説明

電子制御装置

【課題】複数の基板と外部機器との接続を行うにあたり、フラットケーブルを廃止し得る電子制御装置を提供する。
【解決手段】この電子制御装置1では、それぞれ異なる回路基板21,22に接続される第1、第2コネクタ端子31,32を介して前記両回路基板21,22をそれぞれ独立して複数の外部機器と接続可能に構成したことで、前記両回路基板21,22同士を接続するために従来用いていたフラットケーブルを廃止することが可能となる。これにより、装置1の組立作業の容易化が図れると共に、当該組立作業を自動化することに供され、当該装置1のコストダウンを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載され、エンジンやブレーキ等の制御に供する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子制御装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この電子制御装置では、上下に重合して配置される2つの基板を、フラットケーブルを用いて接続することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−363179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記フラットケーブルは、その性質上、フレキシブルであるが故、基板との接続作業に手間が掛かるため、装置の生産性の向上が図れず、また、自動化の障害にもなっていた。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであって、複数の基板と外部機器との接続を行うにあたり、フラットケーブルを廃止し得る電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、とりわけ、異なる複数の回路基板に接続される複数のコネクタ端子をもって、各回路基板をそれぞれ独立して複数の外部機器と接続するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、回路基板同士を接続させることなく、複数の回路基板を複数の外部機器に接続することができるため、複数の回路基板同士を接続するために従来用いられていたフラットケーブルを廃止又は削減することができる。これにより、装置の組立作業性の向上が図れ、当該装置の生産性の向上に供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子制御装置を前面側から見た斜視図である。
【図2】同実施形態に係る本発明に係る電子制御装置を後面側から見た斜視図である。
【図3】図1に示す電子制御装置の分解斜視図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】図1に示す電子制御装置のカバーを外した状態を現す斜視図である。
【図6】図3に示すケース単体を現した斜視図である。
【図7】図3に示す回路基板ユニット単体を前面側から見た斜視図である。
【図8】図3に示す回路基板ユニット単体を後面側から見た斜視図である。
【図9】図7に示す回路基板ユニットの分解斜視図である。
【図10】図7に示す回路基板ユニットの第1回路基板を外した状態を現す斜視図である。
【図11】図3に示すコネクタ単体を前面側から見た斜視図である。
【図12】図3に示すコネクタ単体を後面側から見た斜視図である。
【図13】図7のB−B線断面図である。
【図14】図7のC−C線断面図である。
【図15】図7のD−D線断面図である。
【図16】図9に示すヒートシンクユニット単体を現した斜視図である。
【図17】図16のE−E線断面図である。
【図18】図16に示すヒートシンク単体を現した斜視図である。
【図19】図16に示す高発熱素子単体を現した斜視図である。
【図20】図16に示す保持固定手段単体を前面側から見た斜視図である。
【図21】図16に示す保持固定手段単体を後面側から見た斜視図である。
【図22】図21に示す保持固定手段に高発熱素子を組み付けた状態を現す斜視図である。
【図23】保持固定手段の他の実施形態を現した図20に相当する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る電子制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、以下に示す実施形態では、この電子制御装置を自動車のエンジン制御に適用したものを示している。
【0011】
