説明

電子回折断層撮影の方法

【課題】電子回折断層撮影の方法を提供する。
【解決手段】当該発明は、透過電子顕微鏡における電子回折断層撮影のための方法を記載する。知られた方法は、走査透過電子顕微鏡を使用することを伴うと共に、STEMの回折の走査されたビームを使用する。当該発明は、結晶と比べてわずかにより大きい直径を備えた静止のビーム(200)で回折パターンを形成することを提案するが、それの結果としてSTEMユニット無しのTEMは、使用されることができる。結晶を見出すことは、TEMのモードにおいてなされる。当該発明に従った方法の利点は、走査するユニット無しのTEMが、使用されることができると共に、全体の結晶が、回折パターンを得る一方で、照明される際に、回折のボリュームが、結晶の配向に依存するものではないというものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当該発明は、電子顕微鏡を使用する電子回折断層撮影によって結晶の結晶学的な構造を決定するための方法に関係するが、電子顕微鏡が、電子のビームで結晶を照射するために備え付けられたものであると共に、その方法は、
試料にそれの中に一つの又はより多い結晶を提供すること、
試料において分析されるものである結晶を識別すること、
繰り返し、前記ビームに対して知られたチルトの角度まで試料をチルトさせること、ビームに対して結晶をセンタリングすること、及び、上記のチルトで結晶の回折パターンを記録することによって、結晶の回折チルトの系列を記録すること、並びに、
記録された回折パターンを分析することによって結晶学的な構造を決定すること
を具備する。
【背景技術】
【0002】
この方法は、U.Kolb et al.,Ultramicroscopy 107(2007)507−513の“Towards automated diffraction tomography:Part I−Data acquisition”から知られたものである。
【0003】
触媒、タンパク質、ウィルス、DNA、及びRNAのような、巨大分子の構造を決定することに大きな関心がある。知識は、どのように、例.タンパク質が、動作するか、どのように、例えば、より有効な薬剤、酵素、等を生産するか、を理解するために、及び、例えば、なぜある一定の病気が生ずるのかを理解するために、重要なものである。
【0004】
結晶学として知られた一群の技術は、分子の構造を決定するために使用されるが、それのX線結晶学は、最も良く知られたものである。ここで、多数の回折パターンは、X線のビームによって結晶を照射することによって記録されると共に、上記のビームの回折パターンは、記録される。X線結晶学の不都合は、結晶及びX線のビームの間における相互作用が、小さいものであるという理由のために、結晶のサイズが、むしろ大きいものでなければならない、例.0.1μm又はより多いもの、であるというものである。多数の無機の結晶について、これは、これらが、0.1μm又はより多いもののサイズまで簡単に成長させられることができるので、問題であることはないが、しかし、それは、そのようなサイズまで、例.タンパク質、の結晶を成長させることが極度に困難なものであることを提供する。X線回折は、このように、例.タンパク質の構造を決定することにあまり適したものではないものである。
【0005】
例.電子顕微鏡において使用されるもののような、加速された電子のビーム及び結晶の原子の間における相互作用は、X線を使用するときと比べてはるかにより大きいものである。従って、1μmから下がって数nmまでと比べてより少ないものの直径を備えた、ナノ結晶の回折パターンは、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)で、記録されることができる。
【0006】
U.Kolbによって記載された知られた方法において、三次元(3D)の回折のデータは、選択された結晶学的な軸のまわりに結晶を相互にチルトさせること及び様々な結晶学的なゾーンに回折パターン(チルトの系列)のセットを記録することによって収集される。第二のステップにおいて、これらのゾーンからの回折のデータは、3Dのデータのセットへと組み合わせられると共に望まれた構造の情報を生み出すために分析される。データの収集が、自動的に行われることができることは、留意されることである。これは、ゴニオメーターの軸のまわりにチルトさせる一方で、自動化された回折パターンの収集を可能とするTEM用のソフトウェアのモジュールを伴う。その次に、Kolbは、ナノ回折モードにおける回折パターンの獲得と走査透過電子顕微鏡(STEM)のイメージングを組み合わせることで、TEM用のそのようなソフトウェアのモジュールを記述することに進む。それは、5nmまで下がったサイズを備えたナノ粒子からの回折チルトの系列の自動化された記録をすることを許容する。
