説明

電子写真印刷機または電子写真複写機用のエンドレスの中間イメージ担体

本発明は、電子写真印刷機または電子写真複写機用のエンドレスの中間イメージ担体(20,46)に関する。エンドレスの該中間イメージ担体は、電子写真印刷機または電子写真複写機においてトナーイメージ(22,24)を記録、搬送および/または出力するために使用される。該中間イメージ担体(20,46)の厚さ方向の電気伝導度は、実質的に相互に対向する2つの測定点(B1,B2)間の方が、横方向にずらされて相互に対向する測定点(A1,B2)間より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真印刷機または電子写真複写機用の次の形式のエンドレスの中間イメージ担体に関する。すなわち、電子写真印刷機、電子写真複写機において、トナーイメージを記録、搬送および/または出力するのに使用されるエンドレスの中間イメージ担体に関する。公知の電子写真印刷機、とりわけカラー印刷機の多くは中間担体媒体を有し、この中間担体媒体は有利には転写バンドである。電子写真法によって光導電体に生成された個々の色分解像は、時間的に連続して該光導電体から中間担体媒体へ、見当合わせによって相互に重ねられて印刷されることにより、該中間担体媒体に集められる。次に、相互に重ねられて印刷されたこの色分解像は、中間担体媒体から被印刷側の担体材料に転写される。このような公知の中間担体媒体は通常、一定の電気伝導度を有するプラスチックから成り、このプラスチックはとりわけエラストマである。このような公知の印刷機は通常、DIN A4サイズで1分あたり200頁未満の処理速度を有する枚葉紙印刷機である。現在、A4サイズで200頁/分を上回る処理速度で高品質の印刷結果を得るためには、公知の担体媒体は適していない。
【0002】
従来知られていた中間担体媒体は、基本的に2つのグループに分けられる。第1のグループの中間担体媒体は高抵抗のものであり、ここで必要とされる転写電流は小さい。転写電流が小さいと、低電力を有する低コストの高電圧電源網を使用できる。このような高抵抗の中間担体媒体ではさらに、中間担体媒体へのトナー転写および中間担体媒体からのトナー転写が比較的高い効率で行われる。しかし高抵抗の中間担体媒体を使用する場合には、比較的低い処理速度でも、小サイズのシンボルのいわゆる噴き出しが発生してしまうという欠点が存在し、これによって印刷品質が低減されてしまう。さらに、処理速度が上昇すると中間担体媒体の表面に静電気が帯電される。このような静電気の帯電により、制御不可能な自然放電によって中間担体媒体へ転写される印刷イメージの破壊が引き起こされる。このような放電が発生すると、いわゆるリヒテンベルク図形が生成され、これによって、中間担体媒体に形成された印刷イメージが少なくとも部分的に破壊されてしまう。第1のグループの中間担体媒体の場合、図4〜8に関連して記載された測定回路によって10Vの測定電圧で検出される体積固有抵抗は、1012Ωcm以上である。
【0003】
第2のグループの中間担体媒体は、第1のグループの中間担体媒体と比較して低抵抗である。第2のグループの中間担体媒体の場合、図4〜8に関連して記載された測定回路によって10Vの測定電圧で検出される体積固有抵抗は、1010Ωcm以下である。このような中間担体媒体では確かに、制御不可能な自然放電は回避されるが、中間担体媒体へのトナーイメージの転写ないしは中間担体媒体からのトナーイメージの転写が行われる際の効率は比較的低い。処理速度が低い場合、転写領域における滞留時間は比較的長いので、トナーイメージの転写は未だ十分である。また、第2のグループの中間担体媒体を有する印刷機では、付加的なワックスブレードおよびテフロンバーを使用することも知られている。このワックスブレードおよびテフロンバーは中間担体媒体の表面に接触し、該中間担体媒体の表面エネルギーを低減するためのものである。こうすることによって、中間担体媒体上のトナー粒子の付着力を低減し、転写領域へのトナー転写を容易にしなければならない。
【0004】
しかし、A4で200枚/分を上回る印刷能力を有する高性能の印刷機において、処理速度が比較的高く、転写領域におけるトナーの滞留時間が低減されることにより、転写効率は格段に低減される。さらに、中間担体媒体の表面エネルギーを調整するための上記手段によっても、許容範囲の印刷結果を得ることができなくなる。というのも、これらの手段によって中間担体媒体の停止時間は低減されるからである。また、被印刷側の担体材料へトナーイメージが両面転写される場合、この被印刷側の担体材料の幅が中間担体媒体の幅より小さいと、別の問題も発生する。このような位置関係の場合、共通の転写領域において第1の中間担体媒体上の第1のトナーイメージが担体材料の前面に転写され、第2のトナーイメージが第2の中間担体媒体から該担体材料の裏面に転写され、該担体材料に隣接する少なくとも1つの領域で中間担体媒体の表面が相互に接触すると、担体材料に隣接する領域で相互に接触する中間担体媒体間で電荷交換が発生する。中間担体媒体は、担体材料に隣接する場所で直接コンタクトするので、補償電流が印刷物質の側方を流れる。中間担体媒体の表面が接触する際に発生するこの補償電流と、補償電流によって引き起こされる電荷の交換とによって、低抵抗の中間担体媒体の電気伝導度が比較的良好であるため、転写領域において電界が崩壊してしまう。
