説明

電子機器の冷却システム

【課題】省電力化を効率よく行うことができると共に、低騒音化を実現することが可能な電子機器の冷却システムを提供する。
【解決手段】筐体1と、筐体1内に配置され、互いに独立して動作、機能する複数の電子機器2B〜5Bと、筐体1内に配置され、電子機器2B〜5Bに冷却風を供給し冷却する送風機13及び14と、筐体1内に配置され、前記冷却風の温度を取得する温度取得部12と、筐体1内に配置され、前記冷却風の通風抵抗を調節する通風抵抗調節部7と、送風機13及び14及び各々の通風抵抗調節部7を制御する制御部6を備え、制御部6は、温度取得部12が取得した温度情報及び電子機器2B〜5Bの発熱情報に基づいて電子機器2B〜5Bを所定温度に冷却するために必要な目標冷却風量を取得し、前記冷却風量が目標冷却風量となるように各々の通風抵抗調節部7を制御すると共に、前記冷却風量が必要最低限となるよう送風機13及び14の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる半導体、とりわけ情報処理装置のCPUに代表されるような半導体の進化は急激であり、高密度化・高発熱量化の一途をたどっているのは周知の事実である。これに伴い、半導体をはじめとする電子部品の冷却のため、ファンの実装数あるいは回転数を増加させており、装置の騒音値及び消費電力も上昇傾向にある。騒音については、電子機器が事務室等に設置されることが増えてきたことから、低騒音化の要望は強くなっている。また、消費電力については環境負荷低減の観点から省電力化の要望が強くなっている。
【0003】
そこで、このような要求に応えるため、高効率冷却技術の開発が必要とされており、高効率ファンの開発や、高性能ヒートシンクの開発、冷却構造の改良等が行われている。(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−277956号公報
【特許文献2】特開2009−123887号公報
【特許文献3】特開2011−3571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一つの筐体内に、独立して動作・機能する複数の電子機器とこれらの一部または全部の電子機器を一括して冷却するため流路上直列に配置された一つ又は複数の送風機を搭載する複合型電子機器では、当該筐体内に搭載された複数の電子機器各々の冷却風量は、各々の電子機器に関する流路の通風抵抗と送風機の能力に依存することが知られている。特許文献1に記載の発明は、各々の電子機器に関する流路の通風抵抗が固定であるため、冷却に必要な風量を確保するには冷却ファン回転数を上昇させる等、送風機の能力調整で対応している。したがって、一つの筐体内の一部または全部の電子機器を一括して冷却する複合型電子機器の構成上、一部の電子機器に対して必要な風量を供給するために一部の電子機器に対して過剰な風量を供給することとなり、結果として送風機の消費電力並びに騒音が過剰となる状態が存在することになる。
【0006】
また、特許文献2に記載の発明は、各電子機器の吸気温度と排気温度とを測定し、これらの温度差から温度上昇量を算出し、予め設定されている最大吸気温度と最大排気温度との温度差と、前記算出された温度上昇量とを比較した結果に応じて、電子機器の冷却に必要な風量を調整している。しかしながら、各電子機器の消費電力の変化、及び冷却に必要な風量の変化(通風抵抗の変化)が温度に反映されるまでには時間を要するため、冷却に必要な風量が最適となるように調整する(通風抵抗の最適化)までに時間がかかり、同様に、送風機(ファン)の省電力化にも時間がかかる。このため、省電力化を効率よく行うことが困難である。
【0007】
そしてまた、特許文献3に記載の発明は、電子回路基板を収容する筐体に複数の窓を形成し、前記電子回路基板に搭載された電子部品の温度に基づいて前記窓の開閉を制御することで、前記電子部品の発熱量に応じて前記電子回路基板を冷却するための風量を調整するものであり、送風機の消費電力を低減させることについては何ら考慮がなされていない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、省電力化を効率よく行うことができると共に、低騒音化を実現することが可能な電子機器の冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、筐体と、前記筐体内に配置され、互いに独立して動作、機能する複数の電子機器と、前記筐体内に配置され、前記複数の電子機器に冷却風を供給