【0007】
導入において、Kolbは、回折パターンが、エリアを選択すること、いわゆる選択されたエリアの電子回折(SAED)の技術で、結晶を照明することによって記録されることができることを教示するが、それにおいて回折平面の下流における開口は、回折パターンに寄与する試料の部分(エリア)を制限するために使用される。ビームは、収束性の、フォーカシングさせられたビーム(CBED)である、実質的に平行なビームである、又はそれらの間におけるいずれの収束性の角度でもある、ことができる。平行な照明は、ケーラー(Ko(ウムラウト)hler)照明によって得られることができる。あるいは、C2の開口として知られた、小さい開口は、ほとんど平行なものにビームを保つ一方で、少数ナノメートルまでビームの直径を減少させるために使用されることができる。Kolbは、典型的には50nmの直径の小さいビームを備えたTEMモードで作動することが、ビームと比べてより大きいものである結晶においていずれの程度の確度でもビームを位置決めすることをほぼ不可能なものとすることを記述することに進む。従って、結晶の位置は、STEMモードにおいて決定される。
【0008】
Kolbが、原則として回折パターンが、多かれ少なかれ平行なビームを使用することで記録されることができることを述べるが、しかし、これの例を与えることを欠くものであることは、留意されることである。反対に、彼女は、収束性のビームの電子回折を示すことで進むと共に、例.彼女の論文の第509頁の下側の右のコーナーに、回折パターンが、バックフォーカスの平面にフォーカシングさせられるものではないことを言う。
【0009】
上記の方法の不都合は、必ずしも全てのTEMが、走査ユニットが備え付けられたものであるということはなく、それの結果として、必ずしも全てのTEMが、STEMモードで動作することができるものではないというものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】U.Kolb et al.,Ultramicroscopy 107(2007)507−513
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
STEMモードで動作するために走査するユニットが備え付けられたものであることがない機器において行われることができる方法に対する要望がある。
【0012】
当該発明は、この要望に対する解決手段を提供することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その目的のために、当該発明に従った方法は、回折パターンを記録するために使用されるビームが、結晶のサイズと比べてより大きい直径を有する実質的に平行なビームであるということで特徴付けられる。
【0014】
結晶と比べてより大きい直径を備えたビームを使用することによって、及び、回折パターンを記録する一方で結晶に対して静止の状態にこのビームを保つことによって、使用されるTEMは、結晶にわたってビームを走査するために走査するユニットが備え付けられることを必要とするものではない。ビームの直径が、結晶の直径と比べてより大きいものであると、回折のボリュームとしてもまた知られた、相互作用のボリューム又は散乱するボリュームは、結晶それ自体の体積であると共に、このように全てのチルトの角度について同じものである。これは、さもなければ回折パターンを記録する及び/又は記録された回折パターンを分析するときに必要とされる規格化及び後処理をすることを簡単にする。
【0015】
当該発明に従った方法のある実施形態において、ビームに対する結晶のセンタリングは、ビームをシフトさせること及び/又は結晶を機械的に移動させることを伴う。
【0016】
試料にわたってビームを移動させることによって、例.磁気的な又は静電気的な場を適用することによって、ビームは、結晶にわたって位置決めされることができる。大きい変位のために、試料の機械的な移動は、また行われることができる。
【0017】
当該発明に従った方法の好適な実施形態において、回折パターンを記録するために使用されるビームは、実質的に平行なビームである。
【0018】
試料をチルトさせるとき、試料の位置は、しばしば変化することになるが、それは、ビームをシフトさせることによって補正されることができる。平行なビームを使用するとき、試料のチルトをさせること及び/又はビームをシフトさせることは、回折パターンの原点をシフトさせるものではない、又は、それは、回折パターンを歪めることになるものでもない。
【0019】
