説明

電子内視鏡装置

【課題】撮像と表示との同期を確保することができる電子内視鏡装置を提供する。
【解決手段】位相比較発振制御部156は、モニタ同期信号166と、プロセッサ側撮像クロック164との位相を比較し、比較結果に基づいて原振撮像クロック生成部154の発振を制御する。表示タイミング調整部152は、撮像用同期信号111とプロセッサ側撮像クロック164とモニタ同期信号166と表示クロック165とを用いて、デジタル画像信号110をモニタ同期信号166に同期して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子を搭載する内視鏡スコープと、内視鏡スコープからの画像信号に所定の画像処理を施す画像処理プロセッサとを備える電子内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の進歩により、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサといった固体撮像素子の高画素化が進んでいる。この傾向は、固体撮像素子を搭載する電子内視鏡においても例外ではなく、電子内視鏡の高精細化が進んでいる。
【0003】
しかし、固体撮像素子の高画素化に伴い、画像処理に必要となるクロック信号の周波数も高くなってきており、種々の問題を引き起こしている。例えば、電子内視鏡は、撮像素子が搭載される内視鏡スコープの先端部と、画像処理を行う画像処理プロセッサとの間が離れており、内視鏡スコープと画像処理プロセッサとの間の伝送路上での信号劣化が発生しやすい構造を有している。内視鏡スコープと画像処理プロセッサとの間で伝送される信号の周波数が高くなると、信号劣化はさらに大きくなる。また、高周波信号が伝送路を流れることによる電磁波の漏洩もより顕著になる。
【0004】
このような問題を解決する方法として、特許文献1に記載の電子内視鏡装置が提案されている。この電子内視鏡装置では、電子スコープの出力部に波形平滑回路が挿入されており、この波形平滑回路によって、電子スコープとプロセッサ装置との間で放出される高周波ノイズが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-275956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、内視鏡スコープとモニタ機器との同期という観点について記載されていない。内視鏡スコープには、観察対象や用途にあわせて種々の画角の固体撮像素子が搭載されるため、内視鏡スコープごとに動作周波数や画角が異なる。よって、内視鏡スコープが撮像した画像をモニタに表示するためには、モニタの同期信号にあわせた周波数変換が必要である。
【0007】
しかし、表示用のクロックと撮像用のクロックとの関係次第では、内視鏡スコープが1フレームの撮像を行う周期と、モニタ機器が1フレームの画像を表示する周期とが微妙に異なるため、両者の位相が徐々にずれていくという問題が発生する。また、両者の位相のずれが1フレームの時間を超過すると、「追い越し」や「コマ落ち」といった現象が発生する。
【0008】
図5は、撮像クロックを基準とした1フレーム周期と、表示クロックを基準とした1フレーム周期との関係を模式的に示している。図5に示すように、撮像クロックを基準とした1フレーム周期と、表示クロックを基準とした1フレーム周期とが微妙に異なっており、時間の経過と共に1フレーム周期のずれ(D0,D1,D2)が増加している。
【0009】
一方、モニタ機器側でも高精細化に伴う高速化が進んでおり、モニタ機器への信号の入力には厳密なタイミング規定を満足する必要がある。仮に、撮像と表示とで1フレーム周期を完全にあわせることができたとしても、テレビジョン規格に準拠していない内視鏡スコープ側のクロックを基準に表示用同期信号を生成した場合は、モニタ機器において正常な表示ができない可能性がある。