説明

電子写真用導電性弾性部材

【課題】エピクロルヒドリン系ゴムを含む導電性弾性体層を有し、かつ、導電性にムラの生じにくい電子写真用の導電性弾性部材を提供すること。
【解決手段】エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体から選ばれる一方又は両方のゴムを含む導電性弾性体層を有する電子写真用の導電性弾性部材であって、該ゴムは、下記式(1)で示される基によって単位中の塩素原子が置換されたエピクロルヒドリン単位を有する。
【化1】


(式(1)中、Xは−S−又は−NH−であり、Dは2価の有機基であり、Rは水素又は炭素数1以上20以下の炭化水素であり、nは15以上100以下の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置で用いられる電子写真用導電性弾性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体等を導電性弾性体層として用いる電子写真用導電性弾性部材が実用化されている。以下、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体とエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体とを総称して、「エピクロルヒドリン系ゴム」と記載する。また、エピクロルヒドリン系ゴムの中でも混合及び架橋する前の原料ゴムを「エピクロルヒドリン系原料ゴム」と記載する。エピクロルヒドリン系ゴムを用いた導電性弾性体層では、イオン伝導機構による高い導電性を得ることができる。しかし、近年、電子写真用導電性弾性部材は、電子写真装置の長寿命化・高速化に伴い、より高い導電性が求められている。そのため、エピクロルヒドリン系ゴムからなる導電性弾性層に更なる高導電率化が必要とされている。
【0003】
エピクロルヒドリン系原料ゴムは、エチレンオキサイドに由来する単位(以下、「エチレンオキサイド単位」と記載する)の共重合比が高いほど、硬化後のエピクロルヒドリン系ゴムでは導電性が高くなることが知られている(特許文献1、2)。しかしながら、エチレンオキサイド単位の共重合比が高くなるほど加工性が低下する。これは、エチレンオキサイド単位が連続して結合することで、該単位同士が結晶化することに起因している。したがって、重合段階でエチレンオキサイド単量体の共重合比を高めて、導電性と加工性を満たすエピクロルヒドリン系原料ゴムを得るのは困難であった。かかる課題に対し、特許文献3では、エピクロルヒドリン系原料ゴムに、エチレンオキサイド単位を含むポリエーテルポリオールを混合する導電性弾性部材を開示している。この方法では、ポリエチレンオキサイド成分をエピクロルヒドリン系原料ゴムの重合後に加えるので、エチレンオキサイド単位が、エピクロルヒドリン系原料ゴム中で連続して結合することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−63656号公報
【特許文献2】特開2003−64251号公報
【特許文献3】特開2006−39394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献3に係る構成においては、エピクロルヒドリン系原料ゴムとポリエーテルポリオールの間に結合が無いため、電子写真用導電性弾性部材の使用環境における熱や圧力の影響で、ポリエーテルポリオールが偏在して導電性弾性体層の導電性にムラができることがあった。
【0006】
つまり、電子写真用導電性弾性部材を他部材と当接させて使用する場合に、当接部に圧力がかかり、その力でポリエーテルポリオールが押し出されることで、導電性が不均一になり画像ムラとなりやすい。また、高温環境で使用する場合には、ポリエーテルポリオールの移行速度が速くなり、この傾向はさらに顕著になる場合があった。
【0007】
そこで本発明の課題は、エピクロルヒドリン系ゴムを含む導電性弾性体層を有し、かつ、導電性にムラの生じにくい電子写真用の導電性弾性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子写真用導電性弾性部材は、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体から選ばれる一方又は両方のゴムを含む導電性弾性体層を有する電子写真用の導電性弾性部材であって、
該ゴムは、下記式(1)で示される基によって単位中の塩素原子が置換されてなるエピクロルヒドリン単位を有することを特徴とする:
【0009】
【化1】

(式(1)中、Xは−S−又は−NH−であり、Dは2価の有機基であり、Rは水素又は炭素数1以上20以下の炭化水素であり、nは15以上100以下の整数である。)。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性にムラが生じにくい電子写真用導電性弾性部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子写真用導電性弾性部材の1例の断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の断面図である。
【図3】本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る電子写真用導電性弾性部材の一例としての帯電ローラの断面図であり、導電性支持体11、その外周に形成された導電性弾性体層12、及びその外周に形成された表面層13を有する。
【0014】
[導電性弾性体層]
導電性弾性体層11は、単位中の塩素原子の少なくとも一部が下記式(1)で示される基によって置換されているエピクロルヒドリン単位を有するエピクロルヒドリン系ゴムを含む。そして、導電性弾性体層11は、以下の成分(a)乃至(c)を主体とした未加硫コンパウンドを硬化成型することにより形成される。
(a)エピクロルヒドリン系原料ゴム。
(b)ジチオール化合物又はジアミン化合物。
