説明

電子内視鏡システム

【課題】少なくとも体腔内に挿入された内視鏡先端部から突出自在な処置具の先端部と該内視鏡先端部との相対位置を検出することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【解決手段】電子内視鏡システムは、先端部に撮像素子および第一の磁場発生器を有し、前記撮像素子により被検者の体腔内の画像を撮像する内視鏡と、先端部に磁場検出センサを有し、内視鏡の鉗子管路を介して内視鏡先端部から突出するように構成される処置具と、第一の磁場発生器から発生した磁場に基づき磁場検出センサで発生する誘導電流に基づいて、該第一の磁場発生器に対する処置具先端部の位置を検出する位置検出手段と、を有する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に挿入した内視鏡先端部に設けられた撮像素子により撮像された画像を観察しつつ、該先端部から処置具を突出させて医療的処置を行う電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体内に挿入された内視鏡の先端部分の位置を検出する電子内視鏡システムが様々提案されている。その中には、コイルに交流電流を流すことにより磁場を発生させる磁場発生装置と、該磁場発生装置により発生した磁場をコイル等により検出する磁場検出センサとを用いた電子内視鏡システムがある。該電子内視鏡システムにおいては、内視鏡の挿入部の先端に配置された磁場検出センサで発生した誘起電流の大きさによって、内視鏡の先端部の位置が検出されている。上述した電子内視鏡システムは、例えば以下の特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−145598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、被検者の体外に配置された磁場発生器により発生した磁場を、内視鏡の鉗子口から鉗子管路(鉗子チャンネル)に挿入された処置具の先端部に配設された磁場検出センサが検知することにより、内視鏡の体内挿入部の彎曲形態を検出する電子内視鏡システムが開示されている。この電子内視鏡システムによれば、内視鏡の先端部の位置・軌跡を検知することが可能となる。
【0005】
内視鏡を用いた処置では、内視鏡の先端部の鉗子チャンネル開口部から突出した鉗子等の処置具により体内の病変部を処置する場合があり、この時には内視鏡により撮像された画像に基づいて処置具を移動し、操作していた。また例えば、胃の幽門を通じて側視内視鏡を十二指腸に挿入し、処置具を内視鏡の先端部から突出させてファーター乳頭に挿入する場合などは、撮像された画像には、処置具の先端部は写されない。そのため画像による目視以外に、内視鏡の先端部に対する処置具の先端部の相対位置を、例えば距離情報として検出することが望まれていた。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑み、少なくとも体腔内に挿入された内視鏡先端部から突出自在な処置具の先端部と該内視鏡先端部との相対位置を検出することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明の請求項1に記載の電子内視鏡システムは、先端部に撮像素子および第一の磁場発生器を有し、前記撮像素子により被検者の体腔内の画像を撮像する内視鏡と、先端部に磁場検出センサを有し、内視鏡の鉗子管路を介して内視鏡先端部から突出するように構成される処置具と、第一の磁場発生器から発生した磁場に基づき磁場検出センサで発生する誘導電流に基づいて、該第一の磁場発生器に対する処置具先端部の位置を検出する位置検出手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の電子内視鏡システムによれば、被検者の体外に配置される第二の磁場発生器を有し、第一の磁場発生器は、コイルからなり、第二の磁場発生器から磁場が発生している間は、磁場を発生せず、該第二の磁場発生器から発生した磁場により誘導電流を発生させ、位置検出手段は、第一の磁場発生器から発生した誘導電流に基づいて、第二の磁場発生器に対する第一の磁場発生器の位置をさらに検出することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の電子内視鏡システムによれば、磁場検出センサは、第二の磁場発生器から磁場が発生している間は、該第二の磁場発生器から発生した磁場により誘導電流を発生させ、位置検出手段は、磁場検出センサおよび第一の磁場発生器から発生した誘導電流に基づいて、該第一の磁場発生器に対する処置具先端部の位置を検出する。