すなわち、この電子制御装置1は、図1〜図4に示すように、金属材料よりも軽量な所定の樹脂材料によって形成された筐体10と、該筐体10内に収容され、複数のビスB1をもって固定される回路基板ユニット20と、から主として構成されている。
【0012】
前記筐体10は、回路基板ユニット20を収容固定するケース11(本発明に係る第1部材)と、その上方開口部を閉塞するように当該ケース11に被嵌することによって回路基板ユニット20を被覆するほぼ板状のカバー12(本発明に係る第2部材)と、からなり、このケース11とカバー12とは、複数のビスB2をもって固定される。そして、この筐体10の前後面には、相互に同形となるほぼ台形状の第1、第2窓部10a,10bがそれぞれ設けられていて、第1窓部10aが後記のコネクタ30により閉塞され、第2窓部10bが後記のヒートシンク40により閉塞されるようになっている。
【0013】
ここで、前記電子制御装置1では、図4に示すように、ケース11、カバー12、後記のコネクタ30及びヒートシンク40のそれぞれの接合部間に流動性を有する接着剤13が介装されることで当該各接合部間が液密にシールされ、これによって、外部から筐体10内への水分や塵埃の侵入が抑制されている。
【0014】
前記ケース11は、図5、図6に示すように、回路基板ユニット20の下面を覆う底壁14の各側辺に、その前後面に配置されてそれぞれカバー12との間で前記各窓部10a,10bを画成する第1、第2切欠部15a,16aが切欠形成された一対の第1、第2側壁15,16と、その両側面に配置される第3、第4側壁17,18と、が立設されることにより、上方が開口するように構成された箱状を呈している。
【0015】
そして、このケース11の各隅部(四隅)には、カバー13との取付固定に供するカバー取付部11aが外方へ突設されており、該各カバー取付部11aの上端面には、それぞれ前記各ビスB2がそれぞれ螺合する雌ねじ穴11bが設けられている。さらに、第3、第4側壁17,18の内側部には、回路基板ユニット20の取付固定に供する複数の基板取付部17a,18aが突出形成されると共に、該各基板取付部17a,18aの上端面には、それぞれ前記各ビスB1が螺合する雌ねじ穴17b,18bが設けられている。
【0016】
また、前記各側壁15〜18の上端面には、図5に示すように、ケース11に回路基板ユニット20が収容固定された状態において、後記のコネクタ30及びヒートシンク40にそれぞれ設けられたシール溝構成部19b,19cと連係し、全体として環状をなす一連のシール溝19を構成する一対のシール溝構成部19aが切欠形成されている。
【0017】
また、前記第1、第2切欠部15a,16aには、図6に示すように、それぞれの上端面に、後記のコネクタ30及びヒートシンク40にそれぞれ設けられた係合突条26a,45aが係合する第1、第2係合溝15b,16bが、前記両シール溝構成部19aと連続するように設けられている。このように、当該各係合溝15b,16bを前記一対のシール溝構成部19aと一連の溝を構成するように設けることにより、ケース11の成形性の向上が図られている。
【0018】
ここで、前記各切欠部15a,16aは、その両側が垂直状ではない傾斜状に構成されていて、このような両傾斜部15c,16cを設けることで、前記各係合溝15b,16b内に接着剤13を充填したときの接着剤13に対する重力の影響を緩和し、この接着剤13の充填時に当該接着剤13が前記各係合溝15b,16bの最低部15d,16dへと流れ落ちてしまう不具合が抑制されている。
【0019】
前記カバー12は、図3、図4に示すように、その裏面が所定のリブ(図示外)により補強されていて、当該裏面の周縁部には、前記シール溝19に係合可能な一連の突条12aが周方向へ連続するように下方へ突出形成されていて、シール溝19内に接着剤13が充填された状態で突条12aがシール溝19に係合することで、接着剤13を介してケース11に固定される。さらに、このカバー12の各隅部(四隅)には、ケース12との取付固定に供するケース連結部12bが外方へ突設されていると共に、これら各カバー取付部12bには、それぞれ前記各ビスB2が挿通するビス挿通孔12cが貫通形成されていて、該各ビス挿通孔12cに挿通した前記各ビスB2がケース11の前記各雌ねじ穴11bに螺着されることにより、当該カバー12がケース11に完全に固定されることとなる。
【0020】
前記回路基板ユニット20は、図7〜図10に示すように、上下に重合配置される第1、第2回路基板21,22と、第1回路基板21に実装される所定の各種電子部品23と、前記両回路基板21,22に複数のビスB3をもって挟持状態に固定され、該両回路基板21,22に接続されるコネクタユニット24と、前記両回路基板21,22に複数のビスB4をもって挟持状態に固定されるヒートシンクユニット25と、が一体化(いわゆるサブアッセンブリ)されたものである。
