説明

電子制御バルブ

電子制御バルブは、封止部材(12)を備えるとともに、封止部材(12)がバルブシート(4)と共に封止を形成する閉鎖位置と開放位置との間で動作可能な移動部材を含む。バルブは、さらに、バルブの閉鎖中に電機子(18)の移動を低速化するように動作可能な、減衰機構などの減速機構を備える。封止部材(12)および電機子(18)は、切り離されていることにより、封止部材(12)がバルブシート(4)に衝突した後に、電機子(18)が移動し続けかつ減衰機構の作用により減速できるように、互いに対して移動可能である。これにより、電機子へのピーク減速力が低減され、バルブの寿命または損傷を伴わずにバルブを閉鎖させることが可能な最大速度が増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御バルブの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、流体作動機械の流体チャンバとマニホルドとの間の流体流を調整する際に用いるのに好適な電子制御バルブに関係する。電子制御バルブは、バルブ部材およびバルブシートを含み、そのため、面的に据え付けられる。本発明によるバルブは、広範囲の種類の流体作動機械とともに、または無関係のアプリケーションにおいて、有用なものであり得る。しかし、周期的に変化する容積の複数の作動チャンバを備え、作動チャンバを通じた流体の排除量が電子制御バルブによりサイクル毎に作動チャンバの容積のサイクルと同相の関係で調整されることで、機械を通じた流体の正味スループットを決定する、既知の流体作動機械とともに用いるのに好適なバルブの具体的な例を参照して、本発明に関係する課題についてここで検討する。
【0003】
この種の流体作動機械には、ポンプ、モータ、および異なる動作モードにおいてポンプまたはモータのいずれかとして機能することが可能な機械など、流体被駆動式および/または流体駆動式の機械が含まれる。本発明は、流体が略非圧縮性油圧液などの液体であるアプリケーションを参照して説明するが、流体は、代替として気体であってもよい。
【0004】
例えば、欧州特許第0361927号明細書では、電子制御ポペットバルブを作動チャンバの容積のサイクルと同相の関係で開放および/または閉鎖することで、ポンプの個々の作動チャンバと低圧マニホルドとの間の流体連通を調整することにより、多チャンバポンプを通じた流体の正味スループットを制御する方法が開示されている。その結果、個々のチャンバが所定の固定体積の流体を排除するか、または流体の正味排除量を伴わないアイドルサイクルを経るかを、コントローラによりサイクル毎に選択可能にすることにより、ポンプの正味スループットを需要に動的に合致させることを可能にしている。欧州特許第0494236号明細書では、この原理を発展させ、個々の作動チャンバと高圧マニホルドとの間の流体連通を調整する電子制御ポペットバルブを含むことにより、代替の動作モードにおいてポンプまたはモータのいずれかとして機能する流体作動機械の提供を容易にしている。欧州特許第1537333号明細書では、部分的サイクルの可能性が導入され、個々の作動チャンバの個々のサイクルにおいて複数の異なる体積の流体のいずれかを排除させることで、需要により良好に合致することを可能にしている。
【0005】
欧州特許第0361927号明細書、欧州特許第0494236号明細書、および欧州特許第1537333号明細書において開示されている種類の流体作動機械では、作動チャンバと低圧マニホルド、いくつかの実施形態では高圧マニホルドとの間で流出入する流体流を調整することが可能な高速で開放および閉鎖する電子制御バルブが要求される。電子制御バルブは、典型的には、速やかに開放および閉鎖することが要求され、電流が電磁石を通過するときに電磁石に引き付けられる電機子を用いてバルブを能動的に閉鎖させる状況では、バルブ部材に作用する力が特に高くなる可能性がある。これらの状況では、特に欧州特許第1537333号明細書において開示されている方法により部分的サイクルを実装する際には、バルブ部材がバルブシートに高速で衝突し、非常に素早く減速する可能性がある。結果的に生じる力により、バルブ部材が時間の経過とともに損傷し、バルブの寿命が制限される可能性がある。
【0006】
英国特許第2250863号明細書(Danfoss A/S)では、低速で作用し、バルブが閉鎖する前に減衰作用が封止部と電機子との両方に作用する減衰チャンバを有する電磁バルブが開示されている。国際公開第2007/028076号パンフレット(Emerson Electric Co.)では、閉鎖中は弾性部材を用いて電機子を減速させ、開放時は減衰部材を用いて電機子と固定コアとの間の力を散逸させるソレノイドバルブが開示されているが、閉鎖中に力を散逸させる効果的な機構は提供されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、使用時にバルブが高速で閉鎖されるアプリケーションにおいて従来の電子制御バルブよりも長い動作寿命を有する、またはバルブのコンポーネントへの損傷を伴わずにより速やかに閉鎖させることが可能な電子制御バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、流体作動機械の作動チャンバとマニホルドとの間の流体供給を調整するための電子制御バルブであって、バルブは、バルブ本体と移動部材とを備え、バルブ本体は、バルブシートとバルブ本体を通じてバルブシートから延在する流体流通路とを有し、移動部材は、電機子と封止部材とを備え、バルブは、バルブシートと封止部材との間に封止が形成される閉鎖位置と、封止部材がバルブシートから離間される開放位置とを有する、電子制御バルブであって、バルブは、バルブの閉鎖中に電機子の移動を低速化するように動作可能な減衰機構を備え、封止部材および電機子は、封止部材がバルブシートに衝突した後に、電機子が移動し続けかつ減衰機構の作用により減速できるように、互いに対して移動可能であることを特徴とする、電子制御バルブが提供される。
【0009】
従って、封止部材は、バルブの閉鎖中、バルブシートとの接触後に非常に短い距離で減速しなければならないものの、電機子は、より長い距離にわたり減速することが可能であるため、電機子が封止部材と同じ距離にわたり減速する必要がある場合よりも受ける力が小さい。電機子は、典型的には、電子制御バルブの質量の大部分を構成するため、この構成により、移動部材のコンポーネント(例えば、電機子またはバルブステム)が破損する可能性が低減し、それにより、電子制御バルブの動作寿命が増加する。
【0010】
「封止部材がバルブシートに衝突した後に」とは、減衰機構が、封止部材がバルブシートに衝突する前に電機子を減速させるように電機子に作用し始めるとともに封止部材がバルブシートに衝突した後に電機子を減速させるように電機子に作用し続ける可能性を含み、また、封止部材のバルブシートへの衝突と電機子を減速させる減速機構の電機子への作用との間にある期間が経過する可能性も含む。しかし、減衰機構は、好ましくは、実質的に封止部材がバルブシートに接触したときに電機子を減速させるように電機子に作用し始める。
【0011】
減衰機構は、典型的には、電機子を封止部材に対して減速させ、電機子の運動エネルギーの少なくとも大部分を分散させる。減衰機構は、電機子の運動エネルギーの実質的にすべてを分散させてもよい。また、減衰機構は、電機子の運動エネルギーの小部分を蓄積し、戻してもよい。典型的には、減衰機構は流体減衰機構である。流体減衰機構とは、流体がチャンバや間に流体を閉じ込める2つの対向する実質的に平行な表面などの限られた容積に進入するかまたはかかる容積から排除されるときのエネルギー損失により電機子の運動が減衰される機構を含む。
【0012】
減衰機構は、バルブの閉鎖中、封止部材がバルブシートに衝突した後に、電機子または電機子に固定的に接続された構造体に作用することで、バルブ本体に対する電機子の移動を低速化してもよい。例えば、減衰機構は、バルブ本体のスクイーズ膜規定表面を備え、かかる規定表面は、前記規定表面と移動部材の表面(典型的には、電機子の表面)との間にスクイーズ膜を形成することで電機子を減速させるように動作可能であってもよい。
【0013】
減衰機構は、移動部材と一体的であるとともに、バルブの閉鎖中、封止部材がバルブシートに衝突した後に、封止部材に対する電機子の移動を低速化するように動作可能であってもよい。
【0014】