【0010】
第二の磁場発生器は、互いに直交する少なくとも第一の方向および第二の方向に磁場を発生させることが望ましい(請求項4)。
【0011】
請求項5に記載の電子内視鏡システムによれば、第一の磁場発生器と第二の磁場発生器で、磁場の発生源を切り替える切り替え手段と、切り替え手段による磁場の発生の切り替えに応じて、第一の磁場発生器と第二の磁場発生器を択一的に駆動制御する制御手段と、を有する。具体的には、切り替え手段は、第一の磁場発生器と、該第一磁場発生器に電流を供給する電流供給手段または位置検出手段とが択一的に接続されるように配設されたトライステートバッファを含むように構成される(請求項6)。
【0012】
請求項7に記載の電子内視鏡システムによれば、位置検出手段が検出した位置に関する情報を通知する通知手段を有することが望ましい。通知手段としては、例えば、情報を表示する表示手段が該当する(請求項8)。また、請求項9に記載の電子内視鏡システムによれば、通知手段は、位置検出手段が検出した結果を、距離情報に変換する演算部を有することが好ましい。
【0013】
別の観点から、請求項10に記載の電子内視鏡システムは、撮像素子により被検者の体内を撮像する内視鏡と、内視鏡が挿入される被検者の周囲に配置される磁場発生器と、内視鏡の先端部に配設され、磁場発生器に対する内視鏡の先端部の相対位置を検出する第一の磁場検出センサと、内視鏡の鉗子口から鉗子管路に挿入され、開口部から突出する処置具と、処置具の先端部に配設され、磁場発生器に対する処置具の先端部の相対位置を検出する第二の磁場検出センサと、磁場発生器から発生した磁場により第一の磁場検出センサで生じる誘導電流の大きさに基づいた、磁場発生器に対する内視鏡の先端部の相対位置、磁場発生器から発生した磁場により第二の磁場検出センサで生じる誘導電流の大きさに基づいた、磁場発生器に対する処置具の先端部の相対位置、各相対位置に基づいた処置具の先端部に対する内視鏡の先端部の相対位置、それぞれを検出する検出手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内視鏡の先端部に第一の磁場発生器を配設し、処置具の先端部に磁場検出センサを配設することにより、内視鏡の先端部に対する処置具の先端部の相対位置を検出することが可能となる。また第一の磁場発生器をコイルにより構成し、被検者の体外に第二の磁場発生器を配置すれば、上記磁場検出センサのみならず第一の磁場発生器も磁場検出センサとして作用させることができる。これにより、内視鏡の先端部に対する処置具の先端部の相対位置のみならず、第二の磁場発生器に対する処置具の先端部の相対位置や、第二の磁場発生器に対する内視鏡先端部の相対位置も検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明による電子内視鏡システムを示す図である。また、図2は電子内視鏡システム1の一部を抽出して詳細に示すブロック図である。電子内視鏡システム1は、被検者の体内に挿入される内視鏡3、プロセッサ5、内視鏡3が挿入される被検者の周囲に配置され、プロセッサ5に着脱可能に接続された第二磁場発生器7、内視鏡3で撮像された画像を表示するモニタ9を有する。
【0016】
内視鏡3は、プロセッサ5から内視鏡3に照射光を伝送するライトガイド11、ライトガイド先端部11aから射出された照射光を被検者の体内に照射するための配光レンズ13、被検者の体内からの光を集光する対物レンズ15、対物レンズ15を介して被検者の体内を撮像するカラーCCD等の撮像素子17、鉗子口18a及び内視鏡3の先端部に開口部18bを有する鉗子チャンネル(鉗子管路)18、内視鏡3の先端部に配設される第一磁場発生器19、鉗子口18aから鉗子チャンネル18に挿入され、内視鏡3の先端部の開口部18bより突出して病変部の処置を行う鉗子等の処置具20、処置具20の先端部近傍に配設された磁場検出センサ22、を有する。また以後、第一磁場発生器19の位置は内視鏡3の先端部の位置を、磁場検出センサ22の位置は処置具20の先端部の位置を示すものとする。
