説明

電子機器、筐体及びガスケット

【課題】組付作業性が向上した電子機器、筐体及びガスケットを提供することを課題とする。
【解決手段】本実施例の携帯電話は、弾性を有したガスケット40と、ガスケットを挟むように組付けられフロントケース30、リアケース10、フロントケース30及びリアケース10内に収納されたディスプレイユニット20と、を備え、ガスケット40は、頂部45、頂部45を介して互いに異なる側に位置する側部41、42、リアケース10の一方に接合された接合部48、を含み、フロントケース30、リアケース10が分離した状態において、側部41、42は、フロントケース30、リアケース10の組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器、筐体及びガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
第1ケースと第2ケースとの間からの水の浸入を防止するためのガスケットがある。ガスケットは、弾性を有し、第1及び第2ケースの一方に設けられた溝内に配置される。ガスケットが、第1及び第2ケースの他方に押しつぶされることにより、第1及び第2ケースの防水が確保される。関連技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−218633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1及び第2ケースの組付けは、あらかじめ溝内にガスケットを配置したうえで行われる。ガスケットが所望の姿勢から傾いた状態で第1及び第2ケースが組みつけられる恐れがある。この場合には、ガスケットが有する本来の防水機能が低下する恐れがある。ガスケットの姿勢に注意を払いつつ第1及び第2ケースの組付け作業を行うと、組付作業性が悪化する恐れがある。
【0005】
本発明は、組付作業性が向上した電子機器、筐体及びガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示の電子機器は、弾性を有したガスケットと、前記ガスケットを挟むように組付けられ第1及び第2ケースと、前記第1及び第2ケース内に収納された電子部品と、を備え、前記ガスケットは、頂部、前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部、前記第1ケースに接合された接合部、を含み、前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している。
【0007】
本明細書に開示の筐体は、弾性を有したガスケットと、前記ガスケットを挟むように組付けられ第1及び第2ケースと、を備え、前記ガスケットは、頂部、前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部、前記第1ケースに接合された接合部、を含み、前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している。
【0008】
本明細書に開示のガスケットは、組付けられた第1及び第2ケースに挟まれ弾性を有し、頂部と、前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部と、前記第1ケースに接合された接合部と、を備え、前記第1及び第2ケースが分離した状態では、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している。
【発明の効果】
【0009】
組付作業性が向上した電子機器、筐体及びガスケットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、携帯電話の分解斜視図。
【図2】図2A、2Bは、フロントケース、リアケースの説明図
【図3】図3Aは、図2AのA−A断面図、図3Bは、リアケース、フロントケースが組付けられた状態での図3Aに対応する図。
【図4】図4A、4Bは、第1変形例の説明図、図4C、4Dは、第2変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
携帯電話を電子機器の一例として説明する。
図1は、携帯電話の分解斜視図である。携帯電話は、リアケース10、60、ディスプレイユニット20、フロントケース30、80、プリント基板70、を含む。ディスプレイユニット20は、ディスプレイ22を有している。ディスプレイユニット20は、リアケース10、フロントケース30内に収納される。フロントケース80には、複数のキー82が設けられている。プリント基板70は、リアケース60、フロントケース80内に収納される。プリント基板70には、キー82への操作に応じてオンオフが切替わる接点が設けられている。フロントケース30、80は、それぞれヒンジ部34、84を有している。これにより、フロントケース30、80は開閉可能に連結されている。ディスプレイユニット20、プリント基板70は、電子部品に相当する。
【0012】
図2A、Bは、フロントケース30、リアケース10の説明図である。尚、図1に示したフロントケース30には、正面側にフロントパネル39が固定されている。フロントケース30には、ディスプレイ22を露出するための開口部31が形成されている。また、開口部31の周囲には、複数の係合孔32、貫通孔33が形成されている。リアケース10には、係合孔32と係合する係合爪12が複数形成されている。また、リアケース10には、貫通孔33に対応したネジ穴13が複数形成されている。リアケース10とフロントケース30との間にディスプレイユニット20が挟まれた状態で、リアケース10、フロントケース30が組付けられることにより、ディスプレイユニット20はリアケース10、フロントケース30に収納される。リアケース10、フロントケース30は合成樹脂製である。
【0013】
リアケース10とガスケット40とは一体成形されており、これによりガスケット40はリアケース10に接合している。ガスケット40は、弾性を有している。ガスケット40は、例えば熱可塑性エラストマである。即ち、リアケース10とガスケット40とは、互いに異なる材料により一体成形されている。ガスケット40は、リアケース10の縁に沿うように連続した環状である。リアケース10、フロントケース30が組付けられる際に、ガスケット40は、リアケース10、フロントケース30に挟まれる。ガスケット40は、リアケース10、フロントケース30内を防水する機能を有している。ガスケット40について以下で説明する。
