説明

電子回路の駆動方法及び駆動回路、発光装置、並びに電子機器

【課題】 輝度ムラを改善する。
【解決手段】 画素回路200において、補正期間ではトランジスタ212がオン、トラ
ンジスタ211、213及び214がオフとなる。一方、発光期間では、トランジスタ2
11がオン、トランジスタ212〜214がオフとなる。Yドライバは発光期間の長さに
応じて補正期間の長さを調整するたように制御信号GSET−iがLレベルとなる期間を
設定する。具体的は、発光期間の長さが短いほど、補正期間の長さを長くする。これによ
り、駆動トランジスタのしきい値電圧が正確に補償される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード素子のような発光素子を備えた電子回路の駆動方法及び
駆動回路、発光装置、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス
素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting
Diode、以下適宜「OLED素子」と略称する)素子が注目されている。このOLED素
子は、自発光型であるために視野角依存性が少なく、また、バックライトや反射光が不要
であるために低消費電力化や薄型化に向いているなど、表示パネルとして優れた特性を有
している。
ここで、OLED素子は、液晶素子のように電圧保持性を有さず、電流が途絶えると、
発光状態が維持できなくなる電流型の被駆動素子である。このため、OLED素子をアク
ティブ・マトリクス方式で駆動する場合、書込期間(選択期間)において、画素の階調に
応じた電圧を駆動トランジスタのゲートに書き込んで、当該電圧をゲート容量などにより
保持し、当該ゲート電圧に応じた電流を駆動トランジスタがOLED素子に流し続ける事
が一般的となっている。
【0003】
この構成では、駆動トランジスタのしきい値電圧特性がばらつくことによって、画素ご
とに、OLED素子の明るさが相違して表示品位が低下する、という問題が指摘されてい
る。このため、特許文献1には、書込期間において、当該駆動トランジスタをダイオード
接続させるとともに、駆動トランジスタからデータ線に定電流を流し、これによって、当
該駆動トランジスタのゲートに、OLED素子に流すべき電流に応じた電圧を書き込むよ
うにプログラミングして、駆動トランジスタのしきい値電圧特性のばらつきを補償する技
術が開示されている。また、特許文献1には、OLED素子と駆動トランジスタとの間に
スイッチングトランジスタを設け、駆動電流をOLED素子に供給して発光させる発光期
間を調整することができる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−177709号公報(図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、しきい値電圧を補償する補正期間においては、スイッチングトランジスタを
オフ状態にする一方、発光期間においてはスイッチングトランジスタをオン状態にするが
、補正期間の長さは発光期間とは無関係に固定であった。そして、補正期間の長さは、1
フレーム期間から最大輝度を表示する場合の発光期間を除いた期間に定められていた。こ
のため、補正期間において充分にしきい値電圧の補償が実行されず、表示ムラが発生する
という問題があった。特に、人の視感特性は暗い画面の方がわずかな輝度ムラであっても
検知するといった性質がある。このため、低輝度で表示ムラが目立ち易いといった問題が
あった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、表示ムラを改善した電子回路
の駆動方法及び駆動回路、発光装置、並びに電子機器を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る電子回路の駆動方法は、発光素子と前記発光素
子に流れる駆動電流の電流量を制御する駆動トランジスタとを備えた電子回路を駆動し、
前記発光素子を発光させる発光期間と前記駆動トランジスタから出力される前記駆動電流
のバラツキを補正する補正期間と含む単位時間を所定の周期で繰り返すものであって、前
記駆動トランジスタから出力される前記駆動電流を前記発光素子に供給する期間を調整し
て前記発光期間の長さを調整し、前記発光期間の長さに応じて前記補正期間の長さを調整
する発光素子と前記発光素子に流れる駆動電流の電流量を制御する駆動トランジスタとを
備えた電子回路を駆動し、前記発光素子を発光させる発光期間と前記駆動トランジスタの
しきい値電圧に対する前記駆動電流の電流量を補償する補正期間と含む単位時間を所定の
周期で繰り返す電子回路を駆動する方法であって、前記駆動トランジスタから出力される
前記駆動電流を前記発光素子に供給する期間を調整して前記発光期間の長さを調整し、前
