説明

電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、および画像形成装置

【課題】長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像を得る。
【解決手段】少なくとも基体と、該基体上に感光層と、を有し、前記感光層のうち最外表面を構成する層が、少なくとも電荷輸送材料の存在下で、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体を含有する電子写真感光体。
[上記一般式(A)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、上記一般式(X)で表される基、−H、またはアルキル基を表す。但し、X乃至X中の少なくとも2つは上記一般式(X)で表される基を表す。上記一般式(X)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基、エーテル基、またはエステル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、−H、またはアルキル基を表す。]



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、電子写真感光体の表面を帯電装置で定められた極性および電位に帯電させ、帯電後の電子写真感光体表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させた後、現像装置で該静電潜像にトナーを付着させることにより、潜像をトナー像として現像し、トナー像を転写手段で記録媒体に転写させることにより、画像形成物として排出する。
【0003】
これらの電子写真感光体としては、強度を向上させる観点から、表面に保護層を設けることが提案されている。保護層を形成する材料系としては、例えば、導電粉をフェノール樹脂に分散したもの(例えば特許文献1参照)、有機−無機ハイブリッド材料によるもの(例えば特許文献2参照)、アルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂によるもの(例えば特許文献3参照)等が開示されている。また、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂と、電子受容性カルボン酸または電子受容性ポリカルボン酸無水物との硬化膜(例えば特許文献4参照)、ベンゾグアナミン樹脂にヨウ素、有機スルホン酸化合物または塩化第二鉄などをドーピングした硬化膜(例えば特許文献5参照)、特定の添加剤と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂またはウレタン樹脂との硬化膜(例えば特許文献6参照)等が開示されている。
【0004】
また、近年ではアクリル系材料による保護層が注目されている。例えば、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜(例えば特許文献7参照)、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材およびバインダー樹脂の混合物を熱または光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜(例えば特許文献8参照)が開示されている。
【0005】
更に、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が開示されている(例えば特許文献9参照)。
【0006】
これらアクリル系材料は、硬化条件、硬化雰囲気等の影響を強く受け、例えば真空中または不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜(例えば特許文献10参照)や、不活性ガス中で加熱硬化された膜(例えば特許文献11参照)が開示されている。
【0007】
また、電荷輸送材料自身をアクリル変性し架橋すると共に、電荷輸送性を有さない反応性モノマーを添加することも開示されている(例えば、特許文献8および12参照)。
一方、電荷輸送材料自身を3官能以上の多官能に変性することも開示されている(例えば特許文献13参照)。
さらに、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合物を保護層に使用する技術が開示されている(例えば特許文献14参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3287678号公報
【特許文献2】特開平12−019749号公報
【特許文献3】特開2002−82469号公報
【特許文献4】特開昭62−251757号公報
【特許文献5】特開平7−146564号公報
【特許文献6】特開平2006−84711号公報
【特許文献7】特開平5−40360号公報
【特許文献8】特開平5−216249号公報
【特許文献9】特開2000−206715号公報
【特許文献10】特開2004−12986号公報
【特許文献11】特開平7−72640号公報
【特許文献12】特開2004−302450号公報
【特許文献13】特開2000−206717号公報
【特許文献14】特開2001−175016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを用いない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の本発明により達成される。即ち、
請求項1に係る発明は、
少なくとも基体と、該基体上に感光層と、を有し、
前記感光層のうち最外表面を構成する層が、少なくとも電荷輸送材料の存在下で、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体を含有する電子写真感光体である。
【0011】
【化1】



【0012】
[上記一般式(A)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、上記一般式(X)で表される基、−H、またはアルキル基を表す。但し、X乃至X中の少なくとも2つは上記一般式(X)で表される基を表す。上記一般式(X)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基、エーテル基、またはエステル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、−H、またはアルキル基を表す。]
【0013】
請求項2に係る発明は、
前記電荷輸送材料のSP値と前記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートのSP値との差が1.5〔(cal/cm1/2〕以下である請求項1に記載の電子写真感光体である。
【0014】
請求項3に係る発明は、
前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが、下記一般式(B)で表される構造を有する請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0015】
【化2】



【0016】
[上記一般式(B)中、R乃至Rはそれぞれ独立に−H、または−CHを表し、nは1以上3以下の整数を表す。]
【0017】
請求項4に係る発明は、
前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、およびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレートから選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体である。
【0018】
請求項5に係る発明は、
前記電荷輸送材料が反応性基を有する電荷輸送材料である請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体である。
【0019】
請求項6に係る発明は、
前記反応性基が、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、およびそれらの誘導体から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の電子写真感光体である。
【0020】
請求項7に係る発明は、
前記反応性基を有する電荷輸送材料が下記一般式(1)で表される構造を有する請求項5または請求項6に記載の電子写真感光体である。
【0021】
【化3】



【0022】
〔一般式(1)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、または置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上6以下である。〕
【0023】
請求項8に係る発明は、
前記電荷輸送材料が反応性基を有さない電荷輸送材料である請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体である。
【0024】
請求項9に係る発明は、
前記最外表面を構成する層が結着樹脂を含有する請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の電子写真感光体である。
【0025】
請求項10に係る発明は、
基体を準備する基体準備工程と、
該基体上に、電荷輸送材料、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート、および熱重合開始剤を含有する塗布液を塗布し、少なくとも前記電荷輸送材料の存在下で前記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを熱重合させて最外表面を構成する層を形成する最外表面層形成工程と、
を有する電子写真感光体の製造方法である。
【0026】
【化4】



