説明

電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置

【課題】 帯電部材表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制して、それによる画像劣化の問題の解消を図り得る電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置提供。
【解決手段】 アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有し、かつ、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満である弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真現像方式を利用した複写機やプリンター等の電子写真画像形成装置に用いられる帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置において、感光ドラム(像担持体)に接触させた帯電ロール(接触帯電部材)に、電源を用いて帯電電圧を印加することによって感光ドラム表面を所定の電位に均一に帯電する帯電装置が知られている。
【0003】
そして、そのような帯電ロールは、軸体(芯金)の外周面上に、カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を添加した導電性を有するソリッド構造のゴム組成物やスポンジ構造の発泡体を用いて形成された導電性弾性体層が所定の厚さで設けられている。
【0004】
このような帯電装置においては、感光ドラム表面に付着している転写残トナー等のトナーや外添剤が転移して帯電ロール表面に付着し、固着したりすると、帯電不良が発生し画質劣化が問題となる。
【0005】
その防止策として、例えば、帯電ロールが感光ドラムの回転によって従動回転することに基づき、帯電ロール表面と感光ドラム表面との摺擦により帯電ロール表面の汚れを感光ドラム表面に転移させる方法や、帯電ロール表面にスポンジ等のクリーニング部材を軽く押し当てて汚れを払拭する方法等が行われているが、前者はトナーや外添剤の除去性が不十分であり、後者は帯電ロールを傷つける恐れがある。
【0006】
また、帯電ロールに付着した正極性の帯電トナーを除去すべく、転写ロールに負極性の電圧を印加して感光ドラムを負極性に帯電し、更に帯電ロールに正極性の電圧を印加し、正極性の帯電ロールと負極性の感光ドラムとの間に強い電界を形成して、帯電ロール上の正極性の帯電トナーを感光ドラムに転移させる方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
さらに、帯電ロールの保護層としてフッ素変性アクリレート系樹脂及びフッ素化オレフィン系樹脂と共に、トナーのバインダ樹脂よりも高いガラス転移温度を有する非(フッ素変性)アクリレート系樹脂を更に含む樹脂組成物を用いて、形成せしめ、ロール表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制あるいは阻止する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−161500号公報
【特許文献2】特開2001−154456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された方法では、消費電力の増加や装置の大型化を伴うという問題がある。
【0009】
また、上記特許文献2に開示された方法では、フッ素系樹脂を使用するため、環境に対する負荷が懸念される。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯電部材表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制して、それによる画像劣化の問題の解消を図り得る電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、以下のような構成により達成される。
(請求項1)
アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有し、かつ、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満である弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材。
(請求項2)
前記弾性体層における前記少なくとも1つの塩の含有率は、0.1質量%以上10質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項3)
前記弾性体層は、体積固有抵抗が102Ω・cm未満の導電性粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項4)
前記導電性粒子は、有機化合物を窒素雰囲気下において800℃の温度で熱処理したときの残存率が20質量%以上95質量%以下である有機化合物由来の導電性粒子であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項5)
前記導電性粒子は、前記有機化合物を非酸化性雰囲気下において800℃以上の温度で熱処理することにより得られた導電性粒子であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項6)