【0021】
前記第1、第2回路基板21,22は、いわゆるプリント配線基板であり、例えばガラスエポキシ樹脂等からなる板材の表裏面あるいはその内部等に配線回路パターン(図示外)が形成され、この配線回路パターンに、前記各種電子部品23が半田等によって電気的に接続される。ここで、前記図外の配線回路パターンは、後記のコネクタ30(第1、第2コネクタ端子31,32)を介して接続される接続先(所定の外部機器)に応じて前記各回路基板21,22に分配され、前記接続先毎に必要な回路が集約して設けられており、具体的には、本実施形態では、第1回路基板21がパワー系の基板、第2回路基板22が制御系の基板となるように構成されている。
【0022】
また、第1回路基板21の外周近傍には、前記各基板取付部17a,18aの雌ねじ穴17b,18bに対応する位置に、前記各ビスB1が挿通するビス挿通孔21aが貫通形成されており、当該各ビス挿通孔21aに挿通した前記各ビスB1がケース11の前記各雌ねじ穴17b,18bに螺着されることによって、回路基板ユニット20がケース11に完全に固定されることとなる。
【0023】
ここで、前記各種電子部品23としては、例えばコンデンサやコイル、トランジスタ等が用いられる。なお、以下では、これら電子部品23のうち、特に発熱性の高い電子部品(例えばMOS−FETやインバータ等)を高発熱素子41と称する。
【0024】
前記コネクタユニット24は、とりわけ図11〜図15に示すように、前記両回路基板21,22及び筐体10への取付に供され、筐体10への取付状態において当該筐体10前面の一部を構成する取付基部26と、該取付基部26の外側面に突設されることによって筐体10の外部へと臨み、その内部に収容された、第1、第2回路基板21,22に接続される第1、第2コネクタ端子31,32と共に外部機器(例えば各種センサやポンプ等)のコネクタ(図示外)に接続される3つの第1〜第3接続口27〜29と、を有する樹脂材料によって形成されたコネクタ30に、前記両回路基板21,22同士を接続するバスバー端子33がインサート成形されることによって一体に構成されている。
【0025】
前記取付基部26は、図11、図12に示すように、その内側部に、前記各回路基板21,22との連結に供する一対の基板連結部34,35が突出形成されると共に、該各基板連結部34,35の上下端面34a,34b、35a,35bには、それぞれ前記各ビスB3が螺合する雌ねじ穴34c,35cが設けられていて、当該各基板連結部34,35の上下端面34a,34b、35a,35bが前記両回路基板21,22に挟持された状態で、前記各ビスB3をもって当該両回路基板21,22に固定される(図13参照)。なお、前記各雌ねじ穴34c,35cは、いずれも、上下に隔成される袋状に設けてもよく、また、上下に貫通するように設けてもよい。
【0026】
また、前記取付基部26は、図1、図5及び図11に示すように、第1窓部10aに対応するほぼ台形状に形成されていて、その両側部及び下部に、第1係合溝15bに係合可能な一連の係合突条26aが外方へ突出形成されており、この係合突条26aが接着剤13を介して第1係合溝15bに係合することによって、コネクタユニット24がケース11に接着固定される。さらに、この取付基部26の上端部には、ケース11に有するシール溝構成部19aと連係して前記シール溝19の一部を構成するシール溝構成部19bが切欠形成されており、該シール溝構成部19bにカバー12の突条12aが接着剤13を介して係合することによって、コネクタユニット24とカバー12とが接着固定されることとなる。
【0027】
前記第1コネクタ端子31は、図11〜図13に示すように、それぞれ金属板をほぼL字状に曲折してなり、それぞれ、一端側が前記パワー系基板である第1回路基板21に接続される一方、他端側がコネクタ30の背面から第1、第2接続口27,28内に挿入されることで外部へ臨むように構成されている。
【0028】
前記第2コネクタ端子32は、図11、図12及び図14に示すように、それぞれ金属棒をほぼL字状に曲折してなり、それぞれ、曲折部32aが取付基部26の内側面に突設されたコネクタ端子保持部36によって保持されつつ、一端側が前記制御系基板である第2回路基板22に接続される一方、他端側がコネクタ30の背面から第3接続口29内に挿入されることで外部へ臨むように構成されている。
【0029】