封止部材および電機子は、バルブの閉鎖速度が閾値を超えるときにのみ、封止部材および電機子が互いに対して移動するように連結されていてもよい。例えば、移動部材は、電機子を含む第1の部分と封止部材を含む第2の部分とを備え、バルブの閉鎖速度が閾値を下回るときは、第1の部分が第2の部分に接触し第2の部分とともに移動するように、第1の部分および第2の部分は互いに対して移動可能であるが第1の部分は付勢部材(例えば、バネなどの弾性部材)により第2の部分に向けて付勢され、しかし、封止部がバルブシートに衝突しバルブの閉鎖速度が閾値を超えるときは、第1の部分および第2の部分は付勢部材に抗して互いに対して移動してもよい。この構成は、例えば、バルブが組み込まれた流体作動機械における機能不全によりバルブが異常に速やかに閉鎖される場合など、移動部材を損傷から保護することが最も重要な状況においてのみ電機子および封止部材が互いに対して移動し、他の状況では摩耗が低減される、という効果を有することが可能である。前記第2の部分は、封止部材およびバルブステムを備えてもよい。
【0015】
典型的には、移動部材は、さらに、少なくともバルブの閉鎖中に電機子に固定的に接続される作動閉鎖部材を備え、減衰機構は、バルブの閉鎖中、封止部材がバルブシートに衝突した後に、封止部材に対する作動閉鎖部材の移動を低速化することにより、封止部材に対する電機子の移動を低速化するように動作可能である。
【0016】
作動閉鎖部材は、剛性のバルブステムにより電機子に固定的に接続されてもよい。電機子および作動閉鎖部材は、互いに対して移動可能であってもよいが、電機子または電機子に固定的に取り付けられた部材は、少なくともバルブの閉鎖中に作動閉鎖部材または作動閉鎖部材に固定的に取り付けられた部材と係合することで、少なくともバルブの閉鎖中に作動閉鎖部材が電機子に固定的に接続されてもよい。
【0017】
好ましくは、減衰機構は、封止部材がバルブシートから離間されているときは流体収容容積を少なくとも部分的に規定し、バルブが閉鎖されているときは流体収容容積から流体が排除され、バルブの閉鎖中に流体収容容積からの流体流が制限されることにより電機子の移動が減衰される。
【0018】
好ましくは、封止部材は、閉鎖位置では、バルブシートと封止部材との間に封止が形成されるとともに、封止部材と作動閉鎖部材との間に封止が形成されることにより、流体流通路が閉鎖され、開放位置では、封止部材がバルブシートから離間されるように、作動閉鎖部材とバルブシートとの中間に位置する。
【0019】
この場合、流体収容容積は、好ましくは、封止部材と作動閉鎖部材との間に規定され、封止部材および作動閉鎖部材は、閉鎖中に流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働することで、封止部材がバルブシートに衝突した後に作動閉鎖部材ひいては電機子が移動し続けることを可能にし、封止部材がバルブシートに衝突した後に作動閉鎖部材ひいては電機子の移動を減衰する。
【0020】
流体収容容積は、封止部材と電機子との間に規定され、電機子および封止部材は、閉鎖中に流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働することで、封止部材がバルブシートに衝突した後に電機子が移動し続けることを可能にし、封止部材がバルブシートに衝突した後に電機子の移動を減衰してもよい。
【0021】
従って、封止部材および作動閉鎖部材が閉鎖中に前記流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働するため、作動閉鎖部材への衝撃力が低減され、潜在的に電子制御バルブの寿命を増加させるか、またはバルブを損傷することなくバルブを閉鎖することができる速度を増加させる。封止部材の質量は、好ましくは、電機子の質量よりも小さく、電機子の質量の10%よりも小さくてもよく、それにより、電機子よりも相当小さい質量を有する部材が最も高速な減速を経験することが保証される。
【0022】
流体収容容積は、バルブ本体と電機子との間に規定され、電機子およびバルブ本体は、閉鎖中に流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働することで、封止部材がバルブシートに衝突した後に電機子が移動し続けることを可能にし、封止部材がバルブシートに衝突した後に電機子の移動を減衰してもよい。
【0023】
この場合、流体収容容積は、好ましくは、バルブ本体と作動閉鎖部材との間に規定され、バルブ本体および作動閉鎖部材は、閉鎖中に流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働することで、封止部材がバルブシートに衝突した後に作動閉鎖部材ひいては電機子が移動し続けることを可能にし、封止部材がバルブシートに衝突した後に作動閉鎖部材ひいては電機子の移動を減衰する。
【0024】
従って、バルブ本体および作動閉鎖部材が閉鎖中に流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働するため、作動閉鎖部材への衝撃力が低減され、潜在的に電子制御バルブの寿命を増加させるか、またはバルブを損傷することなくバルブを閉鎖することができる速度を増加させる。封止部材の質量は、好ましくは、電機子の質量よりも小さく、それにより、電機子よりも相当小さい質量を有する部材が最も高速な減速を経験することが保証される。
【0025】
排除される流体流が制限される流体収容容積が封止部材と作動閉鎖部材との中間に位置している場合は、制限が、封止部材がバルブシートから離れるように移動することによるバルブの開放を低速化する必要がない、という利点を有する。好ましくは、封止部材がバルブシートとの封止接触から離れるように移動することによるバルブの開放は、実質的に減衰されない。
【0026】
好ましくは、封止部材は実質的に非弾性である。例えば、封止部材は、典型的には金属である。これにより、弾性部品の使用により動作速度、信頼性、または動作寿命が損なわれ得る高性能機械において、作動閉鎖部材への衝撃力を低減することが可能になる。
【0027】
バルブステムは、作動閉鎖部材に固定的に装着されてもよい。封止部材は、バルブシートと作動閉鎖部材との中間でバルブステム上に摺動可能に装着されてもよい。
【0028】
封止部材は、作動閉鎖部材上に摺動可能に装着されてもよい。例えば、封止部材は、閉鎖位置において環状部材が作動閉鎖部材のシート形成体に接触する封止位置と、カラーがシート形成体から離間されるとともに流体収容容積の少なくとも一部がカラーとシート形成体との間に規定される開放位置との間で摺動可能なカラーを備えてもよい。
【0029】
バルブは、電機子と、電機子からの張力を作動閉鎖部材に伝達することでバルブを閉鎖させるように動作可能な剛性のバルブステムとを備えてもよい。剛性のバルブステムは、典型的には金属である。金属などの多くの物質は圧縮力よりも張力によってより容易く破断するため、本発明は、張力が剛性のバルブステムを通じて作動閉鎖部材に伝達されるバルブにおいて特に有用である。電機子は、剛性のバルブステムに剛性的に固定してもよい(例えば、剛性のバルブステムと一体的であってもよい)。電機子は、剛性のバルブステムに弾力的に固定してもよい。電機子は、電機子が剛性のバルブステムから離間された位置と、電機子が剛性のバルブステムの協働表面(バルブ部材に張力を伝達してバルブを閉鎖させるように配置された)に対して寄り掛かる位置との間で摺動可能であってもよい。
【0030】
電子制御バルブとは、受動的に開放または閉鎖可能であるが、能動的に開放可能である、能動的に閉鎖可能である、能動的にラッチ開放可能である、または能動的にラッチ閉鎖可能であるバルブを含む。本発明は、バルブ部材が相当な閉鎖力を受け得る能動的に閉鎖されるバルブとともに用いると特に有用である。しかし、本発明は、バルブ部材が例えばバルブの両側の圧力差による相当な閉鎖力を受け得る受動的に閉鎖されるバルブとともに用いても有用である。
【0031】
電子制御バルブは、典型的には、バルブの意図されるアプリケーションによって開放位置または閉鎖位置のいずれかに付勢される。
【0032】
封止部材を作動閉鎖部材から離れるように付勢する付勢手段(1つ以上の付勢部材等、例えば、1つ以上のバネ)が設けられるのが典型的である。これは、バルブが開放されているときに封止部材を作動閉鎖部材から離間された位置に戻す効果がある。しかし、付勢手段(1つ以上の付勢部材等、例えば、1つ以上のバネ)を封止部材と作動閉鎖部材との間に延在させて封止部材を作動閉鎖部材から離間された位置に付勢してもよいが、例えば、封止部材および作動閉鎖部材を独立して付勢してもよく、付勢手段(1つ以上の付勢部材等、例えば、1つ以上のバネ)をバルブ本体と作動閉鎖部材との間に延在させてもよく、さらなる付勢手段(1つ以上の付勢部材等、例えば、1つ以上のバネ)をバルブ本体と封止部材との間に延在させてもよい。
【0033】
作動閉鎖部材をバルブシートから離れるように付勢し、封止部材を作動閉鎖部材に向けて付勢してもよい。
【0034】
