説明

電子写真感光体及びその製造方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ、並びに、中空金属酸化物粒子及びその製造方法

【課題】繰り返し使用時に意図しない微小黒点が画像に発生することが抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体102と、前記導電性支持体上に配置されており、金属酸化物で構成された中空粒子の表面にアクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子及び結着樹脂を含む下引層104と、前記下引層上に配置された感光層103と、を有する電子写真感光体101。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及びその製造方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ、並びに、中空金属酸化物粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーや白黒の画像を形成する複写機やプリンタなどの画像形成装置として、電子写真方式を用いた画像形成装置(電子写真装置)が知られている。
電子写真方式による画像形成装置に用いられる電子写真感光体(以下、「感光体」と称することがある。)としては、無機光導電材料を用いた無機感光体に比べ、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占める様になってきている。中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層とを積層させた機能分離型の有機感光体は、電子写真特性の点で優れており、種々の提案が成され、実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、導電性支持体上に少なくとも下引層、感光層を順次積層してなる電子写真感光体において、該下引層が少なくとも中空粒子、金属酸化物、および結着樹脂からなることを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
特許文献2には、絶縁性フィルム上に導電層が設けられ、該導電層上に高分子バインダー、絶縁性粒子および比重が0.8〜0.9の範囲にある導電性微粒子(例えば、表面が導電性物質で被覆された中空構造を有する無機微粒子または有機ポリマー微粒子)からなる誘電層が設けられた静電記録フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−292553号公報
【特許文献2】特開平10−319612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、繰り返し使用時に意図しない微小黒点が画像に発生することが抑制される電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、
導電性支持体と、
前記導電性支持体上に配置されており、金属酸化物で構成された中空粒子の表面にアクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子及び結着樹脂を含む下引層と、
前記下引層上に配置された感光層と、
を有する電子写真感光体。
請求項2の発明は、
前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる1種以上の金属酸化物である請求項1に記載の電子写真感光体。
請求項3の発明は、
前記アクセプター性化合物が、アントラキノン系化合物及びペリレン系化合物から選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項4の発明は、
前記アクセプター性化合物が、下記一般式(I)又は(II)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化1】


(式(I)中、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、又はカルボキシル基を示す。)
【化2】


(式(II)中、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又はカルボキシル基を示す。)
請求項5の発明は、
前記アクセプター性化合物が、下記一般式(2)又は(3)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化3】