(c)エチレンオキサイド単位数が15以上100以下の片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド。
【0015】
【化2】

式中、
Xは、−S−又は−NH−であり、
Dは、2価の有機基であり、
Rは、水素又は炭素数1以上20以下の炭化水素であり、
nは、15以上100以下の整数である。
【0016】
(a)エピクロルヒドリン系原料ゴム
エピクロルヒドリン系原料ゴムとしては、少なくともエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体であり、更に、アリルグリシジルエーテルを含むものが好ましい。つまり、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体から選ばれる一方又は両方を主体とするものである。このエピクロルヒドリン系原料ゴムとしては、エチレンオキサイド単位の共重合比が高く、ムーニー粘度が低いものが好ましい。好ましい範囲としては、エチレンオキサイド単位の共重合比が50mol%以上80mol%以下であり、ムーニー粘度が30ML1+4(100℃)以上70ML1+4(100℃)以下である。エチレンオキサイド単位の共重合比を50mol%以上とすることで、電子写真用導電性弾性部材として用いるのにより十分な導電性を得られる。エチレンオキサイド単位の共重合比が80mol%以下であることにより、結晶化による粘度上昇を抑え、良好な加工性を保つことができる。ムーニー粘度は、各単位がランダムに共重合されているほど、低くなる傾向にある。
【0017】
本発明では、成分(c)である片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドに可塑化作用があるので、エチレンオキサイド単位の共重合比が比較的高いエピクロルヒドリン系原料ゴムを用いても、未架橋時のコンパウンドの粘度を低く抑えることができる。
【0018】
エピクロルヒドリン系原料ゴムの中でもエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体は、アリルグリシジルエーテル単位で硫黄架橋することができ、良好な機械強度を達成できるので特に好適である。また、本発明で必要とする導電性や加工性を失わない範囲で、他の原料ゴムをブレンドしても良い。
【0019】
(b)ジチオール化合物又はジアミン化合物
ジチオール化合物及びジアミン化合物としては、エピクロルヒドリン系原料ゴムの塩素原子と片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドのエポキシ基の両方に対して反応性が高いものが好ましい。また、エピクロルヒドリン系原料ゴムや片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドのエチレンオキサイド単位が集まり結晶化するのを妨げるために、分子量が大きく、立体構造の嵩高い化合物であることが好ましい。そのため、式(1)中のDで示される2価の有機基が鎖状よりも環状、単環式よりも複合環式である化合物であることが好ましい。
【0020】
好ましいジチオール化合物として、以下のものを挙げることができる。2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、2−N−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジシクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等のジメルカプトトリアジン類、メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート等のジメルカプトキノキサリン類。
【0021】
また、好ましいジアミン化合物としては、以下のものがある。ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス−アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名、メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン。
【0022】
(c)エチレンオキサイド単位が15以上100以下の片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド(以下、簡単のために「片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド」又は「成分(c)」という)。本発明では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとして、下記式(2)の化合物が用いられる。
【0023】
【化3】

【0024】
なお、式中、nはエチレンオキサイド単位数であり、本発明では、15以上100以下の整数であり、この範囲にあると高い導電性が得られる。さらに、30以上70以下であると更に高い導電性が得られるため好ましい。nが15未満であると分子鎖が短いためにイオンを輸送する効果が小さく、100より大きいと分子内でのエチレンオキサイド単位の結晶化が顕著になるため、共に導電性を高める効果が小さい。
【0025】
この片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの一端にはエポキシ基が、もう一端には官能基Rが結合している。Rは、水素、もしくは炭素数1以上20以下の炭化水素である。Rは、エピクロルヒドリン系原料ゴムや片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドのエチレンオキサイド単位が集まり結晶化するのを妨げるために、分子量が大きく、立体構造の嵩高い炭化水素であることが好ましい。そのため、鎖状よりも環状、単環よりも複合環の炭化水素であることが好ましい。