これは、U.Kolbによって記述された仕事と比較されたとき好都合なものであるが、そこでは、回折パターンは、対物系のレンズのバックフォーカスの平面におけるスポットよりもむしろディスクに帰着する、収束性のビームで形成される。より遅い段階のデータ処理をすることの便利さ及びより重要なことには明りょうに各々の反射を分離すること(巨大分子の結晶については、反射は、非常に密集したものであることができると共に、ディスクは、相互に簡単に部分的に重ね合わせられる)の両方のために、余分なステップは、三つの方法、
1)対物系のレンズの電流を変動させる、
2)投射システムの電流を変動させる、
3)FEIの顕微鏡で回折レンズと呼ばれた、第三のレンズの電流を変動させる、
のいずれのものによってもスポットへとディスクを再度フォーカシングさせるために取られる必要がある。その帰結は、回折パターンが、ビームのシフトでシフトすることになるというものである。これは、第509及び510頁におけるU.Kolbによる仕事においてもまた承認されたものである。
【0020】
X線単結晶回折、X線粉末回折、2D電子回折、及び歳差電子回折のような、しかし必ずしもそれらに限定されるものではない、結晶学の他の方法が、知られたものであることは、留意されることである。X線単結晶回折の方法は、欠点として、先に議論されたような、必要とされる大きい結晶を有する。X線粉末回折の方法は、特有の又は信頼性のある解決手段を提示することの困難性を有する、すなわち、特有の結晶学的な構造を決定することは、困難な又は不可能なことである。これは、回折パターンにおける回転の情報が、多数の結晶の回折パターンの結果として失われるという事実のせいである。2D電子回折は、非常に特殊なタイプ(2Dの単一の層)の結晶を要求するが、それは、生産することが非常に困難なものである。歳差電子回折は、歳差運動(結晶に円錐の中心を備えた、円錐においてビームを回転させること)の可能なTEM、及び、静止状態の回折パターンが形成されるように、結晶を通った後で再度ビームの回転を相殺することを要求する。これは、特殊なTEMを要求する。従って、これらの他の方法の全ては、その方法それ自体、結晶、又は使用される機器の制限の点で欠点を有する。
【0021】
当該発明に従った方法のある実施形態において、結晶は、10μmと比べてより少ない、より特定しては1μmと比べてより少ない、最も特定しては100nmと比べてより少ない、最も大きい直径を有する。そのような小さい結晶を作ることは、例えば、X線回折において、必要とされた、典型的には100μm又はより多いもののサイズを有する、大きい結晶を作ることと比べてはるかにより簡単なことである。これは、タンパク質について特に妥当性を有するものである。
【0022】
当該発明に従った方法のなおも別の実施形態において、結晶は、触媒、タンパク質、ウィルス、DNA、及びRNAの群からの巨大分子の結晶である。
【0023】
例.タンパク質の結晶学的な構造の識別は、工業的なプロセスについてのこと(例.酵素を合成することについてのこと)及び健康管理におけること(例.薬物を合成することについてのこと)の両方において、非常に多く関心のあるものである。
【0024】
当該発明に従った方法のまだ別の実施形態において、多数の結晶は、識別されると共に、各々のチルトの角度について、多数の回折パターンは、記録されるが、各々の回折パターンは、結晶の一つと関連させられたものである。
【0025】
同一の結晶学的な構造を備えた上述した方法を使用することである数の結晶についての回折パターンを記録することは、より良好な信号対雑音比のおかげで、及び、結晶の各々が、ビームに対して異なる配向を有することがありそうなものであるとき、より多い結晶学的な方向がプローブされるという理由のために、より良好な結果に帰着する。これは、一つのチルトの系列で、及び、従って、結晶をチルトさせるための制限された量の(機械的な)段階で、実現されることができる。
【0026】
この方法において、結晶の各々について、回折パターンの系列が、作られると共に分析されることは、留意されることである。従って、この方法は、多結晶質の材料を分析することと異なる。この方法が、同様にして異なる結晶学的な構造及び/又は組成を備えた二つの又はより多い結晶からデータを獲得すると共に別個に二つの又はより多いセットのデータを分析するために使用されることができることは、さらに留意されることである。これは、一つの機械的なチルトの系列のみが作られる際に、より高いスループットに帰着すると共に、また、センタリングは、一つの結晶の位置又は特徴の一つのセット(知られた相互の位置)を決定することによって、より有効に実現されることができるが、このように獲得時間を節約する。
【0027】
当該発明に従った方法のまだ別の実施形態において、電子顕微鏡は、極低温電子顕微鏡であると共に、試料が、極低温の温度にあるものである一方で、回折パターンは、記録される。