(式(2)中、R、R10はそれぞれ独立して置換又は未置換のアルキレン基を示す。)
【化4】


(式(3)中、R11、R12はそれぞれ独立して置換又は未置換のアルキレン基を示し、R13、R14はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又はカルボキシル基を示す。)
請求項6の発明は、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、
画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
請求項7の発明は、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
請求項8の発明は、
金属酸化物で構成された中空粒子と、該中空粒子の表面に付着したアクセプター性化合物とを有する中空金属酸化物粒子。
請求項9の発明は、
樹脂粒子の表面に金属酸化物膜を形成する工程と、
前記金属酸化物膜が表面に形成された樹脂粒子を焼成することにより前記樹脂粒子を除去して中空金属酸化物粒子を作製する工程と、
前記中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させる工程と、
を有する中空金属酸化物粒子の製造方法。
請求項10の発明は、
樹脂粒子の表面に金属酸化物膜を形成する工程と、
前記金属酸化物膜が表面に形成された樹脂粒子を焼成することにより前記樹脂粒子を除去して中空金属酸化物粒子を作製する工程と、
前記中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させる工程と、
前記アクセプター性化合物が付着した空金属酸化物粒子及び結着樹脂を含む塗布液を導電性支持体上に塗布した後、塗膜を乾燥して硬化させることにより下引層を形成する工程と、
前記下引層上に感光層を設ける工程と、
を有する電子写真感光体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、下引層に、前記アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が含まれていない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項2の発明によれば、中空金属酸化物粒子を構成する金属酸化物が前記特定の金属酸化物でない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項3、4、5の発明によれば、アクセプター性化合物が前記アントラキノン系化合物又はペリレン系化合物でない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項6の発明によれば、電子写真感光体の下引層に、前記アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が含まれていない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
請求項7の発明によれば、電子写真感光体の下引層に、前記アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が含まれていない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制される画像形成装置が提供される。
請求項8の発明によれば、前記アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が電子写真感光体の下引層に含まれない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制される中空金属酸化物粒子が提供される。
請求項9の発明によれば、前記アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が電子写真感光体の下引層に含まれない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制される中空金属酸化物粒子の製造方法が提供される。
請求項10の発明によれば、下引層に前記アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が含まれない場合に比べ、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点の発生が抑制される電子写真感光体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す全体構成図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の構成の他の例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置されており、金属酸化物で構成された中空粒子の表面にアクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子及び結着樹脂を含む下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を有する。
【0010】
<電子写真感光体>
図1は本実施形態の電子写真感光体の構成の一例を示す概略図である。図1に示した電子写真感光体101は電荷発生層105と電荷輸送層106とが別個に設けられた機能分離型の感光層103を備えるもので、導電性支持体102上に下引層104、電荷発生層105、電荷輸送層106、保護層107がこの順序で積層された構造を有している。下引層104は、結着樹脂と、金属酸化物で構成された中空粒子(適宜、「中空金属酸化物粒子」と記す)の表面にアクセプター性化合物が付着した中空粒子(適宜、「アクセプター性中空金属酸化物粒子」と記す)とを含んで構成されている。
【0011】
電子写真感光体101がこのような構成の下引層104を有することで、繰り返し使用時に画像に意図しない微小黒点が発生することが抑制され、また、繰り返し使用時に画像濃度低下が発生することが抑制される。その理由としては以下のことが考えられる。
【0012】
下引層が金属酸化物粒子を含む場合、粒子の内部を電荷が移動する場合と、粒子の外側(表面)を電荷が移動する場合とでは電荷の移動度が大きく異なり、一部の電荷が下引層に残留することが画質異常を引き起こす一因と考えられる。そこで、本発明者は、粒子の内部よりも粒子の外側を電荷が優先的に移動するように下引層を構成すれば、電荷の残留が抑制される結果、画質異常が抑制されると考えた。
例えば、中空の樹脂粒子の表面を金属酸化物で被覆した粒子を下引層に含ませれば、金属酸化物粒子に似た機能を発揮するとともに、内部に空洞が無い中実の金属酸化物粒子よりも比重が小さく、下引層を形成する際、結着樹脂に比重が近くなるため沈降が起こり難く、分散性が向上し、金属酸化物同士の凝集による界面における電荷のトラップが抑制され、繰り返し使用時の電荷蓄積が抑制される。
【0013】
しかし、本発明者がさらに研究を重ねたところ、上記のように樹脂粒子を金属酸化物で被覆した粒子では内部の樹脂粒子が電荷移動の妨げとなると考えられる。そこで、本発明者は、粒子内部に樹脂を実質的に含まない中空構造を有する金属酸化物粒子(中空金属酸化物粒子)とし、さらにこの中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させた粒子(アクセプター性中空金属酸化物粒子)を用いて下引層を形成することで画像欠陥(黒点など)の発生がより効果的に抑制されることを見出した。上記のようなアクセプター性中空金属酸化物粒子であれば、分散性が高く、樹脂による電荷移動の妨げが抑制されるほか、表面のアクセプター性化合物によって上層(例えば電荷発生層)からの電荷の移動が円滑になり、電荷の蓄積が抑制されるため、繰り返して画像形成を行う際、電荷の蓄積に起因する黒点の発生が抑制されると考えられる。
【0014】
以下、図1に示す構成を有する電子写真感光体101の各要素について主に説明するが、本実施形態に係る電子写真感光体の構成は、これに限定されない。例えば、電荷発生層と電荷輸送層の機能を有する一体型の感光層が設けられていてもよい。また、必要に応じて下引層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、最表面層となる保護層は必ずしも設ける必要はない。
【0015】
(導電性支持体)
導電性支持体102としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、およびアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、あるいは導電性付与剤を塗布、または含浸させた紙、およびプラスチックフィルム等が挙げられる。導電性支持体102の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
導電性支持体102として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、湿式ホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0016】
(下引層)
下引層104は、導電性支持体102表面における光反射の防止、導電性支持体102から感光層103への不要なキャリアの流入の防止などの目的で設けられる。本実施形態の電子写真感光体101における下引層104は、アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が結着樹脂に分散した状態で構成されており、該アクセプター性中空金属酸化物粒子と結着樹脂を含む塗布液を導電性支持体102上に塗布して形成される。
【0017】
−結着樹脂−
下引層104に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
【0018】
−アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子−
次に、アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子について説明する。本実施形態で用いるアクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子は、金属酸化物で構成された中空粒子と、該中空粒子の表面に付着したアクセプター性化合物とを有して構成される。
【0019】
〜中空金属酸化物粒子〜
中空金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、10Ω・cm以上1011Ω・cm以下程度の粉体抵抗が必要である。中でも上記抵抗値を有する酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化ジルコニウムが望ましい。金属酸化物の抵抗値が上記範囲の下限以上であれば十分なリーク耐性が得られ、上限以下であれば残留電位の上昇を引き起こすことが抑制される。尚、金属酸化物は異なる2種以上混合して用いてもよい。
【0020】
中空金属酸化物粒子の粒子径は、下引層形成用塗布液への分散性、下引層内の導電路の形成などの観点から、0.02μm以上1.0μm以下のものが望ましく用いられ、特に0.05μm以上0.3μm以下のものが下引層形成用塗布液への分散性が高く、下引層内の導電路の形成に優れる為望ましく用いられる。
なお、本実施形態において、樹脂粒子、中空金属酸化物粒子等の粒子径は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などの顕微鏡観察によって測定される値である。
【0021】
〜アクセプター性化合物〜
中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させることで、上層の電荷を引き寄せる効果が増し、繰り返し使用時の残留電荷の蓄積を防止する性能が向上する。
アクセプター性化合物は、中空金属酸化物粒子と反応する基を有し、本実施形態の効果が得られるものならばいかなるものを使用してもよいが、特に水酸基を有する化合物が望ましく用いられる。さらに望ましくは、水酸基を有するアントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が用いられる。水酸基を有するアントラキノン構造を有する化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられ、いずれも望ましく用いられる。さらに具体的にはアリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等、及びこれらからの誘導体が特に望ましく用いられる。
アントラキノン系化合物としては以下の一般式(I)で表される構造を有するものが望ましい。
【0022】
【化5】

【0023】
式(I)中、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、又はカルボキシル基を示す。
【0024】
また、アクセプター性化合物としては、ペリレン系化合物も望ましく用いられる。残留電位蓄積防止の観点から、以下の一般式(II)で表される構造を有するペリレン系化合物が望ましく、特に(2)又は(3)で表される構造を有するペリレン系化合物が望ましい。
【0025】
【化6】


式(II)中、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又はカルボキシル基を示す。
【0026】
【化7】



