説明

電子式ウエッジブレーキ装置

【課題】本発明は、ブレーキ作動に使用される駆動部の負担を少なくした電子式ウエッジブレーキ装置を提供する。
【解決手段】本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、ディスクの一側に備えられた内側パッドと結合し、上部屈曲面が形成された上部屈曲部材と、上部屈曲部材に隣接して備えられ、上部屈曲面に対向する位置に下部屈曲面が形成された下部屈曲部材と、上部屈曲面と下部屈曲面との間に備えられたウエッジローラーと、上部屈曲部材の移動をガイドするガイド部が備えられたウエッジ握り棒と、ウエッジ握り棒に動力を伝達する駆動モーターとを含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式ウエッジブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にブレーキシステムは走行する自動車を減速又は停止させると同時に、駐車状態を維持するために用いられる制御装置である。このようなブレーキシステムは通常、運動エネルギーを摩擦力を利用して熱エネルギーに変え、それを大気中に放出して制動作用する摩擦式ブレーキが用いられる。摩擦式ブレーキは、車輪と共に回転するディスクにその両側からパッドを押しつけることにより制動機能を発揮する。
【0003】
図1は、従来の電子式ウエッジブレーキ装置に関する平面と断面の概略図である。従来のキャリパー型ブレーキ装置には電子式ウエッジブレーキ装置が用いられていた。(特許文献1参照)
図1に示すように従来の電子式ウエッジブレーキ装置は、キャリパー5の内部に備えられ、ホイールとともに回転するディスク10と、ディスク10の両側に隣接して位置するパッド12a、及び12bと、パッド12a、及び12b中、内側パッド12aと結合している上部屈曲部材(上部ウエッジ部材)14と、パッド12a、及び12b中、外側パッド12bと一側16aが繋がり、他側16bはディスク10を跨いで上部屈曲部材14と対向するように備えられる下部屈曲部材(下部ウエッジ部材)16と、上部屈曲部材14と下部屈曲部材16の間に位置するローラー18aとを含んでいる。
【0004】
そして上部屈曲部材14と下部屈曲部材16の間に互いに対向する面には互いに対向するように屈曲面15、及び17が備えられる。また、下部屈曲部材16には駆動部24が下部屈曲部材16を左右に移動するように備えられる。
【0005】
上記のような構造を有する従来の電子式ウエッジブレーキ装置の作動を説明すると、次のとおりである。
ブレーキが作動すると駆動部24が作動して、下部屈曲部材16を矢印31の方向(右)に押す。下部屈曲部材16が右側に移動すると、ローラー18aが下部屈曲面17と上部屈曲面15の間を移動するため、下部屈曲面17と上部屈曲面15の間が広がる。
【0006】
このため、上部屈曲部材14は内側パッド12aと共にディスク10の方向に移動して、内側パッド12aがディスク10に密着する。一方、下部屈曲部材16は外側パッド12bと共にディスク10の方向に移動して、外側パッド12bがディスク10に密着する。
【0007】
上記のような従来の電子式ウエッジブレーキ装置は、ブレーキ作動中には駆動部の力が上部屈曲部材14に直接伝達されておらず、他方、下部屈曲部材には力が継続して加わるように駆動部が作動しなければならないため、駆動部に過多な負担を強いるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−2500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑み、ブレーキ作動に使用される駆動部の負担を少なくした電子式ウエッジブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、ディスクの一側に備えられた内側パッドと結合し、上部屈曲面が形成された上部屈曲部材と、上部屈曲部材に隣接して備えられ、上部屈曲面に対向する位置に下部屈曲面が形成された下部屈曲部材と、上部屈曲面と下部屈曲面の間に備えられたウエッジローラーと、上部屈曲部材の移動をガイドするガイド部が備えられたウエッジ握り棒と、ウエッジ握り棒に動力を伝達する駆動モーターとを含んでなることを特徴とする。
【0011】
本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、ウエッジ握り棒が、ガイド部と隔離して形成された穴の内面にグリップねじ線を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、上部屈曲部材がガイド部によってガイドされるウエッジローラー突起を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、駆動モーターが下部屈曲部材とカプラーによって一体に結合されることを特徴とする。