【0027】
[上記一般式(A)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、上記一般式(X)で表される基、−H、またはアルキル基を表す。但し、X乃至X中の少なくとも2つは上記一般式(X)で表される基を表す。上記一般式(X)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基、エーテル基、またはエステル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、−H、またはアルキル基を表す。]
【0028】
請求項11に係る発明は、
前記熱重合開始剤の分子量が250以上である請求項10に記載の電子写真感光体の製造方法である。
【0029】
請求項12に係る発明は、
潜像保持体の表面の静電潜像を現像して得られたトナー像を記録媒体に転写して、該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在であり、
前記潜像保持体としての請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の電子写真感光体を少なくとも備えたプロセスカートリッジである。
【0030】
請求項13に係る発明は、
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0031】
請求項1に係る発明によれば、一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを用いない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
【0032】
請求項2に係る発明によれば、SP値の差が1.5を超える場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
【0033】
請求項3に係る発明によれば、イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが一般式(B)で表される構造を有しない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
【0034】
請求項4に係る発明によれば、イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートがトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートまたはトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレートでない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
【0035】
請求項5に係る発明によれば、電荷輸送材料が反応性基を有する電荷輸送材料でない場合に比べ、機械的強度に優れる。
【0036】
請求項6に係る発明によれば、反応性基が、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、およびそれらの誘導体から選択される少なくとも1種でない場合に比べ、機械的強度に優れる。
【0037】
請求項7に係る発明によれば、電荷輸送材料が一般式(1)で表される構造を有しない場合に比べ、機械的強度、電気特性の両面に優れる。
【0038】
請求項8に係る発明によれば、電荷輸送材料が反応性基を有さない電荷輸送材料でない場合に比べ、電気特性に優れる。
【0039】
請求項9に係る発明によれば、最外表面を構成する層が結着樹脂を含有しない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
【0040】
請求項10に係る発明によれば、一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを用いない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる電子写真感光体が製造される。
【0041】
請求項11に係る発明によれば、熱重合開始剤の分子量が250未満である場合に比べ、機械的強度に優れる。
【0042】
請求項12に係る発明によれば、一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを用いない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
【0043】
請求項13に係る発明によれば、一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを用いない場合に比べ、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図。
【図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図3】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置の概略断面図。
【図5】本実施形態に係るタンデム型画像形成装置の概略断面図。
【図6】(A)乃至(C)はそれぞれゴースト評価の基準を示す説明図である。
【図7】実施例にて得られた(IV−18)の化合物のIRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0046】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体(以下単に「感光体」と称すことがある)は、少なくとも基体と、該基体上に感光層と、を有し、前記感光層のうち最外表面を構成する層(以下単に「最外表面層」と称すことがある)が、少なくとも前記電荷輸送材料の存在下で、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体を含有する。
【0047】
【化5】



【0048】
[上記一般式(A)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、上記一般式(X)で表される基、−H、またはアルキル基を表す。但し、X乃至X中の少なくとも2つは上記一般式(X)で表される基を表す。上記一般式(X)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基、エーテル基、またはエステル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、−H、またはアルキル基を表す。]
【0049】
本実施形態において、前記電荷輸送材料としては、反応性基を有する電荷輸送材料でも、反応性基を有さない電荷輸送材料の何れでも構わない。
従って、上記「少なくとも前記電荷輸送材料の存在下で、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体」とは、電荷輸送材料が反応性基を有する電荷輸送材料の場合、イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートと反応性基を有する電荷輸送材料とが重合した共重合体構造を形成する。一方、電荷輸送材料が反応性基を有さない電荷輸送材料の場合、イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートの重合体と電荷輸送材料とが相互進入網目構造を形成した構造体を取っているものと推測される。
【0050】
電子写真方式の画像形成装置において本実施形態に係る感光体を用いることで、長期にわたる繰り返し使用によっても環境依存なく画質に優れた画像が得られる。
このメカニズムについては必ずしも明確ではないが、以下のように推察される。イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートは環状構造を有しており、一般的に用いられる電荷輸送材料と構造的に類似しているため、この両者は相溶性に優れる。そのため上記多官能(メタ)アクリレートは、最外表面層を形成する際の塗布液中において、電荷輸送材料を分散する効果を有すると推察される。結果として、局所的な材料の偏在が抑制され、長期に渡って繰り返し使用しても環境依存なく画質に優れた画像が得られるものと推察される。
【0051】
また、本実施形態に係る感光体は、ディレッションに対しても効果がある。ここで、上記ディレッションとは、感光体の表面に帯電部材によって生じる放電生成物が付着し、この放電生成物によって高温高湿環境下で像流れや白抜けなどが発生する現象をさし、特に接触式の帯電部材を用いる場合に顕著に発生する。
この効果は、前述の通り最外表面層を形成する際の塗布液中において電荷輸送材料の分散性が改善されることで、電荷輸送材料がムラなく存在する最外表面層が得られるため、帯電部材から生じる放電生成物が感光体の表面に付着したとしても、局所的な表面劣化が抑制されるためと推察される。
【0052】
更に、本実施形態に係る感光体は、電気特性および機械的強度に優れる。これも、前述の通り最外表面層を形成する際の塗布液中において電荷輸送材料の分散性が改善されることで、電荷輸送材料がムラなく存在する最外表面層が得られるためと推察される。
【0053】
[感光体の構成]
本実施形態に係る感光体は、基体上に感光層を少なくとも有し、且つ最外表面層が、少なくとも前記電荷輸送材料の存在下で前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体を含有する。より具体的には、
(1)前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートと電荷輸送材料とを共重合させた共重合体
(2)前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートの重合体と電荷輸送材料とが相互進入網目構造を形成した構造体
から選択される少なくとも一種を含有する。本実施形態に係る感光体においては、その層構成等に上記以外の限定は特にはない。
本実施形態に係る感光層は電荷輸送能と電荷発生能とを併せ持つ機能一体型の感光層であってもよいし、電荷輸送層と電荷発生層とを含む機能分離型の感光層であってもよい。さらには、下引層や保護層等のその他の層を設けてもよい。
【0054】
以下、本実施形態に係る感光体の構成について、図1乃至図3を参照して説明するが、本実施形態は図1乃至図3によって限定されることはない。
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成の一例を示す模式断面図であり、図1中、1は基体、2は感光層、2Aは電荷発生層、2B−1および2B−2は電荷輸送層、4は下引層を表す。
図1に示す感光体は、基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2B−1、電荷輸送層2B−2がこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2A、電荷輸送層2B−1および2B−2の3層から構成される(第1の態様)。
尚、図1に示す感光体においては電荷輸送層2B−2が最外表面層であり、該電荷輸送層2B−2が前記(1)または(2)の成分を少なくとも含有する。
【0055】
図2は、本実施形態に係る感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図2中に示した符号は、図1中に示したものと同様である。
図2に示す感光体は、基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2Bがこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層から構成される(第2の態様)。
尚、図2に示す感光体においては電荷輸送層2Bが最外表面層であり、該電荷輸送層2Bが前記(1)または(2)の成分を少なくとも含有する。
【0056】
図3は、本実施形態に係る感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図3中、6は機能一体型の感光層を表し、他は、図1中に示したものと同様である。
図3に示す感光体は、基体1上に、下引層4、感光層6がこの順に積層された層構成を有し、感光層6は、図1に示す電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの機能が一体となった層である(第3の態様)。
尚、図3に示す感光体においては機能一体型の感光層6が最外表面層であり、該感光層6が前記(1)または(2)の成分を少なくとも含有する。
【0057】
以下、本実施形態に係る感光体の例として、上記第1乃至第3の態様のそれぞれについて説明する。
【0058】
(第1の態様:最外表面層=電荷輸送層)
第1の態様に係る感光体は、図1に示す通り、基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2B−1、電荷輸送層2B−2がこの順に積層された層構成を有し、電荷輸送層2B−2が最外表面層である。
【0059】
・電荷輸送層2B−2
まず、最外表面層である電荷輸送層2B−2について説明する。
即ち、第1の態様において最外表面層となる電荷輸送層2B−2は、既述の通り、
(1)下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートと電荷輸送材料とを共重合させた共重合体
(2)下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートの重合体と電荷輸送材料とが相互進入網目構造を形成した構造体
から選択される少なくとも一種を含有する。
尚、本実施形態における最外表面層(第1の態様においては電荷輸送層2B−2)は、少なくとも電荷輸送材料と、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートと、を重合開始剤を用いて重合させ形成された層であり、またこれら以外の材料を含んでも構わない。
【0060】
また、最外表面層(第1の態様においては電荷輸送層2B−2)における電荷輸送材料としては、反応性基を有する電荷輸送材料および反応性基を有さない電荷輸送材料の何れを使用してもよい。反応性基を有する電荷輸送材料は、後述のイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートと共重合体を形成し、一方反応性基を有さない電荷輸送材料は、後述のイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが架橋重合した網目構造の重合体における該網目構造の隙間に上記電荷輸送材料が進入した相互進入網目構造を形成する。
【0061】
(イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート)
本実施形態に用いられるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(A)で表される構造を有する。
【0062】
【化6】



