説明

電子写真用転写紙

【課題】低密度(嵩高)でありながら、剛度などが良好で、なおかつフルカラー印字適性に優れ、高速の複写機やプリンター適性を有する、塗工タイプの電子写真用転写紙を提供する。特に、低坪量であっても良好なフルカラー印字適性や通紙性を有する電子写真用転写紙を提供する。
【解決手段】 キャビテーションによって発生させた気泡をパルプ懸濁液に接触させて処理したパルプを含有する原紙上に、顔料および接着剤を有する塗工層を片面あたり1〜20g/m塗工した電子写真用転写紙。本発明の転写紙は、低密度(嵩高)でありながら剛度が良好で、カラー印字適性に優れ、さらに、走行性、作業性などのコピー適性等に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低密度で嵩高な電子写真用転写紙に関し、さらに詳しくは、電子写真複写機やプリンターにおける、枚葉高速機の連続通紙性を満足すると共に、カラー印字性についても優れた性能を有し、本文用紙などに適した軽量な電子写真用転写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「地球温暖化」や「ゴミ焼却場からの有害成分放出(ダイオキシン問題)」等のように、地球環境に関する問題が各分野で注目を集めている。電子写真用転写紙についても例外ではなく、大手複写機メーカーやそのサプライ会社と製紙会社とが協力して、森林資源であるパルプなどを有効に活用することが積極的に進められている。
このような背景の中、近年、資源の有効活用を目的に、電子写真用転写紙などの情報記録用紙や印刷出版用紙への古紙パルプの配合率が急速に増加していることに加え、中国などへの輸出も増加している。従って、古紙の需給は逼迫し始めており、次第に紙種を選別した古紙の入手が困難な状況となってきている。このため、古紙パルプ高配合紙の品質維持が困難な状況に向かいつつある。
また、古紙パルプを高配合するのとは別に、資源を有効活用するためにパルプ使用量自体を低減するという方向もある。
【0003】
電子写真用転写紙等の使用量が年々増加していることに加え、収納スペースの有効利用の観点からも、単位容積当たりの記録面積を増大させることに対する要望は多い。これらの要望に応じるために、電子写真用転写紙等の軽量化が求められている。ここで軽量化とは、紙の厚さを維持しながら軽量化することを意味し、いわゆる低密度で嵩高な電子写真用転写紙とすることが求められている。
同一紙厚で、単位当たり重量が少なければ、当然パルプ使用量は減少する。このことは、電子写真用転写紙を保管する際や輸送する場合の重量減ともなり、輸送コスト削減や持ち運び時の利便性が向上するなどの利点もある。また、薄物化によって、単位容積当たりの情報記録面積が増大するためファイル資料等の収納スペース低減も可能である。
【0004】
従来から、用紙の嵩高化、すなわち低密度化を行うために、種々の方法が行われている。例えば、(1)架橋処理したパルプを用いる方法(特許文献1および特許文献2)、(2)合成繊維を混抄する方法(特許文献3)、(3)パルプ繊維間に無機物を充填する方法(特許文献4)、(4)空隙をもたらす発泡性粒子を添加する方法(特許文献5)、(5)軽度に叩解したパルプ繊維を配合する方法(特許文献6)、(6)嵩高薬品を添加する方法(特許文献7)、(7)パルプをマーセル化処理する方法(特許文献8)、(8)パルプを酵素で処理する方法(特許文献9)などが提案されている。
【特許文献1】特開平4−185791号公報
【特許文献2】特開平4−202895号公報
【特許文献3】特開平3−269199号公報
【特許文献4】特開平3−124895号公報
【特許文献5】特開平5−230798号公報
【特許文献6】特開昭58−24000号公報
【特許文献7】特開平11−350380号公報
【特許文献8】特開平7−189168号公報
【特許文献9】特開平7−54293号公報
【0005】
しかしながら、上記の方法では嵩高が十分でない場合や、嵩高になるものの強度が低下したり、剛度が低下するなどの問題があった。従って、このような方法によって、低密度で嵩高な電子写真用転写紙等が得られた場合には、紙の剛度やサイズ度が低下する結果、走行性や作業性などの作業適性等に劣るという問題があった。
【0006】
一方、電子写真方式の複写機やプリンターで、小判断裁紙を使用する技術は近年著しく進歩し、1分間に135〜180枚の通紙速度を誇る高速機種も開発されている。
小判断裁紙(以下「枚葉紙」ともいう)を使用するメリットとしては、用紙の種類やサイズを変更しやすい、製本するにあたり断裁する手間がいらず、且つ断裁ゴミが出ない等が挙げられる。
【0007】
電子写真方式の複写機やプリンターは、オンデマンド印刷と呼ばれるマニュアル類や、自費出版などの数千部以下の小ロット印字に適した方式である。そのため顧客の要望に細かく対応できる枚葉紙を使用する複写機やプリンターが適している。しかしながら、枚葉紙を使用する複写機やプリンターは、連続紙を使用する場合に比べて高速化が図り難いという欠点がある。枚葉紙を使用する複写機やプリンターの通紙は、枚葉オフセット印刷機の様に爪で用紙を掴んで通紙するのではなく、ロールやベルトに紙を挟んで順送りするため、通紙適性の低い(主にこわさの低い)用紙の場合には、ロール間での受け渡しが上手くできずに、ジャムと呼ばれる通紙不能の状態になりやすく、連続印字は困難となる。
【0008】
従来、高速枚葉電子写真方式の複写機やプリンターに対して適性のある用紙としては、上質紙が使用されてきた。しかしながら、前述したような自費出版等の広がりに伴う顧客からの幅広い要求に答えるために、印字性に優れた塗工紙タイプであって、高速複写機やプリンターでの連続印字が可能な用紙が要望されている。また、書籍用の本文用紙として使用する場合には、重量(坪量)と厚さが重要である。紙は1枚あたりの重量は軽微であるものの、書籍のように多数の集合体となるとかなりの重量物となる。特にコート紙を本文に使用した書籍は非常に重いため、軽くて薄いものが、求められている。
【0009】
顔料塗工タイプの電子写真用転写紙の従来技術としては、原紙上に、特定の粒径の顔料と接着剤を含む塗工層を設けた後平滑化処理を行い、中心線平均粗さ、表面電気抵抗あるいは紙間の静摩擦係数を特定範囲に調節した電子写真用転写紙が開示されている(特許文献10〜12)が、画質および通紙性において、未だ十分満足できるものではなかった。
【特許文献10】特開昭62−198875号公報
【特許文献11】特開昭62−198876号公報
【特許文献12】特開昭62−198877号公報
【0010】
また、坪量、塗工層の表面粗さ或はこわさを特定することによって、画像適性と通紙適性を改良することができることが開示されている(特許文献13)が、画質が未だ不十分であるのみならず、良好な高速走行性を得るには至っていない。
【特許文献13】特開2000−172001号公報
【0011】