【0017】
第一磁場発生器19および磁場検出センサ22は一軸のコイルからなる。また、第一磁場発生器19は、プロセッサ5の制御の下、磁場発生器としてだけでなく、磁場検出センサとしても機能する。
【0018】
プロセッサ5は、内視鏡3に照射光を提供する光源部21、プロセッサ5の各処理部を制御するシステムコントローラ23、処置具20に配設された磁場検出センサ22を使用して、処置具20の先端部と内視鏡3の先端部との相対位置の検出を開始するときに操作される切り替えスイッチ25、撮像素子17の撮像タイミング、メモリなどに記録されたデータを読み出すタイミングを制御するタイミングコントローラ27、タイミングコントローラ27から出力される信号に基づいて撮像素子17の画像取り込みを制御する撮像素子制御・駆動部29、撮像素子17で撮像された画像信号にA/D変換等を行う前段画像信号処理部31、画像メモリ33、位置検出信号処理部35、制御演算部37、第二磁場発生器7に電流を供給する磁場発生器駆動回路41、メモリ43、メモリ43から出力された信号と画像メモリ33から出力された信号とをモニタ9表示用の信号に変換する後段画像信号処理部45を有する。
【0019】
第二磁場発生器7は、内視鏡観察および内視鏡処置を行うにあたり、予め、被検者の周囲に設置される。第二磁場発生器7は、互いに直交するX、Y、Zの各方向に磁場を発生させる三つのコイルを持つ。そして、各コイルに交流電流を流すことにより、X、Y、Zの各方向に交流に磁場を発生させる。
【0020】
電子内視鏡システム1を用いた、被検者に対する内視鏡観察および内視鏡処置は以下のようにして実行される。
【0021】
システムコントローラ23は、光源部21を駆動制御して体腔内を照明する。詳しくは、光源部21は、白色光を発するランプである光源47、光源47から出力される光量を調整する略円盤状の調光用絞り49、調光用絞り49を回転駆動するモータ51、モータ51を駆動・制御するモータ駆動・制御部53、光源47に電力を供給する光源用電源55、光源47から出射された光をライトガイド入射端11bに導くレンズ57、を有する。ライトガイド入射端11bに入射した白色光は、ライトガイド11、配光レンズ13を介して体腔内を照明する。
【0022】
体腔内で反射した光は、対物レンズ15を介して撮像素子17の受光面に光学像を結ぶ。撮像素子17は、タイミングコントローラ27から送信されるタイミング信号に同期して撮像素子制御・駆動部29からの駆動信号に同期して、上記光学像に対応する各色の画像信号を生成し、プロセッサ5の前段画像信号処理部31に定期的に送信する。
【0023】
前段画像信号処理部31は、図2に示すように、バッファ34d、ビデオフィルタ46、A/D変換部42d、絶縁素子44aを有する。絶縁素子44aは、患者が感電しないように内視鏡3側と、電子内視鏡システムの本体側とを電気的に絶縁している。絶縁素子44aでは電気信号が光信号に変換されているので、電気的に絶縁することが可能となっている。なお、以下に説明する他の絶縁素子44b〜44e関しても同様の効果を奏する。
【0024】
前段画像信号処理部31によりA/D変換等の処理が施された画像信号は、各色に関する画像データとして順次画像メモリ33に格納される。格納された各色に対応する画像データは、タイミングコントローラ27から送信されるタイミング信号に同期して後段画像信号処理部45に一斉に出力される。該タイミング信号は、例えばモニタ9の周期に対応して送信される。後段画像信号処理部45は、画像データにD/A変換等の処理を施し、モニタ9に動画像として出力する。
【0025】
図3は、モニタ9の画面の一例を示す。後段画像信号処理部45から出力された画像データは、例えば、モニタ9の画面においてメイン画像71として表示される。術者は、メイン画像71を観察しつつ、病変部を特定したり、鉗子を用いた生体組織の採取等の処置を実施したりする。以上が電子内視鏡システム1を用いた被検者に対する内視鏡観察および内視鏡処置の説明である。