【0005】
公知の中間担体媒体は、たとえばASTM D257またはIEC60093等の規格で規定されたパラメータによって、とりわけ体積固有抵抗および表面固有抵抗によって表される。ここでは、中間担体媒体の電気的特性が均質であり、方向に依存する特性を有さないことが前提とされる。
【0006】
本発明の課題は、比較的高い処理速度でも高品質の印刷結果が実現される中間イメージ担体を提供することである。
【0007】
前記課題は、請求項1の特徴を有するエンドレスの中間イメージ担体によって解決される。従属請求項に、有利な発展形態が記載されている。
【0008】
本発明による中間イメージ担体の特徴は、実質的に相互に直接対向する測定点間において該中間イメージ担体の厚さ方向の電気伝導度が、横方向にずらされた2つの測定点間の電気伝導度より小さいことである。このことによって高抵抗の担体材料の利点と低抵抗の担体材料の利点とを、それぞれの欠点が生じることなく簡単に相互に組み合わせることができる。
【0009】
このようにして、横方向にずらされた2つの測定点間の電気伝導度を容易に、少なくとも次のように大きく選択することができる。すなわち少なくとも、中間イメージ担体と、該中間イメージ担体に転写するためのトナーイメージが設けられるイメージ担体との間で、気体放電の点灯電圧が阻止されるように大きく選択することができる。さらに少なくとも、トナーイメージを中間イメージ担体から最終イメージ担体へ転写するのに十分に大きな電界が得られるように、横方向にずらされた両測定点間の中間イメージ担体の電気伝導度を小さく選択し、かつ実質的に直接対向する2つの測定点間の該中間イメージ担体の電気伝導度を大きく選択することもできる。こうすることにより、高い転写効率が実現される。また、実質的に対向する2つの測定点間の中間イメージ担体の厚さ方向の電気伝導度を容易に、少なくとも、該中間イメージ担体の表面上で部分的な放電が発生するのが阻止されるように小さく選択することもできる。
【0010】
したがって、上記の測定点で異なる電気伝導度を有する中間イメージ担体は、DIN A4用紙で200枚/分を上回る処理速度を有する高性能の印刷機で使用するのにも適しており、かつ、DIN A4用紙で50枚/分を上回る処理速度を有するフルカラー印刷機で使用するのにも適している。このように高い処理速度でも、高品質の印刷結果を実現することができる。
【0011】
本発明の第2の側面は、電子写真印刷機または電子写真複写機においてトナーイメージ用に使用されるエンドレスの中間イメージ担体に関する。この中間イメージ担体は少なくとも2つの層を有し、該中間イメージ担体の外側の周面上に配置された第1の層の伝導度は、該第2の層に隣接する第2の層より低いことを特徴とする中間イメージ担体に関する。このように比較的高い電気伝導度を有する第2の層によって、横方向にずらされた2つの測定点間に発生する体積固有抵抗が比較的低くなる。この体積固有抵抗は、対向する2つの測定点間の体積固有抵抗より小さい。
【0012】
本発明の第3の側面は、電子写真印刷機または電子写真複写機においてトナーイメージ用に使用されるエンドレスの次のような中間イメージ担体に関する。すなわち、高い電気伝導度を有する構成部分を有し、これらの構成部分は、該中間イメージ担体が2つの横方向にずらされた測定点間で、実質的に対向する2つの測定点間より高い伝導度を有することを特徴とする中間イメージ担体に関する。本発明のこの第3の側面による中間イメージ担体によっても、DIN A4用紙で200枚/分を上回る処理速度で高品質の印刷結果を実現することができる。
【0013】
本発明をより理解できるようにするために以下で、図面に示された有利な実施例を参照する。これらの実施例は特別な用語に基づいて記載されているが、本発明の特許保護範囲はこれらの用語によって制限すべきではないことを述べておく。というのも、ここに図示された装置におけるこのような変更または別の修正、ならびに本発明の別の適用例は、ここで挙げられたように、当業者の現在または将来の通常の専門知識と見なされるからである。図面に、本発明の実施例が示されている。
【0014】
図面
図1 トナーイメージを光導電体バンドから転写バンドへ転写するための転写場所における、電子写真印刷機の一部分を概略的に示す図である。
