説明

電子放出デバイス、および電子放出デバイスを用いる電子放出表示デバイス

【課題】画面の輝度と画素間の発光均一度を高め、高解像度製作に有利であり、製造品質を向上させる電子放出デバイス、および電子放出デバイスを用いる電子放出表示デバイスを提供する。
【解決手段】基板10と、基板10上に形成される第1電極14と、第1電極14に電気的に接続される電子放出部20と、第1電極14上部で第1電極14と絶縁されて配置され、第1電極14との交差領域で電子放出部20を開放するための複数の開口部181を形成する第2電極18とを含み、第2電極18は、下記条件を満たすように形成される電子放出デバイスが提供される。条件:1.36≦P/D≦1.65。ここで、Dは、第2電極の開口部の幅を示し、Pは、第2電極の互いに隣接する開口部のピッチを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出デバイスに係り、より詳しくは、ゲート電極の開口部幅と開口部ピッチの比率を最適化した電子放出デバイス、および電子放出デバイスを用いる電子放出表示デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子放出素子は、電子源の種類に応じて、熱陰極を用いる方式と冷陰極を用いる方式とに分類される。なお、以下では、類似の用語を幾つか用いている。ここで、構成物質、電子放出部、電子放出素子、電子放出デバイス、電子放出表示デバイスの順に、用語を示す構造の複雑度が大きくなるものとする。
【0003】
ここで、冷陰極を用いる方式の電子放出素子としては、電界放出アレイ型、表面伝導エミッション型、金属−絶縁層−金属型および金属−絶縁層−半導体型などが知られている。
【0004】
この中で、電界放出アレイ型電子放出素子は、下記で示す構成物資によって形成される電子放出部と、電子放出部の電子放出を制御する駆動電極であるカソード電極およびゲート電極を備えたものである。電子放出部の構成物質としては、仕事関数が低いか、或いは、縦横比が大きい物質、例えば、炭素ナノチューブや黒鉛またはダイヤモンド状炭素のような炭素系物質を使用する。このような電子放出部は、真空中の弱い電界によって簡単に電子を放出させる。
【0005】
電子放出素子は、第1基板にアレイ構造に配置されて、電子放出デバイスを構成する。電子放出デバイスは、蛍光層とアノード電極などで構成された発光ユニットが備えられる第2基板と上述の構造を備える第1基板とを結合することにより、電子放出表示デバイスを構成する。
【0006】
通常の電界放出アレイ型電子放出表示デバイスは、第1基板上に、カソード電極、絶縁層およびゲート電極が順次に形成され、ゲート電極および絶縁層に開口部が形成されて、カソード電極の表面の一部を露出させ、開口部の内側のカソード電極上に電子放出部が配置される構成を備える。そして、第1基板に対向する第2基板の一面には、蛍光層とアノード電極が配置される。
【0007】
カソード電極およびゲート電極は、互いに交差する方向に沿って帯状パターンに形成される。カソード電極とゲート電極との交差領域が一つの画素領域を構成し、画素領域の所定の部位に、複数の電子放出部が相互所定の距離をおいて配置される。
【0008】
カソード電極およびゲート電極に所定の駆動電圧を印加すると、カソード電極とゲート電極との間の電位差が臨界値以上となる画素において、電子放出部の周囲に電界が形成されて、電子放出部から電子が放出される。放出された電子は、アノード電極に印加された高電圧に引き寄せられて、第2基板へ向かいながら、対応する画素の蛍光層に衝突して、蛍光層を発光させる。
【0009】
上述した構造でゲート電極の開口部の幅と開口部の稠密度、つまり、互いに隣接する開口部のピッチが、各画素領域に位置する電子放出部の個数、電子放出部のエミッション効率および工程収率などに大きい影響を与える。
【0010】
言い換えると、絶縁層のエッチング特性と電子放出部の製造法などを考慮して、ゲート電極の開口部を適正広さに形成し、この開口部を画素領域の所定の部位に適正水準で稠密に配置すれば、電子放出部のエミッション効率を上げて高輝度画面を実現することができる。さらに、工程収率を高めて、生産性を向上させ、高解像度デバイスを容易に製作できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の電子放出デバイスでは、その設計・製作時に、ゲート電極の開口部の幅および互いに隣接する開口部のピッチの関係を最適化できず、上述の効果を十分に得られていない。