【0026】
次に本発明の主たる特徴である処置具20に関する位置検出について詳説する。本実施形態の電子内視鏡システム1は、第一磁場発生器19を用いた処置具20の位置検出(第一態様)、第二磁場発生器7を用いた第一磁場発生器19や処置具20の位置検出(第二態様)ができるように構成されている。
【0027】
まず第一態様として、第一磁場発生器19を用いた処置具20の位置検出について説明する。なお、上記の各位置検出処理の切り替えは、術者が切り替えスイッチ25を操作することにより行われる。術者が切り替えスイッチ25を操作すると、該スイッチ25から第一磁場発生器19を用いた処置具20の位置検出を指示する信号がシステムコントローラ23に送信される。該信号を受信すると、システムコントローラ23は、位置検出信号処理部35を介して第一磁場発生器19を駆動させる。
【0028】
図2に示すように、位置検出信号処理部35は、トライステートバッファ36a及びトライステートバッファ36b、バッファ34c、レベル検出器38a、レベル検出器38c、第一磁場発生器駆動回路40、A/D変換部42a、A/D変換部42c、絶縁素子44b、絶縁素子44c、絶縁素子44d、絶縁素子44e、を有する。
【0029】
トライステートバッファ36aは、入力端子a、入力端子b、出力端子c、を有する。トライステートバッファ36aは、入力端子(イネーブル端子)aがシステムコントローラ23(より厳密には絶縁素子44b)に、入力端子bが第一磁場発生器19に、出力端子cがレベル検出器38aに、それぞれ接続されるように配設される。
【0030】
また、トライステートバッファ36bは、入力端子d、入力端子e、出力端子f、を有する。トライステートバッファ36bは、入力端子(イネーブル端子)dがシステムコントローラ23(より厳密には絶縁素子44b)に、入力端子eが第一磁場発生器駆動回路40に、出力端子fが第一磁場発生器19に、それぞれ接続されるように配設される。
【0031】
システムコントローラ23は、第一磁場発生器19を用いた処置具20の位置検出を指示する信号を受信すると、絶縁素子44bを介してトライステートバッファ36aの入力端子aにオフ制御信号を送信する。該制御信号により、トライステートバッファ36aはハイインピーダンスとなる。つまり、第一磁場発生器19とレベル検出器38aは電気的に遮断された状態になる。
【0032】
またシステムコントローラ23は、制御演算部37、絶縁素子44dを介して第一磁場発生器駆動回路40を駆動制御する。具体的には、第一磁場発生器駆動回路40は、システムコントローラ23によりオン制御されたトライステートバッファ36bを介して第一磁場発生器19に一定レベルの交流電流を供給する。
【0033】
第一磁場発生器19は、前段画像信号処理部31より交流電流を提供されることにより、磁場を発生する。処置具20先端に配設された磁場検出センサ22は、第一磁場発生器19から発生した磁場により誘導電流を発生させる。発生した誘導電流は、バッファ34cを介してレベル検出器38cに入力する。レベル検出器38cは誘導電流に対応する位置検出信号を生成し、出力する。レベル検出器38cから出力された位置検出信号は、A/D変換部42cでA/D変換され、絶縁素子44eを介して制御演算部37で受信される。
【0034】
ここで、第一磁場発生器19で発生する磁場が一定レベルである場合、磁場検出センサ22と第一磁場発生器19との相対位置と、磁場検出センサ22で発生する誘導電流の大きさとには相関性が有る。そのため磁場検出センサ22で発生する誘導電流の大きさを測定することにより、第一磁場発生器19(内視鏡3の先端部)と磁場検出センサ22(処置具20の先端部)との相対位置を検出することができる。
【0035】
制御演算部37は、位置検出信号処理部35から送信される位置検出信号に基づき、第一磁場発生器19と磁場検出センサ22との相対位置情報を生成する。本実施形態では、第一磁場発生器19と磁場検出センサ22との距離情報を相対位置情報として算出する。算出結果は、文字情報作成部39において、距離を示す文字情報に変換される。文字情報作成部39により生成された文字情報は、メモリ43に一時的に記録される。メモリ43に記録された文字情報は、タイミングコントローラ27から送信されるタイミング信号に同期して、後段画像信号処理部45により読み出され、モニタ9に出力される。