【0026】
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの合成例としては、以下の1)乃至3)のスキームで合成する方法が例示できる。
【0027】
1)種々の炭化水素基を持つモノアルコール類やモノフェノール類とエチレンオキサイドとをアルカリ金属水酸化物等の触媒存在下で付加反応させて、ポリエーテルモノアルコールを合成する。
2)そのポリエーテルモノアルコールとエピクロルヒドリンとを三弗化ホウ素エーテル錯塩等のルイス酸触媒存在下で付加反応させる。
3)その付加反応物に水酸化ナトリウム水溶液を加えて閉環して、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド得る。
【0028】
上記成分(a)乃至(c)を混合した後の硬化成型工程によって、成分(a)乃至(c)が反応し、ジチオール化合物もしくはジアミン化合物を介してエピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合する。ジチオール化合物(ジアミン化合物)の片方のチオール基(アミン基)が、エピクロルヒドリン系原料ゴムの塩素原子と置換反応し、他方のチオール基(アミン基)が片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドのエポキシ基と開環反応する。こうして硬化成型された後の導電性弾性体層は、エピクロルヒドリン系原料ゴムに側鎖として片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが、エポキシ基が開環して、グラフト結合した構造を有する。この構造では、ジチオール化合物、ジアミン化合物、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの炭化水素基の立体障害によって、エチレンオキサイド単位の結晶化が低減される。そのため、エチレンオキサイド単位の含有率が多いことによる高い導電性が得られると共に、結晶化による加工性の悪化も抑制することができる。
【0029】
なお、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合していることは、ソックスレー抽出により未反応片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドを抽出することで確認することができる。
【0030】
また、反応の進行状態は、赤外分光法(IR)、近赤外分光法(NIR)、ラマン分光法を組み合わせて測定することで知ることができる。例えば、IRでの2570cm-1付近のチオール基に帰属されるピークとラマン分光法での1250cm-1付近のエポキシ基に帰属されるピークとが減少し、IRで3300cm-1付近の水酸基に帰属されるピークが増加することを検出する。これは、チオール基とエポキシ基が結合することで水酸基が生成されていることを示している。
【0031】
また、固体高分解能13C−NMRによって、エチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテルの共重合比や、ジチオール化合物やジアミン化合物の構造、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの構造を特定することができる。
【0032】
さらに、抽出した未反応物をマイクロ−MSによって分析することで、ジチオール化合物やジアミン化合物の構造、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの構造を特定することができる。
【0033】
また、導電性弾性体層には、本発明の電子写真用導電性弾性部材として必要とされる導電性や機械強度などの特性を失わない範囲で、一般的な配合剤を含むことができる。配合剤としては、導電剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、加工助剤、架橋遅延剤、充填剤、分散剤、発泡剤、滑剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、改質剤などを例示できる。
【0034】
上記の成分(a)乃至(c)及び配合剤の混練方法としては、バンバリーミキサー、インターミックス、加圧式ニーダーなどの密閉型混練機を使用した方法や、オープンロールなどの開放型混練機を使用した方法などを例示できる。
【0035】
混練して得られた未加硫コンパウンドを導電性支持体の上に形成する方法としては、押出成型、射出成型、圧縮成型などの公知の成型方法が例示される。特に、導電性弾性体層となるコンパウンドを導電性支持体と一体に押出すクロスヘッド押出成型が、作業の効率化などを考慮すると好ましい。押出成型後のローラを硬化成型する方法として、型成型、加硫缶成型、連続炉成型、遠・近赤外線成型、誘導加熱成型などの熱による硬化成型方法などを例示できる。
【0036】
導電性弾性体層を成型後のローラは、表面の平滑化及び形状の精密仕上げのために、研削してもよい。
【0037】
[導電性支持体]
導電性支持体の具体例としては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケルなどの金属円柱を挙げることができる。
【0038】
[表面層]
本発明に係る導電性弾性部材において、導電性弾性層上に表面層を設けても良い。
【0039】
[電子写真装置]