【0015】
図2 2つの転写バンドからそれぞれ1つのトナーイメージを担体材料に転写するための転写場所における電子写真印刷機の第2の一部分を概略的に示す図である。
【0016】
図3 図2の転写場所における転写バンドおよび担体材料の断面図であり、転写場所における電流の流れを概略的に示している。
【0017】
図4 転写バンドの電気伝導度を検出するための測定回路の側面図である。
【0018】
図5 図4に示された測定回路の面コンタクトを示す図である。
【0019】
図6 図4および5に示された、転写バンドの表面上の伝導度を測定するための測定回路の断面図である。
【0020】
図7 実質的に対向する2つの測定点間における転写バンドの電気伝導度が検出される、図6に示された測定装置の断面図である。
【0021】
図8 横方向にずらされた2つの測定点間における担体材料の電気伝導度が検出される、図6および7に示された測定装置の断面図である。
【0022】
図9 転写バンドの電気伝導度に関する要件が、該転写バンドの横方向抵抗を該転写バンドの体積固有抵抗に依存して示すことにより図解されているグラフである。
【0023】
図10 第1の転写バンドタイプおよび第2の転写バンドタイプにおける横方向抵抗と体積固有抵抗との依存関係が示された、図9のグラフの一部を示す図である。
【0024】
図1には、電子写真印刷機が概略的に示されている。ここでは、エンドレスの光導電体バンド12に生成されたトナーイメージを転写バンド20に転写するための印刷場所10に設けられた該電子写真印刷機の要素が示されている。光導電体バンド12はバンド駆動機構のローラ(図示されていない)を介して案内されて駆動される。これらのローラのうち、偏向ローラ14が転写領域10に配置されている。偏向ローラ14の表面は、印刷機の接地電位15に接続されており、この接地電位15は0Vである。バンド駆動機構のここに示されていない駆動ローラによって、光導電体バンド20は矢印P1の方向に、実質的に一定の速度で駆動される。
【0025】
転写バンド20はエンドレスのバンドであり、これは複数のローラを介して案内および偏向される。ここでは、これらのローラのうち1つが駆動ローラとして構成されている。転写領域10には第1の転写ローラ16および第2の転写ローラ18が配置されており、これらによって、転写領域10において転写バンド20が案内される。ここでは、偏向ローラ14に向かい合う側の第1の転写ローラ16および第2の転写ローラ18の共通の接線は少なくとも光導電体バンド12と交わり、転写領域10において光導電体バンド12に案内される転写バンド20は、該転写バンド20の張力に依存して光導電体バンド12に対してかかる力によって押しつけられる。
【0026】
ここに図示されていない帯電ユニットにより、とりわけ帯電コロトロンによって光導電体バンド12が帯電された後、シンボル発生器によって、帯電された光導電体バンド12の領域が、該シンボル発生器に供給された印刷データに相応して放電される。前記シンボル発生器は、とりわけLEDシンボル発生器である。光導電体バンド12のこの領域の放電により、電荷イメージが生成される。この電荷イメージは、印刷潜像に相応する。次に、この電荷イメージは現像ユニットを使用してトナー材料により、有利には磁気ブラシを介して着色されることにより、これによってトナーイメージ22は光導電体バンド12に生成される。
【0027】
トナーイメージ22は光導電体バンド12の表面にあり、この表面上で転写領域10へ搬送される。すでに記載したように、偏向ローラ14は接地電位を有し、第1の転写ローラ16および第2の転写ローラ18は高電圧電位26を有する。この高電圧電位26は、有利には500〜5000Vの領域内にある。このような電位差により、転写領域10において行われる光導電体バンド12から転写バンド20へのトナーイメージ22の転写は容易になり、トナーイメージ22が転写バンド20へ転写された後は、光導電体バンド12の表面にはトナーの残りだけが存在する。トナーイメージ22の転写後、光導電体バンド12は放電ユニットによって放電する。次に、未だ光導電体バンド12上に存在するトナーの残りが、クリーニングユニットによって除去される。転写バンド20にすでに転写されたトナーイメージは、図1では24によって示されている。図1に示されたこのシステムにより、光導電体バンド12から転写バンド20へのトナーイメージ22の転写は、小さい押圧力で行われる。
【0028】