【0036】
図3に示すように、上記文字情報は、モニタ9上において、内視鏡3先端から処置具先端までの距離情報72としてメイン画像71とともに表示される。これにより、術者は、処置具20が内視鏡3先端からどの程度突出しているのかが明確に把握することができるため、迅速かつ正確に処置具を使った処置を行うことができる。
【0037】
また、第一態様によれば、第一磁場発生器19と磁場検出センサ22はともに体腔内に位置しているため、両者間には遮蔽物が殆どない。また両者の距離は磁場発生手段を体外に配置する場合と比べて格段に近い。そのため検出される信号の精度は高く、信頼性の高い検出結果を得ることができる。
【0038】
次に第二態様として、第二磁場発生器7を用いた第一磁場発生器19や処置具20の位置検出について説明する。術者が第一磁場発生器19や処置具20の位置検出を行うため、切り替えスイッチ25を操作すると、システムコントローラ23は、演算処理部37、磁場発生器駆動回路41を介して第二磁場発生器を駆動させるとともに、位置検出信号処理部35も駆動制御する。
【0039】
演算処理部37は、システムコントローラ23から所定の制御信号を受信すると、磁場発生器駆動回路41を介して交流電流を供給することにより、第二磁場発生器7を駆動させる。ここで、磁場発生器駆動回路41は、第二磁場発生器7におけるX、Y、Zの各方向に対応するコイルそれぞれに独立して交流電流を供給できるように構成されている。そして制御演算部37は、上記所定の制御信号を一回受信する毎に、第二磁場発生器7から異なる方向の磁場が連続して一回ずつ発生するように、各コイルに対して順次交流電流を供給する。なお、連続して磁場を発生させるといっても、各磁場発生時のずれは非常に微少に設定されており、実際には略同一タイミングとみなすことができる。
【0040】
また、システムコントローラ23は、絶縁素子44bを介してトライステートバッファ36bの入力端子dにオフ制御信号を送信する。該制御信号により、トライステートバッファ36bはハイインピーダンスとなる。つまり、第一磁場発生器19と第一磁場発生器駆動回路40は電気的に遮断された状態になる。これにより、第一磁場発生器19は、磁場検出センサとして機能する。
【0041】
第二磁場発生器7から磁場が発生すると、第一磁場発生器19は、該磁場の影響を受けて誘導電流を発生させる。発生した誘導電流は、システムコントローラ23によりオン制御されたトライステートバッファ36aを介してレベル検出器38aに入力する。レベル検出器38aは該誘導電流に対応する位置検出信号を生成し、出力する。レベル検出器38aから出力された位置検出信号は、A/D変換部42aでA/D変換され、絶縁素子44cを介して制御演算部37で受信される。
【0042】
ここで、第二磁場発生器7で発生するX、Y、Z方向の磁場がそれぞれ一定レベルである場合、第一磁場発生器19で発生した誘導電流の大きさは、第二磁場発生器7と第一磁場発生器19間の距離に対応して変化する。つまり、X、Y、Zの各方向の磁場発生時における誘導電流のレベルをそれぞれ検出することにより、第二磁場発生器7と第一磁場発生器19の相対位置を検出することができる。そこで、制御演算部37は、発生中の磁場の各方向と送信された位置検出信号のレベルをそれぞれ関連づけ、第二磁場発生器7に対する第一磁場発生器19の相対的位置情報(ここでは第二磁場発生器7と第一磁場発生器19との距離情報)を生成する。つまり、該距離情報は、X方向の磁場発生時における誘導電流量(X方向の距離情報)、Y方向の磁場発生時における誘導電流量(Y方向の距離情報)、Z方向の磁場発生時における誘導電流量(Z方向の距離情報)からなる。
【0043】
制御演算部37は、生成した距離情報をメモリ43に格納する。詳しくは、制御演算部37は、生成した距離情報のうち、X方向とY方向の各距離情報を第一画像メモリ43のアドレスに変換する。そして、該アドレスにより特定されるメモリ領域に、Z方向の距離情報を格納する。制御演算部37は、システムコントローラ23からの制御信号を受信する毎に上記の一連の処理を実行する。