【0063】
[上記一般式(A)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、上記一般式(X)で表される基、−H、またはアルキル基を表す。但し、X乃至X中の少なくとも2つは上記一般式(X)で表される基を表す。上記一般式(X)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基、エーテル基、またはエステル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、−H、またはアルキル基を表す。]
【0064】
尚、上記一般式(X)におけるRは、更にアルキレン基であることが望ましい。尚、置換基としては、例えば、アルキル基等が挙げられる。
【0065】
また、上記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートは、更に下記一般式(B)で表される構造を有することがより望ましい。
【0066】
【化7】



【0067】
[上記一般式(B)中、R乃至Rはそれぞれ独立に−H、または−CHを表し、nは1以上3以下の整数を表す。]
【0068】
本実施形態において、上記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性アクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性メタクリレート、ビス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性アクリレート、ビス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性メタアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも特に、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレートが望ましい。
【0069】
第1の態様に係る電子写真感光体を製造する際の、最外表面層である電荷輸送層2B−2を形成するための塗布液において、上記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートは、塗布液中の固形分全量に対して5質量%以上75質量%以下含有させることが望ましく、更には10質量%以上65質量%以下がより望ましい。
【0070】
(反応性基を有する電荷輸送材料)
反応性基を有する電荷輸送材料における反応性基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、およびそれらの誘導体から選択される少なくとも1種であることが望ましい。また、より望ましい構造としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。以下、下記一般式(1)で示される化合物を中心に反応性基を有する電荷輸送材料について説明する。
【0071】
【化8】



【0072】
〔一般式(1)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、または置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上6以下である。〕
【0073】
一般式(1)において、反応性基を含む側鎖を示すDとしては、
−(CH−(O−(CH−O−CO−C(R’)=CH
の構造を有する基がより望ましい。尚、上記基において、R’は水素原子または−CHを、dは0以上5以下の整数を、fは1以上5以下の整数を、eは0または1を示す。
【0074】
一般式(1)において、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ar乃至Arは、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、D:反応性基を含む側鎖以外のものとして、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のアリール基等が挙げられる。
Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、Ar乃至Arの各々に連結され得る「−(D)C1」乃至「−(D)C4」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
【0075】
【化9】



【0076】
〔上記式(1)乃至(7)中、Rは、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、および炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換または未置換のアリーレン基を表し、Z’は2価の有機連結基を表し、Dは反応性基を含む側鎖を表し、cは0以上2以下の整数を表し、sは0または1を表し、tは0以上3以下の整数を表す。〕
【0077】
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)または(9)で表されるものが望ましい。
【0078】
【化10】



【0079】
〔上記式(8)および(9)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、t’はそれぞれ1以上3以下の整数を表す。〕
【0080】
また、前記式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。
【0081】
【化11】



【0082】
〔上記式(10)乃至(17)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、qおよびrはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、t”はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。〕
【0083】
前記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0084】
【化12】



【0085】
また、一般式(1)中、Arは、kが0の時は置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基がそのまま挙げられる。また、Arは、kが1の時は置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0086】
以下に、一般式(1)で示される化合物の具体例を示す。なお、一般式(1)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0087】
【化13】



【0088】
【化14】



【0089】
【化15】



【0090】
【化16】

【0091】
【化17】

【0092】
【化18】

【0093】
【化19】



【0094】
【化20】



【0095】
【化21】



【0096】
【化22】



【0097】
【化23】



【0098】
【化24】

【0099】
【化25】

【0100】
【化26】

【0101】
【化27】

【0102】
【化28】

【0103】
【化29】

【0104】
【化30】

【0105】
【化31】

【0106】
【化32】

【0107】
【化33】

【0108】
【化34】

【0109】
【化35】



【0110】
【化36】



【0111】
【化37】



【0112】
【化38】

【0113】
【化39】

【0114】
【化40】

【0115】
【化41】

【0116】
【化42】

【0117】
【化43】



【0118】
【化44】

【0119】
【化45】



【0120】
【化46】



【0121】
【化47】



【0122】
【化48】



【0123】
【化49】

【0124】
【化50】

【0125】
【化51】

【0126】
【化52】

【0127】
【化53】

【0128】
【化54】

【0129】
【化55】

【0130】
【化56】

【0131】
【化57】

【0132】
【化58】

【0133】
【化59】

【0134】
【化60】

【0135】
【化61】

【0136】
【化62】

【0137】
【化63】

【0138】
【化64】

【0139】
【化65】

【0140】
【化66】

【0141】
【化67】

【0142】
【化68】

【0143】
【化69】

【0144】
【化70】

【0145】
尚、上記電荷輸送材料においては、電荷輸送成分と反応性基との間には炭素原子を1つ以上介在させることが望ましく、連結基としてはアルキレン基であることがもっとも望ましい。
更に、反応基としては、特にメタクリル基を有する構造が望ましい。
【0146】
一般式(1)で表される化合物は、以下のようにして合成される。
即ち、一般式(1)で表される化合物は、前駆体であるアルコールを、対応する反応性基を有する化合物(例えばメタクリル酸やメタクリル酸ハロゲン化物)と縮合させるか、前駆体であるアルコールがベンジルアルコール構造の場合には、ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有するメタクリル酸誘導体等との脱水エーテル化などにより合成される。
【0147】
本実施形態で用いる化合物IV−4および化合物IV−17の合成経路を一例として以下に示す。
【0148】
【化71】