記発光期間の長さに応じて前記補正期間の長さを調整することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、発光期間の長さに応じて補正期間の長さを調整できる。補正期間で
は駆動トランジスタの駆動電流のバラツキが補正される。このバラツキは駆動トランジス
タのしきい値電圧に依存する。補正期間が長くなるほど補正の精度が向上し、しきい値電
圧が製造プロセスでばらついても輝度ムラを改善することができる。ここで、処理の繰り
返しの単位となる単位時間の中に発光期間と補正期間が含まれる。一方、発光期間が短く
なると輝度が暗くなり、補正期間に割り当てることができる期間が長くなる。従って、そ
のような場合に補正期間の長さを長くすれば、輝度ムラを改善することができる。なお、
発光素子は駆動電流の供給を受けて発光する素子であればどのような素子であってもよく
、例えば、有機発光ダイオード及び無機発光ダイオードが該当する。
【0008】
上述した電子回路の駆動方法において、前記電子回路は、前記駆動トランジスタのゲー
ト電圧を保持する保持手段と、前記駆動トランジスタと前記発光素子との間に設けられた
第1スイッチング手段と、前記駆動トランジスタのゲートとドレインの間に設けられた第
2スイッチング手段とを備え、前記第1スイッチング手段をオン状態にすると共に前記第
2スイッチング手段をオフ状態とする期間を調整して、前記発光期間の長さを調整し、前
記第1スイッチング手段をオフ状態にすると共に前記第2スイッチング手段をオン状態に
する期間を調整して、前記補正期間の長さを調整することが好ましい。この場合には、第
1スイッチング手段及び第2スイッチング手段のオン・オフを調整することによって、発
光期間と補正期間の長さを調整することができる。
【0009】
ここで、前記発光期間の長さが短いほど前記補正期間の長さが長くなるように調整する
ことが好ましい。人の目には暗い画面で僅かな輝度の差を検知する視覚特性がある。従っ
て、発光期間の長さが短いほど正確な輝度で表示することが必要とされる。この発明によ
れば、発光期間の長さが短いほど補正期間の長さが長くなるので、より正確に駆動電流の
バラツキを補正することが可能となる。尤も、発光期間の長さが短くなっても所定の長さ
を超えないように補正期間の長さを設定してもよい。補正期間では第1トランジスタがオ
フとなる。しかし、実際にはオフ状態においてもリーク電流が流れる。このため、補正期
間があまりに長いとリーク電流によって、表示輝度に誤差が生じてしまう。そこで、補正
期間が所定の最大値を超えないようにしたのである。
【0010】
また、上述した電子回路の駆動方法において、前記単位時間は垂直走査の1周期であり
、前記補正期間は複数の走査線選択期間に跨るように設定されることが好ましい。この場
合は、走査線を選択する走査線選択期間を跨って補正期間が設定されるから、補正期間の
長さは1Hを超える。
【0011】
次に、本発明に係る駆動回路は、発光素子と、前記発光素子に流れる駆動電流の電流量
を制御する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲート電圧を保持する保持手段
と、前記駆動トランジスタと前記発光素子との間に設けられ、第1制御信号によってオン
・オフが制御される第1スイッチング手段と、前記駆動トランジスタのゲートとドレイン
の間に設けられ、第2制御信号によってオン・オフが制御される第2スイッチング手段と
を備えた電子回路を駆動する駆動回路であって、前記発光素子を発光させる発光期間の長
さに応じて、前記駆動トランジスタから出力される前記駆動電流のバラツキを補正する補
正期間の長さを調整する調整手段と、前記発光期間において前記第1スイッチング手段を
オン状態にし、前記補正期間において前記第2スイッチング手段をオフ状態にする前記第
1制御信号を生成して前記電子回路に供給する第1制御手段と、前記発光期間において前
記第1スイッチング手段をオフ状態にし、前記補正期間において前記第2スイッチング手
段をオン状態にする前記第1制御信号を生成して前記電子回路に供給する第2制御手段と
、を備える。この発明によれば、発光期間の長さに応じて補正期間の長さを調整すること
によって、輝度ムラを改善することができる。
【0012】
ここで、前記調整手段は、前記発光期間の長さが短いほど前記補正期間の長さが長くな
るように調整することが、暗い画面で輝度の差を検知し易い人の視覚特性を考慮する点で
好ましい。また、前記調整手段は、前記発光期間の長さが短くなっても所定の長さを超え
ないように前記補正期間の長さを設定することが好ましい。
【0013】
次に、本発明に係る発光装置は、複数の画素回路とこれを駆動する駆動回路を備えてお
り、前記画素回路は、発光素子と、前記発光素子に流れる駆動電流の電流量を制御する駆
動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲート電圧を保持する保持手段と、前記駆動
トランジスタと前記発光素子との間に設けられ、第1制御信号によってオン・オフが制御