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、撮像と表示との同期を確保することができる電子内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、内視鏡スコープおよび画像処理プロセッサを備える電子内視鏡装置であって、前記内視鏡スコープは、光学情報を電気信号に変換し、画像信号として出力する固体撮像素子と、前記画像処理プロセッサから入力される伝送撮像クロックを逓倍したスコープ側逓倍クロックを生成する撮像側逓倍部と、前記スコープ側逓倍クロックから、前記固体撮像素子を駆動する撮像用同期信号を生成する撮像用同期信号生成部と、を備え、前記画像処理プロセッサは、表示クロックを生成する表示クロック生成部と、前記表示クロックに基づき、モニタ同期信号を生成するモニタ同期信号生成部と、原振撮像クロックを生成する原振撮像クロック生成部と、前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周したプロセッサ側撮像クロックと、前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周した前記伝送撮像クロックとを生成するプロセッサ側逓倍分周部と、前記モニタ同期信号と、前記プロセッサ側撮像クロックとの位相を比較し、比較結果に基づいて前記原振撮像クロック生成部の発振を制御する位相比較発振制御部と、前記撮像用同期信号と前記プロセッサ側撮像クロックと前記モニタ同期信号と前記表示クロックとを用いて、前記画像信号を前記モニタ同期信号に同期して出力する表示タイミング調整部と、を備える電子内視鏡装置である。
【0012】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記表示タイミング調整部は、前記画像信号を保持するフレームバッファと、前記撮像用同期信号と前記プロセッサ側撮像クロックに基づき、前記画像信号を前記フレームバッファに書き込むライト制御部と、前記モニタ同期信号と前記表示クロックに基づき、前記フレームバッファに書き込まれた前記画像信号を読み出すリード制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記モニタ同期信号生成部はさらに、前記撮像用同期信号に基づき、前記モニタ同期信号の生成を開始するタイミングを調整することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記画像処理プロセッサは、前記表示クロック生成部と、前記モニタ同期信号生成部と、前記表示タイミング調整部と、を複数組備え、前記複数組の中の任意の一組をマスターとし、前記マスター以外の各組をスレーブとし、前記スレーブはさらに、前記マスターの前記モニタ同期信号生成部が生成した前記モニタ同期信号と、当該スレーブの前記表示クロック生成部が生成した前記表示クロックとの位相を比較し、当該スレーブの前記表示クロック生成部の発振を制御する位相比較発振制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モニタ同期信号と原振撮像クロックとを同期させることが可能となり、モニタ同期信号と同期した原振撮像クロックを元に生成されたスコープ側逓倍クロックから、固体撮像素子を駆動する撮像用同期信号を生成することによって、撮像と表示との同期を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態による電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による電子内視鏡装置が備える位相比較発振制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態による電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【図5】従来の問題を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態による電子内視鏡装置の構成を示している。電子内視鏡装置100は、内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ150とを備え、内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ150とは、伝送ケーブル116により接続されている。
【0019】
画像処理プロセッサ150は、表示タイミング調整部152と、画像処理部153と、原振撮像クロック生成部154と、プロセッサ側逓倍分周部155と、位相比較発振制御部156と、表示クロック生成部158と、モニタ同期信号生成部159とを備える。内視鏡スコープ101は、固体撮像素子102と、撮像用同期信号生成部103と、撮像側逓倍部104とを備える。
【0020】