以上のように、原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層を設けた塗工タイプの従来技術では、低密度(嵩高)で、走行性、作業性などのコピー時の作業適性に優れるだけでなく、高品質のフルカラー画像が得られると共に、特に、高速走行性も良好な、電子写真用転写紙を得ることは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の目的は、低密度(嵩高)でありながら剛度などが良好である上、フルカラー印字適性に優れ、高速複写機やプリンターにおける紙通適性をも有する、塗工タイプの電子写真用転写紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、キャビテーションによって発生させた気泡をパルプ懸濁液に接触させて処理したパルプを含有する原紙を使用することにより、低密度(嵩高)でありながら、剛度が良好でカラー印字適性に優れる上、走行性や作業性などのコピー時の作業適性等に優れた電子写真用転写紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、キャビテーションによって発生させた気泡をパルプ懸濁液に接触させて処理したパルプを含有する原紙上に、顔料および接着剤を有する塗工層を設けてなる電子写真用転写紙であって、前記塗工層の片面あたりの塗工量が1〜20g/mであることを特徴とする電子写真用転写紙である。
本発明においては、パルプ懸濁液中でキャビテーションによって積極的に発生させた微細気泡の崩壊衝撃力によって、パルプ繊維の外部フィブリル化を促進する一方、内部フィブリル化を抑制することができる。従来の方法である機械力による叩解処理したパルプと比較すると、より嵩高でありながら、剛度や寸法安定性が良好なパルプが得られる。この嵩高パルプを含有した原紙を用いた電子写真用転写紙は、低密度(嵩高)でありながら、走行性や作業性などのコピー時の作業適性等に優れる。
【0015】
また、本発明で使用するパルプは、化学パルプ、機械パルプまたは脱墨パルプの中から選択された少なくとも一種のパルプを懸濁させたパルプ懸濁液を、キャビテーションによって発生させた気泡に接触させることによって所望の濾水度に調製される。本発明においてキャビテーションによって調製した所望の濾水度とは、化学パルプの場合には50〜650ml、機械パルプの場合には50〜400ml、古紙(脱墨)パルプの場合には50〜400mlの範囲内に調製することが好ましい。また、二種以上のパルプを混合して用いる場合には、キャビテーション処理後の濾水度を、100〜500mlの範囲内で調製することが好ましい。
【0016】
本発明における塗工層に配合される顔料は、公知の顔料の中から適宜選択して使用することができるが、体積基準で0.4〜4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒度分布を有するカオリン、または、平均粒径3.5〜20μmのデラミネーテッドクレーを含有することが好ましい。また、原紙中には軽質炭酸カルシウム粒子の表面をシリカで被覆した軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を填料として含有させることが好ましい。これにより、より剛度やカラー印字性が向上し、高速電子写真複写機やプリンターによる連続通紙性が良好な、電子写真用転写紙を得ることができる。
本発明で使用される原紙中のパルプは、上記のキャビテーション処理したパルプを固形分で60〜100重量%含有することが好ましく、該原紙のクラーク剛度は、走行性、作業性を向上させるため、30cm/100以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、キャビテーション処理によってパルプ繊維の損傷を抑えたパルプを調整し、これを原紙に含有させることにより、低密度(嵩高)でありながら、剛度や寸法安定性が良好である上、フルカラー印字適性および通紙性に優れ、良好な高速複写機やプリンターに対する適性に優れた塗工タイプの電子写真用転写紙を得ることができる。特に、低坪量で低塗工量とした場合に顕著な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、キャビテーション処理の対象とするパルプは、電子写真用転写紙の原料パルプとして従来から使用されているパルプの中から適宜選択して使用することができる。具体的には、化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グラウンドウッドパルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、脱墨パルプ(DIP)、非木材繊維パルプなどである。
【0019】
本発明は、キャビテーションによって発生させた気泡をパルプ懸濁液に接触させることにより、微細気泡の崩壊衝撃力によって濾水度を調整し、パルプ繊維自体を、嵩高でありながら剛度の低下の少ないものとするものであり、これによって良好な寸法安定性を有する電子写真用転写紙を得るものである。即ち、濾水度の調整を、通常の機械力による叩解処理の代わりにキャビテーション処理による叩解処理を行うことによって所望の濾水度に調製することができる。また、キャビテーション処理する前のパルプとしては、叩解パルプを用いることもできるが、未叩解パルプを用いる場合の方がよりキャビテーション処理の効果が得られるので好ましい。
【0020】
また、キャビテーション処理の効果を向上させるためには、キャビテーション処理前のパルプとキャビテーション処理後のパルプの濾水度差、すなわち全パルプの濾水度差が、好ましくは100〜500mlとなるように、特に150〜450mlとなるように調整することが好ましい。また、各々のパルプについてのキャビテーション前後の濾水度差は、化学パルプの場合には、好ましくは100〜500ml、より好ましくは150〜400mlであり、機械パルプの場合には、好ましくは60〜300ml、より好ましくは100〜250mlであり、さらに、古紙(脱墨)パルプの場合には、好ましくは100〜350mlの範囲で調節することが好ましい。各パルプを上記好ましい範囲となるように処理した後、これらを混合して使用してもよい。これにより、キャビテーション処理効果がより効果的に発揮される。
【0021】
化学パルプと機械パルプの場合には、キャビテーションで発生させた気泡によるパルプの叩解処理を、パルプ化工程および原紙調製工程のいずれで行なっても良いが、繊維状物質が解繊されてパルプとなった時点で行なうことが好ましい。
脱墨パルプの場合には、キャビテーションで発生させた気泡により脱墨パルプを叩解する処理は、脱墨工程後から原紙調製工程の間で行なうことが、本発明の効果がより効果的に発揮されるので好ましい。本発明のキャビテーションによる叩解は、必要に応じて機械力による叩解と組み合わせることができ、これによって所望の紙質を得ることができる。
【0022】
次に、本発明において、パルプの処理に用いられるキャビテーションについて説明する。