式(2)中、R、R10はそれぞれ独立して置換又は未置換アルキレン基を示す。
【0027】
【化8】



式(3)中、R11、R12はそれぞれ独立してアルキレン基を示し、R13、R14はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは未置換アルキル基、置換もしくは未置換アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又はカルボキシル基を示す。
【0028】
アクセプター性中空金属酸化物粒子を製造する方法は特に限定されないが、例えば、樹脂粒子の表面に金属酸化物膜を形成する工程と、前記金属酸化物膜が表面に形成された樹脂粒子を焼成することにより前記樹脂粒子を除去して中空金属酸化物粒子を作製する工程と、前記中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させる工程と、を含む方法が挙げられる。
【0029】
(1)金属酸化物膜形成工程
まず、樹脂粒子の表面に金属酸化物膜を形成する。
樹脂粒子としては、特に架橋型樹脂粒子が望ましく用いられる。架橋型樹脂粒子としては架橋型ポリスチレン粒子、架橋型スチレン−アクリル粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル粒子などが金属酸化物の被覆(固定化)に優れ、望ましく用いられる。これらの樹脂粒子は公知の方法で作製される。例えば、後述する実施例の方法が挙げられる。
【0030】
樹脂粒子の粒子径は0.02μm以上1μm以下のものが望ましく、特に0.05μm以上0.3μm以下のものが望ましい。上記範囲の粒子径を有する樹脂粒子であれば、この樹脂粒子を用いて後に形成されるアクセプター性中空金属酸化物粒子の下引層形成用塗布液への分散性が高く、下引層内の導電路の形成に優れる。
【0031】
樹脂粒子の表面への金属酸化物膜の形成は特に限定されず、気相法、液相法など公知の技術が適用されるが、特に液相析出法が好ましく用いられる。液相析出法は具体的には、金属アルコキサイドと水を反応させて得る方法、金属有機酸塩溶液から金属錯体ゲルを作製し、金属錯体ゲルを加熱焼成することにより得る方法、亜鉛化合物と塩基性溶液から水酸化亜鉛を得て、水酸化亜鉛を加熱焼成することにより得る方法などである。
【0032】
(2)焼成工程
樹脂粒子の表面に金属酸化物膜を形成した後、焼成して樹脂粒子を除去することにより中空構造を有する金属酸化物粒子を得る。
焼成は、樹脂粒子、金属酸化物膜の各材質にもよるが、通常は、表面に金属酸化物膜を形成した樹脂粒子を300℃以上、金属酸化物の融点以下の高熱をかけることによって実施される。焼成により中空構造を有する金属酸化物粒子(中空金属酸化物粒子)が得られる。なお、焼成後、中空金属酸化物粒子には樹脂粒子の残留物が含まれる場合もあるが、電荷移動の妨げとならず、問題はない。
【0033】
(3)アクセプター性化合物付着工程
焼成により得られた中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させる。
中空金属酸化物粒子の表面に付着させるアクセプター性化合物の付与量は、本実施形態の効果が得られるように、中空金属酸化物粒子、アクセプター性化合物の各材質等に応じて、設定すればよい。粒子の分散性を損なわず、アクセプター性化合物によって電荷を引き寄せる効果を得る観点から、望ましくは中空金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上30質量%以下、さらに望ましくは0.05質量%以上20質量%以下の範囲で用いられる。0.01質量%以上であれば、下引層内の電荷蓄積の抑制に寄与するだけの十分なアクセプター性が付与され、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の低下を招くことが抑制される。また、30質量%以下であれば中空金属酸化物粒子同士の凝集が起き難いため、下引層形成時に下引層内で中空金属酸化物粒子が良好な導電路を形成し、繰り返し使用時における残留電位の上昇など維持性の低下を招くことが抑制され、黒点などの画質欠陥が起こり難い。
【0034】
なお、アクセプター性化合物は中空金属酸化物粒子の表面全体に付着していることが望ましいが、表面の一部に付着していてもよい。
アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子の粒子径は、下引層形成用塗布液への分散性、下引層内の導電路の形成の観点から、0.02μm以上1.0μm以下が望ましく、0.05μm以上0.5μm以下がより望ましい。
【0035】
本実施形態では、上記のようなアクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子及び結着樹脂を含む塗布液を前記導電性支持体上に塗布した後、塗膜を乾燥して硬化させることにより下引層を形成する。
アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子は、粒径が異なるもの、金属酸化物の材質が異なるもの、アクセプター性化合物の材質が異なるものなど、2種以上混合して用いてもよい。
さらに、アクセプター性中空金属酸化物粒子にカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体抵抗を制御して用いてもよい。
【0036】
アクセプター性中空金属酸化物粒子と結着樹脂との下引層中の比率は特に制限されず、所望する電子写真感光体の特性が得られる範囲で設定される。なお、導電路形成の観点から、アクセプター性中空金属酸化物粒子は、下引層中に10体積%以上80体積%以下の比率で含まれることが望ましく、20体積%以上70体積%以下の比率で含まれることがさらに望ましい。
【0037】
下引層104の形成の際には、少なくとも結着樹脂及びアクセプター性中空金属酸化物粒子を溶媒に加えた塗布液が使用される。かかる溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独又は2種以上混合して用いられる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶解する溶剤であれば、いかなるものを使用してもよい。
【0038】
また、下引層形成用塗布液中にアクセプター性中空金属酸化物粒子を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌機、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0039】
このようにして得られる下引層形成用塗布液を支持体102上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
下引層104の厚みは、耐リーク性能、残留電位蓄積防止の観点から、15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
また、下引層には、表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子等を用いる。
また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、例えば、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等を用いる。
【0040】
(中間層)
また、図示は省略するが、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引層上に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコンなどを含有する有機金属化合物などがある。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いる。中でも、ジルコニウム又はシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0041】
中間層の形成に使用される溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。これらの溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす溶剤であれば、いかなるものを使用してもよい。
中間層を形成する塗布方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いる。
中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、厚さが大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の厚さ範囲に設定される。
【0042】
(電荷発生層)
電荷発生層105は、電荷発生材料を適当な結着樹脂中に分散して形成される。
かかる電荷発生材料としては、例えば、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が望ましい。
その他、電荷発生材料としては、例えば、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が使用される。また、これらの電荷発生材料は、単独または2種以上を混合して使用する。
【0043】
電荷発生層105における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等を用いる。これ等の結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0044】
電荷発生層105の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた塗布液が使用される。かかる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶解する溶剤であれば、いかなるものを使用してもよい。
【0045】
電荷発生材料を樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌機、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
このようにして得られる塗布液を下引層104上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
電荷発生層105の厚さは、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0046】
(電荷輸送層)
電荷輸送層106としては、公知の技術によって形成されるものが使用される。電荷輸送層106は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送層106に含有される電荷輸送物質としては、公知のものならいかなるものを使用してもよいが、下記に示すものが例示される。2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質。クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質、あるいは以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等があげられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合せて使用される。
なかでも、移動度の観点から、以下の式(B−1)乃至(B−3)で示される構造のものが望ましい。
【0047】
【化9】