表示クロック生成部158は、表示に係る各部を駆動する表示クロック165を生成する。表示クロック生成部158が生成した表示クロック165は、モニタ同期信号生成部159、表示タイミング調整部152、および画像処理部153に出力される。モニタ同期信号生成部159は、表示モニタ200に画像を表示するためのテレビジョン規格に準拠したモニタ同期信号166(表示同期信号)を生成する。モニタ同期信号166の生成には表示クロック生成部158が生成した表示クロック165が使用される。モニタ同期信号生成部159が生成したモニタ同期信号166は、位相比較発振制御部、表示タイミング調整部152、および画像処理部153に出力される。
【0021】
原振撮像クロック生成部154は、内視鏡スコープ101が有する固体撮像素子102を駆動する信号の元となる原振撮像クロック167を生成する。プロセッサ側逓倍分周部155は、原振撮像クロック生成部154が生成した原振撮像クロック167に対して、適宜、逓倍のみの処理、分周のみの処理、あるいは逓倍と分周とを組み合わせた処理を行い、伝送撮像クロック115およびプロセッサ側撮像クロック164を生成する。伝送撮像クロック115は、内視鏡スコープ101へ送信されるクロックであり、伝送撮像クロック115の周波数は、原振撮像クロック生成部154が生成した原振撮像クロック167の周波数よりも低い周波数である。プロセッサ側撮像クロック164は、位相比較発振制御部156および表示タイミング調整部152に出力される。プロセッサ側撮像クロック164の周波数は、原振撮像クロック生成部154が生成した原振撮像クロック167の周波数よりも高い周波数である。
【0022】
位相比較発振制御部156は、モニタ同期信号166とプロセッサ側撮像クロック164との位相を比較し、比較結果に基づいて、原振撮像クロック生成部154における原振撮像クロック167の発振状態を制御するための制御信号163を生成し、原振撮像クロック生成部154に出力する。原振撮像クロック生成部154は、制御信号163に基づいて、原振撮像クロック167の発振周波数を制御する。その結果、原振撮像クロック167の周波数はモニタ同期信号166の周波数の整数倍になり、原振撮像クロック167とモニタ同期信号166が同期化される。なお、外部からの制御信号により周波数を任意に変更できる発振器が存在するので、原振撮像クロック生成部154の実装には、それらの発振器を使用すればよい。
【0023】
図2は、位相比較発振制御部156の動作の内容を示している。位相比較発振制御部156は、例えばプロセッサ側撮像クロック164の立ち上がりのエッジ位置とモニタ同期信号166(図2の例では垂直同期信号)の立ち上がりのエッジ位置とを比較し、両者のエッジ位置の差に基づく制御信号163を原振撮像クロック生成部154に出力する。制御信号163に基づいて原振撮像クロック生成部154が原振撮像クロック167の発振状態すなわち原振撮像クロック167の周波数を制御することによって、原振撮像クロック167から生成されたプロセッサ側撮像クロック164の立ち上がりのエッジ位置とモニタ同期信号166の立ち上がりのエッジ位置とが一致し、プロセッサ側撮像クロック164とモニタ同期信号166との同期を確保することができる。図2ではプロセッサ側撮像クロック164との位相の比較に垂直同期信号を使用する例を示したが、水平同期信号を使用してもよい。
【0024】
以上のようにしてモニタ同期信号166と位相をそろえられた原振撮像クロック167は、プロセッサ側逓倍分周部155で逓倍および分周され、伝送撮像クロック115およびプロセッサ側高速撮像クロック164が生成される。伝送撮像クロック115は、画像処理プロセッサ150から内視鏡スコープ101に出力される。
【0025】
伝送撮像クロック115は、内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ150とを接続する伝送ケーブル116を通って内視鏡スコープ101の撮像側逓倍部104に入力される。撮像側逓倍部104は、伝送撮像クロック115を逓倍し、プロセッサ側撮像クロック164と同じ周波数を有するスコープ側逓倍クロック112を生成する。撮像側逓倍部104が生成したスコープ側逓倍クロック112は、撮像用同期信号生成部103および固体撮像素子102に出力される。
【0026】
撮像用同期信号生成部103は、スコープ側逓倍クロック112から、固体撮像素子102を駆動する撮像用同期信号111を生成する。固体撮像素子102はCMOSセンサであり、スコープ側逓倍クロック112および撮像用同期信号111に従って、光学情報を電気信号に変換し、デジタル画像信号110を出力する。デジタル画像信号110および撮像用同期信号111は内視鏡スコープ101から出力され、伝送ケーブル116を通って画像処理プロセッサ150の表示タイミング調整部152に入力される。