前記有機化合物が、前記熱処理により易黒鉛化炭素を生成する有機化合物であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項7)
前記弾性層は、エーテル結合を含む化合物を0.5質量%以上10質量%未満の含有率で含有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項8)
前記電子写真用帯電部材が電子写真用帯電ロールであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項9)
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材を用いたことを特徴とする電子写真画像形成装置。
(請求項10)
前記電子写真用帯電部材は、被帯電体に接触して帯電させることを特徴とする請求項9に記載の電子写真画像形成装置。
【0012】
本発明者らは、以下のように考え本発明に至った。
【0013】
本発明者らは、鋭意研究の結果、弾性体層の低周波領域におけるインピーダンスの絶対値が、トナーや外添剤の付着に影響を与える大きな因子であることを見いだした。
【0014】
すなわち、アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有し、かつ、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満である弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材を用いることにより、帯電部材表面へのトナーや外添剤の付着を抑制できることを見いだし、本発明に至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明の帯電部材によれば、帯電部材表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制し、帯電部材が汚れにくくなり、良好な画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0017】
<電子写真画像形成装置>
まず、本発明に係る帯電部材を用いた電子写真画像形成装置について説明する。本例では、帯電部材として帯電ロールを、被帯電体として感光体を用いた例を示す。
【0018】
図1は本発明の電子写真画像形成装置の一例を示す断面構成図である。4は被帯電体である感光体ドラムであり、アルミニウム製のドラム基体の外周面に感光体層である有機光導電性(OPC)を形成してなるもので矢印方向に所定の速度で回転する。
【0019】
図1において、図示しない原稿読み取り装置にて読み取った情報に基づき、半導体レーザ光源1から露光光が発せられる。これをポリゴンミラー2により、図1の紙面と垂直方向に振り分け、画像の歪みを補正するfθレンズ3を介して、感光体面上に照射され静電潜像を作る。感光体ドラム4は、あらかじめ帯電ロール5により一様帯電され、像露光のタイミングにあわせて時計方向に回転を開始している。
【0020】
感光体ドラム面上の静電潜像は、現像器6内の負帯電トナーにより現像され、形成された現像像はタイミングを合わせて搬送されてきた転写体8に転写器7の作用により転写される。さらに感光体ドラム4と転写体8は分離器(分離極)9により分離されるが、現像像は転写体8に転写担持されて、定着器10へと導かれ定着される。
【0021】
感光体面に残留した未転写のトナー等は、クリーニングブレード方式のクリーニング器11にて清掃され、帯電前露光(PCL)12にて残留電荷を除き、次の画像形成のため再び帯電ロール5により、一様帯電される。
【0022】
14はこの帯電ロール5に電圧を印加する電源部で、所定の電圧を帯電ロール5の軸体(芯金)51に供給する。印加電圧は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。
【0023】
また、帯電ロールと電子写真感光体との間に加えられる力学的圧力は、帯電ロールの感光体への当接圧は5〜500Paに、電気的負荷は、帯電ロールに印加される直流電圧は絶対値200〜900Vに、交流電圧を印加する場合はピーク−ピーク電圧500〜5,000Vp−p、周波数50〜3,000Hzに、各々調整されることが望ましい。たとえば、印加される電圧は感光体に対する帯電開始電圧値の2倍以上のピーク間電圧値を有しているものが好ましい。
【0024】
帯電ロールは、面移動駆動される感光体に従動駆動させてもよいし、非回転のものとさせてもよいし、接触部における感光体の面移動方向に順方向又は逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。
【0025】
尚、転写体は代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に限定されず、OHP用のPETベース等も無論含まれる。
【0026】
又、クリーニングブレード13は、厚さ1〜30mm程度のゴム状弾性体を用い、材質としてはウレタンゴムが最も良く用いられる。これは感光体に圧接して用いられるため熱を伝え易く、解除機構を設け、画像形成動作を行っていない時には感光体から離しておくのが望ましい。
【0027】
<帯電ロール>
次に、本発明に係る帯電ロールについて詳細に説明する。
【0028】