前記バスバー端子33は、図11、図12及び図15に示すように、それぞれ金属棒の両端部を僅かに曲折してなるもので、それぞれ、直線状の中間部33aが取付基部26の内側面に突設されたバスバー端子保持部37によって保持されつつ、一端側が第1回路基板21に接続される一方で、他端側が第2回路基板22に接続されることで、前記両回路基板21,22同士を接続するように構成されている。これにより、制御系の第2回路基板22からパワー系の第1回路基板21へ駆動(制御)信号が伝達される一方、パワー系の第1回路基板21から制御系の第2回路基板22へ状況信号が伝達(フィードバック)されるようになっている。
【0030】
ここで、かかるバスバー端子33の各端側は、前記各回路基板21,22のバスバー挿通孔21b,22bに合わせて曲折されることによって、バスバー端子33の前記各バスバー挿通孔21b,22bへの挿入時におけるバスバー端子33と前記各バスバー挿通孔21b,22bの内周部との接触が抑制され、これによって、このバスバー端子33と前記各回路基板21,22の接続時に、当該バスバー端子33の各接続部において応力が発生してしまう不具合が抑制されている。
【0031】
前記ヒートシンクユニット25は、図16〜図22に示すように、前記両回路基板21,22間に挟持状態に固定されると共に筐体10に接着固定され、主として前記各高発熱素子41の放熱に供するヒートシンク40と、該ヒートシンク40の内側面40aにそれぞれ周知の絶縁シート43を介して当接配置される6つの高発熱素子41と、該各高発熱素子41を一体的に保持固定する保持固定手段42と、から構成されている。
【0032】
前記ヒートシンク40は、図2、図8に示すように、鉄やアルミニウム等の放熱性に優れた金属材料によりほぼ矩形板状に形成されたもので、前記両回路基板21,22との連結に供する基板連結部44と、該基板連結部44の外側部に延設され、筐体10への取付状態において当該筐体10後面の一部を構成する筐体連結部45と、から主として構成されている。
【0033】
前記基板連結部44には、図16、図18に示すように、その上下端面44a,44bに、それぞれ前記各ビスB4が螺合する雌ねじ穴44cが設けられていて、当該上下端面44a,44bが前記両回路基板21,22に挟持された状態で、前記各ビスB4をもって当該両回路基板21,22に固定される(図13〜図15参照)。なお、前記各雌ねじ穴44cは、上下に隔成された袋状に設けてもよく、また、上下に貫通するように設けてもよい。さらに、この基板取付部44の内側面には、保持固定手段42の位置決めに供する6つの位置決め穴44d及び同保持固定手段42の固定に供する3つの雌ねじ穴44eが、それぞれ、当該ヒートシンク40の長手方向に沿って一直線上に、所定間隔をもって並列に設けられている。なお、これら各位置決め穴44d及び各雌ねじ穴44eは、いずれも外部に非貫通の袋状に形成されている。
【0034】
前記筐体連結部45は、図2、図5及び図8に示すように、第2窓部10bに対応するほぼ台形状に形成されていて、その両側部及び下部に、第2係合溝16bに係合可能な一連の係合突条45aが外方へ突出形成されており、この係合突条45aが接着剤13を介して第2係合溝16bに係合することによって、ヒートシンクユニット25がケース11に接着固定される。さらに、このヒートシンク40の上端部には、図5、図16及び図17に示すように、ケース11に有するシール溝構成部19aと連係して前記シール溝19の一部を構成するシール溝構成部19cが切欠形成されており、該シール溝構成部19cにカバー12の突条12aが接着剤13を介して係合することによって、ヒートシンクユニット25とカバー12とが接着固定されることとなる。
【0035】
前記各高発熱素子41は、図19、図22に示すように、当該各部品41の中核をなす所定の電子部品(図示外)が内蔵された部品本体46と、前記図外の電子部品の第1回路基板21への接続に供する3つの端子47と、前記図外の電子部品に当接配置され、当該図外の電子部品の放熱に供するヒートシンク部48と、が樹脂モールド49をもって一体に構成されている。
【0036】
前記各端子47は、いずれも同形状を呈し、基端側から先端側へ段差縮幅状に構成され、基端側の拡幅部47aと先端側の縮幅部47bとの間に段部47cが形成されていて、前記各47bが第1回路基板21の端子挿通孔21cに挿通された状態で半田付けされることによって、前記各高発熱素子41が当該第1回路基板21に電気的に接続されることとなる。
【0037】