【0027】
画像処理プロセッサ150内の表示タイミング調整部152は、プロセッサ側撮像クロック164と撮像用同期信号111とを用いて、内視鏡スコープ101から伝送されるデジタル画像信号110を受信する。また、表示タイミング調整部152は、受信したデジタル画像信号110を、表示クロック165の周波数で、モニタ同期信号166のタイミングに同期したデジタル画像信号162に変換し、画像処理部153に出力する。つまり、表示タイミング調整部152は、デジタル画像信号110を処理するためのクロックを、プロセッサ側撮像クロック164から表示クロック165に切り替える処理(いわゆるクロックの乗り換え)を行う。この際、撮像用同期信号111とモニタ同期信号166は、デジタル画像信号110,162のフレームの開始タイミングを示す信号として使用される。
【0028】
より具体的には、表示タイミング調整部152は以下の処理を行う。表示タイミング調整部152は、フレームバッファ151と、ライト制御部300と、リード制御部301とを備える。ライト制御部300は、撮像用同期信号111とプロセッサ側撮像クロック164を用いて撮像側のフレームの開始タイミングを検出し、フレームバッファ151へのデータの書き込みを制御する書き込み制御信号302を生成する。フレームバッファ151は、書き込み制御信号302に基づきデジタル画像信号110を保持する。
【0029】
一方、リード制御部301は、モニタ同期信号166と表示クロック165を用いて、表示側のフレームの開始タイミングを検出し、フレームバッファ151からのデータの読み出しを制御する読み出し制御信号303を生成する。フレームバッファ151は、読み出し制御信号303に基づき、保持したデジタル画像信号110をデジタル画像信号162として画像処理部153に出力する。本実施形態では、撮像側の同期信号である撮像用同期信号111と、表示側の同期信号であるモニタ同期信号166とが、互いに独立したタイミングで生成されているが、フレームバッファ151を用いて上記の処理を行うことによって、撮像側と表示側とのフレームの開始タイミングのずれを吸収することができる。
【0030】
画像処理部153は、フレームバッファ151から入力されたデジタル画像信号162に対して、表示クロック165とモニタ同期信号166を用いて画像表示のための所定の画像処理を行う。画像処理されたデジタル画像信号162は表示モニタ200に出力され、表示モニタ200での画像表示に使用される。
【0031】
上述したように、本実施形態によれば、モニタ同期信号166を基準に原振撮像クロック167の発振周波数を調整して、モニタ同期信号166に位相を合わせた(モニタ同期信号166に同期した)原振撮像クロック167から、固体撮像素子102を駆動する撮像用同期信号111を生成することによって、表示側と撮像側とでフレームの周期をそろえることが可能となり、撮像と表示との同期を確保することができる。これにより、フレーム周期の不一致によるフレームの追い越しなどを防止することができる。
【0032】
また、表示タイミング調整部152により、撮像側と表示側との間のフレームの開始タイミングのずれを吸収できるため、撮像用同期信号生成部103は、モニタ同期信号166とは無関係に撮像用同期信号111を生成することができる。よって、撮像用同期信号生成部103はモニタ同期信号166を参照する必要がなく、撮像用同期信号生成部103を簡易化することができ、伝送ケーブル116内に同期信号伝送用の配線を必要としない。したがって、内視鏡スコープ101を小さく(細径化)することができる。人体の内部に挿入するという内視鏡スコープの特性上、細径化できることは大きな利点である。
【0033】
また、伝送撮像クロック115は、内視鏡スコープ101の内部で使用するプロセッサ側撮像クロック164よりも遅い低周波で内視鏡スコープ101に伝送されるため、高周波のクロックを用いた場合に発生する外乱ノイズの影響や信号の劣化といった、高速化に際しての問題を軽減することができると共に、電磁ノイズの発生を抑制することができる。
【0034】
また、内視鏡スコープ101を他のものに交換した場合、撮像側のフレームの開始タイミングが変わっても、表示側のフレームの開始タイミングは、内視鏡スコープ101を交換する前と同じであり、表示モニタ200に出力する同期信号は変化しない。よって、内視鏡スコープ101の交換の前後で、表示モニタ200の同期が外れることによる画面の乱れは発生しない。