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ゲート電極の開口部の幅および互いに隣接する開口部のピッチの関係を最適化して、電子放出部のエミッション効率を上げて、工程収率を高め、高解像度製作に有利な電子放出デバイス、および電子放出デバイスを用いる電子放出表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、基板と、基板上に形成される第1電極と、第1電極に電気的に接続される電子放出部と、第1電極の上部で、第1電極と絶縁されて配置され、第1電極との交差領域に電子放出部を開放するための複数の開口部が形成される第2電極とを含み、第2電極は、下記条件を満たすように形成される電子放出デバイスが提供される。条件:1.36≦P/D≦1.65。ここで、Dは、第2電極の開口部の幅を示し、Pは、第2電極の互いに隣接する開口部のピッチを示す。
【0014】
第2電極は、下記条件を満たすように形成されてもよい。条件:1.41≦P/D≦1.60。
【0015】
本発明によれば、第2電極において、開口部の幅(D)および互いに隣接する開口部のピッチ(P)の比率を上記のように最適化できるので、同一のゲート電圧で最大の放出電流量を得ることができ、電子放出部のエミッション効率を向上でき、工程収率を高めることができるため、高解像度製作に有利となる電子放出デバイスを提供できる。
【0016】
電子放出部および第2電極の開口部は、いずれも円形に形成されてよい。また、第2電極の開口部は、上記交差領域の中央部分に配置されてもよく、第1電極および第2電極のうち、いずれか一つの電極の長手方向に沿って一列に配置されてよい。
【0017】
上記電子放出デバイスは、第2電極との絶縁を維持し、第2電極の上部に配置される第3電極をさらに含むことができる。第3電極は、上記交差領域ごとに第2電極の複数の開口部を開放する開口部を備えることができる。
【0018】
第1電極および第2電極のうち、いずれか一つの電極は、走査電極であり、他の一つの電極は、データ電極であり、第3電極は、集束電極であってよい。
【0019】
電子放出部は、炭素ナノチューブ、黒鉛、黒鉛ナノファイバー、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素、フラーレンおよびシリコンナノワイヤーからなる群から選択される少なくとも一つの物質を含んで構成されてもよい。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によれば、互いに対向して配置される第1基板および第2基板と、第1基板上に形成される第1電極と、第1電極に電気的に接続される電子放出部と、第1電極の上部で、第1電極と絶縁して配置され、第1電極との交差領域に電子放出部を開放するための複数の開口部が形成される第2電極と、第2基板の一面に形成される蛍光層と、蛍光層の一面に配置されるアノード電極とを含み、第2電極は、下記条件を満たすように形成される電子放出表示デバイスが提供される。条件:1.36≦P/D≦1.65。ここで、Dは、第2電極の開口部の幅を示し、Pは、第2電極の互いに隣接する開口部のピッチを示す。
【0021】
第2電極は、下記条件を満たすように形成されてよい。条件:1.41≦P/D≦1.60。
【0022】
本発明によれば、第2電極において、開口部の幅(D)および互いに隣接する開口部のピッチ(P)の関係を上記のように最適化できるので、同一のゲート電圧で最大の放出電流量を得ることができるため、向上された画面の輝度と画素間の発光均一度、高解像度を備える電子放出表示デバイスを提供できる。
【0023】
電子放出部および第2電極の開口部は、円形に形成されてよい。
【0024】
第2電極の開口部は、上記交差領域の中央部に配置されてよい。
【0025】
蛍光層は、第2基板の一方向に沿って交互に配置される赤色蛍光層、緑色蛍光層および青色蛍光層を含むことができ、赤色蛍光層、緑色蛍光層および青色蛍光層の各々は、上記交差領域ごとに対応するように形成され、第2電極の開口部は、上記交差領域の中央部で、一方向と直交する方向に沿って一列に配置されてもよい。
【0026】
第2電極と絶縁を維持し、第2電極の上部に配置される第3電極をさらに含むことができ、第3電極は、上記交差領域ごとに第2電極の複数の開口部を開放する開口部を備えることができる。
【0027】