本発明の電子写真用導電性弾性部材を用いることのできる電子写真装置の概略構成を図2に示す。電子写真装置は、感光体21、感光体21を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置などから構成されている。感光体21は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体21は図中の矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置は、感光体21に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ22を有する。帯電ローラ22は、感光体21の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源213から所定の直流電圧を印加することにより、感光体21を所定の電位に帯電する。本発明では、該帯電ローラ22として、本発明の電子写真用導電性弾性部材が用いられる。感光体21に静電潜像を形成する潜像形成装置としては、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光28を行うことにより、静電潜像が形成される。
【0040】
現像装置は、感光体21に近接又は接触して配設される接触式の現像ローラ23を有する。感光体21の帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーにより反転現像することにより、静電潜像をトナー像に可視化現像する。なお、現像に用いられずに残ったトナーを現像ローラ23から剥離すると共に新たなトナーを現像ローラ23に塗布し帯電するためのトナー供給ローラ211が当接している。また、現像ローラ23に担持されたトナーの量を規制すると共に帯電するための弾性規制ブレード210が設けられている。図2においては、現像ローラ23、トナー供給ローラ211及び弾性規制ブレード210が電源212によって印加電圧がコントロールされている。転写装置は、接触式の転写ローラ25を有する。感光体21からトナー像を普通紙などの転写材24に転写する。なお、転写材24は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。また、転写ローラ25は転写用電源214により印加電圧がコントロールされている。定着装置26は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を定着し、機外に排出する。図2において、29は必要により設けられる帯電前露光装置である。
【0041】
[プロセスカートリッジ]
図3に示すように、感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置などを一体化し、電子写真装置に着脱可能に設計されたプロセスカートリッジに、本発明の電子写真用導電性弾性部材を用いることもできる。なお、図3において、電子写真装置にて説明したと同じものには同じ符号を付した。図3において、31はトナーシールである。
【実施例】
【0042】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。また、用いた材料について、下記に示すもの及び下記製造例で製造したもの以外は、高純度の市販試薬を用いた。
【0043】
・導電性弾性体層用材料
エピクロルヒドリン系原料ゴムA:エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体「エピオン−301」(商品名)、ダイソー株式会社製、エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル=23mol%/73mol%/4mol%のランダム共重合体。
エピクロルヒドリン系原料ゴムB:エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体「エピクロマーD」(商品名)、ダイソー株式会社製、エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド=39mol%/61mol%のランダム共重合体。
酸化亜鉛:亜鉛華2種、ハクスイテック株式会社製。
炭酸カルシウム:「ナノックス#30」(商品名)、丸尾カルシウム株式会社製。
ハイドロタルサイト:「DHT−4A」(商品名)、協和化学工業株式会社製。
ステアリン酸:「ステアリン酸S」(商品名)、花王株式会社製。
第4級アンモニウム塩:「LV−70」(商品名)、株式会社ADEKA製。
ジチオール化合物A:ジメルカプトキノキサリン類「ダイソネットXL−21S」(商品名)、ダイソー株式会社製。
ジチオール化合物B:ジメルカプトトリアジン類「ジスネットDB」(商品名)、三協化成株式会社製。
TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド「ノクセラーTS」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製。
硫黄:「サルファックスPMC」(商品名)、鶴見化学工業株式会社製。
【0044】
・表面層用材料
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液:「プラクセルDC2016」(商品名)、ダイセル化学工業株式会社製、固形分70質量%。
ブロックイソシアネートIPDI:「ベスタナートB1370」(商品名)、デグサ・ヒュルス社製。
ブロックイソシアネートHDI:「デュラネートTPA−B80E」(商品名)、旭化成工業株式会社製。
カーボンブラック:「三菱カーボンブラックMA77」(商品名)、三菱化学株式会社製。
変性ジメチルシリコーンオイル:「SH28PA」(商品名)、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製。
球状アクリル樹脂粒子:「MX1000」(商品名)、綜研化学株式会社製。
【0045】
本発明で用いる片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドは、以下の製造例1乃至3により作製した。
【0046】
[製造例1:片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50の作製]