キャビテーションについては、加藤の成書(加藤洋治編著、新版キャビテーション 基礎と最近の進歩、槇書店、1999)に詳述されている。これによれば、キャビテーション気泡の崩壊時に数μmオーダーの局所的な領域に数Gpaにおよぶ高衝撃力が発生し、また気泡崩壊時の断熱圧縮により、微視的にみると数千℃に温度が上昇する。その結果、キャビテーションを発生した場合には温度上昇が伴う。これらのことから、キャビテーションは流体機械に損傷、振動、性能低下などの害をもたらす面があり、解決すべき技術課題とされてきた。
【0023】
近年、キャビテーションについて研究が急速に進み、キャビテーション噴流の流体力学的パラメーターを操作因子として、キャビテーションの発生領域や衝撃力まで、高精度で制御できるようになった。その結果、気泡の崩壊衝撃力を制御することにより、その強力なエネルギーを有効活用することが期待されはじめている。このように、流体力学的パラメーターに基づく操作・調整を行うことによってキャビテーションを高精度に制御することが可能となったということは、技術的作用効果の安定性を保持することが可能であることを示しており、従来のように流体機械で自然発生的に生じる制御不能の害をもたらすキャビテーションではなく、制御されたキャビテーションによって発生する気泡を積極的にパルプ懸濁液に導入し、そのエネルギーを有効利用することが本発明の特徴である。
【0024】
本発明におけるキャビテーションの発生手段としては、液体噴流による方法、超音波振動子を用いる方法、超音波振動子とホーン状の増幅器を用いる方法、レーザー照射による方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡雲を形成するため、及びパルプ繊維に対する作用効果が大きいことから、本発明においては液体噴流を用いる方法が好ましい。上記の方法によって発生するキャビテーションは、従来の流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害をもたらすキャビテーションとは明らかに異なるものである。
【0025】
液体噴流とは、液体、または、液体中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプ、無機物粒子のスラリーまたは気泡を含む噴流をいう。ここでいう気体には、キャビテーションによる気泡も含まれる。
キャビテーションは、液体が加速され、局所的な圧力がその液体の蒸気圧より低くなったときに発生するため、流速および圧力が特に重要となる。このことから、キャビテーション状態を表わす基本的な無次元数であるキャビテーション数(Cavitation Number)σは、次のように定義される(加藤洋治編著、新版キャビテーション基礎と最近の進歩、槇書店、1999)。
【0026】

(p:一般流の圧力、U:一般流の流速、p:流体の蒸気圧、ρ:密度)
ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p、ノズル下流側圧力p、試料水の飽和蒸気圧pから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることがでる。また、キャビテーション噴流では、p、p2、間の圧力差が大きく、p≫p≫pとなることからも、キャビテーション数σを式2のように近似することができる(H. Soyama, J. Soc. Mat. Sci. Japan, 47(4), 381 1998)。

【0027】
本発明におけるキャビテーションの条件は、上述したキャビテーション数σが、0.001以上0.5以下であることが望ましく、0.003以上0.2以下であることが更に好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましい。キャビテーション数σが0.001未満であると、キャビテーション気泡が崩壊する時の周囲との圧力差が低いために、得られる効果が小さくなり、0.5より大であると、流れの圧力差が低いためにキャビテーションが発生し難くなる。
【0028】
また、ノズルまたはオフィリス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際の噴射液の圧力(上流側圧力)は、0.01MPa以上30MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以上15MPa以下であることが更に好ましく、2MPa以上10MPa以下であることが特に好ましい。
上流側圧力が0.01MPa未満では、下流側圧力との間で圧力差を生じ難いので作用効果は小さい。また、30MPaより高いと、特殊なポンプおよび圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなるのでコスト的に不利である。
【0029】
一方、容器内の圧力(下流側圧力)は、静圧で0.05Mpa以上0.3Mpa以下であることが好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との圧力比は、0.001〜0.5の範囲であることが好ましい。
さらに、噴射液の噴流の速度は、1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが好ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが更に好ましい。噴流の速度が1m/秒未満であると、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難くいため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合には、高圧を要するので特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
【0030】
本発明におけるキャビテーション処理は、タンクなど任意の容器内若しくは配管内で行なうことができるが、これらに限定されるものではない。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環させることによってさらに効果を増大させても良い。さらに複数の発生手段を用い、並列で、あるいは、順列で処理することもできる。
キャビテーションを発生させるための噴流は、パルパーのような大気開放の容器の中でなされてもよいが、キャビテーションをコントロールするために、圧力容器の中でなされることが好ましい。
【0031】
本発明において、例えば液体噴流によるキャビテーションの発生を利用する方法では、パルプ懸濁液に対して、噴射液体として、例えば、蒸留水、水道水、工業用水、製紙工程で回収される再用水、パルプ搾水、白水、パルプ懸濁液、アルコールなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。パルプ懸濁液自体を噴射した場合には、噴流周りに発生するキャビテーションによる作用効果に加え、高圧でオリフィスから噴射する際の流体力学的剪断力が得られるため、より大きな作用効果を発揮するので好ましい。なお、噴射液体としてパルプ懸濁液を用いる場合には、処理対象とする全量を循環させて処理することも可能である。
【0032】