第1電極および第2電極のうち、いずれか一つの電極は、走査電極であり、他の一つの電極は、データ電極であり、第3電極は、集束電極であってよい。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、ゲート電極の開口部の幅および互いに隣接する開口部のピッチの比率を最適化することによって、電子放出デバイスにおいて、同一のゲート電圧で最大の放出電流量を得ることができ、工程不良を最少化でき、電子放出部のエミッション効率を向上できる。したがって、本発明の電子放出デバイスを用いる電子放出表示デバイスは、画面の輝度と画素間の発光均一度を向上することができ、高解像度を備えることができるので、製造品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子放出表示デバイスの部分分解斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る電子放出表示デバイスの部分断面図である。図3は、図1に示す電子放出デバイスの部分拡大平面図である。
【0031】
図1を参照すると、電子放出表示デバイスは、所定の間隔をおいて平行に対向して配置される第1基板10および第2基板12を含む。第1基板10および第2基板12の周縁には、密封部材(図示せず)が配置されて、第1基板10および第2基板12を接合させ、第1基板10と第2基板12との間の内部空間が、約1.33×10−4Paの真空度となるように排気される。これにより、第1基板10と第2基板12および密封部材が真空容器を構成する。
【0032】
第1基板10の第2基板12に対向する面には、電子放出素子がアレイ状に配置される。アレイ状の電子放出素子は、第1基板10と共に電子放出デバイス100を構成し、電子放出デバイス100は、第2基板12および第2基板12に形成される発光ユニット110と結合されて、電子放出表示デバイスを構成する。ここで、電子放出素子とは、電子を放出するための各々部材を含んで構成されるものであり、以下で説明するカソード電極14、絶縁層16、ゲート電極18および電子放出部20を含む。そして、発光ユニット110は、電子放出デバイス100から放出される電子によって発光するための各々部材を含んで構成されるものであり、以下で説明する蛍光層22、黒色層24、アノード電極26を含む。
【0033】
まず、第1基板10の第2基板12に対向する面上には、第1電極であるカソード電極14が、第1基板10の一方向(図1のy方向)に沿って帯状パターンに形成され、カソード電極14を覆いながら、第1基板10全体に絶縁層16が形成される。絶縁層16上には、第2電極であるゲート電極18が、カソード電極14と直交する方向(図1のx方向)に沿って帯状パターンに形成される。
【0034】
カソード電極14とゲート電極18との交差領域を画素領域として定義すると、カソード電極14上において、各々の画素領域ごとに電子放出部20が、カソード電極14に電気的に接続されるように形成される。そして、絶縁層16には、各電子放出部20に対応する開口部161が形成され、ゲート電極18には、各電子放出部20に対応する開口部181が形成されることにより、第1基板10上において、電子放出部20が露出されるようになる。本発明の実施形態において、画素領域で電子放出部20が複数形成される場合、電子放出部20に対応して、ゲート電極18の開口部181、絶縁層16の開口部161も複数設けられる。
【0035】
電子放出部20は、真空中で電界が加えられると電子を放出する物質、例えば、炭素系物質またはナノメートルサイズ物質などで形成される。
【0036】
電子放出部20は、一例として、炭素ナノチューブ、黒鉛、黒鉛ナノファイバー、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素、フラーレン(C60)、シリコンナノワイヤーからなる群から選択される一つの物質またはこれらを組み合わせた物質などを含んで構成される。電子放出部20の製造法としては、スクリーン印刷法、直接成長法、化学気相蒸着法またはスパッタリング法などを適用してもよい。
【0037】
本発明の実施形態において、電子放出部20は、画素領域(カソード電極14とゲート電極18との交差領域)ごとにカソード電極14およびゲート電極18のうち、いずれか一つの電極、一例として、カソード電極14の長手方向(図1のy方向)に沿って一列に配置される。この電子放出部20に対応して、ゲート電極18の開口部181および絶縁層16の開口部161も、画素領域ごとにカソード電極14およびゲート電極18のうち、いずれか一つの電極、一例として、カソード電極14の長手方向(図1のy方向)に沿って一列に配置される。そして、ゲート電極18の開口部181および絶縁層16の開口部161は、カソード電極14とゲート電極18との交差領域の中央部に配置されるが、これについて以下で説明する。また、電子放出部20およびゲート電極18の開口部181は、略円形に形成されてもよい。絶縁層16の開口部161もゲート電極18の開口部181と同様に、略円形に形成されてよい。