【0028】
電子顕微鏡内の環境は、高い水準の放射及び真空を備えた、苛酷な環境である。当業者に知られたように、極低温の温度における分子の“寿命”は、分子が室温で研究されるときと比べてはるかにより大きいものである。液体窒素の温度及び/又は液体ヘリウムの温度で動作するために備え付けられたTEMが、容易に利用可能なものであることは、留意されることである。
【0029】
まだ別の実施形態において、試料は、シングルチルトホルダー及びダブルチルトホルダーの群からのチルトホルダーに据え付けられると共に、チルトさせることは、チルトホルダーをチルトさせることの結果である。
【0030】
TEMにおいて試料を位置決めするために、試料は、通常、グリッド、例えば3.05mmの直径を備えた銅のグリッド、に据え付けられると共に、上記のグリッドは、順番に、ホルダーに据え付けられる。その次に、ホルダーは、いわゆるゴニオメーターに挿入されるが、それは、同時に試料の位置における試料の移動を可能とする一方で、ホルダーに対して密閉する。いくつかのホルダーは、(ゴニオメーターとの協働で)チルトを可能とするが、いくつかは、二つの方向におけるチルトを可能とする。また、極低温の使用を可能とする及び/又は加熱することを可能とするホルダー等は、知られたものである。ここで子必要とされた分析には、シングルチルトホルダーは、十分なものである。使用されるホルダーが、典型的には、いわゆるゴニオメーターによってチルトさせられる入口側が剛性のホルダーであることは、留意されることである。ゴニオメーターは、典型的には、x、y、及びz方向にホルダーをシフトさせると共に一つの方向にホルダーを回転させることが可能なものである。しばしばいわゆるトモホルダー(tomo-holder)が、使用されるが、それは、本質的に、顕微鏡の(磁気的な)レンズの極片に触れること及び高いチルトの角度(典型的には60から80度まで)でさえも電子の入ってくる及び出て行くビームを遮断することがないものであるための用意を有することなく大きいチルトの角度のために備え付けられたシングルチルトホルダーであることは、さらに留意されることである。トップローディングホルダー又はダブルチルトホルダーのような他のタイプのホルダーが、試料の回転/並進が例えばホルダーの先端における圧電性のモーターによって実現されるホルダーのみならず、知られたものであることは、述べられることである。
【0031】
まだ別の実施形態において、回折パターンは、対物系のレンズを使用することで形成されると共に、チルトの位置の少なくとも一部分の間に、結晶の位置は、ビーム及び上記の対物系のレンズに対するチルトホルダーの移動のモデルを使用することでビーム及び対物系のレンズに対してセンタリングされるが、それの結果として結晶は、結晶のセンタリングの間に電子に露出させられるものではない。
【0032】
ホルダー及びゴニオメーターの位置の確度/再現性が、十分なものであるとすれば、結晶は、“推測航法”による時間の少なくとも一部分に位置決めされることができる。これは、電子への結晶の露出を最小にすると共に、このように結晶のセンタリングの間における損傷を最小にする。
【0033】
まだ別の実施形態において、結晶をセンタリングすることは、電子のビームを使用することで試料の少なくとも一部分をイメージングすることを伴う。
【0034】
TEMは、大きな確度で試料をイメージングすることが可能なものであると共に、このように結晶の位置は、ビームに対して高い精度で決定されることができる。
【0035】
さらなる実施形態において、試料のイメージングは、結晶をイメージングすることを伴う。
【0036】
通常では相対的に低い倍率で、結晶をイメージングすることによって、それは、結晶に対する線量を制限するが、それの位置は、高い確度で記録される。単位面積当たりの電子の線量が、大きいものであることがないと共に、このように結晶が露出させられるところの電子の量が、低いものであることができることは、留意されることである。
【0037】
別の実施形態において、結晶に対して相対的な試料における一つの又はより多い特徴の位置は、チルトの系列を作る前に決定されると共に、試料のイメージングは、一つの又はより多い特徴をイメージングすることを伴うと共に、特徴の位置は、結晶をセンタリングするために使用される。
【0038】
ここで、最初に、一つの又はより多い特徴に対する結晶の位置は、決定される。チルトの系列の間に、結晶の位置は、今、一つの又はより多い特徴の位置を決定することによって導出されることができる。この方式では、結晶は、センタリングする一方で、電子に露出させられることはない。一つの特徴が、結晶の位置を決定するために使用されるとき、好ましくは関心のある結晶及び特徴の両方が、チルトの軸に又はそれの近くに位置させられること、しかし、二つの又はより多い特徴が、使用されるとき、(チルトの軸に対する位置が、どのようにして特徴及び結晶が回転のおかげで移動するのかを記述するモデルを作るために知られたものであるべきであるとはいえ、)特徴又は結晶のいずれのもが、チルトの軸に位置させられることを必要とするものではないことは、留意されることである。