液体噴流によってキャビテーションを発生させて処理する場合、処理対象であるパルプ懸濁液の固形分濃度は、気泡の発生効率の点から5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは0.1〜1.5重量%の範囲である。
また、処理時のパルプ懸濁液のpHは、好ましくはpH1〜13、より好ましくはpH3〜12、さらに好ましくはpH4〜11である。pHが1未満であると装置の腐食などが問題となり、材質および保守等の観点から不利である。これに対し、pHが13を超えると、パルプ繊維のアルカリ焼けが生じ、白色度が低下するので好ましくない。なお、アルカリ条件である方がパルプ繊維の膨潤性がよく、また活性なOHラジカルの生成量が増加するので好ましい。
【0033】
本発明では、液体の噴射圧力を高めることによって、噴射液の流速を増大させ、より強力なキャビテーションを発生させることができる。さらに、被噴射液を収める容器を加圧することによって、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力を高くした場合には、気泡と周囲の圧力差が大きくなるために、気泡は激しく崩壊し、衝撃力も大となる。ここで、噴射液とは、高圧でオリフィスから噴射する液体を指し、被噴射液とは、容器内もしくは配管内に予め存在し、噴射された液体をぶつけられる液体を指す。
キャビテーションは液体中の気体の量に影響され、気体が多過ぎると気泡同士の衝突と合一が起こるため、崩壊衝撃力が他の気泡に吸収されるクッション効果が生じるので衝撃力が弱まる。
【0034】
このように、キャビテーションは溶存気体と蒸気圧の影響を受けるため、その処理温度は、融点以上沸点以下でなければならない。液体が水を媒質とする場合、好ましくは0〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃の範囲とすることによって高い効果を得ることができる。
一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水溶液の場合には、50℃前後が最適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲内である限り高い効果が得られる。80℃よりも高い温度では、キャビテーションを発生するための圧力容器の耐圧性が著しく低下するため、容器の損壊を生じやすくなるので不適当である。
【0035】
本発明においては、界面活性剤などの液体の表面張力を低下させる物質を添加することにより、キャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。添加する物質としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、あるいは、有機溶剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単一成分からなるものでも2種以上の成分の混合物でも良い。
【0036】
上記の表面張力を低下させる物質の添加量は、噴射液および/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。また添加場所は、キャビテーションを発生させる場所よりも前の工程であればいかなる場所でもよい。液体を循環させる場合には、キャビテーションを発生させる場所以降であっても良い。
【0037】
本発明の電子写真用転写紙に使用する原紙中の、全パルプに対するキャビテーション処理により叩解したパルプの配合率は特に限定されるものでは無いが、配合率が高いほど原紙が嵩高となり、剛度が良好な電子写真用転写紙が得られる。その観点から、固形分で5重量%以上であることが好ましく、30〜100重量%がより好ましく、60〜100重量%がさらに好ましい。
また、本発明の電子写真用転写紙に使用する原紙中に含有させるキャビテーション処理したパルプとしては、キャビテーション処理による嵩高性および品質向上という効果の観点から、化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)を用いてキャビテーション処理をし、これによって叩解したパルプを使用することが好ましい。
また、脱墨パルプをキャビテーション処理により叩解したパルプは、機械的に叩解したパルプと比較して、上記嵩高効果に加えて強度が向上する。
【0038】
また、原料パルプとして使用することのできるキャビテーション処理しないパルプとしては、化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP))または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グラウンドウッドパルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。
【0039】
本発明の電子写真用転写紙に使用する填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、タルク、無定型シリケート、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
上記填料の原紙に対する配合率は、1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、3重量%以上25重量%以下がより好ましく、5重量%以上25重量%以下が特に好ましい。30重量%を超えると剛度が低下し、複写機等の走行性や作業性に劣る傾向になる。
【0040】
また、本発明においては、特に、軽質炭酸カルシウム粒子の表面をシリカで被覆した軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を上記填料として使用することにより、より低密度(嵩高)で、白色度や不透明性に優れると共に、剛度も良好であり、コピー機内やレーザービームプリンタ内での走行性および作業性等に優れた、本発明の電子写真用転写紙を得ることができる。軽質炭酸カルシウムとシリカとの固形分重量比を、軽質炭酸カルシウム/シリカ=30/70〜70/30とすることにより、さらに本発明の効果が有効に発揮される。なお、軽質炭酸カルシウム/シリカ複合物の配合量は、紙中填料率として、1〜25重量%であることが好ましく、3〜25重量%がより好ましく、5〜20重量%であることが特に好ましい。
【0041】
本発明の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物の製造方法としては、炭酸カルシウムを生成する過程でケイ酸を反応させる方法や、生成した炭酸カルシウムの表面にケイ酸を反応させる方法などがある。本発明においては、生成した炭酸カルシウムの表面にケイ酸を反応させる方法が、電子写真用転写紙の嵩高さ、不透明度、剛度等の品質のバランスを良好にするために好ましい。以下にこの方法について説明する。
【0042】