し、当該複数の電子機器を冷却する送風機と、前記筐体内に配置され、前記各々の電子機器に供給される冷却風の温度を取得する温度取得部と、前記筐体内に配置され、前記各々の電子機器に供給される冷却風の通風抵抗を各々調節する通風抵抗調節部と、前記送風機及び前記各々の通風抵抗調節部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度取得部が取得した温度情報及び前記各々の電子機器の発熱情報に基づいて当該各々の電子機器を所定温度に冷却するために必要な目標冷却風量を各々取得し、当該送風機から供給される冷却風量が前記各々の目標冷却風量となるように前記各々の通風抵抗調節部を制御すると共に、前記送風機から供給される冷却風量が必要最低限となるよう当該送風機の駆動を制御する電子機器の冷却システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子機器の冷却システムを採用することで、電子機器筐体外に新たなスペースを設けることなく、省電力化並びに低騒音化をリアルタイムで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る電子機器の冷却システムを採用したブレードサーバの正面図である。
【図2】図1に示すブレードサーバの内部を示す側面図である。
【図3】図1に示すブレードサーバの内部の一部を示す平面図である。
【図4】図1に示すブレードサーバの内部の一部を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る冷却システムの制御ブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係る冷却システムの制御テーブル(現在値)を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る冷却システムの制御テーブル(目標値)を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る冷却システムの通風抵抗調節部の制御テーブルを示す図である。
【図9】図1に示すブレードサーバの一つのブレードに配設されている通風抵抗調節部における通風抵抗調節板の調節角の変化を示した単体の断面図である。
【図10】図2に示すブレードサーバの初期状態(制御実施前の状態)を示す図である。
【図11】図2に示すブレードサーバの初期状態(制御実施前の状態)における通風抵抗特性と送風機特性による静圧と冷却風量との関係を示す図である。
【図12】図2に示すブレードサーバの制御実施後における通風抵抗特性と送風機特性による静圧と冷却風量との関係を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る冷却システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態に係る電子機器の冷却システムを採用したブレードサーバについて図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。また、本実施形態で参照する各図は、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載してある。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器の冷却システムを採用したブレードサーバの正面図、図2は、図1に示すブレードサーバの内部を示す側面図、図3は、図1に示すブレードサーバの内部の一部を示す平面図、図4は、図1に示すブレードサーバの内部の一部を示す斜視図、図5は、本発明の実施形態に係る冷却システムの制御ブロック図、図6は、前記冷却システムの制御テーブル(現在値)を示す図、図7は、前記冷却システムの制御テーブル(目標値)を示す図、図8は、前記冷却システムの通風抵抗調節部の制御テーブルを示す図、図9は、図1に示すブレードサーバの一つのブレードに配設されている通風抵抗調節部における通風抵抗調節板の調節角の変化を示した単体の断面図である。
【0014】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係るブレードサーバは、筐体1と、筐体1内の一方側(図2でいう左側)に配置され、互いに独立して動作、機能する4つのブレード2〜5と、筐体1内の他方側(図2でいう右側)に配置され、ブレード2〜5に冷却風を供給する上流側送風機13及び下流側送風機14と、筐体1内の底部に配設され、ブレード2〜5及び上流側送風機13及び下流側送風機14の駆動を制御する制御部6と、各種情報が記憶されている記憶部24とを備えている。