好ましくは、バルブシートおよび封止部材は、バルブが閉鎖位置にあるときに連続的な環状の封止接触エリアに跨って互いに接触するように適合される。
【0035】
好ましくは、バルブシートおよび封止部材は、バルブが閉鎖位置にあるときに共に封止を形成する対向する封止表面を有する。典型的には、バルブシートおよび封止部材の対向する封止表面は、バルブの開放中にバルブシートおよび封止部材が分離するときに流体が流入するバルブシートと封止部材との間の容積への流体流に対する抵抗を最小化するように適合されている。
【0036】
封止部材および作動閉鎖部材は、バルブが閉鎖位置にあるときに共に封止を形成する対向する封止表面を有し、封止部材および作動閉鎖部材は、さらに、対向する封止表面の周縁の周囲に延在するとともにそれらの間に流体収容容積の少なくとも一部を規定する対向する離間された表面を備える。
【0037】
好ましくは、封止部材および作動閉鎖部材は、それらが対向する領域の周縁の周囲を封止しないことを保証するように形成および配置されている。それらが対向する領域の周縁の周囲を封止していた場合、対向する封止表面間に流体が閉じ込められ、封止部材または作動閉鎖部材に損傷を与える可能性がある。
【0038】
封止部材および作動閉鎖部材は、流体がバルブを通じて流れるための二次経路を提供するようにバルブシートおよび封止部材が封止接触したままの間に動作可能なパイロットバルブをともに形成する協働パイロットバルブ形成体を備えてもよい。
【0039】
結果的に得られるパイロットバルブの構成により、圧力勾配に抗してバルブが開放することを容易にすることができ、好ましくは、パイロットバルブは、バルブ全体よりも大きい圧力勾配に抗して開放可能である。
【0040】
典型的には、一方の前記協働パイロットバルブ形成体は、パイロットバルブシートであり、他方の前記協働パイロットバルブ形成体は、パイロットバルブシートと協働してパイロットバルブを形成するパイロットバルブ要素である。好ましくは、パイロットバルブにより形成される封止の断面積は、封止部材とバルブシートとの間に形成される封止の断面積の10%よりも小さく、より好ましくは5%よりも小さい。
【0041】
好ましくは、封止部材と作動閉鎖部材とのいずれかまたは両方は、流体が通って流れることで圧力を平衡化することが可能な流体チャネルを備える。
【0042】
典型的には、封止部材、より典型的には作動閉鎖部材上の場所から封止部材と作動閉鎖部材との間の流体収容容積に延在することで、封止部材と作動閉鎖部材との間の流体の閉じ込めを回避または閉じ込められる流体の量を低減するように流体を逃がすための経路を提供する、第1の流体チャネルが設けられる。
【0043】
第1の流体チャネルは、作動閉鎖部材を通じて延在してもよい。第1の流体チャネルは、封止部材の反対側の作動閉鎖部材の表面における伸長凹部を備えてもよい。第1の流体チャネルは、作動閉鎖部材の反対側の封止部材の表面における伸長凹部を備えてもよい。第1の流体チャネルは、封止部材がバルブシートに接触するところの外方側(すなわち、バルブが閉鎖位置にあるときに流体流通路から封止される側)の封止部材上の場所から封止部材を通じて延在してもよい。第1の流体チャネルは、パイロットバルブ封止部材がバルブシートと封止部材との間の封止の外方側の流体と流体連通するように、作動閉鎖部材の前記パイロットバルブ封止部材に延在してもよい。
【0044】
封止部材は、バルブが閉鎖位置にあるときに封止を形成するように封止部材がバルブシートに接触するところの内方側(すなわち、流体流通路寄りの側)から延在する場所から封止部材を通じて延在する第2の流体チャネルを備えてもよい。前記流体チャネルは、パイロットバルブ要素が流体連通路と流体連通することを保証するため、封止部材の前記パイロットバルブ要素に延在してもよい。パイロットバルブが存在する場合は、好ましくは、バルブ部材のいずれの側の流体圧もパイロットバルブ封止部材に連通されるように第1および第2の流体チャネルが設けられる。
【0045】
減衰機構に加え、バルブの閉鎖中、封止部材がバルブシートに衝突した後に、電機子の移動をさらに低速化するバネなどの弾力性減速部材を設けてもよい。そのまたは各々の弾力性減速部材は、存在する場合、作動閉鎖部材に作用してもよい。そのまたは各々の弾力性減速部材は、封止部材と一体的に形成してもよい。例えば、そのまたは各々の弾力性減速部材は、封止部材と一体的であるとともに封止部材のバルブシート接触部から電機子または作動閉鎖部材(電機子に連結されたバルブステムなど)に延在する1つ以上の弾力性アームを備えてもよい。そのまたは各々の弾力性減速部材は、電機子の一部、作動閉鎖部材の一部、またはバルブ本体の一部であってもよい。
【0046】
前記バルブシート(一次バルブシート)と同様に、電子制御バルブは、さらに、パイロットバルブシートおよびパイロットバルブ封止部材を備え、バルブの閉鎖中に電機子の電磁石に向けての移動により使用時に充填されることで、パイロットバルブ封止部材をパイロットバルブシートから離れるように付勢する戻し力を提供するパイロットバルブ弾性部材により特徴付けられてもよい。
【0047】
従って、電機子の移動からのエネルギーは、弾性ポテンシャルエネルギーとしてパイロットバルブ弾性部材に蓄積され、パイロットバルブ封止部材をパイロットバルブシートから離れるように付勢することによりバルブの開放を容易にする戻し力を提供するために用いられる。この構成は、通常、バルブの高速な開放を容易にするためには電機子が速やかに移動することが重要であり、この構成では、運動エネルギーのすべては減衰により散逸されない、という点でエネルギー効率がよい。さらにその上、パイロットバルブ封止部材の移動のみにより充填された弾性部材を経由して同じ合計戻し力が提供される場合は、バルブの開放に抗する力がより大きくなり、開放を低速化し、および/またはエネルギー消費を増加させてしまう。
【0048】
典型的には、バルブは、さらに、パイロットバルブ封止部材の移動により充填され、パイロットバルブ封止部材をパイロットバルブシートから離れるように付勢する戻し力を提供する1つ以上のさらなる弾性部材を備える。1つ以上のさらなる弾性部材は、電機子とバルブ本体との間、パイロットバルブ封止部材とバルブ本体との間、および/または電機子とパイロットバルブ封止部材との間に配置されてもよい。
【0049】
好ましくは、電機子は、第1端および第2端を有する経路に沿って移動し、電機子は、バルブの閉鎖中に第1端から第2端に移動し、パイロットバルブ付勢部材は、電機子が経路の第2端に近接しているときにのみ、パイロットバルブ封止部材を封止する。これにより、特に電機子が経路の第1端(典型的には、電磁石からの引き付け力がより低い)に近接しているときに、バルブの閉鎖に抗する抵抗が最小化される。さらにその上、電機子は、典型的には、経路の第2端に近接しているときに最大の運動エネルギーを有し、電磁石から最も大きい力を受ける。
【0050】
典型的には、パイロットバルブ付勢部材は、電機子が経路の第1端から第2端までの道程の少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%だけ移動したときにのみ、パイロットバルブ封止部材を付勢する。
【0051】
パイロットバルブ付勢部材は、電機子が経路の第2端に近接しているときにのみ、パイロット移動部材に接触してパイロットバルブ封止部材をパイロットバルブシートから離れるように付勢し、パイロット移動部材が経路の第1端に近接しているときは、パイロット移動部材から離間されてもよい。
【0052】
戻し力は、電磁石が電機子を解放した後にのみ、パイロットバルブ弾性部材によりパイロットバルブに加えられてもよい。
【0053】
移動部材が、さらに、少なくともバルブの閉鎖中に電機子に固定的に接続される作動閉鎖部材を備える場合は、一次バルブシートを封止部材または作動閉鎖部材に形成してもよい。作動閉鎖部材またはその一部は、パイロットバルブ封止部材として機能してもよい。
【0054】
パイロットバルブ弾性部材は、封止部材が一次バルブシートに衝突したときにのみ、電機子の電磁石に向けての移動により使用時に充填されてもよい。
【0055】
従って、電機子に作用するピーク減速力を低減し、同時にパイロットバルブ弾性部材を充填して戻し力を提供することでバルブの再開放を容易にする構成を有する電子制御バルブが提供される。
【0056】
また、パイロットバルブ弾性部材は、封止部材が一次バルブシートに衝突する前に、電機子の電磁石に向けての移動により使用時に充填されてもよい。
【0057】
本発明の第2の態様によれば、周期的に変化する容積の作動チャンバと、流体マニホルドと、前記作動チャンバと前記流体マニホルドとの間の流体流を調整するように配置された本発明の第1の態様による電子制御バルブとを備える、流体作動機械が提供される。
【0058】
