説明

電子楽器用スタンド

【課題】持ち運び作業を簡略化できると共に、セッティングを容易に行うことができる電子楽器用スタンドを提供すること。
【解決手段】電子楽器用スタンド10は、持ち運び可能な状態となると、全ての構成を一体にすることができると共に、折りたたまれてコンパクト(小規模化)にすることができる。よって、電子楽器用スタンド10を一体に持ち運ぶことができるので、持ち運びの作業を簡略化することができると共に、セッティングも容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器用スタンドに関し、特に、持ち運び作業を簡略化できると共に、セッティングを容易に行うことができる電子楽器用スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−259193号公報に開示されているように、演奏者により打撃されることで演奏が行われる電子ドラム及び電子シンバルや、演奏者がフットペダルを踏むことで演奏が行われる電子バスドラムなどで構成される電子ドラムセットが知られている。この電子ドラムセットは、電子ドラム及び電子シンバルがスタンドに取り付けられると共に、電子バスドラムが演奏者の好みに応じた位置に配置されてセッティングされる。
【0003】
また、電子ドラム及び電子シンバルが取り付けられるスタンドは、一対のL字状に組み立てられたパイプを互いに並行配置し、そのL字状のパイプの間に水平のパイプを掛け渡して構成される。電子ドラム及び電子シンバルは、L字状のパイプ及び水平に掛け渡されたパイプに任意に取り付けられて、演奏者の好みに応じた位置に配置される。
【特許文献1】特開2006−259193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子ドラムセットを持ち運ぼうとした場合、一対のL字状のパイプと水平に掛け渡されたパイプとで構成されるスタンドと電子バスドラムとが別体に構成されているため、持ち運びの作業が煩雑になるという問題点があった。また、電子ドラムセットをセッティングしようとした場合、電子バスドラムの位置を再調整して配置しなければならないので、セッティングにも手間がかかるという問題点があった。
【0005】
また、電子ドラムセットを持ち運ぶ場合には、持ち運び時の運搬スペースや持ち運ぶ場所によって、電子ドラム及び電子シンバルをパイプから取り外し、更に、スタンドを分解して持ち運ぶことがある。電子ドラム及び電子シンバルをパイプから取り外すと共にスタンドを分解して持ち運ぶ場合には、電子ドラム及び電子シンバルの取り外し作業およびスタンドの分解作業が必要となるので、電子ドラムセットの持ち運びの作業がさらに煩雑になると共に、セッティングにもさらに手間がかかるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、持ち運び作業を簡略化できると共に、セッティングを容易に行うことができる電子楽器用スタンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の電子楽器用スタンドは、演奏者により打撃されて演奏が行われる第1楽器が取り付けられるものであり、前記第1楽器が取り付けられると共に、垂直方向に立設されるパイプと、そのパイプの前記垂直方向下部に連結されるベースと、そのベースに連結され、前記パイプを立設した状態に保持する脚部材と、その脚部材に取り付けられ、演奏者により踏動されて演奏が行われる第2楽器とを備えている。
【0008】
請求項2記載の電子楽器用スタンドは、請求項1記載の電子楽器用スタンドにおいて、前記脚部材は、前記ベースの両側にそれぞれ連結され、そのベースに対して軸着される軸着部と、その軸着部の反ベース側に連結される脚本体部とをそれぞれ備えており、前記軸着部は、前記パイプを立設する状態から前記垂直方向に並行する方向へ回動可能に構成されている。
【0009】
請求項3記載の電子楽器用スタンドは、請求項2記載の電子楽器用スタンドにおいて、前記ベースは、断面形状が1の開放された辺を有して形成され、前記軸着部が軸着された状態で、その軸着部の端部を内側に収容するものであり、前記ベースの内側面であって前記軸着部が前記パイプを立設した状態に保持する位置にある場合にその軸着部の端部と当接する第1当接部と、前記ベースの側面であって前記軸着部が前記垂直方向に並行する方向に回動した位置にある場合に前記軸着部の外面と当接する第2当接部とを備えている。