【0015】
筐体1は、上下方向に各々区画されており、その内部に各ブレード2〜5を各々収納するブレード収納部2A〜5Aと、ブレード収納部2A〜5Aに隣接し、上流側送風機13及び下流側送風機14を収納する送風機収納部13Aとを備えている。
【0016】
ブレード収納部2A〜5Aは、一方側(図2でいう左側)及び他方側(図2でいう右側)に空気が流通する開口が各々形成されており、上流側送風機13及び下流側送風機14によって供給される冷却風15が一方側の開口から進入し、ブレード収納部2A〜5Aを流通した冷却風が排気16として他方側の開口から排出される。即ち、ブレード収納部2A〜5Aは、冷却風15が進入する側が「上流側」となり、排出される側が「下流側」となっている。また、他方側に形成された開口は、送風機収納部13Aと連通しており、この開口から排気16が送風機収納部13Aに供給されるようになっている。
【0017】
送風機収納部13Aは、ブレード収納部2A〜5Aの下流側に配設されており、この送風機収納部13Aの下流側には、送風機収納部13Aに進入した排気16を外部に排出するための開口が形成されている。そして、送風機収納部13Aを流通した排気16は、上流側送風機13及び下流側送風機14によって、当該開口から排気17として外部に排出される。
【0018】
ブレード2〜5は、電子機器2B〜5Bを各々備えており、電子機器2B〜5Bの各々の上流側には、電子機器2B〜5Bに供給される冷却風の通風抵抗(冷却風量)をそれぞれ調節する通風抵抗調節部7が各々配設されている。
【0019】
電子機器2B〜5Bは、発熱体放熱部品8と、発熱部品9〜11と、発熱体放熱部品8の上流側に配置され、冷却風の入気温度を測定する入気温度センサ12を備えている。これらの電子機器2B〜5Bは、後に詳述する制御部6に接続されており、各々の消費電力、入気温度センサ12により測定された温度等の各種情報が制御部6に送信されるようになっている。
【0020】
なお、各々のブレード2〜5は、演算性能といった動作状態によって発熱量が異なるが、内部部品の構成は同じであり、通風抵抗調節部7の調整を行わない初期状態(制御実施前の状態)では、同一の通風抵抗特性となっている。したがって、以後、主にブレード2について説明し、ブレード3〜5については、ブレード2の説明で使用した符号「2」を符号「3」、「4」、「5」と各々読代えるものとする。
【0021】
通風抵抗調節部7は、図3及び図4に詳細に示すように、ブレード収納部2Aの上流側の開口を遮蔽可能な調節板18と、ブレード収納部2Aの側面板金29に固定されたサーボモータ21と、ブレード収納部2Aの底面を構成する支持板23に配設された回路基板22とを備えている。
【0022】
調節板18は、サーボモータ21の回転軸25に接合部26において固定されており、サーボモータ21の回転駆動に応じて揺動するようになっており、この揺動状態(図9に示す調節板18の揺動角度θ)に応じて、ブレード収納部2Aに供給される冷却風15の通風抵抗(冷却風量)が変更される。なお、調節板18は、後に詳述する制御部6によるサーボモータ21の回転駆動制御により、全開状態となる調節板位置19(図9参照)から、全閉状態となる調節板位置20(図9参照)の範囲で直ちに動作、固定される。
【0023】
サーボモータ21は、回路基板22上に配設されているサーボモータ接続用コネクタ28にケーブル27を介して接続されており、制御部6との情報交信や給電が行なわれるようになっている。なお、サーボモータ21と制御部6との情報交信は、後に詳述するが、調節板18の揺動角度θ(図9参照)の設定変更について行われる。
【0024】
上流側送風機13及び下流側送風機14は、ファン13B及び14Bを回転させることにより冷却風を発生させ、この冷却風によってブレード2〜5の冷却を行う。上流側送風機13及び下流側送風機14は、後に詳述する制御部6に接続されており、制御部6によってファン13B及び14Bの回転数が制御される。
【0025】