される第1スイッチング手段と、前記駆動トランジスタのゲートとドレインの間に設けら
れ、第2制御信号によってオン・オフが制御される第2スイッチング手段とを備え、前記
駆動回路は、前記発光素子を発光させる発光期間の長さに応じて、前記駆動トランジスタ
から出力される前記駆動電流のバラツキを補正する補正期間の長さを調整する調整手段と
、前記発光期間において前記第1スイッチング手段をオン状態にし、前記補正期間におい
て前記第2スイッチング手段をオフ状態にする前記第1制御信号を生成して前記電子回路
に供給する第1制御手段と、前記発光期間において前記第1スイッチング手段をオフ状態
にし、前記補正期間において前記第2スイッチング手段をオン状態にする前記第1制御信
号を生成して前記電子回路に供給する第2制御手段と、を備えることが好ましい。この発
光装置によれば、発光期間の長さに応じて補正期間の長さを調整することによって、輝度
ムラを改善することができる。
【0014】
次に、本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備えたものであって、例えば、携
帯電話機、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、及び携帯情報端末などが該当する

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<発光装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図であり、図2は、画
素回路の回路図である。図1に示されるように発光装置10は、複数の画素回路200が
マトリクス状に配列された表示領域Zを備える。表示領域Zには、複数本の走査線102
が横方向(X方向)に延設される一方、複数本のデータ線(信号線)112が図において
縦方向(Y方向)に延設されている。そして、これらの走査線102とデータ線112と
の交差の各々に対応するように画素回路(電子回路)200がそれぞれ設けられている。
説明の便宜上、本実施形態では、各表示パネルZ1〜Z4の走査線102の本数(行数
)を「360」とし、データ線の本数(列数)を「480」として、画素回路200が、
縦360行×横480列のマトリクス状に配列する構成を想定する。ただし、本発明をこ
の配列に限定する趣旨ではない。表示領域Zには、図示せぬ電源回路から高位側電圧VE
L及び低位側電圧GNDが供給される。画素回路200には、後述するOLED素子23
0が含まれ、このOLED素子230への電流を画素回路200毎に制御することによっ
て、所定の画像が階調表示される。
また、図1においては、X方向に延設されるのは走査線102のみであるが、本実施形
態では、走査線102のほかにも、図2に示されるように、制御線104及び106がそ
れぞれ行ごとにX方向に延設されている。このため、走査線102、制御線104及び1
06が1組となって、1行分の画素回路200に兼用されている。
【0016】
Yドライバ14は、1水平走査期間ごとに1行ずつ走査線102を選択するとともに、
選択した走査線102に対して、Lレベルの走査信号を供給するとともに、この選択に同
期した各種制御信号を、制御線104及び106に、それぞれ供給する。すなわち、Yド
ライバ14は、走査線102、制御線104及び106に対し、行ごとに、走査信号や制
御信号をそれぞれ供給する。説明の便宜上、i行目(iは、1≦i≦360を満たす整数
であり、行を一般化して説明するためのもの)の走査線102に供給される走査信号をG
WRT−iと表記する。同様に、i行目の制御線104及び106に供給される制御信号
をGSET−i及びGEL−iと、それぞれ表記する。
【0017】
一方、Xドライバ16は、Yドライバ14によって選択された走査線102に対応する
1行分の画素回路、すなわち、選択された行に位置する1〜480列の画素回路200の
各々に、当該画素回路200のOLED素子230に流すべき電流(すなわち、画素の階
調)に応じた電圧のデータ信号を、1〜480列目のデータ線112を介して、それぞれ
供給する。ここで、データ信号(データ電圧)は、電圧が低いほど、画素が明るくなるよ
うに指定し、反対に、電圧が高いほど、画素が暗くなるように指定する。説明の便宜上、
j列目(jは、1≦j≦480を満たす整数であり、列を一般化して説明するためのもの
)のデータ線112に供給されるデータ信号をX−jと表記する。
【0018】
すべての画素回路200には、OLED素子230の電源となる高位側電圧VELが給
電線114を介してそれぞれ供給される。また、すべての画素回路200は、本実施形態
において電圧の基準となる電位GNDに接地されている。なお、画素の最低階調である黒
色を指定するデータ信号X−jの電圧はVELよりも低く、画素の最高階調である白色を
指定するデータ信号X−jの電圧はGNDよりも高く設定される。換言すれば、データ信
号X−jの電圧範囲は、電源電圧の内に収まるように設定されている。