好ましくは、電子制御バルブは、排出行程中に作動チャンバから流体マニホルドに流出する流体が、バルブ部材が開放位置から閉鎖位置に移動するのと同じ方向に一次バルブシートを通じて流体通路に流入するように配向されている。
【0059】
複数の前記作動チャンバを設けてもよい。流体作動機械は、さらに、前記バルブを、およびオプションで1つ以上の他のバルブを、作動チャンバの容積のサイクルと同相の関係で能動的に制御することで、サイクル毎にそのまたは各々の作動チャンバによる流体の正味排除量を決定することにより、作動機械または前記作動チャンバの1つ以上の群による流体の時間平均正味排除量を決定するように動作可能なコントローラを備えてもよい。
【0060】
流体作動機械は、高圧マニホルドと低圧マニホルドとの両方を備えてもよく、本発明の第1または第2の態様によるバルブは、作動チャンバと高圧マニホルドとの間の流体流および/または作動チャンバと低圧マニホルドとの間の流体流を調整してもよい。
【0061】
電子制御バルブが本発明の第2の態様によるバルブである場合は、前記戻し力をバルブを開放させるために十分なものにしてもよい。前記戻し力により、バルブが抗して開放することが可能な圧力差を増加させることができる。
【0062】
本説明および付帯の請求項において、「高圧マニホルド」および「低圧マニホルド」との用語は、互いに対してより高圧およびより低圧のマニホルドをいう。高圧および低圧マニホルド間の圧力差、ならびに高圧および低圧マニホルドにおける圧力の絶対値は、アプリケーションに依存する。流体作動機械は、2つ以上の低圧マニホルドを有してもよく、2つ以上の高圧マニホルドを有してもよい。
【0063】
好ましくは、作動チャンバの容積は少なくとも20ヘルツの周波数でサイクル動作する。好ましくは、バルブは5ミリ秒未満で開放または閉鎖するように動作可能である。好ましくは、低圧マニホルドと高圧マニホルドとの間の圧力差は少なくとも10バールである。
【0064】
流体作動モータは、モータとしてのみ、またはポンプとしてのみ機能してもよい。代替として、流体作動モータは、代替の動作モードにおいてポンプまたはモータとして機能してもよい。
【0065】
以下、本発明の例示的実施形態を、下記の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】開放位置における、本発明によるバルブの断面図である。
【図2】閉鎖位置における、図1のバルブの詳細断面図である。
【図3】代替の実施形態によるバルブ部材の断面図である。
【図4A】図3のバルブ部材の封止部材の外方に面する表面の平面図である。
【図4B】図3のバルブ部材の作動閉鎖部材の内方に面する表面の平面図である。
【図5】代替のバルブ部材の部分断面図である。
【図6】代替のバルブ部材の部分断面図である。
【図7】代替のバルブ部材の部分断面図である。
【図8】代替のバルブ部材の断面図である。
【図9】代替のバルブ部材の断面図である。
【図10】さらなる代替のバルブ部材の断面図である。
【図11】代替の付勢構成を有するバルブの部分断面図である。
【図12】減衰機構が電機子に直接作用する代替のバルブの断面図である。
【図13】電機子の移動中にパイロットバルブ戻しバネが充填される代替のバルブの断面図である。
【図14】電機子の移動中に充填されるパイロットバルブ戻しバネと封止部材から切り離された電機子との両方を有する代替のバルブの断面図である。
【図15】パイロットバルブを含む代替のバルブの詳細断面図である。
【図16】本発明によるバルブを低圧バルブとして含む流体作動機械の概略図である。
【図17】本発明による高圧制御バルブの断面図である。
【図18】代替の高圧制御バルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1を参照して、バルブ1は、鋼製のバルブ本体2を備え、かかるバルブ本体により、バルブシート4と、作動チャンバ(図1では不図示)から入口8を通じて受け入れられた流体が入口8から出口10に流れるための通路をバルブが開放されているときに提供する流体流通路6とが規定される。多くのアプリケーションでは、流体は、入口から出口に、および出口から入口に、交互に流れることが可能である。
【0068】
封止部材12および作動閉鎖部材14によりバルブ部材が形成されている。封止部材は、作動閉鎖部材と、流体が通って流れることによりドラッグを低減することが可能な開口20を有する電機子18との間に延在する剛性の鋼製のバルブステム16の周囲に摺動可能に装着されている。
【0069】
バルブは、さらに、それぞれ内方および外方の電磁石22および24を備える。バルブ本体、磁束ブリッジ26、および電機子18により磁気回路が形成されている。「内方」および「外方」とは、それぞれ、バルブ部材がバルブを閉鎖するように移動する方向、およびバルブ部材がバルブを開放するように移動する方向をいう。
【0070】
封止部材は、封止部材の内方に面する表面から封止部材の外方に面する表面34に凹設されたチャンバ32に延在する通路28を有する。封止部材の外方に面する表面は、封止部材の外方に面する表面と作動閉鎖部材の内方に面する表面40との間の流体収容容積38と協働する小環状チャネル36を含む。
【0071】
封止部材と作動閉鎖部材との間に延在する第1の付勢バネ42は、封止部材を作動閉鎖部材から離れるように付勢し、バルブハウジングの一部分とバルブステムとの間に延在する第2の付勢バネ44は、封止部材をバルブシートから離れるように付勢する。代替の実施形態では、バルブ部材を閉鎖位置に向けて付勢してもよい。
【0072】
バルブ部材は、図1に示す開放位置と閉鎖位置との間で動作可能である。開放位置では、電機子、バルブステム、および作動閉鎖部材がそれらの移動の外方における限界にあり、封止部材がバルブシートから離間されることにより、流体が流体流通路および封止部材とバルブシートとの間に結果的に生じる間隙を経由して入口と出口との間を流れることが可能になる。また、封止部材は、第1の付勢バネの作用により作動閉鎖部材からわずかに離間される。図2に詳細を示す閉鎖位置では、作動閉鎖部材が、作動閉鎖部材と封止部材との間に封止が形成されるとともに封止部材とバルブシートとの間に封止が形成されるように、封止部材に対して保持されるとともに封止部材に力を加え、それにより、バルブが閉鎖され、流体が入口から出口に、またはその反対に流れることが防止される。
【0073】
この例示的実施形態では、バルブ部材が、電流が印加されると電機子に作用する電磁石の作用により開放位置と閉鎖位置との間を移動する。電機子への力は、張力としてバルブステムを通じて作動閉鎖部材に伝達される。ユニット式金属バルブヘッドを有する従来のポペットバルブでは、ポペットヘッドがバルブシートに接触すると、移動部材(バルブ部材、バルブステム、および電機子)の全質量が極めて素早く減速する。バルブステムは、典型的には、移動部材の質量を最小化するように可能な限り薄く、結果的に生じる張力により、バルブステムが破断したり、またはバルブステムの損傷を回避するためにバルブが閉鎖可能な速度に制限が設けられたりする可能性がある。
【0074】
しかし、図1のバルブ部材では、閉鎖する力が電機子に加えられバルブステムを通じて伝達されると封止部材および作動閉鎖部材がともに移動するが、封止部材がバルブシートに接触するときに封止部材と作動バルブ部材との間に流体収容容積が残る。この容積内の流体は、流体収容容積から逃がされるために径方向外方の方向に相当な距離を流れなければならず、そのため、流体収容容積からの流体流が制限される。従って、封止部材はバルブシートとの接触後に非常に素早く減速するが、作動バルブ部材の移動は、その移動の最終部分にわたり(実質的に非圧縮性の油圧流体が流体収容容積から流れる間に)減衰され、作動バルブ部材の減速が時間の経過とともに拡大されるとともにバルブステムを通じて伝達されるピーク張力が低減される。
【0075】
その結果、電機子の移動が封止部材の移動から切り離される。封止部材がバルブシートに接触すると、封止部材は非常に短い距離で減速する。しかし、作動閉鎖部材ひいては作動閉鎖部材に固定的に接続されたバルブステムおよび電機子は、移動し続けることが可能である。さらにその上、そこからの流体流が制限される流体収容容積をともに規定する封止部材および作動閉鎖部材の対向する表面は、移動部材と一体的な減衰機構として機能する。その結果、作動閉鎖部材ひいてはバルブステムおよび電機子の継続する移動が減衰され、そのため、作動閉鎖部材ひいてはバルブステムおよび電機子が減速する。作動閉鎖部材ひいてはバルブステムおよび電機子は、より長い距離にわたり減速し、その結果、封止部材が電機子に剛性的に固定された場合よりも受けるピーク力が小さい。
【0076】