制御部6は、図5に示すように、ブレード2〜5、上流側送風機13及び下流側送風機14に接続されている。そして、制御部6は、各入気温度センサ12により測定された冷却風15の温度、各電子機器2B〜5Bの消費電力、各ブレード収納部2A〜5Aに供給される冷却風15の通風抵抗特性を受信すると共に、上流側送風機13及び下流側送風機14から各々の回転数情報を受信する。そして、受信した情報を、予めプログラムされている情報の現在値をモニタするテーブル(図6参照)にしたがって記憶部24に記憶する。なお、図6に示す現在の風量情報は、前述した各ブレードの通風抵抗特性と送風機回転数情報から得られる送風機特性により算出して、テーブルに表示している。このように、制御部6は、各々のブレード2〜5に関する各種情報をモニタすることで各々のブレード2〜5の冷却に必要な冷却必要風量を把握する。
【0026】
続いて制御部6は、予めプログラムされている各電子機器2B〜5Bの消費電力、各入気温度の条件下で、各々のブレード2〜5の冷却に必要な冷却必要風量を、記憶部24に予め記憶されている目標値のテーブル(図7参照)で確認する。なお、この目標値のテーブルには、各電子機器2B〜5Bの消費電力及び各入気温度の条件下で、各々のブレード2〜5の冷却に必要な冷却必要風量が定義されている。
【0027】
次に、制御部6は、各々のブレード2〜5における冷却必要風量が最少となる各々の通風抵抗特性を即時に算出し、この結果に基づいて、サーボモータ21の回転を制御し、調節板18の揺動角度θを調節する。この揺動角度θは、記憶部24に予め記憶されている、揺動角度θと通風抵抗特性の関係を数式化して定義したテーブル(図8参照)から取得される。さらに、これに合わせて、上流側送風機13及び下流側送風機14の送風能力が必要最低限となるように上流側送風機13及び下流側送風機14の回転数を制御する。
【0028】
次に、本実施形態に係る冷却システムの具体的動作について、図面を参照して説明する。図10は、図2に示すブレードサーバの初期状態(制御実施前の状態)を示す図、図11は、図2に示すブレードサーバの初期状態(制御実施前の状態)における通風抵抗特性と送風機特性による静圧と冷却風量との関係を示す図、図12は、図2に示すブレードサーバの制御実施後における通風抵抗特性と送風機特性による静圧と冷却風量との関係を示す図、図13は、本実施形態に係る冷却システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0029】
図10に示すように、初期状態では、全ての調節板18が全開状態となる調節板位置(図9に符号19で示す位置)に待機している。この状態は、通風抵抗調節部7を有していない冷却システムと同様の状態であり、全ブレード2〜5とも内部部品(発熱体放熱部品8と、発熱部品9〜11等)の構成が同じであることから、同一の通風抵抗特性となっている。この状態が、図13に示すフローチャートのスタートとなる。
【0030】
次に、図13に示すステップS101では、制御部6が上流側送風機13及び下流側送風機14のファン13B及び14Bを回転させる。この動作により、各々のブレード収納部2A〜5Aに冷却風15が供給される。次に、各ブレード2〜5に配置されている各々の入気温度センサ12が、冷却風15の入気温度を測定し、測定結果を制御部6に送信し、ステップS102に進む。測定された現在の入気温度は、図6に示す通りである。
【0031】
ステップS102では、制御部6がブレード2〜5の各々の発熱状態を把握する。発熱状態は、電子機器2B〜5Bの演算性能といった動作状態の違いに応じた消費電力を取得することによって把握する。なお、現時点の電子機器2B〜5Bの消費電力は、図6に示すように、1段目のブレード2が1280W程度であり、2段目のブレード3、3段目のブレード4、4段目のブレード5が各々560W程度となっていた。次いで、ステップS103に進む。
【0032】
ステップS103では、制御部6がブレード2〜5の各通風抵抗特性を取得する。具体的には、制御部6が、通風抵抗調節部7の調節板18の揺動角度θについてサーボモータ21から情報を受けることで各ブレード2〜5の通風抵抗特性を把握する。次いで、ステップS104に進む。
【0033】
ステップS104では、制御部6が上流側送風機13及び下流側送風機14からファン13B及び14Bの回転数情報(送風機特性)を取得する。なお、現時点の回転数情報は図6に示すように、上流側送風機13のファン13Bの回転数が3500rpm、下流側送風機14のファン14Bの回転数が4200rmpであった。次いで、ステップS105に進む。
【0034】
ステップS105では、制御部6は、予め設定されている各ブレード2〜5の通風抵抗特性式(図8参照)及び全ブレード2〜5の合成通風抵抗特性式(合成圧損を示す式)と、送風機特性式(ファン13B及び14Bの回転数毎の性能特性式)により、現在の冷却風15の風量を算出する。これにより制御部6は風量を算出し、リアルタイムに風量情報を把握できる。