【0048】
構造式(B−1)中、RB1は水素原子またはメチル基を表し、n’は1または2を表す。また、ArB1及びArB2はそれぞれ独立して置換又は未置換のアリール基を表し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数が1乃至5のアルキル基、炭素数が1乃至5のアルコキシ基、又は炭素数が1乃至3のアルキル基で置換された置換アミノ基を表す。
【0049】
【化10】



【0050】
構造式(B−2)中RB2、RB2’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基を表わす。RB3、RB3’、RB4、RB4’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基、あるいは、−C(RB5)=C(RB6)(RB7)を表わし、RB5、RB6、RB7は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。またm’及びn”は0乃至2の整数である。
【0051】
【化11】

【0052】
構造式(B−3)中、RB8は水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、置換あるいは未置換のアリール基、または、−CH=CH−CH=C(ArB3を表す。ArB3は、置換又は未置換のアリール基を表す。RB9、RB10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至5のアルキル基、炭素数1乃至5のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基を表す。
【0053】
電荷輸送層106の結着樹脂は公知のものであればいかなるものを使用してよいが、電気絶縁性のフィルムが形成される樹脂が望ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリーN―カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリアクリルアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等の有機光導電性ポリマー等があげられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、単独又は2種類以上混合して用いられるが、特にポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送材との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れ望ましく用いられる。
【0054】
結着樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)はいずれの場合も任意に設定されるが、電気特性低下、膜強度低下に配慮する必要はある。
有機光導電性ポリマーを単独で用いてもよい。有機光導電性ポリマーとしては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用されるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0055】
また、電荷輸送層106が電子写真感光体101の最表面層である場合、潤滑性を付与させ、最表面層を磨耗しにくくしたり、傷がつきにくくするため、また、電子写真感光体101の表面に付着した現像剤を除去し易くするために、粒子として潤滑性粒子(例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子)を含有させる。これらの潤滑性粒子は2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
特に、フッ素系樹脂粒子は望ましく用いられる。フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が望ましい。
前記フッ素系樹脂の一次粒径は0.05μm以上1μm以下が望ましく、更に望ましくは0.1μm以上0.5μm以下が望ましい。一次粒径が0.05μmを下回ると分散時の凝集が進みやすくなる。一方、1μmを上回ると画質欠陥が発生し易くなる。
フッ素系樹脂を含有する電荷輸送層106におけるフッ素系樹脂の電荷輸送層106中の含有量は、電荷輸送層全量に対し、0.1質量%以上40質量%以下が適当であり、特に1質量%以上30質量%以下が望ましい。含有量が1質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による改質効果が十分でなく、一方、40質量%を越えると光透過性が低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくる。
【0057】
電荷輸送層106は、電荷輸送物質及び結着樹脂、並びにその他の材料を適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を塗布して乾燥することによって形成してもよい。
電荷輸送層106の形成に使用される溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、或いはこれらの混合溶剤等が用いられる。なお、電荷輸送物質と上記結着樹脂との配合比は10:1乃至1:5が望ましい。
また、電荷輸送層形成用塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加してもよい。
電荷輸送層106中に潤滑性粒子を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コロイドミル、衝突式メディアレス分散機、貫通式メディアレス分散機等の方法が用いられる。
【0058】
電荷輸送層106を形成する塗布液の分散例としては、溶媒に溶解した結着樹脂、電荷輸送材料などの溶液中に潤滑性粒子を分散する方法が挙げられる。
塗工液製造工程での塗工液の温度を0℃以上50℃以下に制御する方法として、水で冷やす、風で冷やす、冷媒で冷やす、製造工程の室温を調節する、温水で暖める、熱風で温める、ヒーターで暖める、発熱しにくい材料で塗工液製造設備を作る、放熱しやすい材料で塗工液製造設備を作る、蓄熱しやすい材料で塗工液製造設備を作るなどの方法が利用される。
【0059】
塗工液の混合方法として、スターラー、攪拌羽による攪拌、ロールミル、サンドミル、アトライター、ボールミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、等の方法が利用される。分散方法として、サンドミル、アトライター、ボールミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、ロールミル等の方法が利用される。
分散液の分散安定性を向上させるため、及び塗膜形成時の凝集を防止するために分散助剤を少量添加することも有効である。分散助剤として、界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0060】
電荷輸送層106を設けるときに用いられる塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、スプレー塗布法、ロールコータ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビアコータ塗布法、ビード塗布法、カーテン塗布法、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法等が用いられる。
電荷輸送層106の厚さは、5μm以上50μm以下が望ましく、10μm以上40μm以下がより望ましい。
【0061】
さらに、本実施形態の電子写真感光体101には電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による電子写真感光体101の劣化を防止する目的で、感光層103中に酸化防止剤、光安定剤などの添加剤を添加してもよい。
たとえば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル 4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル フェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル 6−t−ブチル フェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル フェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0062】
ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
【0063】
有機硫黄系酸化防止剤としてジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプト ベンズイミダゾール等が挙げられる。
有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチル フェニル)−フォスフィート等が挙げられる。
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われフェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果が得られる。
【0064】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤として2−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシ ベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノン等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系系光安定剤として2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ 3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0065】
その他の化合物として2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメート等がある。
また感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質が含有される。
電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等があげられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
【0066】
(保護層)
保護層107は、積層構造からなる電子写真感光体101では帯電時の電荷輸送層106の化学的変化を防止したり、感光層103の機械的強度をさらに改善する為に必要に応じて用いられる。
保護層107は、結着樹脂(硬化性樹脂を含む)と電荷輸送性化合物を含んで構成される。さらに、潤滑性粒子(フィラー)を含んでもよい。保護層107の形態としては硬化性樹脂や電荷輸送性化合物を含む樹脂硬化膜、電荷輸送性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成された膜等がある。硬化性樹脂としては公知の樹脂が使用されるが、例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン樹脂等が挙げられる。
【0067】
最表面層となる保護層107に上記潤滑性粒子を含有させることで、表面エネルギーを低減させることにより最表面層の磨耗率を低下させ、電子写真感光体101の長寿命化が図られる。潤滑性粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子が挙げられる。潤滑性粒子は2種以上を混合して用いてもよい。特に、フッ素系樹脂粒子が望ましく用いられる。
フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が望ましい。
【0068】
前記潤滑性粒子の一次粒径は0.05μm以上1μm以下が望ましく、更に望ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。一次粒径が0.05μm以上であれば、分散時の凝集が進み難く、1μm以下であれば画質欠陥が発生し難くなる。
保護層107における潤滑性粒子の含有量は、保護層全量に対し、0.1質量%以上60質量%以下が適当であり、特に1質量%以上30質量%以下が望ましい。当該含有量が1質量%以上では潤滑性粒子による表面エネルギーの低下効果が得られ、一方、60質量%以下であれば、光通過性の低下が抑制され、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が抑制される。
【0069】
保護層107は、電荷輸送物質及び結着樹脂、並びにその他の材料を適当な溶媒に溶解させ、かつ潤滑性粒子を分散させた保護層形成用塗布液を塗布して乾燥することによって形成される。
保護層107の形成に使用される溶媒としては、保護層形成時に下層を侵食しない溶剤であることが望ましく、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、或いはこれらの混合溶剤等が用いられる。
【0070】
また、保護層形成用塗布液には塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルやフッ素系オイル等を微量添加してもよい。
また、保護層の成膜性やはがれを防止するために、ハジキ防止剤や接着増強剤を添加してもよい。ハジキ防止剤としては所望の特性がえられる界面活性剤など公知の材料が用いられる。接着増強剤としては所望の特性が得られる界面活性剤やカップリング剤など公知の材料が用いられる。
【0071】
保護層107中に潤滑性粒子を分散させる方法としては、前記電荷輸送層106に潤滑性粒子を分散させる方法と同様の方法が用いられる。