図1の構成ではバルブの閉鎖は減衰されるが、バルブが開放するときは、封止部材とバルブシートとの分離に流体流がまったく抵抗を与えないか、または最小の抵抗しか与えない。従って、バルブの閉鎖は減衰されるが、バルブの開放は減衰されない。
【0077】
封止部材を通る流体連通路28により、封止部材の外方に面する表面に凹設されたチャンバから流体が出るための経路が提供される。そのため、この流体連通路により、閉鎖中に封止部材と作動閉鎖部材との間から流体が流出するための制限された経路が提供される。
【0078】
封止部材と作動閉鎖部材との間の流体収容容積から流体を排除することを可能にする流体連通路、または流体流のための他の進路を設けることが重要である。そうでなければ、封止部材および作動閉鎖部材が、それらの対向する表面の周縁の周囲を封止し、それらの間に流体を閉じ込めてしまうか、またはそれらの対向する全表面に跨って面一で封止してしまうリスクがある。これらの状況のいずれにおいても、封止部材および作動閉鎖部材に相当な力が作用し、潜在的にこれらの部材に損傷を与えるか、または振動および騒音を発生させてしまう。
【0079】
図1および図2に示す実施形態では、流体連通路は、チャンバから封止部材を通じて、バルブ本体を通る流体流通路と封止部材がバルブシートと封止接触する表面エリアとの中間に位置する封止部材の内方に面する表面上の場所に延在している。しかし、流体連通路は、封止部材を通じて封止部材がバルブシートと封止接触する表面エリアの外方側の場所に延在してもよく、または封止部材の外方に面する表面に沿って、または作動閉鎖部材を通じて、または作動閉鎖部材の外方に面する表面に沿って延在してもよい。
【0080】
図3、図4A、および図4Bは、封止部材の表面に径方向ドレンチャネル50が設けられた封止部材および作動閉鎖部材の代替の構成を示す。径方向ドレンチャネルは、作動閉鎖部材と封止接触する封止部材の接触面54の周囲に延在する環状凹部52と連通する。この構成では、接触面が、封止部材の表面の大部分よりもわずかに高くなっていることで、封止部材および作動閉鎖部材が、それらの周縁の周囲ではなくそれらの中心寄りで封止されている。
【0081】
図5〜図7は、バルブ部材の一方側または他方側と封止部材および作動閉鎖部材が重なるエリアの中心寄りの領域との間の流体連通を提供する流体連通路(ボアまたは開放チャネルであってもよい)が存在する、または、封止部材および作動閉鎖部材の対向する表面が作動閉鎖部材と封止部材との間に流体が閉じ込められないことを保証するように成形されている、さらなる代替の実施形態を示す。図5のバルブ部材では、流体連通路が作動閉鎖部材を通じて設けられている。図6のバルブ部材では、作動閉鎖部材の内方に面する表面が、封止部材の外方に面する表面に対して平行ではなく、ドラフト角度が形成されている。図7のバルブ部材では、封止部材からの中心突起53が、封止部材の周囲の外方に面する表面よりも高くなった接触表面54を有する。
【0082】
封止部材と作動閉鎖部材との間の流体収容容積からの流体流の制限により提供される減衰量(ひいては減速度)は、封止部材および作動閉鎖部材の形状および構成により決定することが可能である。例えば、図8および図9は、減衰量が相対的に高い構成を示す。図8の実施形態では、封止部材および作動閉鎖部材の略円錐状の対向する表面により、封止部材と作動閉鎖部材との間の流体収容容積から流体が排出されるために流れなければならない距離が増加している。図9の実施形態では、作動閉鎖部材は、封止部材の周縁の周囲に延在する周縁フランジを備え、流体収容容積から流体が排出されるためのより遠回りの経路を提供している。
【0083】
図10は、封止部材がバルブステムと接触するのではなく作動閉鎖部材の周囲に延在するカラーとして形成されている実施形態の概略図(付勢手段は不図示)である。封止部材は、封止部材が作動閉鎖部材のシート形成体56(作動閉鎖部材の内方に面する表面として機能する)と接触する閉鎖位置と、カラーがシート形成体から離間され、それらの間に流体収容容積が規定される開放位置(図示)との間を移動可能である。これらの実施形態では、封止部材の質量が作動閉鎖部材の質量よりも小さいかもしれない。従って、衝突時に最も速やかに減速するバルブ部材の部分(封止部材)が、バルブ部材の全質量の相対的に小さい割合となり、バルブステムへのピーク力が低減される。封止部材は、バルブシートに接触するとともに要求される減衰量を創出するために十分な広がりを有しさえすればよい。作動閉鎖部材は、閉鎖位置において流体流通路の大部分を塞ぐとともに封止部材のための機械的支持を提供するように機能する。
【0084】
封止部材が十分に小さい場合は、流体が流体収容容積から流れるための追加の経路を提供するいずれの流体連通路も要求されない。しかし、例えば、作動閉鎖部材のシート形成体における径方向凹部の形態の、流体連通路を設けることが好ましい。
【0085】
上記の機構以外の減衰機構を移動部材に一体的に設けてもよい。例えば、バルブステム内、またはバルブステムと電機子との間に減衰機構を設けてもよい。これらの場合は、バルブシート接触部分が封止部材として機能する一体型のバルブ部材を設けてもよい。各場合において、一体型の減衰機構により、封止部材および電機子の移動が切り離され、それらが互いに独立して移動し得るようになるが、バルブの閉鎖中の相対移動は減衰される。
【0086】
上記の例では、封止部材と作動閉鎖部材との間に延在する付勢部材(典型的には、バネ)により、封止部材が作動閉鎖部材から離れるように付勢されている。しかし、代替として、バルブが開放されているときに封止部材および作動閉鎖部材が所定の距離だけ離間されるように付勢されることが正味の効果であるように設けられた分離制限機構で、封止部材を内方に付勢するとともに作動閉鎖部材を外方に付勢してもよい。
【0087】
コンポーネントがこのように付勢される例示的バルブの一部分を図11に示す。このバルブでは、バルブステムが、封止部材と作動閉鎖部材との間の最大の分離を制限するように、封止部材の一部分により規定されたスロット内で摺動するフランジ62を備える。封止部材は、バルブ本体のショルダ66と封止部材の外方に面する表面の周縁68との間に延在するバネ64により外方に付勢されている。作動閉鎖部材は、バルブ本体に固定的に装着された環状部材72とバルブステムのフランジ74との間に配置された圧縮バネ70により外方に付勢されている。
【0088】
上で開示された例示的バルブアセンブリは、バルブシートを通じて延在するバルブステムを含むが、本発明は、バルブステムを伴わない、またはバルブシートから離れるように反対方向に延在するバルブステムを有するバルブアセンブリも含む。個々のバルブは、2つ以上のバルブ部材および2つ以上のバルブシートを含んでもよく、そのため、本発明は、各々が関連付けられた別々のバルブシートを有する、中心のステムの周囲に配置された複数のバルブ部材を有する環状バルブを含むバルブに拡張される。
【0089】
図12に示す代替の実施形態では、バルブ100は、バルブ部材102(そのバルブシート接触領域が封止部材として機能する)、バルブステム104、および電機子106を含む移動部材を備える。バルブステムは、バルブ部材に固定的に装着されるが、電機子は、バルブステム上に摺動可能に装着される。従って、電機子は、バルブステムの電機子に面するシート108に当接することが可能であり、以下で説明する状況では、電機子に面するシートから分離することが可能である。電機子とバルブステムのフランジ112との間に配置されたバネ110により、電機子がバルブステムに当接するように付勢される。バルブを閉鎖することが要求される場合は、電磁石114が電機子に力を作用させるように動作可能である。さらに、バルブ部材をバルブシート116から離れるように付勢する主戻しバネ(不図示)が設けられる。
【0090】
バネは、十分に強いものであり、通常の使用では電機子がバルブステムの電機子に面するシートに接触したままの状態であり、移動部材が図12に示す開放位置と、封止部材がバルブシートと封止接触する閉鎖位置との間をユニットとして移動する。しかし、バルブ部材があまりにも速やかに閉鎖すると、例えば、作動チャンバ118が意図しないポンピングストローク(流体作動ポンプおよびモータの既知の故障モードである)を行うと、バルブ部材がバルブシートに衝突するときにバルブステムを通じて電機子に作用する減速力が、予荷重が与えられたバネ110の付勢力を超える。従って、電機子は、バルブステムの電機子に面するシートから離れるように移動し、移動し続ける。バルブ本体は、電機子の周縁122に対して平行な表面を有する環状フランジ120を含む。従って、環状フランジと電機子の対向する周縁との間にスクイーズ膜が形成され、電機子の移動が減衰される。
【0091】