以下、アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有し、かつ、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満であるゴム層(弾性体層の一例)を有する帯電ロールを例に挙げて説明する。
【0029】
本発明に係る帯電ロール5は、ステンレス鋼棒から成る軸体(芯金)51と、その外周にアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つの金属を含む塩を含有し、かつ、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満であるゴム層からなる弾性体層52とから構成されている。
【0030】
また、弾性体層は、ゴム層以外にポリウレタン等の発泡体層を用いることができる。
【0031】
また、帯電ロールは、本発明の目的を達成できれば、本発明の弾性体層を1層設けたものでも良く、また、この層以外に他の弾性体層を複数組み合わせても良い。
【0032】
本発明では弾性体層の組み合わせについて特に制限を加えないが、好ましくは、本発明の弾性体層が最外層もしくは外側から第二層目までに設置するのが、汚れ防止効果を高める点で好ましい。例えば、本発明の弾性体層の上に、抵抗調整層や保護層を設けても良い。
【0033】
本発明の帯電ロールは、新たな評価法を導入し材料設計を行い、導電性と帯電性のバランスを制御したゴム層の存在で、驚くべきことに、帯電性能を維持した上でロール表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制することができた。すなわち本発明の帯電ロールは、アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有し、かつ、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満である弾性体層を有する。トナーの付着や外添剤の付着の抑制メカニズムは、明確にはなっていないが、トナーや外添剤と帯電ロールとの間で静電反発が生じているものと推測される。
【0034】
アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。また塩を構成するものとしては、塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0035】
本発明では、以下の新しい測定法で得られた値を用いて材料設計を行ったところ、帯電ロールの帯電性能を犠牲にしないで、汚れの障害を克服し本発明を完成させた。
【0036】
インピーダンスの絶対値は次に述べる方法で再現良く測定できる。
【0037】
測定試料の厚みは、好ましくは0.5mm未満でさらに好ましくは0.2mm未満であるが、測定時に厚みを補正すれば1mm未満である限り再現性が良い。1mm以上では、誤差が大きくなり、また極端に薄いと測定時にシワになり、測定誤差を大きくする。ゆえに最低でも0.02mm以上は必要で、好ましくは0.1mm以上である。
【0038】
すなわち本発明の帯電ロールに用いる弾性体層を厚さ0.02mm以上1mm未満のシート状に成型して測定用試料とする。
【0039】
装置に関しては、電子部品の誘電率測定に用いる周波数1Hz以上の測定が可能なインピーダンス測定装置と、シート測定用電極を組み合わせた装置である。具体的には、横河・ヒューレット・パッカード社製(以下YHP社製)プレシジョンLCRメーターHP4284AとHP16451Bの組み合わせである。
【0040】
この装置の組み合わせで更に20Hzにおけるインピーダンスの絶対値を求める一例を詳細に記す。平行な平面で構成される二電極とガード電極を有するHP16451Bの接続されたプレシジョンLCRメータHP4284Aを用い、23℃、20%RH雰囲気下で、空隙法によりシート材料のインピーダンスの絶対値を計測する。空隙法の測定に関しては、HP16451Bの取り扱い説明書に記載された電極非接触法に従う。サンプルの大きさについては、電極平面よりも大きければ特に制限は無いが、主電極の直径が3.8cmの場合には、大きさ5cm×5cmから6cm×6cmの正方形サンプルが好ましい。サンプルの直流電流を用いて測定された表面比抵抗の大きさが、表裏で等しければ、どちらの面を上方にしてもよいが、表裏で等しくなければ、表面比抵抗の値が低い面を上方に向け、平行な平面で構成される二電極間にサンプルを設置し交流電圧をかけながら空隙法で計測する。
【0041】
ここで、面積が11から12cm2の電極を用いて測定した周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満であることが必要である。本発明の効果をより顕著に発揮させるためには、好ましくは8×103Ω未満、更に好ましくは1Ω以上8×103Ω未満である。
【0042】
弾性体層の一例であるゴム層におけるアルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩の含有率((アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩の総質量×100)/(母体であるゴム層の質量))であるが、多く含有させると帯電ロールの表面にブリードアウトし、感光体ドラムを汚染する原因となるので、含有率は10質量%未満が好ましく、5質量%未満がさらに好ましい。2質量%未満であれば湿度が高い環境下でも問題発生が無いので好ましい。また、本発明の効果をより顕著に発揮させるためには、0.1質量%以上が好ましく、さらに好ましくは0.5質量%以上である。