【0039】
まだ別の実施形態において、結晶をセンタリングするために使用されるビームの直径は、回折パターンを記録するために使用されるビームの直径と異なる。
【0040】
好ましくは、回折パターンを記録するために使用されるビームが、結晶と比べてほんのわずかにより大きいものである一方で、センタリングのためのビームの直径は、センタリングの間に大きい視野が利用可能なものであるように、回折に使用されるビームの直径と比べてより大きいものである。
【0041】
まだ別の実施形態において、結晶は、チルトの系列の記録をする間に、10個電子/nmと比べてより少ないものの線量に露出させられる。
【0042】
チルトの系列における全てのチルトの位置の和について10個電子/nmと比べてより少ない線量(系列の全体の間における累積させられた線量)に結晶を露出させることによって、結晶に対する損傷は、制限される。またKolbによる刊行物を参照のこと。
【0043】
まだ別の実施形態において、結晶は、チルトの系列の記録をする間に、300個電子/(nm秒)と比べてより少ないものの線量率に露出させられる。
【0044】
Kolbによって述べられたように、また線量率は、例えば、300個電子/(nm秒)と比べてより少ないものの低い値まで制御されることを必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、概略的に当該発明に従った方法を行うTEMのための光学的な素子を描く。
【図2】図2は、概略的に回折モードにおける線を描く。
【図3】図3は、回折パターンを描く。
【発明を実施するための形態】
【0046】
当該発明は、今、図を基礎として解明されるが、そこでは同一の参照数字は、対応する要素を指し示す。
【0047】
この目的のために、
図1は、概略的に当該発明に従った方法を行うTEMのための光学的な素子を描く、
図2は、概略的に回折モードにおける線を描く、
図3は、回折パターンを描く。
【0048】
図1は、概略的に当該発明に従った方法を行うTEMのための光学的な素子を描く。
【0049】
図1は、電子−光学的な軸104に沿った、例.50及び400keVのエネルギーを備えた高エネルギーの電子のビーム102を生じさせるための電子源100を示す。現実に、ビームがフォーカシングさせられる位置(クロスオーバーを示す)が、スケッチされた位置と異なると共に、このように角度的な及び線形の倍率が、異なるが、しかしこれらの機ロスオーバーが、ビームの直径を制限するために使用されることは、留意されることである。より低い及びより高いビームのエネルギーを使用する電子顕微鏡が知られたものであることは、さらに留意されることである。電子源及び開口の間における一つの又はより多いレンズが、軸上にビームをセンタリングするためのアライメントコイルのみならず、有るものであることがあることは、留意されることである。コンデンサーレンズ108及び110は、試料の位置112にビームを形成するために使用される。試料の位置におけるビームの直径は、開口106によって支配される。試料を位置決めするユニット、いわゆるゴニオメーター114、に据え付けられた試料は、上記の試料の位置に置かれるが、ゴニオメーターは、軸x、y、zのいずれかに沿って試料の位置に試料を位置決めすること並びにx軸に沿って試料を回転させることを可能とする。バックフォーカスの平面118を備えた対物系のレンズ116は、試料をイメージングすると共に、投射レンズ120及び122は、イメージングの平面124に拡大されたイメージを形成するが、それは、蛍光性のスクリーン又はカメラシステムが存する平面であることがある。
【0050】
試料が、対物系のレンズ116の(磁気的な)場に浸漬させられることがあることは、留意されることである。その場合には、対物系のレンズは、二つの部分に分裂させられることが考えられることができるが、一つのものは、試料を照明するためにコンデンサーレンズ106及び108と協働するものであると共に、第二の部分は、イメージを形成する投射レンズ118及び120と協働するものである。
【0051】
TEMは、異なる方式で試料をイメージングすることができる。二つの重要なモードは、回折モード及びTEMイメージングモードである。
【0052】