前記ヒートシンク部48は、前記ヒートシンク40と同様に、鉄やアルミニウム等の放熱性に優れた金属材料によりほぼ矩形板状に形成されていて、前記各高発熱素子41の背面においてその大部分が露出するように設けられている。そして、このヒートシンク部48が絶縁シート43を介してヒートシンク40の内側面に当接配置されることにより、前記図外の電子部品の熱を当該ヒートシンク部48からヒートシンク40を介して外部へ放熱するようになっている。さらに、このヒートシンク部48の下端側には、保持固定手段42による前記各高発熱素子41の位置決めに供する位置決め孔48aが貫通形成されている。
【0038】
前記保持固定手段42は、図16、図17、図20〜図22に示すように、前記各高発熱素子41についての上下及び左右の幅方向の位置決めを行いつつヒートシンク40に取付固定される一連の取付基部51と、該取付基部51の長手方向に沿ってそれぞれ並列に配置され、前記各高発熱素子41の整列保持に供する6つの整列保持部52と、が樹脂材料により一体成形されたいわゆるブレース部材50において、取付基部51の内部(内側)に金属材料からなる補強部材53がインサート成形されたものであり、取付基部51を介して3つのビスB5をもってヒートシンク40の内側面に固定されている。このように、大部分を樹脂材料によって形成しつつも、補強部材53をインサートすることで、軽量化と強度の両立が図られている。
【0039】
前記取付基部51は、その上部に前記各整列保持部52が延設され、前記各高発熱素子41の位置決めを行う6つの第1〜第6位置決め部54〜59と、第1、第2位置決め部54,55間、第3、第4位置決め部56,57間及び第5、第6位置決め部58,59間に配置される3つの第1〜第3取付部61〜63と、を有し、図21に示す内側部は、その全体が樹脂材によって覆われている一方、図20に示す外側部は、前記各位置決め部54〜59に対応する部分のみが樹脂材によって覆われ、前記各取付部61〜63に対応する部分については、補強部材53が露出した状態となっている。すなわち、前記各ビスB5の頭部と当接(圧接)する部分については、金属製の補強部材53を露出させることにより、保持固定手段42をヒートシンク40に強固に固定できるようになっている。
【0040】
前記各位置決め部54〜59には、図17、図21に示すように、それぞれ、前記各高発熱素子41の前記各位置決め孔48aに嵌挿されて、当該各高発熱素子41の上下左右の両方向の位置決めを行う第1〜第6位置決め突起54a〜59aが突設されている。かかる構成から、前記各高発熱素子41は、それぞれの位置決め孔48aに前記各位置決め突起54a〜59aが挿通した状態で、該各位置決め突起54a〜59aが前記各位置決め孔44dに嵌挿されることにより、前記各ヒートシンク部48を介して取付基部51の内側面51aとヒートシンク40の内側面40aとの間に挟持固定される。
【0041】
前記各取付部61〜63には、図20、図21に示すように、それぞれ前記各ビスB5が挿通するビス挿通孔61a〜63aが貫通形成されており、該各ビス挿通孔61a〜63aに挿通した前記各ビスB5を前記各雌ねじ穴44eに螺着させることで、当該保持固定手段42がヒートシンク40に固定される。
【0042】
前記各整列保持部52は、図17、図20〜図22に示すように、それぞれ取付基部51における前記各位置決め部54〜59の外側部上端から取付基部51の上下幅方向(鉛直方向)に沿って延設され、後記の各端子保持部52bを支持する支持壁52aと、この支持壁52の先端に当該支持壁52に対して内側に突出するように設けられ、後記の各端子挿通孔52cを介して前記各高発熱素子41の前記各端子47を保持する端子保持部52bと、を有するほぼ逆L字形状に構成されていて、当該各整列保持部52と取付基部51とにより、前記各高発熱素子41が収容される凹状の部品収容部60が形成されるようになっている。
【0043】
前記各端子保持部52bには、前記各端子47の縮幅部47bが挿通可能であって前記各高発熱素子41の回転方向の位置決めが可能な程度の内径に設定された3つの端子挿通孔52cが、その左右幅方向(取付基部51の長手方向)に沿って並列に設けられている。
【0044】
そして、かかる構成から、前記各高発熱素子41は、図22に示すように、前記各端子挿通孔52cに前記各端子47が挿通されると共に、前記各ヒートシンク部48の位置決め孔48dに前記各位置決め突起54a〜59aが挿通されることで、前記各所定方向の位置決めがされた状態で保持固定手段42に仮固定(いわゆるサブアッセンブリ)されるようになっている。なお、以下、このようにして仮固定されたものをブレースアッセンブリBAと称す。
【0045】
以下、以上のように構成された電子制御装置1の組立方法(手順)について、図面に基づいて説明する。
【0046】