【0010】
なお、断面形状が1の開放された辺を有して形成されるベースとは、断面が半円の筒状に形成されたベースであっても良いし、断面がコ字状に形成されたベースであっても良く、断面形状に1の開放された辺を有していれば、その形状は如何なる形状であっても良い。
【0011】
請求項4記載の電子楽器用スタンドは、請求項2又は3に記載の電子楽器用スタンドにおいて、前記ベースは、前記垂直方向視においてく字状に形成されており、前記脚本体部は、前記軸着部との連結部分から反連結部分の先端が、前記軸着部の軸心方向と交わる方向で且つ前記ベースの中央方向に向かって配置されている。
【0012】
請求項5記載の電子楽器用スタンドは、請求項1から4のいずれかに記載の電子楽器用スタンドにおいて、前記パイプは、隣接する2本のパイプで構成されており、その2本のパイプのそれぞれに対して、前記第1楽器を取り付ける取付部材を備え、その取付部材は、前記パイプを両側から挟持した状態で前記第1楽器を取り付けると共に、その挟持力を調整可能に構成されている。
【0013】
請求項6記載の電子楽器用スタンドは、請求項5記載の電子楽器用スタンドにおいて、前記取付部材は、その内面から軸心方向へ突起した突起部を備え、前記パイプは、その外面に前記突起部を収容する空間を形成する溝部を備え、前記溝部の空間は、前記取付部材の内面と対向する対向面と、前記第1楽器を取り付ける取付位置まで前記取付部材を回動した場合に前記突起部が当接する第1側壁と、前記第1楽器を収納する収納位置に前記取付部材を回動した場合に前記突起部が当接する第2側壁とを有して構成されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の電子楽器用スタンドによれば、垂直方向に立設されるパイプに、演奏者により打撃されて演奏が行われる第1楽器が取り付けられ、パイプの垂直方向下部にはベースが連結されている。ベースには、パイプを立設した状態に保持する脚部材が連結されており、その脚部材には、演奏者により踏動されて演奏が行われる第2楽器が取り付けられている。演奏者により踏動されて演奏が行われる第2楽器は、通常、電子楽器用スタンドとは別体に構成され、床面に設置される。そのため、持ち運びの作業が煩雑となると共に、セッティングに手間がかかる。しかし、請求項1記載の電子楽器用スタンドによれば、パイプ及びベースに一体に連結された脚部材に第2楽器が取り付けられているので、第2楽器を電子楽器用スタンドと一緒に持ち運ぶことができ、持ち運びの作業を簡略化できると共に、セッティングを容易に行うことができるという効果がある。
【0015】
また、垂直方向に立設されたパイプに、演奏者により打撃されて演奏が行われる第1楽器が取り付けられているので、水平に掛け渡されるパイプに第1楽器を取り付ける場合と比較して、電子楽器全体の省スペース化を図ることができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の電子楽器用スタンドによれば、請求項1記載の電子楽器用スタンドの奏する効果に加え、脚部材は、ベースの両側にそれぞれ連結され、そのベースには軸着部が軸着され、その軸着部の反ベース側に脚本体部が連結されている。そして、軸着部は、パイプを立設する状態から垂直方向に並行する方向へ回動可能に構成されているので、脚部材をパイプを立設した状態から垂直方向に並行する方向に回動することができる。脚部材は、ベースの両側にそれぞれ連結されていることから、ベースの両側から突出した状態に配置されるので、その状態のまま持ち運ぶと脚部材が邪魔となる。しかし、脚部材が垂直方向(即ち、パイプと並行となる方向)へ回動できるので、持ち運びの際に脚部材が邪魔となることを防止できるという効果がある。
【0017】