制御回路12は、Yドライバ14及びXドライバ16に、それぞれクロック信号(図示
省略)などを供給して両ドライバを制御するとともに、Xドライバ16に、階調を画素ご
とに規定する画像データを供給する。
【0019】
図2に示されるように、画素回路200は、pチャネル型の駆動トランジスタ210と
、スイッチング素子として機能するpチャネル型のトランジスタ211(第1スイッチン
グ手段)、212(第2スイッチング手段)、213、214と、容量素子として機能す
る容量221及び222と、電気光学素子たるOLED素子230とを有する。
このうち、トランジスタ211の一端(ソース)は、駆動トランジスタ210のドレイ
ン及びトランジスタ212の一端(ソース)に接続される一方、トランジスタ211の他
端(ドレイン)は、OLED素子230の陽極に接続される。OLED素子230の陰極
は接地されている。ここで、トランジスタ211のゲートは、i行目の制御線106に接
続されている。このため、トランジスタ211は、制御信号GEL−iがLレベルであれ
ばオンし、Hレベルであればオフする。OLED素子230は、電源の高位側電圧VEL
及び低位側電圧GNDの間の経路に、駆動トランジスタ210及びトランジスタ211と
ともに電気的に介挿された構成となっている。
駆動トランジスタ210のゲートは、容量221及び容量222の一端、並びにトラン
ジスタ212のドレインにそれぞれ接続されている。容量222の他端は給電線114に
接続される。なお、説明の便宜上、容量221の一端(駆動トランジスタ210のゲート
)をノードAとする。また、容量222は、駆動トランジスタ210のゲート容量などに
起因する寄生容量であってもよい。
【0020】
トランジスタ212は、駆動トランジスタ210のドレイン及びゲート間に電気的に介
挿されるとともに、トランジスタ212のゲートは、i行目の制御線104に接続されて
いる。このため、トランジスタ212は、制御信号GSET−iがLレベルとなったとき
にオンして、駆動トランジスタ210をダイオードとして機能させる。
トランジスタ213の一端(ソース)は、給電線114に接続される一方、その他端(
ドレイン)は、トランジスタ214の一端(ドレイン)及び容量221の他端にそれぞれ
接続されている。このトランジスタ213のゲートは、i行目の制御線104に接続され
ている。このため、トランジスタ213は、制御信号GSET−iがLレベルとなったと
きにオンする。
さらに、トランジスタ214の他端(ソース)は、j列目のデータ線112に接続され
、そのゲートは、i行目の走査線102に接続されている。このため、トランジスタ21
4は、走査信号GWRT−iがLレベルとなったときにオンして、j列目のデータ線11
2に供給されるデータ信号X−j(の電圧)を容量221の他端に印加する。説明の便宜
上、容量221の他端(トランジスタ214及びトランジスタ213のドレイン)をノー
ドBとする。
【0021】
なお、マトリクス型に配列する画素回路200は、ガラス等の透明基板に、走査線10
2やデータ線112とともに形成されている。このため、駆動トランジスタ210や、ト
ランジスタ211、212、213、及び214は、ポリシリコンプロセスによるTFT
(薄膜トランジスタ)によって構成される。また、OLED素子230は、基板上におい
て、ITO(酸化錫インジウム)などの透明電極膜を陽極(個別電極)とし、アルミニウ
ムやリチウムなどの単体金属膜又はこれらの積層膜を陰極(共通電極)として、発光層を
挟持した構成となっている。
【0022】
<発光装置の動作>
図3に、発光装置10の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。まず、Yド
ライバ14は、図3に示されるように、1垂直走査期間(1F)の開始時から、1行目、
2行目、3行目、…、360行目の走査線102を、順番に1本ずつ1水平走査期間(1
H)ごとに選択して、選択した走査線102の走査信号のみをLレベルとし、他の走査線
への走査信号をHレベルとする。
ここで、i行目の走査線102が選択されて、走査信号GWRT−iがLレベルとなる
1水平走査期間(1H)に着目して、当該水平走査期間及びその前後の動作について、図
3とともに、図4〜図7を参照して説明する。
【0023】
図3に示されるように、走査信号GWRT−iがLレベルに変化するタイミングt1よ
りも先行したタイミングt0から、i行j列における画素回路200の書込動作の事前準
備が開始する。そして、タイミングt1から書込動作が開始するともに発光が開始する。
以下の説明では、事前準備の期間を補正期間TSETと称し、OLED素子230に電流
が供給される期間を発光期間TELと称する。補正期間TSETでは駆動トランジスタ2
10のしきい値電圧Vthに対する駆動電流IELの電流量が補償される。また、補正期
間TSETは複数の水平走査期間に跨るように設定されている。なお、この例では、発光