従って、先の例とは対照的に、代わりに電機子に直接作用する減衰機構が提供される。しかし、封止部材および電機子は、いくつかの状況では、封止部材がバルブシートに衝突した後、減衰が発生している間に電機子が移動し続けることが可能であるように、切り離されたままである。このため、電機子は、封止部材よりも長い距離にわたり減速することが可能であり、バルブステムを通じた電機子へのピーク力が低減され、バルブの動作寿命が増加するか、または可能な最大閉鎖速度が増加する。さらにその上、本例では、通常の動作条件では電機子が封止部材に対して移動しないようにバネ110への予荷重が選択されていることにより、摩耗が低減される。しかし、代替の実施形態では、バルブが閉鎖する毎に電機子が封止部材に対して移動するように予荷重をより小さくすることも可能である。
【0092】
例えば、英国特許第2,430,246号明細書(Stein)から、バルブ内にパイロットバルブを設けることが知られている。英国特許第2,430,246号明細書では、主ポペットバルブよりも先に開放し、主バルブの両側の圧力を均等化することで主ポペットバルブの開放を可能にするパイロットバルブが提供されている。
【0093】
図13に示すさらなる例示的バルブ200は、主バルブおよびパイロットバルブを含む。バルブは、封止部材として機能するポペットバルブヘッド202、バルブステム204、および電機子206を含む移動部材を有する。電機子は、バルブステムを経由してパイロットバルブ部材212に固定的に取り付けられている。ポペットバルブヘッドは、バルブステムが通って延在するカラー207に固定的に装着されている(一体的である)。ポペットバルブヘッドおよびカラーは、バルブが開放しているときは電機子がカラーに当接するとともにパイロットバルブ部材がパイロットバルブシート214から離間され、電機子が電磁石に最も接近しているときは電機子がバルブステムのフランジ222に接触しカラーから離間されるとともにパイロットバルブ部材がパイロットバルブシートと封止を形成するように、バルブステム上に摺動可能に装着されている。ポペットバルブヘッドは、バルブの閉鎖中は主バルブシート208に衝突するとともに、バルブが閉鎖されているときはポペットバルブヘッドとバルブシートとの間に封止を形成するように配置されている。
【0094】
バルブ本体と電機子との間に配置された主バネ210により、移動部材が図示のバルブ開放位置に向けて付勢される。流体チャネル216が、ポペットバルブヘッドを通じてポペットバルブヘッドとパイロットバルブ部材との間のチャンバ218に延在する。従って、パイロットバルブ部材がパイロットバルブシートから離間されているときは、流体が流体チャネルを通じて流れることが可能である。バルブが流体作動機械においてマニホルドと作動チャンバ(閉じた容積を有する)との間の流体流を調整するために用いられるときは、パイロットバルブが開放しているときはこの流れによりポペットバルブヘッドの両側のいずれの圧力差も低減することが可能であり、ポペットバルブヘッドを主バルブシートから分離することによりバルブの開放が容易になる。
【0095】
バルブ本体とバルブステムフランジとの間には、パイロットバルブ戻しバネ220が配置されている。主バルブとパイロットバルブとがともに開放されているときは、主バネが電機子を電磁石から離れるように付勢し、電機子がカラーに当接し、パイロットバルブがパイロットバルブシートから離間される。バルブを閉鎖させるには、電磁石224に電流を供給する。その結果、電機子が電磁石に引き付けられる。電機子は、バルブステムに沿って摺動してバルブステムフランジに接触し、パイロットバルブを引いて閉鎖させるとともにポペットバルブヘッドを引いて主バルブシートと封止接触させる。
【0096】
電機子の電磁石224に向けての移動により、主バネおよびパイロットバルブ戻しバネが充填される。主バネは、電磁石への電流がオフに切り替えられたときに主バルブの開放を容易にする戻し力を提供する。しかし、パイロットバルブ戻しバネは、パイロットバルブ封止部材をパイロットバルブシートから離れるように付勢する戻し力を提供する。
【0097】
パイロットバルブの表面積は、主バルブの表面積よりもはるかに小さいため、主バネおよびパイロットバルブ戻しバネの強さが適切に選定されていれば、パイロットバルブは、電磁石がオフに切り替えられたときに主バルブよりもはるかに大きい圧力差に抗して開放することが可能であり、それにより、より良好に圧力差に抗して開放することが可能なバルブが提供される。パイロットバルブ戻しバネは、電機子の移動の最後の部分においてのみ電機子に接触するため、相対的に強いものであってもよい。しかし、主バネの可能な最大の強さは、バルブを高速に閉鎖させることが可能である必要性により制限される。
【0098】
このバルブでは、電機子およびポペットバルブヘッドが切り離されており、そのため、バルブの閉鎖中、ポペットバルブヘッドが主バルブシートに衝突した後に、電機子が移動し続け、パイロットバルブ戻しバネを充填することが可能である。
【0099】
図14は、ポペットバルブヘッドが主バルブシート208に衝突した後に、ポペットバルブヘッドに対する電機子の移動が、ポペットバルブヘッドと、一部がパイロットバルブ封止部材として機能する作動閉鎖部材225との間に保持された流体により減衰される、図13のバルブの代替の実施形態を示す。
【0100】
図15は、ポペットバルブヘッド(封止部材として機能する)および電機子が切り離され、バルブがパイロットバルブを含む、バルブの実施形態の部分断面図である。図15は、主バルブおよびパイロットバルブが閉鎖されているバルブ部材の詳細図である。
【0101】
パイロットバルブは、ポペットバルブヘッド302の外方表面からの突起300により形成される。ポペットバルブヘッドと作動バルブ部材301との両方を通じて流体連通路304、306が設けられることにより、チャンバ308における流体圧がバルブ本体を通じて流体流通路310内の流体圧と平衡化され、バルブが閉鎖されているときにポペットバルブヘッドおよび作動バルブ部材の対向する表面の間に残される突起300の周囲の流体収容容積312における流体圧が作動バルブ部材の外方側の流体圧と平衡化される。従って、突起300の両側のチャンバ308と流体収容容積312との間の圧力差は、バルブが閉鎖されているときのバルブ部材の両側の圧力差と実質的に同じである。
【0102】
バルブが開放されているときは、ポペットバルブヘッドがバルブシート305から離間されている。電磁石(不図示)の電機子(不図示)に対する作用によりバルブが閉鎖するように作動されたときは、閉鎖力がバルブステム303を通じて作動閉鎖部材に伝達される。
【0103】
突起300の両側の流体圧力差による作動バルブ部材の移動に抗して作用する力は、ポペットバルブヘッドのバルブシートから離れる移動に抗して作用する力よりもはるかに、突起の封止表面314の表面積に対する封止部材とバルブシートとの間の封止により外接される表面積の比率だけ小さい。
【0104】
従って、バルブが圧力差に抗して開放されるときは、作動バルブ部材がポペットバルブヘッドよりも先に移動し始め、流体が流体連通路304および306を通じて流れ、封止部材と作動バルブ部材との間の流体収容容積を通じて径方向内方に流れるための経路が開放され、バルブ部材の両側の圧力差ひいては封止部材の両側の圧力差が平衡化される。これにより、封止部材がバルブシートからより容易く離座することが可能になり、圧力差に抗してバルブを開放することが容易になる。
【0105】
図16は、本明細書に記載の例示的バルブアセンブリ1のいずれかを、低圧マニホルド402と作動チャンバ404との間の油圧流体流を調整する低圧バルブとして組み込んだ、全体を400で示す流体作動機械の概略図である。低圧バルブは、作動チャンバから低圧マニホルドに排出された流体が、流体作動機械がモータとして機能するときは各排出行程中に、流体作動機械がポンプとして機能するときはアイドル排出行程中に、ポペットバルブヘッドが開放位置から閉鎖位置に移動するのと同じ方向にバルブシートを通じて流れるように、配向されている。
【0106】
本発明のバルブは、モータ運転アプリケーションにおける低圧バルブの高い閉鎖速度のため流体作動機械がモータとして動作しているときに特に有用である。流体作動機械がモータとして動作しているときに作動チャンバと低圧マニホルドとの間の流体流を調整するには、パイロットバルブを含むバルブアセンブリが特に有用であり、それは、これらの状況では、溶解ガスの気化を含む要因により著しい期間の間、作動チャンバ内の圧力が低圧マニホルドの圧力を上回ったままである可能性がある、膨張行程の終了時に低圧バルブを開放する必要があるからである。
【0107】