まず最初に、前記ブレースアッセンブリBAを構成する。すなわち、図19、図21及び図22に示すように、前記各高発熱素子41の前面(樹脂モールド49側の面)を保持固定手段42の前記各支持壁52aの内側面に対向させるようにして、前記各端子47の縮幅部47bを前記各端子挿通孔52cに挿通した後に、前記各ヒートシンク部48の位置決め孔48aに当該保持固定手段42の前記各位置決め突起54a〜59aを挿通させることによって、前記各高発熱素子41を保持固定手段42に仮固定して、当該ブレースアッセンブリBAが構成されることとなる。
【0047】
続いて、前記ヒートシンクユニット25を構成する。すなわち、前記ヒートシンク40の内側面40aの所定位置に絶縁シート43を貼り付けた後、前記ブレースアッセンブリBAを、前記各位置決め突起54a〜59aを前記各位置決め穴44dに嵌挿させることによって当該ブレースアッセンブリBAの位置決めを行い、その後、前記各ビスB5を、前記各ビス挿通孔61a〜63aを通じて前記各雌ねじ穴44eに螺着させることによって、当該ブレースアッセンブリBAをヒートシンク40に固定して、当該ヒートシンクユニット25が構成されることとなる。
【0048】
次に、前記回路基板ユニット20を構成する。具体的には、まず、図9に示すように、当該ヒートシンクユニット25を第2回路基板22の後端部に前記各ビスB4によってねじ固定する。続いて、このヒートシンクユニット25が取り付けられた第2回路基板22の前端部に第2コネクタ端子32の一端部及びバスバー端子33の他端部をそれぞれ半田付けにより接続した後、コネクタユニット24を当該第2回路基板22に前記各ビスB3によってねじ固定する。こうして第2回路基板22にそれぞれ取付固定されたコネクタユニット24とヒートシンクユニット25の上部に前記所定の各種電子部品23が実装された第1回路基板21を載置して、第1回路基板21の前端部に第1コネクタ端子31の一端部及びバスバー端子33の一端部を、第1回路基板21の後端部に前記各高発熱素子41の前記各端子47を、それぞれ半田付けにより接続する。その後、第1回路基板21とコネクタユニット24及びヒートシンクユニット25とを前記各ビスB3,B4をもって連結することによって、当該回路基板ユニット20が構成されることとなる。
【0049】
ここで、本実施形態では、前記保持固定手段42の前記各端子保持部52bにより、前記各高発熱素子41を、前記各端子47の向きを適切な状態で保持したままヒートシンク40に位置決め固定できることから、その後、これら各高発熱素子41を、その姿勢修正等を行うことなく前記各端子47を第1回路基板21の前記各端子挿通孔21bへと挿通させることが可能となり、これによって、前記各高発熱素子41と第1回路基板21との容易な接続が図れる。この結果、装置1の組立作業性を向上させることができる。
【0050】
換言すれば、従来では、複数の高発熱素子を1つずつ筐体の側壁に取付固定することとしていたため、必ずしも全ての高発熱素子が適切に取り付けられるとは限らない。このため、前記各高発熱素子と回路基板とを接続する際、前記各高発熱素子が1つでも適切に取り付けられていない場合には、当該回路基板の組み付けを行うことができず、その取り付けが非適切な高発熱素子の姿勢の修正を余儀なくされてしまっていた。これに対し、本実施形態では、保持固定手段42により前記各高発熱素子41を適切な姿勢でヒートシンク40に位置決め固定できることから、前記従来のような高発熱素子の姿勢修正を全く行うことなく、第1回路基板21にそのまま半田付けして当該第1回路基板21との接続を完了させることができる、といった前記各高発熱素子41と第1回路基板21との良好な接続作業性が得られることとなる。
【0051】
しかも、本実施形態に係る前記保持固定手段42の場合、全ての高発熱素子41を位置決めした状態で一括してヒートシンク40に固定する構造となっていることから、前記従来のように各高発熱素子を1つずつ取付固定する場合に比べて、当該各高発熱素子41の固定作業を円滑かつ容易に行うことができる。これにより、装置1の組立作業性のさらなる向上が図れる。
【0052】
また、従来では、高発熱素子の筺体への固定にあたって、当該筺体に設けた貫通孔を介して外側からねじ固定することとしていたため、本実施形態のような防水構造を採用するには、高発熱素子を筺体に固定した後に前記各貫通孔をシールする必要があったが、本実施形態では、前記保持固定手段42をヒートシンク40の外側面に非貫通となる前記袋状の雌ねじ穴44eをもってヒートシンク40の内側からねじ固定するように構成したことから、前記防水構造を採用するにあたって、従来のような高発熱素子の固定後の防水処理を省略することができる。したがって、かかる観点からも、装置1の組立作業性の向上が図れる。