【0149】
【化72】



【0150】
第1の態様に係る電子写真感光体を製造する際の、最外表面層である電荷輸送層2B−2を形成するための塗布液において、上記反応性基を有する電荷輸送材料を用いる場合には、該電荷輸送材料を塗布液中の固形分全量に対して30質量%以上90質量%以下含有させることが望ましく、更には40質量%以上85質量%以下がより望ましく、50質量%以上80質量%以下が特に望ましい。
反応性基は、同一分子内に2つ以上もつものが望ましく、更に同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリル基を有する化合物を用いることがより望ましい。同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリル基を有する化合物は、前記塗布液中の固形分全量に対して、5質量%以上であることが望ましく、更には10質量%以上であることがより望ましく、15質量%以上であることが特に望ましい。
【0151】
(反応性基を有さない電荷輸送材料)
本実施形態においては、電荷輸送材料として反応性基を有さないものを用いてもよい。
反応性基を有さない電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物など公知の正孔輸送性化合物が挙げられる。
【0152】
より望ましくは、下記構造式(a−1)および(a−2)で示されるトリアリールアミン誘導体、または、ベンジジン誘導体が望ましい。
【0153】
【化73】



【0154】
〔式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。また、lは1または2を意味する。ArおよびArは置換または未置換のアリール基を表す。〕
【0155】
【化74】