【0014】
図3Aは、図2AのA−A断面図である。図3Bは、リアケース10、フロントケース30が組付けられた状態での図3Aに対応する図である。図3Aは、リアケース10、フロントケース30が組付けられる前の状態、換言すれば、リアケース10、フロントケース30が分離した状態でのガスケット40の姿勢を示している。
【0015】
図3Aに例示するように、ガスケット40は、リアケース10の接合面14に接合されている。ガスケット40は突状である。ガスケット40は、側部41、42、頂部45、接合部48を含む。側部41、42は、頂部45を介して互いに異なる側に位置している。ガスケット40の先端は、当接面18よりも高い。側部41、42は、それぞれリアケース10の外側、内側に位置する。
【0016】
側部41、42のそれぞれの傾斜角度α、βは、互いに相違している。傾斜角度αは、傾斜角度βよりも小さい。傾斜角度α、βの合計は、例えば167度〜120度の範囲であるが、この範囲に限定されない。尚、傾斜角度α、βは、リアケース10に対してフロントケース30が組付けられる組付け方向Dに直交する仮想線Lを基準としている。尚、傾斜角度は、90度以上であってもよい。また、側部41側には、窪み部49が設けられている。窪み部49は、側部41、42間の厚みを減ずる機能を有している。
【0017】
側部41と頂部45との間にアール部43が、側部42と頂部45との間にアール部44が設けられている。アール部43、44の曲率半径は相違している。アール部43の曲率半径は、アール部44よりも小さい。
【0018】
接合部48は、リアケース10の2平面である接合面14、15に接合している。これにより、接合部48とリアケース10との接合面積を確保している。また、ガスケット40と接合されるリアケース10の面は、このような形状に限定されない。例えば、ガスケットに向けて凹状となる曲面にガスケットが接合されていてもよい。
【0019】
図3Bに例示するように、リアケース10、フロントケース30が組付けられた状態では、当接面18と押圧面38とが当接し、ガスケット40はフロントケース30の押圧面38に押圧されてリアケース10の内側に倒れた状態となる。主に、側部41、頂部45が押圧面38と当接した状態となる。ガスケット40は弾性を有しているので、ガスケット40は、リアケース10、フロントケース30に対して圧力を作用させる。これにより、リアケース10とフロントケース30との間の防水性が確保される。
【0020】
傾斜角度α、βが相違していることにより、リアケース10とフロントケース30とを組付けた際にガスケット40は一定の側に倒れやすくなっている。また、アール部43、44の曲率半径が相違していることにより、ガスケット40は一定の側に倒れやすくなっている。また、窪み部49により、側部41、42間の厚みが減じられており、これによりガスケット40は倒れた姿勢となりやすい。前述したようにガスケット40は環状であるが、リアケース10とフロントケース30との組付けの際には、全ての領域でガスケット40は内側に倒れた状態となる。
【0021】
また、ガスケット40が倒れた姿勢となることにより、フロントケース30とガスケット40との接触面積は、ガスケット40が起立した姿勢のままフロントケース30に押圧される場合の接触面積よりも大きくなる。これにより、フロントケース30が受ける面圧が抑制されフロントケース30への負荷を抑制できる。これにより、フロントケース30として薄型のものについても採用できる。また、窪み部49が設けられていることにより、ガスケット40の反発力が大きくなりすぎることを抑制している。
【0022】
本実施例とは異なる構造のガスケットについて説明する。本実施例とは異なる構造のガスケットは、リアケースには接合されおらず、リアケースの溝部に収納される。このガスケットは突状である。溝部へのガスケットの配置を容易にするために、溝部の幅はガスケットの幅よりも大きく形成されている。リアケースとフロントケースとの組付けの際に、ガスケットが所望の姿勢よりも傾いた状態となる恐れがある。この状態でリアケースとフロントケースとの組付けが行われると、予め想定されるガスケットの反発力が低下する恐れがある。このような場合には、リアケースとフロントケースとの間の防水性が低下する恐れがある。また、ガスケットの底部とリアケースとの間から水が内部に浸入する恐れがある。このように、ガスケットが所望の姿勢を考慮しつつ組付け作業を行なうと、組付作業性が悪化する恐れがある。
【0023】
しかしながら、本実施例において、リアケース10とガスケット40とが一体に成形により接合されている。従って、組立て前においてガスケット40は所望の姿勢を維持する。これにより、ガスケット40の姿勢に配慮することなくリアケース10とフロントケース30とを組付けることができる。よって、組付作業性が向上する。リアケース10とフロントケース30とが組付けられるとガスケット40は倒れた姿勢となって防水性が確保できる。
【0024】
次に、変形例について説明する。
図4A、4Bは、第1変形例の説明図、図4C、4Dは、第2変形例の説明図である。図4Aに例示するように、第1変形例のガスケット40aにおいては、側部41aの傾斜角度α1は、側部42aの傾斜角度β1よりも大きい。アール部43aの曲率半径は、アール部44aよりも小さい。図4Bに例示するように、組付け後は、ガスケット40aは先端が内側に倒れた姿勢となる。押圧面38aは段状に形成されている。押圧面38aの組付け方向Dと直交する面がガスケット40aを押圧する。第1変形例のガスケット40aによっても組付作業性が向上する。
【0025】
図4Cに例示するように、第2変形例のガスケット40bにおいては、側部41bの傾斜角度α2は、側部42bの傾斜角度β2よりも小さい。アール部43bの曲率半径は、アール部44bよりも大きい。押圧面38bは、段状に形成されている。また、当接面18bは平面状であり、当接面18bにガスケット40bが接合されている。図4Dに例示するように、組付け後は、ガスケット40bは内側に倒れた姿勢となる。フロントケース30bの押圧面38bの組付け方向Dと直交する部分がガスケット40bを押圧する。図4Dに例示するように、フロントケース30bとガスケット40bとの接触面積を確保することができる。第2変形例のガスケット40bによっても組付作業性が向上する。