期間TEL中にデータ信号を画素回路200に書き込む書込期間TWRTが設けられてい
る。
【0024】
まず、補正期間TSETにおいて、Yドライバ14は、制御信号GSET−iをLレベ
ルにする一方、制御信号GEL−iをHレベルとする。このため、画素回路200では、
図4に示されるように、Lレベルの制御信号GSET−iによりトランジスタ212及び
213がオンし、Hレベルの制御信号GEL−iによりトランジスタ211がオフする。
これにより、駆動トランジスタ210がダイオードとして機能すると共にノードBに初期
化電圧として高位側電圧VELが供給される。
【0025】
ここで、駆動トランジスタ210のしきい値電圧をVthとすると、ノードAの電位V
gは、図5に示すように「VEL−Vth」に漸近する。トランジスタ212がオンとな
っても直ちに電位Vgが「VEL−Vth」とならないのは、トランジスタ212のオン
抵抗や容量222等によって等価的に積分回路が構成されているからである。従って、補
正期間TSETが短いとノードAの電位Vgが「VEL−Vth」に近づかない。
【0026】
次に、時刻t1からの1H期間は、書込期間TWRTである。この例では、発光期間T
ELの一部に書込期間TWRTが設けられている。書込期間TWRTにおいては、走査信
号GWRT−iがLレベルとなり、制御信号GSET−iがHレベルとなり、さらに制御
信号GEL−iがLレベルとなる。従って、図6に示すように駆動トランジスタ211及
びトランジスタ214がオンする一方、トランジスタ212及びトランジスタ213がオ
フする。
【0027】
書込期間TWRTにおいて、Xドライバ16は、i行j列の画素の階調に応じた電圧の
データ信号X−jをj列目のデータ線112に供給する。表示すべき階調に応じたデータ
信号X−jのデータ電圧をVdataとすると、Vdataは以下の式(a)で与えられる。
Vdata=(VEL−ΔV)……(a)
なお、ΔVは、VELからの電圧変化(下降)分であって、画素を最低階調の黒色に指
定する場合にはゼロであり、明るい階調を指定するにつれて次第に大きくなる。従って、
ノードBの電圧は、補正期間TSETから書込期間TWRTにかけて、ΔVだけ変動する

【0028】
一方、書込期間TWRTにおいて、画素回路200では、トランジスタ212がオフで
あるので、ノードAは、容量222によって保持される。このため、ノードAは、ノード
Bにおける電圧変化分ΔVを容量221と容量222との容量比で配分した分だけ、補正
期間TSETの電圧VEL−Vthから下降する。
詳細には、容量221の容量値をCaとし、容量222の容量値をCbとしたときに、
ノードAは、電圧VEL−Vthから、{ΔV・Ca /(Ca+Cb)}だけ変化する
ので、結果的に、ノードAの電圧Vgは、次式のように表すことができる。
Vg=VEL−Vth−ΔV・Ca /(Ca+Cb)……(b)
【0029】
そして、書込期間TWRTが終了すると、Yドライバ14は、走査信号GWRT−iを
Hレベルとする。このため、画素回路200では、図7に示されるように、トランジスタ
214がオフするが、容量221における電圧保持状態は変化しないので、ノードAの電
圧Vgは式(b)で与えられる値に維持される。そして、OLED素子230には、駆動
トランジスタ210のゲート・ソース間の電圧に応じた電流IELが、給電線114→駆
動トランジスタ210→トランジスタ211→OLED素子230→グランドGNDとい
った経路にて流れる。これにより、OLED素子230は、当該電流IELに応じた明る
さで発光し続ける。
【0030】
発光期間TELにおいて、OLED素子230に流れる電流IELは、駆動トランジス
タ210のソース・ドレイン間の導通状態によって定まり、当該導通状態は、ノードAの
電圧で設定される。ここで、駆動トランジスタ210のソースからみたゲートの電圧は、
「−(Vg−VEL)」であるので、電流IELは、次のように示される。
EL=(β/2)(VEL−Vg−Vth ……(c)
なお、この式においてβは、駆動トランジスタ210の利得係数である。
【0031】
ここで、式(c)に式(a)及び式(b)を代入して整理すると、式(d)が得られる

EL=(β/2){k・ΔV} ……(d)
但し、kは定数であってk=Ca /(Ca+Cb)となる。この式(d)に示される
ように、OLED素子230に流れる電流IELは、駆動トランジスタ210のしきい値
Vthに依存することなく、データ電圧Vdataと電圧VELとの差分ΔV(=VEL−V
data)のみによって定まる。
【0032】
発光期間TELが予め指定された期間だけ継続すると、Yドライバ14は、制御信号G
EL−iをHレベルにする。これにより、トランジスタ214がオフするので、電流経路
が遮断される結果、OLED素子230は消灯する。
Yドライバ14は、1行目から720行目までに対応する制御信号GEL−1〜GEL
−720のLレベル期間が同一となるように制御する。換言すれば、すべてのOLED素