【0156】
〔式中、R15、R15’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、または炭素数1以上5以下のアルコキシ基を表わす。R16、R16’、R17、R17’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、または置換または未置換のアリール基を表わす。mおよびnは0乃至2の整数である。〕
【0157】
更には、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの反応性基を有さない高分子電荷輸送材料を使用してもよい。公知の非架橋型高分子電荷輸送材料の中でも、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料は、特に望ましいものである。高分子電荷輸送材料はそれだけでも成膜し得るが、後述する結着樹脂と混合して成膜してもよい。これらの電荷輸送材料は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0158】
第1の態様に係る電子写真感光体を製造する際の、最外表面層である電荷輸送層2B−2を形成するための塗布液において、上記反応性基を有さない電荷輸送材料を用いる場合には、該電荷輸送材料を塗布液中の固形分全量に対して15質量%以上75質量%以下含有させることが望ましく、更には25質量%以上60質量%以下がより望ましい。
【0159】
(SP値)
本実施形態における最外表面層(第1の態様においては電荷輸送層2B−2)においては、前記電荷輸送材料のSP値と前記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートのSP値との差が1.5〔(cal/cm1/2〕以下であることが望ましく、1〔(cal/cm1/2〕以下であることが特に望ましい。
電荷輸送材料のSP値とイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートのSP値との差を1.5〔(cal/cm1/2〕以下とすることで、両者の相溶性が更に改善され、長期に渡って画質に優れた画像が得られる。
【0160】
尚、電荷輸送材料のSP値とイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートのSP値との差は、それぞれの材料を選択することによって上記範囲に制御される。
【0161】
ここで、電荷輸送材料および多官能(メタ)アクリレートにおけるSP値は、化学構造の原子または原子団の蒸発エネルギー(Δei)とモル体積(Δvi)より求めるFedorsの下記計算式により算出される値である。
式:[SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0162】
(その他の材料)
最外表面層となる電荷輸送層2B−2を構成する材料として、上記のほかに、電荷輸送性を有さない反応性材料や、結着樹脂などを用いてもよい。
・電荷輸送性を有さない反応性材料
本実施形態において、電荷輸送性を有さない反応性材料とは、例えば、電荷輸送性骨格を持たない(メタ)アクリレートモノマー、オリゴマー、ポリマー等の材料示す。
【0163】
具体的には、1官能のモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチル−O−フェニルフェノールアクリレート、O−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、などが挙げられる。
【0164】
2官能のモノマー、オリゴマーおよびポリマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能モノマー、オリゴマーおよびポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、4官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、5官能以上のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が使用され、これらの2官能以上の、モノマー、オリゴマーおよびポリマーは、単独または2種以上の混合物として使用される。これらモノマー、オリゴマーは、電荷輸送性を持つ化合物の全量に対し100質量%以下、望ましくは50質量%以下、より望ましくは30質量%以下で用いられる。
【0165】
・重合開始剤
本実施形態における最外表面層である電荷輸送層2B−2は、光、電子線、または熱のエネルギーによって重合させることにより形成される。この際、重合開始剤は必ずしも必要としないが、重合開始剤を添加することが特に望ましい。
【0166】
尚、本実施形態においては、熱重合によって最外表面層である電荷輸送層2B−2を形成することがより望ましい。熱重合の際に用いる熱重合開始剤としては、分子量が250以上のものが望ましく、分子量300以上のものがより望ましく用いられ、更には350以上のものが特に望ましく用いられる。また、上記分子量の上限値は、特に限定されるものではないが、一般的には750以下が望ましい。
熱重合開始剤の分子量が250以上であることにより、重合反応が効率よく進むと想定され機械的強度が改善される。
【0167】
また、熱重合を行う際の条件として酸素濃度および温度を調整することが望ましく、該酸素濃度としては1000ppm以下が望ましく、200ppm以下が特に望ましい。また、温度は140℃以上が望ましく、更には150℃以上が特に望ましい。また、上記温度の上限値は、特に限定されるものではないが、一般的には200℃以下が望ましい。
【0168】
熱重合開始剤としては、V−30、V−40、V−59、V−601、V−65、V−70、VF−096、Vam−110、Vam−111(和光純薬製)、OTazo−15、OTazo−30、AIBN、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤。パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーへヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(化薬アクゾ社製)、ルルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531などが挙げられる。
【0169】
光硬化開始剤としては、分子内開列型、水素引抜型などが挙げられる。分子内開列型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系が挙げられる。具体的には、ベンジルケタール系としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。ホスフィンオキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(0−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)などが挙げられる。
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン系としては、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル4’−メチルジフェニルスルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
【0170】
これら重合開始剤は、最外表面層である電荷輸送層2B−2を形成するための塗布液を作製する際、固形分全量に対して0.2質量%以上10質量%以下、望ましくは0.5質量%以上8質量%以下、より望ましくは0.7質量%以上5質量%以下で添加される。
重合反応は、発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、真空、あるいは、不活性ガス雰囲気下など酸素濃度10%以下、望ましくは5%以下、より望ましくは1%以下の低酸素濃度で行うことが望ましい。
【0171】
・結着樹脂
また、電荷輸送層2B−2中に用い得る結着樹脂としては、具体的にはポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。また、上述のように、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料等の高分子電荷輸送材料が用いられる。これらのうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が望ましい。さらに電荷輸送層2B−2が、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と4つ以上のメタクリル基を有する化合物を含有する層である場合、電荷輸送層2B−2に用いる結着樹脂の粘度平均分子量は50000以上であることが望ましく、55000以上であることがより望ましい。
これらの結着樹脂は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1乃至1:5が望ましい。
【0172】
・その他の材料
本実施形態における電荷輸送層2B−2においては、さらに電荷輸送性骨格とアクリル基やメタクリル基等の反応性基を有する化合物と反応し得るポリマー、あるいは、反応しないポリマーを混合してもよい。
【0173】
反応し得るポリマーとしては、例えば、特開平5−216249号公報、特開平5−323630号公報、特開平11−52603号公報、特開2000−264961号公報などに開示されたものが挙げられる。また、反応しないポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂など公知のものが挙げられる。これらポリマーは、電荷輸送性を持つ化合物の全量に対し100質量%以下、望ましくは質量50%以下、より望ましくは質量30%以下で用いられる。
【0174】
本実施形態の電荷輸送層には、さらに、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いてもよい。この化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
【0175】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が用いられる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が用いられる。また、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の含フッ素化合物を加えてもよい。シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。さらに、特開2001−166510号公報などに開示されている重合性のフッ素化合物などを混合してもよい。また、アルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
【0176】
また、上記成分を反応させて塗布液を得る際には、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温(20℃)以上100℃以下、望ましくは30℃以上80℃以下で、10分以上100時間以下、望ましくは1時間以上50時間以下加温してもよい。また、この際に超音波を照射することも望ましい。
【0177】
電荷輸送層2B−2には、劣化防止剤を添加することが望ましい。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。劣化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0178】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」(以上、チバ・ジャパン製)、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」(以上、三共ライフテック製)、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」(以上、チバ・ジャパン製)、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」(以上、アデカ社製)が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」(以上、住友化学社製)が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」(以上、アデカ社製)等が挙げられる。
【0179】
更に、電荷輸送層2B−2には、導電性粒子や、有機粒子、無機粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものが使用される。コロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0180】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子の含有量は、全固形分全量を基準として、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0181】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演要旨集p89”に示される、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。また、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の重合性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0182】
また、金属、金属酸化物およびカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀およびステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
【0183】
電荷輸送層2B−2を形成するための塗布液を塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、インクジェット法等の方法が用いられる。
電荷輸送層2B−2の膜厚は、望ましくは2μm以上60μm以下、より望ましくは5μm以上50μm以下ある。
【0184】
(電荷輸送層2B−1)
第1の態様における電荷輸送層2B−1としては、前述の電荷輸送層2B−2に用いた材料を用いて形成される層がそのまま適用される。但し、第1の態様において最外表面層ではない電荷輸送層2B−1においては、必ずしも
(1)下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートと電荷輸送材料とを共重合させた共重合体
(2)下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートの重合体と電荷輸送材料とが相互進入網目構造を形成した構造体
から選択される少なくとも一種を含有しなくともよい。
【0185】
・基体
基体1としては、導電性を有する基体が用いられ、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属または合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、および金属ベルト、または、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属または合金を塗布、蒸着またはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0186】
第1の態様に係る感光体がレーザープリンターに使用される場合であれば、基体1の表面は中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。但し、非干渉光を光源に用いる場合には粗面化は特に行わなくてもよい。
【0187】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、または回転する砥石に支持体を接触させ、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0188】
また、他の粗面化の方法としては、基体1表面を粗面化することなく、導電性または半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
【0189】
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であるため、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。
【0190】
また、基体1には、酸性水溶液による処理またはベーマイト処理を施してもよい。
リン酸、クロム酸およびフッ酸を含む酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。
【0191】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、または90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行われる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の他種に比べ被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0192】
・下引層
下引層4は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有した層として構成される。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。
【0193】
中でも上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子(導電性金属酸化物)を用いるのが望ましく、特に酸化亜鉛は望ましく用いられる。
【0194】
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、または、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。無機粒子の体積平均粒径は50nm以上2000nm以下(望ましくは60以上1000以下)の範囲であることが望ましい。
【0195】
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m/g以上のものが望ましく用いられる。
【0196】
さらに無機粒子に加えて、アクセプター性化合物を含有させてもよい。アクセプター性化合物としてはいかなるものでも使用し得るが、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0197】
これらのアクセプター性化合物の含有量は任意に設定してもよいが、望ましくは無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下含有される。さらに0.05質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0198】
アクセプター化合物は、下引層4の塗布時に添加するだけでもよいし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、または、湿式法が挙げられる。
【0199】
乾式法にて表面処理を施す場合には無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接または有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって処理される。添加または噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。添加または噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間については任意の範囲で実施される。
【0200】
湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌し、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌または分散したのち、溶剤除去することで処理される。溶剤除去方法はろ過または蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間については任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分を除去してもよく、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0201】