ラウリルアルコール1mol(MW186)と水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム0.05mol相当)とを反応容器に入れて窒素置換した。これを、150℃に加熱しながら、エチレンオキサイド50mol(MW46)を徐々に導入して付加反応させた。続いて80℃まで冷却した後、リン酸を加えて中和した。次に、減圧加熱して脱水した後に、濾過し、ラウリルアルコールポリエチレンオキサイド付加物を得た。
【0047】
得られたラウリルアルコールポリエチレンオキサイド付加物にエピクロルヒドリン1mol(MW92.5)と三フッ化ホウ素エチルエーテル錯塩0.02mol(MW141.9)を加え、還流しながら加熱した。この反応生成物に、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム1.5mol相当)を滴下して、脱ハロゲン化して閉環させた。これに水を加えて塩化ナトリウムを水層に溶解し、分離した有機層を減圧蒸留した。こうしてエチレンオキサイド単位数が50である片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50を得た。
【0048】
[製造例2:片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−100の作製]
エチレンオキサイドの導入を100molにした以外は製造例1と同様の方法で、エチレンオキサイド単位数が100である片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−100を得た。
【0049】
[製造例3:片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−200の作製]
エチレンオキサイドの導入を200molにした以外は製造例1と同様の方法で、エチレンオキサイド単位数が200である片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−200を得た。
【0050】
また、市販の片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとして下記のものを用いた。
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−15:「デナコールEX−171」(商品名)、ナガセケムテックス株式会社製、エチレンオキサイド単位数=15
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−5:「エピオールBE−200」(商品名)、日油株式会社製、エチレンオキサイド単位数=5
【0051】
<実施例1>
[導電性弾性体層ローラの作製]
以下に示す原材料を加圧式ニーダーで15分間混練して、混合物を得た。
エピクロルヒドリン系原料ゴムA 100質量部
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50(製造例1で作製)10質量部
酸化亜鉛 5質量部
炭酸カルシウム 60質量部
ハイドロタルサイト 3質量部
ステアリン酸 1質量部
第4級アンモニウム塩 2質量部
【0052】
この混合物と下記原材料を20℃に冷却したオープンロールにて10分間混練して、本実施例に用いる導電性弾性体層用コンパウンドを得た。なお、表1に該コンパウンドの配合をまとめて示した。
ジチオール化合物A 0.5質量部
TS 1質量部
硫黄 0.8質量部
【0053】
続いて、導電性支持体としてΦ6mm、長さ252.5mmの鉄製の円柱に、熱硬化性接着剤「メタロックU−20」(商品名、株式会社東洋化学研究所製)を塗工し、乾燥したものを用意した。
【0054】
この導電性支持体とともに、上記導電性弾性体層用コンパウンドをクロスヘッド押出成型機にて押し出し、外径が約9mmのローラ形状になるように成型した。次いで、160℃の電気オーブンの中で1時間加熱し、加硫及び接着剤を架橋した。ゴムの両端部を切り取り、導電性支持体を露出させると共に、導電性弾性体層長さを228mmとした。その後、外径が8.5mmのローラ形状になるように表面を研削して導電性弾性体層ローラを得た。
【0055】
[表面層用塗料の調製]
以下の材料を混合して得た混合溶液を分散メディアとして平均粒子径0.8mmのガラスビーズの入ったガラス瓶に入れ、ペイントシェーカー分散機にて60時間分散し、その後、ガラスビーズをろ過して、表面層用塗料を得た。
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液(固形分70質量%)100質量部
ブロックイソシアネートIPDI 22.5質量部
ブロックイソシアネートHDI 33.6質量部
カーボンブラック 20質量部
変性ジメチルシリコーンオイル 0.16質量部
球状アクリル樹脂粒子 6質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 328質量部
【0056】
[表面層の形成]
上記で作製した導電性弾性体層ローラの表面に表面層用塗料をディッピング塗工した後、常温で30分間、電気オーブンにて80℃で1時間、さらに160℃で1時間加熱して、表面層用塗料を架橋した。このようにして、導電性支持体上に導電性弾性体層及び表面層を有する電子写真用導電性弾性部材を得た。
【0057】
[エピクロルヒドリン単位の塩素原子が置換されていることの分析]
作製した導電性弾性体層ローラの導電性弾性層を、表面層を設ける前に、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの抽出率、マイクロ硬度、IR、NIR、ラマン分光法、固体高分解能13C NMRによって分析した。その結果、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドがジチオール化合物によって結合していることが確認できた。なお、本実施例においてエピクロルヒドリン単位の塩素原子が置換された構造は表2に示すものであった。なお、マイクロ硬度は下記により評価した。さらに、各種分析に用いた装置は下記の通りであった。