請求項3記載の電子楽器用スタンドによれば、請求項2記載の電子楽器用スタンドの奏する効果に加え、ベースは、断面形状が1の開放された辺を有して形成されており、軸着部が軸着された状態で、その軸着部の端部が内側に収容される。そして、軸着部がパイプを立設した状態に保持する位置にある場合には、ベースの内側面である第1当接部と軸着部の端部とが当接し、軸着部が垂直方向に並行する方向に回動した位置にある場合には、ベースの側面である第2当接部と軸着部の外面とが当接する。よって、パイプを立設した状態に保持する位置と、持ち運びの際に脚部材を回動した位置とで、第1当接部および第2当接部と軸着部とが当接するので、軸着部の位置決めを容易に行うことができる。従って、軸着部が第1及び第2当接部と当接する位置に回動すれば、パイプを立設した状態に保持する位置と持ち運びの際に脚部材を回動した位置とに軸着部を配置できるので、持ち運びの作業を簡略化できると共にセッティングを容易に行うことができるという効果がある。
【0018】
請求項4記載の電子楽器用スタンドによれば、請求項2又は3に記載の電子楽器用スタンドの奏する効果に加え、ベースは、垂直方向視においてく字状に形成されており、脚本体部は、軸着部との連結部分から反連結部分の先端が、軸着部の軸心方向と交わる方向で且つベースの中央方向に向かって配置されている。即ち、ベースの両側に配置される脚本体部は、軸着部との反連結部分の先端が互いに内側に向かって配置されることになる。脚部材には、踏動して演奏される第2楽器が取り付けられているので、反連結部分の先端が外側に向かって配置されると、演奏者が踏動しづらくなる。しかし、脚本体部の反連結部分の先端が内側に向かって配置されるので、演奏者が演奏し易い電子楽器用スタンドを提供することができるという効果がある。
【0019】
請求項5記載の電子楽器用スタンドによれば、請求項1から4のいずれかに記載の電子楽器用スタンドの奏する効果に加え、パイプは、隣接する2本のパイプで構成されており、その2本のパイプのそれぞれに対して、第1楽器が取付部材により取り付けられる。よって、パイプが2本の隣接するパイプにより構成されているので、取付部材により第1楽器を取り付ける場合には、垂直方向のほぼ同位置に異なる第1楽器を取り付けることができる。従って、演奏者が演奏し易い配置に第1楽器を取り付けることができる電子楽器用スタンドを提供することができるという効果がある。
【0020】
また、取付部材は、パイプを両側から挟持した状態で第1楽器を取り付けると共に、その挟持力を調整可能に構成されているので、取付部材の挟持力を調整して、垂直方向の高さを容易に変更することができるし、垂直方向に対して回動する方向への位置も容易に変更することができるという効果がある。
【0021】
請求項6記載の電子楽器用スタンドによれば、請求項5記載の電子楽器用スタンドの奏する効果に加え、パイプの溝部の空間は、取付部材の内面と対向する対向面と、第1楽器を取り付ける取付位置まで取付部材を回動した場合に取付部材の突起部が当接する第1側壁と、第1楽器を収納する収納位置まで取付部材を回動した場合に取付部材の突起部が当接する第2側壁とを有して構成されている。よって、取付部材の挟持力を弱くして、第1楽器を取付位置または収納位置に回動させる場合には、第1側壁または第2側壁に突起部が当接する位置まで回動することで、持ち運びの準備およびセッティングする位置に第1楽器を回動することができる。従って、持ち運びの作業を簡略化できると共にセッティングを容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態である電子楽器用スタンド10を使用した電子楽器システム1について説明する。図1は、本発明の一実施の形態である電子楽器システム1の外観正面図である。
【0023】
図1に示す矢印Xは、電子楽器システム1(電子楽器用スタンド10)の垂直(上下)方向を示しており、矢印Yは、電子楽器システム1(電子楽器用スタンド10)の奥行(前後)方向を示しており、矢印Zは、電子楽器システム1(電子楽器用スタンド10)の幅(左右)方向を示している。また、矢印A及びBは、電子楽器システム1を収納する場合に回動させる回動方向を示している。なお、以下の説明において、矢印X,Y,Z,A,Bは、同様の方向を示すものとする。
【0024】
図1に示すように、電子楽器システム1は、電子楽器用スタンド10と、その電子楽器用スタンド10に取り付けられ、演奏者により打撃されて演奏が行われるタムパット30a,30b,31a及びシンバルパット32a,32b、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34bと、電子楽器用スタンド10に取り付けられ、演奏者により踏まれることで演奏が行われるフットペダル35a,35bと、電子楽器用スタンド10の上部に配置される音源36とを有して構成されている。