【0035】
なお、図11に、現在のブレード1枚当たりの通風抵抗特性式、装置全体(全ブレード2〜5の合成)の通風抵抗特性式、送風機特性式を示す。図10に示した状態(初期状態)における冷却風量は、4台全てのブレード2〜5で冷却風量2.4m3/min(図11参照)となっており、1段目のブレード2に対しては適正な風量となっているが、2〜4段目のブレードに対しては過剰な風量となっている。また、初期状態では、ブレード2〜5毎の通風抵抗調節が行われていないため、ブレード2〜5毎の風量調節はできず、最も冷却風量を必要とするブレード2に合わせる形でその他のブレード3〜5にも同量の冷却風量を供給することになり、結果としてブレード3〜5の発熱状態(図6参照)では過剰な冷却風量の供給となることが分かる。
【0036】
ステップS106では、制御部6は、ステップS101及びS102で取得した各々の入気温度及び消費電力と、予め設定された目標値のテーブル(図7に示す情報)から、各々のブレード2〜5を最適に冷却するために必要な冷却風量(目標風量)を各々取得する。次いで、ステップS107に進む。
【0037】
ステップS107では、制御部6は、全ブレード2〜5に目標風量の冷却風15が供給されると共に、ファン13B及び14Bの回転数を必要最低限にして上流側送風機13及び下流側送風機14の消費電力を削減できるよう、各々のブレード収納部2A〜5Aに供給される冷却風15の通風抵抗を調整する。
【0038】
ここで、前述したように、各ブレード2〜5の発熱状態としては1段目のブレード2は、1280Wの熱量(消費電力)をもち、2段目のブレード3、3段目のブレード4、4段目のブレード5は各々560W程度の熱量(消費電力)、入気温度は35℃程度である。以上の条件から、1段目のブレード2は冷却風量2.3m3/minを必要とし、2〜4段目のブレードは冷却風量1m3/min程度を必要としていると仮定できる。よって、1段目のブレード2は最も多くの風量を必要とし、2〜4段目のブレードはそれに対して半分以下の風量でよいことが分かる。制御部6は上記の条件に関する情報を収集後、各ブレードに必要な風量が供給できるよう通風抵抗調節機構並びに送風機に変更指示を出す。
【0039】
具体的には、制御部6は、ステップS102で取得した各々のブレード2〜5の消費電力から最も冷却風量を必要とするブレード(消費電力が最も高いブレード:本実施形態ではブレード2)を特定し、ブレード2に設置されている通風抵抗調節部7の調節板18を全開状態(図9に符号19で示す位置:揺動角度θ=0度)の時の通風抵抗特性式に目標風量(値)を代入して静圧を算出する。本実施形態では、図11に示すように150Paであった。
【0040】
次に、制御部6は、この算出した静圧(150Pa)における通風特性式で求められる全ブレード2〜5の冷却風量が、ブレード2〜5の目標風量の比率となるように、他のブレード3〜5の通風抵抗を調節する。ここでは、静圧150Paの時に1段目のブレード2の通風抵抗特性が風量2.3m3/minの冷却風15を通過させるため、2〜4段目のブレード3〜5は、静圧150Paで冷却風量1m3/minを通過させる通風抵抗特性となるように通風抵抗を調節する。具体的には、ブレード3〜5の目標風量と、予め設定されたテーブル(図8に示す情報)からブレード3〜5の揺動角度θを算出し、ブレード3〜5に設置されている調節板18の揺動角度θが算出された角度となるように、サーボモータ21の駆動を制御する。結果として、図2に示すように、1段目のブレード2の調節板18は全開状態となり、2段目のブレード3、3段目のブレード4、4段目のブレード5の調節板18は、通風抵抗を増大させるため所定角度(揺動角度θ)まで回動し、固定される。以上により、各ブレード2〜5に供給される冷却風量が適正となる。
【0041】
次に、ステップS108に進み、制御部6は、各ブレード2〜5を適切に冷却するために必要十分な冷却風量を供給できるよう、上流側送風機13及び下流側送風機14の駆動を制御し、ファン13B及び14Bの回転数を低減させる。本実施形態では、上記通風抵抗調節後の全ブレード2〜5の合成通風抵抗特性と静圧150Paがマッチングする送風機特性となるまで送風機回転数を低減させる。
【0042】
図12にブレード2の通風抵抗特性式、ブレード3〜5の通風抵抗特性式(1枚当たり)、装置全体(全ブレード2〜5の合成)の通風抵抗特性式、送風機特性式、送風機の回転数を初期状態の80%とした際の送風機特性式を示す。図12から、冷却システムの制御前(初期状態)に対して送風機回転数を80%まで落とした状態で、1段目のブレード2は冷却風量2.4m3/min、2〜4段目のブレード3〜5は冷却風量1.2m3/minを確保できることが分かる。