図2には、転写バンド20,46上に存在するトナーイメージを担体材料36に転写するための印刷機の第2の転写場所が示されている。転写バンド20は第1の印刷物32に割り当てられ、担体材料36の前面に転写するための印刷イメージを生成するために使用される。同様の要素は、同じ参照記号を有する。図1に関連して説明したように第1の印刷物32によって生成され転写バンド20に転写されたトナーイメージ24は、図2に示された転写領域30において矢印P4の方向に搬送される。転写バンド20によって転写領域30内で搬送されるトナーイメージは、転写領域30において担体材料36の前面に転写される。転写バンド20は転写領域30内で、ローラ38を介して搬送される。このローラ38は金属性のローラコア40および導電性のエラストマ層42を有する。金属性のローラコア40は、約3000Vの正の高電圧電位44(+HV)に接続されている。転写バンド20はエンドレスのバンドであり、図1と関連してすでに説明したように、ここに図示されていない駆動ローラによって矢印P4の方向に駆動される。
【0029】
転送バンド46は第2の印刷物34に対して割り当てられ、この第2の印刷物34は担体材料36の裏面に印刷するためのトナーイメージを生成する。転写バンド46は転写領域30において、ローラ48を介して案内される。このローラ48は金属性のローラコア50を有し、このローラコア50は、約−3000Vの負の高電圧54(−HV)に接続されている。このローラコア50を導電性のエラストマ層52が包囲し、このエラストマ層52の外表面がローラ表面を形成する。図1と関連して説明したのと同様に、第2の印刷物34によってトナーイメージが光導電体バンド上に生成され、該光導電体バンドから転写バンド46に転写される。
【0030】
転写バンド46は、ここに図示されていない駆動ローラを介して矢印P5の方向に駆動される。転写バンド46に転写されたトナーイメージは、矢印P5の方向に転写領域30へ搬送され、ここで担体材料36の裏面に転写される。この担体材料36は、ここで図示されていないローラ対によって案内され、矢印P3の方向に駆動される。
【0031】
担体材料36の駆動速度は、転写バンド20および46の循環速度より僅かに低いので、転写領域30において力が矢印P3の方向に担体材料36に対してかかり、該担体材料は転写領域30の前の領域において緊張状態に維持され、担体材料36のいわゆるぶれが阻止される。この担体材料36は、有利にはエンドレスの巻取紙である。
【0032】
図3には、図2の転写場所30に存在する印刷機の要素の切断軸A‐Aに沿った断面が示されている。同様の要素には同じ参照記号が付与されている。すでに図2に関連して説明したように、ローラ38の金属性のローラコア40は正の高電圧44(+HV)に接続されており、ローラ48のローラコア50は負の高電圧54(−HV)に接続されている。正の高電圧44と負の高電圧54との間の電位差により、電流が導電性のエラストマ層42、転写バンド20、担体材料36、転写バンド46、導電性のエラストマ層52を通って、ローラ48のローラコア50まで流れる。担体材料36の側方の領域60、すなわちローラ38のローラ縁部およびローラ48のローラ縁部の方向に、転写バンド20および46の表面が直接コンタクトする。したがって矢印64によって示されているように、転写バンド20を横方向に僅かな電流も流れ、転写バンド20と転写バンド46とのコンタクト場所で転写バンド46へ入り、ローラ48に到達する。
【0033】
しかしローラ38および48間を流れる電流全体の主要な割合は、矢印62によって示されているように、担体材料36を通って流れる。担体材料が過度に低抵抗である場合、電流全体のうちで矢印64によって示された電流の割合は上昇し、電流の割合62は低減される。このことによって、転写バンド20,46から担体材料36へトナーイメージが転写される際の転写効率は低減されてしまう。
【0034】
転写バンド20の表面上にトナーイメージの形態で形成されたトナー材料はギャップ66に示されており、ローラ38によって担体材料36と接触する。
【0035】
転写バンド46上には、トナー粒子がトナーイメージの形態で形成されており、これは担体材料36の裏面に印刷されるものである。転写バンド46上のトナー粒子は、図3ではギャップ68に示されている。ローラ38および48が相互的に押圧ローラとして使用されることにより、転写バンド20および46の外側は担体材料36の前面ないしは裏面に押しつけられる。各転写バンド20,46からのトナー粒子の転写は、正の高電圧44と負の高電圧54との間の電位差によって、少なくとも有利になる。この電圧差は有利には、ローラコア40とローラコア50との間の電流全体によって制御または調整される。ローラコア40および50間の電流全体は、図3では電流62と電流64とから成る。
【0036】