作動チャンバは、シリンダ406の内側と、好適な機械的リンク412によりクランク軸410の回転に機械的にリンクされるととともにシリンダ内で往復して作動チャンバの容積を周期的に変化させるピストン408とにより規定されている。高圧バルブ414により、高圧マニホルド416と作動チャンバとの間の油圧流体流が調整される。例示的流体作動機械は、適切な位相差を有する、同じクランク軸の回転に機械的にリンクされた複数の作動チャンバを含む。軸位置および速度センサ418は、軸の瞬間的な角度位置および回転速度を決定し、軸位置および速度信号をコントローラ420に送信することで、コントローラが、各個の作動チャンバのサイクルの瞬間的な位相を決定することを可能にする。コントローラは、典型的には、使用時に格納されたプログラムを実行するマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラである。低圧バルブは、電子的に作動可能であり、高圧および/または低圧バルブの開放および/または閉鎖は、コントローラにより能動的に制御される。
【0108】
例示的流体作動機械は、代替の動作モードにおいてポンプまたはモータのいずれかとして機能するように動作可能である。ポンプとして動作しているときは、低圧流体が低圧マニホルドから入力され、高圧バルブを通じて高圧マニホルドに出力される。このため、軸動力が流体動力に変換される。モータとして動作しているときは、高圧流体が高圧マニホルドから入力され、低圧バルブを通じて低圧マニホルドに出力される。このため、流体動力が軸動力に変換される。
【0109】
コントローラは、低圧および高圧バルブの開放および/または閉鎖を調整して、サイクル毎に作動チャンバの容積のサイクルと同相の関係で各作動チャンバを通じた流体の流体の排除量を決定することで、機械を通じた流体の正味スループットを決定する。従って、流体作動機械は、欧州特許第0361927号明細書、欧州特許第0494236号明細書、および欧州特許第1537333号明細書において開示されている原理によって動作し、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
ポペットバルブヘッドおよび電機子が切り離され、ポペットバルブヘッドのバルブシートへの衝突後の電機子の移動が減衰されるバルブは、好適な電機子の相対的に大きい質量のために相当な力が移動部材に作用するこの種の流体作動機械において、特に有用である。
【0111】
さらにその上、電機子の移動により充填されてパイロットバルブ戻し力を提供するパイロットバルブ戻しバネが設けられた図13および図14によるバルブにより、圧力差に抗してバルブを開放することが容易になる。この種のバルブは、図16による流体作動機械の作動チャンバと低圧マニホルドとの間の流体流を調整するために特に有用である。流体作動機械が流体作動モータであるか、またはモータ運転モードで動作している流体作動ポンプ−モータである場合は、作動チャンバにおける圧力が、下死点周辺で低圧マニホルドにおける圧力近くに降下する必要がある。しかし、圧力の降下に要する時間は相当なものである可能性があり、いくつかの故障モードでは、圧力が十分に降下できないかもしれない。作動チャンバ圧の低速な降下の理由には、下死点近くでの作動チャンバの容積の変化の割合が相対的に低速であること、油圧流体中の溶解空気が圧力降下により気化し、圧力低下率を低下させる可能性があること、などがある。
【0112】
図17に示す代替の実施形態は、流体作動機械400において用いるための高圧制御バルブ414(つまり、高圧マニホルド416と作動チャンバ404との間の流体流を調整するのに好適なバルブ)である。バルブ414は、固定誘導軸502上を摺動するとともに、カラー504に作用する閉鎖バネ503により閉鎖位置に付勢されたポペット501を備える。ポペットは、内側および外側の封止リッジ505、506を有し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのコンプライアント材料または鋼製であることにより、ポペットが、環状の流体ポート508に通じるバルブシート507の内側および外側の縁部にわたる良好な封止を形成することを可能にしており、前記流体ポートは、図16の作動チャンバ404に通じている。また、高圧流体が、高圧マニホルド416に通じる径方向ポート509を通じてバルブに対して出入りする。
【0113】
電機子510は、ポペットのステム511上で摺動することによりポペット501に対して移動可能である。閉じ込められた体積の流体512がポペットと電機子との間に存在し、収縮チャネル513を通じてバルブ中の流体の大半と流体連通している。電機子は、コイル515の活性化によりポール514に向けて引き付けられる。使用時、コイル515がコントローラ420により活性化されると、電機子が少し移動した後に電機子510の第1のエンドストップ516がカラー504に打ち当たり、ポペット501の両側の圧力差が十分に低いときは(例えば、作動チャンバ404の容積が最小となる直前に低圧バルブ1が閉鎖されることにより、作動チャンバ404における圧力が上昇したときは)、バルブが閉鎖バネ503に抗して開放される。コイル515は、コントローラ420がコイル515に不活性化するように命令するまで(例えば、作動チャンバの吸入行程の終了間近に)電機子510をポール514に対して保持することが可能である。ポペット501に作用する閉鎖バネ503がバルブを閉鎖させる。第1のエンドストップ516は、電機子をポペットと連動して移動させるが、ポペットがバルブシート507に打ち当たると、収縮チャネル513を通じた閉じ込められた体積512の排出により電機子が緩やかに減速する。電機子は、その第2のエンドストップ517がポペットに打ち当たるまで減速してもよい。
【0114】
図18は、流体作動機械400とともに用いるための代替の高圧制御バルブ414を示す。バルブ414は、それ自体が固定誘導軸502上を摺動するとともに閉鎖バネ503により閉鎖位置に付勢された、電機子510の周囲のカラー504を備えるポペット501を備える。電機子510に対するポペット501の移動は、電機子上の形成体、すなわちピーニングにより形成された第1のエンドストップ516および電機子内に機械加工された第2のエンドストップ517により、理想的には1mmに満たない少量に制限されるか、または完全に防止される。ポペット501は、カラー504を外側部532に接続する螺旋状アーム530を有する打ち抜きまたはレーザ切断されたバネ鋼で作製された円板バネであり、外側部532(封止部材として作用する)により、バルブシート507の内側および外側のリッジにわたり良好な封止が形成される。バルブシート507は、環状の流体ポート508に通じ、前記流体ポートは、図16の作動チャンバ404に通じている。また、高圧流体が、高圧マニホルド416に通じる径方向ポート509を通じてバルブに対して出入りする。電機子は、コイル515の活性化によりポール514に向けて引き付けられる。バルブが閉鎖位置にあるときは、閉じ込められた体積512がバルブ本体と電機子との間に存在している。
【0115】
使用時、コイル515がコントローラ420により活性化されると、電機子が少し移動した後に電機子510の第1のエンドストップ516がカラー504に打ち当たり、ポペット501の両側の圧力差が十分に低いときは(例えば、作動チャンバ404の容積が最小となる直前に低圧バルブ1が閉鎖されることにより、作動チャンバ404における圧力が上昇したときは)、バルブが閉鎖バネ503に抗して開放される。コイル515は、コントローラ420がコイル515に不活性化するように命令するまで(例えば、作動チャンバの吸入行程の終了間近に)電機子510をポール514に対して保持することが可能である。電機子510に作用する閉鎖バネ510がバルブを閉鎖させる。ポペット501の外側部532がバルブシート507に打ち当たると、電機子は、閉じ込められた体積512の排出およびポペットの螺旋状アーム530のバネ作用により減速する。電機子は、バルブ本体に打ち当たるまで減速してもよく、そのときまでには電機子の速度が大きく低減されている。
【0116】
特許請求する発明の範囲内で、さらなる変形および修正を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体作動機械の作動チャンバとマニホルドとの間の流体供給を調整するための電子制御バルブであって、前記バルブは、バルブ本体と移動部材とを備え、前記バルブ本体は、バルブシートと、前記バルブ本体を通じて前記バルブシートから延在する流体流通路とを有し、前記移動部材は、電機子と封止部材とを備え、前記バルブは、前記バルブシートと前記封止部材との間に封止が形成される閉鎖位置と、前記封止部材が前記バルブシートから離間される開放位置とを有する、電子制御バルブであって、前記バルブは、前記バルブの閉鎖中に前記電機子の移動を低速化するように動作可能な減衰機構を備え、前記封止部材および電機子は、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に、前記電機子が移動し続けかつ前記減衰機構の作用により減速できるように、互いに対して移動可能であることを特徴とする、電子制御バルブ。