【0025】
なお、タムパット30a,30b,31a及びシンバルパット32a,32b、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34b、フットペダル35a,35bは、公知の電子楽器であるので、その詳細な説明は省略する。また、音源36は、タムパット30a,30b,31a及びシンバルパット32a,32b、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34b、フットペダル35a,35bから入力される信号(打撃及び踏動された強さや早さなどに関する信号)に基づいて楽音を生成し、図示しないスピーカや他の電子楽器に楽音を出力するものである。
【0026】
タイムパッド30aは、後述するセンターパイプ13a(図2参照)に取り付けられるアームパイプ20aに固着されている。シンバルパット32aは、アームパイプ20aの端部に連結具21aを介して垂直方向(図1矢印X方向)に固着されるロッド22aによって支持されている。また、タムバッド31aは、センターパイプ13aに取り付けられるアームパイプ23aに固着されている。
【0027】
タイムパッド30bは、後述するセンターパイプ13b(図2参照)に取り付けられるアームパイプ20bに固着されている。シンバルパット32bは、アームパイプ20bの端部に連結具21bを介して垂直方向(図1矢印X方向)に固着されるロッド22bによって支持されている。また、ハイハットシンバル33bは、センターパイプ13bに取り付けられるアームパイプ23bに固着されている。また、スネアパッド34bは、センターパイプ13bに取付具24を介して取り付けられている。
【0028】
フットペダル35a,35bは、電子楽器用スタンド10の下部(図1下方、後述する脚40a,40b(図2参照))に取り付けられており、電子楽器用スタンド10の前面側(図1矢印Y方向手前側)に配置されている。
【0029】
次に、図2を参照して、電子楽器用スタンド10の構成について説明する。図2は、電子楽器用スタンド10の概略を示した正面図である。なお、図2では、演奏者により打撃されるタムパット30a,30b,31a及びシンバルパット32a,32b、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34bの図示を省略している。
【0030】
図2に示すように、電子楽器用スタンド10は、床面Fに設置される設置台としてのベース11と、そのベース11の一方(図2矢印Z方向右側)に連結されるパイプ12aと、そのパイプ12aに連結され、床面Fに設置される設置台としての脚40aと、ベース11の他方(図2矢印Z方向左側)に連結されるパイプ12bと、そのパイプ12bに連結され、床面Fに設置される設置台としての脚40bと、ベース11に連結され床面Fに対して垂直方向(図2矢印X方向)に立設されるセンターパイプ13a,13bと、そのセンターパイプ13a,13bの上端を連結し、音源36を載置する音源ホルダー14とを有して構成されている。
【0031】
センターパイプ13aには、2つの取付具25aが取り付けられており、その取付具25aにアームパイプ20a及びアームパイプ23aが連結されている。また、センターパイプ13bには、上述した取付具24と、2つの取付具25bとが取り付けられており、取付具25bにアームパイプ20b、アームパイプ23bが連結されている。なお、取付具25a,25bと取付具24とは、同じ構造に構成されている。
【0032】
取付具24,25a,25bは、センターパイプ13a,13bを挟持した状態で固定されるものであり、その挟持力は、図示しないネジにより容易に調整することができる。よって、取付具24,25a,25bの垂直方向(図2矢印X方向)の位置や、センターパイプ13a,13bに対して回動する位置を簡単に調整することができる。
【0033】
なお、センターパイプ13a,13bは、互いに並行に配置され隣接して配置されている。このセンターパイプ13a,13b間の距離(図2矢印Z方向の距離)を短くすれば、電子楽器用スタンド10を小規模化することができる。そのため、本実施の形態では、取付具24,25a,25bを上下移動および回動した場合に、取付具24,25bと取付具25aとが当たらない最短距離としている。