【0035】
本実施形態では種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、固体撮像素子102としてCMOSセンサを使用したが、CCDを用いてもよい。また、固体撮像素子102は、同一チップ上に各種の処理回路を搭載することが可能である。よって、本実施形態の撮像用同期信号生成部103や撮像側逓倍部104の回路も、固体撮像素子102と同一のチップ上に搭載してもよい。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図3は、本実施形態による電子内視鏡装置の構成を示している。図3において、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素に関しては、同一の符号を付与するとともに説明を省略する。
【0037】
本実施形態では、第1の実施形態におけるモニタ同期信号生成部159に代えてモニタ同期信号生成部400が設けられている。表示クロック生成部158が生成した表示クロック165と、内視鏡スコープ101から受信する撮像用同期信号111とが、モニタ同期信号生成部400に入力される。モニタ同期信号生成部400は、撮像用同期信号111の変化に基づいて、内視鏡スコープ101が撮像を開始したことを検知し、同時に撮像側のフレームの開始タイミングを検出する。モニタ同期信号生成部400は、検出した撮像側のフレームの開始タイミングを基準に、この開始タイミングから所定の時間だけ遅れてモニタ同期信号166の生成を開始する。
【0038】
なお、本実施形態による電子内視鏡装置100は、モニタ同期信号166をフレーム周期の基準とするため、モニタ同期信号166の生成動作に必要以上に干渉することは望ましくない。よって、モニタ同期信号生成部400は、内視鏡スコープ101の切り替わりを検出したタイミングで、表示側のモニタ同期信号166の生成タイミングを調整する。
【0039】
第1の実施形態では、タイミング調整用のメモリとして、フレームの開始タイミングのずれを吸収するために最大で1フレーム分の容量を必要としたが、本実施形態では、モニタ同期信号生成部400によって、フレームの開始タイミングのずれ幅を小さく、かつ一定にできるので、小さなメモリがあれば良い。したがって、本実施形態の表示タイミング調整部152は、第1の実施形態におけるフレームバッファ151の代わりにバッファメモリ160を備える。
【0040】
本実施形態によれば、表示側と撮像側とでフレームの周期をそろえることが可能となり、撮像と表示との同期を確保することができる。また、モニタ同期信号生成部400が、撮像用同期信号111を基準にモニタ同期信号166を生成することによって、撮像と表示のフレーム間の遅延時間を一定に調整することができる。よって、撮像側のフレームの開始タイミングから表示側のフレームの開始タイミングまでの時間差を短くすることが可能となるので、出力タイミングの調整に必要なバッファの容量を少なくすることができる。
【0041】
本実施形態では種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、バッファメモリ160を用いているが、デジタル画像信号110を数クロック分保持できるシフトレジスタなどの論理回路を用いてもよい。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。図4は、本実施形態による電子内視鏡装置の構成を示している。図4において、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素に関しては、同一の符号を付与するとともに説明を省略する。
【0043】
同一の内視鏡スコープで撮像した画像を複数の機器へ出力する場合がある。この際に、異なる規格の画像信号を出力する必要があることもある。例えば、高精細な表示モニタで画像を観察しながら標準画質の録画装置を用いて録画する場合などがある。第1の実施形態および第2の実施形態では、表示側と撮像側の同期信号の周期のずれを回避したが、複数の表示モニタを同時に使用する場合に、撮像側の同期信号の周期を、単純にどれか1つの画像信号に対応する周期に合わせてしまうと、他の画像信号と撮像側の同期信号との間でフレーム周期が完全には一致せず、表示の追い越しが発生するという問題が生じる。
【0044】