【0038】
次に、第2基板12の第1基板10に対向する一面には、蛍光層22、一例として、赤色蛍光層(22R)、緑色蛍光層(22G)および青色蛍光層(22B)が相互間に所定の間隔をおいて、第2基板12の一方向、例えば、x方向に沿って交互に形成される。赤色蛍光層(22R)、緑色蛍光層(22G)および青色蛍光層(22B)の各々間には、画面のコントラスト向上のための黒色層24が形成される。蛍光層22は、カソード電極14とゲート電極18との交差領域ごとに、赤色蛍光層(22R)、緑色蛍光層(22G)および青色蛍光層(22B)のうち、いずれか一つの色の蛍光層が対応するように配置される。この場合、ゲート電極18の開口部181は、交差領域の中央部で、一方向(x方向)と直交する方向(y方向)に沿って一列に配置されるので、一列で配置される開口部181には、赤色蛍光層(22R)、緑色蛍光層(22G)および青色蛍光層(22B)のいずれか一つの蛍光層が対応することができる。よって、開口部181より放出される電子が対応する蛍光層に衝突し、所望の色を発光することができる。
【0039】
図1を参照すると、蛍光層22および黒色層24の第1基板10に対向する面上には、アルミニウム(Al)などのような金属膜から構成されるアノード電極26が形成される。アノード電極26は、外部から電子ビーム加速に必要な高電圧が印加されて、蛍光層22を高電位状態に維持させて、蛍光層22から放射される可視光のうち、第1基板10に向かって放射される可視光を第2基板12側に反射させて、画面の輝度を高めることができる。
【0040】
一方、アノード電極26は、ITO(Indium Tin Oxide;インジウムスズ酸化物)などのような透明導電膜で形成されてもよい。この場合、アノード電極26は、第2基板12に対向する蛍光層22および黒色層24の一面に位置する。また、アノード電極26として、上述した金属膜と透明導電膜で各々構成されるアノード電極を共に備える構造も可能である。
【0041】
そして、第1基板10と第2基板12との間には、真空容器に加えられる圧縮力を支持し、第1基板10と第2基板12との間隔を一定に維持させるスペーサ28(図2参照)が配置される。スペーサ28は、蛍光層22の領域を侵さないように、黒色層24の領域に対応して配置される
【0042】
上述した構成の電子放出表示デバイスは、外部からカソード電極14、ゲート電極18およびアノード電極26に所定の電圧を供給されることにより、駆動する。一例として、カソード電極14およびゲート電極18のうち、いずれか一つの電極が走査駆動電圧を印加されて走査電極として機能して、他の一つの電極がデータ駆動電圧を印加されてデータ電極として機能する。アノード電極26は、電子ビーム加速に必要な電圧、一例として、数百〜数千ボルトの正の直流電圧が印加される。
【0043】
上記のように各々電極に所定の電圧を印加すると、カソード電極14とゲート電極18との電位差が臨界値以上となる画素において、電子放出部20周囲に電界が形成され、この電界を介して電子放出部20から電子が放出される。放出された電子は、アノード電極26に印加された高電圧に引き寄せられて、対応する画素の蛍光層22に衝突し、蛍光層22を発光させる。ここで、画素は、カソード電極14とゲート電極18との交差領域に対応する電子放出デバイス100および発光ユニット110で構成される。
【0044】
上述した構造で、ゲート電極18の開口部181の幅、つまり、開口部181の直径は、絶縁層16のエッチング特性や電子放出部20の製造法など主に工程特性によって、適正寸法が定められる。つまり、湿式エッチングで絶縁層16に開口部161を形成する場合には、湿式エッチングの等方性エッチング特性を考慮しなければならず、また電子放出部20の製造方法に応じて、電子放出部20の周辺の余裕空間幅(W)(図2参照)を調節しなければならない。
【0045】
そして、画素領域内で電子放出部20が配置される領域は、画素領域中央の所定の部位に限定される。これは、電子放出部20から放出される電子が所定の発散角を備えて広がって進行するので、第2基板12に到達する電子ビームスポットが隣接する蛍光層22まで広がることを抑制するためのものである。また、電子がスペーサ28に衝突しないようにして、スペーサ28の表面が帯電されることを抑制するためでもある。画素領域中央の所定の部位に配置される電子放出部20に対応して、ゲート電極18の開口部181も画素領域の中央部に配置される。