【0034】
ベース11には、その下部に床面Fと接する台座15aが設けられており、脚40aには、その下部に床面Fと接する台座15b,15cが設けられており、脚40aには、その下部に床面Fと接する台座15d,15eが設けられている。この台座15a〜15eにより、電子楽器用スタンド10が床面Fに対して支持されている。即ち、ベース11と、脚40a,40bによって、センターパイプ13a,13bが垂直(矢印X方向)に保持されている。
【0035】
また、脚40a,40bは、図1に示すように、パイプ12a,12bに対して直交する方向に連結されると共に、図2に示すように、パイプ12a,12bとの連結部分の反対側の先端が、互いに向き合った方向(ベース11の中心部分に向かう方向)に配置されている。また、図1に示すように、ベース11は、垂直方向視(矢印X方向視)において略く字状に形成されている。よって、台座15a〜15eは、垂直方向視において、五角形に構成されるので、安定して電子楽器用スタンド10を保持することができる。
【0036】
また、脚40a,40bは、パイプ12a,12bに対して直交する方向に連結されると共に、パイプ12a,12bとの連結部分の反対側の先端が、互いに向き合った方向に配置されているので、その脚40a,40bの上部に取り付けられたフットペダル35a,35bは、演奏者側に向くことになる。よって、演奏者は、フットペダル35a,35bの踏動を、無理な姿勢をとることなく演奏することができる。
【0037】
なお、脚40a,40bは、パイプ12a,12bに対して直交する方向に連結されるものとしたが、その直交する方向を含む交わる方向に連結するものとしても良い。これは、パイプ12a,12bの長さや脚40a,40bの大きさに応じて、適宜設定される。なお、パイプ12a,12bに交わる方向とは、例えば、直交する方向の±30°の範囲である。
【0038】
次に、図3を参照して、取付具24,25a,25bの構造について説明する。図3は、取付具25aとセンターパイプ13aの上面図および取付具25aがセンターパイプ13aに取り付けられた状態を示した図である。なお、図3では、取付具25aについて説明し、取付具24,25bについては、構造が同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0039】
また、図3(a−1)及び図3(a−2)は、タムパッド30a,31a及びシンバルパッド32aが演奏を行う取付位置にある場合を示しており、図3(c−1)及び図3(c−2)は、タムパッド30a,31a及びシンバルパッド32aが収納された収納位置にある場合を示しており、図3(b−1)及び図3(b−2)は、取付位置と収容位置との中間位置にある場合を示している。
【0040】
まず、図3(a−1)を参照して、取付具25a及びセンターパイプ13aの構造について説明する。取付具25aは、パイプ20a,23aを挟持して連結する連結部25a1と、センターパイプ13aを挟持する挟持部25a2と、センターパイプ13aを挟持する挟持力を調整する調整部25a3とで構成されている。
【0041】
連結部25a1は、パイプ20a,23aの角度(電子楽器用スタンド10の左右方向に対する回転角度)を調整した後、図示しないネジが締め付けられて、パイプ20a,23aを固定して連結する部分である。
【0042】
調整部25a3は、パイプ20a,23aの垂直方向の高さと、その垂直方向に対する回転角度を調整した後に、図示しないネジが締め付けられて、センターパイプ13aに対して取付具25aを固定する部分である。
【0043】
挟持部25a2の内側(センターパイプ13aと対向する面)には、その挟持部25a2の中心(軸心)方向に向かって突起した突起26aが形成されている。また、センターパイプ13aの外周面(取付具25aと対向する面)には、溝27aが形成されている。
【0044】
センターパイプ13aの溝27aは、取付具25aと対向する対向面27a1と、突起26aが当接する2つの側壁27a2,27a3とにより、突起26aが収容される空間が形成されている。また、溝27aは、センターパイプ13aの垂直方向の全域に亘って形成されている(図5から溝27aがセンターパイプ13aの全域に亘って形成されていることが解る)。
【0045】