図4に、転写バンド20の電気伝導度を検出するための測定回路が示されている。もちろん、図4に示された測定回路によって別の転写バンドの電気伝導度、とりわけ転写バンド46の電気伝導度を検出することもできる。測定装置70は、コンタクトエレメントA1およびB1を有する上方のコンタクトシステム72を有し、さらに、コンタクトA2およびB2を有する下方のコンタクトシステム74が設けられている。コンタクトA1,B1,A2およびB2はそれぞれ、転写バンド20に対して割り当てられた20×20mmの正方形の面コンタクトを有し、この面コンタクトは特殊鋼から成る。コンタクトA1およびA2の面コンタクトは実質的に合同に、転写バンド20の相互に反対側の面に対向して設けられる。これと同様に、コンタクトB1およびB2の面コンタクトは該転写バンド20の相互に反対側の面に設けられる。コンタクトA1およびB1間の間隔、およびコンタクトA2およびB2間の間隔は、10mmである。コンタクトA1およびB1が55Nの力で、コンタクトA2およびB2に押しつけられることにより、コンタクトA1およびB1ならびにA2およびB2の面コンタクトはそれぞれ55Nの力で、転写バンド20の前面ないしは裏面に押しつけられる。
【0037】
図5に、転写バンド20の一部が示されている。ここでは、コンタクトA1およびB1の面コンタクトは実線によって示されている。すでに図4と関連して説明したように、コンタクトA1,B1,A2およびB2はそれぞれ、20×20mmの正方形のベース面を有する。さらにこれらのコンタクトは、10mmの間隔で配置されている。
【0038】
図6に、図4に示された測定装置70の断面図が示されている。ここでは転写バンド20の伝導度が、コンタクトA1およびB1の面コンタクト間において検出される。このような測定により、転写バンド20の表面上の2点間の伝導度が該転写バンド20の循環方向で検出される。択一的に、転写バンド20の表面上の2点間の伝導度を、該転写バンド20の循環方向に対して横方向または該転写バンド20の循環方向に対して斜め方向に検出することもできる。
【0039】
図7に、図6の測定装置70の断面図が示されている。ここでは、コンタクトB1およびB2の面コンタクト間で転写バンドの厚さ方向の伝導度が検出され、転写バンド20の体積固有抵抗が検出される。
【0040】
図8に、図6および7のような測定回路の断面図が示されている。ここに図示された測定回路により、横方向にずらされたコンタクトA1およびB2の面コンタクト間の転写バンドの伝導度が検出される。この測定回路によってコンタクトA1およびB2の面コンタクト間で伝導度に相応して検出される抵抗は、本願では横方向抵抗とも称される。この横方向抵抗は、高い印刷速度を有する電子写真印刷機における転写バンド20の電気的特性に関して、従来技術で生じる欠点を回避するのに重要である。この横方向抵抗が電子写真処理に及ぼす影響を以下で、図9および10と関連して詳細に説明する。
【0041】
上記の測定回路に対して択一的に、コンタクトA1,B1,A2およびB2の大きさ、間隔およびコンタクト材料を変更することができる。
【0042】
図9に、転写バンド20の横方向抵抗と該転写バンド20の体積固有抵抗との依存関係が示されたグラフが示されている。太い一点鎖線によって示された目標領域は、本発明による転写バンド20が理想的には有すべき横方向抵抗と体積固有抵抗との抵抗比を含んでいる。しかし本発明は、この値領域にのみ制限されることはない。横方向抵抗は800Vの直流電圧で、図8に示された測定回路により、コンタクトA1およびB2の面コンタクト間で検出される。体積固有抵抗は、図7に示された測定回路によってコンタクトB1およびB2の面コンタクト間で、10Vの直流電圧の測定電圧で検出される。
【0043】
横方向抵抗<4・10Ωである場合、転写バンド20から担体材料36へトナーイメージが転写される際の転写効率は低減され、該転写バンド20上に形成されたトナー材料の一部しか該担体材料に転写されない。このことにより、トナーイメージは不十分な着色でしか担体材料36に形成されない。さらに、転写バンド20に残るトナー材料を該転写バンド20からクリーニングしなければならない。転写バンド20をクリーニングするために設けられたクリーニングユニットによって、転写バンド20上に残るトナー材料のすべてを除去できない場合、後続の印刷イメージの際に場合によっては、このトナーの残りも一緒に担体材料36に転写され、低品質の印刷イメージないしは刷り損じしか形成されなくなってしまう。
【0044】
しかし、転写バンド20の横方向抵抗が4・10Ωを上回る場合、光導電体バンド12から転写バンド20にトナーイメージが転写される際に、放電、いわゆる空気絶縁破壊が転写領域10に発生する危険性が生じる。このような放電はとりわけ、両バンドのコンタクト場所、すなわち光導電体バンド12および転写バンド20の後のコンタクト場所の後の領域に発生する。この領域は、転写領域10の排出部ギャップとも称される。すでに記載したように、転写領域10に電位差を生成するための高電圧は、接地電位15と高電圧26との間を流れる転写電流に基づいて調節される。したがって高い横方向抵抗の場合には、高電圧を比較的高く調節することにより、転写電流を所要の設定値に設定する。しかし横方向抵抗の抵抗値>4・10Ωである場合には、この実施例の印刷機では通常、いわゆるパッシェン曲線を上回り、排出部ギャップに気体放電が発生してしまう。このような気体放電ないしは空気絶縁破壊により、光導電体バンド12および転写バンド20が損傷され、その結果として印刷結果が劣化してしまう。
