説明

電子機器の筐体及び液晶テレビジョン受像器

【課題】ウェルドラインの発生を抑制して係合孔周辺を補強することができる電子機器の筐体を提供する。
【解決手段】開放箱形の樹脂製の第1のケース2と、第1のケース2に嵌め込みで固定される開放箱形の樹脂製の第2のケース3と、から構成され、第2のケース3の開放部が、第1のケース2の開放部に嵌合されるとともに、第1のケース2の開放部の内壁面に形成されたフック部2aが、第2のケース3の開放部の壁面を貫通して形成された、第1及び第2のケースの嵌合方向と直交する方向に長い複数の長孔から成る係合孔3aの各々に第2のケースの外壁面側から係合されることにより、第1及び第2のケース2、3が合体される電子機器の筐体において、第2のケース3の内壁面に、係合孔3aを短手方向に横切るリブ3cを一体に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放箱形の2つのケースから組立てられる電子機器の筐体、又はこのような筐体を有する液晶テレビジョン受像器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術について液晶テレビジョン受像器を例にして図面を参照して説明する。
【0003】
図5は従来の液晶テレビジョン受像器の主基板及びリアケースを取り外して示す組立図である。液晶テレビジョン受像器1の筐体は、図5に示すように、液晶モジュール4や主基板5が配設される背面開放箱形のフロントケース2と、フロントケース2の背面開放部に嵌め込みで固定される前面開放箱形のリアケース3と、から構成されている。リアケース3の前面開放部は、外壁面に段差ができるように薄肉に形成されており、フロントケース2の背面開放部に嵌合されるようになっている。このとき、フロントケース2の背面開放部の内壁面に形成された複数のフック部2aの各々が、リアケース3の前面開放部の壁面を貫通して形成された、複数の長孔から成る係合孔3aの各々に係合してフロントケース2とリアケース3が合体される。
【0004】
フロントケース2には、図5に示すように、液晶モジュール4の背後に、主基板5を取付けるための取付板金6が配設される。取付板金6には、所々に、複数のねじ孔61aを有する受け部61が切り起こしで形成されていて、主基板5に貫設された複数のねじ孔51と、対応する取付板金6の受け部61のねじ孔61aとにビス7を螺合することにより、主基板5は取付板金6に対して固定される。
【0005】
図6は従来のリアケース成形用金型の縦断面図であり、図7は図6の一点鎖線における断面図であり、図8は従来のリアケースを開放側から見た斜視図である。リアケース3の成形時には、図6及び図7に示すように、凹部を有する第1の金型101と凸部を有する第2の金型102とが、凹凸嵌合様に組み合わされる。このとき、凹部と凸部とが所定の間隔をおいて対向し、空洞部103が形成される。リアケース3は、この空洞部103に溶融した樹脂材料(以下、単に「材料」という)を充填・固化して作られる。材料は、第1の金型101を貫通して形成されたインジェクション101aから空洞部103に注入される。第1の金型101には、リアケース3に複数の係合孔3a(図5参照)を形成するために、対応する箇所に複数の突起101bが設けられている。注入された材料は空洞部103を満たしていき、最終的に、突起101bの後方(図6の紙面右方)から両サイド(図6の紙面前方及び後方)に回り込んで第2の金型102の垂直面まで到達し、突起101bの前方(図6の紙面左方)に流れ込んで両サイドからの材料同士が中央部でぶつかるように充填される。
【0006】
このため、図8に示されるように出来上がったリアケース3を開放側から見ると、図9に示すように、材料がぶつかる点で、材料同士が完全に溶融する前に固化することにより、いわゆるウェルドライン3bが発生する場合がある。このウェルドライン3bは、樹脂製品の強度低下を招く成形不良の一種である。よって、フロントケース2とリアケース3の合体時にフック部2aと係合孔3aの引っ掛かりが強いと、リアケース3の係合孔3aの周辺に作用する負荷によってウェルドライン3bに亀裂が入る場合があり、リアケース3を破損するおそれがあった。
【0007】
なお、特許文献1〜3に記載された発明は、テレビジョン受像器の筐体の組立構造に関するものであるが、いずれも上述したような、リアケースに、フロントケースのフック部が係合される係合孔を有するタイプの筐体に関するものではない。
【特許文献1】特開平6−311459号公報
【特許文献2】実用新案登録第3090702号公報