図3(a−1)及び図3(a−2)に示す取付具25aは、タムパッド30a,31a及びシンバルパッド32aを演奏者が演奏する場合に固定される位置(取付位置)にある状態を示している。図示するように、取付具25aの突起26aがセンターパイプ13aの溝27aの側壁27a2に当接している。
【0046】
図3(c−1)及び図3(c−2)に示す取付具25aは、電子楽器用スタンド10を持ち運ぶ場合に、タムパッド30a,31a及びシンバルパッド32aを収納する場合に固定される位置(収納位置)にある状態を示している。図示するように、取付具25aの突起26aがセンターパイプ13aの溝27aの側壁27a3に当接している。
【0047】
よって、タムパッド30a,31a及びシンバルパッド32aを演奏する場合の位置と、タムパッド30a,31a及びシンバルパッド32aを収納する場合の位置とは、突起26aを側壁27a2又は側壁27a3に当接することで簡単に調整することができる。
【0048】
また、図3(b−1)及び図3(b−2)に示すように、突起26aが溝27a内であれば、どの位置でも固定できるので、演奏者の好みに応じた位置にタムパッド30a,31a及びシンバルパッド32aを固定することができる。
【0049】
次に、図4を参照して、ベース11とパイプ12a,12bとを連結する構造について説明する。図4は、ベース11とパイプ12a,12bとを分解した底面視の斜視図である。
【0050】
図4に示すように、パイプ12aには、垂直方向に第1貫通孔12a1が貫通形成されると共に第2貫通孔12a2が貫通形成され、水平方向に第3貫通孔12a3が貫通形成されている。同様に、パイプ12bには、垂直方向に第1貫通孔12b1が貫通形成されると共に第2貫通孔12b2が貫通形成され、水平方向に第3貫通孔12b3が貫通形成されている。
【0051】
ベース11は、断面が半円の筒状に形成されており、その一方側(図4右側)の端部に、水平方向に貫通孔11a1が貫通形成され、他方側(図4左側)の端部に、水平方向に貫通孔11b1が貫通形成されている。また、ベース11の一方(図4右)の内側面には、ネジ溝11a2,11a3が形成され、ベース11の他方(図4左)の内側面には、ネジ溝11b2,11b3が形成されている。
【0052】
なお、ベース11は、断面が半円の筒状に形成するものとしたが、断面がコ字状に形成するものとしても良いし、その形状は、特に限定しない。
【0053】
ベース11へのパイプ12aの取り付けは、ベース11の貫通孔11a1とパイプ12aの第3貫通孔12a3とにシャフト52aを貫通し、その後、ネジ53a1,53a2を第1及び第2貫通孔12a1,12a2を介して、ネジ溝11a3,11a2に螺着することで行われる。
【0054】
同様に、ベース11へのパイプ12bの取り付けは、ベース11の貫通孔11b1とパイプ12bの第3貫通孔12b3とにシャフト52bを貫通し、その後、ネジ53b1,53b2を第1及び第2貫通孔12b1,12b2を介して、ネジ溝11b3,11b2に螺着することで行われる。
【0055】
なお、ネジ53a1,53a2,53b1,53b2を取り外すと、パイプ12a,12bは、シャフト52a,52bを中心として回動可能に構成されている。即ち、パイプ12a,12bは、ベース11に軸着されている。
【0056】
また、ベース11の一方の内面には、ネジ溝11a2,11a3に隣接して、3つの突起50aが形成されており、ベースの一方側の側面には、U字状の切欠51aが形成されている。突起50aは、電子楽器用スタンド10を設置する位置(センターパイプ13a,13bを立設した状態に保持する位置)にパイプ12aが配置された場合にパイプ12aの外周面が当接する部分であり、切欠51aは、電子楽器用スタンド10を持ち運ぶ位置(垂直方向に並行する方向に回動した位置)にパイプ12aが配置された場合に、そのパイプ12aの外周面が当接する部分である。
【0057】
また、ベース11の他方の内面には、ベースの一方側と同様に、ネジ溝11b2,11b3に隣接して、3つの突起50bが形成されており、ベースの一方側の側面には、U字状の切欠51bが形成されている。
【0058】
よって、パイプ12a,12bの外周面と突起50a,50b又は切欠51a,51bとを当接させることで、電子楽器用スタンド10を設置する位置と、電子楽器用スタンド10を持ち運ぶ位置とに、パイプ12a,12b(脚40a,40b)を簡単に配置することができる。