子230に対して、1垂直走査期間において発光期間TELの占める割合が一定になるよ
うに制御する。このため、発光期間TELを長くすると、画面全体が明るくなる一方、発
光期間TELを短くすると、画面全体が暗くすることができる。
【0033】
ここで、画面全体を最も明るくする設定1と中間の明るさの設定2を想定する。設定1
の場合、発光期間TELは最長となり、1垂直走査期間(1F)のうち補正期間TSET
を除いた全域となる。この場合の発光期間TELをTELAと補正期間TSETをTSE
TAとすれば、発光期間TELA及び補正期間TSETAは図3に示すようになる。一方
、設定2の場合の発光期間TELをTELBと補正期間TSETをTSETBとすれば、
ELA>TELB、且つ、TSETA<TSETB、となる。即ち、Yドライバ14は
、発光期間TELの長さに応じて補正期間TSETの長さを調整する。より具体的には、
発光期間TELの長さが短いほど、補正期間TSETの長さを長くする。
【0034】
上述したように補正期間TSETでは駆動トランジスタ210のゲートとドレインを短
絡させてこれをダイオードとして機能させることによって、駆動トランジスタ210のし
きい値電圧Vthに対応する電流となるようにノードAの電圧Vgが変化していく。ここ
で、ノードAの電圧Vgは「VEL−Vth」と一致するのが理想であるが、実際には補
正期間TSETの長さによって制限される。
【0035】
本実施形態では、補正期間TSETの長さは固定ではなく、発光期間TELの長さが短
かくなると、補正期間TSETの長さを長くしている。Yドライバ14は、発光期間T
の長さが短いほど長くなるように補正期間TSETの長さを調整する手段として機能す
る。これにより、補正期間TSETの長さが長くなるにつれ、より正確にしきい値電圧V
thが補償され、表示ムラを改善することができる。人の視感度特性は暗い場合には僅か
な輝度の差でも検知する性質を有するので、特に、発光期間TELの長さを短かくする場
合に有効である。
【0036】
補正期間TSETにおいてトランジスタ211はオフとなる。しかし、実際にはオフ状
態においてもリーク電流が流れる。このため、補正期間TSETがあまりに長いとリーク
電流によって、表示輝度に誤差が生じてしまう。補正期間TSETの長さが長いほど、し
きい値電圧Vthを充分補償して輝度ムラを改善できる一方、リーク電流による表示輝度
の誤差が大きくなる。逆に、補正期間TSETの長さが短いほど、しきい値電圧Vth
補償が不十分となり輝度ムラが発生する一方、リーク電流による表示輝度の誤差が改善さ
れる。すなわち、補正期間TSETの長さを設定する場合に、輝度ムラの改善と表示輝度
の正確さはトレードオフの関係にある。そこで、本実施形態においては、両者のバランス
が取れるように補正期間TSETの長さに最大値を設けている。Yドライバ14は発光期
間TELの長さが短くなっても所定の長さを超えないように補正期間TSETの長さを設
定する手段として機能する。より具体的には、補正期間TSETの長さの最大値を図5に
示すようにノードAの電圧Vgが「VEL−1.1×Vth」となるように設定している
。すなわち、しきい値電圧Vthに補償において10%のズレを許容する。この程度であ
れば、人が見て輝度ムラが許容される範囲だからである。
【0037】
このように補正期間TSETの長さに最大値を設けると、図3に示すように制御信号G
EL−iと制御信号GSET−iとがともにHレベルとなる期間Txが発生する。期間T
xにおいて、書込期間TWRT中に書き込まれた電圧が黒表示の電圧である場合はその状
態が維持されるので黒表示のままとなる。一方、白表示の場合は正常な画素の白に比べて
より明るくなってしまうが、もともと白表示のため完全な輝点欠陥とはならない。
【0038】
ここでは、i行j列の画素回路200の動作について説明したが、i行の他の画素につ
いてもすべて補正期間TSET及び発光期間TELの動作が同時並列的に実行される。ま
た、i行目について着目して説明したが、1行目から720行目までについては、1水平
走査期間(1H)ごとに順番に走査線102が選択されて、当該選択期間において書込期
間TWRTの動作が実行される。そして、書込期間TWRTの前には補正期間TSET
実行され、補正期間TSETの後には発光期間TELが、それぞれ実行される。
【0039】
<画素回路の他の構成例>
図8に画素回路200の他の構成例を示し、図9にそのタイミングチャートを示す。図
8に示す画素回路201は、高位側電圧VELの替わりに初期化電圧VINIを供給する
点で図2に示す画素回路200と相違する。具体的には、トランジスタ213のソースに
給電線116を介して初期化電圧VINIが供給され、そのゲートに制御線108を介し
て制御信号GINI−iが供給される。
【0040】
図9に示すように制御信号GINI−iは補正期間TSETの直前に設けられた初期化
期間TINIにおいてLレベルとなる。制御信号GINI−iがLレベルになるとトラン