【0043】
このように、本発明によれば、送風機回転数を80%まで落としても、1段目のブレード2の冷却に必要な風量(2.3m3/min)と、2〜4段目のブレード3〜5の冷却に必要な風量(1m3/min程度)に対して適正な風量を得ることができる。また、前述したように、各ブレード2〜5の通風抵抗特性の調節並びに送風機回転数の変更は、制御部6が計算により最適解を求めるため、瞬時に最適解算出し、変更することができる。したがって、送風機の省電力化並びに低騒音化のリアルタイム制御を図ることが可能な冷却システムを実現することができる。
【0044】
これに対し、本発明に係る通風抵抗調節部を有しない冷却システムを採用したブレードサーバは、全ブレードとも同一の通風抵抗特性となっており、ブレード毎の風量調節ができないため、常に最大の発熱状態となるブレードに必要な冷却風量が、各々のブレードに供給されることになる。したがって、ブレードの発熱状態によっては過剰な風量の供給となり、省電力化並びに低騒音化を達成することが困難である。
【符号の説明】
【0045】
1…筐体、2、3、4、5…ブレード、2A、3A、4A、5A…ブレード収納部、2B、3B、4B、5B…電子機器、6…制御部、7…通風抵抗調節部、12…入気温度センサ、13…上流側送風機、13A…送風機収納部、13B、14B…ファン、14…下流側送風機、18…調節板、24…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、互いに独立して動作、機能する複数の電子機器と、
前記筐体内に配置され、前記複数の電子機器に冷却風を供給し、当該複数の電子機器を冷却する送風機と、
前記筐体内に配置され、前記各々の電子機器に供給される冷却風の温度を取得する温度取得部と、
前記筐体内に配置され、前記各々の電子機器に供給される冷却風の通風抵抗を各々調節する通風抵抗調節部と、
前記送風機及び前記各々の通風抵抗調節部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部が取得した温度情報及び前記各々の電子機器の発熱情報に基づいて当該各々の電子機器を所定温度に冷却するために必要な目標冷却風量を各々取得し、当該送風機から供給される冷却風量が前記各々の目標冷却風量となるように前記各々の通風抵抗調節部を制御すると共に、前記送風機から供給される冷却風量が必要最低限となるよう当該送風機の駆動を制御する電子機器の冷却システム。
【請求項2】
前記電子機器に供給される冷却風の温度と、前記電子機器の消費電力量と、前記電子機器を所定温度に冷却するために必要な目標冷却風量との関係を示す制御テーブルが記憶されている記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記発熱情報として前記各々の電子機器の消費電力量を取得し、前記温度情報、消費電力量、制御テーブルに基づいて前記目標冷却風量を取得する請求項1記載の電子機器の冷却システム。
【請求項3】
前記送風機の回転数と、当該送風機の回転数に応じた送風性能特性との関係を示す制御テーブルが記憶されている記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記各々の目標冷却風量及び前記制御テーブルに基づいて前記送風機の回転数を制御する請求項1記載の電子機器の冷却システム。
【請求項4】
前記筐体は、前記各々の電子機器を個別に収納する電子機器収納部を備え、
前記通風抵抗調節部は、前記各々の電子機器収納部に揺動可能に配置され、当該揺動に応じて前記冷却風の流路面積を変更する調節板を備え、
前記制御部は、前記目標冷却風量に基づいて前記調節板の揺動角度を変更することで、前記各々の電子機器収納部に供給される冷却風の通風抵抗を制御する請求項1記載の電子機器の冷却システム。
【請求項5】
前記送風機を複数有し、当該複数の送風機は、前記冷却風の流路上に直列に配設されてなる請求項1記載の電子機器の冷却システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電子機器冷却システムを備えた電子機器装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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