【0045】
体積固有抵抗<4・1010Ωcmである場合もまた、転写バンド20ないしは46から担体材料36へトナーイメージが転写される際の転写効率は過度に小さい。このことによって、転写バンド20の横方向抵抗が過度に小さいケースに関してすでに上記で説明したのと同様の不利な作用が生じる。
【0046】
体積固有抵抗>8・1011Ωcmである場合、転写バンド20および46上にあるトナーイメージが担体材料36に転写される際に転写領域30に気体放電および電気的なフラッシュオーバが発生し、これによって、該担体材料36に転写されたトナーイメージにいわゆるリヒテンベルク図形が生じる危険性が存在する。このリヒテンベルク図形は、次に固定化される印刷イメージで見られ、印刷イメージの印刷品質に著しく悪影響を及ぼす。
【0047】
図10に、テストされた異なる材料の横方向抵抗および体積固有抵抗の特性がプロットされている。公知の印刷機で使用される転写バンドは、ここでは第1の材料グループを構成し、これは図10のグラフでは破線で示されている。この破線は、従来技術による異なる転写バンドの多数の測定値から求められることにより線形化された曲線を示している。点線によって、本発明では異方性の材料特性を有する第2の材料グループの転写バンド20,46の横方向抵抗と体積固有抵抗との抵抗比が線形化されて、図10のグラフにプロットされている。第2の材料グループの転写バンド20,46の電気伝導度は、厚さ方向に実質的に直接対向する2つの測定点間の方が、横方向にずらされた2つの測定点間より小さい。本出願人が特定の印刷機タイプで試行した際、図10のグラフにおいて実線によって囲まれた領域80内に横方向抵抗と体積固有抵抗との比が位置する材料が特に適していることが実証された。このような転写バンド20,46により、DIN A4用紙で200枚/分を上回る高い処理速度でも、突出した印刷結果が得られたのである。
【0048】
したがって本発明によれば、定義されたように異方向に導電性を有する材料を転写バンド20,46として使用するのが有利である。とりわけ、適切な厚さ方向の導通抵抗を選択することにより、すなわち体積固有抵抗を選択しかつ適切な横方向抵抗を選択することにより、高い処理速度でも、2重印刷でも印刷品質が高くなる。処理速度が高く、異なる幅の巻取紙または個々の枚葉紙が使用される場合でも、最適な印刷品質かつ高い転写効率が保証される。体積固有抵抗は有利には4・1010Ωcm〜8・1011Ωcmの領域内にあり、これは10Vの測定電圧で検出される。横方向抵抗は有利には4・10Ω〜4・10Ωの間の領域内にあり、これは800Vの測定電圧で検出される。
【0049】
転写バンド20,46は有利には、50μm〜1000μmの間の厚さと、1000mm〜3000mmの長さと、100〜1000mmの間の領域内にある幅とを有するエンドレスバンドである。転写バンド20,46は電気的に絶縁性のプラスチックを有し、この中にたとえば、カーボンブラックまたは金属性の材料等の粒子が分散されている。択一的または付加的に、イオン伝導性の添加物を絶縁性のエラストマに挿入することができる。このような添加物はたとえば塩であるか、または、とりわけポリアニリンである導電性のプラスチックである。その際、この粒子は適切な分布でベース材料10に挿入され、配向および団塊化されることにより、転写バンド20,46が所望の異方性の特性を有するようにされる。絶縁性のプラスチックは、たとえばエラストマである。
【0050】
択一的に転写バンド20,46を、異なる伝導度を有する異なる複数の層から構成することもできる。有利にはこれらの層は、転写バンド20,46の表面に対して平行に延在する。層厚さおよび伝導度が異なるプラスチック層を組み合わせることにより、転写バンド20,46の所望の異方性の電気的特性が得られる。ここで個々の層を、体積固有抵抗が異なる等方向の導電性のプラスチックから製造することもできる。伝導度が異なるこのような個々のプラスチック層を組み合わせることにより、所望の異方性の電気的特性を有する転写バンド20,46を簡単に形成することができる。択一的に、プラスチック層のうち少なくとも1つが異方性の電気的特性を有する構成も可能である。別の実施形態では、すべてのプラスチック層が異方性の電気的特性を有するように構成することもできる。さらに、個々の層を等方向に導電性のエラストマから製造し、個々の層の伝導度および層厚さを適切に選択して、転写バンド20,46の全体的な異方性の結合体を形成することができる。