回折モードにおいては、試料は、好ましくは電子の平行なビームで照明されるが、その結果として回折パターンは、対物系のレンズのバックフォーカスの平面に形成される(全ての平行な線は、この平面にフォーカシングさせられるが、フォーカスが形成される位置は、電子が試料の平面を去る角度にのみ依存性のものである)と共に投射レンズは、イメージの平面にこのバックフォーカスの平面の拡大されたイメージを形成する。
【0053】
TEMイメージングモードにおいては、試料は、(平行なビームであることがある)電子のビームで照明される。投射レンズは、対物系のレンズのバックフォーカスの平面をイメージングするものではないが、しかし、イメージングの平面(例えば、蛍光性のスクリーン又はカメラ)に試料の平面をイメージングするものである。イメージは、試料において吸収されるものである電子及び妨害されてない試料を通る電子と干渉する試料において回折させられた(散乱させられた)電子の一部分から結果として生じる強度の変動によって形成される。
【0054】
走査透過電子顕微鏡がTEMに似るが、しかし、追加的にレンズ108及び試料の間に偏向コイルが備え付けられると共に、試料にビームをフォーカシングさせることは、留意されることである。その次にこれらの偏向コイルで試料にわたってフォーカシングさせられたビームを走査することによって、走査するイメージは、(電子源から取り除かれた側で)試料の下に置かれた検出器を使用することで、作られる。
【0055】
図2は、概略的に回折モードにおける試料の近くの線の図を示す。
【0056】
図2は、試料204に突き当たる電子の平行なビーム200を示す。試料は、ビーム200が回折させられてないビーム及び回折させられたビーム206に分裂することを引き起こす、結晶202を具備する。対物系のレンズ116は、両方のビームが、平行なビームである際に、回折平面118において回折させられてないもの及び回折させられたビームの両方をフォーカシングさせる。完璧に平行なビーム及びレンズの収差無しの対物系のレンズについては、回折平面118に形成されたフォーカスが、点であることは、留意されることである。現実には、スポットは、主として源の有限の直径の結果として、ビームの収束/発散のせいで、小さいが、しかし有限の直径を有する。
【0057】
図2から明りょうなものであるように、結晶と比べてより大きい直径を備えたビームは、一定の回折のボリューム、完全な結晶の体積、に帰着する。
【0058】
当該発明の方法について、通常、いくつかの調節が、チルトの系列を記録する前に、なされることは、留意されることである。
【0059】
これらは、
いわゆるカメラの長さが決定される。このパラメーターがイメージの平面(カメラ又はスクリーン)に対する回折平面の倍率を記述する。
【0060】
回折パターンを記録するとき及びイメージングするときの両方で試料における同じエリアを照明するためのビームの調節
イメージ/ビームのシフトが各々の倍率で較正される必要がある。
【0061】
ステージのチルトの軸の位置が決定される必要がある
である。
【0062】
図3は、回折パターンを示す。
【0063】
明りょうに強い中央のピークは、多数のサブピークのみならず、可視のものである。中央のピークは、妨害されてない試料を通過する電子のフォーカシングの結果であると共に、サブピークの各々は、入ってくるビームに対する特定の角度の下で散乱させられる電子と対応する。結晶がより複雑なものであればあるほど(すなわち、単位格子により多い原子があればあるほど)、回折パターンは、より複雑なものである、より多いスポットが、可視のものである。また、結晶が、より複雑なものであればあるほど、より多い弱いスポットが、有るものである。
【0064】
この回折パターンが、中央のスポットのまわりに対称性を示すこと、しかし、大部分のチルトの角度について、回折パターンが、対称性を示すものではないことは、留意されることである。
【0065】
例えば、“Collaborative Computational Project No.14”(CCP14)が、回折パターンを分析するためのソフトウェア・パッケージの一式に帰着したことは、留意されることである、CCP14のウェブサイトhttp://www.ccp14.ac.uk/about.htmを参照のこと。この及び他のパッケージは、当業者に良く知られたものである。
【0066】
我々は、後に続くようなものを請求する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡を使用する電子回折断層撮影によって結晶の結晶学的な構造を決定するための方法であって、
前記電子顕微鏡が電子のビームで前記結晶を照射するために備え付けられたものであると共に、
前記方法は、
試料にそれの中に一つの又はより多い結晶を提供すること、
前記試料において分析されるものである結晶を識別すること、