最初に、軽質炭酸カルシウムを水中に分散させる。この軽質炭酸カルシウムの結晶形態は、カルサイト、アラゴナイトのいずれでも良く、また形状についても針状、柱状、紡錘状、球状、立方体状、不定形、ロゼッタ型のいずれでも良い。この中でも特に、ロゼッタ型のカルサイト系の軽質炭酸カルシウムを用いた軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を填料として含有させた場合には、嵩高性や不透明度向上効果と剛度向上効果に優れ、電子写真方式の複写機等の走行性や作業性に優れる。ここで、ロゼッタ型とは、紡錘状の軽質炭酸カルシウム一次粒子がいがくり状に凝集した形状を指し、他の軽質炭酸カルシウムより高い比表面積と吸油性を示すという特徴がある。また、軽質炭酸カルシウムは、粉砕処理を施して使用しても良い。
【0043】
次いで、この軽質炭酸カルシウムのスラリーに、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ溶液中に溶解した形のケイ酸を加える。一般的には、工業用としてケイ酸ソーダ(ナトリウム)もしくはケイ酸カリウムが用いられる。本発明で用いることのできる複合物を形成させるためのケイ酸とアルカリのモル比はいずれでも良い。特に、3号ケイ酸(SiO:NaO=3〜3.4:1程度のモル比)が、一般に入手しやすく好適に使用される。軽質炭酸カルシウムとケイ酸アルカリとの仕込重量比は、生成する軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物中の炭酸カルシウムとシリカの重量比が目標とする範囲に入るように仕込む。軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物の炭酸カルシウムとシリカの固形分重量比は、CaCO/SiO=30/70〜70/30であることが好ましい。
このスラリーを、アジテータ、ホモミキサー、ミキサー等を用いて攪拌、分散させる。これにより、軽質炭酸カルシウムが水に十分に分散し、軽質炭酸カルシウムの粒子が極端に凝集していなければ問題なく、特に攪拌時間や攪拌の強さ等の制限はない。
【0044】
次に、酸を用いた中和反応を行う。この場合、酸は鉱酸であればいずれでも良い。さらに、鉱酸中に硫酸バンドや硫酸マグネシウムのような酸性金属塩を含有させた酸でも使用することができる。工業的には、硫酸や塩酸等の比較的安価に購入できる酸を使用することが好ましい。この中和処理によりケイ酸分を析出させて非晶質ケイ酸を形成し、これが軽質炭酸カルシウム粒子の表面を被覆する。
なお、この酸の添加を数回に分けて行っても良く、酸の添加後に熟成を行っても良い。熟成とは、酸の添加を一時中止し、攪拌のみを施し放置しておくことを意味する。この熟成中に強攪拌や粉砕を行い、粒子の形態をコントロールすることも可能である。また、上記酸の添加によるスラリーの中和は、pHを7〜9とすることを目標に行う。
【0045】
このようにして製造された軽質炭酸カルシウム−ケイ酸の複合物は、軽質炭酸カルシウム粒子表面をシリカが被覆した懸濁液の状態となる。この懸濁液のまま抄紙工程等に使用しても良いが、ろ過、または遠心分離を行うことによって固液分離を行い、中和反応で生成した余分な副生成物である塩を極力取り除くことが好ましい。
【0046】
軽質炭酸カルシウム−ケイ酸複合物の平均粒子径の調整は、熟成中に強攪拌や粉砕を行うことにより粒子の形態をコントロールすることも可能であるが、中和反応終了後または反応終了後に固液分離したものを、湿式粉砕機を用いて、目標とする平均粒子径に調整しても良い。また、これらの組み合わせにより平均粒子径を調整しても良い。本発明で使用する軽質炭酸カルシウム−ケイ酸複合物の平均粒子径は、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。
【0047】
本発明においては、パルプおよび填料の他に内添サイズ剤を使用することができる。内添サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などのサイズ剤を使用することができ、硫酸バンド、カチオン化澱粉等、適当なサイズ剤と繊維への定着剤を組合せて使用することが好ましい。
さらに、紙力増強剤、染料、pH制御剤、消泡剤、ピッチコントロール剤等の抄紙用内添助剤を、目的に応じて適宜添加することも可能である。
【0048】
本発明の電子写真用転写紙の抄造に用いる抄紙機としては、長網抄紙機、オントップツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマーなどの公知の装置が用いられる。抄紙条件としては、パルプの叩解度、ジェットワイヤー比、プロファイル、プレス、キャレンダ−等の調整が行われ、また乾燥条件も抄紙機のドライヤーにおける蒸気圧および通気方法の調整等、公知の方法を利用することができる。
本発明においては、CD方向のクラークこわさが、30cm/100以上の原紙を使用することが好ましい。原紙の坪量としては、30〜200g/m程度のものを適宜用いることができるが、特に40〜80g/mの坪量の原紙を用いることが好ましい。
【0049】
本発明においては、原紙上に顔料と接着剤、および必要に応じて助剤を配合した塗工層を、原紙片面あたり1〜20g/m塗工する。
本発明の塗工層で使用する顔料としては、従来から用いられている、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、エンジニアードカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料を挙げることができ、これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0050】
本発明においては、体積基準で0.4〜4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有するカオリン、または、平均粒径が3.5μm〜20μmのデラミネーテッドクレーのいずれか一方を、顔料100重量部当たり30重量部以上含有することが好ましく、更に好ましくは50重量部以上、特に好ましくは60重量部以上含有する。
尚、本発明で規定する粒径とは、レーザー回折法を用いたものであり、MALVERN Instruments社製のLaser Diffraction粒度分布測定器を用い、体積基準で粒径を測定した値である。
【0051】
本発明においては、塗工層中の顔料として、体積基準で0.4〜4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有するカオリンを使用することにより、電子写真用転写紙の印字濃度、印字部の光沢度を更に向上させ、カラー印字性に優れると共に、高速電子写真複写機、プリンターでの通紙性を良好なものとすることができる。カオリンが体積基準で0.4〜4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有するということは、カオリンの粒径分布がそうでないものに比べて粒径分布が均一である。このような顔料からなる塗工層は、均一性に劣る顔料に比べて最密充填構造になり難く、比較的空隙構造に富んだ塗工層となる。従って、同一塗工量であっても塗工層に嵩があり、原紙被覆性に優れた塗工層となる。
【0052】