ジスタ213がオンするので、ノードBの電圧が初期化電圧VINIとなる。この後、補
正期間TSETにおいて制御信号GINI−iがHレベルとなる一方、制御信号GSET
−iがLレベルとなるので、トランジスタ213がオフすると共にトランジスタ212が
オンする。このとき駆動トランジスタ210のドレインとゲートが短絡されるので、その
しきい値電圧Vthの補償動作が実行される。この画素回路201も上述した画素回路2
00の動作と同様に発光期間TELの長さに応じて補正期間TSETの長さが調整される

【0041】
<電子機器>
次に、上述した実施形態に係る発光装置10を適用した電子機器について説明する。図
10に、発光装置10を適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す。パ
ーソナルコンピュータ2000は、表示ユニットとしての発光装置10と本体部2010
を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けら
れている。この発光装置10はOLED素子230を用いるので、視野角が広く見易い画
面を表示できる。
図11に、発光装置10を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000、複
数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての発
光装置10を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置10
に表示される画面がスクロールされる。
図12に、発光装置10を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assista
nts)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイ
ッチ4002、並びに表示ユニットとしての発光装置10を備える。電源スイッチ400
2を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置10に表示され
る。
なお、発光装置10が適用される電子機器としては、図20〜図22に示すものの他、
デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープ
レコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワ
ークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げら
れる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した発光装置10が適用可能
である。また、直接画像や文字などを表示する電子機器の表示部に限られず、被感光体に
光を照射することにより間接的に画像もしくは文字を形成するために用いられる印刷機器
の光源として適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同発光装置の画素回路を示す回路図である。
【図3】同発光装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】同画素回路の動作説明図である。
【図5】ノードAの電圧変化を示す説明図である。
【図6】同画素回路の動作説明図である。
【図7】同画素回路の動作説明図である。
【図8】他の画素回路の構成例を示す回路図である。
【図9】同画素回路のタイミングチャートである。
【図10】同発光装置を用いたパーソナルコンピュータを示す図である。
【図11】同発光装置を用いた携帯電話を示す図である。
【図12】同発光装置を用いた携帯情報端末を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10…発光装置、12…制御回路、14…Yドライバ、16…Xドライバ、102…走
査線、104、106、108…制御線、112…データ線、114、116…給電線、
200、201…画素回路、210…駆動トランジスタ、211、212、213、21
4…トランジスタ、221、222…容量、230…OLED素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と前記発光素子に流れる駆動電流の電流量を制御する駆動トランジスタとを備
えた電子回路を駆動し、前記発光素子を発光させる発光期間と前記駆動トランジスタから
出力される前記駆動電流のバラツキを補正する補正期間と含む単位時間を所定の周期で繰
り返す電子回路の駆動方法であって、
前記駆動トランジスタから出力される前記駆動電流を前記発光素子に供給する期間を調
整して前記発光期間の長さを調整し、
前記発光期間の長さに応じて前記補正期間の長さを調整する、
ことを特徴とする電子回路の駆動方法。
【請求項2】