【0059】
次に、図5を参照して、電子楽器用スタンド10を持ち運ぶ状態について説明する。図5は、電子楽器用スタンド10を持ち運ぶ状態を示した斜視図である。
【0060】
電子楽器用スタンド10を持ち運ぶ場合には、まず、取付具25a,25bの挟持部25a3,25b3の図示しないネジを緩め、それぞれ内側(図1及び図2矢印B方向)へ移動させる。この際、上述したように、取付具25a,25bを、突起26a,26bが側壁27a3,27b3に当接する位置まで回動し、その後、図示しないネジを締め付け固定する。また、取付具25a,25bを回動する際には、タムパッド30a,30b,31a及びシンバルパッド32a、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34bがそれぞれ当たらないように、垂直方向(図5矢印X方向)の位置を調整しつつ行う。
【0061】
次に、電子楽器用スタンド10を寝かせて、底面からネジ53a1,53a2,53b1,53b2を緩めて、その後、パイプ12a,12bをセンターパイプ13aに並行となる方向(図1及び図2矢印A方向)に回動して、電子楽器用スタンド10を持ち運び可能な状態とする。
【0062】
図5に示すように、電子楽器用スタンド10は、持ち運び可能な状態となると、全ての構成を一体にすることができると共に、折りたたまれてコンパクト(小規模化)にすることができる。よって、電子楽器用スタンド10を一体に持ち運ぶことができるので、持ち運びの作業を簡略化することができる。また、フットペダル35a,35bが電子楽器用スタンド10に一体となっているので、別体に設けられたフットペダル35a,35bを再度セッティングする手間を省くことができる。さらに、電子楽器用スタンド10自体を分解しなくても良いので、持ち運びの作業を簡略化できると共にセッティングの手間を省くことができる。
【0063】
また、取付具25a,25bの突起26a,26bを側壁27a3,27b3に当接させることで、タムパッド30a,30b,31a及びシンバルパッド32a、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34bを収容する位置に簡単に調整することができると共に、パイプ12a,12bの外周面とベース11の切欠51a,51bとを当接させることで、脚40a,40bを収納する位置に簡単に調整することができる。よって、電子楽器用スタンド10を持ち運ぶ状態に簡単に調整することができる。
【0064】
反対に、取付具25a,25bの突起26a,26bを側壁27a2,27b2に当接させることで、タムパッド30a,30b,31a及びシンバルパッド32a、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34bを取り付ける位置に簡単に調整することができると共に、パイプ12a,12bの外周面とベース11の突起50a、50bとを当接させることで、脚40a,40bを収納する位置に簡単に調整することができる。よって、電子楽器用スタンド10を演奏する状態に簡単に調整することができる。
【0065】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0066】
上記実施の形態では、センターパイプ13a,13bを2本としたが、一本のセンターパイプの構成としても良いし、2本以上のセンターパイプの構成としても良い。一本のセンターパイプの構成では、タムパット30a,30b,31a及びシンバルパット32a,32b、ハイハットシンバル33b、スネアパッド34bなどの電子楽器を上下に干渉しないように取り付けるので、電子楽器の数が少ない場合に適している。2本以上のセンターパイプの構成では、反対に電子楽器の数が多い場合に適している。なお、センターパイプは、あくまで垂直方向に立設され、水平方向のパイプを有しない構成なので、電子楽器用スタンド10の省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態である電子楽器システムの外観正面図である。
【図2】電子楽器用スタンドの概略を示した正面図である。
【図3】取付具とセンターパイプの上面図および取付具がセンターパイプに取り付けられた状態を示した図である。