また、原紙被覆性が良好であるため、通常のカレンダー処理よりも低圧の条件で平滑化処理することができるので、より低密度で、原紙被覆性等に優れた電子写真用塗工紙が得られる。このため、被覆性に優れた塗工層が用紙表面に均一に存在し、帯電ムラが生じ難くなるので、トナー転写性や定着性に優れ、印字濃度および印字部の光沢度が向上すると思われる。塗工層が被覆性に劣ると、トナー転写後のヒートロールによりトナーを溶融し紙に定着させる際に、部分的にトナーの溶融が不充分になるのでトナー定着性に劣り、印字濃度や印字部の光沢度が劣る原因となる。また本発明の電子写真用転写紙が嵩高であることから、転写紙のクラークこわさが大きくなり、そのために通紙性にも優れた転紙を得ることができる。
【0053】
また、本発明においては、前述したように印字濃度や走行性等を向上させるために、平均粒径3.5〜20μmのデラミネーテッドクレーを使用することがより好ましい。デラミネーテッドクレーは、六角板状結晶が積層した通常のクレーを単層に剥がすことにより(デラミネーション)得られる。このデラミネーテッドクレーは比較的大きな粒径のものが多く存在するため、塗工層表面に大粒径の板状のものが配向され易く、原紙上に、相対的に低い塗工量で塗工した場合でも、原紙被覆性は良好になると思われる。
【0054】
また、原紙被覆性が良好であるため、通常のカレンダー処理よりも低圧の条件で平滑化処理をすることができるので、従来より低密度で、原紙被覆性等の良好な電子写真用塗工紙が得られる。このように、被覆性の良好な塗工層が用紙表面に均一に存在するので、帯電ムラが生じ難く、トナーの転写性および定着性に優れ、印字濃度のみならず印字部の光沢度が向上すると思われる。また本発明においては、塗工紙が嵩高であることから塗工紙のクラークこわさが大きくなり、そのために通紙性にも優れた用紙を得ることができる。前記した特定の顔料を用いることにより、印字濃度や印字後の光沢度が向上し、剛度も良好で通紙性も向上することに加え、製造時の塗工適性も良好である。
【0055】
本発明の顔料塗工層に用いる接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白の蛋白質類、酸化デンプン、陽性デンプン、尿素燐酸エステル化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプンなどのエーテル化デンプン、デキストリンなどのデンプン類、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体など、通常の塗工紙用接着剤を挙げることができる。
本発明においては、上記した接着剤の中から少なくとも1種を選択し、顔料100重量部あたり5〜50重量部、より好ましくは5〜25重量部程度の範囲で使用される。
本発明においては必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、印刷適性向上剤等、通常の塗工紙用塗工組成物に配合する各種の助剤が適宜使用される。
【0056】
一般に電子写真方式による印字は、感光ドラム上に画像状に形成させた静電潜像にトナーを付着させ、これを帯電させた転写紙上に転写するか、感光ドラムに形成された静電潜像を転写紙に転写し、該転写紙上に形成された静電潜像にトナーを付着させた後、約180℃の高温のヒートロールでトナーを溶融し用紙へ定着させることによりなされる。従って、トナーの転写性およびトナーの定着性に加えて、用紙の帯電性が重要である。
そこで、用紙表面の電気特性を適切に調整するために、本発明においては、導電剤を、顔料100重量部に対して0.1〜1.0重量部使用することが好ましい。
【0057】
本発明で用いる導電剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、アルミン酸ソーダ、リン酸ナトリウム等の無機塩、および蟻酸カリウム、臭酸ナトリウム等の有機酸塩、石鹸、リン酸塩、カルボン酸塩等の界面活性剤、4級アンモニウム塩、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸等の高分子電解質、さらにシリカ、アルミナ等の無機導電性物質等を挙げることができるが、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、などの無機塩を用いることが好ましい。
なお、本発明において調整された塗工液の固形分濃度は、画質および塗工適性の点から、45〜70重量%であることが好ましい。
【0058】
調整された塗工液を原紙に塗工して顔料塗工層を設ける方法としては、2ロールサイズプレスコーターやゲートロールコーターおよびブレードメタリングサイズプレスコーター、およびロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、フラデットニップ/ブレードコーター、ジェットファウンテン/ブレードコーター、ショートドウェルタイムアプルケート式コーターの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコーターや、カーテンコーター、ダイコーター等の公知のコーターを用いた塗工方法を挙げることができる。
原紙上に設ける顔料塗工層は、原紙の片面あるいは両面に、1層あるいは2層以上設ける。本発明の塗工量は、印字適性および走行性の観点から、片面あたり2〜15g/mであることが好ましく、特に5〜9g/mであることが好ましい。
【0059】
塗工層の乾燥は、加熱熱風エアドライヤ、加熱シリンダ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等の各種方式のドライヤを単独あるいは組み合わせて行なう。乾燥状態が用紙のカールに影響を及ぼすため、表裏の乾燥バランスをコントロールできるような装置を用いることが好ましい。この様にして得られた塗工紙にカレンダー処理を行い、平滑度を高めることも可能である。
【0060】
カレンダー処理は、通常コート紙の平滑化処理に使用されるスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等を用いて行なえば良く、これらを併用してもよい。画質および走行性のバランスを良好にするためには、ソフトカレンダー処理をすることが好ましい。また、カレンダー処理時の金属ロールの処理温度は100℃以上であることが好ましく、特に150〜250℃とすることが好ましい。このようにすることにより、クラークこわさを損なうことなく、走行性および画質に優れた、電子写真用転写紙とすることができる。カレンダー線圧は10〜200kg/cmであることが好ましく、10〜100kg/cmであることがより好ましい。
【0061】
また、本発明の電子写真用転写紙においては、23℃、50%RH雰囲気における測定で、−10kvの電圧を印荷した時の帯電圧の最大値が1/2に減衰するまでの所要時間を0.25秒以下にすることにより、特に画質および通紙性を向上させることが好ましい。前記減衰時間が0.25秒を超える場合には、残留静電気により、給紙時に転写紙が2枚以上同時に送られるという重送が発生する。さらに、感光体ドラムから転写紙表面に帯電させる静電気量が多いため、感光体ドラムに転写紙が貼り付いたり、トナーの部分的飛散による画像不良が発生しやすくなる。上記の減衰時間の調整は、導電剤の添加や表面電気特性の異なる顔料の使用などを、単独であるいは組み合わせて実施することにより行うことができる。