また、潤滑性粒子の分散安定性を向上させるため、及び塗膜形成時の凝集を防止するために分散助剤を少量添加することも有効である。分散助剤として、界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。
前記保護層107の形成において、塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法、インクジェット塗布法等の通常の方法が用いられる。
保護層107の厚さは0.5μm以上20μm以下、特に2μm以上10μm以下であることが望ましい。
【0072】
<画像形成装置及びプロセスカートリッジ>
次に、本実施形態に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の第一の例を示す全体構成図である。この画像形成装置1000は、電子写真方式を採用したモノクロの片面出力プリンタである。画像形成装置1000は、図の矢印B方向に回転する電子写真感光体61と、電源65aから電力の供給を受けて、電子写真感光体61に接触しながら回転することで電子写真感光体表面を帯電する帯電手段である帯電部材65とを備えている。ここで、電子写真感光体61が、前記した本実施形態に係る電子写真感光体の一例に相当する。
【0073】
また、この画像形成装置1000には、電子写真感光体61に向けてレーザ光を発し、電子写真感光体61の表面に、周囲より電位の高くなった静電潜像を形成する静電潜像形成手段である露光部7、黒色トナーを含む静電潜像現像剤を用いて電子写真感光体61表面に形成された静電潜像にモノクロ(黒)のトナーを付着させることにより静電潜像を現像することでトナー画像を形成する現像手段である現像器64、トナー画像が形成された電子写真感光体61に搬送されてくる用紙を押圧することで電子写真感光体61の表面に形成されているトナー画像を用紙上に転写する転写手段である転写ロール50、用紙上に転写されたトナー画像に対し熱および圧力を加えることで転写像の用紙への定着を行う定着手段である定着器10を備えている。さらに、電子写真感光体61に接触し、トナー画像の転写後に電子写真感光体61表面に付着したまま残留した残留トナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング装置62、トナー画像の転写後に電子写真感光体61に残留した電荷を除去する除電ランプ7aも備えられている。
【0074】
この画像形成装置1000では、上記の帯電部材65および電子写真感光体61は、いずれも図2に垂直な方向に延びたロール状であってこれらのロールの両端は、いずれも支持部材100aに、ロールが回転自在な態様で支持されている。また、この支持部材100aには、上記のクリーニング装置62および現像器64も接続されており、このように帯電部材65、電子写真感光体61、クリーニング装置62、および現像器64が支持部材100aに一体化されることで、プロセスカートリッジ100が構成されている。
画像形成装置1000にこのプロセスカートリッジ100が組み込まれることにより、これらのプロセスカートリッジの構成要素である各部が画像形成装置1000に備えられることとなる。このプロセスカートリッジ100が、本実施形態のプロセスカートリッジの一例に相当する。
【0075】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジ100は、本実施形態に係る電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱自在とされていれば特に限定されるものではない。例えば、電子写真感光体を帯電する帯電手段、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像手段、前記電子写真感光体に形成されたトナー画像を被転写体に転写する転写手段、及び、転写後の前記電子写真感光体の残留トナーを除去するクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一種を一体に有していてもよい。
【0076】
以下、この画像形成装置1000における画像形成の動作について説明する。
この画像形成装置1000には、黒トナーが蓄えられた不図示のトナーカートリッジが備えられており、このトナーカートリッジにより現像器64にトナーの補給が行われる。また、トナー画像が転写される用紙は、給紙手段1の中に蓄えられており、ユーザから画像形成が指示されると給紙手段1から搬送されて、転写ロール50においてトナー画像の転写が行われた後、図の左方向に向かって搬送されていく。図2においては、この時の用紙搬送路が、左向きの矢印で示す経路として示されており、用紙はこの用紙搬送路を通って定着器10において、用紙上に転写された転写像の定着が行われた後、左方向に排出される。
【0077】
(帯電手段)
帯電部材65が電子写真感光体61を帯電させる際には、帯電部材65に電圧が印加される。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される電子写真感光体の帯電電位に応じて正または負の50V以上2000V以下が望ましく、100V以上1500V以下がより望ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400V以上1800V以下、望ましくは800V以上1600V以下、さらに望ましくは1200V以上1600V以下とされる。交流電圧の周波数は50Hz以上20,000Hz以下、望ましくは100Hz以上5,000Hz以下である。
【0078】
帯電部材65としては、芯材の外周面に弾性層、抵抗層、保護層等を設けたものが望ましく用いられる。帯電部材65は、電子写真感光体61に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも電子写真感光体61と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能するが、帯電部材65に駆動手段を取り付け、電子写真感光体61とは異なる周速度で回転させて帯電させてもよい。
露光部7としては、電子写真感光体表面に、半導体レーザ、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光する光学系装置等を用いてもよい。
【0079】
(現像手段)
現像器64としては、一成分系、二成分系等の正規又は反転現像剤を用いた公知の現像装置等を用いてもよい。現像器64に使用されるトナーの形状については、特に制限はなく、不定形、球状あるいは他の特定形状のものであってもよい。
【0080】
(転写手段)
転写手段としては、転写ロール50等の接触帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、あるいはコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0081】
(クリーニング手段)
クリーニング装置62は、転写工程後の電子写真感光体61の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体61は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いてもよいが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0082】
なお、本実施形態に係る電子写真感光体の表面層がフッ素含有樹脂粒子を含んでいれば、表面エネルギーが低いため、クリーニング装置62としてクリーニングブレードを用いても表面層の摩耗が起こりにくく、長期間にわたり安定した画像が形成される。
本実施形態に係る画像形成装置は除電ランプ7aが備えられているため、電子写真感光体61が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体61の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高められる。なお、本実施形態に係る画像形成装置においては必要に応じて除電ランプ7aを備えていればよい。
【0083】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の第二の例を示す全体構成図である。
画像形成装置1000’はカラープリンタである。画像形成装置1000’には、図の矢印Bk,Bc,Bm,By方向にそれぞれ回転する電子写真感光体61K,61C、61M,61Yが備えられている。ここで、電子写真感光体61K,61C、61M,61Yが、前記本実施形態に係る電子写真感光体の一例に相当する。
【0084】
また、各電子写真感光体61K,61C、61M,61Yの周囲には、各電子写真感光体に接触しながら回転することで電子写真感光体61K,61C、61M,61Yの表面を帯電する帯電部材65K,65C,65M,65Y、帯電した各電子写真感光体61K,61C、61M,61Y上にレーザ光の照射によりブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色についての静電潜像を形成する露光部7K,7C,7M,7Y、各電子写真感光体上の静電潜像を各色のトナーを含む静電潜像現像剤で現像して各色のトナー画像を形成する現像器64K,64C,64M,64Yが備えられている。
【0085】
この画像形成装置1000’では、上記の各構成要素のうち、ブラック用の、帯電部材65K、電子写真感光体61K、クリーニング装置62K、および現像器64Kは、一体化されてプロセスカートリッジ100Kの構成要素となっており、同様に、シアン用の、帯電部材65C、電子写真感光体61C、クリーニング装置62C、現像器64Cの組、マゼンタ用の、帯電部材65M、電子写真感光体61M、クリーニング装置62M、現像器64Mの組、および、イエロー用の、帯電部材65Y、電子写真感光体61Y、クリーニング装置62Y、現像器64Yの組が、それぞれ一体化されてプロセスカートリッジ100C,100M,100Yの構成要素となっている。画像形成装置1000’にこれら4つのプロセスカートリッジが組み込まれることにより、これらのプロセスカートリッジの構成要素である各部が画像形成装置1000’に備えられることとなる。これらのプロセスカートリッジ100K,100C,100M,100Yそれぞれが、本実施形態のプロセスカートリッジの一例に相当する。
【0086】
また、この画像形成装置1000’には、各電子写真感光体61K,61C、61M,61Y上で形成された各色のトナー画像の転写(1次転写)を受けて1次転写像を運搬する中間転写体である中間転写ベルト5、中間転写ベルト5への各色のトナー画像の1次転写が行われる1次転写ロール50K,50C,50M,50Y、用紙への2次転写が行われる2次転写ロール対9、用紙上の2次転写されたトナー画像の定着を行う定着手段である定着器10’、4つの現像器にそれぞれの色成分のトナーをそれぞれ補給する、4つのトナーカートリッジ4K,4C,4M,4Y、用紙を蓄える給紙手段1’も備えられている。
【0087】
ここで、中間転写ベルト5は、駆動ロール5aから駆動力を受けながら2次転写ロール9bと駆動ロール5aとに張力を持って架け渡された状態で図の矢印A方向に循環移動する。
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト5を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト5のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。
ベルト状とする場合中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いてもよい。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。さらに、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いてもよい。
【0088】
次に、この画像形成装置1000’における画像形成の動作について説明する。
4つの電子写真感光体61K,61C、61M,61Yは、帯電部材65K,65C,65M,65Yによりそれぞれ帯電され、さらに露光部7K,7C,7M,7Yから照射されるレーザ光を受けて各電子写真感光体上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、現像器64K,64C,64M,64Yによってそれぞれの色のトナーを含む静電潜像現像剤で現像されてトナー画像が形成される。このようにして形成された各色のトナー画像は、各色に対応した1次転写ロール50K,50C,50M,50Yにおいて、中間転写ベルト5上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に順次転写(1次転写)されて重ね合わされていき、多色の1次転写像が形成される。
【0089】
そして、この多色の1次転写像は、中間転写ベルト5により2次転写ロール対9まで運搬されていく。一方、多色の1次転写像の形成と呼応して、用紙が給紙手段1’から取り出されて搬送ロール3によって搬送され、さらに位置合わせロール対8によって位置を整えられる。そして、2次転写ロール対9によって、上述の多色の1次転写像が、搬送されてきた用紙に転写(2次転写)され、さらに定着器10’によって用紙上の2次転写像に定着処理が施される。定着処理後、定着像を有する用紙は、送出ロール対13を通過して、排紙受け2に排出される。
以上が、この画像形成装置1000’における画像形成の動作についての説明である。
【0090】
そして、本実施形態に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジでは、電子写真感光体の下引層に、アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子が含まれていることで、繰り返し使用しても意図しない微小黒点の発生が抑制された画像が安定して形成される。
【実施例】
【0091】