また、無機粒子はアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤も望ましく用いられる。
【0202】
アミノ基を有するシランカップリング剤としてはいかなる物を用いてもよいが、具体的例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0203】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0204】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用し得るが、乾式法または湿式法を用いることがよい。また、アクセプター付与とカップリング剤等による表面処理とを並行して行ってもよい。
【0205】
下引層4中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は、任意に設定されるが、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0206】
下引層4に含有される結着樹脂としては、公知のいかなるものでも使用し得るが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0207】
尚、下引層形成用塗布液中のアクセプター性を付与した金属酸化物とバインダー樹脂、または無機粒子とバインダー樹脂との比率は、任意に設定される。
【0208】
下引層4中には種々の添加剤を用いてもよい。添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いてもよい。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0209】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0210】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0211】
これらの化合物は単独で若しくは複数の化合物の混合物または重縮合物として用いてもよい。
【0212】
下引層形成用塗布液を調製するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から選択される。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
【0213】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独または2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0214】
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。さらにこの下引層4を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0215】
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、基体1上に下引層4が成膜される。
また、下引層4は、ビッカース強度が35以上とされていることが望ましい。
さらに、下引層4はいかなる厚さに設定してもよいが、厚さが15μm以上が望ましく、さらに望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
【0216】
また、下引層4の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が用いられる。
【0217】
また、表面粗さ調整のために下引層を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が用いられる。
【0218】
塗布したものを乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜し得る温度で行われる。
【0219】
・電荷発生層
電荷発生層2Aは、少なくとも電荷発生材料および結着樹脂を含有する層であることが望ましい。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属および/または無金属フタロシアニン顔料が望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより望ましい。電荷発生材料としては、380nm以上500nmの露光波長の光源を用いる場合には無機顔料が望ましく、700nm以下800nmの露光波長の光源を用いる場合には、金属および無金属フタロシアニン顔料が望ましい。
【0220】
電荷発生材料としては、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いることが望ましい。このヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、従来のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とは異なるものであり、分光吸収スペクトルの最大ピーク波長を従来のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料よりも短波長側にシフトさせたものである。
【0221】
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが望ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが望ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより望ましく、一方、BET比表面積が45m/g以上であることが望ましく、50m/g以上であることがより望ましく、55m/g以上120m/g以下であることが特に望ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
【0222】
また、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが望ましく、1.0μm以下であることがより望ましく、更に望ましくは0.3μm以下である。
【0223】
更に、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積値が45m/g以上であることが望ましい。
【0224】
また、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に回折ピークを有するものであることが望ましい。
【0225】
また、上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、25℃から400℃まで昇温したときの熱重量減少率が2.0%以上4.0%以下であることが望ましく、2.5%以上3.8%以下であることがより望ましい。
【0226】
電荷発生層2Aに使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
【0227】
電荷発生層2Aは、例えば、上記電荷発生材料および結着樹脂を溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0228】
また、電荷発生材料および結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法が用いられる。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0229】
また、電荷発生層2Aを形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0230】
このようにして得られる電荷発生層2Aの膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0231】
(第2の態様:最外表面層=電荷輸送層2B)
本実施形態における一例である第2の態様に係る感光体は、図2に示す通り、基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2Bがこの順に積層された層構成を有し、電荷輸送層2Bが最外表面層である。
【0232】
第2の態様における基体1、下引層4、電荷発生層2Aとしては、前述の図1に示す第1の態様における基体1、下引層4、電荷発生層2Aがそのまま適用される。
【0233】
また、第2の態様における電荷輸送層2Bとしては、第2の態様における電荷輸送層2B−2がそのまま適用される。
即ち、第2の態様において最外表面層となる電荷輸送層2Bは、
(1)下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートと電荷輸送材料とを共重合させた共重合体
(2)下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートの重合体と電荷輸送材料とが相互進入網目構造を形成した構造体
から選択される少なくとも一種を含有する。
【0234】
(第3の態様:最外表面層=機能一体型の感光層6)
本実施形態における一例である第3の態様に係る感光体は、図3に示す通り、基体1上に、下引層4、機能一体型の感光層6がこの順に積層された層構成を有し、機能一体型の感光層6が最外表面層である。
【0235】
第3の態様における基体1、下引層4としては、前述の図1に示す第1の態様における基体1、下引層4がそのまま適用される。
【0236】
・機能一体型の感光層6
第3の態様に係る感光体において、機能一体型の感光層6は最外表面層である。第3の態様において最外表面層となる感光層6は、少なくとも電荷輸送材料の存在下で、前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体、および電荷発生材料を少なくとも含有する層である。電荷発生材料の含有量は、20質量%以上50質量%以下が好ましく、一方前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。
【0237】
<電子写真感光体の製造方法>
本実施形態に係る電子写真感光体の製造方法は、基体を準備する基体準備工程と、該基体上に、電荷輸送材料、前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート、および熱重合開始剤を含有する塗布液を塗布し、少なくとも前記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを熱重合させて最外表面を構成する層を形成する最外表面層形成工程と、を有する。
【0238】
尚、本実施形態においては、熱重合によって最外表面層を形成することがより望ましい。熱重合の際に用いる熱重合開始剤としては、既述の通り、分子量が250以上のものがより望ましく用いられる。
また、熱重合を行う際の条件として酸素濃度および温度を調整することが望ましく、該酸素濃度としては1000ppm以下が望ましく、温度は140℃以上が望ましい。
【0239】
<プロセスカートリッジおよび画像形成装置>
次に、本実施形態の電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、潜像保持体の表面の静電潜像を現像して得られたトナー像を記録媒体に転写して、該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在であり、前記潜像保持体としての前述の本実施形態に係る電子写真感光体を少なくとも備えた構成であることが望ましい。
【0240】
また、本実施形態の画像形成装置は、前述の本実施形態に係る電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電装置と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、を備えた構成であることが望ましい。なお、本実施形態の画像形成装置は、各色のトナーに対応した感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよく、この場合、全ての感光体が本実施形態の電子写真感光体であることが望ましい。また、トナー像の転写は、中間転写体を利用した中間転写方式であってもよい。
【0241】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。画像形成装置100は、図4に示すように。電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0242】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8、現像装置11およびクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
【0243】
また、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは使用しても、使用しなくてもよい。
【0244】
帯電装置8としては、例えば、導電性または半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0245】
なお、図示しないが、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
【0246】
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0247】
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤または二成分系現像剤等を接触または非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが望ましい。
【0248】
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
本実施形態の画像形成装置に用いられるトナーは、平均形状係数((ML/A)×(π/4)×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。
【0249】
トナーは、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤および離型剤、やその他更に帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0250】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0251】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有することが望ましく、更にシリカや帯電制御剤を含有してもよい。
【0252】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0253】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0254】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0255】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0256】
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナーおよび磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0257】
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子および上記外添剤をヘンシェルミキサーまたはVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0258】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、およびそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用して使用される。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0259】
現像装置11に用いるトナーには、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0260】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0261】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0262】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
【0263】
粒子径としては、個数平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0264】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更にそれより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものが使用されるが、シリカと酸化チタンを併用することが望ましい。
【0265】
また、小径無機粒子については表面処理してもよい。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも望ましい。
【0266】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉またはそれ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、必要に応じて設定される。
【0267】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0268】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものが用いられる。
【0269】
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0270】
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略断面図である。画像形成装置120は、図5に示すように、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0271】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置は、電子写真感光体の移動方向(回転方向)に対して逆方向に移動(回転)する現像剤保持体である現像ローラを有してもよい。ここで、現像ローラは表面に現像剤を保持する円筒状の現像スリーブを有しており、また、現像装置はこの現像スリーブに供給する現像剤の量を規制する規制部材を有する構成のものが挙げられる。現像装置の現像ローラを電子写真感光体の回転方向に対して逆方向に移動(回転)させることで、現像ローラと電子写真感光体との間に留まるトナーで電子写真感光体表面が摺擦される。
【0272】
また、本実施形態の画像形成装置においては、現像スリーブと感光体との間隔を200μm以上600μm以下とすることが望ましく、300μm以上500μm以下とすることがより望ましい。また、現像スリーブと上述の現像剤量を規制する規制部材である規制ブレードとの間隔を300μm以上1000μm以下とすることが望ましく、400μm以上750μm以下とすることがより望ましい。
【0273】
更に、現像ロール表面の移動速度の絶対値を、感光体表面の移動速度の絶対値(プロセススピード)の1.5倍以上2.5倍以下とすることが望ましく、1.7倍以上2.0倍以下とすることがより望ましい。
【0274】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、磁性体を有する現像剤保持体を備え、磁性キャリアおよびトナーを含む2成分系現像剤で静電潜像を現像するものであることが望ましい。
【実施例】
【0275】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0276】
(合成例1:化合物IV−18の合成)
500mlフラスコに、下記化合物(1)を50g、メタクリル酸107g、トルエン300ml、p−トルエンスルホン酸2gを加え、10時間加熱還流した。反応後、冷却し、水2000mlにあけ、洗浄を行い、さらに水で洗浄を行った。トルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトにより精製して、前述の具体例IV−18に係る化合物(電荷輸送材料)を38g得た。得られた(IV−18)のIRスペクトルを図7に示す。
【0277】
【化75】