【図4】ベースとパイプとを分解した底面視の斜視図である。
【図5】電子楽器用スタンドを持ち運ぶ状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
10 電子楽器用スタンド
11 ベース
12a,12b パイプ(脚部材の一部、軸着部)
13a,13b センターパイプ(パイプ)
15b〜15e 台座(脚部材の一部)
30a,30b,31a タムパット(第1楽器)
24 取付具(取付部材)
25a,25b 取付具(取付部材)
26a,26b 突起(突起部)
27a,27b 溝(溝部)
27a1,27b1 対向面
27a2,27b2 側壁(第1側壁)
27a3,27b3 側壁(第2側壁)
32a,32b シンバルパット(第1楽器)
33b ハイハットシンバル(第1楽器)
34b スネアパッド(第1楽器)
35a,35b フットペダル(第2楽器)
40a,40b 脚(脚部材の一部、脚本体部)
50a,50b 突起(第1当接部)
51a,51b 切欠(第2当接部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者により打撃されて演奏が行われる第1楽器が取り付けられる電子楽器用スタンドにおいて、
前記第1楽器が取り付けられると共に、垂直方向に立設されるパイプと、
そのパイプの前記垂直方向下部に連結されるベースと、
そのベースに連結され、前記パイプを立設した状態に保持する脚部材と、
その脚部材に取り付けられ、演奏者により踏動されて演奏が行われる第2楽器とを備えていることを特徴とする電子楽器用スタンド。
【請求項2】
前記脚部材は、前記ベースの両側にそれぞれ連結され、そのベースに対して軸着される軸着部と、その軸着部の反ベース側に連結される脚本体部とをそれぞれ備えており、
前記軸着部は、前記パイプを立設する状態から前記垂直方向に並行する方向へ回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子楽器用スタンド。
【請求項3】
前記ベースは、断面形状が1の開放された辺を有して形成され、前記軸着部が軸着された状態で、その軸着部の端部を内側に収容するものであり、
前記ベースの内側面であって前記軸着部が前記パイプを立設した状態に保持する位置にある場合にその軸着部の端部と当接する第1当接部と、前記ベースの側面であって前記軸着部が前記垂直方向に並行する方向に回動した位置にある場合に前記軸着部の外面と当接する第2当接部とを備えていることを特徴とする請求項2記載の電子楽器用スタンド。
【請求項4】
前記ベースは、前記垂直方向視においてく字状に形成されており、
前記脚本体部は、前記軸着部との連結部分から反連結部分の先端が、前記軸着部の軸心方向と交わる方向で且つ前記ベースの中央方向に向かって配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子楽器用スタンド。
【請求項5】
前記パイプは、隣接する2本のパイプで構成されており、
その2本のパイプのそれぞれに対して、前記第1楽器を取り付ける取付部材を備え、
その取付部材は、前記パイプを両側から挟持した状態で前記第1楽器を取り付けると共に、その挟持力を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子楽器用スタンド。
【請求項6】
前記取付部材は、その内面から軸心方向へ突起した突起部を備え、
前記パイプは、その外面に前記突起部を収容する空間を形成する溝部を備え、
前記溝部の空間は、前記取付部材の内面と対向する対向面と、前記第1楽器を取り付ける取付位置まで前記取付部材を回動した場合に前記突起部が当接する第1側壁と、前記第1楽器を収納する収納位置に前記取付部材を回動した場合に前記突起部が当接する第2側壁とを有して構成されていることを特徴とする請求項5記載の電子楽器用スタンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−233523(P2008−233523A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72806(P2007−72806)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】