【0043】
帯電ロールにおけるアルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有したゴム層からなる弾性体層52の体積固有抵抗としては、帯電性能とリーク防止の観点から103Ω・cm〜1011Ω・cmのものが好ましい。
【0044】
アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有した弾性体層の体積固有抵抗は、以下の方法で測定できる。
【0045】
アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有したゴムを1辺5cmの立方体に切り出し、140℃に加熱した平板プレスで107Paの圧力をかけ20分間放置してシート状にする。このシートの中間部分を1cmの幅で切り出して体積固有抵抗測定用の試料とする。試料の厚みはゴムの密度で異なるので厚さ計で計測する。1cm×5cmの短冊状に切り出された試料表面にドータイトを用いて直径0.2mm長さ4cmの銅線を4本接着し十分に乾燥する。このように形成された電極を用いて、25℃50%RHの温湿度に調整された環境下で、4端子法により体積固有抵抗を測定する。
【0046】
本発明の帯電ロールのゴム材料には、ゴム層の体積固有抵抗を調節するために、体積固有抵抗が102Ω・cm未満の導電性粒子をゴムに含有させてることが好ましい。同一の材料で構成されていても、異質の材料との組み合わせであってもよい。
【0047】
弾性体層の一例であるゴム層における導電性粒子の含有率((導電性粒子の総体積×100)/(母体であるゴム層の体積))であるが、帯電ロールの力学物性を考慮すると30体積%以下が好ましい。ゴムの耐久性を重視すれば20体積%以下が良い。また、本発明の効果をより顕著に発揮させるために、導電性粒子は1体積%以上が好ましい。
【0048】
インピーダンスの絶対値でその組成は制御されるが、必要に応じて、本発明の範囲内で架橋剤、界面活性剤、マット材、劣化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など他の成分を添加しても良い。
【0049】
導電性粒子の体積固有抵抗は、錠剤に成型した後、25℃50%RHの温湿度に調整された環境下で、2端子法により計測する。錠剤の作製方法については錠剤成型器で成型後、108Pa以上の静水圧加圧をかけて作製する。5×108Pa以上の静水圧加圧をかけてもよいがあまり圧力が高すぎると、ラバーモルドから離型しにくくなるので、好ましくは、5×108Pa未満である。また、より好ましくは3×108Pa以下である。
【0050】
また、導電性粒子は、体積固有抵抗のコントロールと製造の容易性、コストから、有機化合物を窒素雰囲気下において800℃の温度で熱処理したときの残存率((熱処理後の残渣物の質量×100)/(熱処理前の有機化合物の質量))が20質量%以上95質量%以下である有機化合物由来の導電性粒子であることが好ましい。残存率が20質量%以上であることが製造コストを下げられる点で特に重要である。また、95質量%以下であることは、有機化合物を炭化する点において重要である。
【0051】
具体的には、この導電性粒子は、前記有機化合物を非酸化性雰囲気下において800℃以上の温度で熱処理することにより得られる。非酸化性雰囲気下としては、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下が挙げられる。また、還元炎雰囲気下で有機化合物を熱処理(焼成)してもよい。
【0052】
有機化合物の残渣物の質量は、窒素雰囲気下における熱質量分析法(以下TGA)で測定する。昇温速度10℃/分で800℃まで測定し、800℃における残渣物の質量を読み取る。また試料は一度空気中100℃で60分加熱処理を行ったものを用いる。
【0053】
本発明で用いる有機化合物は、有機材料の中でも窒素雰囲気下800℃で熱処理したときに、(熱処理後の炭素の質量×100)/(熱処理前の有機化合物の質量)が20質量%以上の炭素を生成できる有機化合物が好ましく、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上が、また40質量%以上の炭素を生成する有機化合物であれば最も好適である。炭素生成量が多いほど、導電性粒子の体積固有抵抗のコントロールが容易になる。
【0054】
本発明に用いることが可能な有機化合物は、800℃の残存率が満たされれば、どのような有機化合物でも用いることが可能であるが、例えば、液相ではピッチ、コールタールあるいはコークスとピッチの混合物などが用いられ、固相では木質原料、フラン樹脂、フェノール樹脂、セルロース、ポリアクリロニトリル、レーヨンなどの架橋物が用いられる。炭素質材料は大別すると、石油ピッチなどを出発原料とし、一般的には2000℃以上の高温で熱処理し、発達したグラファイト構造を有する、いわゆる易黒鉛化炭素材料と、フェノール樹脂やフラン樹脂を始めとする熱硬化性高分子を出発原料として、2000℃以下の比較的低温で熱処理し、乱層構造を有する、いわゆる難黒鉛化炭素材料とがある。
【0055】
本発明では、発明の目的を損なわない限りどちらの炭素材料でもよいが、体積固有抵抗を低くできる点から好ましくは易黒鉛化炭素材料が選ばれる。
【0056】