【0053】
続いて、前記回路基板ユニット20の組立完了後、該回路基板ユニット20をケース11に収容固定する。すなわち、図3、図5及び図6に示すように、ケース11の前記各係合溝15b,16bに接着剤13を充填した後に、この接着剤13が充填された前記各係合溝15b,16bに前記コネクタ30及びヒートシンク40の各係合突条26a,45aをそれぞれ係合させるように、回路基板ユニット20をケース11内に嵌挿する。そして、第1回路基板21の前記ビス挿通孔21aに前記各ビスB1を挿通し、当該各ビスB1をケース11の前記各雌ねじ穴17b,18bに螺着させることにより、当該回路基板ユニット20がケース11に完全に固定されることとなる。
【0054】
最後に、この回路基板ユニット20が収容されたケース11にカバー12を取付固定する。すなわち、前記回路基板ユニット20が収容されたケース11の上端部外周縁に構成されたシール溝19に接着剤30を充填した後、この接着剤30が充填されたシール溝19にカバー12の突条12aを係合させるように、当該カバー12をケース11の上部に載置する。そして、カバー12の前記各ビス挿通孔12cに前記各ビスB2を挿通し、当該各ビスB2をケース11の前記各雌ねじ穴11bに螺着させることによって、カバー12がケース11に完全に固定されることとなり、当該電子制御装置1の組立が完了する。
【0055】
このように、前記両回路基板21,22とコネクタ30とヒートシンク40とを回路基板ユニット20としてサブアッセンブリ可能な構造を採用したことで、前記電子制御装置1の組立に際し、ケース11、カバー12及び当該回路基板ユニット20をいわゆる積層状態に組み付けることが可能となる。これにより、前記電子制御装置1の組立時において、接着剤13を塗布した後に当該装置1を反転するような作業を廃止できるため、ケース11やカバー13等の接着不良を招来するおそれがなく、当該装置1の良好な防水性を確保することができる。さらには、かかるサブアッセンブリ化によって、前記電子制御装置1の組立時における取り扱いが容易となり、当該装置1の組立作業性の向上にも供されることとなる。
【0056】
以上、本実施形態に係る電子制御装置1によれば、前記外部機器毎に必要とされる回路(前記配線回路パターン)を前記各回路基板21,22に分配して集約配置し、前記各コネクタ端子31,32をそれぞれ異なる回路基板21,22に接続させることで、当該各コネクタ端子31,32を介して前記各回路基板21,22をそれぞれ独立して前記各外部機器と接続するように構成したことから、前記フラットケーブルを廃止又は削減することが可能となる。これによって、装置1の組立作業の容易化が図れると共に、当該組立作業を自動化することに供され、当該装置1のコストダウンを図ることができる。
【0057】
さらに、前記各コネクタ端子31,32によって前記各回路基板21,22の前記各外部機器との独立した接続を可能にしたことで、前記各回路基板21,22の余分な接続を回避でき、当該配線回路パターンの短縮化にも貢献できる。したがって、かかる観点からも、前記両回路基板21,22の小型化が図れ、装置1の一層の小型化及び軽量化に供されることとなる。
【0058】
また、このような構成に加えて、本実施形態では、コネクタ30(コネクタユニット24)に一体化したバスバー端子33によって当該両回路基板21,22の接続をも可能にしたことから、回路構成上、前記集約配置が困難である場合や回路基板が多数重合する場合等、回路基板同士を接続する必要が生じた場合であっても、前記フラットケーブルを用いる必要がないため、同様に装置1の組立作業の容易化に寄与することができる。
【0059】
また、上記のような構成によって前記フラットケーブルを廃止することで、前記装置1の組立作業の容易化が図れるほか、当該フラットケーブルによって前記両回路基板21,22において各種電子部品23の搭載が制限される領域を縮小することができる。これにより、前記両回路基板21,22のさらなる小型化が図れ、装置1のさらなる小型化及び軽量化に供される。
【0060】
また、本実施形態では、前記ヒートシンク40を筺体10の一部として構成したことから、当該筺体10の面積を有効活用することができ、筺体の側壁にヒートシンクを重合配置する場合に比べて、装置1の軽量化が図れると共に、当該ヒートシンク40を外気に直接触れさせることができ、前記各高発熱素子41の良好な放熱にも供される。
【0061】