【0014】
本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、駆動モーターがグリップねじ線と噛み合う駆動ねじ線を備えたボールベアリングスクリューに動力を伝達することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、上部屈曲部材がウエッジ握り棒を通して駆動モーターから直接力を受ける構造になっているため、上部屈曲部材への力の伝達が容易であり、また、力の伝達がねじ線によって行われるため制動力を維持するために継続して動力を伝達する必要がなくなり、モーターの要求トルクが減り、動力伝達効率が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は従来の電子式ウエッジブレーキ装置に関する平面概略図であり、(b)は従来の電子式ウエッジブレーキ装置を示す断面概略図である。
【図2】(a)は本発明の電子式ウエッジブレーキ装置を示す平面概略図であり、(b)は本発明の電子式ウエッジブレーキ装置を示す断面概略図である。
【図3】図2に作動状態を白抜き矢印で示した概略図である。
【図4】図2の重要部分を拡大した斜視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例の図面を用いて詳しく説明する。図2は、本発明の電子式ウエッジブレーキ装置を示す平面と断面の概略図であり、図3は図2の作動状態を示す概略図であり、図4は図2の重要部分を拡大した斜視概略図である。
なお、本説明の中でパッドがディスクに近くなるか遠くなる方向、即ち、ディスク面に垂直な方向を前後方向とし、図2(b)及び図3(b)の断面図において当該断面に垂直で且つ前後方向を含む面を水平面とし、この水平面上の動きを水平方向とした。
【0018】
本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、キャリパー500の内部に備えられ、車両のホイールと共に回転するディスク100と、ディスク100の両側に備えられた内側パッド120a及び外側パッド120bと、内側パッド120aと結合した上部屈曲部材140と、外側パッド120bと一端が結合され、他端はディスク100を跨いで、上部屈曲部材140と隣接して備えられる下部屈曲部材160とを含んでなる。
【0019】
上部屈曲部材140には、内側パッド120aと結合した上部屈曲面150が形成され、一方、下部屈曲部材160には、上部屈曲面150に対向する位置に下部屈曲面160aが形成される。上部屈曲面150と下部屈曲面160aの間にはウエッジローラー180aが複数備えられる。
【0020】
複数のウエッジローラー180aの間は、ウエッジローラーの回転運動を妨げない構造で、ウエッジローラー連結台180が繋いでいることが好ましい。ウエッジローラー連結台180は複数のウエッジローラー180aが連動して作動するようにするものである。
【0021】
そして本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は、上部屈曲部材140の移動をガイドするガイド部222が備えられた、ウエッジ握り棒220と、このウエッジ握り棒に動力を伝達する駆動モーターとを含んでいる。ウエッジ握り棒220のガイド部222は、長方形の穴であって、ウエッジ握り棒の中心より偏って、前後方向に長くなるよう備えられることが好ましい。
【0022】
一方、上部屈曲部材140には、下部屈曲部材160の方向に形成された上部屈曲面150と、前後方向を含む水平面に対して垂直方向に突出形成されたウエッジローラー突起200が備えられることが好ましい。ウエッジローラー突起200はウエッジ握り棒220のガイド部222に嵌入され、駆動モーター300の動力を上部屈曲部材に伝達する。
【0023】
ウエッジ握り棒220には、ガイド部222と隔離して、内面にグリップねじ線232が切られた穴を備えたガイドブロック230が含まれることが好ましい。
ガイドブロック230の穴には、内面に切られたグリップねじ線232と噛み合う駆動ねじ線242を備えたボールベアリングスクリュー240が組み込まれることが好ましい。ボールベアリングスクリュー240は、駆動モーター300の動力をウエッジ握り棒を通じて、上部屈曲部材に伝達する。
【0024】
