説明

電子励起式モータ

【課題】低負荷のもとでの優れた効率と高速での大きなトルクとを同時に得ることを可能にするのを提供することである。
【解決手段】三相の巻線で成るコイルと、ロータ位置センサ(18)と速度基準信号(Vc)とに結合された入力を有しかつプロセッサ(28)の制御下で位相を進める電源回路を含む電子制御モジュールとを有するステータ−ロータアセンブリを備え、プロセッサが、相が電流パルスで供給される間に時間重複しない第1モードと、2つのコイルへ供給される出力が33%だけオーバーラップする第2モードとにおいて速度を制御するために可変のデューティレシオで位相を進め、かつ、該レシオが70%から100%の範囲の所定の値に達するときに第1から第2モードへ切換を生じさせ、かつ、前記レシオが他の所定値以下に落ちたときには第2から第1モードへ切換を生じさせるように設計されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、許容効率及び低コストの両方を要する応用に対して、“ブラシレス”モータとしても周知の電子励起式モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子励起式モータはステータ−ロータアセンブリを備え、そのアセンブリは、構成要素の一つが通常三相の巻線で成るコイルと、ロータ位置センサと速度基準信号とに結合された入力を有しかつプロセッサの制御下でDC源から位相を動かす電源回路を含む電子制御モジュールとを有するものである。
【0003】
一般に、効率の理由は、プロセッサをいわゆる“120°”モードで位相を動かすように設計されている。この場合には、モジュールは、パルス幅変調(PMW)によって様々な位相の時間長の間にオーバーラップなしで速度を調整するために、変動するデューティレシオを有する周期的電圧パルスによって三相モータの2つの相を順に供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、その電源モードは、高速では不十分であってかつある条件(例えば、低速度で激しくタイヤを操縦するときにパワーステアリングアクチュエータを作動するか、又は、静止している)のもとで作動条件に余り適合しない速度/トルク特性を示すという欠点がある。
【0005】
同時にパルスを供給する三相全てを生じるいわゆる“180°”モードも周知である。しかしながら、特にジュール効果による損失が増大する大きな反応要素の存在のため、モータが軽く負荷をかけられているときには、そのモードの制御は効率が低い。
【0006】
本発明は、特に、実際の要求を従来周知のモータよりよく満足させるモータを提供すること、特に、低負荷のもとでの優れた効率と高速での大きなトルクとを同時に得ることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、様々な相が電気パルスで供給される時間長の間に時間オーバーラップすることがない第1モードと2つの相へ供給される電力のオーバーラップが33%である第2モードとの双方のモードにおいて速度制御を提供するためであって、デューティレシオが70%から100%の範囲の所定の値に達するときに第1モードから第2モードへ切換が生じ、かつ、デューティレシオが他の所定の値以下に落ちたときには第2モードから第1モードへ切換が生じることを伴って、そのプロセッサが可変のデューティレシオで位相を与えるように設計された電子励起式モータを提供する。他の値は、ヒステリシスを形成することによって“乱調(hunting)”を回避するために選択される。
【0008】
第1モードから第2モードへの切換が滑らかに起きることを保証するため、格納したテーブルで新しいデューティレシオを検索することによって、デューティレシオがこの切換の間に変化させられる。制御は通常比例積分(PI)型である。一モードから他のモードへの切換は、速度対応テーブルで検索された値をもとに積分項を修正することを伴うと好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のモータの回路図である。
【図2】120°モードの様々な相の供給時間長を示すタイミング図である。
【図3】180°モードの様々な相の供給時間長を示すタイミング図である。
【図4】120°モードにおけるトルク/電圧特性を示す図である。
【図5】180°モードにおけるトルク/電圧特性を示す図である。
【図6】一方のモードから他方のモードへ変化した効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記特徴と他の特徴とは非限定的な例として与えられた特別な実施形態の以下の説明を読むことでより明確になるだろう。
【0011】
その電子回路を図1に示したモータは、永久磁石ロータ10を有する従来型構造のアセンブリと、ロータ位置センサ18を有する3個のコイル(又は3セットのコイル)12を有するステータと、を備えている。制御モジュールはDC源16からコイルに給電する作用を行う。このモジュールはステータ上に直接据え付けられていると有利である。モジュールは、各コイル12に給電する3つの枝を有する。各枝の両端はDC源16の端子の一つに接続され、各枝は直列に接続した2つのスイッチを備えている。各スイッチは一方向にだけ電気が流れる要素24に並列である。スイッチは通常MOSトランジスタから成り、また、要素24は固体ダイオードから成る。
【0012】
図1で示したコイルは星形結線されている。その各々は枝の一つの中間点から電力が供給されている。三角結線も可能である。
【0013】
示した回路はデジタル式で制御されている。回路は、速度用の基準値を示す数値信号Vcを受ける一入力とロータの速度を表すデジタル信号Vmを受ける他の入力とを有する減算器26を含んでいる。この信号Vmは特定のセンサによって供給することができる。さらに、その信号は、出力信号を位置センサ18から受けるプロセッサ28によって発せられる。
【0014】
プロセッサ28は、各継続時間Tの連続する時間長の間、コイルに供給される周期的電圧パルスがデューティレシオτ/t(あるいは、PWM)を表す出力30にデジタル信号を供給するように設計されている。この信号は、減算器26により供給される誤差信号εvをもとにして作られる。電源スイッチ20及び22を制御する回路32は、デューティレシオPMWの値をもとに、及び、ロータの位置を与えるセンサ18が送る信号をもとに、及び、周波数制御及び同期信号34をもとに、スイッチ閉信号を生成する。1分あたり数1000回転を超えない最大速度を有する電子モータに対しては、5kHzから20kHzのパルス周波数が通常よい結果を与える。
【0015】