以下、本実施形態を実施例によって具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0092】
[実施例1]
−中空酸化亜鉛粒子1の作製−
以下の手順により、液相析出法を用いて架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂の中空粒子の表面に酸化亜鉛を固定化した。
平均粒子径0.1μmの架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂50質量部をメタノール1000質量部中で攪拌分散させた液に、ジンク−2,4−ペンタンジオネート50質量部を添加し、攪拌しながらメタノール50質量部と蒸留水50質量部を混合した液を滴下した。滴下終了後、55℃で2時間攪拌した後、加圧ろ過により沈殿物をろ別し、水洗浄を行った。その後、100℃で2時間減圧乾燥を行い、酸化亜鉛を表面に被覆させた平均粒子径0.1μmの架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子を得た。酸化亜鉛を表面に被覆させた架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子を550℃の加熱炉で5時間焼成し、平均粒子径0.1μmの中空酸化亜鉛粒子を得た。
【0093】
−下引層の形成−
上記のようにして得られた平均粒子径0.1μmの中空酸化亜鉛粒子15質量部と、アリザリン0.6質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し超音波ホモジナイザーにて20分の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
【0094】
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部およびn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を前記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0095】
−電荷輸送層の形成−
次に、以下の工程により電荷輸送層形成用塗布液を調整した。
トルエン4.3質量部にフッ素系グラフトポリマーGF400(東亜合成株式会社製)を0.06質量部溶解させた液に、4フッ化エチレン樹脂粒子1.8質量部(平均粒径:0.2μm)を入れ、20℃の液温に保ちながら48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液(A液)を得た。
【0096】
次に、電荷輸送物質としてN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン9.8質量部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)13.0質量部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合してテトラヒドロフラン48.3質量部及びトルエン18.2質量部に混合溶解し、B液を得た。
このB液に前記A液を加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cmまで昇圧した分散処理を6回繰り返した液に、シリコーンオイル(商品名:KP340 信越シリコーン社製)を5ppm添加し、十分に撹拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布して115℃で40分間乾燥し、厚さが32μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体E1を得た。
【0097】
このようにして得られた電子写真感光体E1をドラムカートリッジに装着した富士ゼロックス社製フルカラープリンターDocu Centre Color f450改造機を用い、28℃/85%RH環境下にて、後述するように1万枚および10万枚の連続プリントテストおよび残留電位の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0098】
〔実施例2〕
−中空酸化亜鉛粒子2の作製−
実施例1において得られた平均粒子径0.1μmの中空酸化亜鉛粒子50質量部をメタノール1000質量部中に混合し、攪拌しながらN−β(アミノエチル)γ―アミンプロピルトリエトキシシラン1.8質量部をメタノール25質量部に溶解させた液を滴下混合し、滴下終了後25℃で1時間攪拌した。攪拌終了後加圧ろ過にて沈殿物をろ別し、80℃で2時間減圧乾燥し、シランカップリング剤により表面処理した中空酸化亜鉛粒子を得た。
【0099】
−感光体E2の作製−
上記のようにして得られた平均粒子径0.1μmの中空酸化亜鉛粒子15質量部と、アリザリン1.0質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、超音波ホモジナイザーにて20分の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
実施例1と同様にして、下引層上に電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体E2を得て、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0100】
[実施例3]
−中空酸化チタン粒子3の作製−
平均粒子径0.15μmの中空構造を有する架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂50質量部をイソプロピルアルコール1000質量部中で攪拌分散させた液に、チタニウムテトライソプロポキサイド50質量部を添加し、攪拌しながらイソプロピルアルコール50質量部と蒸留水50質量部を混合した液を滴下した。滴下終了後、65℃で2時間攪拌した後、加圧ろ過により沈殿物をろ別し、水洗浄を行った。その後、100℃で2時間減圧乾燥を行い、酸化チタンを表面に被覆させた平均粒子径0.15μmの架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂の中空粒子を得た。酸化チタンを表面に被覆させた架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子を600℃の加熱炉で3時間焼成し、平均粒子径0.15μmの中空酸化チタン粒子を得た。
【0101】
−感光体E3の作製−
上記のようにして得られた平均粒子径0.1μmの中空酸化チタン粒子15質量部と、4−エトキシー1,2−ジヒドロキシアントラキノン3質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、超音波ホモジナイザーにて30分の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
実施例1と同様にして、下引層上に電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体E3を得て、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0102】
−感光体E4の作製−
平均粒子径0.1μmの中空酸化ケイ素粒子(日鉄鉱業株式会社製)15質量部と、ベンズイミダゾールペリレン 5質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、超音波ホモジナイザーにて20分の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
実施例1と同様にして、下引層上に電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体E4を得て、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0103】
−中空酸化ジルコニウム粒子5の作製−
平均粒子径0.08μmの中空構造を有する架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂50質量部をイソプロピルアルコール1000質量部中で攪拌分散させた液に、ジルコニウムテトラブトキサイド50質量部を添加し、攪拌しながらイソプロピルアルコール50質量部と蒸留水50質量部を混合した液を滴下した。滴下終了後、65℃で2時間攪拌した後、加圧ろ過により沈殿物をろ別し、水洗浄を行った。その後、100℃で2時間減圧乾燥を行い、酸化ジルコニウムを表面に被覆させた平均粒子径0.08μmの架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂の中空粒子を得た。酸化ジルコニウムを表面に被覆させた架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂粒子を600℃の加熱炉で3時間焼成し、平均粒子径0.08μmの中空酸化ジルコニウム粒子を得た。
【0104】
−感光体E5の作製−
平均粒子径0.08μmの中空酸化ジルコニウム粒子12質量部と、プルプリン 3質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、超音波ホモジナイザーにて20分の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
実施例1と同様にして、下引層上に電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体E4を得て、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0105】
[比較例1]
−酸化亜鉛粒子の作製−
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100質量部をメタノール500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0106】
−感光体C1の作製−
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、アリザリン0.6質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
得られた下引層上に、実施例1と同様にして電荷発生層および電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体C1を得た。
電子写真感光体C1を用い、実施例1と同様にして後述するように評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0107】
[比較例2]
−感光体C2の作製−
酸化チタン(平均粒子径:35μm、テイカ社製、比表面積値:40m/g)を45質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
得られた下引層上に、実施例1と同様にして電荷発生層および電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体C2を得た。
電子写真感光体C2を用い、実施例1と同様にして後述するように評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0108】
[比較例3]
−感光体C3の作製−
平均粒子径0.15μmの中空構造を有する架橋型ポリメチルメタクリレート樹脂15質量部と、酸化チタン(平均粒子径:35μm、テイカ社製、比表面積値:40m/g)45質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
得られた下引層上に、実施例1と同様にして電荷発生層および電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体C3を得た。
電子写真感光体C3を用い、実施例1と同様にして後述するように評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0109】
[比較例4]
−感光体C4の作製−
実施例1にて作製した平均粒子径0.1μmの中空酸化亜鉛粒子15質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、超音波ホモジナイザーにて20分の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
得られた下引層上に、実施例1と同様にして電荷発生層および電荷輸送層を順次形成し、電子写真感光体C4を得た。
電子写真感光体C4を用い、実施例1と同様にして後述するように評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0110】
下引層に含まれる粒子(シリコーン粒子を除く)とアクセプター性化合物を表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
評価及び測定の詳細は以下のとおりである。
<評価>
(残留電位の上昇分の測定)
上記1万枚の画像形成において電子写真感光体表面の残留電位を測定し、1枚目画像形成後の残留電位と、1万枚目および10万枚目それぞれの画像形成後の残留電位との差(1万枚画像形成後の残留電位−1枚目画像形成後の残留電位)及び(10万枚画像形成後の残留電位−1枚目画像形成後の残留電位)をそれぞれ求め、残留電位の上昇分とした。
残留電位測定は、富士ゼロックス社製フルカラープリンターDocu Centre Color f450改造機に電位センサー(Model 555P−1(トレック社製)を帯電器よりも感光体回転上流側直前位置に感光体表面に向けて取り付け、表面電位計としてModel 334(トレック社製)を用いて測定を行った。
【0113】
(プリント画質の評価)
28℃/85%RH環境下にて、A3用紙(富士ゼロックス製、C紙)10万枚目に、白画像プリントとハーフトーンプリントを出力し、白プリントは微小黒点の発生状態を、ハーフトーンプリント画質は入力画像に対する出力画像の濃度割合(%)を評価した。
結果を表2に示す。
【0114】
【表2】