【0278】
<実施例1>
(下引層4の形成)
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
【0279】
前記シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥することでアリザリン付与酸化亜鉛を得た。
【0280】
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート、スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15部と、をメチルエチルケトン85部に溶解した溶液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間分散した。
【0281】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)40部を添加し、下引層塗布液を得た。この下引層塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
【0282】
(電荷発生層2Aの形成)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、n−酢酸ブチル200部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175部、メチルエチルケトン180部を添加し、攪拌して電荷発生層用塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温(23℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0283】
(電荷輸送層2B−1の形成)
・電荷輸送材料(CTM−1:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−
メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン)3.5部
・電荷輸送材料(CTM−2:N,N’−ビス(3,4
−ジメチルフェニル)−ビフェニル−4−アミン) 1.5部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万) 5.0部
をクロルベンゼン40部に加えて溶解し、塗布液を調液した。この塗布液を電荷発生層2A上に浸漬塗布法により塗布し、130℃で45分間乾燥させた。この非架橋型の電荷輸送層2B−1の膜厚は20μmであった。
【0284】
(電荷輸送層2B−2(最外表面層)の形成)
・電荷輸送材料(CTM−1:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−
メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン) 40部
・イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート(Acr−1:
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート)60部
・熱重合開始剤(OT−azo15、大塚化学社製) 0.8部
・テトラヒドロフラン(THF) 50部
・トルエン 50部
・3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT、防止剤1) 1部
・ポリフローKL−600(共栄社化学社製) 0.5部
上記材料を混合して塗布液を調製した。この塗布液を非架橋型の電荷輸送層2B−1の上にインクジェット塗布法により塗布し、室温(23℃)で5分間風乾した。次いで、窒素雰囲気下にて160℃で60分加熱して重合させることで、電荷輸送層2B−2を形成し感光体を得た。得られた電荷輸送層2B−1および2B−2のトータルの膜厚は25μmであった。
尚、上記電荷輸送材料CTM−1のSP値は11.2〔(cal/cm1/2〕、上記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートのSP値は12.2〔(cal/cm1/2〕であり、その差は0.99〔(cal/cm1/2〕であった。また、熱重合開始剤(OT−azo15)の分子量は354であった。
【0285】
<実施例2乃至4>
前記実施例1の最外表面層である電荷輸送層2B−2の形成において用いた「電荷輸送材料」、「イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート」、「重合開始剤」、「その他添加剤」およびそれらの含有量を下記表1に示すごとく変更した以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0286】
<実施例5>
実施例1と同様にしてアルミニウム基材上に下引層4、および電荷発生層2Aを形成した。
【0287】
(電荷輸送層2B(最外表面層)の形成)
・電荷輸送材料(前述のIV−9に係る化合物) 70部
・イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート(Acr−3:
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート 20部
・重合開始剤(OT−azo15、大塚化学社製) 1.5部
・PL−1(扶桑化学社製) 3部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(樹脂1) 20部
・テトラヒドロフラン(THF) 70部
・トルエン 30部
・3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT、防止剤1) 1部
上記材料を混合して塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層2Aの上にインクジェット塗布法により塗布し、室温(23℃)で10分風乾した。次いで、窒素雰囲気下にて160℃で60分加熱して重合させることで、電荷輸送層2Bを形成し感光体を得た。得られた感光体における電荷輸送層2Bの膜厚は40μmであった。
尚、上記電荷輸送材料IV−9のSP値は11.0〔(cal/cm1/2〕、上記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートのSP値は11.8〔(cal/cm1/2〕であり、その差は0.77〔(cal/cm1/2〕であった。また、熱重合開始剤(OT−azo15)の分子量は354であった。
【0288】
<実施例6>
前記実施例5の最外表面層である電荷輸送層2Bの形成において用いた「電荷輸送材料」、「イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート」、「重合開始剤」、「その他添加剤」およびそれらの含有量を下記表1に示すごとく変更した以外は、実施例5と同様にして感光体を作製した。
【0289】
<比較例1>
前記実施例1の最外表面層である電荷輸送層2B−2の形成において用いた「電荷輸送材料」、「重合開始剤」、「その他添加剤」およびそれらの含有量を下記表1に示すごとく変更し、且つ「イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート」を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0290】
<比較例2乃至3>
前記実施例5の最外表面層である電荷輸送層2Bの形成において用いた「電荷輸送材料」、「重合開始剤」、「その他添加剤」およびそれらの含有量を下記表1に示すごとく変更し、且つ「イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート」を用いなかった以外は、実施例5と同様にして感光体を作製した。
【0291】
〔感光体評価方法〕
−感光体を用いた印字評価−
上記実施例および比較例いて作製した電子写真感光体を、DocuCentre Color 400CP(富士ゼロックス社製)に装着して実施した。
【0292】
まず、低温低湿(20℃、30%RH)において図6(A)に示す画像評価パターンを出力し〔評価画像1〕とした。引き続き、連続して15000枚の黒ベタパターンを出力した後、画像評価パターンを出力し〔評価画像2〕とした。低温低湿(20℃、30%RH)環境下のまま24時間放置した後、画像評価パターンを出力し〔評価画像3〕とした。次いで、高湿(28℃、70%RH)環境下にて15000枚の黒ベタパターンを出力した後、画像評価パターンを出力し〔評価画像4〕とした。高湿(28℃、70%RH)環境下のまま24時間放置した後、画像評価パターンを出力し〔評価画像5〕とした。再度、低温低湿(20℃、30%RH)環境下に戻し、更に50000枚の黒ベタパターンを出力し、画像評価パターンを出力し〔評価画像6〕とした。
【0293】
<長期画像安定性>
長期画像安定性評価は、〔評価画像6〕を〔評価画像2〕と比較し画質の劣化度合いを目視にて評価した。
A+:非常に良好
A :良好(目視では変化は確認できないが、拡大画像では変化を確認)
B :画質劣化は確認し得るが、許容レベル
C :画質劣化が生じており、問題となるレベル
【0294】
<デレッション評価>
デレッション評価は、〔評価画像3〕および〔評価画像5〕をそれぞれ〔評価画像2〕および〔評価画像4〕と比較し画質上の劣化度合いを目視にて評価した。
A+:図6(A)のごとく良好な状態
A :図6(A)のごとく良好であるが、僅かに発生している状態
B :図6(B)のごとく若干目立つ程度の状態
C :図6(C)のごとくはっきり確認し得る状態
【0295】
<電気特性>
電気特性評価は低温低湿(10℃、15%RH)環境下、グリッド印加電圧700Vのスコロトロン帯電器で感光体をマイナス帯電させ、次いで帯電させた感光体に780nmの半導体レーザーを用いて、10mJ/mの光量にてフラッシュ露光をした。露光後、10秒後の感光体表面の電位(V)を測定し、この値を残留電位の値とした。
A+:−100V以上
A :−200V以上−100V未満
B :−300V以上−200V未満
C :−300V未満
【0296】
<機械的強度>
ランニング後の感光体表面のキズ発生度合いを目視にて判断した。
A:目視でキズが確認されない。
B:部分的にキズが発生。
C:全面にキズ発生。
【0297】
このようにして得られた結果を表2にまとめた。
【0298】
【表1】