【請求項2】
前記減衰機構は、前記バルブの閉鎖中、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に、前記電機子または前記電機子に固定的に接続された構造体に作用することで前記バルブ本体に対する前記電機子の移動を低速化する、請求項1に記載の電子制御バルブ。
【請求項3】
前記減衰機構は、前記移動部材と一体的であるとともに、前記バルブの閉鎖中、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に、前記封止部材に対する前記電機子の移動を低速化するように動作可能である、請求項1に記載の電子制御バルブ。
【請求項4】
前記封止部材および電機子は、前記バルブの閉鎖速度が閾値を超えるときにのみ、前記封止部材および電機子が互いに対して移動するように連結されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項5】
前記移動部材は、前記電機子を含む第1の部分と、前記封止部材を含む第2の部分とを備え、前記バルブの閉鎖速度が閾値を下回るときは、前記第1の部分が前記第2の部分に接触し前記第2の部分とともに移動するように、前記第1の部分および第2の部分は互いに対して移動可能であるが前記第1の部分は付勢部材により前記第2の部分に向けて付勢され、しかし、前記封止部が前記バルブシートに衝突し前記バルブの閉鎖速度が前記閾値を超えるときは、前記第1の部分および第2の部分は前記付勢部材に抗して互いに対して移動する、請求項4に記載の電子制御バルブ。
【請求項6】
前記減衰機構は流体減衰機構である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項7】
前記減衰機構は、前記封止部材が前記バルブシートから離間されているときは流体収容容積を少なくとも部分的に規定し、前記バルブが閉鎖されているときは前記流体収容容積から流体が排除され、前記バルブの閉鎖中に前記流体収容容積からの流体流が制限されることにより前記電機子の移動が減衰される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項8】
前記流体収容容積は、前記封止部材と前記電機子との間に規定され、前記電機子および封止部材は、閉鎖中に前記流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働することで、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に前記電機子が移動し続けることを可能にし、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に前記電機子の移動を減衰する、請求項7に記載の電子制御バルブ。
【請求項9】
前記流体収容容積は、前記バルブ本体と前記電機子との間に規定され、前記電機子およびバルブ本体は、閉鎖中に前記流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働することで、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に前記電機子が移動し続けることを可能にし、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に前記電機子の移動を減衰する、請求項7に記載の電子制御バルブ。
【請求項10】
前記移動部材は、さらに、少なくとも前記バルブの閉鎖中に前記電機子に固定的に接続される作動閉鎖部材を備え、前記減衰機構は、前記バルブの閉鎖中、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に、前記封止部材に対する前記作動閉鎖部材の移動を低速化することにより、前記封止部材に対する前記電機子の移動を低速化するように動作可能である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項11】
前記封止部材は、前記閉鎖位置では、前記バルブシートと前記封止部材との間に封止が形成されるとともに、前記封止部材と前記作動閉鎖部材との間に封止が形成されることにより、前記流体流通路が閉鎖され、前記開放位置では、前記封止部材が前記バルブシートから離間されるように、前記作動閉鎖部材と前記バルブシートとの中間に位置し、前記流体収容容積は、好ましくは、前記封止部材と前記作動閉鎖部材との間に規定され、前記封止部材および作動閉鎖部材は、閉鎖中に前記流体収容容積から排出される流体流を制限するように協働することで、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に前記作動閉鎖部材ひいては前記電機子が移動し続けることを可能にするとともに、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に前記作動閉鎖部材ひいては前記電機子の移動を減衰する、請求項10に記載の電子制御バルブ。
【請求項12】
前記バルブは、電機子と、前記電機子からの張力を前記作動閉鎖部材に伝達することで前記バルブを閉鎖させるように動作可能な剛性のバルブステムとを備え、前記封止部材は、前記バルブステム上に摺動可能に装着されている、請求項10または11に記載の電子制御バルブ。
【請求項13】
前記封止部材を前記作動閉鎖部材から離れるように付勢する付勢手段をさらに備える、請求項10〜12のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項14】
前記封止部材および前記作動閉鎖部材は、前記バルブが前記閉鎖位置にあるときに共に封止を形成する対向する封止表面を有し、前記封止部材および作動閉鎖部材は、それらが対向する領域の周縁の周囲を封止しないことを保証するように形成および配置されている、請求項10〜13のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項15】
前記封止部材および前記作動閉鎖部材は、流体が前記バルブを通じて流れるための二次経路を提供するように前記バルブシートおよび封止部材が封止接触したままの間に動作可能なパイロットバルブをともに形成する協働パイロットバルブ形成体を備える、請求項10〜14のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項16】
前記バルブの閉鎖中、前記封止部材が前記バルブシートに衝突した後に、前記電機子の移動をさらに低速化する弾力性減速部材をさらに備える、請求項1〜15のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項17】
前記封止部材の質量が前記電機子の質量よりも小さい、請求項1〜16のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項18】
前記封止部材が前記バルブシートとの封止接触から離れるように移動することによる前記バルブの開放は、実質的に減衰されない、請求項1〜17のいずれか一項に記載の電子制御バルブ。
【請求項19】
周期的に変化する容積の作動チャンバと、流体マニホルドと、前記作動チャンバと前記流体マニホルドとの間の流体流を調整するように配置された請求項1〜18のいずれか一項に記載の電子制御バルブとを備える、流体作動機械。
【請求項20】
前記作動チャンバの容積は少なくとも20ヘルツの周波数でサイクル動作し、前記バルブは5ミリ秒未満で開放または閉鎖するように動作可能であり、低圧マニホルドと高圧マニホルドとの間の圧力差は少なくとも10バールである、請求項19に記載の流体作動機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−520433(P2012−520433A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500316(P2012−500316)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050453
【国際公開番号】WO2010/106361
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(509066031)アルテミス インテリジェント パワー リミティド (25)
【氏名又は名称原語表記】ARTEMIS INTELLIGENT POWER LIMITED
【Fターム(参考)】