易黒鉛化炭素材料は、易黒鉛化炭素を生成する有機化合物を前述のように非酸化性雰囲気下で熱処理することにより得られる。
【0057】
また、有機高分子材料、とりわけフェノール樹脂を用いることにより、多孔質の導電性粒子を容易に得ることができ、ゴムなどの弾性層を構成する材料と導電性粒子の界面の表面積の増加により、架橋点が増加して、導電性粒子を含有するゴムなどの弾性層の強度を向上させることが可能になる。
【0058】
本発明に好適に用いられるフェノール樹脂とは例えばフェノールの他にアルキルフェノール類や他の置換フェノール類、多価フェノール類とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを原料とし、一般に知られている常法により酸性触媒下(ノボラック型)あるいはアルカリ触媒下(レゾール型)において反応せしめて得られるものである。
【0059】
本発明では有機化合物をあらかじめ繊維状に成型後、前述の熱処理による炭化プロセスを経て導電性粒子を得ることが好ましい。また、延伸しながら炭化を進め繊維状物としても良い。
【0060】
ただし、炭化する際の熱処理温度については、800℃以上が好ましくさらに好ましくは1200℃以上である。2000℃以上でも好ましいが3000℃以上の温度は経済的に好ましくない。この熱処理温度までの昇温速度および熱処理温度の保持時間は処理する炭素材料の形状や組成で異なるので特に制限をしないが、昇温速度は1℃/分以上50℃/分未満が、保持時間は1分以上24時間未満が好ましい。また、熱処理後に粉砕、分級などのプロセスを行なっても良い。
【0061】
ゴムに関しては本発明では特に制限を加えない。一般のゴム製品に使用可能なものであれば何でも良く、また組成は複数のゴムをブレンドしたものでも何でも良い。
またアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つの金属を含む塩とゴムとの混合方法も特に制限しない。
【0062】
また、ゴム層に、エーテル結合を含む化合物を0.5質量%以上10質量%未満の含有率((エーテル結合を含む化合物の質量×100)/(母体であるゴム層の質量))で含有させるとアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含む塩のブリードアウトをより効果的に防止できるので好適である。エーテル結合を含む化合物については、主鎖がエーテル結合で構成された、ポリエーテル系高分子でも、側鎖にポリエーテル基がグラフトされた高分子でも何でもよく、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含む塩のブリードアウト防止を効果的に行うために分子量は質量平均分子量で500以上が好ましく、結晶化に伴うゴムの相分離を回避するために30万未満の分子量が選ばれる。混練時の粘度も考慮すると10万未満が好ましく、ブリードアウトも生ぜずプロセス適性も良好で最も好ましい範囲は、1000以上10000未満である。
【0063】
上記実施形態では、帯電部材として帯電ロールの例を示したが、ロールタイプ以外にも
ブレード状タイプやロッド状タイプ、ベルト状タイプなどの帯電部材にも本発明は適用可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、帯電ロールが被帯電体である感光体に接触して感光体を帯電させる例を示したが、本発明の帯電部材に対する被帯電体は、感光体に限られるものではなく、例えば、被帯電体である転写材を帯電させる転写部材(例えば転写ロール)などにも適用可能である。
【実施例】
【0065】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
<導電性粒子1の製造>
直径10cmのアルミナ製円筒の一端にガスバーナーをとりつけ還元炎領域が最も広くなる条件で燃焼を行う。この還元炎領域に、粘度8000poiseの重油を1ml/sの割合で添加してススを発生させる。この状態で運転を行い、生成するススを回収して導電性粒子1を製造した。ススは凝集粒子として得られ、その平均粒径0.2μm、体積固有抵抗2x10-2Ω・cmだった。
<導電性粒子2の製造>
フェノール1.2kg、50%ホルマリン0.6kg、蓚酸3.5gを3リットルのフラスコに仕込み、還流温度で4時間反応させた後、さらに加熱下で真空脱水濃縮を行い軟化点110℃の未硬化ノボラック樹脂1kgを得た。未硬化ノボラック樹脂50gを加熱溶融させ、攪拌して未硬化ノボラック樹脂を得た。
【0066】
この未硬化ノボラック樹脂をホルムアルデヒドと塩酸を主成分とした硬化水溶液中に、水溶液の粘度が300poiseに増粘するまで滴下する。この硬化水溶液を0.5℃/分の速度で95℃まで昇温後、8時間保持して濾別後乾燥し、硬化ノボラック樹脂を得た。得られた粉体を窒素雰囲気下で熱質量分析を行い、800℃における残渣物の質量を求め、残存率を求めたところ48質量%であった。
【0067】
この樹脂を、窒素雰囲気1000℃で熱処理を行い炭素粉を得た。この炭素粉をジェットミル粉砕し、導電性粒子2を製造した。この粒子の体積固有抵抗を測定したところ20Ω・cmであった。
(実施例1)
<帯電ロール1の作製>
下記の要領で本発明の、帯電ロール1を作製した。
{本発明ゴム層配合A}
エピクロルヒドリンゴム三元共重合体 100質量部
導電性粒子1 10質量部
硫酸ナトリウム塩 2質量部
酸化亜鉛 5質量部
脂肪酸 2質量部