【0062】
本発明の塗工タイプの電子写真用転写紙は、坪量を40g/m〜200g/mとしたときに、カラー画質や走行性の面で良好であるが、特に、40〜100g/m、好ましくは40〜85g/m、さらに好ましくは40〜75g/cmの低坪量とすることが、軽量化という観点から好ましい。
また、本発明の電子写真用転写紙は、図1に示す状態で測定するA4サイズ用紙のハンギングカールで、MD(A4用紙の長手方向)を軸とするカール形状の場合には、その大きさを5mm以下、CD(A4用紙の短手方向)を軸とするカール形状の場合には、その大きさを20mm以下にすることにより、走行性が向上する。
【0063】
以下に実施例をあげて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、得られた塗工紙および比較例に使用した用紙について、以下に示すような評価法に基いて試験を実施した。
【0064】
(1)顔料の粒子径の測定
試料スラリーを分散剤へキサメタリン酸ソーダ0.2重量%を添加した純水中に滴下混合して均一分散体とし、レーザー法粒度測定機(使用機器:マルバーン社製マスターサイザーS型)を使用して測定し、0.4μmから4.2μmの範囲に該当する顔料のパーセントを算出した。尚、体積分布累計の50%点を平均粒子径とした。
(2)クラークこわさ
JIS P 8143に準じて測定した。
【0065】
(3)連続通紙(走行)性
富士ゼロックス社製のDocuTech135を使用し、通紙速度135枚/分(A4横通し)で印字した。用紙はA4サイズ縦目に小判断裁した。10,000枚を両面印字連続通紙し、詰まり回数、重送の回数で評価した。絵柄は10ポイントの文字で印字範囲一杯に印字した。
(4)カラー印字濃度測定
富士ゼロックス社製DocuPrintC3530を使用し、以下の印字条件で印字した。絵柄は、黒、シアン、マゼンタ、イエローのベタ印字である。
<印字条件>
カラーモード:カラー(自動判別)
印字モード:標準
画質調整モード:おすすめ
おすすめ画質タイプ:写真
画質自動補正:しない
印字部をグレタグ社のマクベス濃度計RD−19Iにより計測した。
【0066】
(5)印字後光沢
印字部について、村上色彩(株)の光沢度計(商品名:GM26D)を用い、75度光沢度を計測した。
(6)カール
A4用紙を図1のように吊り下げ、図に示す距離を計測し、カールとした。
【0067】
〈キャビテーション処理パルプ(化学パルプ)Aの製造〉
市販の広葉樹漂白クラフトパルプシートを低濃度パルパーで離解し、原料A(濾水度CSF666ml)とした。原料Aを任意の濃度に調整した後、図2に示されるキャビテーション噴流式洗浄装置(ノズル径1.5mm)を用いて、噴射液の圧力(上流側圧力)を7MPa(噴流の流速70m/秒)、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.3MPaとして、15分間処理し、濾水度を調整した。なお、噴射液として濃度が1.1重量%のパルプ懸濁液を使用し、容器内のパルプ懸濁液(濃度1.1重量%)をキャビテーション処理して、キャビテーションパルプAを得た。
【0068】
キャビテーション処理後のパルプについて、カナダ標準濾水度(CSF)を測定した。なお、カナダ標準濾水度(CSF)については、JIS P 8121:1995に従った。
処理したパルプの物性等は次の通りである。
パルプA:処理時間15分、CSF457ml、坪量56.5g/m、密度0.57g/m、裂断長4.46km
【0069】
〈非キャビテーション処理パルプ(化学パルプ)Bの製造〉
Aのキャビテーション処理パルプの製造方法における叩解処理を、キャビテーション処理で行う代わりに、原料Aについて、PFIミルを用い、濃度10%、クリアランス0.2mmで、カウント数を変化させて叩解し、濾水度を調整して処理パルプBを得た。
処理したパルプの物性等は次の通りである。
パルプB:カウント数3000、CSF478ml、坪量55.8g/m、密度0.61g/m、裂断長5.40km
【0070】
〈軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物の製造方法〉
(製造例1:軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物Aの調製)
反応容器中に、市販のロゼッタ型軽質炭酸カルシウム(商品名 アルバカー5970 SMI社製)11重量部を水に分散し、ここにケイ酸ソーダ溶液(SiO濃度18.0重量%,Na0濃度6.1重量%)を62重量部加えた後、水を加えて全量を220重量部とした。この混合スラリーをアジテータで十分に攪拌しながら85℃に加熱し、10%硫酸溶液を定量ポンプにより加えた。なお、この硫酸添加口付近が十分攪拌されるように、該添加口をアジテータの攪拌羽根直下とした。
このようにして添加された硫酸が十分に分散される条件のもと、硫酸添加後の最終pHが8.0、全硫酸添加時間が240分間となるように、一定温度、一定速度で硫酸を添加した。このスラリーを100メッシュの篩にかけて粗粒分を分離し、ベルトフィルターでろ過した。さらに約10重量%となるように再分散させ、平均粒径および手抄き分析用サンプルとした。
【0071】
吸油量およびBET比表面積用サンプルは、ろ過後のサンプルをエタノール中に約10重量%となるように再分散した後ろ過し、105℃の乾燥機にて乾燥を行い、粉体サンプルとした。この粉体サンプルの測定を行ったところ、平均粒子径は3.4μm、吸油量は159ml/100gであった。なお、核に用いた市販のロゼッタ型軽質炭酸カルシウムの平均粒子径は3.0μm、吸油量は119ml/100gである。
【0072】
(製造例2:軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物Bの調製)
製造例1において、反応に使用した市販のロゼッタ型軽質炭酸カルシウム(商品名アルバヵー5970SMI社製)を25重量部用いた外は、製造例1と同様に製造した。得られた複合物について物性測定を行ったところ、平均粒子径は4.0μm、吸油量は134ml/100gであった。
【実施例1】
【0073】
〈原紙〉
製紙用原料パルプとして、キャビテーション処理パルプAを60部、非キャビテーション処理パルプBを40部混合したパルプを用い、添加薬品として、中性ロジンサイズ剤(NT−87:荒川化学社製)およびカチオン化澱粉(cATO304:日本エヌエスシー社製)を、対パルプ当り、それぞれ、1.0重量%および0.8重量%添加し、歩留向上剤としてカチオン性ポリアクリルアミドを対パルプ当り0.02重量%、アニオン性ポリアクリルアミドを対パルプ当り0.01重量%添加したスラリーを用い、オントップツインワイヤー抄紙し、デンプン(日本食品加工:TC−スターチ)を6重量%およびサイズ剤(荒川化学:PM1308)を0.5重量%含有するサイズプレス液を、両面で1.0g/mとなるように片面当り0.5g/m塗布して乾燥し、坪量56g/mの電子写真用転写紙用原紙を得た。