【0058】
[導電性の評価]
導電性弾性体層ローラの導電性弾性層の導電性は、導電性弾性体層用コンパウンドを厚さ2mmに成形し、ローラ作製条件と同じく160℃で1時間硬化して得られた厚さ2mmのシートを用い、体積導電率を測定した。なお、体積導電率の測定は、JIS K6271:2001の二重リング電極法による体積抵抗率の測定に準じた。23℃50%RHの環境において、直径10mmの電極間に−200Vの電圧を印加し、5箇所の電流値を測定し、その平均値を当該導電性弾性層の体積導電率(S/cm)とした。
【0059】
[マイクロ硬度の評価]
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドは、樹脂を可塑化する効果がある。そのため、ゴムに結合していないと弾性体層の硬度が下がる傾向にある。そのため、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとが結合していることの指標の一つとして、マイクロ硬度を用いることができるので、該マイクロ硬度も評価した。
【0060】
なお、導電性弾性体層のマイクロ硬度の評価は、導電性の評価で作製したサンプルを、微小領域ゴム硬さ計(商品名「アスカー マイクロゴム硬度計 MD−1型」、高分子計器株式会社製)で測定することによった。なお、本発明では、23℃/55%RH環境に12時間以上置いたサンプルを、10Nのピークホールドモードで測定した。
【0061】
[耐久画像評価(横スジ状の画像ムラ)]
作製した電子写真用導電性弾性部材を、図2に示す構成を有する電子写真装置「カラーレーザージェット3800」(商品名、HP株式会社製)のブラックカートリッジに帯電ローラとして装着して、横スジ状の画像ムラを評価した。なお、この電子写真装置は、市販品を記録メディアの出力スピードが200mm/secになるよう改造して使用した。画像の出力環境は、15℃/10%RH環境とした。また、耐久時の画像出力条件としては、A4紙の画像形成領域の1面積%にランダムに印字させ、1枚画像を出力すると電子写真装置を停止し、10秒後にまた画像形成動作を再開するという動作を繰返した。画像出力耐久試験は3万枚とした。
【0062】
横スジ状の画像ムラは、帯電ローラによる直流電圧を印加する接触帯電方式で、画像出力のプロセススピードが速い時に、耐久試験の後半になると、また、エピクロルヒドリン系ゴムのようなイオン伝導ゴムの場合には、低温低湿環境において発生しやすい。そのため、1枚出力後に10秒間休止する試験条件を用いた。
【0063】
3万枚耐久後に、評価用画像として、ハーフトーン画像(電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く、中間濃度の画像)を1枚出力し、下記基準で評価した。
A:横スジ状の画像ムラなく、実用上問題なし。
B:実使用上問題のない程度の軽微な横スジ状の画像ムラがある。
C:目立った横スジ状の画像ムラがある。
【0064】
本実施例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとしてエチレンオキサイド単位数が50であるものを用いている。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドに由来するエチレンオキサイド単位が結晶化することがなく、高い導電率が達成された。評価結果を表3に示す。
【0065】
[高温高湿放置評価(当接部の横帯状の画像ムラ)]
作製した電子写真用導電性弾性部材を、電子写真装置「カラーレーザージェット3800」(商品名)のブラックカートリッジに帯電ローラとして装着し、帯電ローラが常に感光体に当接した状態で、40℃/95%RH環境の恒温恒湿槽に1ヶ月放置した。その後、このカートリッジを恒温恒湿槽から取り出し、記録メディアの出力スピードが200mm/secになるよう改造した上記電子写真装置に装着して、23℃/50%RH環境においてハーフトーン画像を出力し、当接部の横帯状の画像ムラを評価した。
【0066】
当接部の横帯状の画像ムラは、帯電ローラによる直流電圧を印加する接触帯電方式で、画像出力のプロセススピードが速いと発生しやすい。また、エピクロルヒドリン系ゴムのようなイオン伝導ゴムの場合には、高温高湿環境において、分子運動性が高くなり、含まれる材料の偏在が生じるため、画像ムラの発生が加速される。そのため、40℃/95%RH環境の恒温恒湿槽に1ヶ月放置するという試験条件を用いた。
【0067】
出力したハーフトーン画像において、帯電ローラと感光体との高温高湿放置中の当接部に対応する位置に、横帯状の画像ムラが発生するか否かを下記基準で評価した。
A:当接跡が見られず、実用上問題なし。
B:実使用上問題のない程度の軽微な横帯状の当接跡が見られる。
C:目立った横帯状の当接跡がある。
【0068】
本実施例では、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合している。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの、応力と温度による感光体との当接部への偏在は認められず、当接部の導電率には変化がなかった。評価結果を表3に示す。
【0069】
<実施例2>