【0044】
後段画像信号処理部45は、タイミング信号に従い、メモリ43から読み出した各距離情報に基づいて内視鏡3の形状(体腔内を進入する内視鏡3先端部の軌跡)に関する画像を生成する。詳しくは、データが格納されているメモリ領域のアドレスをX方向とY方向の各距離情報に変換する。X方向とY方向の各距離情報により特定される点、つまり位置検出点間を例えば直線により補間する。なお該補間処理は、上記ヘッダ情報を参照しつつ行われる。メモリ領域に格納されていたデータの量つまりZ方向の距離情報は、位置検出点での輝度レベルに変換する。これにより、X、Y、Zの各方向により特定される内視鏡の形状に関する二次元画像が生成される。
【0045】
後段画像信号処理部45は、以上の処理を行って生成された二次元画像をモニタ9に出力する。図3中、該二次元画像はサブ画像73としてメイン画像71と並んで表示される。なお、サブ画像73において、白抜点は、原点を磁場発生器2の位置とするX、Yの各方向に対応した二次元座標上に展開された位置検出点である。各白抜点は、Z方向の距離情報に対応する輝度として表現される。従って、術者は、サブ画像73を観察することにより、内視鏡3の形状を容易に把握することができる。
【0046】
なお、本第二態様では、第一磁場発生器19の位置検出結果として二次元画像をモニタ9に表示すると説明したが、本発明に係る電子内視鏡システムでは、これに限定するものではなく、第二磁場発生器7を原点としたX、Y、Zの各方向の座標値、あるいは第二磁場発生器7を基準としたX、Y、Zの各方向の距離を表示することも可能である。
【0047】
また本第二態様では、第二磁場発生器7から磁場が発生し、第一磁場発生器19が磁場検出センサとして機能している間、磁場検出センサ22は、該第二磁場発生器7から発生した磁場を検出し、誘導電流を発生させる。しかし、該誘導電流は、本第二態様では位置検出には利用されない。
【0048】
以上が本発明の実施形態である。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように様々な範囲で変形が可能である。
【0049】
例えば、上記第二態様では、磁場検出センサ22からの誘導電流は位置検出に使用しないと説明した。しかし、第二磁場発生器7を磁場発生器として、第二磁場発生器7が発生した磁場を、第一磁場発生器19と磁場検出センサ22から得られる各誘導電流に基づき、それぞれについて第二磁場発生器7との相対位置を座標値で求める変形も可能である。該変形の場合、第二磁場発生器7に対する第一磁場発生器19および磁場検出センサ22の各相対位置に基づき、第一磁場発生器19に対する磁場検出センサ22の相対位置を算出することも可能である。
【0050】
また上記実施形態では、検出された種々の相対位置に関する情報を文字情報としてモニタ9に表示すると説明した。しかし、術者に該相対位置情報を通知する手段としては、これに限定されるものではなく、例えば音声発生器による音で距離を通知する手段等が使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明による電子内視鏡システムを示す図である。
【図2】図2は、図1の電子内視鏡システムの一部を抽出して示した図である。
【図3】図3は、電子内視鏡システム動作時のモニタ画面を示す。
【符号の説明】
【0052】
1 電子内視鏡システム
3 内視鏡
5 プロセッサ
7 第二磁場発生器
9 モニタ
17 撮像素子
18 鉗子チャンネル
19 第一磁場発生器
20 処置具
21 光源部
22 磁場検出センサ
23 システムコントローラ
35 位置検出信号処理部
37 制御演算部
39 文字情報作成部
41 磁場発生器駆動回路
43 メモリ
45 後段画像信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に撮像素子および第一の磁場発生器を有し、前記撮像素子により被検者の体腔内の画像を撮像する内視鏡と、
先端部に磁場検出センサを有し、前記内視鏡の鉗子管路を介して前記内視鏡先端部から突出するように構成される処置具と、