【0074】
〈塗工液〉
顔料として、カオリン(ミラシーン:エンゲルハード社製,体積分布粒径:0.4〜4.2μm,60.2%)70重量部、粗粒重質炭酸カルシウム(FMT−75:ファイマテック社製,体積分布粒径:0.95μm)30重量部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウムを0.2重量部添加してセリエミキサーで分散し、固形分濃度が70重量%の顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに、非増粘型のスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(ガラス転移温度15℃,ゲル分量75%)10重量部、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン(PG295:ペンフォード社製)6重量部、および塩化ナトリウムを0.8重量部加え、さらに水を加えて濃度60%の塗工液を得た。
【0075】
〈塗工紙の製造〉
前述した原紙に上記の塗工液を、片面あたりの塗工量が7g/mになるように、800m/分の塗工速度のブレードコーターで両面塗工を行い、スキャッフドライヤーを通過させた後、シリンダードライヤーにて紙水分が5.5重量%になるように乾燥した。
【0076】
〈カレンダー処理〉
次いで、ロール相当径400mm、金属ロール温度160℃、弾性ロールのショアー硬度85、通紙速度650m/分、線圧40kg/cmで、カレンダーニップ数2ニップの条件でソフトニップカレンダー処理を行い、塗工タイプの電子写真用転写紙を得た。得られた転写紙のカレンダー処理後のカール形状はMD3mmである。
【実施例2】
【0077】
塗工液の顔料組成を、カオリン(カピムDG:イメリス社製,体積分布粒径:0.4〜4.2μm,68.4重量%)70重量部、粗粒重質炭酸カルシウム(FMT−75:ファイマテック社製,体積分布粒径:0.95μm)30重量部に変更し、カレンダーの線圧を90kg/cmに変更した外は、実施例1と同様にして電子写真用転写紙を得た。
【実施例3】
【0078】
塗工液の顔料組成を、デラミネーテッドクレー(カピムCC:イメリス社製,体積分布平均粒径:4.9μm)65重量部、粗粒重質炭酸カルシウム(FMT−75:ファイマテック社製,体積分布粒径:0.95μm)35重量部に変更した外は、実施例1と同様にして電子写真用転写紙を得た。
【実施例4】
【0079】
実施例1のスラリーに、紙中填料として軽質炭酸カルシウム/シリカ複合物Aを、紙中填料率が5重量%、タルク5重量%となるように添加した外は、実施例2と同様にして電子写真用転写紙を得た。
【0080】
[比較例1]
実施例1で使用したパルプの代わりに、非キャビテーションパルプB100部のみを使用した外は、実施例1と同様にして電子写真用転写紙を得た。
[比較例2]
実施例1の原紙の坪量を70g/mとし、塗工層を設けなかった以外は実施例1と同様に電子写真用転写紙を得た。
【0081】
上記で得られた実施例1−4、比較例1および2で得られた電子写真用転写紙の坪量、クラークこわさ、連続通紙(走行)性、カラー印字濃度、印字後光沢について行なった評価結果を表1に示す。なお、表1中、Aはカオリン(カピムDG 体積分布粒径0.4〜4.2μm 68.4%)、Bはデラミネーテッドクレー(カピムCC 体積平均粒径4.9μm)、Cは粗粒重質炭酸カルシウム(FMT−75 体積分布粒径0.4〜4.2μm 69.5%)、Dはカオリン(ミラシーン 体積分布粒径0.4〜4.2μm 60.2%)を意味し、Kは黒、Cはシアン、Mはマゼンダ、Yはイエローを意味する。
【表1】

【0082】
表1の結果から、実施例1〜4はカラー印字濃度、カラー印字部光沢度とも高く、画質がシャープに見え、寸法安定性、走行性も良好であり、ビジネス文書や本文用紙として適しているのに対し、比較例1は連続走行性・寸法安定性に劣り、比較例2は印字適正に劣ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】カールの測定方法を示した概念図である。
【図2】実施例で使用したキャビテーション噴流式洗浄装置の概念図である。
【符号の説明】
【0084】
1:試料タンク
2:ノズル
3:キャビテーション噴流セル
4:プランジャポンプ
5:上流側圧力制御弁
6:下流側圧力制御弁
7:上流側圧力計
8:下流側圧力計
9:給水弁
10:循環弁
11:排水弁
12:温度センサー
13:ミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビテーションによって発生させた気泡をパルプ懸濁液に接触させて処理したパルプを含有する原紙上に、顔料および接着剤を有する塗工層を設けてなる電子写真用転写紙であって、前記塗工層の片面あたりの塗工量が1〜20g/mであることを特徴とする電子写真用転写紙。
【請求項2】
前記パルプが、キャビテーション処理による濾水度が、化学パルプの場合には50〜650ml、機械パルプの場合には50〜400ml、脱墨パルプの場合には50〜400mlの範囲となるように調整されてなるパルプである、請求項1に記載された電子写真用転写紙。
【請求項3】
前記パルプが、化学パルプ、機械パルプおよび脱墨パルプの混合パルプであって、キャビテーション処理の前後における該パルプの全パルプ濾水度差が、100〜500mlの範囲に調製されてなるパルプである、請求項1または2に記載された電子写真用転写紙。
【請求項4】
前記顔料が、レーザー回折法で測定した体積基準で0.4〜4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒度分布を有するカオリン、または、平均粒径3.5〜20μmのデラミネーテッドクレーを含有する、請求項1−3の何れかに記載された電子写真用転写紙。
【請求項5】
前記原紙が、軽質炭酸カルシウム粒子の表面をシリカで被覆した軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を填料として含有する、請求項1−4の何れかに記載された電子写真用転写紙。
【請求項6】
前記原紙中のパルプが、キャビテーション処理したパルプを固形分で60〜100重量%含有する、請求項1−5の何れかに記載された電子写真用転写紙。
【請求項7】
前記原紙のクラーク剛度が、30cm/100以上である請求項1−6の何れかに記載された電子写真用転写紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−40297(P2008−40297A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216635(P2006−216635)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】