また、駆動モーター300は下部屈曲部材160とカプラー280によって一体で結合されることが好ましく、カプラー280は下部屈曲部材160と並んで備えられるボールベアリングスクリュー240とカプラーベアリング260によって繋がっていることが好ましい。
【0025】
ウエッジローラー180aはブレーキ作動前には上部屈曲面150の谷と下部屈曲面160aの谷の間に位置しているが、ブレーキが作動して上部屈曲面150が移動すると、ウエッジローラー180aも一緒に移動し、これにより、上部屈曲面150と下部屈曲面160aの間の間隔が徐々に広くなる。
【0026】
上記の構成を有する本発明の電子式ウエッジブレーキ装置の作用を説明すると次のとおりである。
運転手がブレーキを踏むと、図3のように駆動モーター300によってボールベアリングスクリュー240が回り、ボールベアリングスクリュー240の駆動ねじ線242に噛み合うグリップねじ線232によってウエッジ握り棒220が右向き矢印311の方向に移動する。
【0027】
そして移動したウエッジ握り棒220のガイド部222に位置するウエッジローラー突起200が、ガイド部222によって右向きに力を受け、ウエッジローラー突起200が形成されている上部屈曲部材140も同じ方向に力を受けて移動する。
【0028】
上部屈曲部材140が右側に移動すると、ウエッジローラー連結台180で繋がれた複数のウエッジローラー180aも連動して移動する。この時、ウエッジローラー180aには上部屈曲面150と下部屈曲面160aの間を広げる力が働く。
【0029】
これによって上部屈曲部材140が矢印313の方向に移動して、内側パッド120aがディスク100に密着する。一方、下部屈曲部材160はその一端が矢印314の方向に移動するため、外側パッド120bがディスク100に密着する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によると、上部屈曲部材がウエッジ握り棒を通して駆動モーターから直接力を受ける構造になっているため、上部屈曲部材への力の伝達が容易であり、また、力の伝達がねじ線によって行われるため、制動力を維持するために継続して動力を伝達する必要がなくなり、モーターの要求トルクが減り、動力伝達効率が向上する効果がある。本発明の電子式ウエッジブレーキ装置は自動車用のブレーキ装置として好適に利用される。
【符号の説明】
【0031】
100 ディスク
120a 内側パッド
120b 外側パッド
140 上部屈曲部材
150 上部屈曲面
160 下部屈曲部材
160a 下部屈曲面
180 ウエッジローラー連結台
180a ウエッジローラー
200 ウヱッジローラー突起
220 ウエッジ握り棒
222 ガイド部
232 グリップねじ線
240 ボールベアリングスクリュー
242 駆動ねじ線
280 カプラー
300 駆動モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの一側に備えられた内側パッドと結合し、上部屈曲面が形成された上部屈曲部材と、
前記上部屈曲部材に隣接して備えられ、前記上部屈曲面と対向する位置に下部屈曲面が形成された下部屈曲部材と、
前記上部屈曲面と前記下部屈曲面の間に備えられたウエッジローラーと、
前記上部屈曲部材の移動をガイドするガイド部が備えられたウエッジ握り棒と、
前記ウエッジ握り棒に動力を伝達する駆動モーターと、
を含んでなることを特徴とする、電子式ウエッジブレーキ装置。
【請求項2】
前記ウエッジ握り棒には、前記ガイド部と隔離して形成された穴の内面にグリップねじ線を有することを特徴とする、請求項1記載の電子式ウエッジブレーキ装置。
【請求項3】
前記上部屈曲部材には前記ガイド部によってガイドされるウエッジローラー突起が備えられることを特徴とする、請求項1記載の電子式ウエッジブレーキ装置。
【請求項4】
前記駆動モーターは、前記下部屈曲部材及びカプラーによって一体に結合されることを特徴とする、請求項1記載の電子式ウエッジブレーキ装置。
【請求項5】
前記駆動モーターは、前記グリップねじ線と噛み合う駆動ねじ線を備えたボールベアリングスクリューに動力を伝達することを特徴とする、請求項1記載の電子式ウエッジブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−133549(P2010−133549A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42142(P2009−42142)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(506392274)成均館大学校産学協力団 (10)
【Fターム(参考)】