表示規格の異なる例として、ハイビジョンテレビ規格(HDTV)とスタンダートテレビ規格(SDTV)の2つの表示モニタに同時に画像を表示する場合について説明する。これら規格の画像信号のフレーム周期は59.94Hzで一致しており、HDTV表示用クロック周波数には74.1758MHzを使用し、SDTV表示用クロックには13.5MHzを使用するのが通常である。何もしなければ、それぞれのクロックを生成する発振器の精度(誤差)の影響で、HDTV表示用のフレーム周期とSDTV表示用のフレーム周期とを完全に一致させることはできない。したがって、HDTV表示用のフレーム周期に撮像側のフレーム周期を合わせただけだと、撮像側のフレーム周期とSDTV表示用のフレーム周期とがずれてしまい、SDTVのモニタに表示する画像にフレームの追い越しが発生する。
【0045】
本実施形態における画像処理プロセッサ150には、表示モニタ200と、表示モニタ200とは表示規格の異なる表示モニタ600とが接続されている。ここで、表示モニタ200の表示規格に合わせた構成をマスター規格部700とし、表示モニタ600の表示規格に合わせた構成をスレーブ規格部900とする。
【0046】
マスター規格部700は、表示タイミング調整部152と、画像処理部153と、表示クロック生成部158と、モニタ同期信号生成部159とを備える。スレーブ規格部900は、表示タイミング調整部505と、画像処理部506と、表示クロック生成部501と、位相比較発振制御部502と、モニタ同期信号生成部503とを備える。マスター規格部700とスレーブ規格部900とでは、スレーブ規格部900が位相比較発振制御部502を備えている点が異なっているが、その他の要素に関しては基本的に同じ機能を有している。ただし、表示クロックの発振周波数や各表示規格における同期信号の仕様の違いにより、完全に同じ動作にはならない。
【0047】
プロセッサ側撮像クロック生成部800は、原振撮像クロック生成部154と、プロセッサ側逓倍分周部155と、位相比較発振制御部156とを備え、プロセッサ側撮像クロック164を生成する。プロセッサ側撮像クロック生成部800が生成したプロセッサ側撮像クロック164は、マスター規格部700の表示タイミング調整部152およびスレーブ規格部900の表示タイミング調整部505に出力される。
【0048】
スレーブ規格部900において、位相比較発振制御部502は、マスター規格部700が生成したモニタ同期信号166と、表示クロック生成部501が生成した表示クロック511との位相を比較し、比較結果に基づいて制御信号510を生成して、表示クロック生成部501に出力する。表示クロック生成部501は、制御信号510に基づいて、生成する表示クロック511の発振周波数を制御する。その結果、表示クロック511の位相は、マスター規格部700が生成するモニタ用同期信号166の位相と揃う。モニタ同期信号生成部503は、表示クロック511に基づいてモニタ同期信号512を生成する。生成されたモニタ同期信号512および表示クロック511は表示タイミング調整部505に出力される。
【0049】
表示タイミング調整部505は、第1の実施形態と同様に、デジタル画像信号110をモニタ同期信号512のタイミングに合わせて、デジタル画像信号162として画像処理部506に出力する。画像処理部506は、表示タイミング調整部505から入力されたデジタル画像信号162に所定の画像処理を行う。画像処理されたデジタル画像信号162は表示モニタ600に出力され、表示モニタ600での画像表示に使用される。一方、撮像側へ供給する伝送撮像クロック115の生成は、第1の実施形態と同様に行われるが、この際にはモニタ同期信号166が基準同期信号として参照される。
【0050】
本実施形態によれば、マスター規格部700が生成するモニタ同期信号166と位相が合うように、表示クロック511および原振撮像クロック167の発振を制御することで、モニタ同期信号512および撮像用同期信号111の生成に使用するクロックの位相を、マスター規格部700が生成するモニタ同期信号166の位相に合わせることができる。このため、フレーム周波数が同一である画像信号の規格を用いる場合、全ての画像信号のフレーム周期を完全に一致させることができる。よって、異なる表示規格の表示モニタに同時に画像を表示する場合でも、全ての表示モニタにおいてフレームの追い越し等が発生しない。
【0051】