【0026】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0027】
電子機器としては、携帯電話に限定されない。例えば、PDAやノートパソコンであってもよい。また、上記ガスケットを採用した筐体は、電子部品以外を収納するものであってもよい。ガスケットが常に一定の側に倒れればよく、ケースの外側に倒れるように設計してもよい。窪み部は、両側部に設けられていてもよい。上記ガスケットを、リアケース60に設けてもよい。
【0028】
(付記1)
弾性を有したガスケットと、
前記ガスケットを挟むように組付けられ第1及び第2ケースと、
前記第1及び第2ケース内に収納された電子部品と、を備え、
前記ガスケットは、頂部、前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部、前記第1ケースの一方に接合された接合部、を含み、
前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している、電子機器。
(付記2)
前記ガスケットは、前記第1側部と前記頂部との間にある第1アール部、前記第2側部と前記頂部との間にある第2アール部、を含み、
前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2アール部の曲率半径は相違している、付記1の電子機器。
(付記3)
前記ガスケットは、前記第1及び第2側部の少なくとも一方は窪んでいる、付記1又は2の電子機器。
(付記4)
前記ガスケットと前記第1ケースとは一体に成形されている、付記1乃至3の何れかの電子機器。
(付記5)
前記第1及び第2ケースが組付けられた状態においては、前記ガスケットは前記第2ケースに押圧されて倒れた状態となる、付記1乃至4の何れかの電子機器。
(付記6)
前記第1側部の傾斜角度は、前記第2側部の傾斜角度よりも小さく、
前記第1アール部の曲率半径は、前記第2アール部よりも大きい、付記2の電子機器。
(付記7)
前記接合部は、前記第1ケースの連続した2平面に、又は前記第1ケースの前記ガスケットに向けて凹状となる曲面に接合している、付記1の電子機器。
(付記8)
弾性を有したガスケットと、
前記ガスケットを挟むように組付けられ第1及び第2ケースと、を備え、
前記ガスケットは、頂部、前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部、前記第1ケースに接合された接合部、を含み、
前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している、筐体。
(付記9)
組付けられた第1及び第2ケースに挟まれ弾性を有したガスケットにおいて、
頂部と、
前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部と、
前記第1ケースに接合された接合部と、を備え、
前記第1及び第2ケースが分離した状態では、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している、ガスケット。
【符号の説明】
【0029】
10 リアケース
20 ディスプレイユニット
30 フロントケース
40 ガスケット
41、42 側部
43、44 アール部
45 頂部
48 接合部
14、15 接合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有したガスケットと、
前記ガスケットを挟むように組付けられ第1及び第2ケースと、
前記第1及び第2ケース内に収納された電子部品と、を備え、
前記ガスケットは、頂部、前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部、前記第1ケースに接合された接合部、を含み、
前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している、電子機器。
【請求項2】
前記ガスケットは、前記第1側部と前記頂部との間にある第1アール部、前記第2側部と前記頂部との間にある第2アール部、を含み、
前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2アール部の曲率半径は相違している、請求項1の電子機器。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記第1及び第2側部の少なくとも一方は窪んでいる、請求項1又は2の電子機器。
【請求項4】
前記ガスケットと前記第1ケースとは一体に成形されている、請求項1乃至3の何れかの電子機器。
【請求項5】
弾性を有したガスケットと、
前記ガスケットを挟むように組付けられ第1及び第2ケースと、を備え、
前記ガスケットは、頂部、前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部、前記第1ケースに接合された接合部、を含み、
前記第1及び第2ケースが分離した状態において、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している、筐体。
【請求項6】
組付けられた第1及び第2ケースに挟まれ弾性を有したガスケットにおいて、
頂部と、
前記頂部を介して互いに異なる側に位置する第1及び第2側部と、
前記第1ケースに接合された接合部と、を備え、
前記第1及び第2ケースが分離した状態では、前記第1及び第2側部は、前記第1及び第2ケースの組付け方向に直交した仮想線に対する傾斜角度が相違している、ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−276169(P2010−276169A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131233(P2009−131233)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】