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50に替えて、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−15を10質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1に、本実施例の導電性弾性体層用コンパウンドの配合を、表2にエピクロルヒドリン単位の塩素原子が置換された構造を、また、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。本実施例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとしてエチレンオキサイド単位数が15であるものを用いている。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド由来のエチレンオキサイド単位が結晶化せず、高い導電率が達成された。しかし、エチレンオキサイド単位数が15であるため、実施例1に比較して導電性が低かった。また、本実施例でも、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合している。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの、応力と温度による感光体との当接部への偏在は認められず、当接部の導電率には変化がなかった。
【0070】
<実施例3>
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50に替えて、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−100(製造例2で作製)を10質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1に本実施例の導電性弾性体層用コンパウンドの配合を、表2にエピクロルヒドリン単位の塩素原子が置換された構造を、また、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。本実施例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとしてエチレンオキサイド単位数が100であるものを用いた。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド由来のエチレンオキサイド単位が結晶化せず、高い導電率が達成された。しかし、エチレンオキサイド単位数が100であるため、実施例1に比較して導電性が低かった。また、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合している。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの、応力と温度による感光体との当接部への偏在は認められず、当接部の導電率には変化がなかった。
【0071】
<比較例1>
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50を配合しない以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1に、本比較例の導電性弾性体層用コンパウンドの配合を、また、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。本比較例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが配合されていないので、エチレンオキサイド単位が不足し、高い導電率が得られなかった。しかし、本比較例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドを含有しないので、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが移行することによる当接部の導電率の変化は認められず、高温高湿放置評価はAであった。
【0072】
<比較例2>
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50の替わりに、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−5を10質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1に、本比較例に用いた導電性弾性体層用コンパウンドの配合を、表2にエピクロルヒドリン単位の塩素原子が置換された構造を、また、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。本比較例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドのエチレンオキサイド単位数が5と短く、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドを添加したにかかわらず、導電率が十分改善されず、耐久画像評価がCであった。しかし、本比較例では、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合している。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの、応力と温度による感光体との当接部への偏在による当接部の導電率の変化は認められなかった。
【0073】
<比較例3>
片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50単位の替わりに、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−200(製造例3で製造)を10質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1に、比較例3の導電性弾性体層用コンパウンドの配合を、表2にエピクロルヒドリン単位の塩素原子が置換された構造を、また、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。本比較例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドのエチレンオキサイド単位数が200と大きくて、導電率が改善されず、耐久画像評価がCであった。しかし、本比較例では、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合している。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが、応力と温度によって感光体との当接部に偏在することはなく、当接部の導電率が変化することがなかった。従って、高温高湿放置評価はAであった。