【特許文献3】特開昭64−37183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、ウェルドラインの発生を抑制して係合孔周辺を補強することができる電子機器の筐体又はこのような筐体を有する液晶テレビジョン受像器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の液晶テレビジョン受像器は、液晶モジュールが配設される背面開放箱形の樹脂製のフロントケースと、該フロントケースに嵌め込みで固定される前面開放箱形の樹脂製のリアケースと、から構成され、前記リアケースの前面開放部が、前記フロントケースの背面開放部に嵌合されるとともに、前記フロントケースの背面開放部の内壁面に形成された複数のフック部の各々が、前記リアケースの前面開放部の壁面を貫通して形成された、複数の長孔から成る係合孔の各々に前記リアケースの外壁面側から係合されることにより、前記フロントケースと前記リアケースが合体される筐体を有する液晶テレビジョン受像器において、前記リアケースの内壁面に、前記係合孔を短手方向に横切るリブを一体に形成したことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2の電子機器の筐体は、開放箱形の樹脂製の第1のケースと、該第1のケースに嵌め込みで固定される開放箱形の樹脂製の第2のケースと、から構成され、前記第2のケースの開放部が、前記第1のケースの開放部に嵌合されるとともに、前記第1のケースの開放部の内壁面に形成されたフック部が、前記第2のケースの開放部の壁面を貫通して形成された、前記第1及び第2のケースの嵌合方向と直交する方向に長い複数の長孔から成る係合孔の各々に前記第2のケースの外壁面側から係合されることにより、前記第1及び第2のケースが合体される電子機器の筐体において、前記第2のケースの内壁面に、前記係合孔を短手方向に横切るリブを一体に形成したことを特徴としている。
【0011】
また、請求項3の電子機器の筐体は、請求項2に記載の電子機器の筐体において、前記リブが、前記係合孔の長手方向に並んで複数設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の液晶テレビジョン受像器によると、リアケース成形用の金型には、係合孔形成用の突起を跨いで延びる、リブ形成用の溝が設けられることになるため、この溝によってリアケース成形時に材料が流れる流路ができ、突起の両サイドから前方に回り込んだ樹脂同士がぶつかる点にさらに材料が流れ込むことになる。従って、ウェルドラインの発生が抑制され、係合孔を有することによるリアケースの強度の低下が防止される。また、出来上がったリアケースには、係合孔を短手方向に横切るリブが一体に形成されるため、リアケースの係合孔周辺を補強することができる。
【0013】
請求項2の電子機器の筐体によると、第2のケース成形用の金型には、係合孔形成用の突起を跨いで延びる、リブ形成用の溝が設けられることになるため、この溝によって第2のケース成形時に材料が流れる流路ができ、突起の両サイドから前方に回り込んだ樹脂同士がぶつかる点にさらに材料が流れ込むことになる。従って、ウェルドラインの発生が抑制され、係合孔を有することによる第2のケースの強度の低下が防止される。また、出来上がった第2のケースには、係合孔を短手方向に横切るリブが一体に形成されるため、第2のケースの係合孔周辺を補強することができる。
【0014】
請求項3の電子機器の筐体によると、リブがリアケースの各係合孔の長手方向に並んで複数形成されるため、第2のケースの係合孔周辺をより頑丈に補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、図5〜図9に示す従来の液晶テレビジョン受像器と共通の部材には同一の符号を附し、詳しい説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る液晶テレビジョン受像器の筐体を構成するリアケース成形用金型の縦断面図であり、図2は図1の一点鎖線における断面図である。図1及び図2に示すように、第2の金型102には、第1の金型101の突起101bを、該突起101bの長手方向(図1の紙面前後方向、図2の紙面左右方向)の中央で跨いで延びる溝102aが設けられている。この溝102aは、図1に点線矢印で示すように、空洞部103に、突起101bを跨いで材料の流れる流路を形成する。よって、突起101bの前方の、材料同士がぶつかる点にさらに材料が流れ込む部分ができるため、ウェルドラインの発生を抑制することができ、ひいてはリアケース3の強度の低下を防止することができる。
【0017】