【0051】
図面および上記の説明において有利な実施例を列挙および詳述したが、これらの実施例は単なる例であり、本発明を限定するものとして見なすべきではない。これらの有利な実施例は図示および記載されただけであり、現在および将来において本発明の保護範囲内にあるすべての変更および修正を保護すべきであることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】トナーイメージを光導電体バンドから転写バンドへ転写するための転写場所における、電子写真印刷機の一部分を概略的に示す図である。
【図2】2つの転写バンドからそれぞれ1つのトナーイメージを担体材料に転写するための転写場所における電子写真印刷機の第2の一部分を概略的に示す図である。
【図3】図2の転写場所における転写バンドおよび担体材料の断面図であり、転写場所における電流の流れを概略的に示している。
【図4】転写バンドの電気伝導度を検出するための測定回路の側面図である。
【図5】図4に示された測定回路の面コンタクトを示す図である。
【図6】図4および5に示された、転写バンドの表面上の伝導度を測定するための測定回路の断面図である。
【図7】実質的に対向する2つの測定点間における転写バンドの電気伝導度が検出される、図6に示された測定装置の断面図である。
【図8】横方向にずらされた2つの測定点間における担体材料の電気伝導度が検出される、図6および7に示された測定装置の断面図である。
【図9】転写バンドの電気伝導度に関する要件が、該転写バンドの横方向抵抗を該転写バンドの体積固有抵抗に依存して示すことにより図解されているグラフである。
【図10】第1の転写バンドタイプおよび第2の転写バンドタイプにおける横方向抵抗と体積固有抵抗との依存関係が示された、図9のグラフの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 転写領域
12 光導電体バンド
14 偏向ローラ
15 接地電位
16,18 転写ローラ
20 転写バンド
22,24 トナーイメージ
26 高電圧
P1〜P5 方向矢印
32 印刷物の前面
34 印刷物の裏面
36 担体材料
30 転写領域
38,48 ローラ
40,50 金属性のローラコア
42,52 導電性のエラストマ層
44,54 高電圧端子
46 転写バンド
62,64 矢印 電流の割合
66,68 ギャップ
P1〜P5 方向矢印
70 測定装置
72 上方のコンタクトシステム
74 下方のコンタクトシステム
80 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真印刷機または電子写真複写機用のエンドレスの中間イメージ担体において、
該中間イメージ担体(20,46)の厚さ方向の電気伝導度は、実質的に相互に対向する2つの測定点(B1,B2)間の方が、横方向にずらされた2つの測定点(A1,B2)間より小さいことを特徴とする、中間イメージ担体。
【請求項2】
第1の転写領域(10)において、帯電されたトナー粒子から成りイメージ担体(12)上に存在するトナーイメージ(22)が該中間イメージ担体(20,46)に転写され、
転写された該トナーイメージは第2の転写領域(30)において、該中間イメージ担体(20,46)から最終イメージ担体(36)へ転写され、
前記第1の転写領域(10)および第2の転写領域(30)におけるトナーイメージの転写を行うために、前記トナー粒子に作用する電界がそれぞれに対して使用される、請求項1記載の中間イメージ担体。
【請求項3】
横方向にずらされた測定点(A1,B2)間の該中間イメージ担体(20,46)の電気伝導度は少なくとも、該中間イメージ担体(20,46)とイメージ担体(12)との間で気体放電の点灯電圧が阻止されるように大きく選択される、請求項1または2記載の中間イメージ担体。
【請求項4】
横方向にずらされた2つの測定点(A1,B2)間の該中間イメージ担体(20,46)の電気伝導度は少なくとも、該中間イメージ担体(20,46)から最終イメージ担体(36)へのトナーイメージの転写かつイメージ担体(12)から該中間イメージ担体(20,46)へのトナーイメージの転写に十分に大きな電界が生成されるように小さく選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項5】
実質的に相互に対向する2つの測定点(B1,B2)間の該中間イメージ担体(20,46)の電気伝導度は少なくとも、該中間イメージ担体(20,46)の表面上の部分的な放電が阻止されるように低く選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項6】