前記電子回路は、前記駆動トランジスタのゲート電圧を保持する保持手段と、前記駆動
トランジスタと前記発光素子との間に設けられた第1スイッチング手段と、前記駆動トラ
ンジスタのゲートとドレインの間に設けられた第2スイッチング手段とを備え、
前記第1スイッチング手段をオン状態にすると共に前記第2スイッチング手段をオフ状
態とする期間を調整して、前記発光期間の長さを調整し、
前記第1スイッチング手段をオフ状態にすると共に前記第2スイッチング手段をオン状
態にする期間を調整して、前記補正期間の長さを調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子回路の駆動方法。
【請求項3】
前記発光期間の長さが短いほど前記補正期間の長さが長くなるように調整することを特
徴とする請求項1又は2に記載の電子回路の駆動方法。
【請求項4】
前記発光期間の長さが短くなっても所定の長さを超えないように前記補正期間の長さを
設定することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の電子回路の駆動方
法。
【請求項5】
前記単位時間は垂直走査の1周期であり、前記補正期間は複数の走査線選択期間に跨る
ように設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の電子
回路の駆動方法。
【請求項6】
発光素子と、前記発光素子に流れる駆動電流の電流量を制御する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲート電圧を保持する保持手段と、前記駆動トランジスタと前記
発光素子との間に設けられ、第1制御信号によってオン・オフが制御される第1スイッチ
ング手段と、前記駆動トランジスタのゲートとドレインの間に設けられ、第2制御信号に
よってオン・オフが制御される第2スイッチング手段とを備えた電子回路を駆動する駆動
回路であって、
前記発光素子を発光させる発光期間の長さに応じて、前記駆動トランジスタから出力さ
れる前記駆動電流のバラツキを補正する補正期間の長さを調整する調整手段と、
前記発光期間において前記第1スイッチング手段をオン状態にし、前記補正期間におい
て前記第2スイッチング手段をオフ状態にする前記第1制御信号を生成して前記電子回路
に供給する第1制御手段と、
前記発光期間において前記第1スイッチング手段をオフ状態にし、前記補正期間におい
て前記第2スイッチング手段をオン状態にする前記第1制御信号を生成して前記電子回路
に供給する第2制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子回路の駆動回路。
【請求項7】
前記調整手段は、前記発光期間の長さが短いほど前記補正期間の長さが長くなるように
調整することを特徴とする請求項6に記載の電子回路の駆動回路。
【請求項8】
前記調整手段は、前記発光期間の長さが短くなっても所定の長さを超えないように前記
補正期間の長さを設定することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電子回路の駆
動回路。
【請求項9】
複数の画素回路とこれを駆動する駆動回路を備えた発光装置であって、
前記画素回路は、
発光素子と、
前記発光素子に流れる駆動電流の電流量を制御する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲート電圧を保持する保持手段と、
前記駆動トランジスタと前記発光素子との間に設けられ、第1制御信号によってオン・
オフが制御される第1スイッチング手段と、
前記駆動トランジスタのゲートとドレインの間に設けられ、第2制御信号によってオン
・オフが制御される第2スイッチング手段とを備え、
前記駆動回路は、
前記発光素子を発光させる発光期間の長さに応じて、前記駆動トランジスタから出力さ
れる前記駆動電流のバラツキを補正する補正期間の長さを調整する調整手段と、
前記発光期間において前記第1スイッチング手段をオン状態にし、前記補正期間におい
て前記第2スイッチング手段をオフ状態にする前記第1制御信号を生成して前記電子回路
に供給する第1制御手段と、
前記発光期間において前記第1スイッチング手段をオフ状態にし、前記補正期間におい
て前記第2スイッチング手段をオン状態にする前記第1制御信号を生成して前記電子回路
に供給する第2制御手段と、
を備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の発光装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−285117(P2006−285117A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108260(P2005−108260)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】