図2は、スイッチ20及び22が120°モードで閉じている間の時間長Tの継続を示している。各線は図1の対応するスイッチに与えられる基準に対応する基準を示している。図2の“120°”モードは高効率を示すという利点がある。しかしながら、このモードでの作動時のモータの速度/トルク特性は図4で示したような特性である。高いトルクは低速度でだけ得られる。100%のデューティレシオが一度達成されると、トルクのいかなる増加も電流の増加によって得ることができ、電流は図4の曲線の右側の限界に対応して、巻線の定格と同等な値に限定する必要がある。電流は帰地回路におけるレジスタ38の端子間の電圧をもとに測定できる。
【0016】
モータの180°モードは、図3で示したタイミング構成でスイッチを閉じる。図5の曲線40は、このモードでの作動特性の例を与える。以下に説明するように、使用するサーボ制御は比例−積分型である。従って、デューティレシオ(PMW)の異なる値に対応する図5における点線で表したような特性群が存在する。
【0017】
本発明の特別の実施形態では、プロセッサ28は作動を120°で開始させかつ120°から180°にわたって制御回路32を変化するように設計されている。そして、図6で符号42で示したような特性を得ることが可能である。
【0018】
一方のモードから他方のモードへの移行が滑らかに行われるためには、制御回路を、120°モードの初期特性からトルクの同じ値に近い180°モードの特性へスイッチさせることが適切である。これは、デューティレシオ(又はPMW)を例えば、格納された対応テーブルにおいて検索することによって変化する必要があることを意味している。比例−積分型制御によれば、この結果は、メモリ44に格納した検索テーブルをもとにするのと同様に、速度の関数として積分項を変化することによって得ることができ、又は寄与し得る。
【0019】
デジタルサンプルnに対する速度誤差をεnと書くならば、以下の形を有する積分項int(n)を用いることも可能である:
int(n)=int(n-1)+εn.ki
ここで、kiは積分項の係数である。
【0020】
デューティレシオPWM(n)は以下の式によって与えられる:
PMW(n)=Kp.εn+int(n)
【0021】
180°モードに切換するとき、上記数式が与える項int(n+1)は、メモリに格納された速度とPMWとの関数である他の項int(n+1)によって置換される。
【0022】
移行を容易にするために、180°モードへの切換は、単に切換を遅延することによって時間長Tにおいて上昇局面又は下降局面で起きると好都合である。
【0023】
プロセッサ28は、乱調すなわち2つのモード間での高速交替のいかなる危険も回避するように選択された新しいデューティレシオ値で、制御回路を120°に戻すように設計されている;デューティレシオ(あるいはPMW)は、切換中に、メモリ44のテーブルを用いて再度修正される。
【0024】
計算及び制御関数の全ては、モータの場合に容易に組み込むまれるものであって、非常に簡単なタイプのマイクロコントローラによって容易に組み込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
主要な応用は、限定的ではないが、大きく変動する流量での圧力下において作動液でサーボモータ又はアクチュエータの供給ポンプを駆動する自動車産業においてなされる。
【符号の説明】
【0026】
18 ロータ位置センサ
28 プロセッサ
32 制御回路
44 格納されたテーブル
Vc 速度基準信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素の一つが三相の巻線で成るコイルと、ロータ位置センサ(18)と速度基準信号(Vc)とに結合された入力を有しかつプロセッサ(28)の制御下でDC源(32)から位相を進める電源回路を含む電子制御モジュールとを有するステータ−ロータアセンブリを備えた電子励起式モータであって、
前記プロセッサが、
−様々な相が電流パルスで供給される時間長の間に時間オーバーラップすることがない第1モードと、2つのコイルへ供給される出力が33%だけオーバーラップする第2モードとにおいて速度を制御するために可変のデューティレシオで位相を進め、かつ、−デューティレシオが70%から100%の範囲の所定の値に達するときに第1モードから第2モードへ切換を生じさせ、かつ、デューティレシオが他の所定の値以下に落ちたときには第2モードから第1モードへ切換を生じさせるように設計された電子励起式モータ。
【請求項2】
プロセッサが、第1モードから第2モードへの切換及び第2モードから第1モードへの切換の際に、格納されたテーブル(44)を用いて電圧パルスのデューティレシオを変更するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子励起式モータ。
【請求項3】
プロセッサが比例積分型制御を実施するように構成され、かつ、積分項が切換中に変更されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子励起式モータ。
【請求項4】
プロセッサが、次の数式:
int(n)=int(n-1)+εn.ki
のサンプルnに対する積分項int(n)を用いて制御を実施し(ここでkiは積分項の係数)、デューティレシオPMW(n)は次の式:
PMW(n)=Kp.εn+int(n)
によって与えられ、かつ、プロセッサが、切換の際に、項int(n+1)をメモリ(44)に格納された速度とPMWとの関数である他の項int(n+1)によって置換されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電子励起式モータ。
【請求項5】
プロセッサが、時間長(T)の上昇局面又は下降局面において一のモードから他のモードへ切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子励起式モータ。
【請求項6】
プロセッサ(28)が、120°モードで最初に作動を生じさせ、かつ、デューティレシオが所定値に達したときに制御回路(32)に120°モードから180°モードへの切換を生じさせることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子励起式モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−135775(P2011−135775A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82833(P2011−82833)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2001−9433(P2001−9433)の分割
【原出願日】平成13年1月17日(2001.1.17)
【出願人】(502175756)ジョンソン コントロールズ オートモーティブ エレクトロニクス (7)
【Fターム(参考)】