周縁方向に対して横方向でありかつ担体レベルの方向の該中間イメージ担体(20,46)の電気伝導度は少なくとも、トナーイメージを転写するための転写場所(10,30)において、トナーイメージを転写するのに十分に大きな電界が生成されるように低く選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項7】
横方向にずらされた測定点(B1,B2)は、周縁方向および/または該周縁方向に対して横方向にずらされて配置される、請求項1から6までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項8】
周縁方向に対して横方向の測定点間の電気伝導度は、周縁方向の測定点間の横方向抵抗より小さい、請求項7記載の中間イメージ担体。
【請求項9】
転写バンドまたは転写ドラムである、請求項1から8までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項10】
イメージ担体(12)は光導電体であり、たとえば光導電体バンドまたは光導電体ドラムである、請求項2から9までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項11】
第1の動作形式では、イメージ担体(12)から該中間イメージ担体(20,46)へ複数のトナーイメージが相互に重なって印刷され、
第2の動作形式では、相互に重なって印刷された該トナーイメージが、一緒に最終イメージ担体(36)に転写されるように構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項12】
該中間イメージ担体(20,46)の厚さ方向の固有抵抗の値は、1E+10Ωcm〜1E+12Ωcmの領域内にある、請求項1から11までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項13】
前記固有抵抗は、上面に設けられた第1の電気的面コンタクトと、該第1の電気的面コンタクトに対して実質的に対向して該中間イメージ担体(20,46)の下面に設けられた第2の電気的面コンタクトとによって検出され、測定電圧は800Vの直流電圧である、請求項12記載の中間イメージ担体。
【請求項14】
該中間イメージ担体(20,46)の表面における電気伝導度は少なくとも、該中間イメージ担体(20,46)と別のイメージ担体(12,36)との間に電気的フラッシュオーバが発生するのが阻止されるように大きく選択される、請求項1から13までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項15】
該中間イメージ担体(20,46)の相互に反対側の面に横方向にずらされて位置する2つの測定点(A1,B2)間の該中間イメージ担体(20,46)間の電気抵抗の値は、1E+7Ω〜1E+11Ωの間の領域内にあり、有利には4E+7Ω〜5E+8Ωの間の領域内にある、請求項1から14までのいずれか1項記載の中間イメージ担体。
【請求項16】
電子写真印刷機または電子写真複写機においてトナーイメージ用に使用されるエンドレスの中間イメージ担体において、
少なくとも2つの層を含んでおり、
該中間イメージ担体の外側の周面上に配置された第1の層の伝導度は、該第1の層に隣接する第2の層の伝導度より小さいことを特徴とする、中間イメージ担体。
【請求項17】
電子写真印刷機または電子写真複写機においてトナーイメージ用に使用されるエンドレスの中間イメージ担体において、
高い電気伝導度を有する構成部分を有し、
前記構成部分は、横方向にずらされた2つの測定点(A1,B2)間の該中間イメージ担体の伝導度が、実質的に直接対向する2つの測定点(B1,B2)間の伝導度より高くなるように配置されることを特徴とする、中間イメージ担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−534980(P2007−534980A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549891(P2006−549891)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012937
【国際公開番号】WO2005/071494
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(397018925)オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (68)
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 2, D−85586 Poing, Germany
【Fターム(参考)】