
37 光源切替部
39 集光レンズ
40 広帯域用光ファイバ
43 ライトガイド
44 CCD
44a 撮像面
45 アナログ処理回路(AFE)
46 撮像制御部
48 照射レンズ
49 照明窓
50 観察窓
51 集光レンズ
52,53,54 分光透過率
55 デジタル信号処理部(DSP)
56 フレームメモリ
57 血管画像生成部
58 表示制御回路
59 コントローラー
60 輝度比算出部
61 相関関係記憶部
62 血管深さ−酸素飽和度算出部
64 酸素飽和度画像生成部
64a,200a,212a カラーマップ
66 輝度座標系
67 血管情報座標系
68 画像切替SW
70 還元ヘモグロビン
71 酸化ヘモグロビン
72 広帯域画像
73 絶対値酸素飽和度画像
74 相対値酸素飽和度画像
75,76,77,80,81,82,85 血管画像
130 ロータリーフィルタ
131 広帯域光透過領域
132 第1狭帯域光透過領域
133 第2狭帯域光透過領域
134 第3狭帯域光透過領域
200 相対画像生成部
202 フィルタ切替部
210 基準値領域設定部
212 血液濃度画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射手段と、
前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を出力する撮像素子を有する電子内視鏡と、
前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、
前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、
前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、
前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、
前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、
前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記画像生成手段は、さらに、前記血管情報生成手段により生成される血管情報から、該血管情報の絶対値を疑似カラーで表す絶対値血管情報画像を生成するものであり、
当該電子内視鏡システムは、さらに、前記絶対値血管情報画像と前記相対値血管情報画像とを切り換える画像切換手段を備え、
前記画像表示手段は、前記画像切換手段により切り換えられる前記絶対値血管情報画像および前記相対値血管情報画像の一方を表示することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記撮像信号は、波長帯域の異なる第1および第2狭帯域光に対応する、第1および第2狭帯域信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記撮像信号は、さらに、前記第1および第2狭帯域光とは異なる波長領域を持つ第3狭帯域光に対応する第3狭帯域信号を含み、
前記血管情報は、前記血管中の血中ヘモグロビンの酸素飽和度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記第1および第2狭帯域光は、酸素と結合した酸化ヘモグロビンと結合していない還元ヘモグロビンに対して異なる吸光度を示し、かつ、酸素飽和度によって各ヘモグロビンのそれぞれに対する吸光度に差が生じるような波長を含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記第1狭帯域光の波長領域は440±10nmであり、前記第2狭帯域光の波長領域は470±10nmであり、前記第3狭帯域光の波長領域は400±10nmであることを特徴とする請求項4または5に記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記基準値領域設定手段は、第1および第3狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第1輝度比と、第2および第3狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第2輝度比とを算出し、さらに、前記第1輝度比と前記第2輝度比とから血管深さ情報を算出し、前記血管深さ情報から表層血管領域と非表層血管領域とを判別し、該非表層血管領域を前記基準値領域として設定するものであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記第1狭帯域光の波長領域は540±10nmであり、前記第2狭帯域光の波長領域は560±10nmであり、前記第3狭帯域光の波長領域は500±10nmであって、
前記基準値領域設定手段は、さらに、第3および第1狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第3輝度比を算出し、前記第3輝度比に基づき太い血管領域を判別し、該太い血管領域を前記基準値領域として設定し、該基準値領域内の第1および第2狭帯域信号に対応する、それぞれの前記第1画像データ間の第4輝度比を算出し、
前記画像生成手段は、前記第4輝度比の分布に基づき相対値酸素飽和度画像を生成することを特徴とする請求項4または5に記載の電子内視鏡システム。
【請求項9】
前記撮像素子は、R色、G色、B色の3色のカラーフィルタが設けられたR画素、G画素、B画素の3色の画素を有しており、
前記撮像信号は、G画素の撮像信号GとR画素の撮像信号Rとを含み、
前記血管情報は、血液濃度であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項10】
前記基準値領域設定手段は、該電子内視鏡システムの操作者により入力される、前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を前記基準値領域として設定するものであることを特徴とする請求項1〜6、または9のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項11】
体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射して、前記被写体組織に照射される照明光の反射光を電子内視鏡の撮像素子で撮像することにより得られる、前記反射光の輝度を表す撮像信号を前記電子内視鏡から受信する受信手段と、
前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、
前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、
前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、
前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、
前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、
前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする電子内視鏡用のプロセッサ装置。
【請求項12】
体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射ステップと、
前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を得る撮像ステップと、
前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成ステップと、
前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成ステップと、
前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定ステップと、
前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出ステップと、
前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出ステップと、
前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成ステップと、
前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示ステップとを有することを特徴とする血管情報取得方法。
【請求項13】
体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射手段と、
前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を出力する撮像素子を有する観察手段と、
前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、
前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、
前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、
前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、
前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、
前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする病理観察装置。
【請求項14】
体腔内の血管を含む被写体組織に照明光を照射する照射手段と、
前記照射手段から前記被写体組織に照射される照明光の反射光を受光して該被写体組織の画像を撮像して、前記反射光の輝度を表す撮像信号を出力する撮像素子を有する観察手段と、
前記撮像信号から波長帯域の異なる複数の第1画像データを出力する第1画像データ生成手段と、
前記第1画像データから、前記血管に関する血管情報を生成する血管情報生成手段と、
前記電子内視鏡により撮像される画像内の所定の領域を基準値領域として設定する基準値領域設定手段と、
前記基準値領域設定手段により設定される基準値領域内の第2画像データに基づいて前記血管情報の基準値を算出し、基準値血管情報を取得する基準値血管情報算出手段と、
前記血管情報と前記基準値血管情報との差分から相対値血管情報を算出する相対値血管情報算出手段と、
前記相対値血管情報から、該血管情報の相対値を疑似カラーで表す相対値血管情報画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段により生成される相対値血管情報画像を表示する画像表示手段とを有することを特徴とする病理顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−194028(P2011−194028A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64049(P2010−64049)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】