繰り返し、前記ビームに対して知られたチルトの角度まで前記試料をチルトさせること、前記ビームに対して前記結晶をセンタリングすること、及び、上記のチルトの角度で前記結晶の回折パターンを記録することによって、前記結晶の回折チルトの系列を記録すること、並びに、
前記記録された回折パターンを分析することによって前記結晶学的な構造を決定すること
を具備する、方法において、
回折のイメージを記録する一方で、前記ビームは、前記結晶に対して静止の状態に保たれると共に、
前記ビームは、前記結晶の直径と比べてより大きい直径を有する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、
前記ビームに対して前記結晶のセンタリングをすることは、前記ビームをシフトさせること及び/又は前記結晶を機械的に移動させることを伴う、方法。
【請求項3】
先行する請求項のいずれかの方法において、
前記回折パターンを記録するために使用されるビームは、実質的に平行なビームである、方法。
【請求項4】
先行する請求項のいずれかの方法において、
前記結晶は、10μmと比べてより少ない、より特定しては1μmと比べてより小さい、最も特定しては100nmと比べてより少ない、最も大きい直径を有する、方法。
【請求項5】
先行する請求項のいずれかの方法において、
前記結晶は、触媒、タンパク質、ウィルス、DNA、及びRNAの群からの巨大分子の結晶である、方法。
【請求項6】
先行する請求項のいずれかの方法において、
多数の結晶は、識別されると共に、
各々のチルトの角度について多数の回折パターンは、記録されると共に、
各々の回折パターンは、前記結晶の一つと関連させられたものである、
方法。
【請求項7】
先行する請求項のいずれかの方法において、
前記電子顕微鏡は、極低温電子顕微鏡であると共に、
前記試料が、極低温にあるものである一方で、前記回折パターンは、記録される、
方法。
【請求項8】
先行する請求項のいずれかの方法において、
前記試料は、シングルチルトホルダー及びダブルチルトホルダーの群からのチルトホルダーに据え付けられると共に、
前記試料のチルトをすることは、前記チルトホルダーをチルトさせることの結果である、
方法。
【請求項9】
請求項8に従って方法において、
前記回折パターンは、対物系のレンズを使用することで形成されると共に前記チルトの少なくとも一部分の間に前記ビームに対する前記結晶の位置を位置決めすると共に、
前記対物系のレンズは、前記ビーム及び上記の対物系のレンズに対する前記チルトホルダーの移動のモデルを使用することでセンタリングされると共に、
それの結果として前記結晶は、前記結晶のセンタリングの間に電子に対して露出させられるものではない、方法。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれかに従った方法において、
前記結晶のセンタリングをすることは、電子のビームを使用することで前記試料の少なくとも一部分をイメージングすることを伴う、方法。
【請求項11】
請求項10の方法において、
電子のビームを使用することで前記試料をイメージングすることが、前記結晶をイメージングすることを伴う、方法。
【請求項12】
請求項10の方法において、
前記チルトの系列を作る前に、前記結晶の位置に対して相対的な前記試料における一つの又はより多い特徴の位置は、決定されると共に、
電子のビームを使用することで前記試料をイメージングすることは、前記一つの又はより多い特徴をイメージングすることを伴うと共に、
前記一つの又はより多い特徴の位置は、前記結晶をセンタリングするために使用されると共に、
それの結果として、前記結晶は、前記結晶のセンタリングの間に電子に露出させられるものではない、方法。
【請求項13】
請求項10から12までのいずれかの方法において、
前記結晶をセンタリングするために使用されるビームの直径は、回折パターンを記録するために使用されるビームの直径とは異なる、方法。
【請求項14】
先行する請求項のいずれかの方法において、
前記結晶は、前記チルトの系列の記録をする間に、10個電子/nmと比べて少ないものの線量に露出させられる、方法。
【請求項15】
先行する請求項のいずれかの方法において、
前記結晶は、前記チルトの系列の記録をする間に、300個電子/(nm・秒)と比べてより少ないものの線量率に露出させられる、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−13703(P2012−13703A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144563(P2011−144563)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】