本実施形態では、表示規格の異なる表示モニタを2台用いているが、表示規格の異なる表示モニタを3台以上用いてもよい。この場合、複数の表示規格の内の、所定の1つの表示規格をマスター規格とし、その他の表示規格をスレーブ規格とし、図4に示すスレーブ規格部900を2つ以上設け、マスター同期信号166、撮像用同期信号111、デジタル画像信号110、およびプロセッサ側撮像クロック164を各スレーブ規格部900に入力すればよい。
【0052】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
100・・・電子内視鏡装置、101・・・内視鏡スコープ、102・・・固体撮像素子、103・・・撮像用同期信号生成部、104・・・撮像側逓倍部、150・・・画像処理プロセッサ、151・・・フレームバッファ、152,505・・・表示タイミング調整部、153,506・・・画像処理部、154・・・原振撮像クロック生成部、155・・・プロセッサ側逓倍分周部、156,502・・・位相比較発振制御部、158,501・・・表示クロック生成部、159,400,503・・・モニタ同期信号生成部、160・・・バッファメモリ、200,600・・・表示モニタ、300・・・ライト制御部、301・・・リード制御部、700・・・マスター規格部、800・・・プロセッサ側撮像クロック生成部、900・・・スレーブ規格部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡スコープおよび画像処理プロセッサを備える電子内視鏡装置であって、
前記内視鏡スコープは、
光学情報を電気信号に変換し、画像信号として出力する固体撮像素子と、
前記画像処理プロセッサから入力される伝送撮像クロックを逓倍したスコープ側逓倍クロックを生成する撮像側逓倍部と、
前記スコープ側逓倍クロックから、前記固体撮像素子を駆動する撮像用同期信号を生成する撮像用同期信号生成部と、
を備え、
前記画像処理プロセッサは、
表示クロックを生成する表示クロック生成部と、
前記表示クロックに基づき、モニタ同期信号を生成するモニタ同期信号生成部と、
原振撮像クロックを生成する原振撮像クロック生成部と、
前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周したプロセッサ側撮像クロックと、前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周した前記伝送撮像クロックとを生成するプロセッサ側逓倍分周部と、
前記モニタ同期信号と、前記プロセッサ側撮像クロックとの位相を比較し、比較結果に基づいて前記原振撮像クロック生成部の発振を制御する位相比較発振制御部と、
前記撮像用同期信号と前記プロセッサ側撮像クロックと前記モニタ同期信号と前記表示クロックとを用いて、前記画像信号を前記モニタ同期信号に同期して出力する表示タイミング調整部と、
を備える電子内視鏡装置。
【請求項2】
前記表示タイミング調整部は、
前記画像信号を保持するフレームバッファと、
前記撮像用同期信号と前記プロセッサ側撮像クロックに基づき、前記画像信号を前記フレームバッファに書き込むライト制御部と、
前記モニタ同期信号と前記表示クロックに基づき、前記フレームバッファに書き込まれた前記画像信号を読み出すリード制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記モニタ同期信号生成部はさらに、前記撮像用同期信号に基づき、前記モニタ同期信号の生成を開始するタイミングを調整することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記画像処理プロセッサは、
前記表示クロック生成部と、
前記モニタ同期信号生成部と、
前記表示タイミング調整部と、を複数組備え、
前記複数組の中の任意の一組をマスターとし、
前記マスター以外の各組をスレーブとし、
前記スレーブはさらに、前記マスターの前記モニタ同期信号生成部が生成した前記モニタ同期信号と、当該スレーブの前記表示クロック生成部が生成した前記表示クロックとの位相を比較し、当該スレーブの前記表示クロック生成部の発振を制御する位相比較発振制御部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−22054(P2013−22054A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156635(P2011−156635)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】