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100質量部に対してセバシン酸系ポリエステル可塑剤5質量部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調製した。
【0068】
このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100質量部に対し加硫剤としての硫黄1質量部、加硫促進剤としてのノクセラーDM1質量部、ノクセラーTS0.5質量部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。得られたコンパウンドを、ステンレス製芯金の周囲にロール状になるように押出成型機にて成型し、加熱加硫成型した後に研磨処理した。
【0069】
得られたゴム層Aの体積固有抵抗は107Ω・cmであった。
【0070】
ここで得られたロールに表面層をつけて帯電ロール1とした。
【0071】
すなわち表面層の材料として、
アクリルポリオール溶液(有効成分70質量%) 100質量部
イソシアネートA(IPDI、有効成分60質量%) 40質量部
イソシアネートB(HDI、有効成分80質量%) 30質量部
導電性酸化錫(石原産業製) 90質量部
負荷電制御樹脂(CCR1) 12質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK)溶剤 340質量部
をミキサーを用いて攪拌し混合溶液を作製した。次いで、その混合溶液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理を行い、ディッピング用塗料を作製した。
【0072】
なお、上記のIPDIはイソホロンジイソシアナートを、HDIはヘキサメチレンジイソシアナートを意味する。
【0073】
このディッピング用塗料をロールの上にディッピング法にて膜厚が10μmになるように塗布して、10分間の風乾後に加熱型乾燥機にて、160℃で1時間乾燥させ、帯電ロール1を得た。
【0074】
また、ここで用いたコンパウンドの本発明ゴム層Aを帯電ロール1と同様の加硫条件にて、深さ0.2mm10cm角の鉄モールドを用いて加熱プレスを行い0.25mm10cm角のシートを得た。
【0075】
このシートのインピーダンスの絶対値を測定した。
<インピーダンスの絶対値測定方法>
インピーダンス測定に関しては、横河・ヒューレット・パッカード社製(以下YHP社製)プレシジョンLCRメーターHP4284AとHP16451Bの組み合わせを用いた。23℃20%RH雰囲気下で、空隙法によりシート材料のインピーダンスの絶対値を計測した。空隙法の測定に関しては、HP16451Bの取り扱い説明書(部品番号16451−97000,印刷1989年12月)に記載された電極非接触法に従う。主電極の直径が3.8cmの電極−Aを用いて、サンプルの大きさは、5.5cm×5.5cmの正方形に切り取った。
【0076】
得られた帯電ロールを、図1の電子写真画像形成装置に取付け、23℃/53%RHの環境下で、以下の条件で感光体を帯電させて、所定の画像を1000枚、連続的にプリントアウトした。
帯電条件
感光体当接圧;50g/cm,
帯電ロールに印加される直流電圧;−600V,交流電圧;2,000Vp−p,周波数;150Hz
画像評価とプリント後の帯電ロール上に付着しているトナー、外添剤の評価を行った。
<汚れと画像評価法>
(1.汚れ評価法)
汚れ評価は、帯電ロール表面へのトナーの付着性と外添剤の付着性により評価した。
【0077】
トナー付着性:帯電ロール上に付着しているトナーをテープ(3M社製、スコッチ・メンディングテープ)にて除去し、そのテープに転写された付着トナーの濃度を、目視で観察し評価した。
○:テープは透明のまま、全くトナーが転写されていない状態のもの。
△:テープにトナーが転写されている箇所が部分的に認められるもの。
×:テープ全面にトナーが転写された状態のもの。
【0078】
外添剤付着性:帯電ロール上に付着している外添剤の濃度を、目視で観察し評価した。
○:ロールは黒色外観のまま、又はうっすらと外添剤が載っている箇所が部分的に認められるに過ぎないもの。
△:ロール全面にうっすらと外添剤が載った状態のもの。
×:ロール全面に外添剤が載った状態のもの。
【0079】
この付着性評価で、トナー付着性、外添剤付着性の両方において、○が2つの場合は◎、○と△の組み合わせは○、○と×の組み合わせは△、○が無い場合は×とした。
【0080】
(2.画像評価法)
○:画像が良好のもの。
△:トナーや外添剤が帯電ロールに付着したために発生した画像の乱れが、画像の一部に見られたもの。
×:トナーや外添剤が帯電ロールに付着したために発生した画像の乱れが、画像の全体に見られたもの。
(実施例2)
実施例1において硫酸ナトリウム塩の代わりに炭酸カルシウム塩を用いた以外は同様の処理を行い帯電ロール2及びインピーダンス評価用シートを作成し、同様に評価した。
【0081】
得られたゴム層Aの体積固有抵抗は107Ω・cmであった。
(実施例3)
実施例1において、本発明ゴム層Aに、さらに質量平均分子量1000のポリエーテルを5質量部添加した以外は同様の処理を行い帯電ロール3及びインピーダンス評価用シートを作成し、同様に評価した。
【0082】
得られたゴム層Aの体積固有抵抗は107Ω・cmであった。
(実施例4)
エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)に、加硫剤と発泡剤を配合し、混合した生ゴムを5mm厚で金属棒に塗布後、下記ゴム層配合Bを5mmまきつけ加熱加硫成型した後に研磨処理し帯電ロール4を製造した。実施例1と同様にインピーダンス評価用シートを作成し、同様に評価した。
【0083】
得られたゴム層Bの体積固有抵抗は107Ω・cmであった。
{本発明ゴム層配合B}
エピクロルヒドリンゴム三元共重合体 100質量部
導電性粒子2 10質量部
導電性酸化錫(石原産業製) 5質量部
四級アンモニウム塩 1質量部
酸化亜鉛 5質量部
脂肪酸 2質量部
(比較例1)
スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合樹脂(商品名:ダイナロン、日本合成ゴム社製)100質量部、ポリエチレン20質量部及びカーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC、ライオンアクゾ社製)80質量部をV型ブレンダーで数分間混合した。これを更に、加圧式ニーダーを用いて190℃で10分間溶融混練した。更に、冷却後、粉砕機で粉砕し、単軸押出し機でペレット化した。
【0084】
内部層の材料として、ポリウレタンエラストマー100質量部、酸化マグネシウム10質量部及びステアリン酸カルシウム1質量部を、外部層の材料と同様の工程でペレット化した。
【0085】
縦型押出し機を用いて、これらを一つのクロスヘッドで2重層となるように合流させ、適温の冷却水(4〜16℃)中に押出し、チューブと冷却サイジング壁の間隔が均一に近くなるようにサイジングの水平位置を調整し、更に冷却し引き取った。このチューブを切断したものを、金属ロールに嵌め込み、圧密着させた。
【0086】
外層材のゴム材料を用いて実施例1と同様にシートを作成し、インピーダンスと画像の評価を同様に行った。
【0087】
また、ケッチェンブラックECの体積固有抵抗は10-2Ω・cmであり、得られた外層のゴム層の体積固有抵抗は106Ω・cmであった。
【0088】
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめた。
【0089】
【表1】

【0090】
表1の実施例と比較例から、本発明の帯電ロールは、耐久試験において、汚れ、画像評価とも良好であり、本発明の目的を達成している。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
1 半導体レーザ光源
2 ポリゴンミラー
3 fθレンズ
4 感光体ドラム
5 帯電ローラー
51 軸体(芯金)
6 現像器
7 転写器
8 転写体
9 分離極
10 定着器
11 クリーニング器
12 帯電前露光(PCL)
13クリーニングブレード
14 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属を含む塩及びアルカリ土類金属を含む塩から選ばれる少なくとも1つの塩を含有し、かつ、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が5×105Ω未満である弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材。
【請求項2】
前記弾性体層における前記少なくとも1つの塩の含有率は、0.1質量%以上10質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項3】
前記弾性体層は、体積固有抵抗が102Ω・cm未満の導電性粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項4】
前記導電性粒子は、有機化合物を窒素雰囲気下において800℃の温度で熱処理したときの残存率が20質量%以上95質量%以下である有機化合物由来の導電性粒子であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項5】
前記導電性粒子は、前記有機化合物を非酸化性雰囲気下において800℃以上の温度で熱処理することにより得られた導電性粒子であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項6】
前記有機化合物が、前記熱処理により易黒鉛化炭素を生成する有機化合物であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項7】
前記弾性層は、エーテル結合を含む化合物を0.5質量%以上10質量%未満の含有率で含有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項8】
前記電子写真用帯電部材が電子写真用帯電ロールであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材を用いたことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真用帯電部材は、被帯電体に接触して帯電させることを特徴とする請求項9に記載の電子写真画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−350073(P2006−350073A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177511(P2005−177511)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】