【0046】
ここで、本発明の実施形態の電子放出表示デバイスは、ゲート電極18の開口部181の幅に対する開口部181のピッチ(互いに隣接する開口部181の中心間の距離)の比率を最適化して、電子放出部20のエミッション効率を上げるとともに、工程不良を防止する構造を提供する。本発明の実施形態でゲート電極18は、下記の数式1を満たすように形成される。
1.36≦P/D≦1.65・・・・・・(数式1)
【0047】
ここで、Dは、ゲート電極18の開口部181の幅、つまり、直径を示す。Pは、ゲート電極18の互いに隣接する開口部181の中心間の距離、つまり、ピッチを示す(図3参照)。
【0048】
図4は、ゲート電極の開口部の直径(D)に対する開口部のピッチ(P)の比率を変化させて、一つの画素領域に配置される電子放出部の放出電流量を測定して示すグラフである。
【0049】
実験に使用された電子放出表示デバイスにおいて、絶縁層16の厚さは、3μmであり、ゲート電極18の開口部181の直径は、14μmに設定される。そして、開口部181のピッチを17μmから24μmに変化させて、電子放出部20の放出電流量を測定した。駆動条件は、カソード電圧0V、ゲート電圧60V、アノード電圧8kVとして同一に設定した。
【0050】
図4を参照すると、開口部181の直径に対する開口部181のピッチの比率(P/D)が1.5である時、最高の放出電流量を示すことが分かる。そして、開口部181の直径に対する開口部181のピッチ比率(P/D)が1.36〜1.65である時、放出電流量ピーク値を基準とすると、90%以上の放出電流量を示していることが分かる。
【0051】
開口部181の直径に対する開口部181のピッチ比率(P/D)が1.36未満であれば、ゲート電極18の互いに隣接する開口部181の相互間に十分な距離を確保できなくなる。よって、一つの電子放出部20において、電子放出部20を取り囲むゲート電極18の電界が隣接する開口部181によって相殺されるので、全体として電子放出部20のエミッション効率が低下される。そして、開口部181の直径に対する開口部181のピッチ比率(P/D)が1.65を超過すれば、電子放出部20の個数が減少して、放出電流量が減少する。
【0052】
また、開口部181の直径に対する開口部181のピッチ比率(P/D)が1.41〜1.60である時、放出電流量ピーク値を基準にすると、95%以上の放出電流量を示すので、ゲート電極18は、下記の数式2を満たすように形成されてよい。
1.41≦P/D≦1.60・・・・・・(数式2)
【0053】
一方、開口部181の直径に対する開口部181のピッチ比率(P/D)が1.36未満である場合には、ゲート電極18の開口部181と絶縁層16の開口部161が不均一に形成され、エッチングマージンが縮小されてゲート電極18の開口部181が互いに連結したり、絶縁層16の開口部161が互いに連結されるなど工程不良が発生しやすい。
【0054】
このように、ゲート電極18が上述した二つの数式の条件を満たすように形成されることによって、同一のゲート電圧で最高の放出電流量を得ることができ、工程不良を最少化できる。そして、電子放出部20のエミッション効率を上げることができるので、高輝度の画面および高解像度を備える電子放出表示デバイスを提供できる。また、本発明の実施形態の電子放出表示デバイスにおいて、ゲート電極18の開口部181の幅(D)およびピッチ(P)の関係を上記の二つの数式のように、最適化できるので、画素間の発光均一度を向上できる。
【0055】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る電子放出表示デバイスの部分分解斜視図である。図6は、図5に示す電子放出デバイスの部分拡大平面図である。ここで、本発明の第2実施形態に係る電子放出表示デバイスは、本発明の第1実施形態の電子放出表示デバイスと基本的に同じ構成要素を備えている。そこで、図5および図6において符号に「’」を付した部材は、第1実施形態の部材と同じ構成要素であるとする。
【0056】
図5を参照すると、本実施形態の電子放出表示デバイスは、ゲート電極18’上部に配置される集束電極30をさらに含む。便宜上、カソード電極14’とゲート電極18’との間に配置される絶縁層を第1絶縁層16’とすると、ゲート電極18’上において第1基板10全体に第2絶縁層32が配置され、第2絶縁層32上に集束電極30が形成される。本実施形態において、集束電極30は、第3電極となる。
【0057】