前記第一の磁場発生器から発生した磁場に基づき前記磁場検出センサで発生する誘導電流に基づいて、該第一の磁場発生器に対する前記処置具先端部の位置を検出する位置検出手段と、を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記被検者の体外に配置される第二の磁場発生器を有し、
前記第一の磁場発生器は、コイルからなり、前記第二の磁場発生器から磁場が発生している間は、磁場を発生せず、該第二の磁場発生器から発生した磁場により誘導電流を発生させ、
前記位置検出手段は、前記第一の磁場発生器から発生した誘導電流に基づいて、前記第二の磁場発生器に対する前記第一の磁場発生器の位置をさらに検出することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記磁場検出センサは、前記第二の磁場発生器から磁場が発生している間は、該第二の磁場発生器から発生した磁場により誘導電流を発生させ、
前記位置検出手段は、前記磁場検出センサおよび前記第一の磁場発生器から発生した誘導電流に基づいて、該第一の磁場発生器に対する前記処置具先端部の位置を検出することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記第二の磁場発生器は、互いに直交する少なくとも第一の方向および第二の方向に磁場を発生させることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記第一の磁場発生器と前記第二の磁場発生器で、磁場の発生源を切り替える切り替え手段と、
前記切り替え手段による磁場の発生の切り替えに応じて、前記第一の磁場発生器と前記第二の磁場発生器を択一的に駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記切り替え手段は、前記第一の磁場発生器と、該第一磁場発生器に電流を供給する電流供給手段または前記位置検出手段とが択一的に接続されるように配設されたトライステートバッファを含むこと、を特徴とする請求項5に記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記位置検出手段が検出した前記位置に関する情報を通知する通知手段を有することを特徴とする請求項1から請求項6に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記通知手段は、前記情報を表示する表示手段であることを特徴とする請求項7に記載の電子内視鏡システム。
【請求項9】
前記通知手段は、前記位置検出手段が検出した結果を、距離情報に変換する演算部を有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の電子内視鏡システム。
【請求項10】
撮像素子により被検者の体内を撮像する内視鏡と、
前記内視鏡が挿入される被検者の周囲に配置される磁場発生器と、
前記内視鏡の先端部に配設され、前記磁場発生器に対する前記内視鏡の先端部の相対位置を検出する第一の磁場検出センサと、
前記内視鏡の鉗子口から鉗子管路に挿入され、前記開口部から突出する処置具と、
前記処置具の先端部に配設され、前記磁場発生器に対する前記処置具の先端部の相対位置を検出する第二の磁場検出センサと、
前記磁場発生器から発生した磁場により第一の磁場検出センサで生じる誘導電流の大きさに基づいた、前記磁場発生器に対する前記内視鏡の先端部の相対位置、前記磁場発生器から発生した磁場により第二の磁場検出センサで生じる誘導電流の大きさに基づいた、前記磁場発生器に対する前記処置具の先端部の相対位置、各相対位置に基づいた前記処置具の先端部に対する前記内視鏡の先端部の相対位置、それぞれを検出する検出手段と、を有することを特徴とする電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−223849(P2006−223849A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5639(P2006−5639)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】