【0299】
・CTM−1:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン
・CTM−2:N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−ビフェニル−4−アミン
・Acr−1:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート
・Acr−2:εカプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート
・Acr−3:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート
・Acr−4:エチレングリコールジメタクリレート
・Acr−5:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・OT−azo15(大塚化学社製)分子量354
・V−70(和光純薬社製)分子量308
・VE−073(和光純薬社製)分子量310
・ルペロックス26(アルケマ吉富社製)分子量216
・PL−1(扶桑化学工業社製)
・S−1(チタン工業社製)
・樹脂1:ビスフェノールZポリカーボネート樹脂
・防止剤1:3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)
・防止剤2:サノールLS770
・ポリフローKL−600(共栄社化学社製)
【0300】
【表2】

【符号の説明】
【0301】
1…基体、2…感光層、2A…電荷発生層、2B,2B−1,2B−2…電荷輸送層、4…下引層、6…機能一体型の感光層、7…電子写真感光体、8…帯電装置、9…露光装置、11…現像装置、13…クリーニング装置、14…潤滑剤、40…転写装置、50…中間転写体、100,120…画像形成装置、131…クリーニングブレード、132,133…繊維状部材、300…プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基体と、該基体上に感光層と、を有し、
前記感光層のうち最外表面を構成する層が、少なくとも電荷輸送材料の存在下で、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを重合させた重合体を含有する電子写真感光体。
【化1】



[上記一般式(A)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、上記一般式(X)で表される基、−H、またはアルキル基を表す。但し、X乃至X中の少なくとも2つは上記一般式(X)で表される基を表す。上記一般式(X)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基、エーテル基、またはエステル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、−H、またはアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記電荷輸送材料のSP値と前記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートのSP値との差が1.5〔(cal/cm1/2〕以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが、下記一般式(B)で表される構造を有する請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体。
【化2】



[上記一般式(B)中、R乃至Rはそれぞれ独立に−H、または−CHを表し、nは1以上3以下の整数を表す。]
【請求項4】
前記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、およびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレートから選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記電荷輸送材料が反応性基を有する電荷輸送材料である請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記反応性基が、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、およびそれらの誘導体から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記反応性基を有する電荷輸送材料が下記一般式(1)で表される構造を有する請求項5または請求項6に記載の電子写真感光体。
【化3】



〔一般式(1)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、または置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上6以下である。〕
【請求項8】
前記電荷輸送材料が反応性基を有さない電荷輸送材料である請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記最外表面を構成する層が結着樹脂を含有する請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
基体を準備する基体準備工程と、
該基体上に、電荷輸送材料、下記一般式(A)で表されるイソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレート、および熱重合開始剤を含有する塗布液を塗布し、少なくとも前記電荷輸送材料の存在下で前記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを熱重合させて最外表面を構成する層を形成する最外表面層形成工程と、
を有する電子写真感光体の製造方法。
【化4】



[上記一般式(A)中、X乃至Xはそれぞれ独立に、上記一般式(X)で表される基、−H、またはアルキル基を表す。但し、X乃至X中の少なくとも2つは上記一般式(X)で表される基を表す。上記一般式(X)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基、エーテル基、またはエステル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、−H、またはアルキル基を表す。]
【請求項11】
前記熱重合開始剤の分子量が250以上である請求項10に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項12】
潜像保持体の表面の静電潜像を現像して得られたトナー像を記録媒体に転写して、該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在であり、
前記潜像保持体としての請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の電子写真感光体を少なくとも備えたプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−203495(P2011−203495A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70715(P2010−70715)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】