集束電極30にも電子ビーム通過のための開口部301が形成され、第2絶縁層32にも電子ビーム通過のための開口部321が形成される。この開口部301、開口部321は、一例として、画素領域ごとに一つずつ形成されて、一つの画素領域に配置される複数の電子放出部20’およびゲート電極18’の複数の開口部181’を開放することができる。
【0058】
集束電極30は、数〜数十ボルトの負の直流電圧が印加され、開口部301を通過する電子に反発力を付与して、電子放出部20’から放出される電子を電子ビーム束の中心部に集束させることができる。よって、集束電極30は、電子放出部20’から放出される電子の広がりを抑制できるので、隣接した他の蛍光層に電子が到達する異常発光を防止できる。従って、優れた画面品質を実現できる。ここで、集束電極30の開口部301、第2絶縁層32の開口部321は、複数で形成されてもよい。しかし、上記のように、複数の電子放出部20’およびゲート電極18’の複数の開口部181’を開放するように一つの開口部で形成される方が、電子放出部20’から放出される電子の広がりをより効果的に防止できる。
【0059】
集束電極30がゲート電極18’の複数の開口部181’を開放する開口部301を形成する場合には、集束電極30は、ゲート電極18’の開口部181’の直径(D)と開口部181’のピッチ(P)との関係に影響を与えないようにする必要がある。従って、本実施形態でも、ゲート電極18’の開口部181’の直径に対する開口部181’のピッチ比率(P/D)は、上述した第1実施形態と同一に設定される。
【0060】
この時、集束電極30は、デバイス駆動時、電子ビーム集束にのみ関与するので、駆動電圧と第1絶縁層16’厚さ、ゲート電極18’の開口部181’の直径(D)および開口部181’のピッチ(P)を、上述した実験と同一に設定した場合、電子放出部20’の放出電流量は、図4の実験結果と実質的に同一の結果を示す。
【0061】
このように、本実施形態の電子放出表示デバイスでも、ゲート電極18’が上述した二つの数式の条件を満たすように形成されることによって、同一のゲート電圧で最高の放出電流量を得ることができ、工程不良を最少化できる。そして、本実施形態の電子放出表示デバイスは、電子放出部20’のエミッション効率を上げることができることにより、高輝度、優れた画素間の発光均一度、および高解像度を備えることができる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子放出表示デバイスの部分分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電子放出表示デバイスの部分断面図である。
【図3】図1に示す電子放出デバイスの部分拡大平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電子放出表示デバイスで、ゲート電極の開口部直径に対する開口部ピッチの比率に応じた放出電流量変化を測定して示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電子放出表示デバイスの部分分解斜視図である。
【図6】図5に示す電子放出デバイスの部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 第1基板
12 第2基板
14 カソード電極
16 第1絶縁層
18 ゲート電極
20 電子放出部
22、22R、22G、22B 蛍光層
24 黒色層
26 アノード電極
28 スペーサ
100 電子放出デバイス
110 発光ユニット
161、181 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
前記基板上に形成される第1電極と;
前記第1電極に電気的に接続される電子放出部と;
前記第1電極の上部で、前記第1電極と絶縁されて配置され、前記第1電極との交差領域に前記電子放出部を開放するための複数の開口部が形成される第2電極と;
を含み、
前記第2電極は、下記条件を満たすように形成されることを特徴とする、電子放出デバイス。
1.36≦P/D≦1.65
ここで、Dは、前記第2電極の前記開口部の幅を示し、Pは、前記第2電極の互いに隣接する前記開口部のピッチを示す。
【請求項2】
前記第2電極は、下記条件を満たすように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電子放出デバイス。
1.41≦P/D≦1.60
【請求項3】
前記電子放出部および前記第2電極の前記開口部は、円形に形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子放出デバイス。