【符号の説明】
【0115】
3…搬送ロール、4K,4C,4M,4Y…トナーカートリッジ、5a…駆動ロール、5…中間転写ベルト、5…中間転写ベルト、7a…除電ランプ、7…露光部、7K,7C,7M,7Y…露光部、8…ロール対、9b…2次転写ロール、9…2次転写ロール対、10…定着器、13…送出ロール対、50,50K,50C,50M,50Y…1次転写ロール、61,61K,61C,61M,61Y…電子写真感光体、62,62K,62C,62M,62Y…クリーニング装置、64,64K,64C,64M,64Y…現像器
65,65K,65C,65M,65Y…帯電部材、65a…電源、100,100K,100C,100M,100Y…プロセスカートリッジ、100a…支持部材、101…電子写真感光体、102…導電性支持体、103…感光層、104…下引層、105…電荷発生層、106…電荷輸送層、107…保護層、1000…画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、
前記導電性支持体上に配置されており、金属酸化物で構成された中空粒子の表面にアクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子及び結着樹脂を含む下引層と、
前記下引層上に配置された感光層と、
を有する電子写真感光体。
【請求項2】
前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる1種以上の金属酸化物である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記アクセプター性化合物が、アントラキノン系化合物及びペリレン系化合物から選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記アクセプター性化合物が、下記一般式(I)又は(II)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化1】