しかも、本実施形態にあっては、筐体10とヒートシンク40を別体に構成すると共に、ヒートシンク40のみを放熱性に優れた金属材料により形成し、外装の大部分を占める筐体10を金属材料に比べて軽量な樹脂材料により形成するようにしたことから、ヒートシンク40によって必要とされる放熱性を確保しつつ、当該装置1の大幅な軽量化を図ることができる。
【0062】
さらには、このように、構成部品として大きな面積を有する外装に係る筐体10を樹脂材料により形成するようにしたことから、装置1のさらなるコストダウンにも貢献できる。
【0063】
本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば筐体10やコネクタ30、ヒートシンク40の形状については、電子制御装置1の仕様や適用対象となる自動車の仕様等に応じて任意に変更することができる。
【0064】
また、前記筐体10については、前記樹脂材料以外に、ヒートシンク40と同様、放熱性に優れた金属材料によって形成することも可能である。この場合、装置1についての大幅な軽量化は図れないものの、その分、当該装置1の放熱性を大幅に向上させることが可能となる。換言すれば、筐体10の材質についても、電子制御装置1の仕様や適用対象となる自動車の仕様等に応じて任意に変更することができる。
【0065】
また、前記実施形態においては、前記バスバー端子33によって前記両回路基板21,22を接続する構成となっているが、前記配線回路パターンの集約配置のみで足りる場合等にあっては、当該バスバー端子33による前記両回路基板21,22の接続を省略してもよい。換言すれば、このバスバー端子33による前記両回路基板21,22の接続は必ずしも必要な構成ではなく、電子制御装置1の仕様や適用対象となる自動車の仕様等に応じて任意に変更することができる。
【0066】
さらに、前記保持固定手段42は、前記各実施形態のように必ずしも全ての前記各支持壁52aが取付基部51と連係している必要はなく、例えば図23に示すように、取付基部51の両端部に位置する支持壁52aのみを当該取付基部51と連係させて、前記各端子保持部52を一体化することによってほぼ枠状に構成することも可能であって、取付基部51の両端部を除く中間領域においては、前記各端子保持部52に少なからず前記各支持壁52aが立設されてさえいれば、前記各実施形態と同様の作用効果を奏することができ、全ての前記各支持壁52aが取付基部51と連係している必要はない。換言すれば、この保持固定手段42は、前記各高発熱素子41を位置決めした状態で仮固定可能な構成であればよく、その具体的形状については、電子制御装置1の仕様やコスト等に応じて自由に変更可能である。
【0067】
また、前記各実施形態においては、前記筐体10に当該筐体10の内圧調整に供するいわゆる呼吸孔及びこれに付設する呼吸フィルタを設けない構成を例に説明したが、電子制御装置1の仕様ないし適用対象となる自動車の仕様等に応じて当該呼吸孔等を設ける構成としてもよい。そして、かかる呼吸孔等は、筐体10を構成するいずれかの部位に設けられていればよく、その位置についても自由に設定可能である。
【符号の説明】
【0068】
21…第1回路基板(複数の回路基板)
22…第2回路基板(複数の回路基板)
30…コネクタ
31…第1コネクタ端子(複数のコネクタ端子)
32…第2コネクタ端子(複数のコネクタ端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を持って重合配置される複数の回路基板がコネクタを介して複数の外部機器と接続可能に構成された電子制御装置において、
前記コネクタには、異なる前記複数の回路基板に接続される複数のコネクタ端子が配設され、
該各コネクタ端子をもって、前記各回路基板をそれぞれ独立して前記各外部機器と接続するように構成したことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記複数の回路基板のうち少なくとも一部の回路基板同士が、前記コネクタと一体に構成されたバスバー端子によって相互に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記バスバー端子は、前記各回路基板と接触しないように構成され、当該非接触状態で前記各回路基板と電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−68796(P2012−68796A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211976(P2010−211976)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】