【請求項4】
前記第2電極の前記開口部は、前記交差領域の中央部に配置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電子放出デバイス。
【請求項5】
前記第2電極の前記開口部は、前記第1電極および前記第2電極のうち、いずれか一つの電極の長手方向に沿って一列に配置されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電子放出デバイス。
【請求項6】
前記第2電極と絶縁を維持し、前記第2電極の上部に配置される第3電極をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電子放出デバイス。
【請求項7】
前記第3電極は、前記交差領域ごとに前記第2電極の複数の前記開口部を開放する開口部を備えることを特徴とする、請求項6に記載の電子放出デバイス。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極のうち、いずれか一つの電極は、走査電極であり、他の一つの電極は、データ電極であり、前記第3電極は、集束電極であることを特徴とする、請求項6または7に記載の電子放出デバイス。
【請求項9】
前記電子放出部は、炭素ナノチューブ、黒鉛、黒鉛ナノファイバー、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素、フラーレンおよびシリコンナノワイヤーからなる群から選択される少なくとも一つの物質を含んで構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の電子放出デバイス。
【請求項10】
互いに対向して配置される第1基板および第2基板と;
前記第1基板上に形成される第1電極と;
前記第1電極に電気的に接続される電子放出部と;
前記第1電極の上部で、前記第1電極と絶縁されて配置され、前記第1電極との交差領域に前記電子放出部を開放するための複数の開口部が形成される第2電極と;
前記第2基板の一面に形成される蛍光層と;
前記蛍光層の一面に配置されるアノード電極と;
を含み、
前記第2電極は、下記条件を満たすように形成されることを特徴とする、電子放出表示デバイス。
1.36≦P/D≦1.65
ここで、Dは、前記第2電極の前記開口部の幅を示し、Pは、前記第2電極の互いに隣接する前記開口部のピッチを示す。
【請求項11】
前記第2電極は、下記条件を満たすように形成されることを特徴とする、請求項10に記載の電子放出表示デバイス。
1.41≦P/D≦1.60
【請求項12】
前記電子放出部および前記第2電極の前記開口部は、円形に形成されることを特徴とする、請求項10または11に記載の電子放出表示デバイス。
【請求項13】
前記第2電極の前記開口部は、前記交差領域の中央部に配置されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の電子放出表示デバイス。
【請求項14】
前記蛍光層は、前記第2基板の一方向に沿って交互に配置される赤色蛍光層、緑色蛍光層および青色蛍光層を含み、
前記赤色蛍光層、前記緑色蛍光層および前記青色蛍光層の各々は、前記交差領域ごとに対応するように形成され、
前記第2電極の前記開口部は、前記交差領域の中央部で前記一方向と直交する方向に沿って一列に配置されることを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の電子放出表示デバイス。
【請求項15】
前記第2電極と絶縁を維持し、前記第2電極の上部に配置される第3電極をさらに含み、
前記第3電極は、前記交差領域ごとに前記第2電極の複数の前記開口部を開放する開口部を備えることを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の電子放出表示デバイス。
【請求項16】
前記第1電極および前記第2電極のうち、いずれか一つの電極は、走査電極であり、他の一つの電極は、データ電極であり、前記第3電極は、集束電極であることを特徴とする、請求項15に記載の電子放出表示デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−227348(P2007−227348A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232246(P2006−232246)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】