【0074】
<実施例4乃至6>
ジチオール化合物Aの替わりに、それぞれジチオール化合物B、ジアミン化合物(フェニレンジアミン:試薬)又はジアミン化合物(ヘキサメチレンジアミン:試薬)を0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1にはこれらの実施例の導電性弾性体層用コンパウンドの配合を示す。また、表2にはエピクロルヒドリン単位中の塩素原子が置換された構造を、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。これらの実施例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとしてエチレンオキサイド単位数が50であるものを用いている。そのため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド由来のエチレンオキサイド単位が結晶化することがなく、高い導電率が達成された。一方、これらの実施例に用いたジチオール化合物Bおよびジアミン化合物は、実施例1に比較しての立体障害が小さいため、導電性がやや劣る傾向があった。そして、実施例6は、用いたジアミン化合物が鎖状化合物であるためエチレンオキサイド単位が部分的に結晶化して耐久画像評価がBとなった。また、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合しているので、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの、応力と温度による感光体との当接部への偏在は認められず、当接部の導電率には変化がなかった。
【0075】
<比較例4>
ジチオール化合物Aを配合しない以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1に比較例4の導電性弾性体層用コンパウンドの配合を、また、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。本比較例では、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの抽出率が高く、マイクロゴム硬度も低く、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合していなかった。しかし、エチレンオキサイド単位数が50である片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドを含有しているため高い導電率が達成された。しかし、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが、応力と温度によって感光体との当接部に偏在し、当接部での導電率の変化が大きかった。
【0076】
<実施例7>
実施例1において、エピクロルヒドリン系原料ゴムAをエピクロルヒドリン系原料ゴムBに替え、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド−50及びジチオール化合物Aの添加量をそれぞれ25質量部、2質量部に増やし、硫黄を添加しなかった。それら以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電性弾性部材を作製した。表1に実施例7の導電性弾性体層用コンパウンドの配合を、表2にエピクロルヒドリン単位の塩素原子が置換された構造を、また、表3に得られた電子写真用導電性部材の評価結果を示す。本実施例7でも、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドとしてエチレンオキサイド単位数が50であるものを用いているため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイド由来のエチレンオキサイドが結晶化することがなく、高い導電率が達成された。また、実施例7では、エピクロルヒドリン系原料ゴムと片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドが結合しているため、片末端エポキシ化ポリエチレンオキサイドの、応力と温度による感光体との当接部への偏在は認められず、当接部の導電率には変化がなかった。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【符号の説明】
【0080】
11 導電性支持体
12 導電性弾性体層
13 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体から選ばれる一方又は両方のゴムを含む導電性弾性体層を有する電子写真用の導電性弾性部材であって、
該ゴムは、下記式(1)で示される基によって単位中の塩素原子が置換されてなるエピクロルヒドリン単位を有することを特徴とする導電性弾性部材。
【化1】

(式(1)中、Xは−S−又は−NH−であり、Dは2価の有機基であり、Rは水素又は炭素数1以上20以下の炭化水素であり、nは15以上100以下の整数である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−14048(P2012−14048A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151925(P2010−151925)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】