上記のように第2金型102の溝102aにも材料が充填され、固化する結果として、図3及び図4に示すように、出来上がったリアケース3の内壁面には、各係合孔3aを短手方向に横切るリブ3cが形成される。これにより、リアケース3の係合孔3a周辺を補強することができる。よって、フロントケース2のフック部2aとリアケース3の係合孔3aとの引っ掛かりを強めに設定しても、係合孔3a周辺の強度不足に起因して起こるリアケース3の破損を防止することができる。
【0018】
本発明は上記の実施形態には限定されない。例えば、図1及び図2に示された例では、第2の金型102の溝102aは、第1の金型101の各突起101bに対して1本しか設けられていないが、突起101bの長手方向に並んで複数本設けても良い。これによると、出来上がったリアケース3の内壁面には、各係合孔3aを短手方向に横切るリブ3cが複数形成されることになるため、リアケース3の係合孔3a周辺をより頑丈に補強することができる。
【0019】
なお、上記の実施形態では液晶テレビジョン受像器を例にして説明したが、本発明は合体されて筐体を構成する第1及び第2のケースが合体されて構成される電子機器の筐体であればどんなものにでも適用が可能である。この場合、第2のケースは、第1のケースに対して着脱可能或いは開閉可能な蓋であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は、本発明の一実施形態に係る液晶テレビジョン受像器の筐体を構成するリアケース成形用金型の縦断面図である。
【図2】は、図1の一点鎖線における断面図である。
【図3】は、上記実施形態に係るリアケースを開放側から見た斜視図である。
【図4】は、図3の破線円で囲んだ部分の拡大図である。
【図5】は、従来の液晶テレビジョン受像器の主基板及びリアケースを取り外して示す組立図である。
【図6】は、従来のリアケース成形用金型の縦断面図である。
【図7】は、図6の一点鎖線における断面図である。
【図8】は、従来のリアケースを開放側から見た斜視図である。
【図9】は、図8の破線円で囲んだ部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0021】
1 液晶テレビジョン受像器(電子機器の一例)
2 フロントケース(第1のケース)
2a フック部
3 リアケース(第2のケース)
3a 係合孔
3c リブ
101 (リアケース成形用)第1の金型
101b (係合孔形成用)突起
102 (リアケース成形用)第2の金型
102a (リブ形成用)溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶モジュールが配設される背面開放箱形の樹脂製のフロントケースと、該フロントケースに嵌め込みで固定される前面開放箱形の樹脂製のリアケースと、から構成され、前記リアケースの前面開放部が、前記フロントケースの背面開放部に嵌合されるとともに、前記フロントケースの背面開放部の内壁面に形成された複数のフック部の各々が、前記リアケースの前面開放部の壁面を貫通して形成された、前後方向と直交する方向に長い複数の長孔から成る係合孔の各々に前記リアケースの外壁面側から係合されることにより、前記フロントケースと前記リアケースが合体される筐体を有する液晶テレビジョン受像器において、
前記リアケースの内壁面に、前記係合孔を短手方向に横切るリブを一体に形成したことを特徴とする液晶テレビジョン受像器。
【請求項2】
開放箱形の樹脂製の第1のケースと、該第1のケースに嵌め込みで固定される開放箱形の樹脂製の第2のケースと、から構成され、前記第2のケースの開放部が、前記第1のケースの開放部に嵌合されるとともに、前記第1のケースの開放部の内壁面に形成されたフック部が、前記第2のケースの開放部の壁面を貫通して形成された、前記第1及び第2のケースの嵌合方向と直交する方向に長い複数の長孔から成る係合孔の各々に前記第2のケースの外壁面側から係合されることにより、前記第1及び第2のケースが合体される電子機器の筐体において、
前記第2のケースの内壁面に、前記係合孔を短手方向に横切るリブを一体に形成したことを特徴とする電子機器の筐体。
【請求項3】
前記リブが、前記係合孔の長手方向に並んで複数設けられたことを特徴とする請求項2に記載の電子機器の筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−182622(P2008−182622A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15864(P2007−15864)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】