(式(I)中、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、又はカルボキシル基を示す。)
【化2】


(式(II)中、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又はカルボキシル基を示す。)
【請求項5】
前記アクセプター性化合物が、下記一般式(2)又は(3)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化3】



(式(2)中、R、R10はそれぞれ独立して置換又は未置換のアルキレン基を示す。)
【化4】


(式(3)中、R11、R12はそれぞれ独立して置換又は未置換のアルキレン基を示し、R13、R14はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、又はカルボキシル基を示す。)
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、
画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項8】
金属酸化物で構成された中空粒子と、該中空粒子の表面に付着したアクセプター性化合物とを有する中空金属酸化物粒子。
【請求項9】
樹脂粒子の表面に金属酸化物膜を形成する工程と、
前記金属酸化物膜が表面に形成された樹脂粒子を焼成することにより前記樹脂粒子を除去して中空金属酸化物粒子を作製する工程と、
前記中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させる工程と、
を有する中空金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項10】
樹脂粒子の表面に金属酸化物膜を形成する工程と、
前記金属酸化物膜が表面に形成された樹脂粒子を焼成することにより前記樹脂粒子を除去して中空金属酸化物粒子を作製する工程と、
前記中空金属酸化物粒子の表面にアクセプター性化合物を付着させる工程と、
前記アクセプター性化合物が付着した中空金属酸化物粒子及び結着樹脂を含む塗布液を導電性支持体上に塗布した後、塗膜を乾燥して硬化させることにより下引層を形成する工程と、
前記下引層上に感光層を設ける工程と、
を有する電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189959(P2012−189959A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55608(P2011−55608)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】